特許第6982564号(P6982564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6982564-車両制御装置 図000002
  • 特許6982564-車両制御装置 図000003
  • 特許6982564-車両制御装置 図000004
  • 特許6982564-車両制御装置 図000005
  • 特許6982564-車両制御装置 図000006
  • 特許6982564-車両制御装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982564
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/035 20120101AFI20211206BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20211206BHJP
   F16H 63/40 20060101ALI20211206BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20211206BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20211206BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20211206BHJP
   B60W 20/30 20160101ALI20211206BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20211206BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B60W50/035ZHV
   F16H61/12
   F16H63/40
   B60K6/48
   B60W10/10 900
   B60W20/50
   B60W20/30
   B60W50/14
   B60L15/20 K
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-243835(P2018-243835)
(22)【出願日】2018年12月27日
(65)【公開番号】特開2020-104627(P2020-104627A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】貞清 雅行
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚
(72)【発明者】
【氏名】野口 智之
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−176800(JP,A)
【文献】 再公表特許第2017/010264(JP,A1)
【文献】 国際公開第2018/235470(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/207551(WO,A1)
【文献】 特許第6073003(JP,B1)
【文献】 特開2018−192865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 60/00
B60K 31/00 − 31/18
B62D 6/00 − 6/10
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
F02D 29/00 − 29/06
G08G 1/00 − 99/00
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
B60K 6/48
B60W 20/50
B60W 20/30
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動運転で走行する手動運転モードと、自動運転で走行する自動運転モードとに、運転モードを切換可能に構成された車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両の故障の有無を判定する故障判定部と、
走行駆動源の動力による前記車両の前記自動運転モードでの走行を継続することが可能か否かを判定する自動運転判定部と、
前記故障判定部により前記車両が故障していると判定され、かつ、前記自動運転判定部により前記自動運転モードでの走行継続が可能と判定されると、前記車両の故障個所を特定する処理を実行する故障特定処理部と、
前記故障特定処理部による故障箇所の特定が終了すると、特定された故障箇所の情報を含む故障情報をドライバに報知する報知部と、
前記報知部により故障情報が報知された後、運転モードを前記自動運転モードから前記手動運転モードに切り換える運転モード切換部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
運転モードが前記自動運転モードに切り換えられた状態で、行動計画に従い前記車両が自動運転で走行するように走行用アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部をさらに備え、
前記故障判定部は、前記走行駆動源に接続された変速機の故障の有無を判定し、
前記アクチュエータ制御部は、前記故障判定部により前記変速機が故障していると判定されると、前記変速機を前記走行駆動源の動力による前記車両の走行が可能な所定状態に制御し、
前記故障特定処理部は、前記アクチュエータ制御部により前記変速機が前記所定状態に制御された状態で、前記車両の故障箇所を特定する処理を実行することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記アクチュエータ制御部は、前記自動運転判定部により前記走行駆動源の動力による前記車両の前記自動運転モードでの走行継続が不可能と判定されると、前記車両が退避走行するように前記走行用アクチュエータを制御することを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動運転モードと自動運転モードとに運転モードを切換可能な車両を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転で走行中の車両に異常があった場合に、走行継続が可能か否かを判定し、走行継続が不可能と判定されると、車両を退避場所まで退避させるようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、走行継続が可能と判定されると、車両走行が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1:特開2016−200986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動運転で走行中の車両に異常があった場合には、走行継続が可能であったとしても、自動運転をそのまま継続することが好ましいとは限らない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、手動運転で走行する手動運転モードと、自動運転で走行する自動運転モードとに、運転モードを切換可能に構成された車両を制御する車両制御装置であって、車両の故障の有無を判定する故障判定部と、走行駆動源の動力による車両の自動運転モードでの走行継続が可能か否かを判定する自動運転判定部と、故障判定部により車両が故障していると判定され、かつ、自動運転判定部により自動運転モードでの走行継続が可能と判定されると、車両の故障個所を特定する処理を実行する故障特定処理部と、故障特定処理部による故障箇所の特定が終了すると、特定された故障箇所の情報を含む故障情報をドライバに報知する報知部と、報知部により故障情報が報知された後、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える運転モード切換部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動運転で走行中の車両に異常があった場合に、走行継続が可能であったとしても、自動運転をそのまま継続することを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置が適用される自動運転車両の走行系の一部の構成を概略的に示すスケルトン図。
図2図1の自動運転車両を制御する車両制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図。
図3図2の行動計画生成部で生成された行動計画の一例を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る車両制御装置の要部構成を示すブロック図。
図5図4のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
図6】本発明の実施形態に係る車両制御装置の動作の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図6を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が適用される車両101の走行駆動系の一部(主に変速機1)の構成を概略的に示すスケルトン図である。図1に示すように、車両101は、例えばエンジン2と電動機3とを備えるハイブリッド車両として構成される。
【0009】
変速機1とエンジン2との間には、エンジン2のトルクを変速機1に伝達または非伝達するクラッチ機構Cが設けられる。クラッチ機構Cは、例えば湿式のデュアルクラッチにより構成され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とを有する。なお、クラッチ機構Cを、乾式のデュアルクラッチにより構成することもできる。
【0010】
変速機1は、例えば有段変速機であり、変速機1に入力されたエンジン2および電動機3の少なくとも一方の回転を、速度段に応じた変速比で変速するギヤ機構10を有する。ギヤ機構10を介して出力されたトルクは、差動ギヤ機構46、駆動軸等を介して駆動輪47に伝達され、これにより車両101が走行する。なお、エンジン2のトルクを、トルクコンバータを介して変速機1に出力することもできる。
【0011】
ギヤ機構10は、互いに略平行に配置され、それぞれが回転可能に支持された複数の回転軸、すなわち第1主入力軸11と第2主入力軸12と副入力軸13と出力軸14とアイドル軸15とリバース軸16とを有する。第2主入力軸12は、第1主入力軸11と同軸上にかつ第1主入力軸11を包囲するように中空に形成される。変速機1は、例えば前進7速、後進1速の自動変速機である。
【0012】
電動機3は、例えば3相のDCブラシレスモータにより構成され、図示しない電動機3のハウジング内に回転可能に支持されたロータ3aと、ロータ3aの周囲に配置され、ハウジングに固定されたステータ3bとを有する。第1主入力軸11の一端部は、電動機3のロータ3aに接続され、第1主入力軸11はロータ3aと一体に回転可能である。ステータ3bは、ステータコアに巻回されたコイルを有し、コイルはパワードライブユニットを介してバッテリに電気的に接続される。パワードライブユニットの動作はコントローラ(図2)により制御される。
【0013】
第1主入力軸11の他端部は、第1クラッチC1を介してエンジン2の出力軸2aに接続され、第1クラッチC1の断接に応じて第1主入力軸11と出力軸2aとが結合または遮断される。すなわち、第1クラッチC1が接続すると、第1主入力軸11と出力軸2aとが結合され、第1主入力軸11にエンジン2からのトルクが入力される。一方、第1クラッチC1が遮断すると、第1主入力軸11と出力軸2aとが遮断され、エンジン2からのトルクの入力が遮断する。
【0014】
第1クラッチC1は奇数変速段用のクラッチであり、第1主入力軸11には1速駆動ギヤ21と、3速駆動ギヤ23と、7速駆動ギヤ27と、5速駆動ギヤ25とが、電動機3側からこの順番に配設される。これら駆動ギヤ21,23,25,27は、第1主入力軸11の外周面に、それぞれベアリングを介し第1主入力軸11に対して相対回転可能に支持される。なお、1速駆動ギヤ21と3速駆動ギヤ23とは、一体に回転可能に設けられる。電動機3のロータ3aと1速駆動ギヤ21との間には、遊星歯車機構20が配設される。
【0015】
第2主入力軸12の一端部は、第2クラッチC2を介してエンジン2の出力軸2aに接続され、第2クラッチC2の断接に応じて第2主入力軸12と出力軸2aとが結合または遮断される。すなわち、第2クラッチC2が接続すると、第2主入力軸12と出力軸2aとが結合され、第2主入力軸12にエンジン2からのトルクが入力される。一方、第2クラッチC2が遮断すると、第2主入力軸12と出力軸2aとが遮断され、エンジン2からのトルクの入力が遮断する。
【0016】
第2主入力軸12の他端部にはギヤ31が固定される。ギヤ31は、アイドル軸15に固定されたアイドルギヤ32に噛合し、アイドルギヤ32は、副入力軸13に固定されたギヤ33に噛合する。これにより第2主入力軸12のトルクがアイドルギヤ32を介して副入力軸13に伝達され、副入力軸13は第2主入力軸12とともに回転する。
【0017】
第2クラッチC2は偶数変速段用のクラッチであり、副入力軸13には、2速駆動ギヤ22と、6速駆動ギヤ26と、4速駆動ギヤ24とが、電動機3側からこの順番に配設される。これら駆動ギヤ22,24,26は、副入力軸13の外周面に、それぞれベアリングを介して副入力軸13に対し相対回転可能に支持される。
【0018】
リバース軸16の一端部にはギヤ34が固定される。ギヤ34はアイドルギヤ32と噛合し、これにより第2主入力軸12のトルクがリバース軸16に入力される。リバース軸16の外周面には、ベアリングを介してリバース駆動ギヤ28がリバース軸16に対し相対回転可能に支持される。リバース駆動ギヤ28は、5速駆動ギヤ25とギヤ31との間で第1主入力軸11に固定されたリバース従動ギヤ35に噛合する。
【0019】
出力軸14には、2−3速従動ギヤ41と、6−7速従動ギヤ42と、4−5速従動ギヤ43と、パーキングギヤ44と、ファイナルギヤ45とが、電動機3側からこの順番に固定される。2−3速従動ギヤ41は、2速駆動ギヤ22と3速駆動ギヤ23とにそれぞれ噛合する。6−7速従動ギヤ42は、6速駆動ギヤ26と7速駆動ギヤ27とにそれぞれ噛合する。4−5速従動ギヤ43は、4速駆動ギヤ24と5速駆動ギヤ25とにそれぞれ噛合する。
【0020】
パーキングギヤ44は、図示しないパーキングギヤ機構の係合爪と噛合し、パーキングギヤ機構の作動に応じてギヤ機構10をロックおよびアンロックすることができる。変速機1のトルクは、ファイナルギヤ45および差動ギヤ機構46を介して左右の駆動輪47に伝達される。
【0021】
変速機1は、第1主入力軸11に対し相対回転可能な1速駆動ギヤ21を第1主入力軸11に結合する1速同期機構SY1と、第1主入力軸11に対し相対回転可能な3速駆動ギヤ23および7速駆動ギヤ25のいずれかを第1主入力軸11に結合する3−7速同期機構SY2と、第1主入力軸11に対し相対回転可能な5速駆動ギヤ25を第1主入力軸11に結合する5速同期機構SY3と、副入力軸13に対し相対回転可能な2速駆動ギヤ22および6速駆動ギヤ26のいずれかを副入力軸13に結合する2−6速同期機構SY4と、副入力軸13に対し相対回転可能な4速駆動ギヤ24を副入力軸13に結合する4速同期機構SY5と、リバース軸16に対し相対回転可能なリバース駆動ギヤ28をリバース軸16に結合するリバース同期機構SY6とを有する。
【0022】
なお、これら1速同期機構SY1と3−7速同期機構SY2と5速同期機構SY3と2−6速同期機構SY4と4速同期機構SY5とリバース同期機構SY6とをまとめて同期機構SYと呼ぶ場合がある。同期機構SYは、制御弁の切換に応じて作用する油圧源(油圧ポンプ)からの油圧力によって駆動される。なお、クラッチ機構Cも、制御弁の切換に応じて作用する油圧源からの油圧力によって駆動される。
【0023】
各同期機構SYは、第1主入力軸11、副入力軸13またはリバース軸と一体に回転するハブSYaと、ハブSYaと一体に回転可能に、かつ、ハブSYaの外周面に沿って軸方向に移動可能に支持されたスリーブSYbとを有する。スリーブSYbは、制御弁の切換に応じた油圧力により軸方向に駆動され、これにより、いずれかの同期機構SY1〜SY6のスリーブSYbに設けられたドグ歯と、いずれかの駆動ギヤ21〜28に設けられたドグ歯とがインギヤし、任意の変速段を確立できる。
【0024】
例えば同期機構SY2のスリーブSYbが油圧力により駆動されて、スリーブSYbのドグ歯と3速駆動ギヤ23のドグ歯とが噛合すると、3速段が確立する。この状態で、第1クラッチC1が接続されると、エンジン2のトルクが、第1クラッチC1、第1主入力軸11、同期機構SY2のハブSYaとスリーブSYb、3速駆動ギヤ23および2−3速従動ギヤ41を介して出力軸14に伝達され、車両101が3速で走行する。
【0025】
また、例えば同期機構SY5のスリーブSYbが油圧力に駆動されて、スリーブSYbのドグ歯と4速駆動ギヤ24のドグ歯とが噛合すると、4速段が確立する。この状態で、第2クラッチC2が接続されると、エンジン2のトルクが、第2クラッチC2、第2主入力軸12、アイドルギヤ32、ギヤ33、副入力軸13、同期機構SY5のハブSYaとスリーブSYb、4速駆動ギヤ24および4−5速従動ギヤ43を介して出力軸14に伝達され、車両が4速で走行する。
【0026】
本実施形態では、車両101が、自動運転機能を有する自動運転車両として構成される。なお、車両101は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0027】
図2は、図1の車両101を制御する車両制御システム100の基本的な全体構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、車両制御システム100は、コントローラ60と、コントローラ60にそれぞれ電気的に接続された外部センサ群51と、内部センサ群52と、入出力装置53と、GPS装置54と、地図データベース55と、ナビゲーション装置56と、通信ユニット57と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
【0028】
外部センサ群51は、車両101の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサの総称である。例えば外部センサ群51には、車両101の全方位の照射光に対する散乱光を測定して車両101から周辺の障害物までの距離を測定するライダ(Light Detection and Ranging)、電磁波を照射し反射波を検出することで車両101の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ(Radio Detection and Ranging)、車両101に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
【0029】
内部センサ群52は、車両101の走行状態を検出する複数のセンサの総称である。例えば内部センサ群52には、車両101の車速を検出する車速センサ、車両101の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサ、車両101の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群52に含まれる。
【0030】
入出力装置53は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置53には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供するディスプレイ、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。各種スイッチには、自動運転モードおよび手動運転モードのいずれかを指令する手動自動切換スイッチが含まれる。
【0031】
手動自動切換スイッチは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチの操作によらず、所定の走行条件が成立したときにも、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換が指令される。すなわち、手動自動切換スイッチが自動的に切り換わることで、モード切換が手動ではなく自動で行われる場合もある。
【0032】
GPS装置54は、複数のGPS衛星からの測位信号を受信するGPS受信機を有し、GPS受信機が受信した信号に基づいて車両101の絶対位置(緯度、経度など)を測定する。
【0033】
地図データベース55は、ナビゲーション装置56に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクにより構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース55に記憶される地図情報は、コントローラ60の記憶部62に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
【0034】
ナビゲーション装置56は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置53を介して行われる。入出力装置53を介さずに、目的地を自動的に設定することもできる。目標経路は、GPS装置54により得られた自車両の現在位置と、地図データベース55に記憶された地図情報とに基づいて演算される。
【0035】
通信ユニット57は、インターネット回線などの無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。取得した地図情報は、地図データベース55や記憶部62に出力され、地図情報が更新される。取得した交通情報には、渋滞情報や、信号が赤から青に変わるまでの残り時間等の信号情報が含まれる。
【0036】
アクチュエータACは、車両101の走行動作に関する各種機器を作動するための走行用アクチュエータである。アクチュエータACには、コントローラ60からの電気信号により作動する各種アクチュエータが含まれる。例えばエンジン2のスロットルバルブの開度を調整するスロットル用アクチュエータと、クラッチCを駆動するクラッチ用アクチュエータと、変速機1の同期機構SYのスリーブSYbを駆動する変速用アクチュエータと、ブレーキ装置4を作動するブレーキ用アクチュエータと、ステアリング装置を駆動するステアリング用アクチュエータなどが含まれる。これらアクチュエータは、電動モータやアクチュエータ駆動用の油圧の流れを制御する制御弁等により構成することができる。
【0037】
コントローラ60は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。なお、エンジン制御用ECU、変速機制御用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ60が示される。コントローラ60は、主に自動運転に関する処理を行うCPU等の演算部61と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部62と、図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。
【0038】
記憶部62には、車線の中央位置の情報や車線位置の境界の情報等を含む高精度の詳細な地図情報が記憶される。より具体的には、地図情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が記憶される。道路情報には、高速道路、有料道路、国道などの道路の種別を表す情報、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の3次元座標位置、車線のカーブの曲率、車線の合流ポイントおよび分岐ポイントの位置、道路標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事等により車線の走行が制限または通行止めとされている情報などが含まれる。記憶部62には、変速動作の基準となるシフトマップ(変速線図)、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報も記憶される。
【0039】
演算部61は、自動走行に関する機能的構成として、自車位置認識部63と、外界認識部64と、行動計画生成部65と、走行制御部66とを有する。
【0040】
自車位置認識部63は、GPS装置54で得られた車両101の位置情報および地図データベース55の地図情報に基づいて、地図上の車両101の位置(自車位置)を認識する。記憶部62に記憶された地図情報(建物の形状などの情報)と、外部センサ群51が検出した車両101の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット57を介して通信することにより、自車位置を高精度に認識することもできる。
【0041】
外界認識部64は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群51からの信号に基づいて車両101の周囲の外部状況を認識する。例えば車両101の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、車両101の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の境界線や停止線、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
【0042】
行動計画生成部65は、例えばナビゲーション装置56で演算された目標経路と、自車位置認識部63で認識された自車位置と、外界認識部64で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの車両101の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部65は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部65は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。
【0043】
行動計画には、現時点から所定時間T(例えば5秒)先までの間に単位時間Δt(例えば0.1秒)毎に設定される走行計画データ、すなわち単位時間Δt毎の時刻に対応付けて設定される走行計画データが含まれる。走行計画データは、単位時間Δt毎の車両101の位置データと車両状態のデータとを含む。位置データは、例えば道路上の2次元座標位置を示す目標点のデータであり、車両状態のデータは、車速を表す車速データと車両101の向きを表す方向データなどである。走行計画は単位時間Δt毎に更新される。
【0044】
図3は、行動計画生成部65で生成された行動計画の一例を示す図である。図3では、自車両101が車線変更して前方車両102を追い越すシーンの走行計画が示される。図3の各点Pは、現時点から所定時間T先までの単位時間Δt毎の位置データに対応し、これら各点Pを時刻順に接続することにより、目標軌道103が得られる。なお、行動計画生成部65では、追い越し走行以外に、走行車線を変更する車線変更走行、走行車線を逸脱しないように車線を維持するレーンキープ走行、減速走行または加速走行等に対応した種々の行動計画が生成される。
【0045】
走行制御部66は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部65で生成された目標軌道103に沿って自車両が走行するように各アクチュエータACを制御する。例えば、単位時間Δt毎に図4の各点Pを自車両101が通過するように、スロットル用アクチュエータ、クラッチ用アクチュエータ、変速用アクチュエータ、ブレーキ用アクチュエータ、および操舵用アクチュエータをそれぞれ制御する。
【0046】
より具体的には、走行制御部66は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部65で生成された行動計画のうち、目標軌道103(図3)上の単位時間Δt毎の各点Pの車速に基づいて、単位時間Δt毎の加速度(目標加速度)を算出する。さらに、道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮してその目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群52により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部66は、内部センサ群52により取得されたドライバからの走行指令(アクセル開度等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
【0047】
例えば変速機1の制御に関し、走行制御部66は、予め記憶部62に記憶された変速動作の基準となるシフトマップを用いて、車速と要求駆動力とにより定まる目標変速段を設定する。そして、変速機1の変速段がこの目標変速段となるように、同期機構SYのスリーブSYbを駆動するための油圧力を制御する変速用アクチュエータ(制御弁)を制御する。
【0048】
ところで、例えば自動運転モードで走行中に変速機1に故障が生じたにも拘らず自動運転モードでの走行を継続すると、手動自動切換スイッチが操作されて自動運転モードから手動運転モードに切り換わった際に、ドライバの意図した挙動と車両101の実際の挙動とが異なり、ドライバが違和感を抱くおそれがある。例えば、前方車両102を追い越そうとして手動運転モードでアクセルペダルを踏み込んだにも拘らず、変速機1がドライバの操作に応じた所望の変速段にダウンシフトせずに、十分な加速感を得ることができないおそれがある。したがって、自動運転モードで走行中に変速機1に故障が生じた場合には、故障の態様をドライバに通知した上で、手動運転モードに早期に切り換えることが好ましい。この点を考慮し、本実施形態では、以下のように車両制御装置を構成する。
【0049】
図4は、本発明の実施形態に係る車両制御装置70の要部構成を示すブロック図である。この車両制御装置70は、車両101の走行動作を制御するための装置であり、図2の車両制御システム100の一部を構成する。図4に示すように、車両制御装置70は、コントローラ60と、コントローラ60にそれぞれ接続された内部センサ群52と、ディスプレイ53aと、スピーカ53bと、アクチュエータACとを有する。
【0050】
ディスプレイ53aとスピーカ53bとは、図2の入出力装置53の一部を構成する。アクチュエータACのうち、変速用アクチュエータAC1は、コントローラ60からの指令により、同期機構SYのスリーブSYbを駆動するための油圧力を制御する制御弁(ソレノイド弁)を含み、クラッチ用アクチュエータAC2は、クラッチ機構Cを断接するための油圧力を制御する制御弁(ソレノイド弁)を含む。
【0051】
内部センサ群52は、変速機1の同期機構SYのスリーブSYbの移動量を検出するストロークセンサ52aと、スリーブSYbの駆動用の油圧力を検出する圧力センサ52bと、変速機1の入力軸や出力軸等の回転軸の回転数を検出する回転数センサ52cとを有する。ストロークセンサ52aの検出値に基づいて、変速機1の所定の変速段が確立(インギヤ)しているか否かを判定できる。
【0052】
コントローラ60は、機能的構成として、故障判定部71と、フェールセーフ処理部72と、自動運転判定部73と、故障特定処理部74と、報知制御部75と、運転モード切換部76と、アクチュエータ制御部77と、を有する。これらは例えば図2の走行制御部66の一部を構成する。
【0053】
故障判定部71は、内部センサ群52からの信号に基づいて変速機1の故障の有無を判定する。例えばコントローラ60(アクチュエータ制御部77)が変速用アクチュエータAC1に制御信号を出力して変速機1の目標変速段への切換を指令したとき、変速機1が目標変速段に切り換わったか否かを、ストロークセンサ52aからの信号により判定する。そして、変速機1が目標変速段に切り換わっていないと判定すると、変速機1が故障していると判定する。圧力センサ52bによる検出値が異常である場合、および回転数センサ52cによる検出値が異常である場合も、変速機1が故障していると判定する。
【0054】
フェールセーフ処理部72は、車両101が自動運転モードで走行中に、故障判定部71で変速機1の異常が判定されたとき、内部センサ群52等からの信号に基づいて所定のフェールセーフ処理を実行する。例えば、目標変速段として4速段が設定されたときに、4速段に対応するいずれかのセンサ52a〜52cの出力の異常により変速機1の4速段への切換が不可能であるが、3速段への切換が可能である場合、フェールセーフ処理部72は、変速機1を4速段の代わりに3速段に切り換えるような変速指令を出力する。一方、変速機1の異常として、例えばコントローラ60(変速機制御用ECU等)に異常が生じた場合には、車両101を継続して走行させることが不可能であるため、フェールセーフ処理部72は、変速機1をニュートラルに切り換えるような変速指令を出力する。すなわち、変速機1の故障には、動作を制限しながらエンジン2からの動力による走行継続が可能な故障と、エンジン2からの動力による走行継続が不可能な故障とがあり、フェールセーフ処理部72は、変速機1の故障の態様に応じたフェールセーフ処理を実行する。なお、故障の態様に応じたフェールセーフ処理の内容は、予め記憶部62に記憶されている。
【0055】
自動運転判定部73は、車両101が自動運転モードで走行中に、故障判定部71で変速機1の異常が判定されたとき、内部センサ群52等からの信号に基づいて車両101が自動運転を継続できるか否かを判定する。より具体的には、フェールセーフ処理部72により、変速機1がニュートラル以外に切り換わるフェールセーフ処理が実行されるとき、自動運転判定部73は、自動運転(制限付きの自動運転)を継続できると判定する。一方、変速機1がニュートラルに切り換わるフェールセーフ処理が実行されるとき、自動運転判定部73は、自動運転を継続できないと判定する。
【0056】
故障特定処理部74は、自動運転判定部73により自動運転を継続できると判定されると、例えば変速機1を3速段に維持するフェールセーフ処理を継続しながら、変速機1の故障箇所を特定する処理(故障箇所特定処理)を実行する。すなわち、変速機1の故障がセンサ故障によるものか、制御弁故障によるものか、スリーブ損傷によるものか等、故障箇所を特定する処理を実行する。故障箇所特定処理は、予め定められた動作パターンに従い変速機1を強制的に動作させることにより行われる。このため、故障箇所特定処理には、クラッチ機構Cの切換や変速機1のスリーブSYbの駆動等を伴うことがある。すなわち、走行中に故障箇所特定処理を行うことが困難な場合があり、この場合には、停車中や駐車中に故障箇所特定処理を行うようにすればよい。
【0057】
故障箇所の特定は、例えば複数の制御弁(変速用アクチュエータAC1等)を順次作動させて、圧力センサ52bにより所定範囲の油圧が検出されるか否か、回転数センサ52cにより検出された回転数が所定範囲内である否か等を判定しながら行う。このため、故障箇所特定処理の開始から終了までには、所定時間(例えば数十秒程度)を要する。
【0058】
報知制御部75は、故障特定処理部74による故障箇所特定処理が終了すると、ディスプレイ53aおよびスピーカ53bに制御信号を出力し、特定された故障箇所の情報(故障情報)を表示および音声によりドライバに報知する。故障情報には、変速機1の動作制限の内容も含まれる。これによりドライバは、所定変速段(例えば4速段)が故障によって使用不能であることを認識できる。さらに報知制御部75は、故障情報として運転モードを手動運転モードへ強制的に切り換えることを、表示および音声により併せてドライバに報知する。
【0059】
運転モード切換部76は、報知制御部75によりドライバに対し故障情報を報知した後、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える。これにより自動運転機能が無効化され、以降、ドライバによるアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等の操作部材の操作に応じて車両101が手動運転で走行する。なお、故障情報が報知されてから所定時間の経過後、あるいはドライバによる操作部材の所定量以上の操作(オーバーライド)がなされたときに、運転モード切換部76が手動運転モードに切り換えるようにしてもよい。
【0060】
アクチュエータ制御部77は、行動計画に従い車両101が自動運転で走行するようにアクチュエータACを制御する。例えば、変速機1が正常(故障でない)のときは、変速段がシフトマップに従って定められる車速と要求駆動力とに応じた目標変速段となるように変速用アクチュエータAC1(制御弁)およびクラッチ用アクチュエータAC2(制御弁)に制御信号を出力する。故障判定部71により変速機1が故障していると判定され、かつ、自動運転判定部73により自動運転が継続可能と判定されると、フェールセーフ処理部72からの変速指令に従い変速段を走行可能な変速段(例えば3速段)に制御する。一方、自動運転判定部73により自動運転が継続可能と判定されると、フェールセーフ処理部72からの変速指令に従い変速機1をニュートラルに切り換えるとともに、車両101が自動運転で路肩等の安全地帯に退避走行するようにアクチュエータACを制御する。
【0061】
図5は、予め記憶されたプログラムに従い図4のコントローラ60のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば運転モードが自動運転モードに切り換えられると開始され、手動運転モードに切り換えられるまで所定時間(例えば数μ秒)毎に繰り返される。
【0062】
まず、ステップS1で、内部センサ群52からの信号に基づいて変速機1が故障したか否かを判定する。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、否定されると処理を終了する。ステップS2では、故障箇所に対応したフェールセーフ処理を実行する。これにより、例えば変速機1が所定変速段(例えば3速段)に切り換えられ、あるいはニュートラルに切り換えられる。次いでステップS3で、エンジン2の動力により車両101が走行を継続することが可能か否か、すなわちフェールセーフ処理により変速機1がニュートラル以外に切り換えられたか否かを判定する。ステップS3で否定されるとステップS4に進み、アクチュエータACに制御信号を出力して車両101を安全地帯に退避走行させる。
【0063】
一方、ステップS3で肯定されるとステップS5に進み、故障箇所特定処理を実行する。次いで、ステップS6で、故障箇所特定処理が終了したか否かを判定する。ステップS6で肯定されるとステップS7に進み、否定されると処理を終了する。ステップS7では、ディスプレイ53aおよびスピーカ53bに制御信号を出力して、ドライバに対し故障情報を報知する。すなわち、故障箇所特定処理で特定された故障箇所と、自動運転モードから手動運転モードへ運転モードを切り換えることとを含む故障情報を、ドライバに報知する。次いで、ステップS8で、運転モードを手動運転モードに切り換え、処理を終了する。
【0064】
図6は、本実施形態に係る車両制御装置70の動作の一例を示すタイムチャートである。図6に示すように、5速段にて自動運転モードで走行中であるときに、目標変速段として4速段が指令されたにも拘らず4速段への切換が不可能であるとき、時点t1で変速機1が故障していると判定するとともに、フェールセーフ処理により変速機1を3速段に制御する(ステップS2)。さらに、目的地に向けての自動運転モードでの走行を継続しながら、故障箇所特定処理を開始する(ステップS5)。なお、フェールセーフ処理により変速機1をニュートラルに制御するときは、車両101は自動運転で退避走行する(ステップS4)。
【0065】
時点t2で、故障箇所特定処理が終了すると、ディスプレイ53aとスピーカ53bとを介して故障情報をドライバに報知するとともに、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える(ステップS7、ステップS8)。以降、フェールセーフ処理により変速機1の4速段への切換が禁止されながら、車両101が手動運転モードで走行する。
【0066】
このように本実施形態では、変速機1が故障すると、故障箇所特定処理を行って故障箇所(故障原因)を特定し、故障箇所が特定されると、故障情報をドライバに報知した上で、運転モードを手動運転モードに自動的に切り換える。これにより、ドライバは故障箇所を認識した上で、手動運転で車両101を走行させることができる。したがって、ドライバの意図した車両101の挙動と実際の挙動とが異なることによりドライバが違和感を抱くことを防止できる。
【0067】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両制御装置70は、手動運転で走行する手動運転モードと、自動運転で走行する自動運転モードとに、運転モードを切換可能に構成された車両101を制御するものであり、変速機1の故障の有無を判定する故障判定部71と、エンジン2の動力による車両101の自動運転モードでの走行を継続することが可能か否かを判定する自動運転判定部73と、故障判定部71により変速機1が故障していると判定され、かつ、自動運転判定部73により自動運転モードでの走行継続が可能と判定されると、車両101の故障個所を特定する処理を実行する故障特定処理部74と、故障特定処理部74による故障箇所の特定が終了すると、特定された故障箇所の情報を含む故障情報をディスプレイ53aとスピーカ53bとを介してドライバに報知する報知制御部75と、報知制御部75により故障情報が報知された後、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える運転モード切換部76と、を備える(図4)。
【0068】
この構成により、変速機1が故障したとき、自動運転モードでの走行を継続可能であっても、故障情報をドライバに報知した後に、運転モードが手動運転モードに切り換えられる。このため、ドライバが変速機1の故障態様を認識した上で、手動運転モードで車両101が走行されるため、ドライバの意図した車両101の挙動と実際の挙動とが異なることにより、手動運転モード時にドライバが違和感を抱くことを防止できる。
【0069】
(2)車両制御装置70は、運転モードが自動運転モードに切り換えられた状態で、行動計画に従い車両101が自動運転で走行するようにアクチュエータACを制御するアクチュエータ制御部77をさらに備える(図4)。アクチュエータ制御部77は、故障判定部71により変速機1が故障していると判定されると、変速機1をエンジン2の動力による車両101の走行が可能な所定状態(例えば3速段固定)に制御し、故障特定処理部74は、アクチュエータ制御部77により変速機1が所定状態に制御された状態で、車両101の故障箇所を特定する処理を実行する。これにより、故障箇所が特定されるまで自動運転が継続されるため、故障箇所特定処理を行っている最中に、ドライバが意図した駆動力を得られないと感じることを防ぐことができる。
【0070】
(3)アクチュエータ制御部77は、自動運転判定部73によりエンジン2の動力による車両101の自動運転モードでの走行継続が不可能と判定されると、車両101が退避走行するようにアクチュエータACを制御する。これにより、変速機1の故障により自動運転モードでの走行が不可能な場合には、車両101を速やかに安全地帯に退避させることができる。
【0071】
上記実施形態は種々の形態に変更することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態は、故障判定部71により変速機1の故障の有無を判定するとともに、故障特定処理部74での故障特定処理により変速機1の故障箇所を特定し、ドライバに故障情報を報知するようにした。すなわち、エンジン2に接続された変速機1の故障を対象としたが、本発明は、変速機1以外の故障に対しても同様に適用することができる。したがって、車両101の故障の有無を判定するように構成されるのであれば、故障判定部の構成はいかなるものでもよい。また、故障判定部により車両が故障していると判定され、かつ、自動運転判定部により自動運転モードでの走行が可能と判定されると、車両の故障個所を特定する処理を実行するのであれば、故障特定処理部の構成もいかなるものでもよい。上記実施形態では、走行駆動源としてエンジン2を用いたが、モータ等、エンジン以外を用いてもよい。
【0072】
上記実施形態では、報知制御部75がディスプレイ53aとスピーカ53bとを介してドライバに対し故障情報を報知するようにしたが、故障特定処理部による故障箇所の特定が終了すると、特定された故障箇所の情報を含む故障情報をドライバに報知するのであれば、報知部の構成はいかなるものでもよい。例えば、運転席シートを手動運転モードに適した位置に移動させて、故障情報が発生されたことを報知するようにしてもよい。上記実施形態では、運転モード切換部76が、ドライバに故障情報が報知された直後に自動運転モードから手動運転モードに切り換えるようにしたが、故障情報の報知後の手動自動切換スイッチの操作を条件として手動運転モードに切り換えるようにしてもよい。すなわち、故障情報の報知を、運転モードを切り換えるための1つの条件としてもよく、運転モード切換部の構成は成就したものに限らない。
【0073】
上記実施形態では、デュアルクラッチ式の変速機1を用いたが、本発明の車両制御装置は、種々のタイプの変速機に対し同様に適用することができる。
【0074】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 変速機、2 エンジン、52 内部センサ群、53a ディスプレイ、53b スピーカ、60 コントローラ、70 車両制御装置、71 故障判定部、72 フェールセーフ処理部、73 自動運転判定部、74 故障特定処理部、75 報知制御部、76 運転モード切換部、77 アクチュエータ制御部、101 車両、AC アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6