(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982567
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ミネラルファイバー
(51)【国際特許分類】
C03C 13/06 20060101AFI20211206BHJP
C03B 5/235 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
C03C13/06
C03B5/235
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-517151(P2018-517151)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公表番号】特表2018-531204(P2018-531204A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】FR2016052582
(87)【国際公開番号】WO2017060637
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】1559582
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン−ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エリソン
【審査官】
有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−188427(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/171562(WO,A1)
【文献】
特開昭49−017810(JP,A)
【文献】
特開昭51−082027(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02152026(GB,A)
【文献】
特表2003−535970(JP,A)
【文献】
特表2002−512937(JP,A)
【文献】
特表2015−506901(JP,A)
【文献】
Teresa Buczek−Karczewska,MICROSTRUCTURE OF MINERAL FIBRE OF THE SiO2−Al2O3−FexOy−CaO−MgO−R2O SYSTEM,POLISH JOURNAL OF APPLIED CHEMISTRY,1995年,XXXIX,z.2,p.181−185,ISSN:0867−8928
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/0−14/00
C03B 5/235
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%として下記の成分を含む、化学組成を有するミネラルファイバー:
SiO2 30%〜50%、
Al2O3 10%〜20%、
CaO+MgO 25.5%〜31%、
Na2O+K2O 1%〜10%、
ここで、前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した総鉄含有分が5%〜12%であり、かつFe2O3として表現した第一鉄含有分と、Fe2O3として表現した総鉄含有分との重量比に相当するレドックスが、0.6未満、好ましくは0.5未満であることを特徴とする。
【請求項2】
重量%として下記の成分を含む、化学組成を有するミネラルファイバー:
SiO2 30%〜50%、
Al2O3 10%〜20%、
CaO+MgO 25.5%〜35%、
Na2O+K2O 3.5%〜10%、
ここで、前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した総鉄含有分が5%〜12%であり、かつFe2O3として表現した第一鉄含有分と、Fe2O3として表現した総鉄含有分との重量比に相当するレドックスが、0.6未満、好ましくは0.5未満であることを特徴とする。
【請求項3】
重量%として下記の成分を含む、化学組成を有するミネラルファイバー:
SiO2 30%〜50%、
Al2O3 10%〜20%、
CaO+MgO 25.5%〜35%、
Na2O+K2O 1%〜10%、
TiO2 0.1〜3%、
ここで、前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した総鉄含有分が5%〜12%であり、かつFe2O3として表現した第一鉄含有分と、Fe2O3として表現した総鉄含有分との重量比に相当するレドックスが、0.6未満、好ましくは0.5未満であることを特徴とする。
【請求項4】
前記ミネラルファイバーは、レドックスが、0.4未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項5】
前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した第二鉄含有分と、Fe2O3として表現した総鉄含有分との重量比が、0.4を超え、好ましくは0.5を超え、より好ましくは0.6を超えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項6】
前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した総鉄含有分が7%〜12%であり、好ましくは8%〜12%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項7】
前記ミネラルファイバーは、13%〜17%のAl2O3含有分を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項8】
前記ミネラルファイバーは、3.5%〜6%のNa2O+K2O含有分を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項9】
前記ミネラルファイバーは、12%〜18%のCaO含有分を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項10】
前記ミネラルファイバーは、7.5%〜13%のMgO含有分を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項11】
前記ミネラルファイバーは、重量%として下記の成分を含む、化学組成を有することを特徴とする、請求項3〜10のいずれか一項に記載のミネラルファイバー:
SiO2 35%〜45%、
Al2O3 13%〜20%、
CaO+MgO 25.5%〜33%、
Na2O+K2O 1%〜6%、好ましくは3.5〜6%、
TiO2 0.1〜3%、
総鉄含有分(Fe2O3)7〜12%。
【請求項12】
前記ミネラルファイバーは、重量%として下記の成分を含む、化学組成を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のミネラルファイバー:
SiO2 38%〜44%、
Al2O3 13%〜17%、
CaO+MgO 25.5%〜31%、
Na2O+K2O 3.5〜6%、
TiO2 0.5〜2.5%、
総鉄含有分(Fe2O3)8〜12%。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のミネラルファイバーの製造方法であって、前記ミネラルファイバーの化学組成と実質的に同一の化学組成を有するバッチ混合物を溶融する工程、次いで繊維化する工程を含む、方法。
【請求項14】
前記バッチ混合物は、スラグを含まないことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融工程は、浸漬バーナ炉において行われることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のミネラルファイバーを含む、断熱及び/又は防音製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工ミネラルファイバーの分野に関する。より詳細には、断熱材料及び/又は防音材料を製造することを目的とするミネラルファイバーを対象とする。より詳細には、ロックファイバタイプのガラス状ミネラルファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の絶縁用途では、ミネラルファイバーは可視状態となることがある。これは、例えば、地下駐車場などの非加熱建造物内の底床の断熱及び防音のために特に使用される、ミネラルファイバー及び1種以上のバインダの混合物の形態で適用される、スプレー可能ウールの場合である。そのような用途では、スプレー可能ウールの審美的品質を保証するためにミネラルファイバーが薄く、かつ均一な色を有することが通例である。
【0003】
スラグウールのミネラルファイバーは、その名のとおり、大部分が高炉スラグから形成された原料から得られる。このミネラルファイバーは結果として、低鉄含有分、典型的には1%未満の低鉄含有分を含み、そして多量の石灰を含む。このスラグの割合が高いため、着色がほとんどない繊維を得ることができる。したがって、スラグウールはスプレー可能ウールなどのミネラルファイバーが可視状態となる場合がある用途に広く使用されている。それにもかかわらず、多量のスラグの使用は、原料溶融工程中にSOxの放出を含むフライアッシュを生じさせる。このフライアッシュは、工業用排出物の衛生上及び/又は環境上の安全性を保証するために処理されなければならず、追加の生産コストをもたらす。
【0004】
さらに、全ての人工ミネラルファイバーに関して、生体溶解性は、スプレー可能ウールに使用されるミネラルファイバーの選択のための重要な基準である。ミネラルファイバーは、生理学的媒体中で急速に溶解することができるべきであり、それにより、吸入により身体内で最微細繊維が蓄積しうることに関連するあらゆる潜在的病原リスクを防ぐことができる。
【0005】
耐火性の改善も、建築物の断熱及び/又は防音の関係において重要な基準であり、益々厳しい規制が課せられている。ミネラルファイバーの組成物中の鉄の含有分を増加させて、その耐火性を向上させることが知られている。しかしながら、鉄含有分の増加は、ミネラルファイバーを着色する傾向があり、特にミネラルファイバーが可視状態を保つ用途には望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スプレー可能ウール用途に限定するわけではないが、特にこの用途においてミネラルウール製品を形成するために使用することができるミネラルファイバーの耐火性を、その着色を制限しながら改善することを提案する。我々は、ミネラルファイバーの酸化還元の程度を制御することによってこの妥協点に到達することが可能であることを観察した。本発明の別の目的は、良好な生体溶解性を有するミネラルファイバーを提案することである。本発明の別の目的は、ミネラルファイバーの製造中のSOx排出を最少化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、重量%として下記の成分:
SiO
2 30%〜50%、
Al
2O
3 10%〜20%、
CaO+MgO 20%〜35%、
Na
2O+K
2O 1%〜10%、
を含む化学組成を有するミネラルファイバーにおいて、
前記ミネラルファイバーは、Fe
2O
3として表現した総鉄含有分が5%〜15%であり、かつFe
2O
3として表現した第一鉄含有分と、Fe
2O
3として表現した総鉄含有分との重量比に相当するレドックスが、0.6未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満であることを特徴とする、ミネラルファイバーに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書全体を通して、含有分は、重量%として表される。
【0009】
シリカ(SiO
2)の含有分は、有利には35%〜45%、より特定的には38%〜44%に及ぶ範囲内にある。
【0010】
アルミナ(Al
2O
3)の含有分は、有利には13%〜17%に及ぶ範囲内にある。
【0011】
石灰(CaO)の含有分は、好ましくは、5%から、又はさらには10%から、12%から又は15%から、25%まで、又はさらには20%まで又は18%までであり、特に10%〜20%又は12%〜18%に及ぶ範囲内にある。マグネシア(MgO)の含有分は、好ましくは、5%から、又はさらには7%から、7.5%から又は8%から、25%まで、又はさらには20%まで、15%まで又は13%までであり、特に5%〜15%、7.5%〜15%又は8%〜13%に及ぶ範囲内にある。石灰及びマグネシアの含有分の合計は、好ましくは、25%から、又はさらには25.5%から又は27.5%から、33%まで、又はさらには32%まで又は31%まで、特に25.5%〜32%又は27.5%〜31%に及ぶ範囲内にある。
【0012】
好ましくは、酸化バリウム(BaO)の含有分は1%以下、特に0.5%以下、又はさらには0.1%以下である。酸化マンガン(MnO)の含有分は1%以下、特に0.05%〜0.5%、又はさらには0.1%〜0.3%に及ぶ範囲内にある。酸化ストロンチウム(SrO)の含有分は、好ましくは1%以下、又はさらには0.5%以下、さらには0.1%以下、又はさらには0である。
【0013】
アルカリ金属酸化物(ソーダ及びカリ−Na
2O+K
2O)の総含有分は、好ましくは2%から、又はさらには3.5%から、6%まで、又はさらには5%までに及ぶ範囲内にある。Na
2Oの含有分は有利には6%以下、特に0.1%から、又はさらには1%から、5%まで、又はさらには4%までに及ぶ範囲内にある。K
2Oの含有分は有利には6%以下、特に0.1%から、又はさらには0.5%から、5%まで、又はさらには3%までに及ぶ範囲内にある。ミネラルウールは、好ましくは、Na
2O及びK
2O以外のアルカリ金属酸化物を含まない。それでも、特定の長石に不純物として時折存在する少量のLi
2Oを含んでよい。
【0014】
酸化チタン(TiO
2)は、ガラスマトリックスにおけるスピネルの高温及び低温核形成に非常に顕著な効果を与える。TiO
2の含有分は、好ましくは0.1%〜3%、特に0.5%〜2.5%に及ぶ範囲内にある。
【0015】
酸化鉄(Fe
2O
3)はミネラルファイバーの耐火性に正の効果を与える。その総含有分(鉄が第一鉄の形態であるか又は第二鉄の形態であるかにかかわらず、Fe
2O
3の形態として表現して)は、好ましくは少なくとも7%又はさらには8%であり、かつ/又は、最大で13%又は12%である。Fe
2O
3として表現した第一鉄(Fe
2+)含有分と、Fe
2O
3として表現した総鉄含有分との重量比に相当するレドックスは、好ましくは0.1%〜0.5%に及ぶ範囲内にある。Fe
2O
3として表現した第二鉄(Fe
3+)含有分の、Fe
2O
3として表現した総鉄含有分に対する重量比は、好ましくは0.4を超え、特に0.5を超え、又はさらには0.6を超える。低レドックスのさらなる利点の1つは、溶融タンク内での鋳鉄の形成を回避することであり、これはプロセスの安全条件及び効率を改善することを可能にする。プロセスが鋳鉄を生じる際に必要となる溶融タンクを空にする操作は、実際に危険であり、そして生産を停止する必要がある。
【0016】
本発明によるミネラルウールの組成物はまた、中性pHでの生体溶解性を増加させるために、特に0〜3%、又はさらには0〜1.2%の含有分でP
2O
5を含むことができる。
【0017】
言うまでもなく、上述した様々な好ましい範囲は互いに自由に組み合わせることができ、簡潔のために様々な組み合わせのすべてを列挙することができない。
【0018】
いくつかの好ましい組み合わせを以下に記載する。
【0019】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明によるミネラルファイバーは、重量%として以下の成分:
SiO
2 35%〜45%、
Al
2O
3 13%〜20%、
CaO+MgO 25%〜33%、好ましくは25.5%〜33%、
Na
2O+K
2O 1%〜6%、好ましくは3.5%〜6%、
TiO
2 0.1%〜3%、
を含む化学組成を有し、前記ミネラルファイバーは、Fe
2O
3として表現した総鉄含有分が7%〜13%であり、そして、レドックスが0.6未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満であることを特徴とする。
【0020】
この範囲は、欧州指令97/67/ECによる生体溶解性組成物を包含するので特に好ましい。
【0021】
1つの特に好ましい実施形態によれば、本発明によるミネラルファイバーは、重量%として以下の成分:
SiO
2 38%〜44%、
Al
2O
3 13%〜17%、
CaO+MgO 25%〜31%、好ましくは25.5%〜31%、
Na
2O+K
2O 2%〜6%、好ましくは3.5%〜6%、
TiO
2 0.5%〜2.5%、
を含む化学組成を有し、前記ミネラルファイバーは、Fe
2O
3として表現した総鉄含有分が8%〜12%であり、そして、レドックスが0.6未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満であることを特徴とする。
【0022】
本発明の別の主題は、本発明によるミネラルファイバーを得るための方法であって、前記ミネラルファイバーの化学組成と実質的に同一の化学組成を有するバッチ混合物を溶融する工程、次いで、繊維化する工程、特に外部遠心プロセスによって繊維化する工程を含む、方法である。
【0023】
溶融工程は、主要部分の岩石、例えば60%を超え、特に70%を超え、又はさらには80%を超え又は90%を超える岩石を含むバッチ混合物から溶融浴を得ることを可能にする。岩石は、例えば、玄武岩、長石、輝縁岩、かんらん岩、輝石、アパタイト、ボーキサイト、ドロマイト、鉄鉱石、石灰石、ルチル、マグネサイト、マグネタイト及びブルーサイトから所望の組成の関数として選択することができる。
【0024】
バッチ混合物は非主要割合のスラグ、例えば40%未満、特に30%未満、又はさらには20%未満又は10%未満のスラグを含むことができる。バッチ材料の溶融の間の望ましくない残留ガスの放出を避けるために、有利にはスラグを含まない。
【0025】
ミネラルファイバーの製造に使用される岩石ベースの原料の溶融は、従来的には、コークス燃焼キュポラ型炉で行われている。これらの溶融条件は還元環境を作り出す。我々は、逆に、酸化条件(すなわち、溶融浴のレドックスが0.6未満になるような条件)下での岩石ベースのバッチ混合物の溶融は、混合物中の比較的に多量の鉄の存在にもかかわらず、あまり着色されていないミネラルファイバーを得ることを可能にすることを観察した。
【0026】
溶融工程は、様々な公知の方法で、特に燃料燃焼炉での溶融又は電気溶融によって実施することができる。
【0027】
電気炉において、バッチ混合物は溶融浴中に浸漬された電極を用いたジュール効果によって溶融され、火炎などの他の加熱手段の使用を排除している。電極は、上方から溶融浴中に落下するように吊るされてもよく、又は別には、タンクの側壁に設置されてもよい。一番目の選択肢は、可能な限りガラス浴の加熱を分配するために大型タンクとすることが、一般的に好ましい。電極は、好ましくは、モリブデンから作られ、又はさらには、場合によって酸化スズから作られる。
【0028】
燃料燃焼炉は、少なくとも1つのオーバーヘッドバーナ又は浸漬バーナを含む。オーバーヘッドバーナを備えた炉では、火炎は溶融浴の上方に配置され、放射によって溶融浴を加熱する。浸漬バーナを備えた炉では、火炎が溶融浴内に直接形成され、より効率的なエネルギー交換が可能になる。このバーナ又は各バーナは、空気/燃料又は酸素/燃料混合物によって供給され、天然ガス又は燃料油などの様々な燃料を使用することができる。
【0029】
溶融工程はまた、例えばバッチ混合物の溶融を促進するために使用される、側壁内の電極をも備えた燃料燃焼炉を使用することにより、火炎溶融及び電気溶融の両方で行うこともできる。
【0030】
上記の炉は、多かれ少なかれ酸化溶融条件を作り出すことを可能にする。しかしながら、必要であれば、溶融浴のレドックスを調節することが可能である。この方法は、バッチミックスを含む組成物を、好ましくは浸漬バーナ炉中で連続的に溶融させることを含む。本発明に適した浸漬バーナ炉は、例えば、出願WO2013/186480、WO2013/132184及びWO2013/117851に記載されており、それらの出願は参照により本出願中に取り込まれる。浸漬バーナは、バッチ材料を加熱しかつ組成物を均質化するという二重の役割を有する。原材料は、その炉に導入される前に、粉砕又は微細化されてもよい。しかしながら、浸漬バーナの有効性のために、その炉には、比較的粗い粒度の天然原料を供給することもできる。炉は、好ましくは露出金属壁、すなわち耐火材料により保護されていない壁を備え、これを通して内部ダクトのシステムが通過し、このダクト内に冷却剤、例えば水が循環される。ウォータージャケット炉と呼ばれるこのタイプの炉では、多少の失透した材料の固体層が、液体浴と冷却された壁との間の界面に形成し、摩耗及び酸化から壁を保護する。炉は、好ましくは直列の2つのタンクを含む。溶融タンクと呼ばれる第一のタンクは、バッチ材料インレットと、液体浴が得られるまでバッチ材料を加熱することができる複数の浸漬バーナと、液体浴アウトレットとを含むウォータージャケット型タンクである。第一のタンクのインレットは、有利には、WO2013/132184に記載されているようなバッチチャージャーが設けられている。加熱タンクと呼ばれる第二のタンクもウォータージャケット型タンクであり、少なくとも1つの浸漬バーナを備えている。第二のタンクは、繊維化操作を可能にするのに十分な温度で液体浴を加熱することを可能にする。
【0031】
繊維化工程は、好ましくは、例えば、出願EP0465310又はEP0439385に記載されているように、分配装置によって溶融材料が供給される紡糸ホイールのカスケードを使用する外部遠心によって実施され、上記出願は参照により本出願中に取り込まれる。
【0032】
得られた繊維は、吹き付け可能ウール又はスプレー可能ウールの用途のために、緩くパッケージ又は梱包されることができる。その場合、ミネラルファイバーは、その適用の間にバインダと組み合わされる。得られた繊維はその表面にスプレーされた結合性化合物を用いて結合され、その後に、受け取られそして成形されて、ロール又はパネルなどの様々なミネラルウール製品を提供することもできる。
【0033】
本発明の別の主題は、本発明によるミネラルファイバーを含む断熱及び/又は絶縁製品である。そのような製品は、特に、すぐに使用できるスプレー可能な混合物の形態であることができる。絶縁製品はまた、ロール又はパネルの形態であってもよい。このような製品は、絶縁製品、より特定的には、ミネラルファイバーが可視状態を保つ用途に特に適しているが、これに限定されるものではない。それは、例えば、建物、産業又は輸送手段、特に鉄道又は海洋輸送において使用することができる。より一般的には、本発明による製品は、サービス産業であろうと、住宅(複数ユニット又は個別)であろうと、あらゆるタイプの建物を断熱し又は防音するために使用されうる。それは、例えば、木材フレームハウスを絶縁するための外部絶縁システム、サンドイッチパネル、換気ダクトなどに使用することができる。
【0034】
本発明によるミネラルファイバーは、弱い着色性を保持しながら、特にスプレー用途に従来から使用されているスラグウールと比較して改善された耐火性を有する。本発明による好ましい繊維はさらに、有利な生体溶解性を有する。最後に、本発明による繊維の製造に用いられるスラグの量を減少させること、又はさらには、スラグが存在しないことにより、原材料の溶融によるSOx排出を著しく減少させることができ、同時に、これらの排出に関連した健康及び/又は環境リスク及び治療のコストを低減する。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、本発明を非限定的に例示するものである。
【0036】
玄武岩、ボーキサイト、輝縁岩、ドロマイトをベースとし、そしてスラグを含まないバッチ混合物を浸漬バーナ炉で溶融した。溶融浴を、外部遠心によって繊維化して、重量%として以下の成分を含む化学組成を有し、かつレドックスが0.38であるミネラルファイバーを得た:
SiO
2 39.7%、
Al
2O
3 15.3%、
CaO 17.5%、
MgO 10.6%、
Fe
2O
3 10.4%、
Na
2O 3.05%、
K
2O 0.92%、
TiO
2 1.69%、
P
2O
3 0.32%、
MnO 0.15%、
SrO 0.04%。
【0037】
得られた繊維は薄く、均一な着色を有し、また、耐火性が良好である。
本発明の態様として、以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
重量%として下記の成分を含む、化学組成を有するミネラルファイバー:
SiO2 30%〜50%、
Al2O3 10%〜20%、
CaO+MgO 20%〜35%、
Na2O+K2O 1%〜10%、
ここで、前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した総鉄含有分が5%〜15%であり、かつFe2O3として表現した第一鉄含有分と、Fe2O3として表現した総鉄含有分との重量比に相当するレドックスが、0.6未満、好ましくは0.5未満であることを特徴とする。
《態様2》
前記ミネラルファイバーは、レドックスが、0.4未満であることを特徴とする、態様1記載のミネラルファイバー。
《態様3》
前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した第二鉄含有分と、Fe2O3として表現した総鉄含有分との重量比が、0.4を超え、好ましくは0.5を超え、より好ましくは0.6を超えることを特徴とする、態様1及び2のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様4》
前記ミネラルファイバーは、Fe2O3として表現した総鉄含有分が7%〜13%であり、好ましくは8%〜12%であることを特徴とする、態様1〜3のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様5》
前記ミネラルファイバーは、13%〜17%のAl2O3含有分を有することを特徴とする、態様1〜4のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様6》
前記ミネラルファイバーは、25.5%〜35%のCaO+MgO含有分を有することを特徴とする、態様1〜5のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様7》
前記ミネラルファイバーは、12%〜18%のCaO+MgO含有分を有することを特徴とする、態様1〜6のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様8》
前記ミネラルファイバーは、3.5%〜6%のNa2O+K2O含有分を有することを特徴とする、態様1〜7のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様9》
前記ミネラルファイバーは、12%〜18%のCaO含有分を有することを特徴とする、態様1〜8のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様10》
前記ミネラルファイバーは、7.5%〜13%のMgO含有分を有することを特徴とする、態様1〜9のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
《態様11》
態様1〜10のいずれか一項に記載のミネラルファイバーの製造方法であって、前記ミネラルファイバーの化学組成と実質的に同一の化学組成を有するバッチ混合物を溶融する工程、次いで繊維化する工程を含む、方法。
《態様12》
前記バッチ混合物は、スラグを含まないことを特徴とする、態様11記載の方法。
《態様13》
前記溶融工程は、浸漬バーナ炉において行われることを特徴とする、態様11及び12のいずれか一項に記載の方法。
《態様14》
態様1〜10のいずれか一項に記載のミネラルファイバーを含む、断熱及び/又は防音製品。