特許第6982574号(P6982574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982574ErbB3に特異的に結合する抗体、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982574
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ErbB3に特異的に結合する抗体、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20211206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211206BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20211206BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   C12N15/13
   C12P21/08
【請求項の数】5
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-542089(P2018-542089)
(86)(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公表番号】特表2018-536026(P2018-536026A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】KR2016012545
(87)【国際公開番号】WO2017099362
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年4月26日
【審判番号】不服2020-3776(P2020-3776/J1)
【審判請求日】2020年3月19日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0173281
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518148227
【氏名又は名称】アイエスユー アブクシス カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バエ,ドン ゴー
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ヨン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ミ リム
【合議体】
【審判長】 長井 啓子
【審判官】 松岡 徹
【審判官】 高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−530215(JP,A)
【文献】 特表2013−537546(JP,A)
【文献】 特表2013−523166(JP,A)
【文献】 特表2010−518820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12N 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖相補性決定領域(CDR−H)及び軽鎖相補性決定領域(CDR−L)を含む、ErbB3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が以下:
(1)配列番号61の配列を有するCDR−H1、配列番号69の配列を有するCDR−H2、配列番号78の配列を有するCDR−H3、配列番号86の配列を有するCDR−L1、配列番号88の配列を有するCDR−L2、配列番号94の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
(2)配列番号61の配列を有するCDR−H1、配列番号70の配列を有するCDR−H2、配列番号78の配列を有するCDR−H3、配列番号86の配列を有するCDR−L1、配列番号88の配列を有するCDR−L2、配列番号95の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
(3)配列番号61の配列を有するCDR−H1、配列番号73の配列を有するCDR−H2、配列番号78の配列を有するCDR−H3、配列番号86の配列を有するCDR−L1、配列番号88の配列を有するCDR−L2、配列番号94の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
(4)配列番号61の配列を有するCDR−H1、配列番号74の配列を有するCDR−H2、配列番号79の配列を有するCDR−H3、配列番号87の配列を有するCDR−L1、配列番号89の配列を有するCDR−L2、配列番号94の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
(5)配列番号61の配列を有するCDR−H1、配列番号76の配列を有するCDR−H2、配列番号81の配列を有するCDR−H3、配列番号86の配列を有するCDR−L1、配列番号92の配列を有するCDR−L2、配列番号100の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
(6)配列番号63の配列を有するCDR−H1、配列番号76の配列を有するCDR−H2、配列番号81の配列を有するCDR−H3、配列番号86の配列を有するCDR−L1、配列番号92の配列を有するCDR−L2、配列番号100の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
(7)配列番号66の配列を有するCDR−H1、配列番号76の配列を有するCDR−H2、配列番号81の配列を有するCDR−H3、配列番号86の配列を有するCDR−L1、配列番号92の配列を有するCDR−L2、配列番号100の配列を有するCDR−L3を含む抗体;
からなる群から選択される、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記重鎖相補性決定領域(CDR−H)を含む重鎖可変領域は、配列番号1、2、5、12、17、19、及び22からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記軽鎖相補性決定領域(CDR−L)を含む軽鎖可変領域は、配列番号31、32、35、42、47、49、及び52からなる群から選択されたアミノ酸配列をむことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片は、ErbB3タンパク質とヘレグリン(HRG)との結合、rbB2タンパク質とErbB3タンパク質との二量体形成、ErbB3またはAktのリン酸化、またはそれらの組み合わせを阻害することを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMであるか、
前記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であるか、
前記抗原結合断片は、scFv、(scFv)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、またはそれらの組み合わせであるか、あるいは
前記抗体またはその抗原結合断片は、接合、結合、糖化、タグ付着、またはそれらの組み合わせによって修飾されたものであることを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受容体チロシンキナーゼErbB−3(ErbB3:receptor tyrosine kinase erbB−3)タンパク質に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、それを製造する方法、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(EGFRまたはErbB:epidermal growth factor receptor)ファミリは、受容体チロシンキナーゼとして、上皮成長因子受容体(EGFR:epidermal growth factor receptor)とも知られているErbB1、ヒト上皮成長因子受容体(HER:human epidermal growth factor receptor)2とも知られているErbB2、HER3とも知られているErbB3、及びHER4とも知られているErbB4を含む。ErbBファミリは、リガンドとの結合により、ホモ二量体またはヘテロ二量体を形成し、マイトゲン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MAP2K、MEK、またはMAPKK:mitogen-activated protein kinase kinase)/マイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK:mitogen-activated protein kinase)信号伝逹経路、またはホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K:phosphoinositide 3−kinase)/タンパク質キナーゼB(PKBまたはAkt:protein kinase B)信号伝逹経路を活性化させることができる。ErbBファミリのタンパク質は、癌の発生、進行または予後と係わると報告されている。
【0003】
ErbB1を阻害する薬物として、エルビタックス(登録商標)(成分名:セツキシマブ(cetuximab))またはタルセバ(登録商標)(成分名:エルロチニブ(erlotinib))、及びErbB2を阻害する薬物として、ハーセプチン(登録商標)(成分名:トラスツズマブ(trastuzumab))またはタイケルブ(登録商標)(成分名:ラパチニブ(lapatinib))が抗癌剤として開発されて市販中である。しかし、それら抗癌剤に対する無反応患者群が多く、耐性を伴う問題がある。ErbB3またはErbB4を特異的に阻害する抗体は、まだ市販されていない。
【0004】
従って、癌の遺伝的多様性と、抗癌剤の耐性を克服することができる新たな抗癌剤を開発することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ErbB3に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片を提供する。
【0006】
ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病予防用または疾病治療用の薬学的組成物を提供する。
【0007】
個体のErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病を予防または治療する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一様相は、配列番号61ないし85、及び102からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、配列番号86ないし101、及び103からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、または前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域を含むErbB3に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一様相によるErbB3に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片及びその用途によれば、ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病を効果的に予防または治療するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】リード抗体、及びそこから変形された抗体の可変領域のアミノ酸配列及びCDRを示す図面である(重鎖)。
図1B】リード抗体、及びそこから変形された抗体の可変領域のアミノ酸配列及びCDRを示す図面である(軽鎖)。
図2】抗ErbB3抗体の存在下、ErbB3タンパク質とHRGとの結合率(%)を示すグラフである。
図3】抗ErbB3抗体の存在下、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との結合率(%)を示すグラフである。
図4A】抗ErbB3抗体の存在下、ErbB3リン酸化の比率(%)を示すグラフである。
図4B】抗ErbB3抗体の存在下、Aktリン酸化の比率(%)を示すグラフである。
図5】抗ErbB3抗体の存在下、BxPC3膵臓癌細胞の増殖率(%)を示すグラフである。
図6】BT474乳房癌異種移植モデルにおいて、抗ErbB3抗体の投与による腫瘍体積(mm)を示すグラフである。
図7】MDA−MB−468乳房癌異種移植モデルにおいて、抗ErbB3抗体の投与による腫瘍体積(mm)を示すグラフである。
図8】A431皮膚癌異種移植モデルにおいて、抗ErbB3抗体の投与による腫瘍体積(mm)を示すグラフである。
図9】FaDu頭頚部癌異種移植モデルにおいて、抗ErbB3抗体の投与、または抗ErbB3抗体とセツキシマブとの併用投与による腫瘍体積(mm)を示すグラフである。
図10】乳房癌細胞において、パクリタキセル、HRG及び抗ErbB3抗体の組み合わせ投与時、カスパーゼ3/7活性(RLU:相対的蛍光単位)を示すグラフである。
図11】結腸直腸癌細胞において、セツキシマブ、HRG及び抗ErbB3抗体の組み合わせ投与時、癌細胞増殖率(%)を示すグラフである。
図12】セツキシマブ耐性−異種移植モデルにおいて、セツキシマブ及び抗ErbB3抗体の組み合わせ投与による腫瘍体積(mm)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願は、韓国特許庁に、2015年12月7日付けで出願された韓国特許出願番号第10−2015−0173281に対して優先権を主張し、そこに記載された事項は、参照として、それ全体が本明細書に導入される。
【0012】
添付された図面に例示された具体的な具体例に係わる参照は、詳細になされ、図面上で同一符号で表示された構成要素は、全体として、同一構成要素を意味する。この点において、具体的な本具体例は、異なる形態を有することができ、以下で開示される記載に限定されるものであると解釈されるものではない。従って、具体的な具体例は、ただ、本明細書の様相について説明するために、図面を参照することによって、以下に記載される。以下の実施例において、用語「及び/または」は、1以上の関連した列挙事項の任意の組み合わせ、及びすべての組み合わせを含む。「少なくとも一つ」のような表現が構成要素リストの前に記載される場合、構成要素全体リストに係わるものであり、リストの個別的な構成要素に係わるものではない。
【0013】
一様相は、配列番号61ないし85、及び102からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、配列番号86ないし101、及び103からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域を含むErbB3に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片を提供する。
【0014】
前記重鎖(heavy chain)は、5種(γ、δ、α、μ、ε)があり、重鎖が抗体の種類を決定する。αとγは、450個のアミノ酸、μとεは、550個のアミノ酸から構成されている。該重鎖は、2つの領域、すなわち、可変領域と不変領域とがある。
【0015】
前記軽鎖(light chain)は、λ、κの2種があり、およそ211個ないし217個のアミノ酸から構成されている。ヒト抗体それぞれには、いずれも同一に、1種の鎖しか存在しない。該軽鎖は、不変領域と可変領域とが連続的になっている。
【0016】
前記可変領域(variable region)は、抗体において抗原が結合する領域をいう。
【0017】
前記重鎖可変領域は、配列番号61ないし68からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)−H1、配列番号69ないし77、及び102からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−H2、及び配列番号78ないし85からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−H3を含んでもよい。例えば、前記重鎖可変領域は、配列番号1ないし30からなる群から選択されたアミノ酸配列を含んでもよい。用語「相補性決定領域(CDR:complementarity-determining region:CDR)」は、抗体の可変部位において、抗原との結合特異性を付与する部位をいう。
【0018】
前記軽鎖可変領域は、配列番号86ないし87、及び103からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号88ないし93からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−L2、及び配列番号94ないし101からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−L3を含んでもよい。例えば、前記軽鎖可変領域は、配列番号31ないし60からなる群から選択されたアミノ酸配列を含んでもよい。
【0019】
前記抗体またはその抗原結合断片は、下記表5に記載されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域からなる群から選択された重鎖可変領域を含んでもよい。
例えば、前記抗体またその抗原結合断片は、配列番号61のCDR−H1アミノ酸配列、配列番号69のCDR−H2アミノ酸配列、及び配列番号78のCDR−H3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。
【0020】
前記抗体またはその抗原結合断片は、下記表6に記載されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からなる群から選択された軽鎖可変領域を含んでもよい。
例えば、前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号86のCDR−L1アミノ酸配列、配列番号88のCDR−L2アミノ酸配列、及び配列番号94のCDR−L3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0021】
前記ErbB3は、ErbB3ポリペプチドまたはその断片でもある。前記ErbB3ポリペプチドは、GenBank Accession No.NP_001005915のヒトアミノ酸配列、またはGenBank Accession No.NP_034283のマウスアミノ酸配列を含んでもよい。前記断片は、ErbB3ポリペプチドの一部アミノ酸配列を含むポリペプチドでもある。前記ErbB3は、上皮成長因子受容体(EGFRまたはERbB:epidermal growth factor receptor)ファミリに属する受容体チロシンキナーゼであり、HER3とも知られている。
【0022】
前記ErbB3に特異的に結合するものは、ErbB3ポリペプチドまたはその断片に親和度を有するものでもある。
【0023】
前記抗体またはその抗原結合断片は、ErbB3タンパク質と、ErbB3タンパク質に特異的に結合する物質との結合、ErbB1タンパク質とErbB3タンパク質との二量体形成、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との二量体形成、ErbB3またはAktのリン酸化、またはそれらの組み合わせを阻害することができる。前記ErbB3タンパク質に特異的に結合する物質は、リガンドとも称され、例えば、ヘレグリン(HRG:heregulin)である。
【0024】
前記用語「抗体(antibody)」は、用語「免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)」と相互交換的に使用される。完全な抗体は、2個の全長(full length)軽鎖、及び2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖と、二硫化結合(SS−bond:disulfide bond)で結合する。該抗体は、例えば、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMでもある。前記抗体は、モノクローン抗体またはポリクローン抗体でもある。前記抗体は、動物由来抗体、マウス−ヒトキメリック抗体(chimeric antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)またはヒト抗体でもある。
【0025】
前記用語「抗原結合断片(antigen-binding fragment)」は、免疫グロブリン全体構造に対するその断片であり、抗原が結合することができる部分を含むポリペプチドの一部をいう。例えば、抗原結合断片は、scFv、(scFv)、Fv、Fab、Fab’、FvF(ab’)、またはそれらの組み合わせでもある。
【0026】
前記抗体またはその抗原結合断片は、変形されたものでもある。例えば、前記抗体またはその抗原結合断片は、接合(conjugation)または結合、糖化(glycosylation)、タグ付着、またはそれらの組み合わせによって変形されたものでもある。前記抗体は、抗癌剤のような他の薬物とも接合される。例えば、前記抗体またはその抗原結合断片は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)、アルカルリホスファターゼ、ヘプテン(hapten)、ビオチン、ストレプタビジン、蛍光物質、放射性物質、量子点、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)、ヒスチジンタグ、またはそれらの組み合わせと結合されたものでもある。前記蛍光物質は、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)750、Alexa Fluor(登録商標)790またはAlexa FluorTM350でもある。
【0027】
他の様相は前記抗体またはその抗原結合断片を含むErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病予防用または疾病治療用の薬学的組成物を提供する。
【0028】
前記抗体、抗原結合断片及びErbB3タンパク質は、前述の通りである。
【0029】
前記ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病は、癌でもある。前記癌は、固形癌または非固形癌でもある。該固形癌は、例えば、肝臓、肺、乳房、皮膚など臓器に癌腫瘍が発生したものをいう。非固形癌は、血液内で発生した癌であり、血液癌とも呼ばれる。前記癌は、癌腫(carcinoma)、肉腫(sarcoma)、造血細胞由来の癌、胚細胞腫瘍(germ cell tumor)または母細胞種(blastoma)でもある。前記癌は、例えば、乳房癌、皮膚癌、頭頚部癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓癌、腎臓癌、透明細胞肉腫、黒色腫、脳脊髄腫瘍、脳癌、胸腺種、中皮腫、食道癌、胆道癌、睾丸癌、生殖細胞種、甲状腺癌、副甲状線癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、リンパ種、骨髄形成異常症侯群(MDS:myelodysplastic syndromes:MDS)、骨髄線維症(myelofibrosis)、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄種、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、内分泌系癌及び肉腫からなる群から選択される。
【0030】
前記用語「予防」は、前記薬学的組成物の投与により、ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病を抑制したり、その発病を遅延させたりする全ての行為をいう。前記用語「治療」は、前記薬学的組成物の投与により、ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病の症状が好転したり、好ましく変更されたりする全ての行為をいう。
【0031】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。前記担体は、賦形剤、希釈剤または補助剤を含む意味で使用される。前記担体は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、生理食塩水、PBSのような緩衝液、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルからなる群から選択されたものでもある。前記組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、風味剤、乳化剤、保存剤、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0032】
前記薬学的組成物は、通常の方法により、任意の剤形で用意することができる。前記組成物は、例えば、経口投与剤形(例えば、粉末、錠剤、カプセル、シロップ、丸薬、または顆粒)、または非経口剤形(例えば、注射剤)にも剤形化される。また、前記組成物は、全身剤形または局所剤形にも製造される。
【0033】
前記薬学的組成物は、他の抗癌剤をさらに含んでもよい。前記抗癌剤は、セツキシマブ(cetuximab )、パニツムマブ(panitumumab)、エルロチニブ(erlotinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、トラスツズマブ(trastuzumab)、T−DM1、 ペルツズマブ (pertuzumab)、ラパチニブ(lapatinib)、パクリタキセル(paclitaxel) 、タモキシフェン(tamoxifen)、シスプラチン(cisplatin)、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、5−フルオロウラシル(5FU)、ゲムシタビン(gemcitabine)、またはそれらの組み合わせでもある。前記薬学的組成物は、単一組成物、または個別的な組成物でもある。例えば、前記抗体またはその抗原結合断片の組成物は、非経口投与剤形の組成物であり、抗癌剤は、経口投与剤形の組成物でもある。
【0034】
前記薬学的組成物は、前記抗体またはその抗原結合断片、抗癌剤、またはそれらの組み合わせを有効量で含む。用語「有効量」は、予防または治療を必要とする個体に投与される場合、予防または治療の効果を示すのに十分な量をいう。前記有効量は、当業者が、選択される細胞または個体により、適切に選択することができる。疾患の重症度、患者の年齢・体重・健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、使用された組成物との配合、または同時使用される薬物を含んだ要素、及びその他医学分野に周知されている要素によっても決定される。前記有効量は、前記薬学的組成物当たり、約0.5μgないし約2g、約1μgないし約1g、約10μgないし約500mg、約100μgないし約100mg、または約1mgないし約50mgでもある。
【0035】
前記薬学的組成物の投与量は、例えば、大人基準で、約0.001mg/kgないし約100mg/kg、約0.01mg/kgないし約10mg/kg、または約0.1mg/kgないし約1mg/kgの範囲内でもある。前記投与は、1日1回、1日多回、または1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回から1年に1回投与される。
【0036】
他の様相は、前記抗体またはその抗原結合断片を個体に投与する段階を含む個体のErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病を予防または治療する方法を提供する。
【0037】
前記抗体、抗原結合断片、ErbB3タンパク質、ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病、予防及び治療は、前述の通りである。
【0038】
前記個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、牛、馬、豚、犬、羊、山羊または猫でもある。前記個体は、ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病、例えば、癌を病んでいるか、あるいは病む可能性が大きい個体でもある。
【0039】
前記方法は、前記個体に抗癌剤を投与する段階をさらに含んでもよい。前記抗癌剤は、前記抗体またはその抗原結合断片と同時、個別または順にも投与される。
【0040】
前記抗体またはその抗原結合断片、抗癌剤、またはそれらの組み合わせは、例えば、経口、静脈内、筋肉内、経皮(transdermal)、粘膜、鼻内(intranasal)、器官内(intratracheal)、または皮下投与のような任意の手段により、個体に直接的に投与される。前記抗体またはその抗原結合断片、抗癌剤、またはそれらの組み合わせは、全身的にまたは局所的にも投与され、単独でまたは他の薬学的活性化合物と共にも投与される。
【0041】
前記抗体またはその抗原結合断片、抗癌剤、またはそれらの組み合わせの望ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択される。前記投与量は、例えば、大人基準で、約0.001mg/kgないし約100mg/kg、約0.01mg/kgないし約10mg/kg、または約0.1mg/kgないし約1mg/kgの範囲内でもある。前記投与は、1日1回、1日多回、または1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回から1年に1回投与される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を介して、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1.抗ErbB3抗体の準備
1.リード(lead)抗体の選別
ヒト抗ErbB3抗体を得るために、ヒト合成scFv−ファージライブラリー(梨花女子大学の沈ヒョンボ教授提供)をErbB3タンパク質(R&D systems)に対してスクリーニングし、ErbB3に結合するscFv断片を露出させるパージを得た。
【0044】
得られたパージのscFv断片をコーディングする核酸配列を分析し、そこからアミノ酸配列を分析し、ErbB3に結合するscFv断片において、VH領域及びVL領域のアミノ酸配列を確認した。ErbB3に結合するscFv配列を確保した後、IgG1で発現させるSelexis085ベクター(Selexis)を使用し、VH部位及びVL部位を再構成し、全体抗体遺伝子を作製した。再構成されたIgG1をコーディングする発現ベクターを、CHO細胞株に形質転換させ、小規模で発現させた。発現された抗ErbB3抗体に対して、ErbB3に対する結合力及び細胞基盤の分析を行い、ヘレグリン(HRG:heregulin)依存的ErbB3信号の伝達を抑制する抗ErbB3リード抗体442P,472P及び451Pを選別した。
【0045】
2.リード抗体から変形された抗体の選別
無作為突然変異生成法を利用し、1.で選別された抗ErbB3リード抗体442P,472P及び451Pの6個のCDR部位に、突然変異を導入したFab−ファージライブラリーを作製した。Fab−ファージライブロは、プライマーをIntegrated DNA Technologies,Inc.に依頼して作製し、Phusion Polymerase(New England Biolabs)を使用してPCR方法で増幅した。
【0046】
作製されたFab−ファージライブラリーを、組み換えヒトErbB3タンパク質(R&D systems)に対してスクリーニングし、組み換えヒトErbB3に係わる結合親和力が、リード抗体に比べて上昇した抗体を選別した。選別された抗体を、1.に記載されたように、IgGに転換させ、CHO細胞株に形質転換させ、小規模に発現させた。
【0047】
Octet(登録商標)QK384システム(Pall Life Sciences)を使用し、抗ErbB3抗体に対する結合力を測定した。測定された結果から、ErbB3結合力がリード抗体に比べて向上した抗体を選別し、細胞基盤分析を介して、効能を検証した。抗ErbB3リード抗体と、そこから変形された抗体との可変領域アミノ酸配列を分析し、Kabat定義により、相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)を決定した。選別された抗体において、重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号1ないし60)を、図1A及び図1Bに示し、重鎖及び軽鎖のCDRアミノ酸配列を、それぞれ表1及び表2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
実施例2.抗ErbB3抗体の試験管内効果
1.抗ErbB3抗体のヒトErbB3タンパク質に対する結合力
実施例1.2.で選別された抗体の抗原であるErbB3タンパク質に対する結合力を測定した。
【0050】
具体的には、組み換えヒトErbB3タンパク質(R&D systems)に対して、抗ErbB3抗体の結合親和性及び相互作用動力学を、Octet(登録商標)QK384システム(Pall Life Sciences)を使用して測定した。AR2Gセンサ(ForteBio)を、20mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)、及び40mMのN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)溶液で、カルボン酸基を活性化させた後、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.0)(ForteBio)で希釈した10μg/mlのヒトErbB3タンパク質溶液を加え、AR2Gセンサに、ヒトErbB3タンパク質を固定させた。ヒトErbB3タンパク質が固定されたAR2Gセンサに、1Mのエタノールアミン(ForteBio)を処理し、未反応残余カルボン酸基を不活性化させた。前記AR2Gセンサに、それぞれ12.5,25,50nMの抗体溶液を加え、約900秒まで反応物の結合相を観察した。その後、1x kinetics buffer(ForteBio)を反応物に加えた後、約1,200秒間反応物の分離相を観察した。Octet(登録商標)分析ソフトウェア(Pall Life Sciences)を使用し、各抗体に係わる吸着率定数(ka:association constant)、分離率定数(kd:dissociation constant)及び平衡分離定数(KD:equilibrium dissociation constant)を決定した。
【0051】
【表3】
表3に示されているように、選別された抗体は、約0.1nMないし約0.1pMのKD値を有するので、選別された抗体が、ヒトErbB3タンパク質に対して高い結合力を有するということを確認した。
【0052】
2.抗ErbB3抗体によるErbB3タンパク質とHRGとの結合阻害能
実施例1.2.で選別された抗体が、ErbB3タンパク質と、そのリガンドであるHRGとの結合を阻害することができるか否かということを確認した。
【0053】
具体的には、ヒトErbB3タンパク質(R&D systems)に対するHRGの結合率を、Octet(登録商標)QK384システム(Pall Life Sciences)を使用して測定した。実施例2.1.に記載されたような方法で、AR2Gセンサに、10μg/mlのHRGタンパク質を固定させ、1Mのエタノールアミン(ForteBio)を使用し、未反応残余カルボン酸基を不活性化させた。その後、5μg/mlのヒトErbB3タンパク質(R&D systems)と、10nMまたは100nMの抗ErbB3抗体混合液を、前記HRGタンパク質が固定されたAR2Gセンサに加え、900秒まで結合相を観察した。陰性対照群として、抗ErbB3抗体を加えていない反応物を利用した。前記HRGタンパク質が固定されたAR2Gセンサに結合して残っているヒトErbB3タンパク質を測定した。陰性対照群に対比し、抗ErbB3抗体の存在下、ErbB3タンパク質とHRGとの結合率(%)を算出し、その結果を図2に示した(y軸:陰性対照群対比の結合率(%)、x軸:0nMの抗体、10nMの抗体、100nMの抗体)。
【0054】
図2に示されているように、選別された抗体は、濃度依存的に、ヒトErbB3タンパク質とHRGタンパク質との結合を阻害する一方、hIgG対照群は、ErbB3とHRGとの結合に影響を及ぼさないということを確認した。
【0055】
3.抗ErbB3抗体によるErbB2−ErbB3二量体形成阻害能
実施例1.2.で選別された抗体が、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との二量体形成を阻害することができるか否かということを確認した。
【0056】
具体的には、マルチアレイ96ウェルプレート(Thermo scientific)に、100μlの1μg/ml組み換えヒトErbB2タンパク質を加え、約4℃で約16時間インキュベーションし、ErbB2タンパク質をコーティングした。コーティングされたプレートに、200μlの5%(w/v)BSA/PBS溶液を加え、約1時間約37℃でインキュベーションした。50μlの0.6μg/ml組み換えヒトErbB3タンパク質と、50μlの0.2μg/ml選別された抗ErbB3抗体と、を混合した反応物を、前記プレートに加え、約2時間37℃でインキュベーションした。前記プレートを、0.05%(v/v)ツイン/PBS溶液で3回洗浄した。洗浄されたプレートに、100μlの1μg/ml塩素−抗ErbB3ポリクローン抗体(R&D systems)を加え、約1時間37℃でインキュベーションした。前記プレートを、0.05%(v/v)ツイン/PBS溶液で3回洗浄した。5%(w/v)BSA/PBS溶液に、1:5,000で希釈させた抗塩素Fc−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)(Jackson Immunoresearch)100μlを、前記プレートで約1時間37℃でインキュベーションした。前記プレートを0.05%(v/v)ツイン/PBS溶液で3回洗浄した。100μlの3,3’,5’−テトラメチルベンジジン(TMG:tetramethylbenzidine)基質を各ウェルに加え、約5分間常温でインキュベーションし、100μlの2N硫酸溶液で反応を中断させた。陰性対照群として、抗ErbB3抗体を加えていない反応物を利用した。前記プレートに対して、波長450nmで、蛍光強度を測定した。測定された蛍光強度から、抗ErbB3抗体の存在下、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との結合の比率を算出した。ヒトIgGは、ErbB3に結合しない陰性対照群として使用された。
【0057】
陰性対照群対比で、抗ErbB3抗体の存在下、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との結合率(%)を算出し、その結果を図3に示した(y軸:陰性対照群対比の結合率(%)、hIgG:ヒトIgG)。
【0058】
図3に示されているように、選別された抗体は、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との二量体形成を阻害する一方、hIgG対照群は、二量体形成阻害能がないということを確認した。
【0059】
4.抗ErbB3抗体によるErbB3リン酸化及びAktリン酸化の阻害能
実施例1.2.で選別された抗体が、ErbB3タンパク質とAktとのリン酸化を阻害することができるか否かということを確認した。
【0060】
具体的には、約5x10個のMCF7乳房癌細胞(National Institutes of Health)を24ウェルプレートに接種し、細胞に、ペニシリン−ストレプトマイシン抗生物質(Invitrogen)と、10%(v/v)のウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地(Invitrogen)とを加え、37℃及び5% COの条件下、約24時間培養した。その後、該培地を、新鮮なRPMI−1640培地に交換し、前記細胞を血清欠乏状態(serum starving)で24時間培養した。その後、前記細胞に、選別された抗ErbB3抗体を加え、37℃及び5% COの条件下、約2時間インキュベーションした。このとき、442P抗体と472P抗体は、細胞に、67nM、13nM、3nM、534pM、107pM、21pM及び4pMの濃度で加え、442S1抗体、442S5抗体、442M6抗体472S2抗体、及び472M1抗体は、細胞に、13nM、3nM、834pM、208pM、52pM及び13pMの濃度で加えた。1時間45分後、細胞にHRGを加え、約15分間37℃及び5% COの条件下でインキュベーションし、細胞を刺激した(抗体を処理した総時間:2時間)。細胞に、冷却したPBSを加えて洗浄した後、細胞に、細胞溶解液(Cell Signaling Technology)を加えて細胞を収集した。収集された細胞のタンパク質を、BCA定量法で定量した後、ErbB3またはAktのリン酸化レベルを分析した。
【0061】
ErbB3のリン酸化レベルを分析するために、ホスホErbB3検出キット(Cell Signaling Technology)を使用し、細胞タンパク質を、ErbB3抗体がコーティングされたELISA平板に結合させた後、ErbB3特異的な捕獲抗体と、マウスHRPが接合された抗ホスホ−チロシン検出抗体と、をELISA平板に展開させた。その後、反応物にTMB基質を加え、前記キットの反応終了、溶液で反応を中止させた後、プレートリーダで蛍光強度を測定した。
【0062】
Akt1リン酸化レベルを分析するために、ホスホAkt1検出キット(Cell Signaling Technology)を使用し、抗ホスホセリンがコーティングされたELISA平板に、細胞タンパク質を結合させた後、Akt1特異的な捕獲抗体と、HRPに接合された検出抗体とをELISA平板状に展開させた。その後、TMB基質と反応させた後、キット内反応終了溶液で反応を中止させ、プレートリーダで値を測定した。
【0063】
測定された蛍光強度から、抗体濃度によるErbB3リン酸化及びAktリン酸化の比率を示すグラフを、それぞれ図4A及び図4Bに示した。また、抗体の50%阻害濃度(IC50:half maximal inhibitory concentration)を算出し、その結果を表4に示した。
【0064】
【表4】
図4A図4B及び表4に示されているように、選別された抗体は、ErbB3リン酸化及びAktリン酸化を阻害するということを確認した。
【0065】
同時に、乳房癌細胞株MDA−MB−468及び乳房癌細胞株BT474、皮膚癌細胞株A431、膵臓癌細胞株BxPC3、頭頚部癌細胞株FaDu、肺癌細胞株A549、大腸癌細胞株LoVo、黒色腫細胞株MALME−3M、卵巣癌細胞株OVCAR−8及び前立腺癌細胞株DU145においても、類似して、選別された抗体が、ErbB3リン酸化及びAktリン酸化を阻害するということを確認した。
【0066】
5.抗ErbB3抗体による膵臓癌細胞株BxPC3の増殖阻害能
実施例1.2.で選別された抗体が、BxPC3膵臓癌細胞の増殖を阻害することができるか否かということを確認した。
【0067】
具体的には、約1x10個のBxPC3膵臓癌細胞(American Type Culture Collection)を96ウェルプレートに接種し、接種された細胞に、10%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地(Invitrogen)を加え、37℃及び5% COの条件下で約24時間培養した。その後、0.1%(v/v)のウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地に交換した。培養された細胞に、0.02μg/ml、0.2μg/ml、2μg/ml及び20μg/mlの442S1抗体または442M6抗体を加え、37℃及び5% COの条件下で約2時間培養した。培養された細胞に、50ng/mlのHRGをさらに加え、37℃及び5% COの条件下で約120時間培養した。陰性対照群として、抗体を含まずに培養した細胞を利用した。Celltiter−Glo発光細胞生存能分析法(Promega)で細胞数を測定した。測定された結果から、細胞増殖率を算出し、その結果を図5に示した。
【0068】
図5に示されているように、選別された抗体は、BxPC3膵臓癌細胞の増殖を濃度依存的に阻害するということを確認した。
【0069】
実施例3.抗ErbB3抗体の生体内効果
1.BT474乳房癌異種移植モデルを利用した腫瘍成長阻害
実施例1.2.で選別された抗体が、乳房癌細胞を移植した動物モデルにおいて、腫瘍成長を阻害することができるか否かということを確認した。
【0070】
具体的には、ヒト乳房癌BT474細胞(American Type Culture Collection)を、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(Hyclone)で培養した。癌細胞接種1日前、メスNOD/SCIDマウス(HFK Bio−Technology Co.Ltd.)の皮下に、持続放出17β−エストラジオールペレット(0.36mg/60日、Innovative Research of America)を移植し、血中エストロゲンレベルを維持させた。約1x10個のBT474癌細胞を、50%マトリゲルを含む100μlのPBSに懸濁させ、懸濁された癌細胞を、マウスの乳頭下部脂肪組職に接種した(接種0日)。週当たり2回ずつマウス重量を測定し、「0.5a×b2」の式を用いて腫瘍容積を計算した。ここで、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径であった。癌細胞接種7日後、腫瘍体積が約210mmに逹したとき、マウスを、群当たり10匹ずつ7群から無作為抽出した。群当たり、PBS(陰性対照群)、442P抗体、442S1抗体、442S5抗体、442M6抗体、472S2抗体及び472M1抗体を、それぞれマウスの尾静脈に、週2回、10mg/体重kgの用量で4週間投与した。癌細胞接種後、抗体投与による腫瘍体積を算出し、その結果を図6に示した。
【0071】
図6に示されているように、陰性対照群に比べ、抗体投与により、腫瘍の体積が低減し、選別された抗体が、腫瘍成長を阻害するということを確認した。
【0072】
2.MDA−MB−468乳房癌異種移植モデルを利用した腫瘍成長阻害
ヒト乳房癌MDA−MB−468細胞(American Type Culture Collection)を、10%ウシ胎児血清を含むL15培地(Hyclone)で培養した。約5x10個の癌細胞を、50%マトリゲルを含む100μlのPBSに懸濁させ、メスNu/Nuマウス(Vital River laboratories.Ltd)の脇腹皮下に接種した。週当たり2回ずつマウス重量を測定し、「0.5a×b2」の式を用いて腫瘍容積を計算した。ここで、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径であった。癌細胞接種7日後、腫瘍体積が約210mmに逹したとき、マウスを、群当たり10匹ずつ7群から無作為抽出した。群当たり、PBS(陰性対照群)、442P抗体、442S1抗体、442S5抗体、442M6抗体、472S2抗体及び472M1抗体を、マウスの尾静脈に、週2回、10mg/体重kgの用量で7週間投与した。癌細胞接種後、抗体投与による腫瘍体積を算出し、その結果を図7に示した。
【0073】
図7に示されているように、陰性対照群に比べ、抗体の投与により、腫瘍の体積が低減し、選別された抗体が、腫瘍成長を阻害するということを確認した。
【0074】
3.A431皮膚癌異種移植モデルを利用した腫瘍成長阻害
ヒト皮膚癌A431細胞(American Type Culture Collection)を、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(Hyclone)で培養した。約5x10個の癌細胞を、50%マトリゲルを含む100μlのPBSに懸濁させ、メスBalb/c nudeマウス(HFK Bio−Technology Co.Ltd.)の脇腹皮下に接種した。週当たり2回ずつマウス重量を測定し、「0.5a×b2」の式を用いて腫瘍容積を計算した。ここで、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径であった。癌細胞接種7日後、腫瘍体積が約160mmに逹したとき、マウスを、群当たり10匹ずつ7群から無作為抽出した。群当たり、PBS(陰性対照群)、442P抗体、442S1抗体、442S5抗体、442M6抗体、472S2抗体及び472M1抗体を、マウスの尾静脈に、週2回、10mg/体重kgの用量で4週間投与した。癌細胞接種後、抗体投与による腫瘍体積を算出し、その結果を図8に示した。
【0075】
図8に示されているように、陰性対照群に比べ、抗体の投与により、腫瘍の体積が低減し、選別された抗体が腫瘍成長を阻害するということを確認した。
【0076】
4.腫瘍異種移植モデルを利用した腫瘍成長阻害
実施例3.1.ないし3.3に記載されたように、442S1抗体を、FaDu頭頚部癌、膵臓癌または肺癌の動物モデルに投与した場合、及び442P抗体または472P抗体を、胃癌動物モデルに投与した場合においても、陰性対照群に比べ、抗体の投与により、腫瘍の体積が低減し、選別された抗体が腫瘍成長を阻害するということを確認した。
【0077】
実施例4.抗癌剤と抗ErbB3抗体との併用投与効果
FaDu頭頚部癌モデルを利用した、442S1抗体とセツキシマブ(Erbitux)とを併用投与した場合、抗癌効能が向上するか否かということを確認した。
【0078】
ヒト頭頚部癌FaDu細胞(Shanghai Institutes for Biological Sciences)を、10%ウシ胎児血清を含むEMEM培地(Hyclone)で培養した。約5x10個の癌細胞を、50%マトリゲルを含む100μlのPBSに懸濁させ、メスNOD/SCIDマウス(HFK Bio−Technology Co.Ltd)の脇腹皮下に接種した。週当たり2回ずつマウス重量を測定し、「0.5a×b2」の式を用いて腫瘍容積を計算した。ここで、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径であった。癌細胞接種7日後、腫瘍体積が約150mmに逹したとき、マウスを、群当たり10匹ずつ無作為抽出した。群当たり、PBS(陰性対照群)または442S1抗体を、マウスの尾静脈に、週2回、5mg/体重kgの用量で4週間投与した。併用処理群は、442S1抗体とセツキシマブ(Merck)をマウスの尾静脈に、週2回、それぞれ5mg/体重kgの用量で、4週間投与した。その後、1週間は、抗体投与なしに、週2回ずつ腫瘍の大きさを測定した。抗体または併用投与による腫瘍体積を算出し、その結果を図9に示した(矢印(↓):投与時点、***:一元分散分析後、Tukey多重比較結果P<0.001)。
【0079】
図9に示されているように、442S1抗体とセツキシマブとの併用投与群は、投与初期から腫瘍体積が低減し、試験終了時、平均腫瘍体積が約68mm測定された(n=10/群)。従って、選別された抗体とセツキシマブとの併用投与により、抗癌効能が上昇するということを確認した。
【0080】
実施例5.抗ErbB3抗体による抗癌剤抵抗性克服効果
1.乳房癌でのパクリタキセル抵抗性克服効果
乳房癌細胞株ZR−75−30は、パクリタキセルによる細胞死滅効果が、HRG存在時、ErbB3信号伝達経路の活性化によって低下する(Wang S et al., Oncogene, 29, 4225-4236, 2010)。選別された抗体が、抗癌剤であるパクリタキセルの抵抗性を克服し、さらに抗癌効果が示されるか否かということを確認した。
【0081】
約1x10個のZR−75−30細胞(American Type Culture Collection)をプレートに接種し、10%(v/v)ウシ胎児血清を含むRPMI 1640培地(Invitrogen)で、37℃及び5% COの条件下で約24時間培養した。その後、0.1%(v/v)ウシ胎児血清を含む新鮮な培地(100ng/mlHRG添加)に交換し、37℃及び5% COの条件下で約24時間培養した。培養された細胞に、10nMのパクリタキセル(Bristol−Myers Squibb)と、25μg/mlの442S1抗体とを加え、37℃及び5% COの条件下で約72時間培養した。その後、培養された細胞を得て、細胞自殺のマーカーであるカスパーゼ3/7活性を、Caspase3/7 substrate assay(Promega)を使用して測定した。測定されたカスパーゼ3/7活性を図10に示した(RLU:相対的蛍光単位(relative luminescence units)、**:t−test結果P<0.01)。
【0082】
図10に示されているように、パクリタキセルによるカスパーゼ3/7活性が、HRG存在下で低下したが、パクリタキセル及び442S1抗体を共に処理した場合、パクリタキセル単独処理より、カスパーゼ3/7活性がさらに上昇した(n=3)。従って、パクリタキセルによる細胞死滅効果は、HRG存在時に低下するが、442S1抗体の投与により、さらに回復するということを確認した。
【0083】
2.結腸直腸癌におけるセツキシマブ抵抗性克服効果
結腸直腸癌細胞であるDiFiにおいて、セツキシマブは、癌細胞増殖抑制効能を有するが、HRG存在時には、ErbB3信号伝逹経路が活性化され、その効能を示すことができなくなる。選別された抗体が、セツキシマブに対する抵抗性を復旧し、さらに癌細胞増殖抑制能を示すか否かということを確認した。
【0084】
具体的には、DiFi大腸癌細胞(American Type Culture Collection)を、抗生物質(Penicillin−Streptomycin,gibco)と、10%ウシ胎児血清とを含むRPMI−1640培地(Invitrogen)で培養した。1x10個のDiFiを96ウェルプレートに接種し、37℃及び5% COの条件下で約24時間培養した。セツキシマブと抗ErbB3抗体は、200μg/mlで同量混合させた後、セツキシマブ/抗ErbB3抗体溶液を、40ng/mlのHRGと同量混合させた。96ウェルプレートに、セツキシマブ/抗ErbB3抗体/HRG溶液を入れ、37℃及び5% COの条件下で約72時間培養した。陰性対照群としては、抗体及びHRGを含まずに培養した細胞を利用した。Celltiter−Glo発光細胞生存能分析法(Promega)で、細胞数を測定した。測定された結果から、細胞の増殖率を算出し、その結果を図11に示した(***:t−test結果P<0.001)。
【0085】
図11に示されているように、セツキシマブによる細胞増殖抑制能が、HRG存在下で低下するが、セツキシマブと442S1抗体とを共に処理した場合、さらに癌細胞増殖が抑制された。従って、セツキシマブによる細胞増殖抑制能は、ErbB3リガンドであるHRGの存在時に低下するが、442S1抗体によるHRG−ErbB3 pathway抑制により、さらにその効能が復旧されるということを確認した。
【0086】
3.セツキシマブ耐性異種移植モデルにおけるセツキシマブ抵抗性克服効果
ヒト頭頚部癌FaDu細胞(Shanghai Institutes of Biological Sciences)を、10%ウシ胎児血清(Invitrogen)、0.01mM NEAA(non-essential amino acid,Hyclone)、2mM L−グルタミン(Invitrogen)を含むEMEM培地(Hyclone)で培養した。約5x10個の癌細胞を100μlのPBSに懸濁させ、メスNOD SCIDマウス(HFK Bio−Technology Co.Ltd.)の脇腹皮下に接種した。週当たり2回ずつマウス重量を測定し、「0.5a×b2」の式を用いて腫瘍容積を計算した。ここで、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径であった。癌細胞接種8日後、腫瘍体積が約138mmに逹したとき、マウスを無作為抽出し、PBS(陰性対照群)またはセツキシマブをマウスの尾静脈に週2回、5mg/kgの用量で投与した。セツキシマブの腫瘍成長抑制能が維持されず、腫瘍がさらに大きくなり始め、腫瘍体積がおよそ840mmに逹したとき、マウスを、さらに群当たり10匹ずつ無作為抽出し、群当たりセツキシマブ5mg/kg、またはセツキシマブ5mg/kgと442S120mg/kgとを併用で週2回ずつ4週投与し、週2回ずつ腫瘍体積を算出し、その結果を図12に示した。
【0087】
図12を参照すれば、続けてセツキシマブを投与した群に比べ、442S1とセツキシマブとを併用で投与した群においては、確実な腫瘍縮小効能が観察され、442S1抗体が、セツキシマブに対する耐性を克服し、腫瘍成長を抑制することができるということが確認された。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.配列番号61ないし85からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
配列番号86ないし101からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
または前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域を含む、ErbB3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
2.前記重鎖可変領域は、
配列番号61ないし68からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)−H1と、
配列番号69ないし77からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
配列番号78ないし85からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−H3と、を含むことを特徴とする上記1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
3.前記重鎖可変領域は、配列番号1ないし30からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする上記2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
4.前記軽鎖可変領域は、
配列番号86ないし87からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
配列番号88ないし93からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
配列番号94ないし101からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むCDR−L3と、を含むことを特徴とする上記1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
5.前記軽鎖可変領域は、配列番号31ないし60からなる群から選択されたアミノ酸配列をさらに含むことを特徴とする上記4に記載の抗体またはその抗原結合断片。
6.前記重鎖可変領域は、以下の表に記載されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域−H1(CDR−H1)、CDR−H2、及びCDR−H3からなる群から選択されたいずれかを含むことを特徴とする上記1に記載の抗体またはその抗原結合断片:

7.前記軽鎖可変領域は、以下の表に記載されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域−L1(CDR−L1)、CDR−L2、及びCDR−L3からなる群から選択されたいずれかを含むことを特徴とする上記1に記載の抗体またはその抗原結合断片:

8.前記抗体またはその抗原結合断片は、ErbB3タンパク質と、それに特異的に結合する物質との結合、ErbB1タンパク質とErbB3タンパク質の二量体形成、ErbB2タンパク質とErbB3タンパク質との二量体形成、ErbB3またはAktのリン酸化、またはそれらの組み合わせを阻害することを特徴とする上記1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
9.前記ErbB3タンパク質に特異的に結合する物質は、ヘレグリン(HRG)であることを特徴とする上記8に記載の抗体またはその抗原結合断片。
10.前記抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMであるか、
前記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であるか、
前記抗原結合断片は、scFv、(scFv)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、またはそれらの組み合わせであるか、あるいは
前記抗体またはその抗原結合断片は、接合、結合、糖化、タグ付着、またはそれらの組み合わせによって修飾されたものであることを特徴とする上記1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
11.上記1ないし10のうちいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病予防用または疾病治療用の薬学的組成物。
12.前記ErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病は、癌であることを特徴とする上記11に記載の薬学的組成物。
13.前記癌は、乳房癌、皮膚癌、頭頚部癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓癌、腎臓癌、透明細胞肉腫、黒色腫、脳脊髄腫瘍、脳癌、胸腺種、中皮腫、食道癌、胆道癌、睾丸癌、生殖細胞種、甲状腺癌、副甲状線癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、リンパ種、骨髄形成異常症侯群(MDS)、骨髄線維症、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄種、ホジキン病、内分泌系癌及び肉腫からなる群から選択されたことを特徴とする上記12に記載の薬学的組成物。
14.抗癌剤をさらに含むことを特徴とする上記11に記載の薬学的組成物。
15.前記抗癌剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、トラストズマブ、T−DM1、ペルツズマブ、ラパチニブ、パクリタキセル、タモキシフェン、シスプラチン、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体、抗PDL−1抗体、5−フルオロウラシル(5FU)、ゲムシタビン、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする上記14に記載の薬学的組成物。
16.前記薬学的組成物は、単一組成物、または個別の組成物をさらに含むことを特徴とする上記14に記載の薬学的組成物。
17.上記1ないし10のうちいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を個体に投与する段階を含む、個体のErbB3タンパク質の活性化または過生成に係わる疾病を予防または治療する方法。
18.前記個体に抗癌剤を投与する段階をさらに含むことを特徴とする上記17に記載の方法。
19.前記抗癌剤は、上記1ないし10のうちいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片と同時、個別または順に投与することを特徴とする上記18に記載の方法。
20.前記抗体、その抗原結合断片、抗癌剤、またはそれらの組み合わせは、経口、静脈内、筋肉内、経皮、粘膜、鼻内、器官内、皮下投与、及びそれらの組み合わせによって個体に投与されることを特徴とする上記18に記載の方法。
21.前記抗体、その抗原結合断片、抗癌剤、またはそれらの組み合わせは、全身的にまたは局所的に投与されることを特徴とする上記18に記載の方法。
22.上記1ないし10のうちいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を個体に投与する段階を含む、個体の抗癌剤抵抗性を予防または治療する方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]