特許第6982575号(P6982575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982575
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ボーリング工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/034 20060101AFI20211206BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B23B29/034 B
   B23Q17/22 Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-549864(P2018-549864)
(86)(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公表番号】特表2019-512404(P2019-512404A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2017051973
(87)【国際公開番号】WO2017162355
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】16162248.5
(32)【優先日】2016年3月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, ロビン
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−155705(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0215598(US,A1)
【文献】 米国特許第06367359(US,B1)
【文献】 英国特許出願公告第00926536(GB,A)
【文献】 特開昭63−288611(JP,A)
【文献】 特開昭64−051211(JP,A)
【文献】 特開平10−225847(JP,A)
【文献】 米国特許第06053082(US,A)
【文献】 実開昭59−183332(JP,U)
【文献】 実開昭61−068805(JP,U)
【文献】 特表2003−518442(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第110695461(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00−29/34
B23B 35/00−49/06
B23Q 17/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・前端部(3)および後端部(4)を含む工具本体(2、2’)であり、前記前端部と前記後端部との間に中心回転軸(C)が延び、前記工具本体が前記中心回転軸(C)の周りを回転方向(R)に回転可能である、工具本体(2、2’)と、
・前記工具本体の内部に、前記回転軸に対して横方向に延びている経路(P)に沿って移動可能に配置されている滑動部材(5、5’)と、
・前記滑動部材と関連しており、前記滑動部材と共に移動し、締結部材(10)により中に固定される切削インサート(9、9’)を受容するように構成されているインサートポケット(6)であり、この切削インサートは切削刃(11、11’)を有し、前記工具本体から前記回転軸に対して横方向に突出している、インサートポケット(6)と、
・前記滑動部材(5、5’)に接続されたモータ部材(12、12’)であり、前記回転軸に対する前記切削インサートの前記切削刃(11、11’)の距離を変更し、それにより、前記工具本体の回転によりボーリングしたときに被加工物の穴部内に生じる半径を変更するために、前記滑動部材を前記回転軸に対して横方向に移動させるように制御可能であるモータ部材(12、12’)と、
・前記モータ部材を制御して、前記滑動部材(5、5’)を移動させるように構成されている制御ユニットと
を含むボーリング工具において、前記モータ部材(12、12’)は、前記前端部の前記工具本体の切削部(14)内に、前記滑動部材(5、5’)と共に前記工具本体の内部に配置され、前記モータ部材は、前記経路(P)に沿って前記滑動部材(5、5’)の前記横方向の延びと平行に配置され、前記滑動部材(5)は中空であり、前記モータ部材(12)は前記滑動部材の内部に配置されていることを特徴とする、ボーリング工具。
【請求項2】
記滑動部材(5、5’)は、少なくとも10%、10%〜60%、20%〜50%、または30%〜50%だけ最内端位置における前記ボーリング半径を超過する最外端位置における前記ボーリング半径に対応する2つの端位置間で、前記経路(P)に沿って、前記モータ部材(12、12’)の動作により、移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載のボーリング工具。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記工具本体の内部に前記工具本体の前記切削部(14)内に配置されているマイクロコントローラ(20)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のボーリング工具。
【請求項4】
前記マイクロコントローラ(20)は、前記工具本体の回転により達成されるボーリング直径の設定値を受信しかつ前記モータ部材(12、12’)を制御して、前記滑動部材(5、5’)をこれに対応する位置へ移動させるために、前記工具本体(2)の外部に配置されているデバイス(21)と通信するように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のボーリング工具。
【請求項5】
前記マイクロコントローラ(20)は、無線通信手段により前記デバイス(21)と通信するように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のボーリング工具。
【請求項6】
前記工具本体の内部に配置されておりかつ前記マイクロコントローラ(20)のファンクションおよび前記モータ部材(12、12’)に電気エネルギーを供給するように接続されている、電池などのエネルギー貯蔵部材(22)を含むことを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のボーリング工具。
【請求項7】
前記工具本体の内部に配置されたセンサ(23、23’)であり、前記経路(P)に沿った前記滑動部材の位置を示す、前記工具本体の固定部に対する前記滑動部材(5、5’)の位置を検出し、検出された前記位置に関する情報を前記制御ユニット(20)へ送信するように構成されているセンサ(23、23’)をさらに含み、前記制御ユニットは、検出された前記位置の値を、設定されるボーリング半径に関して得られる位置の値と比較し、これら2つの位置の値の一致を得るために、前記モータ部材(12、12’)を制御して、前記滑動部材(5、5’)を移動させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のボーリング工具。
【請求項8】
前記モータ部材(12、12’)は、前記滑動部材(5、5’)を移動させるために、自体の部材(15、15’)を回転させるかまたは線形並進運動を実施させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のボーリング工具。
【請求項9】
前記モータ部材(12、12’)は、前記滑動部材のねじ山、前記滑動部材と共に移動するようになされている部材のねじ山、または前記工具本体に対して固定されている部材のねじ山と係合しているねじ付き部材(16、26)を回転させることにより、前記滑動部材(5、5’)の移動を引き起こすように構成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のボーリング工具。
【請求項10】
前記モータ部材(12)は、前記滑動部材(5)に固定されている部材(19)の内ねじ山(18)と係合している外ねじ山(17)を備えた中空ねじ(16)の内部に配置されており、前記モータ部材は、前記中空ねじを移動させ、そのことにより前記滑動部材(5)を前記経路(P)に沿って移動させるために、前記ねじ(16)を回転させるように構成されていることを特徴とする、請求項に記載のボーリング工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
・前端部および後端部を含む工具本体であり、前記前端部と前記後端部との間に中心回転軸が延び、工具本体が中心回転軸の周りを回転方向に回転可能である、工具本体と、
・該工具本体の内部に、前記回転軸に対して横方向に延びている経路に沿って移動可能に配置されている滑動部材と、
・滑動部材と関連しており、滑動部材と共に移動し、締結部材により中に固定される切削インサートを受容するように構成されているインサートポケットであり、この切削インサートは切削刃を有し、工具本体から前記回転軸に対して横方向に突出している、インサートポケットと、
・滑動部材に接続されたモータ部材であり、前記回転軸に対する切削インサートの切削刃の距離を変更し、それにより、前記工具本体の回転によりボーリングしたときに被加工物の穴部内に生じる半径を変更するために、滑動部材を前記回転軸に対して横方向に移動させるように制御可能である、モータ部材と、
・モータ部材を制御して滑動部材を移動させるように構成されている制御ユニットと
を含むボーリング工具に関する。
【0002】
そのようなボーリング工具は、1つまたは複数の切削インサートを設けられている工具本体を回転させることにより、既に存在する穴部を拡大する機械加工工程を実施するために使用される。該工程は、一般的に、正確な寸法、厳しい精度、またはある表面仕上げを達成するために実施される。従来のボーリング工具本体には、可変切削直径、および切削インサートの磨耗を補償する可能性を可能にする、径方向に調節可能な切削刃が付けられていることが多い。
【0003】
従来、ボーリング動作により得られる穴部の直径の調節は、例えば工具本体上の調節ねじを回動させることにより、機械操作者により手動で行われている。生産性が最重要である環境では、ボーリング工具の手動調節手法は時間がかかり、したがって望ましくないと考えられる。そのような調節では、操作者が身体的に機械加工作業を停止させ、ボーリング工具に接触することが求められる。
【0004】
そのため、回転軸に対する切削インサートの切削刃の距離を変更するために、滑動部材を工具本体の回転軸に対して横方向に移動させるように制御可能なモータ部材をボーリング工具に設けることにより、前記直径を調節することが提案されている。「横方向に」は、殆どの場合において好適であると考えられるがここでは「垂直に」ではなく、回転軸に対する切削インサートの切削刃の距離を変更する方向の可動性と解釈されるべきであり、これにより、工具本体の回転によりボーリングされると、半径は被加工物の穴部内に生じる。ボーリング工具にそのようなモータ部材を設けることにより、操作者が身体的に機械内に手を伸ばすかまたは機械からボーリング工具を除去して、工具直径を調節する必要がなくなる。これは、ボーリング工具の調節手法が相当により速く、よりロバストであり、より安全であることを意味する。
【背景技術】
【0005】
欧州特許第2095897(B1)号が、導入部で定義されているタイプのボーリング工具を開示している。この工具におけるモータ部材の配置は、切削インサートの磨耗の修正を実施するために、しかし工具本体の回転によりボーリングされると被加工物の穴部内に生じる半径の任意の実質的な調節を実施するためではなく、工具本体の切削インサートを工具本体の回転軸に対して横方向に移動させることを可能にする。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、既知のボーリング工具に関して少なくともいくつかの側面において改善されている、導入部において定義されているタイプのボーリング工具を提供することである。この目的物は、本発明に従って、添付の特許請求項1の特徴部に列挙されている特徴を有するボーリング工具を提供することにより得られる。
【0007】
工具本体の前端部の工具本体の切削部内にかつ前記経路に沿って滑動部材の横方向の延びと平行に、滑動部材と共に、工具本体の内部にモータ部材を配置することにより、工具本体の内部のモータ部材と滑動部材との配置は、依然として、工具本体の回転によりボーリングされると被加工物の穴部内に生じる半径の実質的な調節の可能性をもたらすと同時に、非常にコンパクトであってもよい。モータ部材が前記横方向の延びと平行に配置されることは、ここでは、この横方向の延びに沿っておりかつ並んでいることを意味し、また、モータは、例えば前記経路を画定する理論上の軸に関して同軸上のモータ部材の配置により、前記経路と一致する部分を有し得る。滑動部材に対するモータ部材のそのような配置は、モータ部材が工具本体の内部に工具本体の切削部内に配置されていることに関わらず、前記経路に沿った滑動部材のかなりの移動を可能にする。
【0008】
本発明の実施形態によれば、滑動部材は、少なくとも10%、10%〜60%、20%〜50%、または30%〜50%だけ最内端位置におけるボーリング半径を超過する最外端位置における前記ボーリング半径に対応する2つの端位置間での、前記経路に沿ったモータ部材の行動により移動可能である。工具本体の回転によりボーリングされると被加工物の穴部内に生じる半径を少なくとも10%だけ調節する可能性をもたらすことにより、同じ工具本体を備えた同じボーリング工具は、実質的に異なる直径を有する穴部を設けるために使用されてもよく、これにより時間を節約すること、ならびにそのことにより、ボーリングされる穴部の直径の各変更に関してボーリング工具および/または工具本体を変更する必要に関するコストを節約することが可能になる。60%より大きい前記ボーリング半径の調節性が、結果的に、複雑な動力伝達装置および/またはモータ部材を滑動部材に接続する部材の設計の必要をもたらし、ボーリング工具をより単純でなく、よりロバストでなくすると考えられる。
【0009】
本発明の実施形態によれば、制御ユニットは、工具本体の内部に工具本体の前記切削部内に配置されているマイクロコントローラを含む。切削部内の制御ユニットの配置は、工具本体の回転によりボーリングされると被加工物の穴部内に生じる半径の調節を得るためのシステムをコンパクトにすることに関与する。
【0010】
本発明の実施形態によれば、マイクロコントローラは、工具本体の回転により達成されるボーリング直径の設定値を受信するためにかつモータ部材を制御して滑動部材をこれに対応する位置へ移動させるために、工具本体の外部に配置されているデバイスと通信するように構成されている。これは、操作者により、またはさらには自動的に適切なソフトウェアにより、前記デバイスから工具本体の内部に配置されているマイクロコントローラへ命令を送信することにより、前記調節を実施することを容易にし、簡単にできるようにする。
【0011】
本発明の実施形態によれば、マイクロコントローラは、無線通信により前記デバイスと通信するように構成されている。そのような通信手段は、前記デバイスからマイクロコントローラへのデータ伝送のために、例えばLow Energy(LE) Bluetoothプロトコルを使用してもよい。デバイスは、例えばPC、スマートフォン、またはタブレットであってもよい。前記デバイスを工具本体の内部と接続させるケーブルを考慮する必要がないので、無線通信手段はボーリング工具の取扱いを容易にする。
【0012】
本発明の実施形態によれば、ボーリング工具は、工具本体の内部に配置されておりかつマイクロコントローラのファンクションおよびモータに電気エネルギーを供給するように接続されている、電池などのエネルギー貯蔵部材を含む。この特徴は、外部電力源からのケーブルが工具本体の内部に接続される必要がなく、これはボーリング工具の取扱いをより複雑でなくすることを意味する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、ボーリング工具は、工具本体の内部に配置されておりかつ工具本体の固定部に対する滑動部材の位置を検出するように構成されており、前記経路に沿った前記滑動部材の位置を示すセンサをさらに含み、検出された位置に関する情報を制御ユニットへ送信し、該制御ユニットは、検出された位置の値を、設定されるボーリング半径に関して得られる位置の値と比較し、これら2つの位置の値の一致を得るために、モータ部材を制御して滑動部材を移動させるように構成されている。これは、0.5μmほどのまたはさらに細かいなどの、工具本体の回転によりボーリングされると被加工物の穴部内に生じる半径の調節の高分解能の獲得を可能にする。したがって、前記経路に沿った滑動部材の実際の位置を測定するそのようなセンサを有することは、信頼性の増大、およびいくつかの場合には、滑動部材の移動を引き起こすモータ軸により行われる回動の数を測定することに基づく測定装置に関する精度の上昇もまたを可能にする。
【0014】
本発明の実施形態によれば、モータ部材は、滑動部材を移動させるために、自体の部材を回転させるかまたは線形並進運動を実施させるように構成されている。これらはモータ部材の適切な動作方法である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、モータ部材は、滑動部材のねじ山、滑動部材と共に移動するようになされている部材のねじ山、または工具本体に対して固定されている部材のねじ山と係合しているねじ付き部材を回転させることにより、滑動部材の移動を引き起こすように構成されている。モータ部材から滑動部材への移動の伝達を得るための、部材のそのような設計は、結果的に、簡単な手段により高精度をもたらす。
【0016】
本発明の実施形態によれば、滑動部材は中空であり、モータ部材は滑動部材の内部に配置されており、これは、結果的に、滑動部材とモータ部材との非常にコンパクトな組合せをもたらし、依然として大きな調節を実施する可能性を得ると同時に、工具本体の切削部の内部に空間を殆ど必要としない。
【0017】
本発明の実施形態によれば、モータ部材は、滑動部材に固定されている部材の内ねじ山と係合している外ねじ山を備えた中空ねじの内部に配置されており、モータ部材は、該中空ねじを移動させ、そのことにより滑動部材を前記経路に沿って移動させるために、前記ねじを回転させるように構成されている。これは、前記大きな調節をもたらすと同時に、モータ部材と滑動部材とのコンパクトな配置を実現する簡単な方法をもたらす。
【0018】
本発明の実施形態によれば、モータ部材は、滑動部材を取り巻く拡大された周辺の範囲内に滑動部材の横に配置されている。これは、前記大きな調節を得る別の可能性を生む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、モータ部材は、これの部分を、前記経路と平行に延びている回転軸を中心として回転させるように構成されている。モータ部材のそのような配置は、これの移動可能な部分から滑動部材への移動を伝達することを容易にし、これは、本発明の実施形態により、別のねじ付き部材と係合しているねじ付き部材を回転させるために、別の歯車と係合している歯車を回転させるようにモータ部材を構成することにより得られてもよく、ここにおいて、これらのねじ付き部材の1つが、前記歯車の回転により前記経路に沿った滑動部材の移動を引き起こすために、滑動部材に接続されている。
【0020】
本発明の他の有利な特徴および利点が、以下に続く説明から見えてくる。
【0021】
添付図面を参照して、例として記載されている、本発明の実施形態の特定の説明が以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】インサートが最小ボーリング半径に対応する位置にある状態の、本発明の第1の実施形態によるボーリング工具の略示部分断面図である。
図2】前記インサートがより大きなボーリング半径に対応する位置にある状態の、図1に示されている工具の図である。
図3】ボーリング工具の動作を示すために使用されている、図1および図2に示されているボーリング工具の略示斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態によるボーリング工具の、図1の図に対応する図である。
図5図4に示されている実施形態において、モータ部材、滑動部材、およびこれらの間で動作する動力伝達装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態によるボーリング工具1が、図1図3に示されており、該ボーリング工具の設計をここで説明する時、これらの図が平行して参照される。ボーリング工具は、前端部3と後端部4とを含む工具本体2を有し、該前端部と該後端部との間に中心回転軸Cが延び、工具本体が中心回転軸Cの周りを回転方向Rに回転可能である。滑動部材5が、工具本体の内部に、回転軸Cに対して垂直に方向付けられていると同時に、回転軸Cに対して横方向に延びている経路P(図1の破線参照)に沿って移動可能に配置されている。インサートポケット6(図3参照)が滑動部材と関連しており、ねじ8により滑動部材5に固定されている部分7上に配置されていることにより、滑動部材と共に移動する。インサートポケットは、締結部材10により中に固定される切削インサート9を受容するように構成されている。切削インサートは切削刃11を有し、回転軸Cを中心として工具本体を回転させると被加工物内の穴部の壁上でボーリング動作を実施するために、工具本体からこれの回転軸Cに対して横方向に突出している。
【0024】
電動機の形のモータ部材12が、空洞部13を有することにより中空である滑動部材の内部に、工具本体の前端部3の工具本体の切削部14内に配置されている。該モータ部材12は、前記経路Pに関して同軸に配置されておりかつモータ部材12が内部に配置されている中空ねじ16に固定されている軸15を回転させるように構成されている。
【0025】
該中空ねじ16は、滑動部材5に対して固定されているナット19の内ねじ山18と係合している外ねじ山17を有する。したがって、モータ部材12の動作による軸15の回転に起因する中空ねじ16の回転が、滑動部材5を、ナット19内の中空ねじ16の回動により、工具本体の回転軸Cに対して横方向に移動させる。回転軸Cに対する切削インサート9の切削刃11の距離、およびこれによる、工具本体の回転によりボーリングされると被加工物の穴部内に生じる半径は、そのような移動により調節され得る。図1は滑動部材の最内端位置を示し、図2は滑動部材の殆ど最外端位置を示し、結果的に、約25%だけ、図1による工具の半径を超過する前記半径を示す。
【0026】
また、ボーリング工具は、工具本体の内部に工具本体の切削部14内に配置されているマイクロコントローラ20の形の制御ユニットを有し、このマイクロコントローラは、モータ部材を制御して、滑動部材を移動させるように構成されている。マイクロコントローラは、工具本体の回転により達成されるボーリング直径の設定値を受信しかつモータ部材を制御して滑動部材をこれに対応する位置へ移動させるために、工具本体の外部に配置されているデバイス21(ここではラップトップコンピュータ)と通信するように構成されている。マイクロコントローラ20は、Low Energy(LE) Bluetoothプロトコルなどの無線通信手段により、また例えばスマートフォンまたはタブレットであってもよいそのような外部デバイスと通信するように構成されている。電池22が工具本体の内部に配置されており、マイクロコントローラ20のファンクションおよびモータ部材に接続されて電気エネルギーを供給し、また、図2に概略的に示されているセンサ23が工具本体の内部に配置されており、前記経路Pに沿った滑動部材の位置を示す、工具本体の固定部に対する滑動部材5の位置を検出し、検出された位置に関する情報をマイクロコントローラ20へ送信するように構成されている。マイクロコントローラは、検出された位置の値を、外部デバイス21から受信される指示に従って設定されるボーリング半径に関して得られる位置の値と比較し、これら2つの位置の一致を得るために、モータ部材を制御して滑動部材を移動させるように構成されている。滑動部材の実際の位置を測定するそのようなセンサ23の統合が、ボーリング工具の大きなボーリング直径調節に関しても高精度を得ることを可能にする。
【0027】
図4および図5は、本発明の第2の実施形態によるボーリング工具を示し、第1の実施形態における構成要素と一致する、このボーリング工具の構成要素が、ダッシュ記号を付加された同一の参照番号を与えられている。モータ部材12’は、本実施形態では、滑動部材を取り巻く拡大された周辺の範囲内に滑動部材5’の横に配置されており、軸15’の形の自体の部分を、経路Pと平行に延びている回転軸Aを中心として回転させるように構成されている。モータ部材は、滑動部材5’に対して固定されているボールナット27の形の別のねじ付き部材と係合しているボールねじ26の形のねじ付き部材を回転させるために、別の歯車25と係合している歯車24を回転させるように構成されている。したがって、ボーリング工具の回転軸Cに対する切削インサート9’の切削刃11’の距離を変更するために、ボールねじ26の回転が滑動部材5’を前記経路Pに沿って移動させ、そのことにより、工具本体の回転によりボーリングされると、半径が被加工物の穴部内に生じる。
【0028】
本発明は、当然、前述されている本発明の実施形態に限定されないが、これらの修正に対する多くの可能性が、添付の特許請求の範囲において定められる本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかになると考えられる。
【0029】
モータ部材は、前述されている実施形態において回転電動機であるが、これは、線形並進タイプなどの、任意の考えられるタイプのものであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5