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特許6982583集電体、その極シート及び電気化学デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982583
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】集電体、その極シート及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20211206BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20211206BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/02 Z
   H01M4/70 Z
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-10225(P2019-10225)
(22)【出願日】2019年1月24日
(65)【公開番号】特開2019-186195(P2019-186195A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年1月24日
(31)【優先権主張番号】201810278726.X
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁成都
(72)【発明者】
【氏名】黄華鋒
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
(72)【発明者】
【氏名】劉欣
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/002055(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0315537(US,A1)
【文献】 特開平10−241699(JP,A)
【文献】 特開2012−129114(JP,A)
【文献】 特開2003−282064(JP,A)
【文献】 国際公開第00/042669(WO,A1)
【文献】 特開2010−040489(JP,A)
【文献】 特開2009−064767(JP,A)
【文献】 特開平11−086868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と導電層とを備える集電体であって、
前記導電層は前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、前記導電層の常温シート抵抗Rは0.01Ω/□≦R≦0.15Ω/□を満たし、
前記集電体には、前記絶縁層と前記導電層とを貫通する孔が複数設けられ、前記導電層の表面全体の面積に対する前記孔の面積の総和の比は、0.01%〜10%であり、
前記導電層は、複数の前記孔の孔壁表面にも位置し、且つ前記孔壁表面に前記導電層が設けられた前記孔ごとに、前記導電層は、前記孔壁表面の一部又は全部に位置することを特徴とする集電体。
【請求項2】
前記導電層の常温シート抵抗Rは0.02Ω/□≦R≦0.1Ω/□を満たすことを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記導電層の厚さはD2であり、D2は300nm≦D2≦2μmを満たすことを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【請求項4】
D2は500nm≦D2≦1.5μmを満たすことを特徴とする請求項3に記載の集電体。
【請求項5】
前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、部分的に又はすべて互いに接続されていることを特徴とする請求項に記載の集電体。
【請求項6】
前記導電層は、前記絶縁層の上表面と下表面に位置し、前記絶縁層の上表面と下表面に位置する導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、部分的に又はすべて互いに接続されていることを特徴とする請求項に記載の集電体。
【請求項7】
前記導電層の材料は、金属導電材料、炭素系導電性材料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【請求項8】
前記金属導電材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、アルミニウム-ジルコニウム合金から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の集電体。
【請求項9】
前記炭素系導電性材料は、グラファイト、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の集電体。
【請求項10】
前記絶縁層の材料は、有機ポリマー絶縁材料、無機絶縁材料、複合材料から選ばれる1種であり、
前記有機ポリマー絶縁材料は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、エポキシ樹脂、ポリホルムアルデヒド、フェノール樹脂、ポリプロピレンエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、ポリビニリデンフルオライド、ポリカーボネート、アラミド、ポリジホルミルフェニレンジアミン、セルロース及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその架橋物、ポリエチレングリコール及びその架橋物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記無機絶縁材料は、酸化アルミニウム、炭化珪素、シリカのうちの少なくとも1種であり、
前記複合材料は、エポキシ樹脂ガラス繊維強化複合材料、ポリエステル樹脂ガラス繊維強化複合材料のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【請求項11】
前記絶縁層の材料は有機ポリマー絶縁材料であることを特徴とする請求項10に記載の集電体。
【請求項12】
前記絶縁層の厚さはD1であり、D1は1μm≦D1≦20μmを満たすことを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【請求項13】
D1は2μm≦D1≦10μmを満たすことを特徴とする請求項12に記載の集電体。
【請求項14】
D1は2μm≦D1≦6μmを満たすことを特徴とする請求項13に記載の集電体。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の集電体と、前記集電体の少なくとも1つの表面に形成された電極活物質層とを備えることを特徴とする極シート。
【請求項16】
前記電極活物質層は前記複数の孔にも充填され、
前記集電体の少なくとも1つの表面に形成された電極活物質層と、前記複数の孔に充填された電極活物質層とは、部分的に又はすべて互いに接続されていることを特徴とする請求項15に記載の極シート。
【請求項17】
正極シート、セパレータ及び負極シートを備える電気化学デバイスであって、 前記正極シート及び/又は負極シートは請求項15又は16に記載の極シートであることを特徴する電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池分野に関し、具体的に、集電体、その極シート及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力、長サイクル寿命、低環境汚染などの利点を有するため、電気自動車及び消費類電子製品に広く応用されている。しかし、リチウムイオン電池が、押圧、衝突又は穿刺などの異常状況を受けた時、発火や爆発が発生しやすく、深刻な危害をもたらす恐れがある。従って、リチウムイオン電池の安全問題は、リチウムイオン電池の応用および普及を大きく制限している。
【0003】
多数の実験の結果は、電池の内部短絡が、リチウムイオン電池の安全上のリスクの根本的な原因であることを示している。電池の内部短絡の発生を避けるために、研究者らは、セパレータの構造、電池の機械構造などを改善しようと試みた。そのうち、一部の研究は、集電体の設計を改善することによってリチウムイオン電池の安全性を向上させることである。
【0004】
衝突、押圧、穿刺などの異常状況の発生によって電池が内部短絡を生じると、電池の温度が上昇する。従来技術には、金属集電体の材料に低融点合金を添加する技術案があり、電池温度の上昇に伴って、その集電体における低融点合金が溶融して、極シートの開路を引き起こし、これにより、電流が遮断され、電池の安全性が改善される。或いは、樹脂層の両面に金属層が複合される多層構成を有する集電体を使用して、電池温度の上昇に伴って、樹脂層の材料の融点に達すると、その集電体にける樹脂層が溶融して極シートを破損させ、これにより、電流が遮断され、電池の安全性の問題が改善される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術におけるこれらの方法は、いずれもリチウムイオン電池の内部短絡が発生することを効果的に防止すことができず、異常状況の発生後に電池が動作し続けることを保証することもできない。上記これらの改善方法では、電池に内部短絡が発生した後、電池の温度が依然として急激に上昇する。電池の温度が急激に上昇すると、安全部材が迅速にレスポンスできなければ、依然として異なる程度の危険が発生する。さらに、上記これらの改善方法では、安全部材がレスポンスした後、電池の安全上のリスクが解消されるが、電池は動作し続けることができない。
【0006】
よって、衝突、押圧、穿刺などの異常状況が発生した後、電池の内部短絡の発生による発火や爆発などの事故を効果的に防止できるとともに、電池の正常動作に影響を与えない集電体及び電池の設計を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題に鑑みて、本発明は、集電体、その極シート及び電気化学デバイスを提供する。
【0008】
第1態様において、本発明は、集電体が提供され、この集電体は、絶縁層と導電層とを備え、前記導電層は前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、前記導電層の常温シート抵抗Rは0.01Ω/□≦R≦0.15Ω/□を満たし、前記集電体には、絶縁層と導電層とを貫通する複数の孔が設けられている。
【0009】
第2態様において、本発明は、第1態様に係る集電体を備える極シートを提供する。
【0010】
第3態様において、本発明は、第2態様に係る極シートを備える電気化学デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る技術案は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
本発明に係る集電体は、絶縁層の表面に導電層が設けられ、導電層の常温シート抵抗Rが0.01Ω/□≦R≦0.15Ω/□を満たし、1つ目の有益な効果として、本発明に係る集電体は、電池異常時に短絡が発生した場合の短絡抵抗を大きくし、短絡電流を大幅に低減することにより、短絡時の発熱量を大きく低減して、電池の安全性を改善することができる。2つ目の有益な効果として、集電体には前記絶縁層と前記導電層とを貫通する複数の孔が設けられていることにより、導電層での応力の開放が容易になり、導電層と絶縁層との間の結合力を著しく改善することができる。3つ目の有益な効果として、釘刺しなどの異常状況では、孔が設けられた集電体は、セルの内部における金属バリの数を減らすることができ、電池の安全性をさらに改善することができる。4つ目の有益な効果として、孔が設けられていることにより、電解液が通過しやすくなり、集電体に基づいた極シートの電解液に対する濡れ性を改善し、さらに極シート及び電池の分極を減少させ、電池の電気化学性能、例えば高速充電および放電性能、サイクル寿命などを改善することができる。5つ目の有益な効果として、集電体に複数の孔が設けられていることにより、集電体の重量をさらに軽くして、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る1つの具体的な実施態様における正極集電体の平面図である。
図2図1に示す正極集電体の断面図である。
図3図1に示す正極集電体の斜視断面図である。
図4】本発明に係るもう1つの具体的な実施形態における正極集電体の構成模式図である。
図5】本発明に係るもう1つの具体的な実施形態における正極集電体の平面図である。
図6図5に示す正極集電体の断面図である。
図7図5に示す正極集電体の斜視断面図である。
図8】本発明に係る1つの具体的な実施態様における負極集電体の平面図である。
図9図8に示す負極集電体の断面図である。
図10図8に示す負極集電体の斜視断面図である。
図11】本発明の1つの具体的な実施態様における正極シートの断面図である。
図12】本発明の1つの具体的な実施態様における負極シートの断面図である。
図13】本発明の1回の釘刺し実験を示す模式図(孔は図示せず)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではないと理解されるべきである。かかる実施例は、一部の実施例に過ぎず、本発明のすべての実施例ではないと明確にされるべきである。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労力をかけない前提で得た他の全ての実施例は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0014】
以下、本発明に係る実施例の第1態様で提供される集電体の構成及び性能を詳細に説明する。
集電体であって、絶縁層と導電層とを備え、前記導電層は前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、前記導電層の常温シート抵抗Rは0.01Ω/□≦R≦0.15Ω/□を満たし、前記集電体には、絶縁層と導電層とを貫通する複数の孔が設けられている。
【0015】
前記絶縁層は前記導電層を載置するためのものであり、前記導電層は電極活物質層を載置するためのものであり、本発明に係る実施例の集電体における絶縁層が導電せず、且つ導電層の常温シート抵抗Rが0.01Ω/□≦R≦0.15Ω/□を満たすため、その抵抗が大きくて、電池異常時に短絡が発生した場合の短絡抵抗を大きくし、短絡電流を大幅に低減することができ、短絡時の発熱量を大きく低減して、電池の安全性を改善することができる。
【0016】
なお、従来の金属箔に代えて、集電体として、絶縁層と導電層の複合集電体を用いることで電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0017】
さらに、集電体には、絶縁層と導電層とを貫通する複数の孔が設けられていることにより、導電層での応力の開放が容易になり、導電層と絶縁層との間の結合力を著しく改善することができ、本発明に係る集電体の長期間における信頼性と使用寿命を改善することができる。
【0018】
そして、釘刺しなどの異常状況で、異物が集電体の導電層と絶縁層を刺通した際に生じるバリ、特に金属バリの数を減らして、金属バリがセパレータを刺通して負極に直接接触することによる短絡のリスクを低減可能であるため、電池の安全性をさらに改善することができる。
【0019】
さらに、集電体に絶縁層と導電層とを貫通する複数の孔が設けられていることにより、電解液が通過しやすくなり、当該集電体に基づいた極シートの電解液に対する濡れ性を改善して、極シートと電池の分極を小さくし、電池の高倍率充放電性能、サイクル寿命などの電気化学性能を改善することができる。また、集電体に設けられた複数の孔により、集電体の重量をさらに軽くし、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0020】
孔の孔径は0.001mm〜3mmである。孔の孔径が小さすぎると、安全の改善、分極の改善などの効果は特に顕著なものではない。孔の孔径が大きすぎると、集電体は加工プロセスで破断の現象が発生しやすい。
【0021】
前記絶縁層の表面に位置する導電層の全表面に基づき、孔の面積比率は0.01%〜10%である。面積比率が小さすぎると、安全の改善、分極の改善などの効果を奏することが難しくなり、面積比率が大きすぎると、集電体は加工プロセスで破断の現象が発生しやすい。
【0022】
孔と孔との間の間隔は0.2mm〜5mmである。前記間隔は等間隔分布、又は前記範囲内での複数種の間隔分布であってもよい。等間隔分布であることが好ましい。
【0023】
孔の形状は平行四辺形、略平行四辺形、円形状、略円形状、楕円形状、略楕円形状のうちの1種であってもよい。
【0024】
好ましくは、導電層は、絶縁層の少なくとも1つの表面に位置するのみながず、複数の孔の孔壁表面にも位置し、且つ前記孔壁表面に前記導電層が設けられた前記孔ごとに、前記導電層は、前記孔壁表面の一部又は全部に位置する。
【0025】
好ましくは、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、部分的に又はすべて互いに接続されている。
【0026】
好ましくは、導電層は絶縁層の上表面と下表面に設けられ、且つ、導電層は複数の孔の孔壁表面にも位置し、且つ前記孔壁表面に前記導電層が設けられた前記孔ごとに、前記導電層は、前記孔壁表面の一部又は全部に位置する。好ましくは、前記絶縁層の上表面と下表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、部分的に又はすべて互いに接続されている。
【0027】
そのため、導電層は絶縁層の少なくとも1つの表面及び複数の孔から絶縁層をしっかり「掴み」、絶縁層と導電層との結合は平面方向におけるものだけではなく、深さ方向におけるものもあり、導電層と絶縁層と結合力を強くして、当該集電体の長期間における信頼性と使用寿命を改善することができる。特に、導電層が絶縁層の上表面と下表面及び複数の孔の孔壁表面に設けられている場合、導電層と絶縁層の結合力はより強くなる。
【0028】
なお、当該集電体は、絶縁層が導電せず、且つ導電層が薄いため、導電性が当該複合集電体の「短所」となり、導電層が絶縁層の少なくとも1つの表面及び複数の孔の孔壁表面に位置するようにすることにより、集電体において立体的、且つ多点的な導電ネットワークを形成することができ、当該複合集電体の導電性を大きく改善し、極シートと電池の分極を小さくし、電池の高倍率充放電性能、サイクル寿命などの電気化学性能を改善することができる。
【0029】
理解できるように、前記複数の孔の孔壁表面に位置する導電層は、絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する導電層とは、厚さが同じであってもよく、又は異なってもよく、材料が同じであってもよく、又は異なってもよい。前記孔壁表面に前記導電層が設けられた前記孔ごとに、前記導電層は、前記孔壁表面の一部又は全部に位置し、好ましくは、孔壁表面の全部に位置する。好ましくは、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、全部で互いに接続されている。
【0030】
[絶縁層]
本発明の実施例に係る集電体では、絶縁層は、導電層を支持・保護する作用を発揮し、その厚さがD1であり、D1が1μm≦D1≦20μmを満たす。絶縁層が薄すぎると、極シートの加工プロセスなどの過程で断裂が非常に発生しやすく、絶縁層が厚すぎると、当該集電体が用いられた電池の体積エネルギー密度を低下させる。
【0031】
ここで、絶縁層の厚さD1の上限は20μm、15μm、12μm、10μm、8μmであってもよく、絶縁層の厚さD1の下限は1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmであってもよい。絶縁層の厚さD1の範囲は、上限又は下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、2μm≦D1≦10μmであり、より好ましくは、2μm≦D1≦6μmである。
【0032】
絶縁層の材料は、有機ポリマー絶縁材料、無機絶縁材料、複合材料から選ばれる1種であることが好ましい。より好ましくは、複合材料が、有機ポリマー絶縁材料と無機絶縁材料とから構成される。
ここで、有機ポリマー絶縁材料は、ポリアミド(Polyamide、PAと略称する)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PETと略称する)、ポリイミド(Polyimide、PIと略称する)、ポリエチレン(Polyethylene、PEと略称する)、ポリプロピレン(Polypropylene、PPと略称する)、ポリスチレン(Polystyrene、PSと略称する)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride、PVCと略称する)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(Acrylonitrile butadiene styrene copolymers、ABSと略称する)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalat、PBTと略称する)、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(Poly−p−phenylene terephthamide、PPAと略称する)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、ポリホルムアルデヒド(Polyformaldehyde、POMと略称する)、フェノール樹脂(Phenol−formaldehyde resin)、ポリプロピレンエチレン(PPEと略称する)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFEと略称する)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenefluoride、PVDFと略称する)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PCと略称する)、アラミド、ポリジホルミルフェニレンジアミン(poly diformyl phenylene diamine)、セルロース及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその架橋物、ポリエチレングリコール及びその架橋物から選ばれる少なくとも1種である。
【0033】
ここで、無機絶縁材料は、酸化アルミニウム(Al)、炭化珪素(SiC)、シリカ(SiO)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
ここで、複合材料は、エポキシ樹脂ガラス繊維強化複合材料、ポリエステル樹脂ガラス繊維強化複合材料のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
好ましくは、絶縁層の材料は、有機ポリマー絶縁材料から選ばれるものである。一般的に、絶縁層の密度が金属よりも小さいため、本発明の集電体は、電池の安全性を向上させるとともに、電池の重量エネルギー密度を向上させることもできる。そして、絶縁層がその表面に位置する導電層に対して良好な載置及び保護の作用を発揮することができるため、従来の集電体でよく発生する極シートの断裂現象が発生し難しい。
【0036】
[導電層]
本発明の実施例に係る集電体では、導電層の常温シート抵抗Rは0.01Ω/□≦R≦0.15Ω/□を満たす。
【0037】
好ましくは、導電層の常温シート抵抗Rは0.02Ω/□≦R≦0.1Ω/□を満たす。
【0038】
導電層の材料は、金属導電材料及び炭素系導電性材料から選ばれる少なくとも1種であり、金属導電材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、アルミニウム-ジルコニウム合金から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、前記炭素系導電性材料は、グラファイト、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
一般的に、電池の内部抵抗には、電池オーム内部抵抗と電池分極内部抵抗が含まれ、活物質抵抗、集電体抵抗、界面抵抗、電解液組成などがいずれも電池の内部抵抗に大きな影響を与える。異常状況で短絡が発生した時、内部短絡が発生したため、電池の内部抵抗が大幅に低下する。よって、集電体の抵抗を大きくすることにより、電池の短絡後の内部抵抗を大きくすることができ、電池の安全性を改善することができる。
【0040】
なお、好ましくは、導電層の厚さがD2であり、D2は300nm≦D2≦2μmを満たし、500nm≦D2≦1.5μmを満たすことが好ましい。
【0041】
導電層の常温シート抵抗Rは、導電と集電の作用を発揮可能であればよい。導電層の常温シート抵抗Rが大きすぎると、導電と集電の効果が悪化しすぎてしまい、電池の分極が大きくなり、極シートの加工プロセスなどのプロセスで破損が発生しやすい。導電層の常温シート抵抗Rが小さすぎると、電池の重量エネルギー密度に影響を与え、電池の安全性の改善に不利である。
【0042】
本発明の実施例では、常温シート抵抗Rの上限は0.15Ω/□、0.13Ω/□、0.11Ω/□、0.09Ω/□、0.07Ω/□であってもよく、下限は0.01Ω/□、0.03Ω/□、0.05Ω/□、0.065Ω/□であってもよく、Rの範囲は上限と下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、Rの範囲は0.02Ω/□≦R≦0.1Ω/□である。導電層の厚さD2の上限は2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nmであってもよく、導電層の厚さD2の下限は800nm、700nm、600nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nmであってもよく、導電層の厚さD2の範囲は上限と下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、500nm≦D2≦1.5μmである。
【0043】
導電層は、気相成長法(vapor deposition)、無電解メッキ(Electroless plating)の少なくとも1種により絶縁層に形成されてもよい。気相成長法として、物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD)が好ましい。物理的気相成長法として、蒸着法、スパッタ法の少なくとも1種が好ましい。蒸着法として、真空蒸着法(vacuum evaporating)、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)、電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation method、EBEM)の少なくとも1種が好ましい。スパッタ法として、マグネトロンスパッタ法(Magnetron sputtering)が好ましい。
【0044】
正極集電体の模式図は図1乃至図9に示す。
【0045】
図1〜3を参照すると、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の1つの表面に設けられた正極導電層102とを備え、正極集電体10には、複数の孔201が開設され、複数の孔201は正極絶縁層101と正極導電層102とを貫通する。正極導電層102は複数の孔201の孔壁表面の一部にも位置する。
【0046】
図4では、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の1つの表面に設けられた正極導電層102とを備え、正極集電体10には、複数の孔201が開設され、複数の孔201は正極絶縁層101と正極導電層102とを貫通する。正極導電層102は複数の孔201の全ての孔壁表面にも位置する。
【0047】
図5〜7では、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の1つの表面に設けられた正極導電層102とを備え、正極集電体10には、複数の孔201が開設され、複数の孔201は正極絶縁層101と正極導電層102とを貫通し、且つ、正極導電層102は孔201の孔壁表面に形成されていない。
【0048】
図8〜10では、負極集電体20は、負極絶縁層201と、負極絶縁層201の相対する2つの表面に設けられた負極導電層202とを備え、負極集電体20には、複数の孔401が開設され、複数の孔401は負極絶縁層201と負極導電層202とを貫通する。負極導電層202は複数の孔401の全ての孔壁表面にも位置し、且つ負極絶縁層201に位置する負極導電層202は、孔壁表面に位置する負極導電層202とは、互いに接続されている。
【0049】
本発明の実施例の第2態様は、本発明の実施例の第1態様に係る集電体と、集電体表面に形成された電極活物質層とを備える極シートを提供する。
【0050】
図11は、本発明の実施例の正極シートの構成模式図である。図11に示すように、正極シート1は、正極集電体10と、正極集電体10の表面に形成された正極活物質層11とを備え、ここで、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の相対する2つの表面に設けられた正極導電層102とを備え、正極集電体10には、複数の孔201が開設され、複数の孔201は正極絶縁層101と正極導電層102とを貫通する。正極導電層102は複数の孔201の全ての孔壁表面にも位置し、且つ正極絶縁層101に位置する正極導電層102は、孔壁表面に位置する正極導電層102とは、互いに接続されている。正極活物質層11は正極導電層102に設けられ、複数の孔201を被覆するが、複数の孔201内に充填されていない。実際の場合では、正極活物質層11の塗布後、又は、正極活物質層11が乾燥されて圧密された後、正極活物質層11は孔の口部から孔内へ「侵入」することがあり得る。
【0051】
図12は、本発明の実施例に係る負極シートの構成模式図であり、図12に示すように、負極シート2は、負極集電体20と、負極集電体20の表面に形成された負極活物質層21とを備え、ここで、負極集電体20は、負極絶縁層201と、負極絶縁層201の相対する2つの表面に設けられた負極導電層202とを備え、負極集電体20には、複数の孔401が開設され、複数の孔401は負極絶縁層201と負極導電層202とを貫通する。負極導電層202は、複数の孔401の全ての孔壁表面にも位置し、且つ負極絶縁層201に位置する負極導電層202は、孔壁表面に位置する負極導電層202とは、互いに接続されている。負極活物質層21は、負極導電層202に設けられているとともに、複数の孔401内に充填されている。
【0052】
なお、上記図1図12は模式図に過ぎず、図に示す孔の大きさ、形状及び分布形式はいずれも模式的に表したものである。
【0053】
理解できるように、絶縁層の相対する2つの表面にいずれも導電層が設けられている場合、集電体の両面に活物質が塗布されて作製された正極シートと負極シートは電気化学デバイスに直接適用することが可能である。絶縁層の1つの表面に導電層が設けられている場合、集電体の片面に活物質が塗布されて作製された正極シートと負極シートは折り畳まれてから電池に適用することが可能である。
【0054】
電極活物質層は集電体の少なくとも1つの表面に形成されてもよい。この場合、電極活物質層は集電体の表面に設けられているとともに、前記複数の孔を被覆する。好ましくは、前記孔の孔壁表面に導電層が設けられた後、その孔径が35μm以下であるとき、電極活物質層は集電体の少なくとも1つの表面に形成されてもよく、且つ、スラリー漏れなどの現象が発生し難い。電極活物質層が乾燥されて圧密された後、電極活物質層は孔の口部から孔内へ「侵入」することがあり得る。
【0055】
好ましくは、電極活物質層は、集電体の少なくとも1つの表面に形成され、且つ前記電極活物質層は、部分的又は完全に集電体の前記複数の孔に充填されてもよく、即ち、前記複数の孔には、部分的又は完全に電極活物質層が充填されており、且つ前記集電体の少なくとも1つの表面に形成された電極活物質層と、集電体の前記複数の孔に形成された電極活物質層とは、部分的に又はすべて互いに接続されている。このように、電極活物質層と集電体との結合力がより強くなり、極シートと電池の長期間における信頼性、寿命がより優れる。また、電極活物質層が一定の孔隙率を有するため、このように構成することにより、極シートの電解液に対する濡れ性をより良くして、分極をより小さくすることができる。
【0056】
本発明の実施例は正極シートと、セパレータと、負極シートとを備える電気化学デバイスをさらに提供する。具体的に、当該電気化学デバイスは巻き取り式又は積層式の電池であってもよく、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池のうちの1種であってもよいが、これに限定されない。
【0057】
ここで、正極シート及び/又は負極シートは上記実施例に係る極シートである。
【0058】
好ましくは、本発明の実施例に係る電池の負極シートに上記本発明に係る極シートが用いられる。通常の負極集電体におけるアルミニウムの含有量が高いため、電池異常時に短絡が発生した時、短絡が発生した箇所に生成する熱が激しいテルミット反応を引き起こし、大量の熱が生じて電池に爆発などの事故が発生する。よって、電池の負極シートとして、本発明の極シートが用いられる場合、負極集電体の短絡抵抗が大幅に大きくなり、且つ導電層の厚さが通常のアルミニウム箔集電体よりも薄いため、短絡電流を大幅に減少させて、短絡時の発熱量を大きく低減し、電池の安全性を改善し、激しいテルミット反応が起きることも回避することができ、電池の安全性を著しく改善することができる。集電体に前記絶縁層と前記導電層とを貫通する孔が複数設けられていることにより、電解液が通過しやすくなり、当該集電体に基づいた極シートの電解液に対する濡れ性を改善して、極シートと電池の分極を小さくし、電池の高倍率充放電性能、サイクル寿命などの電気化学性能を改善することができる。また、集電体に設けられた複数の孔で集電体の重量をさらに軽くして、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0059】
本発明では、釘刺し実験で電池の異常状況をシミュレーションし、釘刺し後の電池の変化を確認した。図13は、本発明の釘刺し実験を示す模式図である。説明を簡単にするために、図において、釘4が電池の1層の正極シート1、1層のセパレータ3及び1層の負極シート2を貫通させることのみを示すが、実際の釘刺し実験では、釘4が、通常に複数層の正極シート1と、複数層のセパレータ3と複数層の負極シート2とを備える電池全体を貫通させる。電池に釘刺しによって短絡が発生した後、短絡電流が大幅に低下し、短絡発熱量を電池に完全に吸収される範囲に制御するため、内部短絡が発生した箇所で生じる熱が電池に完全に吸收され、電池の温度上昇も小さく、短絡による損壊が電池に与える影響が釘刺しの箇所に限られ、「点開路」のみが形成され、電池の短時間での正常動作に影響しない。
【0060】
<実施例>
1.集電体の製造
1.1 一定の厚さを有する絶縁層を選択し、絶縁層に孔を開け、そして、真空蒸着の方式で一定の厚さを有する導電層を形成した。これにより、導電層が絶縁層の少なくとも1つの表面及び孔の孔壁表面に堆積する。
1.2 一定の厚さを有する絶縁層を選択し、その表面に、真空蒸着の方式で一定の厚さを有する導電層を形成して、そして、孔を開けた。これにより、前記絶縁層と前記導電層とを貫通する孔を複数形成する。
1.3 一定の厚さを有する絶縁層を選択し、その表面に、真空蒸着の方式で一定の厚さを有する導電層を形成して、そして、孔を開けた。その後、平面表面、孔壁表面又は孔壁表面及び平面表面に導電層を堆積する。
【0061】
真空蒸着による導電層の形成条件は、以下の通りである。表面洗浄処理された絶縁層を真空蒸着チャンバ内に配置し、1600℃〜2000℃という高温で金属蒸発室内における高純度の金属ワイヤを溶融し蒸発させ、蒸発後の金属が真空蒸着チャンバ内の冷却システムを通過し、最後に絶縁層の表面に堆積して、導電層が形成される。
【0062】
2.極シートの製造
通常の電池塗布プロセスにより、集電体の表面に正極スラリー又は負極スラリーを塗布し、100℃で乾燥させた後、正極シート又は負極シートを得た。
【0063】
通常の正極シートでは、集電体が厚さ12μmのAl箔片であり、電極活物質層が一定の厚さを有する三元(NCM)材料層である。
【0064】
通常の負極シートでは、集電体が厚さ8μmのCu箔片であり、電極活物質層が一定の厚さを有するグラファイト材料層である。
【0065】
一部の実施例では、電極活物質層は集電体の平面部分のみに設けられ、一部の実施例では、電極活物質層が集電体の平面部分及び孔に設けられている。
【0066】
製造して得た集電体及びその極シートの具体的なパラメータが表1に示す。極シート1乃至極シート8の集電体において、絶縁層、導電層、電極活物質のパラメータが表1に示し、ここで、導電層が絶縁層の上表面と下表面に設けられ、導電層の形成方式が真空蒸着方式である。「表面のみ」は、集電体に絶縁層と導電層とを貫通する孔が複数設けられ、且つ導電層が絶縁層の上表面及び下表面のみに設けられていることを表し、「表面と孔」は、集電体に絶縁層と導電層とを貫通する孔が複数設けられ、且つ導電層が絶縁層の上表面及び下表面に設けられているのみならず、孔の全ての孔壁表面にも設けられ、且つ導電層の孔壁表面に形成された導電層は、絶縁層表面に形成された導電層とは互いに接続されていることを表し、導電層の厚さは1μmであり、孔の形状は円形状であり、孔径として、いずれも0.01mmとし、孔の面積比率として、いずれも5%とし、孔と孔との間の間隔として、いずれも0.2mmとし、電極活物質が複数の孔に充填されている。
【0067】
3.電池の製造
通常の電池製造プロセスにより、正極シート(圧密密度:3.4g/cm)、PP/PE/PPセパレータ及び負極シート(圧密密度:1.6g/cm)を一緒にベアセルに巻き取り、その後に電池ケースに入れ、電解液(EC:EMC体積比が3:7であり、LiPFが1mol/Lである)を注入してから、密封や、化成などの工程を行い、最後にリチウムイオン電池を得た。
【0068】
本発明の実施例で製造されたリチウムイオン電池及び比較例のリチウムイオン電池の詳細構成は、表2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
<実験例>
1.電池のテスト方法
リチウムイオン電池に対してサイクル寿命テストを行い、具体的なテスト方法は、以下の通りである
リチウムイオン電池を25℃と45℃との2種類の温度でそれぞれ充放電し、即ち、1Cの電流で4.2Vに充電してから、1Cの電流で2.8Vに放電して、第1サイクルの放電容量を記録した。その後、電池を1000サイクルだけ1C/1Cの充放電循環させ、1000サイクル目の電池の放電容量を記録して、1000サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、1000サイクル目の容量保持率を得た。
実験結果は、表3に示す。
【0072】
2.釘刺し実験の実験方法及びテスト方法
釘刺し実験:電池を満充電した後に固定して、常温で直径8mmの鋼針を25mm/sの速度で電池を貫通し、鋼針を電池に残しておき、釘刺しが完了した。その後、確認及びテストを行った。
【0073】
電池温度のテスト:マルチ温度計を使用して、釘刺す電池の釘刺し面と裏面の幾何学中心にそれぞれ感温線を付け、釘刺しが完了した後、5分間の電池温度追従テストを行って、5分間を経た時の電池温度を記録した。
【0074】
電池電圧のテスト:釘刺す電池の正極と負極を内部抵抗計の計測端に接続し、釘刺しが完了した後、5分間の電池電圧追従テストを行って、5分間を経た時の電池電圧を記録した。
記録された電池の温度と電圧のデータは、表4に示す。
【0075】
3.導電層と絶縁層の結合力のテスト方法
極シートを炭酸ジメチルとフッ化水素酸との混合溶媒に浸漬し、ここで、フッ化水素酸含有量は0.1wt%であり、そして、真空密封を行い、70℃の恒温箱に数日間保管し、保管完了後、極シートを取り出し、極シートを長手方向に二つ折りにするとともに、2Kgの分銅を二つ折りの箇所に配置して、圧密を10秒間行い、圧密完了後、極シートを伸ばし、折り目に導電層の脱落が生じたかどうかを観察して、脱落が生じ始めたときの保管日数を記録し、テストの結果は表5に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
備考:「N/A」とは、鋼針が電池を貫通した瞬間に、熱暴走と破壊が発生することを表す。
【0078】
【表5】
【0079】
表3の結果から見れば、通常の正極シートと通常の負極シートを使用した電池1に比べ、本発明の実施例に係る集電体を使用した電池のサイクル寿命が良好であり、通常の電池のサイクル性能と同等である。これから判明できるように、本発明の実施例の集電体が、製造された極シートと電池に何の悪影響も与えない。
【0080】
表4の結果から見れば、本発明の実施例に係る集電体が用いられていない電池1、即ち、通常の正極シートと通常の負極シートで構成された電池1は、釘刺しの瞬間に、電池温度が数百度急に上昇し、電圧がゼロまで急に低下する。これから判明できるように、釘刺しの瞬間に、電池に内部短絡が発生し、大量の熱が生じ、電池に瞬間的に熱暴走と破壊が発生するため、引き続き動作できない。
【0081】
通常の正極シートと通常の負極シートで構成された電池に比べ、本発明に係る複合集電体は電池の安全性を大きく改善することができる。なお、開孔された複合集電体は、開孔されていない複合集電体に比べ、安全性の改善に有利である。
【0082】
表5の結果から見れば、開孔されていない複合集電体に比べ、孔を有する複合集電体では、導電層と絶縁層の結合力が著しく強くなった。特に、導電層が絶縁層の表面及び複数の孔の孔壁表面に設けられている場合、導電層は絶縁層の少なくとも1つの表面及び複数の孔から絶縁層をしっかり「掴み」、絶縁層と導電層との結合は平面方向におけるもののみではなく、深さ方向におけるものもあり、導電層と絶縁層の結合力を強くして、当該集電体の長期間における信頼性と使用寿命を改善することができる。
【0083】
本発明は、好適な実施例により以上のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するためではなく、当業者が本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形や変更を実施可能であるので、本発明の保護範囲は、本発明の特許請求の範囲により規定される範囲に準ずるべきである。
【符号の説明】
【0084】
1…正極シート
10…正極集電体
101…正極絶縁層
102…正極導電層
11…正極活物質層
201…孔
2…負極シート
20…負極集電体
201…負極絶縁層
202…負極導電層
21…負極活物質層
401…孔
3…セパレータ
4…釘
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13