(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内側セルスタック群を構成する前記セルスタックと前記外側セルスタック群を構成する前記セルスタックとは、互いに独立した集電部材によって電気的に接続される、請求項1又は2に記載の燃料電池カートリッジ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、温度分布に基づいて判断された高温領域及び低温領域に対応するように複数のセルスタックを分類し、それぞれを分割された集電部材で電気的に接続している。しかしながら、各集電部材で接続されるセルスタックの数によっては、高温領域におけるセルスタックの数が、低温領域におけるセルスタックの数以下になることで、高温領域における電流密度が低温領域における電流密度より大きくなってしまうことがある。これは、高温領域における発熱量が低温領域における発熱量より大きくなり、温度分布の偏りを促進してしまう方向に作用することを意味する。そのため特許文献1では、電流のアンバランスの要因となる複数のセルスタック間の温度分布を十分に平準化できていない可能性がある。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、複数のセルスタック間の温度分布を平準化することが可能な燃料電池カートリッジ、燃料電池モジュール及び複合発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃料電池カートリッジは上記課題を解決するために、
固体酸化物形燃料電池を形成する複数のセルを含む複数のセルスタックを備える燃料電池カートリッジであって、
前記複数のセルスタックは、
前記複数のセルスタックが配置されるセル配置領域のうち内側領域に配置される内側セルスタック群と、
前記セル配置領域のうち前記内側領域より外側に位置する外側領域に配置される外側セルスタック群と、
を含み、
前記内側セルスタック群及び前記外側セルスタック群は、外部負荷に対して互いに直列に接続されており、
前記外側セルスタック群の電流密度が、前記内側セルスタック群の電流密度より大きくなるように構成される。
【0008】
上記(1)の構成によれば、燃料電池カートリッジが備える複数のセルスタックは、内側セルスタック群と、内側セルスタックより外側に配置される外側セルスタック群とを含む。内側セルスタック群及び外側セルスタック群は、外部負荷に対して互いに直列に接続されており、通電時には、外側セルスタック群の電流密度が、内側セルスタック群の電流密度より大きくなるように構成される。そのため、内側セルスタッ群クと外側セルスタック群の電流密度が同等である場合に比べて、外側セルスタック群では内側セルスタック群に対して相対的に発熱量が増える。その結果、内側セルスタック群に比べて放熱量が大きい外側セルスタック群と、外側セルスタック群に比べて放熱量が小さい内側セルスタック群との間における温度分布を平準化できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記複数のセルスタックは、互いに等しい導電面積をそれぞれ有し、
前記外側セルスタック群は、前記内側セルスタック群に比べて少ない数の前記セルスタックを含む。
【0010】
上記(2)の構成によれば、燃料電池カートリッジを構成する各セルスタックは互いに等しい導電面積を有する。外側セルスタック群に含まれるセルスタック数を、内側セルスタック群に含まれるセルスタック数より少なくすることで、通電時に内側セルスタック群及び外側セルスタック群が外部負荷に対して互いに直列に接続された際に、外側セルスタック群の電流密度を、内側セルスタック群の電流密度より大きく構成できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記内側セルスタック群を構成する前記セルスタックと前記外側セルスタック群を構成する前記セルスタックとは、互いに独立した集電部材によって電気的に接続される。
【0012】
上記(3)の構成によれば、内側セルスタック群及び外側セルスタック群を構成するセルスタックは、それぞれ互いに独立した集電部材によって電気的に接続される。これにより、多数のセルスタックが配列されて構成される従来の燃料電池カートリッジの構成を大きく変更することなく、効率的なレイアウトで上記構成を実現できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一構成において、
前記外側セルスタック群は、前記内側セルスタック群を全周にわたって囲む。
【0014】
上記(4)の構成によれば、内側セルスタック群は外側セルスタック群によって全周にわたって囲まれるため、外側セルスタック群に比べて放熱量が小さくなりやすく、高温になりやすいが、外側セルスタック群の電流密度を内側セルスタック群に比べて大きくすることで、温度分布を平準化できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一構成において、
前記外側セルスタック群は、前記内側セルスタック群の両側にそれぞれ配置される。
【0016】
上記(5)の構成によれば、内側セルスタック群の両側に外側セルスタック群を配置した構成を採用することで、当該燃料電池カートリッジを複数配列して拡張した際においても、温度分布の平準化が可能となる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では上記(1)から(5)のいずれか一構成において、
前記内側セルスタック群は、隣接する第1内側セルスタック群及び第2内側セルスタック群を含み、
前記第1内側セルスタック群及び第2内側セルスタック群は互いに直列に接続される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、内側セルスタック群は、互いに隣接する第1内側セルスタック群及び第2内側セルスタック群に更に細分化される。第1内側セルスタック群及び内側セルスタック群は互いに直列に接続されることで、内側セルスタック群内における温度分布を更に平準化できる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか一構成において、
前記セルスタックは複数の燃料電池セルを電気的に直列に接続した円筒横縞形状を有する。
【0020】
上記(7)の構成によれば、上述の構成は円筒横縞形状を有するセルスタックから構成される燃料電池カートリッジに好適に適用可能である。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか一構成において、
前記セルスタックは扁平円筒横縞形状を有する。
【0022】
上記(8)の構成によれば、上述の構成は扁平円筒横縞形状を有するセルスタックから構成される燃料電池カートリッジに好適に適用可能である。
【0023】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃料電池モジュールは上記(1)から(8)のいずれか一構成の燃料電池カートリッジを備える。
【0024】
上記(9)の構成によれば、燃料電池カートリッジを構成する複数のセルスタックにおける温度分布が平準化されることで、より高効率な発電が可能な燃料電池モジュールを実現できる。
【0025】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る複合発電システムは上記課題を解決するために、
上記(9)の構成の燃料電池モジュールと前記燃料電池から排気される排燃料ガスと排酸化性ガスとを用いて回転動力を生成するガスタービン又はターボチャージャとを備え、前記燃料電池モジュールには、前記回転動力を用いて圧縮された前記酸化性ガスが供給され、複数の前記セルスタックは、前記燃料ガスと前記酸化性ガスを用いて発電する。
【0026】
上記(10)の構成によれば、より高効率な発電が可能な複合発電システムを実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、複数のセルスタック間の温度分布を平準化することが可能な燃料電池カートリッジ、燃料電池モジュール及び複合発電システムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
図1は本発明の少なくとも一実施形態に係る燃料電池モジュール201の全体構成を示す斜視図であり、
図2は
図1の燃料電池カートリッジ203の内部構成を示す断面図である。燃料電池モジュール201は、複数の燃料電池カートリッジ203と、複数の燃料電池カートリッジ203を収納する圧力容器205と、を備える。また燃料電池モジュール201は、燃料ガス供給管207と、複数の燃料ガス供給枝管207aと、を有する。また燃料電池モジュール201は、燃料ガス排出管209と、複数の燃料ガス排出枝管209aと、を有する。また燃料電池モジュール201は、酸化性ガス供給管(図示略)と、酸化性ガス供給枝管(図示略)と、を有する。また燃料電池モジュール201は、酸化性ガス排出管(図示略)と、複数の酸化性ガス排出枝管(図示略)と、を有する。
【0031】
燃料ガス供給管207は、圧力容器205の内部に設けられ、燃料電池モジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスGを供給する燃料供給系(図示略)に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、燃料供給系(図示略)から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導く。
【0032】
燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数の燃料電池カートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数の燃料電池カートリッジ203に略均等の流量で導き、複数の燃料電池カートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0033】
燃料ガス排出枝管209aは、複数の燃料電池カートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。この燃料ガス排出枝管209aは、燃料電池カートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。また、燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、一部が圧力容器205の内部に配置されている。この燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスを圧力容器205の外部の燃料ガス排出系(図示略)に導く。
【0034】
圧力容器205は、内部の圧力が0.1MPa〜約1MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用され、耐圧性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0035】
燃料電池カートリッジ203は、
図2に示すように、複数のセルスタック101と、発電室215と、燃料ガス供給室217と、燃料ガス排出室219と、酸化性ガス供給室221と、酸化性ガス排出室223とを有する。また燃料電池カートリッジ203は、上部管板225aと、下部管板225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bとを有する。
【0036】
尚、本実施形態では、燃料電池カートリッジ203は、燃料ガス供給室217と燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221と酸化性ガス排出室223とが
図2のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、他の構造であってもよい。例えば、セルスタック101の内側と外側とを平行して流れる、または酸化性ガスがセルスタック101の長手方向と直交する方向へ流れるようにしてもよい。
【0037】
発電室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この発電室215は、セルスタック101の燃料電池セル105が配置され、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、この発電室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度は、燃料電池モジュール201の定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気となる。
【0038】
燃料ガス供給室217は、燃料電池カートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域である。また、燃料ガス供給室217は、上部ケーシング229aに備えられた燃料ガス供給孔231aによって、燃料ガス供給枝管207a(図示略)と連通されている。また、燃料ガス供給室217には、セルスタック101の一方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス供給室217に対して開放して配置されている。この燃料ガス供給室217は、燃料ガス供給枝管207a(図示略)から燃料ガス供給孔231aを介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させる。
【0039】
燃料ガス排出室219は、燃料電池カートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域である。また、燃料ガス排出室219は、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出孔231bによって、燃料ガス排出枝管209a(図示略)と連通されている。また、燃料ガス排出室219には、セルスタック101の他方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放して配置されている。この燃料ガス排出室219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出室219に供給される排燃料ガスを集約して、燃料ガス排出孔231bを介して燃料ガス排出枝管209a(図示略)に導く。
【0040】
燃料電池モジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数の燃料電池カートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給室221は、燃料電池カートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域である。また、酸化性ガス供給室221は、下部ケーシング229bに備えられた酸化性ガス供給孔233aによって、酸化性ガス供給枝管(図示略)と連通されている。この酸化性ガス供給室221は、酸化性ガス供給枝管(図示略)から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導く。
【0041】
酸化性ガス排出室223は、燃料電池カートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域である。また、酸化性ガス排出室223は、上部ケーシング229aに備えられた酸化性ガス排出孔233bによって、酸化性ガス排出枝管(図示略)と連通されている。この酸化性ガス排出室223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出室223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して酸化性ガス排出枝管(図示略)に導く。
【0042】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また上部管板225aは、燃料電池カートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給室217と酸化性ガス排出室223とを隔離する。
【0043】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、燃料電池カートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221とを隔離する。
【0044】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、燃料電池カートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを有する。
【0045】
この上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出室223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。上部管板225a等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料からなるが、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて上部ケーシング229aとの温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出室223に導くものである。
【0046】
本実施形態によれば、上述した燃料電池カートリッジ203の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料からなる上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室223に供給される。また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒータ等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
【0047】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、燃料電池カートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを有する。
【0048】
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給室221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部ケーシング229bとの温度差が大きくなることで変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給室233に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
【0049】
本実施形態によれば、上述した燃料電池カートリッジ203の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出室219に排出される。また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒータ等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
【0050】
発電室215で発電された直流電力は、複数の燃料電池セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、燃料電池カートリッジ203の集電機構を介して集電して、各燃料電池カートリッジ203の外部へと取り出される。集電機構によって燃料電池カートリッジ203の外部に導出された電力は、各燃料電池カートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、燃料電池モジュール201の外部へと導出されて、インバータなどにより所定の交流電力へと変換されて、電力負荷へと供給される。直流電力を集電する集電機構の詳細については後述する。
【0051】
次に、
図3を参照して本実施形態の円筒形セルスタックについて説明する。
図3は
図2のセルスタック101を示す断面図である。
【0052】
セルスタック101は、円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極109と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。またセルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の燃料電池セル105の内、基体管103の軸方向において最も端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を有する。
【0053】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、又はY
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、又はMgAl
2O
4を含む。この基体管103は、燃料電池セル105、インターコネクタ107及びリード膜115を支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させる。
【0054】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を有する。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111を介して供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するものである。なお、燃料電池セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0055】
固体電解質111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するYSZが主として用いられる。この固体電解質111は、空気極で生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極に移動させるものである。
【0056】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で構成される。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成するものである。
【0057】
インターコネクタ107は、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極109とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル105を直列に接続するものである。
【0058】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタにより直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0059】
次に燃料電池カートリッジ203の集電機構について説明する。
図4は燃料電池カートリッジ203を鉛直方向上方からみた平面図である(
図4では、上部ケーシング229aは省略されている)。
図5は
図4に示す燃料電池カートリッジ203のL−L線断面斜視図である。尚、前述の
図2は、
図4のM−M線断面図に対応するものである。
【0060】
燃料電池カートリッジ203は、燃料電池を構成する円筒状の複数のセルスタック101を備える(本実施形態では、燃料電池カートリッジ203には、合計56本のセルスタック101が備えられている)。各セルスタック101は、
図3を用いて説明したように空気極113(正極)と燃料極109(負極)とを有する。各セルスタック101は、
図2を参照して前述したように、セルスタック101の中心軸が鉛直方向に延びかつ中心軸に直交する水平面内で隣接した状態で配置されるように、上部ケーシング229a(筐体)と下部ケーシング229b(筐体)によって支持されている。
【0061】
図4及び
図5に示すように、これら複数のセルスタック101は、複数のセルスタック101が配置されるセル配置領域のうち内側領域A1に配置される内側セルスタック群101Aと、セル配置領域Aのうち内側領域A1より外側に位置する外側領域A2に配置される外側セルスタック群101Bと、を含むように分類される。
【0062】
燃料電池カートリッジ203は、集電板11(第1正極集電部)と、集電板12(第2正極集電部)と、集電板21(第1負極集電部)と、集電板22(第2負極集電部)と、を備える。集電板11(第1正極集電部)は外側セルスタック群101Bの正極同士を電気的に接続する導電性の板状部材であり、外側領域A2に配置されている。また集電板12(第2正極集電部)は内側セルスタック群101Aの正極同士を電気的に接続する導電性の板状部材であり、内側領域A1に配置されている。また集電板21(第1負極集電部)は内側セルスタック群101Aの負極同士を電気的に接続する導電性の板状部材であり、内側領域A1に配置されている。また集電板22(第2負極集電部)は外側セルスタック群101Bの負極同士を電気的に接続する導電性の板状部材であり、外側領域A2に配置されている。
【0063】
図5に示すように、燃料電池カートリッジ203内で電流を流通させる経路は、集電板21と集電板22とを電気的に分離して集電板21と集電板11とを電気的に接続することにより形成されている。この経路は、内側領域A1の内側セルスタック群101Aと、外側領域A2の外側セルスタック群101Bとが、外部負荷(不図示)に対して直列接続された経路である。
尚、経路中に示す矢印は、経路を流れる電流の流通方向を示している。以下の各図においても、経路中に示す矢印は経路を流れる電流の流通方向を示すものとする。
【0064】
ここで燃料電池カートリッジ203が備える各セルスタック101は互いに等しい導電面積をそれぞれ有しており、外側セルスタック群101Bは、内側セルスタック群101Aに比べて少ない数の前記セルスタック101を含む。そのため、外部負荷に対して直列接続された内側セルスタック群101A及び外側セルスタック群101Bが通電された際に、総導電面積が小さい外側セルスタック群101Bの電流密度が、総導電面積が大きな内側セルスタック群101Aの電流密度より大きくなるように構成される。
【0065】
図6は
図4のL−L間における温度分布Tを示している。
図6では、比較例として内側セルスタック群101A及び外側セルスタック群101Bが同数であることにより両者の電流密度が等しい場合に対応する温度分布T´が破線で示されている。この比較例では、外部への放熱量が大きい外側セルスタック群101Bでは温度が低く、外部への放熱量が小さい内側セルスタック群101Aでは温度が低くなる温度分布T´が示されている。また温度分布T´は最高温度Tmax´を有している。
【0066】
一方の本実施形態では、上述のように外側セルスタック群101Bの電流密度が内側セルスタック群101Aの電流密度より大きくなるように構成されることで、外側セルスタック群101Bにおける発熱量が内側セルスタック群101Aに対して相対的に増え、その結果、比較例に比べて平準化された温度分布Tが得られる。
【0067】
本実施形態では、
図4に示すように、外側セルスタック群101Bは内側セルスタック群101Aを全周にわたって囲むように構成されているため、内側セルスタック群101Aは外側セルスタック群101Bに比べて放熱量が小さくなりやすく、高温になりやすいが、このように外側セルスタック群101Bの電流密度を内側セルスタック群101Aに比べて大きくすることで、温度分布を効果的に平準化できる。
【0068】
また、この温度分布Tでは、最高温度Tmaxは比較例の最高温度Tmax´に比べて抑制しつつ平準化されている。そのため、
図6で温度分布Taとして示すように、比較例の最高温度Tmax´と同等の最高温度を上限としながらも、燃料電池カートリッジ203の出力を向上させることができ、より高効率な燃料電池カートリッジ203を実現できる。
【0069】
このような構成は、上述の各集電板(集電板11(第1正極集電部)、集電板12(第2正極集電部)、集電板21(第1負極集電部)及び集電板22(第2負極集電部))のように、内側セルスタック群101Aと外側セルスタック群101Bとを互いに独立した集電部材によって電気的に接続されることで構築できる。これにより、多数のセルスタックが配列されて構成される従来の燃料電池カートリッジの構成を大きく変更することなく、効率的なレイアウトで上記構成を実現できる。
【0070】
図7は
図4の第1変形例であり、
図8は
図7に示す燃料電池カートリッジ203のN−N線断面斜視図である。この第1変形例では、内側領域A1の両側に2つの外側領域A2がそれぞれ規定されることで、外側セルスタック群101B1及び101B2が、内側セルスタック群101Aの両側にそれぞれ配置される。
【0071】
燃料電池カートリッジ203内で電流を流通させる経路は、
図8において左側に示す外側セルスタック群101B1と内側セルスタック群101Aとが外部負荷(不図示)に対して直列接続された経路と、
図8において右側に示す外側セルスタック群101B2と内側セルスタック群101Aとが外部負荷(不図示)に対して直列接続された経路とが、互いに並列に組み合わされたものとなる。
【0072】
このように外側セルスタック群101Bが、内側セルスタック群101Aの両側に分離して設けられる場合においても、外側セルスタック群101Bの電流密度を内側セルスタック群101Aに比べて大きくすることで、温度分布を効果的に平準化できる。
【0073】
図9は第1変形例の燃料電池カートリッジ203の拡張例である。
図9では、第1変形例に係る燃料電池カートリッジ203A、203B、203C・・・が所定方向に沿って配列されており、互いに隣接する燃料カートリッジ203の内側領域A1及び外側領域A2がそれぞれ連続するように配置されている。このように複数の燃料電池カートリッジ203を隣接配置することで拡張した場合であっても、放熱量が比較的大きい外側セルスタック群101Bの電流密度を、放熱量が比較的小さい内側セルスタック群101Aに比べて大きくすることで、複数の燃料電池カートリッジ203にわたる温度分布を効果的に平準化できる。
【0074】
また複数の燃料電池カートリッジ203を拡張配置した場合には、互いに隣接する燃料電池カートリッジ203間の接面は断熱状態に近く温度勾配も生じにくいため、温度分布を平準化するニーズが小さい。このような場合には、
図9に示すように、列単位で各集電板を構成することで効率的なレイアウトで、配列方向とは直角方向における温度分布の標準化ができる。
【0075】
尚、内側セルスタック群101Aの両側に配置された外側セルスタック群101B1及び101B2は、互いに同じ数のセルスタック101を含んでもよいが、温度分布のバランスを考慮して異なる数のセルスタック101を含んでもよい。
【0076】
図10は
図4の第2変形例であり、
図11は
図10に示す燃料電池カートリッジ203のO−O線断面斜視図である。第2変形例では、外側セルスタック群101B1及び101B2の間に内側セルスタック群101Aが配置されており、当該内側セルスタック群101Aは第1内側セルスタック群101A1及び第2内側セルスタック群101A2に更に細分化されている。
【0077】
図11に示すように、燃料電池カートリッジ203内で電流を流通させる経路は、外側セルスタック群101B1の集電板30(第1正極集電部)は第1内側セルスタック群101A1の集電板31(第1負極集電部)に電気的に接続される。第1内側セルスタック群101A1の集電板32(第2正極集電部)は第2内側セルスタック群101A2の集電板33(第2負極集電部)に電気的に接続される。第2内側セルスタック群101A2の集電板34(第3正極集電部)は外側セルスタック群101B2の集電板35(第3負極集電部)に電気的に接続される。また外側セルスタック群101B1の集電板36(第4負極集電部)及び外側セルスタック群101B2の集電板37(第4正極集電部)は外部負荷に接続される。これにより、内側セルスタック群(101A1、101A2)及び外側セルスタック群(101B1、101B2)とを電気的に分離して各スタック群を電気的に接続することにより形成されている。この経路は、
図11に示す経路で、外部負荷(不図示)に対して直列接続される。
【0078】
このように第2変形例では、内側セルスタック群101Aをより細分化し、それぞれのセルスタック群に含まれるセルスタック数を変えることによって、第1変形例に比べて、より細かい温度調整を行うことで温度分布の平準化が可能となる。この場合も第1変形例の
図9と同様に、複数の燃料電池カートリッジ203を隣接配置することで拡張してもよい。
【0079】
前述の実施形態では燃料電池カートリッジ203が円筒型のセルスタック101を有する場合について説明したが、燃料電池カートリッジ203が有するセルスタック101は他の形式であってもよい。
図12は、扁平円筒型のセルスタック101を有する燃料電池カートリッジ303を示す模式図である。この燃料電池カートリッジ303では、鉛直方向に沿って水平方向に延在する複数のセルスタック101が配列されており、上方側及び下方側(外側)において外気と接することで内側に比べてセルスタック101の温度が低くなる温度分布を有する。
【0080】
このような燃料電池カートリッジ303においても、複数のセルスタック101を、内側領域A1及び外側領域A2を規定し、内側領域A1に位置する内側セルスタック群101Aと、外側領域A2に位置する外側セルスタック群101Bに分類する。内側セルスタック群101A及び外側セルスタック群101Bは、不図示の外部負荷に対して所定の集電系統を介して直列に接続されている。
【0081】
ここで燃料電池カートリッジ303が備える各セルスタック101は互いに等しい導電面積をそれぞれ有しており、外側セルスタック群101Bは、内側セルスタック群101Aに比べて少ない数の前記セルスタック101を含む。そのため、外部負荷に対して直列接続された内側セルスタック群101A及び外側セルスタック群101Bが通電された際に、総導電面積が小さい外側セルスタック群101Bの電流密度が、総導電面積が大きな内側セルスタック群101Aの電流密度より大きくなるように構成される。このように外側セルスタック群101Bの電流密度を内側セルスタック群101Aに比べて大きくすることで、温度分布を効果的に平準化できる。
【0082】
以上説明したように上記実施形態によれば、外側セルスタックの電流密度が、内側セルスタックの電流密度より大きくなるように構成されることで、内側セルスタックに比べて放熱量が大きい外側セルスタックと、外側セルスタックに比べて放熱量が小さい内側セルスタックとの間における温度分布を平準化できる。
【0083】
燃料電池モジュール201は、GTCC(GasTurbineCombined
Cycle:ガスタービンコンバインドサイクル発電)、MGT(Micro Gas
Turbine:マイクロガスタービン)またはターボチャージャと組み合わされて利用される複合発電システムに適用されることがある。このような複合発電システムでは、SOFCモジュールから排気される排燃料ガスと排酸化性ガスとがガスタービンの燃焼器(不図示)に供給されて高温の燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスをガスタービンで断熱膨張させることにより生成される回転動力により、圧縮機を駆動して圧縮された圧縮ガスが酸化性ガスとして燃料電池モジュール10の酸化性ガス供給主管21に供給される。なお、酸化性ガスとは、酸素を略15%〜30%含むガスであり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用できる。