(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminobiphenyl、TFDB)を含み、
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis(3,4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
芳香族ジアミン化合物と、芳香族ジアンヒドリド化合物と、ジカルボニル化合物とを重合して形成されたポリアミドイミド重合体を含むポリアミドイミドフィルムであって、
平らな面に配置されたポリアミドイミドフィルムの表面をDMAcに浸した綿棒を用いて、0.1Nの力および5cm/秒の速度で10回往復して擦った後、室温条件において、ヘイズ増加量を測定する表面溶解度測定方法により測定された前記ポリアミドイミドフィルムのヘイズ増加量が20%〜50%であり、
前記ポリアミドイミドフィルムが、厚さ50μmを基準に、黄色度が3以下であり、ヘイズが1%以下であり、透過度が88%以上であり、モジュラスが5.5GPa以上であり、表面硬度がHB以上であり、
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は1種使用され、
前記ジカルボニル化合物は2種以上使用される、ポリアミドイミドフィルム。
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminobiphenyl、TFDB)を含み、
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis(3,4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)またはこれらの組み合わせを含む、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態により本発明を詳細に説明する。実施形態は、発明の要旨を変更しない限り、様々な形態に変形され得る。
【0010】
本明細書において「含む」ということは、特別な記載がない限り、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0011】
また、本明細書に記載された構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語により修飾されるものと理解するべきである。
【0012】
本明細書において、第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的にのみ用いられる。
【0013】
本発明の実施形態は、無色透明でありながらも溶解度が適切で機械的物性に優れたポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0014】
一実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成されたポリアミドイミド重合体を含む。
【0015】
前記ポリアミドイミド重合体は、前記芳香族ジアミン化合物と前記芳香族ジアンヒドリド化合物との重合から由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記芳香族ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合から由来するアミド(amide)繰り返し単位を含む。
【0016】
前記芳香族ジアミン化合物は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して、共重合体を形成する化合物である。
【0017】
一実施形態において、前記芳香族ジアミン化合物として、1種の芳香族ジアミンが使用され得る。単一種類の芳香族ジアミン化合物を用いることにより、前記ポリアミドイミド重合体の化学構造の設計が容易であり得、工程の効率を高め得る。
【0018】
例えば、前記芳香族ジアミン化合物は、下記化学式1で表される2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0020】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、複屈折値が低いため、前記ポリアミドイミドフィルムの透過度のような光学的物性の向上に寄与することができる化合物である。
【0021】
一実施形態において、前記芳香族ジアンヒドリド化合物として、1種の芳香族ジアンヒドリドが使用され得る。単一種類の芳香族ジアンヒドリド化合物を使用することにより、前記ポリアミドイミド重合体の化学構造を、所望の物性が実現されるように設計することができ、工程効率を高めることができる。
【0022】
例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2で表される2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis−(3、4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記芳香族ジアミン化合物および前記ジアンヒドリド化合物が重合して、ポリアミック酸を生成することができる。
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド(imide)繰り返し単位を含む。
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式3で表される化合物を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0025】
[化3]
前記化学式3のnは1〜400の整数である。
【0026】
前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含むことができる。
【0027】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0028】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0029】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が、互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物である場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミドイミドフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与することができる。
【0031】
一実施形態において、前記ジカルボニル化合物として2種の芳香族ジカルボニル化合物が使用され得る。2種の芳香族ジカルボニル化合物を使用することにより、前記ポリアミドイミド重合体の化学構造を、所望の物性が実現されるように設計することができ、工程効率を高めることができる。
【0032】
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)、またはその組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0033】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物は、化学式4で表される1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0035】
また、前記第2ジカルボニル化合物は、化学式5で表されるテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記第1ジカルボニル化合物として1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)、前記第2ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)が適切に組み合わされて用いられる場合、製造されたポリアミドイミドフィルムは高い耐酸化性を有し得る。
【0038】
また、前記芳香族ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して化学式6および化学式7で表されるアミド(amide)繰り返し単位を形成することができる。
【0040】
[化7]
前記化学式6のxは1〜400の整数である。
前記化学式7のyは1〜400の整数である。
【0041】
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminobiphenyl、TFDB)を含み、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis−(3,4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を含み、前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)またはこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0042】
一実施形態は、イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の含有量を適切に調節することにより、複雑な過程がなくても光学的特性、機械的物性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリアミドイミドフィルムが得られることを特徴とする。また、従来のように沈殿、ろ過および乾燥、再溶解などの過程を経なくても、光学的特性、機械的特性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリアミドイミドフィルムを得ることができる。
【0043】
前記イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位のそれぞれの含有量は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の投入量で調節され得る。
【0044】
前記ポリアミドイミドフィルムに含まれているポリアミドイミド重合体において、イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とのモル比は、40:60〜20:80、例えば、50:50〜20:80であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0045】
イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とのモル比が前記範囲であると、ポリアミドイミドフィルムが、優れた機械的物性とともに透過度、ヘイズなどの光学的物性を優秀に実現できる。
【0046】
前記ポリアミドイミドフィルムは、溶媒に適切な溶解性を有するようになる。例えば、実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、1cm×1cmの正方形断面および30μm〜100μmの厚さを基準に、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)10mlにおける溶解時間が約5分〜約60分である。具体的に、前記溶解時間は、約10分〜約50分であり得る。より具体的に、前記溶解時間は約20分〜約40分であり得る。
【0047】
前記ポリアミドイミドフィルムの溶解性が前記条件を満足すると、前記フィルム中のポリアミドイミド重合体が、適切な分子間隔で配向およびパッキング(packing)されることを間接的に確認することができ、前記溶解度条件を満足するポリアミドイミドフィルムが所望の機械的物性および光学的物性を同時に確保することができる。
【0048】
また、前記ポリアミドイミドフィルムは、下記表面溶解度測定方法に基づいて測定されたヘイズ増加量が、約20%〜約50%であり得る。具体的に、前記ヘイズ増加量は約25%〜約40%であり得るが、これに限定されるものではない。
<表面溶解度測定方法>
平らな面に配置されたポリアミドイミドフィルムの表面を、DMAcに浸した綿棒を用いて、0.1Nの力および5cm/秒の速度で10回往復して擦った後、ヘイズ増加量を測定した。
【0049】
前記表面溶解度測定方法によるヘイズ増加量が前記条件を満足すると、前記フィルムの表面部において、ポリアミドイミド重合体が、適切な分子間隔で配向およびパッキングされることを間接的に確認することができる。前記ポリアミドイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウとして適用され得る。この際、カバーウィンドウは、ディスプレイの最外側に配置される構成品として、その表面特性はディスプレイ全体の機能を左右する重要な物性である。すなわち、前記表面溶解度測定方法によるヘイズの増加量が、前述の条件を満足するポリアミドイミドフィルムは、優れた表面機械的物性と光学的物性を同時に確保することができ、これにより、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウに適用され、優れた機能を実現することができる。
【0050】
前記ポリアミドイミドフィルムが適切な結晶性を有することにより、優れた機械的物性を有し得る。例えば、実施形態によるポリアミドイミドフィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップで押して、穿孔時の強度を測定すると、30μm〜50μm厚さを基準に、穿孔強度が約20kgf以上であり得る。具体的、前記条件において穿孔強度が約25kgf以上であり得る。より具体的に、前記条件において穿孔強度が約30kgf〜100kgfであり得る。
【0051】
また、穿孔径は、クラックなどを含めて約55mm以内であり得る。具体的に、前記穿孔径は、約50mm以内であり得る。より具体的に、前記穿孔径は、約40mm以内であり得る。さらにより具体的に、前記穿孔径は約30mm以内であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、前記ポリアミドイミドフィルムは、シリカ粒子などの無機粒子を含み得る。前記シリカ粒子の直径は約10nm〜200nmであり得る。実施形態によるポリアミドイミドフィルムにおいて、原子間力顕微鏡(AFM)の画像上において、表面に見えるシリカ粒子の数が、10μm×10μmを基準に約5個〜約30個であり得る。これにより、実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、向上された巻取性を有しながらも、低いヘイズを有し得る。
【0053】
前記ポリアミドイミドフィルムは、機械方向(MD)基準に約±30°〜約±50°の配向角度を有し得る。
【0054】
一実施形態による前記ポリアミドイミドフィルムが、前記配向角度を有すると、向上された光学的特性および機械的特性を有することができる。前記ポリアミドイミドフィルムの配向角度とは、前記ポリアミドイミドフィルムのキャスティングされる方向(MD方向)を基準に、フィルム内部のポリアミドイミド樹脂が配向された角度のことを意味する。
【0055】
前記ポリアミドイミドフィルムの厚さ20μm〜70μm、具体的に50μmを基準に、黄色度が5以下であり得る。具体的に、前記黄色度が4以下であり得るが、これに限定されるものではない。より具体的に、前記黄色度が3以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記ポリアミドイミドフィルムの厚さ20μm〜70μm、具体的に50μmを基準に、ヘイズが2%以下である。具体的に、前記ヘイズが1%以下であり得るが、これに限定されるものではない。より具体的に、前記ヘイズが0.6%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記ポリアミドイミドフィルムの厚さ20μm〜70μmを基準に、具体的に50μmを基準に、550nmで測定した透過度が85%以上であり得る。より詳細には、厚さ25μm〜60μmを基準に、具体的に厚さ50μmを基準に、550nmで測定した透過度が88%以上であり得る。さらにより詳細には89%以上であり得る。
【0058】
前記ポリアミドイミドフィルムのモジュラスが5.0GPa以上である。具体的に、実施形態によるポリアミドイミドフィルムのモジュラスは5.2GPa以上であり得る。また、前記モジュラスは5.5GPa以上であり得る。実施形態によるポリアミドイミドフィルムのモジュラスの最大値は10GPaであり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μmを基準に、より具体的には厚さ25μm〜60μmを基準に、さらにより具体的には厚さ50μmを基準に、表面硬度が約HB以上であり得る。さらに具体的に、本実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、前記厚さを基準に、表面硬度が約H以上であり得る。
【0060】
前述のポリアミドイミドフィルムに関する様々な特性が組み合わせられる。
【0061】
例えば、前記ポリアミドイミドフィルムは、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成されたポリアミドイミド重合体を含み、前記ポリアミドイミドフィルムが1cm×1cmの正方形断面および30μm〜100μmの厚さを基準に、ジメチルアセトアミド(DMAc)10mlにおける溶解時間が5分〜60分であり、前記ポリアミドイミドフィルムが、厚さ50μmを基準に、黄色度が5以下であり、ヘイズが2%以下であり、透過度が85%以上であり、モジュラスが5.0GPa以上であり得る。
【0062】
また他の例として、前記ポリアミドイミドフィルムは、芳香族ジアミン化合物と、芳香族ジアンヒドリド化合物と、ジカルボニル化合物とを重合して形成されたポリアミドイミド重合体を含み、前記ポリアミドイミドフィルムが、厚さ50μmを基準に、黄色度が5以下であり、ヘイズが2%以下であり、透過度が85%以上であり、モジュラスが5.0GPa以上であり、下記表面溶解度測定方法により測定された前記ポリアミドイミドフィルムのヘイズ増加量が20%〜50%であり得る。
<表面溶解度測定方法>
平らな面に配置されたポリアミドイミドフィルムの表面をDMAcに浸した綿棒を用いて、0.1Nの力および5cm/秒の速度で10回往復して擦った後、ヘイズ増加量を測定。
【0063】
前述のポリアミドイミドフィルムを製造する方法は、芳香族ジアミン化合物と、芳香族ジアンヒドリド化合物と、ジカルボニル化合物とを重合して、粘度が10万cps〜50万cps、具体的には15万cps〜35万cpsであるポリアミドイミド重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液を押出およびキャスティングした後乾燥させ、熱処理する段階とを含む。
【0064】
一実施形態による、ポリアミドイミドフィルムの製造方法は、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物を有機溶媒上で重合して、第1重合体溶液を得る段階と、前記第1重合体溶液に前記第2ジカルボニル化合物をさらに添加して、粘度が10万cps〜50万cpsである第2重合体溶液を得る段階と、前記第2重合体溶液を押出およびキャスティングした後乾燥させ、熱処理する段階とを含むことを特徴とする。
【0065】
前記重合反応において用いられる有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone、NMP)、m−クレゾール(m−cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を同時または順次重合し得る。具体的に、前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を同時に重合し得る。
【0067】
また、前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物および前記芳香族ジアンヒドリド化合物を重合してポリアミック酸溶液を得る段階と、前記ポリアミック酸溶液に前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を添加して重合する段階とを含み得る。前記ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸を含む溶液である。これとは別に、前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を重合してアミド重合体溶液を得る段階と、前記アミド重合体溶液に、前記芳香族ジアンヒドリド化合物を添加して重合する段階とを含み得る。前記アミド重合体溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0068】
前記第1重合体溶液に含まれている共重合体は、前記芳香族ジアミン化合物と前記芳香族ジアンヒドリド化合物との重合から由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記芳香族ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合から由来するアミド(amide)繰り返し単位を含む。
【0069】
前記第1重合体溶液を得る段階、前記第2重合体を得る段階、または前記第2重合体を調製した後に、さらに触媒が添加され得る。
前記触媒の例として、β-ピコリン(β−picoline)または無水酢酸(acetic anhydride)などが挙げられる。
【0070】
前記触媒をさらに添加することにより、反応速度を速くすることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の結合力を向上させる効果がある。
また、前記触媒の添加、重合体溶液の乾燥および再溶解または溶媒の追加などの工程において、押出工程に適するように、前記重合体溶液の粘度が適切に調節され得る。
【0071】
前記芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物を重合してポリアミドイミド重合体が得られる。
前記ポリアミドイミド重合体は、前述の有機溶媒に対して適切な溶解度を有するべきである。例えば、実施形態によるポリアミドイミド重合体によって、最終的に製造されたポリアミドイミドフィルム1cm×1cmの正方形断面および30μm〜100μmの厚さを基準に、ジメチルアセトアミド(DMAc)10mlにおける溶解時間が5分〜60分であり得る。
【0072】
他の実施形態は、第1重合体溶液を得る段階において、過量の芳香族ジアミン化合物に、前記芳香族ジアンヒドリド、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を投入することを含む。
【0073】
具体的に、前記芳香族ジアンヒドリド、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、前記芳香族ジアンヒドリドを20モル%〜50モル%で含み得るが、これに限定されるものではない。
前記芳香族ジアンヒドリドの含有量が前記範囲であると、ポリアミドイミドフィルムの表面硬度、引張強度などの機械的物性に優れる。
【0074】
また、前記芳香族ジアンヒドリド、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を50モル%〜80モル%で含み得るが、これに限定されるものではない。
前記ジカルボニル化合物の含有量が前記範囲であると、ポリアミドイミドフィルムの透過度、ヘイズなどの光学的物性に優れる。
【0075】
また他の実施形態は、第1重合体溶液を得る段階において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、前記第1ジカルボニル化合物を50モル%〜70モル%で含み得るが、これに限定されるものではない。
【0076】
前記第1ジカルボニル化合物は、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)を含み、前記第2ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)を含み得る。
前記第1ジカルボニル化合物の含有量が50モル%未満の場合、ポリアミドイミドフィルムの引張強度(modulus)が低下され得、70モル%超過の場合はヘイズなどの光学的物性が低下され得る。
【0077】
好ましくは、第1重合体溶液を得る段階において、I)残りの反応物質と同一モル(mole)以上の過量の芳香族ジアミン化合物、II)前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、20モル%〜50モル%の芳香族ジアンヒドリド化合物、およびIII)前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、50モル%〜80モル%の前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を使用して調製することができる。
【0078】
具体的に、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、50モル%〜70モル%の前記第1ジカルボニル化合物(1,1'−ビフェニル−4、4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC))および30モル%〜50モル%の前記第2ジカルボニル化合物(テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC))を用いて調製することができる。
【0079】
前記第1重合体溶液を得る段階において、イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位それぞれの含有量を適切に調節することにより、従来のように沈殿、ろ過および乾燥、再溶解などの過程を経なくても、光学的特性、機械的物性および柔軟性がバランスよく改善されたポリアミドイミドフィルムを得ることができる。
【0080】
前記第1重合体溶液を得る段階の後に、前記第1重合体溶液に前記第2ジカルボニル化合物をさらに添加して、粘度が10万cps〜50万cpsである第2重合体溶液を得ることができる。
【0081】
前記第1重合体溶液を得る段階および前記第2重合体溶液を得る段階で添加する第2ジカルボニル化合物の重量比は、90:10〜99:1であり得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
また、前記第2重合体溶液を得る段階で添加する第2ジカルボニル化合物は、有機溶媒と混合して5重量%〜20重量%の濃度で調製された第2ジカルボニル化合物溶液として用いられるが、これに限定されるものではない。
これにより、所望の粘度を正確に達成することができる。
【0083】
前記第2重合体溶液の粘度は10万cps〜50万cps、または15万cps〜35万cpsであり得るが、これに限定されるものではない。
前記第2重合体溶液の粘度が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効率的にポリアミドイミドフィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミドイミドフィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性を有し得る。
【0084】
一実施形態において、第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%〜20重量%であり得る。具体的に、第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量は、12重量%〜18重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
前記第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効率的にポリアミドイミドフィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミドイミドフィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学性物性を有することができる。
【0085】
前記芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物を重合してポリアミドイミド重合体を得ることができる。
前記ポリアミドイミド重合体は、前述の有機溶媒に対して適切な溶解度を有するべきである。例えば、実施形態によるポリアミドイミド重合体によって最終的に製造されたポリアミドイミドフィルム0.1gをDMAc10mLに浸漬して観察したとき、1時間以内に完全に溶解されることが肉眼で確認できるレベルの溶解度を有し得る。また他の例として、実施形態によるポリアミドイミド重合体によって最終的に製造されたポリアミドイミドフィルム1cm×1cmの正方形断面および30μm〜100μmの厚さを基準に、ジメチルアセトアミド(DMAc)10mlにおける溶解時間が5分〜60分であり得る。
【0086】
前記第2重合体溶液を得た後、前記第2重合体溶液のpHは、中和剤を添加して調節することができる。
前記中和剤の例として、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系中和剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
前記中和剤は、前記ポリアミドイミド重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、約0.1モル%〜約10モル%の量で添加され得る。
前記中和剤により調節された第2重合体溶液のpHは、約4〜約7であり得る。具体的に、調節された第2重合体溶液のpHは、約4.5〜約7であり得る。
【0088】
前記第2重合体溶液のpHが前記範囲であると、後述の押出およびキャスティング工程において発生する装置の損傷を防止することができる。また、製造されるポリアミドイミドフィルムの黄色度を下げるか、または黄色度の増加を防止するなど、光学的物性およびモジュラスを向上させるなど、機械的物性の面で効果を有し得る。
【0089】
前記第2重合体溶液を得る段階の後、前記重合体溶液を押出およびキャスティングした後乾燥させ、熱処理してポリアミドイミドフィルムを製造することができる。
前記押出およびキャスティング工程の際、前述の有機溶媒が使用され得る。
【0090】
前記第2重合体溶液は押出され、キャスティングロールまたはキャスティングベルトなどのような注型体によりキャスティングされる。この際、約5m/分〜約15m/分の速度で、また、400μm〜500μmの厚さで前記注型体にキャスティングされ得る。押出およびキャスティング速度が前記範囲内である時、実施形態による製造方法によって製造されたポリアミドイミドフィルムは、向上された光学的特性および機械的特性を有し得る。
【0091】
すなわち、前記第2重合体溶液が前記のような粘度を有すると、前記のような押出速度で押出されキャスティングされることが、向上された光学的特性および機械的特性を有するために有利であり得る。
【0092】
前記第2重合体溶液が注型体にキャスティングされた後、前記第2重合体溶液に含まれている溶媒を、乾燥工程により除去することによって、前記注型体上にゲルシートが形成される。
前記乾燥工程は、約60℃〜約150℃の温度で、約5分〜約60分間行える。
【0093】
その後、前記ゲルシートは、大気雰囲気下で熱処理する段階を経て、実施形態によるポリアミドイミドフィルムが製造され得る。
【0094】
前記熱処理段階は、約60℃〜約470℃の温度で、約5分〜約20分間行える。より詳細に、前記熱処理段階は、入口の温度が約80℃〜約300℃であり、1℃/min〜25℃/minの昇温条件を有するインライン熱処理装置において、約5分〜約15分間行える。
【0095】
前記ポリアミドイミド重合体は高い耐酸化性を有するので、前記熱処理工程の際、大気中に含まれている酸素の影響をほとんど受けない。したがって、実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、向上された光学的特性を有し得る。
【0096】
また、従来は、ポリイミドフィルムを製造するにおいて、製膜過程の熱処理の際、窒素ガスのパージにより前記フィルムの黄変を防止して透明性を確保したが、前記実施形態によれば、このような窒素ガスのパージがなくても、光学的特性に優れたポリアミドイミドフィルムが得られる。
(実施例)
【0097】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
【0098】
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4、4'−ジアミノビフェニル(TFDB)64g(0.2mоl)を徐々に投入しながら溶解させた。
【0099】
次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)26.6g(0.06mоl)を徐々に投入しながら1時間撹拌した。
【0100】
そして、第1ジカルボニル化合物として1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)23.4g(0.084mol)を投入した後1時間撹拌させ、第2ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を、投入モル対比96%である9.74g(0.048mol)を投入した後1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。
【0101】
調製された第1重合体溶液の粘度を測定して、測定された粘度が目標粘度に達していない場合は、14万cpsの粘度になるまで、DMAc有機溶媒に10重量%のTPC溶液を調製して1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して第2重合体溶液を調製した。
【0102】
前記第2重合体溶液を別途の沈殿、乾燥および再溶解の過程なく、そのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥した。乾燥されたポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、80℃〜300℃の温度範囲で2℃/minの速度で昇温させ、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
【0103】
前記実施例1によると、製膜段階の直前(塗布直前)まで収率が約100%に達するが、本明細書において「収率」とは、投入された材料のモル(mole)に対する塗布のための溶液に残っている材料のモルのことを意味する。
【0104】
従来の製造方法によると、製膜段階の直前の収率が約60%程度であるが、これは、ポリイミド化反応、沈殿、ろ過、および乾燥などの段階において材料の損失が必然的に発生するからである。
(実施例2〜4、比較例1および2)
【0105】
前記第2重合体溶液の粘度が下記表1に記載の粘度であることを除いては、前記実施例1と同様の方法によりポリアミドイミドフィルムを製造した。
[評価例]
【0106】
前記実施例1〜4および比較例1および2によるポリアミドイミドフィルムについて、次のような物性を測定および評価した。その結果を下記表1および表2に示した。
[評価例1:フィルムの厚さ測定]
【0107】
日本ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547−401を使用して、幅方向に5ポイント測定し、平均値で厚さを測定した。
[評価例2:透過度(TT)およびヘイズ(HZ)測定]
【0108】
日本電色工業社のヘイズメーターNDH−5000Wを使用して、550nmにおける透過度およびヘイズを測定した。
[評価例3:黄色度(YI)測定]
【0109】
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan(登録商標) PRO、Hunter Associates Laboratory)によりCIE表色系を用いて測定した。
[評価例4:引張強度(modulus)測定]
【0110】
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交する方向に5cm以上および主収縮方向に10mmに切り、5cm間隔のクリップに装着した後、常温において5mm/minの速度で伸しながら、破断が起きるまで応力−ひずみ曲線を得た。前記応力−ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
[評価例5:外観]
サンプルを、3波長蛍光灯の下で肉眼により45°斜角で観測する際、サンプル内部に有核性あるいは無核性の円形異物が発見される場合、「ゲル化(gellation)」と評価し、存在しない時に「○」と評価した。
[評価例6:溶解度]
ポリアミドイミドフィルムを1cm×1cmの正方形断面に切断して、DMAc約10mlに浸漬させ、完全溶解までの時間を測定した。完全溶解であるか否かは、肉眼およびガラス棒で固体成分が残っているかどうかで決定した。
[評価例7:表面溶解度]
平らな面に、上記ポリアミドイミドフィルムを配置させ、綿棒をDMAcに1分間浸漬させて十分に浸す。その後、前記綿棒を0.1Nの力および5cm/秒の速度で前記ポリアミドイミドフィルムの表面を10回往復して擦る。その後、前記ポリアミドイミドフィルム表面のヘイズ増加量を測定した。
【0113】
前記表1および表2から確認できるように、実施例1〜4は比較例1および2に比べ、無色透明でありながらも溶解度および機械的物性に優れていることが確認できた。また、柔軟性に優れており、フレキシブルディスプレイ分野において有用に用いられる。