【文献】
協和化工株式会社,溶剤成分一覧表,協和化工株式会社,2009年07月17日,http://www.kyowakako.com/pdf/list_of_solA4.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照し説明する。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
≪焼成材料組成物≫
本実施形態の焼成材料組成物は、ペースト状であり、焼結性金属粒子、バインダー成分、及び酢酸ブチルに対する相対蒸発速度が4.0以下である溶媒を含有する。
【0014】
<焼結性金属粒子>
焼結性金属粒子は、焼成材料組成物をスクリーン印刷して得られるフィルム状焼成材料の焼成として、金属粒子の融点以上の温度で加熱処理されることで粒子同士が溶融・結合して焼結体を形成可能な金属粒子である。焼結体を形成することで、フィルム状焼成材料と、それに接して焼成された物品とを焼結接合させることが可能である。具体的には、フィルム状焼成材料を介してチップと基板とを焼結接合させることが可能である。
【0015】
焼結性金属粒子の金属種としては、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミ、シリコン、パラジウム、白金、チタン、チタン酸バリウム、これらの酸化物又は合金等が挙げられ、銀及び酸化銀が好ましい。焼結性金属粒子は、一種類のみが配合されていてもよく、2種類以上の組み合わせで配合されていてもよい。
【0016】
焼結性金属粒子は、粒子径が100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下の銀粒子である銀ナノ粒子であることが好ましい。
【0017】
焼成材料組成物に含まれる焼結性金属粒子の粒子径は、上記焼結性を発揮可能なものであれば特に制限されるものではないが、100nm以下であってよく、50nm以下であってよく、30nm以下であってよい。例えば、100nm以下の粒子径を有するものが全体の20質量%以上であることが好ましい。なお、焼成材料組成物が含む焼結性金属粒子の粒子径とは、電子顕微鏡で観察された焼結性金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径とする。
上記粒子径の範囲に属する焼結性金属粒子は、焼結性に優れるため好ましい。
焼成材料組成物が含む焼結性金属粒子の粒子径は、電子顕微鏡で観察された焼結性金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径が100nm以下の粒子に対して求めた粒子径の数平均が、0.1〜95nmであってよく、0.3〜50nmであってよく、0.5〜30nmであってよい。なお、測定対象の焼結性金属粒子は、1つのフィルム状焼成材料あたり無作為に選ばれた100個以上、例えば100個とする。
【0018】
焼結性金属粒子はバインダー成分及び溶媒などと混合する前に、あらかじめ凝集物の無い状態にするため、イソボルニルシクロヘキサノールや、デシルアルコールなどの沸点の高い高沸点溶媒に予め分散させてもよい。高沸点溶媒の沸点としては、例えば200〜350℃であってもよい。この時、高沸点溶媒を用いると、これが常温で揮発することがほとんどないために焼結性金属粒子の濃度が高くなることが防止され、作業性が向上される他、焼結性金属粒子の再凝集なども防止され、品質的にも良好となる。分散法としてはニーダ、三本ロール、ビーズミル及び超音波などが挙げられる。
【0019】
本実施形態の焼成材料組成物には、粒子径100nm以下の金属粒子(焼結性金属粒子)の他に、これに該当しない粒子径が100nmを超える金属粒子である、非焼結性の金属粒子がさらに配合されてもよい。なお、非焼結性の金属粒子の粒子径とは、電子顕微鏡で観察された非焼結性の金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径とする。粒子径は、例えば、100nm超5000nm
以下であってよいが、100〜2500nmの粒子径を有するものが全体の5質量%以上であることが好ましい。粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子の粒子径は、電子顕微鏡で観察された非焼結性の金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径が100nmを超える粒子に対して求めた粒子径の数平均が、150nm超50000nm以下であってよく、150〜10000nmであってよく、180〜5000nmであってよい。
【0020】
粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子の金属種としては、上記焼結性金属粒子の金属種として例示したものと同じものが挙げられ、銀、銅、及びこれらの酸化物が好ましい。
粒子径100nm以下の焼結性金属粒子と、粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子とは、互いに同一の金属種であってもよく、互いに異なる金属種であってもよい。例えば、粒子径100nm以下の焼結性金属粒子が銀粒子であり、粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子が銀又は酸化銀粒子であってもよい。例えば、粒子径100nm以下の焼結性金属粒子が銀又は酸化銀粒子であり、粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子が銅又は酸化銅粒子であってもよい。
【0021】
本実施形態の焼成材料組成物において、全ての金属粒子の総質量(100質量%)に対する、焼結性金属粒子の含有量は、10〜100質量%であってもよく、20〜95質量%であってもよい。
【0022】
焼結性金属粒子及び/又は非焼結性の金属粒子の表面には、有機物が被覆されていてもよい。有機物の被覆を有することで、バインダー成分との相溶性が向上し、粒子同士の凝集を防止でき、均一に分散することができる。
焼結性金属粒子及び/又は非焼結性の金属粒子の表面に有機物が被覆されている場合、焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子の質量は、被覆物を含んだ値とする。
【0023】
<バインダー成分>
バインダー成分が配合されることで、焼成材料をフィルム状に成形でき、焼成前のフィルム状焼成材料に粘着性を付与することができる。バインダー成分は、フィルム状焼成材料の焼成として加熱処理されることで熱分解される熱分解性であってよい。
バインダー成分は特に限定されるものではないが、バインダー成分の好適な一例として、樹脂が挙げられる。樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸、セルロース誘導体の重合物等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂には、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。
【0024】
バインダー成分を構成する樹脂において、(メタ)アクリレート化合物由来の構成単位の含有量は、構成単位の総質量(100質量%)に対して、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
ここでいう「由来」とは、前記モノマーが重合するのに必要な構造の変化を受けたことを意味する。
【0025】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。アルキル(メタ)アクリレート又はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
アクリル樹脂としては、メタクリレートが好ましい。バインダー成分がメタクリレート由来の構成単位を含有することで、比較的低温で焼成することができ、焼結後に充分な接着強度を得るための条件を容易に満たすことができる。
【0027】
バインダー成分を構成する樹脂において、メタクリレート由来の構成単位の含有量は、構成単位の総質量(100質量%)に対して、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制限はないが、例えば(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0029】
バインダー成分を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜800,000であることがより好ましい。樹脂の質量平均分子量が上記範囲内であることで、フィルムとして充分な膜強度を発現し、且つ柔軟性を付与することが容易となる。
なお、本明細書において、「質量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0030】
バインダー成分を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−60〜50℃であることが好ましく、−30〜10℃であることがより好ましく、−20℃以上0℃未満であることがさらに好ましい。樹脂のTgが上記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料と被着体との焼成前の接着力が向上する。加えて、フィルム状焼成材料の柔軟性が高まる。一方、樹脂のTgが上記下限値以上であることで、フィルム形状の維持が可能であり、支持シート等からのフィルム状焼成材料の引き離しがより容易となる。
本明細書において「ガラス転移温度(Tg)」とは、示差走査熱量計を用いて、試料のDSC曲線を測定し、得られたDSC曲線の変曲点の温度で表される。
【0031】
バインダー成分は、フィルム状焼成材料の焼成として加熱処理されることで熱分解される熱分解性であってよい。バインダー成分が熱分解されたことは、焼成によるバインダー成分の質量減少により確認できる。なお、バインダー成分として配合される成分は焼成によりほぼ熱分解されてよいが、バインダー成分として配合される成分の全質量が、焼成により熱分解されなくともよい。
バインダー成分は、焼成前のバインダー成分の総質量(100質量%)に対し、焼成後の質量が10質量%以下となるものであってよく、5質量%以下となるものであってよく、3質量%以下となるものであってよく、0質量%となるものであってもよい。
【0032】
<溶媒>
酢酸ブチルに対する相対蒸発速度が4.0以下である溶媒(以下「溶媒(A)」と表記する。)は、焼成材料組成物をスクリーン印刷するに際して、焼成材料組成物をスクリーン版上に滴下してから、スキージーを用いて余剰の焼成材料組成物を掻き取るまでの間に蒸発しにくい。よって、余剰の焼成材料組成物をスキージーで容易に掻き取ることができる。また、版離れが良好となる。溶媒(A)が配合されることで、スクリーン印刷に適した焼成材料組成物が得られる。
溶媒(A)の酢酸ブチルに対する相対蒸発速度は2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。また、溶媒(A)の酢酸ブチルに対する相対蒸発速度は、0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましい。
【0033】
相対蒸発速度は、ASTM D3539に規定された試験法に準じて測定される値である。酢酸ブチルに対する相対蒸発速度は、かかる測定法で測定された酢酸ブチルの蒸発速度の値を1としたときの換算値を表したものである。
【0034】
溶媒(A)としては、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸イソブチル、イソボルニルシクロヘキサノール、デシルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノン、イソホロン、イソブチルアルコールなどが挙げられる。溶媒(A)は、一種類のみが配合されていてもよく、2種類以上の組み合わせで配合されていてもよい。
【0035】
溶媒(A)の少なくとも一部は、上述した焼結性金属粒子を分散させる高沸点溶媒として用いられてもよい。
【0036】
<その他の添加剤>
本実施形態の焼成材料組成物は、上記の焼結性金属粒子、非焼結性の金属粒子、バインダー成分及び溶媒(A)の他に、本発明の効果を損なわない範囲内において、焼結性金属粒子、非焼結性の金属粒子、バインダー成分及び溶媒(A)に該当しないその他の添加剤を含有していてもよい。
【0037】
本実施形態の焼成材料組成物に含有されてもよいその他の添加剤としては、分散剤、可塑剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、及び酸化防止剤などが挙げられる。添加剤は、1種のみ含有されてもよいし、2種以上含有されてもよい。これらの添加剤は、特に限定されるものではなく、この分野で通常用いられるものを適宜選択することができる。
【0038】
また、本実施形態の焼成材料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、酢酸ブチルに対する相対蒸発速度が4.0を超える溶媒(以下「他の溶媒(B)」と表記する。)を含有していてもよい。
本実施形態の焼成材料組成物に含有されてもよい他の溶媒(B)としては、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
<組成>
本実施形態の焼成材料組成物は、焼結性金属粒子、バインダー成分、溶媒(A)、及びその他の添加剤からなるものであってもよく、これらの含有量(質量%)の和は100質量%となる。
本実施形態の焼成材料組成物が非焼結性の金属粒子を含む場合には、焼成材料組成物は、焼結性金属粒子、非焼結性の金属粒子、バインダー成分、溶媒(A)、及びその他の添加剤からなるものであってもよく、これらの含有量(質量%)の和は100質量%となる。
【0040】
焼成材料組成物の総質量(100質量%)に対する、溶媒(A)の含有量は、12〜50質量%であり、15〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。溶媒(A)の含有量が上記上限値以下であることで、スクリーン印刷後の焼成材料組成物(転写物)の形状を維持しやすくなる。一方、溶媒(A)の含有量が上記下限値以上であることで、焼成材料組成物をスクリーン印刷する際の版離れが良好となる。
【0041】
焼成材料組成物の総質量(100質量%)に対する、溶媒以外の全ての成分(以下「固形分」と表記する。)の含有量は、50〜88質量%が好ましく、60〜85質量%が好ましく、70〜80質量%がより好ましい。
【0042】
焼成材料組成物における固形分の総質量(100質量%)に対する焼結性金属粒子の含有量は、15〜98質量%が好ましく、15〜90質量%がより好ましく、20〜80質量%がさらに好ましい。焼結性金属粒子の含有量が上記上限値以下であることで、バインダー成分の含有量を充分に確保できるので、焼成材料組成物をスクリーン印刷して得られるフィルム状焼成材料の形状を維持しやすくなる。一方、焼結性金属粒子の含有量が上記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料の焼成時に焼結性金属粒子同士、又は焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子とが融着して、焼成後に高い接合接着強度(せん断接着力)を発現する。
【0043】
焼成材料組成物が非焼結性の金属粒子を含む場合、焼成材料組成物における固形分の総質量(100質量%)に対する、焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子の総含有量は、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、80〜90質量%がさらに好ましい。
【0044】
焼成材料組成物における固形分の総質量(100質量%)に対するバインダー成分の含有量は、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。バインダー成分の含有量が上記上限値以下であることで、焼結性金属粒子の含有量を充分に確保できるので、フィルム状焼成材料と被着体との接合接着力が向上する。一方、バインダー成分の含有量が上記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料の形状を維持しやすくなる。
【0045】
焼成材料組成物において、焼結性金属粒子とバインダー成分との質量比率(焼結性金属粒子:バインダー成分)は、50:1〜1:5が好ましく、20:1〜1:2がより好ましく、10:1〜1:1がさらに好ましい。焼成材料組成物が非焼結性の金属粒子を含む場合には、焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子とバインダー成分との質量比率((焼結性金属粒子+非焼結性の金属粒子):バインダー成分)は50:1〜1:1が好ましく、20:1〜2:1がより好ましく、9:1〜4:1がさらに好ましい。
【0046】
焼成材料組成物の総質量(100質量%)に対する、他の溶媒(B)の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%
以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
他の溶媒(B)の含有量が少なくなるほど焼成材料組成物の印刷適性が高まる傾向にある。よって、焼成材料組成物が他の溶媒(B)を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、「実質的に含有しない」とは、他の溶媒(B)の含有量が、焼成材料組成物の総質量(100質量)に対して、0.1質量%未満を意味する。
【0047】
<粘度>
本実施形態の焼成材料組成物は、温度23℃、せん断速度1sec
−1で測定した粘度(C)が10〜1000Pa・sのものであり、温度23℃、せん断速度1000sec
−1で測定した粘度(D)が1〜10Pa・sのものが好ましい。
粘度(C)は20〜900Pa・sがより好ましく、25〜800Pa・sがさらに好ましい。
粘度(D)は1Pa・s以上10Pa・s未満がより好ましく、2〜9Pa・sがさらに好ましい。
粘度(C)及び粘度(D)は、JIS Z 8803:2011に準拠して、動的粘弾性測定装置(レオメータ)を用いて測定される値である。測定方法の詳細は後述する。
【0048】
焼成材料組成物をスクリーン印刷する際は、焼成材料組成物にせん断応力が加わる。そのため、せん断応力が加わるときは、焼成材料組成物は流動性に優れることが好ましい。しかし、流動性を高めるために焼成材料組成物の粘度を過剰に下げると、印刷後の画像パターンの形状を維持しにくくなる傾向にある。
粘度(D)が上記上限値以下であることで、焼成材料組成物にせん断応力が加わったときに適度な流動性を発現でき、スクリーン印刷する際の版離れがより良好となる。粘度(C)が上記下限値以上であることで、焼成材料組成へのせん断応力が除かれたときに適度な粘性を発現でき、印刷後の画像パターンの形状をより維持しやすくなる。
また、粘度(C)が上記上限値以下であることで、スクリーン印刷する際の版離れがより良好となる。粘度(D)が上記下限値以上であることで、印刷後の画像パターンの形状をより維持しやすくなる。
【0049】
粘度(C)及び粘度(D)は、焼成材料組成物に含まれる溶媒(A)の相対蒸発速度や含有量により制御できる。具体的には、溶媒(A)の酢酸ブチルに対する相対蒸発速度が大きくなると、粘度(C)及び粘度(D)は低くなる傾向にある。また、溶媒(A)の含有量が少なくなると、粘度(C)及び粘度(D)は高くなる傾向にある。
【0050】
<製造方法>
焼成材料組成物の製造方法は、焼結性金属粒子、バインダー成分及び溶媒(A)と、必要に応じて非焼結性の金属粒子、その他の添加剤、他の溶媒(B)とを混合する工程(混合工程)を有する。
上述したように、焼結性金属粒子として高沸点溶媒に予め分散させたものを用いてもよいし、他の溶媒(B)に予め分散させたものを用いてもよい(金属粒子の分散液)。高沸点溶媒としては溶媒(A)を用いてもよい。高沸点溶媒として溶媒(A)を用いる場合、高沸点溶媒として用いる溶媒(A)と、混合工程で用いる溶媒(A)とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。また、高沸点溶媒として溶媒(A)を用いる場合、高沸点溶媒として用いる溶媒(A)と、混合工程で用いる溶媒(A)との合計量が、焼成材料組成物の総質量に対して12〜50質量%となるように調製する。
【0051】
上記の本実施形態の焼成材料組成物によれば、特定量の溶媒(A)を含有するので、スクリーン印刷する際の版離れが良好である。加えて、スクリーン印刷後も画像パターンの形状を維持しやすい。
このように、本実施形態の焼成材料組成物は印刷適性に優れるので、本実施形態の焼成材料組成物を用いれば所望の形状のフィルム状焼成材料を生産性よく製造できる。
【0052】
本実施形態の焼成材料組成物は、焼結性金属粒子、バインダー成分、及び酢酸ブチルに対する相対蒸発速度が4.0以下である溶媒を含有するペースト状の焼成材料組成物であって、前記溶媒の含有量が、当該焼成材料組成物の総質量に対して12〜50質量%である、焼成材料組成物であるが、前記溶媒としては、相対蒸発速度が1.0×10
−5〜1.0×10
−3である分散媒と、相対蒸発速度が0.001〜4.0である希釈溶媒の混合溶媒を用いることが好ましい。
前記分散媒としては、イソボニルシクロヘキサノール、デシルアルコール、及びこれらの混合物が好ましい。希釈溶媒としては、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及び酢酸イソブチルからなる群から選ばれる1種類または2種類以上が好ましい。
また、本実施形態の焼成材料組成物は、焼成材料組成物の総質量(100質量%)に対する、溶媒の含有量が、15〜40質量%であるものが好ましく、前記分散媒の含有量が10〜20質量%であって、前記希釈溶媒の含有量が1〜20質量%であるものがより好ましい。
【0053】
≪フィルム状焼成材料の製造方法≫
フィルム状焼成材料の製造方法は、上述した焼成材料組成物を支持体上にスクリーン印刷する工程を有する。
【0054】
支持体としては、剥離フィルムが挙げられる。
剥離フィルムとしては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルム、不透明フィルムなどを用いることができる。剥離フィルムとしては、表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、オレフィン系、アルキッド系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤が挙げられる。
【0055】
剥離フィルムの厚さは、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。
【0056】
支持体に対する焼成材料組成物の接触角は、20〜60°が好ましく、30〜55°がより好ましく、35〜50°がさらに好ましい。接触角が上記上限値以下であることで、支持体に対する焼成材料組成物の密着性が良好となる。加えて、印刷後に支持体上で焼成材料組成物が収縮することを抑制でき、画像パターンの形状をより良好に維持できる。一方、接触角が上記下限値以上であることで、印刷後に支持体上で焼成材料組成物が濡れ拡がることを抑制でき、画像パターンの形状をより良好に維持できる。接触角は、JIS R3257:1999に準拠して、後述する測定方法により測定することができる。
【0057】
焼成材料組成物の印刷は、公知のスクリーン印刷方法で行うことができ、具体的には、シルクスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷などの方法が挙げられる。
具体的なスクリーン印刷の条件としては、クリアランスが0.5〜5.0mm、スキージー印圧が0.05〜0.5MPa、スクレーパー印圧が0.05〜0.5MPa、スキージー速度が10〜100mm/sec、スクレーパー速度が10〜100mm/secの条件等が挙げられる。
【0058】
印刷後は、支持体上の焼成材料組成物を乾燥して、焼成材料組成物に含まれる溶媒を揮発させることで、フィルム状焼成材料を得る。
焼成材料組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば70〜250℃、例えば80〜180℃で、10秒〜10分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0059】
<フィルム状焼成材料>
本発明により得られるフィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有する。
図1は、本発明により得られるフィルム状焼成材料の一実施形態を模式的に示す断面図である。フィルム状焼成材料1は、焼結性金属粒子10及びバインダー成分20を含有している。
【0060】
フィルム状焼成材料は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層、例えば、2層以上10層以下の層からなるものでもよい。フィルム状焼成材料が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。2層以上の複数層からなるフィルム状焼成材料は、スクリーン印刷により焼成材料組成物を重ね刷りすることで得られる。
なお、本明細書においては、フィルム状焼成材料の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料、構成材料の配合比、及び厚さの少なくとも一つが互いに異なる」ことを意味する。
【0061】
フィルム状焼成材料の形状は、焼結接合の対象の形状に合わせて適宜設定すればよく、円形又は矩形が好ましい。円形は半導体ウエハの形状に対応した形状である。矩形はチップの形状に対応した形状である。対応した形状とは、焼結接合の対象の形状と同形状又は略同形状であってよい。
フィルム状焼成材料が円形である場合、円の面積は、3.5〜1600cm
2であってよく、85〜1400cm
2であってよい。フィルム状焼成材料が矩形である場合、矩形の面積は、0.01〜25cm
2であってよく、0.25〜9cm
2であってよい。
【0062】
フィルム状焼成材料の焼成前の厚さは、特に制限されるものではないが、10〜200μmが好ましく、20〜150μmが好ましく、30〜90μmがより好ましい。
ここで、「フィルム状焼成材料の厚さ」とは、フィルム状焼成材料全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状焼成材料の厚さとは、フィルム状焼成材料を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0063】
本明細書において、「厚さ」は、任意の5箇所で厚さを測定した平均で表される値として、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器を用いて取得できる。
【0064】
上記の本実施形態のフィルム状焼成材料の製造方法によれば、印刷適性に優れた本発明の焼成材料組成物をスクリーン印刷によりフィルム状に成形するので、厚さが均一で、所望の形状のフィルム状焼成材料を生産性よく製造できる。よって、例えば半導体ウエハの形状に合わせて円形状にフィルム状焼成材料を製造することも可能であり、抜き加工を有する場合に発生する切れ端部分が発生せず、原材料に対する歩留りが向上し、廃棄ロスを軽減できる。特に、フィルム状焼成材料に含有される焼結性金属粒子は、比較的高価な材料であるため、原材料の廃棄ロスを削減できることは、大幅な製品価格の低下につながり、大変に有益である。
【0065】
なお、本実施形態のフィルム状焼成材料の製造方法によれば、フィルム状焼成材料を支持体上に積層された状態で提供することができる。使用する際には、支持体を剥がし、フィルム状焼成材料を焼結接合させる対象物上に配置すればよい。支持体はフィルム状焼成材料の損傷や汚れ付着を防ぐための保護フィルムとしての機能も有する。支持体は、フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側に設けられていればよく、フィルム状焼成材料の両方の側に設けられてよい。
【0066】
本発明により得られるフィルム状焼成材料は、少なくとも一方の側(表面)に支持シートが設けられた、支持シート付フィルム状焼成材料とすることができる。
以下、支持シート付フィルム状焼成材料の詳細について説明する。
【0067】
≪支持シート付フィルム状焼成材料≫
支持シート付フィルム状焼成材料は、上述したフィルム状焼成材料と、前記フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側(表面)に設けられた支持シートと、を備える。前記支持シートは、基材フィルム上の全面もしくは外周部に粘着剤層が設けられたものであり、前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料が設けられていることが好ましい。前記フィルム状焼成材料は、粘着剤層に直接接触して設けられてもよく、基材フィルムに直接接触して設けられてもよい。本形態をとることで、半導体ウエハをチップに個片化する際に使用するダイシングシートとして使用することができる。且つブレード等を用いて半導体ウエハと一緒に個片化することでチップと同形のフィルム状焼成材料として加工することができ、且つフィルム状焼成材料付チップを製造することができる。
【0068】
以下、支持シート付フィルム状焼成材料の一実施形態について説明する。
図2及び
図3に、本実施形態の支持シート付フィルム状焼成材料の概略断面図を示す。
図2、
図3に示すように、本実施形態の支持シート付フィルム状焼成材料100a,100bは、外周部に粘着部を有する支持シート2の内周部に、フィルム状焼成材料1が剥離可能に仮着されてなる。支持シート2は、
図2に示すように、基材フィルム3の上面に粘着剤層4を有する粘着シートであり、該粘着剤層4の内周部表面が、フィルム状焼成材料に覆われて、外周部に粘着部が露出した構成になる。また、
図3に示すように、支持シート2は、基材フィルム3の外周部にリング状の粘着剤層4を有する構成であってもよい。
【0069】
フィルム状焼成材料1は、支持シート2の内周部に、貼付されるワーク(半導体ウエハ等)と略同形状に形成されてなる。支持シート2の外周部には粘着部を有する。好ましい態様では、支持シート2よりも小径のフィルム状焼成材料1が、円形の支持シート2上に同心円状に積層されている。外周部の粘着部は、図示したように、リングフレーム5の固定に用いられる。
【0070】
(基材フィルム)
基材フィルム3としては、特に限定されず、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE),エチレン・プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンフィルム、アイオノマー等からなるフィルムなどが用いられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両者を含む意味で用いる。
また支持シートに対してより高い耐熱性が求められる場合には、基材フィルム3としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルムや放射線・放電等による改質フィルムも用いることができる。基材フィルムは上記フィルムの積層体であってもよい。
【0071】
また、これらのフィルムは、2種類以上を積層したり、組み合わせて用いたりすることもできる。さらに、これらフィルムを着色したもの、あるいは印刷を施したもの等も使用することができる。また、フィルムは熱可塑性樹脂を押出形成によりシート化したものであってもよく、延伸されたものであってもよく、硬化性樹脂を所定手段により薄膜化、硬化してシート化したものが使われてもよい。
【0072】
基材フィルムの厚さは特に限定されず、好ましくは30〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。基材フィルムの厚さを上記範囲とすることで、ダイシングによる切り込みが行われても基材フィルムの断裂が起こりにくい。また、支持シート付フィルム状焼成材料に充分な可とう性が付与されるため、ワーク(例えば半導体ウエハ等)に対して良好な貼付性を示す。
【0073】
基材フィルムは、表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0074】
上記の剥離剤を用いて基材フィルムの表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、又は溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布された基材フィルムを常温下又は加熱下に供するか、又は電子線により硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成したりすればよい。
【0075】
(粘着剤層)
支持シート2は、少なくともその外周部に粘着部を有する。粘着部は、支持シート付フィルム状焼成材料100a,100bの外周部において、リングフレーム5を一時的に固定する機能を有し、所要の工程後にはリングフレーム5が剥離可能であることが好ましい。したがって、粘着剤層4には、弱粘着性のものを使用してもよいし、エネルギー線照射により粘着力が低下するエネルギー線硬化性のものを使用してもよい。再剥離性粘着剤層は、公知の種々の粘着剤(例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリビニルエーテル系などの汎用粘着剤、表面凹凸のある粘着剤、エネルギー線硬化型粘着剤、熱膨張成分含有粘着剤等)により形成できる。
【0076】
支持シート2は、
図2に示すように、基材フィルム3の上側全面に粘着剤層4を有する通常の構成の粘着シートであり、該粘着剤層4の内周部表面が、フィルム状焼成材料に覆われて、外周部に粘着部が露出した構成であってもよい。この場合、粘着剤層4の外周部は、上記したリングフレーム5の固定に使用され、内周部には、フィルム状焼成材料が剥離可能に積層される。粘着剤層4としては、上記と同様に、弱粘着性のものを使用してもよいし、またエネルギー線硬化性粘着剤を使用してもよい。
【0077】
また、
図3に示した構成では、基材フィルム3の外周部にリング状の粘着剤層4を形成し、粘着部とする。この際、粘着剤層4は、上記粘着剤からなる単層粘着剤層であってもよく、上記粘着剤からなる粘着剤層を含む両面粘着テープを環状に切断したものであってもよい。
【0078】
弱粘着剤としては、アクリル系、シリコーン系が好ましく用いられる。また、フィルム状焼成材料の剥離性を考慮して、粘着剤層4の23℃でのSUS板への粘着力は、30〜120mN/25mmであることが好ましく、50〜100mN/25mmであることがさらに好ましく、60〜90mN/25mmであることがより好ましい。この粘着力が低すぎると、リングフレームが脱落することがある。また粘着力が高過ぎると、リングフレームからの剥離が困難となり、リングフレームを再利用しにくくなる。
【0079】
図2の構成の支持シートにおいて、エネルギー線硬化性の再剥離性粘着剤層を用いる場合、フィルム状焼成材料が積層される領域に予めエネルギー線照射を行い、粘着性を低減させておいてもよい。この際、他の領域はエネルギー線照射を行わず、例えばリングフレーム5への接着を目的として、粘着力を高いまま維持しておいてもよい。他の領域のみにエネルギー線照射を行わないようにするには、例えば基材フィルムの他の領域に対応する領域に印刷等によりエネルギー線遮蔽層を設け、基材フィルム側からエネルギー線照射を行えばよい。また、
図2の構成の支持シートでは、基材フィルム3と粘着剤層4との接着を強固にするため、基材フィルム3の粘着剤層4が設けられる面には、所望により、サンドブラストや溶剤処理などによる凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、電子線照射、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理などの酸化処理などを施すことができる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0080】
粘着剤層4の厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜80μm、特に好ましくは3〜50μmである。
【0081】
(支持シート付フィルム状焼成材料)
支持シート付フィルム状焼成材料は、外周部に粘着部を有する支持シートの内周部にフィルム状焼成材料が剥離可能に仮着されてなる。
図2で示した構成例では、支持シート付フィルム状焼成材料100aは、基材フィルム3と粘着剤層4とからなる支持シート2の内周部にフィルム状焼成材料1が剥離可能に積層され、支持シート2の外周部に粘着剤層4が露出している。この構成例では、支持シート2よりも小径のフィルム状焼成材料1が、支持シート2の粘着剤層4上に同心円状に剥離可能に積層されていることが好ましい。
【0082】
上記構成の支持シート付フィルム状焼成材料100aは、支持シート2の外周部に露出した粘着剤層4において、リングフレーム5に貼付される。
【0083】
また、リングフレームに対する糊しろ(粘着シートの外周部における露出した粘着剤層)上に、さらに環状の両面テープ若しくは粘着剤層を別途設けてもよい。両面テープは粘着剤層/芯材/粘着剤層の構成を有し、両面テープにおける粘着剤層は特に限定されず、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。粘着剤層は、後述するチップ付基板を製造する際に、その外周部においてリングフレームに貼付される。両面テープの芯材としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が好ましく用いられる。
【0084】
図3で示した構成例では、基材フィルム3の外周部にリング状の粘着剤層4を形成し、粘着部とする。
図4に、
図3で示す支持シート付フィルム状焼成材料100bの斜視図を示す。この際、粘着剤層4は、上記粘着剤からなる単層粘着剤層であってもよく、上記粘着剤からなる粘着剤層を含む両面粘着テープを環状に切断したものであってもよい。フィルム状焼成材料1は、粘着部に囲繞された基材フィルム3の内周部に剥離可能に積層される。この構成例では、支持シート2よりも小径のフィルム状焼成材料1が、支持シート2の基材フィルム3上に同心円状に剥離可能に積層されていることが好ましい。
【0085】
支持シート付フィルム状焼成材料には、使用に供するまでの間、フィルム状焼成材料及び粘着部のいずれか一方又はその両方の表面に、外部との接触を避けるための表面保護を目的として剥離フィルムを設けてもよい。
【0086】
表面保護フィルム(剥離フィルム)としては、先に挙げたポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリプロピレンなどの基材フィルム表面に、剥離剤を用いて上述した剥離処理を施すことで得ることもできる。剥離処理に用いられる剥離剤としては、基材フィルムの説明において先に例示した剥離剤が挙げられる。
【0087】
支持シート付フィルム状焼成材料の厚さは、1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましく、10〜150μmがさらに好ましい。
ここで、「支持シート付フィルム状焼成材料の厚さ」とは、支持シート付フィルム状焼成材料全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる支持シート付フィルム状焼成材料の厚さとは、支持シート付フィルム状焼成材料を構成するすべての層の厚さを意味する。
【0088】
≪支持シート付フィルム状焼成材料の製造方法≫
前記支持シート付フィルム状焼成材料の製造方法は、上述した本発明のフィルム状焼成材料の製造方法によりフィルム状焼成材料を得た後、前記フィルム状焼成材料を支持シート上に設ける工程を有する。
【0089】
例えば、支持体として剥離フィルムを用い、上述したフィルム状焼成材料の製造方法により、剥離フィルム上にフィルム状焼成材料を形成し、フィルム状焼成材料上に別の剥離フィルムを積層して、あらかじめ、剥離フィルム/フィルム状焼成材料/剥離フィルムの構成をこの順に有する積層体を準備する。そして、フィルム状焼成材料から剥離フィルムを剥離しながら、フィルム状焼成材料上に支持シートを積層することで、支持シート/フィルム状焼成材料/剥離フィルムの構成をこの順に有する支持シート付フィルム状焼成材料を製造することができる。フィルム状焼成材料上の剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0090】
また、支持体として剥離フィルムを用い、上述したフィルム状焼成材料の製造方法により、剥離フィルム上にフィルム状焼成材料を形成し、フィルム状焼成材料上に別の剥離フィルムを積層して、あらかじめ、剥離フィルム/フィルム状焼成材料/剥離フィルムの構成をこの順に有する積層体を準備する。これらとは別の剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させ溶媒を揮発させてフィルム状とすることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成し、次いで、粘着剤層上に基材フィルムを積層して、基材フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの構成をこの順に有する積層体を準備する。そして、フィルム状焼成材料及び粘着剤層から剥離フィルムをそれぞれ剥離しながら、基材フィルム上に積層済みの粘着剤層の露出面にフィルム状焼成材料を積層することで、基材フィルム/粘着剤層/フィルム状焼成材料/剥離フィルムの構成をこの順に有する支持シート付フィルム状焼成材料を製造することもできる。フィルム状焼成材料上の剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0091】
このように、支持シート付フィルム状焼成材料を構成する粘着剤層またはフィルム状焼成材料はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、支持シート付フィルム状焼成材料を製造すればよい。
【0092】
なお、支持シート付フィルム状焼成材料は、必要な層をすべて設けた後、その支持シートとは反対側の最表層の表面に、剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管されてよい。
【0093】
また、上述したフィルム状焼成材料の製造方法において、支持体として支持シートを用い、支持シート上に本発明の焼成材料組成物をスクリーン印刷してフィルム状焼成材料を形成してもよい。
【0094】
≪チップ付基板の製造方法≫
次に本発明に係る支持シート付フィルム状焼成材料の利用方法について、該焼成材料をチップ付基板の製造に適用した場合を例にとって説明する。
【0095】
本発明の一実施形態として、支持シート付フィルム状焼成材料を用いたチップ付基板の製造方法は、支持シート付フィルム状焼成材料の剥離フィルムを剥離し、半導体ウエハ(ワーク)の裏面に、支持シート付フィルム状焼成材料を貼付し、以下の工程(1)〜(2)を、(1)、(2)の順で行ってもよく、以下の工程(1)〜(4)を、(1)、(2)、(3)、(4)の順で行ってもよい。
【0096】
工程(1):支持シート、フィルム状焼成材料、及び半導体ウエハ(ワーク)がこの順に積層された積層体の、半導体ウエハ(ワーク)とフィルム状焼成材料とをダイシングする工程、
工程(2):フィルム状焼成材料と、支持シートとを剥離し、フィルム状焼成材料付チップを得る工程、
工程(3):基板の表面に、フィルム状焼成材料付チップを貼付する工程、
工程(4):フィルム状焼成材料を焼成し、チップと基板とを接合する工程。
【0097】
以下、上記工程(1)〜(4)を行う場合について説明する。
半導体ウエハはシリコンウエハ及びシリコンカーバイドウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。半導体ウエハの表面には、回路が形成されていてもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚さは特に限定はされないが、通常は20〜500μm程度である。その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。
【0098】
次いで、半導体ウエハの裏面に、上記支持シート付フィルム状焼成材料のフィルム状焼成材料を貼付する。その後、工程(1)〜(4)を(1)、(2)、(3)、(4)の順で行う。
【0099】
半導体ウエハ/フィルム状焼成材料/支持シートの積層体を、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングし、チップ/フィルム状焼成材料/支持シートの積層体を得る。ダイシングは、半導体ウエハとフィルム状焼成材料をともに切断するように行われる。本実施形態の支持シート付フィルム状焼成材料によれば、ダイシング時においてフィルム状焼成材料と支持シートの間で粘着力が発揮されるため、チッピングやチップ飛びを防止することができ、ダイシング適性に優れる。ダイシングは特に限定はされず、一例として、半導体ウエハのダイシング時には支持シートの周辺部(支持体の外周部)をリングフレームにより固定した後、ダイシングブレードなどの回転丸刃を用いるなどの公知の手法により半導体ウエハの個片化を行う方法などが挙げられる。ダイシングによる支持シートへの切り込み深さは、フィルム状焼成材料を完全に切断していてよく、フィルム状焼成材料と支持シートとの界面から0〜30μmとすることが好ましい。支持シートへの切り込み量を小さくすることで、ダイシングブレードの摩擦による支持シートを構成する粘着剤層や基材フィルムの溶融や、バリ等の発生を抑制することができる。
なお、表面に回路が形成された半導体ウエハを個片化したもの(チップ)を特に、素子又は半導体素子ともいう。
【0100】
その後、上記支持シートをエキスパンドしてもよい。支持シートの基材フィルムとして、伸張性に優れたものを選択した場合は、支持シートは、優れたエキスパンド性を有する。ダイシングされたフィルム状焼成材料付チップをコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、フィルム状焼成材料と支持シートとを剥離する。この結果、裏面にフィルム状焼成材料を有するチップ(フィルム状焼成材料付チップ)が得られる。
【0101】
続いて、基板の表面に、フィルム状焼成材料付チップを貼付する。基板には、リードフレームやヒートシンクなども含まれる。
次いでフィルム状焼成材料を焼成し、基板とチップとを焼結接合する。このとき、フィルム状焼成材料付チップのフィルム状焼成材料の露出面を、基板に貼付けておけば、フィルム状焼成材料を介してチップと前記基板とを焼結接合できる。
【0102】
フィルム状焼成材料を焼成する加熱温度は、フィルム状焼成材料の種類等を考慮して適宜定めればよいが、100〜600℃が好ましく、150〜550℃がより好ましく、250〜500℃がさらに好ましい。加熱時間は、フィルム状焼成材料の種類等を考慮して適宜定めればよいが、1〜60分間が好ましく、1〜30分間がより好ましく、1〜10分間がさらに好ましい。
【0103】
フィルム状焼成材料の焼成は、フィルム状焼成材料に圧をかけて焼成する加圧焼成を行ってもよい。加圧条件は、一例として、1〜50MPa程度とすることができる。
【0104】
本実施形態のチップ付基板の製造方法によれば、厚さの均一性の高いフィルム状焼成材料を、切れ端部を発生させることなくチップ裏面に簡便に形成でき、ダイシング工程やパッケージングの後のクラックが発生しにくくなる。また、本実施形態のチップ付基板の製造方法によれば、個別化されたチップ裏面に、フィルム状焼成材料を個別に貼り付けることなくフィルム状焼成材料付チップを得ることができ、製造工程の簡略化が図れる。そして、フィルム状焼成材料付チップを、所望の基板上に配置して焼成することでフィルム状焼成材料を介してチップと基板とが焼結接合されたチップ付基板を製造することができる。
【0105】
一実施形態として、チップと、本発明のフィルム状焼成材料とを備える、フィルム状焼成材料付チップが得られる。フィルム状焼成材料付チップは、一例として、上記のチップ付基板の製造方法により製造できる。
【0106】
なお、上記実施形態では、フィルム状焼成材料のチップとその基板との焼結接合について例示したが、フィルム状焼成材料の焼結接合対象は、上記に例示したものに限定されず、フィルム状焼成材料と接触して焼結させた種々の物品に対し、焼結接合が可能である。
【0107】
また、上記実施形態では、ブレード等を用いて半導体ウエハと一緒に個片化することでチップと同形のフィルム状焼成材料として加工することができ、且つフィルム状焼成材料付チップを製造することができる。すなわち、フィルム状焼成材料付チップにおいて、フィルム状焼成材料の接触面とチップの接触面の大きさ(面積)は同じであるが、これらは異なっていてもよい。例えば、フィルム状焼成材料の接触面がチップの接触面よりも大きい状態で、基板とチップとをフィルム状焼成材料を介して貼り合せてもよい。具体的には、基板に所望の大きさのフィルム状焼成材料を配置しておき、該フィルム状焼成材料よりも接触面が小さいチップをフィルム状焼成材料上に貼り付けてもよい。
【実施例】
【0108】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0109】
≪実施例1〜4、比較例1〜3≫
<焼成材料組成物の製造>
焼成材料組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
【0110】
(金属粒子分散液)
焼結性金属粒子としてアルコール誘導体被覆銀ナノ粒子(粒子径15〜55nm)と、非焼結性の金属粒子として銅粒子(粒子径2000〜5000nm)とを、質量比(焼結性金属粒子:非焼結性の金属粒子)が1:5となるように混合した混合粒子を、分散媒としてイソボルニルシクロヘキサノールおよびデシルアルコールの混合溶媒(質量比でイソボルニルシクロヘキサノール:デシルアルコール=1:1)に分散させ、固形分濃度85質量%の金属粒子分散液を調製した。
なお、イソボルニルシクロヘキサノールの酢酸ブチルに対する相対蒸発速度は1.1×10
−5であり、デシルアルコールの酢酸ブチルに対する相対蒸発速度は1.0×10
−3である。
【0111】
(バインダー成分)
エバポレーターを用いて、60℃、200hPaの条件で、市販のアクリル重合体(2−エチルヘキシルメタクリレート重合体、質量平均分子量28,000、L−0818、日本合成化学社製、MEK希釈品、固形分54.5質量%)のうち、MEKを揮発させたものをバインダー成分として用いた。
【0112】
(希釈溶媒)
・ブチルカルビトール(酢酸ブチルに対する相対蒸発速度:0.004)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(酢酸ブチルに対する相対蒸発速度:0.71)
・酢酸イソブチル(酢酸ブチルに対する相対蒸発速度:1.45)
・シクロヘキサン(酢酸ブチルに対する相対蒸発速度:4.5)
【0113】
各溶媒の酢酸ブチルに対する相対蒸発速度は、以下のようにして測定した。
各溶媒の蒸発速度をASTM D3539に規定された試験法に準じて測定し、同様の方法で測定した酢酸ブチルの蒸発速度の値を1とする相対蒸発速度に換算した。
【0114】
表1に示す配合組成となるように、金属粒子分散液とバインダー成分と希釈溶媒とを混合し、ペースト状の焼成材料組成物を得た。表中の金属粒子及びバインダー成分の配合量は固形分量である。
なお、表1中、分散媒の相対蒸発速度の欄の上段にイソボルニルシクロヘキサノールの相対蒸発速度を示し、下段にデシルアルコールの相対蒸発速度を示した。
【0115】
<フィルム状焼成材料の製造>
支持体として片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート系フィルムである剥離フィルム(リンテック社製、SP−PET382150、厚さ38μm)の片面に、上記で得られた焼成材料組成物を直径15cmの円形メッシュ版と金属製スキージーを用いて以下の条件でスクリーン印刷し、150℃10分間乾燥させ、片面が剥離フィルムに保護された円形状のフィルム状焼成材料を得た。
【0116】
(印刷条件)
・スクリーン印刷機:マイクロテック社製、MT−320TV・スクリーン版:ソノコム社製、3Dメッシュ(3D−80−225、印刷径153mm)
・クリアランス:1.5mm
・スキージー印圧:0.18MPa
・スクレーパー印圧:0.134MPa
・スキージー速度:60mm/sec
・スクレーパー速度:50mm/sec
【0117】
<焼成材料組成物及びフィルム状焼成材料の測定・評価>
上記で得られた焼成材料組成物及びフィルム状焼成材料について、下記項目を測定及び評価した。
【0118】
(厚さの測定)
JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器(テクロック社製、PG−02)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0119】
(粘度の測定)
動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、MCR−302)を用い、23℃の環境下でせん断速度を0.1sec
−1から10000sec
−1まで変化させながら焼成材料組成物の粘度を測定した。せん断速度が1sec
−1のときの粘度(C)及びせん断速度が1000sec
−1のときの粘度(D)を読み取った。結果を表1に示す。
【0120】
(接触角の測定)
全自動接触角計(協和界面科学社製、DM−701)を用い、温度23℃、湿度50%RHの環境下で支持体(剥離フィルム)上に焼成材料組成物を1滴滴下し、液滴の接線と支持体表面のなす角度を測定した。結果を表1に示す。
【0121】
(印刷適性の評価:形状維持性)
スクリーン印刷直後から乾燥前の約1分の間で、印刷直後の形状を保持しているかを目視にて確認し、以下の評価基準にて評価した。結果を表1に示す。
1:スクリーン印刷直後からすぐに液(焼成材料組成物)が
濡れ拡がり、その濡れ拡がりのサイズが大きく、印刷直後の形状を全く保持していない。
2:スクリーン印刷直後は形状を保持しているが徐々に液が濡れ拡がり、乾燥前には濡れ拡がりのサイズが大きくなり、印刷直後の形状を保持していない。
3:スクリーン印刷直後から乾燥直前までに僅かに形状が変化しているが、実用上、問題ないレベルである。
4:スクリーン印刷直後から乾燥直前まで形状が変化しない。
【0122】
(印刷適性の評価:印刷性)
スクリーン印刷を連続して5回行ったときのスクリーン版からの焼成材料組成物の版離れ、及び支持体上に転写された印刷直後の焼成材料組成物の表面状態を目視にて確認し、以下の評価基準にて評価した。結果を表1に示す。
1:1回目の印刷において版離れが悪く、焼成材料組成物がスクリーン版上に残ってしまい、支持体上に必要量の焼成材料組成物を転写できない。また、版離れが悪く、転写が不充分であるため、印刷されていない部分や、印刷された部分には目視で確認できるレベルで厚みムラが認められる。
2:2回目の印刷で版離れが悪くなり、焼成材料組成物がスクリーン版上に残ってしまい、支持体上に必要量の焼成材料組成物を転写できない。また、版離れが悪く、転写が不充分であるため、2回目の印刷直後の焼成材料組成物の表面状態は目視で確認できるレベルで厚みムラが認められる。
3:3回目又は4回目の印刷で僅かに版離れが悪くなり、焼成材料組成物がスクリーン版上に残るが、印刷直後の焼成材料組成物の表面状態は良好(均一)であり、フィルム状焼成材料として実用上、問題ないレベルである。
4:印刷を連続して5回行っても版離れが良好であり、印刷直後の焼成材料組成物の表面状態は良好(均一)である。
【0123】
【表1】
【0124】
表1から明らかなように、実施例1〜4の焼成材料組成物は、比較例1〜3の焼成材料組成物と比較し、印刷適性に優れ、円形状のフィルム状焼成材料を安定して製造できた。
【0125】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。