(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0028】
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図1A】
図1A及び1Bは、本発明のいくつかの形式を示す。「ボトルオープナー」形式の2つの形態が示され、1つは、scFvを含む抗CD3抗原結合ドメイン、及びFabを含む抗CD38抗原結合ドメインを有し、1つはこれらの逆を有する。mAb−Fv、mAb−scFv、中心scFv、及び中心Fv形式がすべて示される。さらに、1つの単量体がFcドメインのみを含む「ワンアーム化(one−armed)」形式であるワンアーム中心scFv及びワンアーム中心Fvの両方が示される。二重scFv形式もまた示される。
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図1B】
図1A及び1Bは、本発明のいくつかの形式を示す。「ボトルオープナー」形式の2つの形態が示され、1つは、scFvを含む抗CD3抗原結合ドメイン、及びFabを含む抗CD38抗原結合ドメインを有し、1つはこれらの逆を有する。mAb−Fv、mAb−scFv、中心scFv、及び中心Fv形式がすべて示される。さらに、1つの単量体がFcドメインのみを含む「ワンアーム化(one−armed)」形式であるワンアーム中心scFv及びワンアーム中心Fvの両方が示される。二重scFv形式もまた示される。
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図2】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む「高CD3」抗CD3_H1.30_L1.47構築物の配列を示す。図に示す配列のすべてにあてはまるように、この荷電リンカーは、必要に応じて、非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーによって置き換えられ得る。
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図3】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む「高中間(High−Int)#1」抗CD3_H1.32_L1.47構築物の配列を示す。図に示す配列のすべてにあてはまるように、この荷電リンカーは、必要に応じて、非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーによって置き換えられ得る。
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図4】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む「高中間#2」抗CD3_H1.89_L1.47構築物の配列を示す。図に示す配列のすべてにあてはまるように、この荷電リンカーは、必要に応じて、非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーによって置き換えられ得る。
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図5】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む「高中間#3」抗CD3_H1.90_L1.47構築物の配列を示す。図に示す配列のすべてにあてはまるように、この荷電リンカーは、必要に応じて、非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーによって置き換えられ得る。
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図6】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む「中間」抗CD3_H1.90_L1.47構築物の配列を示す。図に示す配列のすべてにあてはまるように、この荷電リンカーは、必要に応じて、非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーによって置き換えられ得る。
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図7】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む「低」抗CD3_H1.31_L1.47構築物の配列を示す。図に示す配列のすべてにあてはまるように、この荷電リンカーは、必要に応じて、非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーによって置き換えられ得る。
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図8】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む高CD38:OKT10_H1.77_L1.24構築物の配列を示す。
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図9】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む中間CD38:OKT10_H1L1.24構築物の配列を示す。
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図10】可変重及び軽ドメイン(CDRには下線が引かれている)、ならびに個々のvl及びvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線が引かれている)を有するscFv構築物を含む低CD38:OKT10_H1L1構築物の配列を示す。
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図28】ヒトCD38タンパク質の全長(配列識別番号130)及び細胞外ドメイン(ECD、配列識別番号131)を示す。
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図29A】
図29A〜29Eは、ヘテロ二量体化変異体のセットの有用な対(歪曲及びpI変異体を含む)を示す。
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図29B】
図29A〜29Eは、ヘテロ二量体化変異体のセットの有用な対(歪曲及びpI変異体を含む)を示す。
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図29C】
図29A〜29Eは、ヘテロ二量体化変異体のセットの有用な対(歪曲及びpI変異体を含む)を示す。
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図29D】
図29A〜29Eは、ヘテロ二量体化変異体のセットの有用な対(歪曲及びpI変異体を含む)を示す。
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図29E】
図29A〜29Eは、ヘテロ二量体化変異体のセットの有用な対(歪曲及びpI変異体を含む)を示す。
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図30】等比体積変異体抗体の定常領域、及びそのそれぞれの置換の一覧を示す。pI_(−)は、より低いpI変異体を示し、pI_(+)は、より高いpI変異体を示す。これらは、本発明の他の二量体化変異体と、(かつ本明細書に概要が記載されるとおり、他の変異体の型と)任意選択かつ独立に組み合わせることができる。
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図31】FcγR結合を消去する有用な消去変異体(「ノックアウト」または「KO」変異体と呼ばれることがある)を示す。
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図32】本発明の2つの特に有用な実施形態を示す。
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図33A】
図33は、1つ以上のscFvを成分として利用するヘテロ二量体抗体のpIを増加または減少させることにおいて有用である多くの荷電scFvリンカーを示す。単一電荷を有する、単一の先行技術scFvリンカーは、Whitlow et al.,Protein Engineering 6(8):989−995(1993)にちなんで、「Whitlow」と呼ばれる。このリンカーは、scFvにおいて、凝集の低減、及びタンパク質分解に対する安定性の増進に向けて使用されることに留意されたい。
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図33B】
図33は、1つ以上のscFvを成分として利用するヘテロ二量体抗体のpIを増加または減少させることにおいて有用である多くの荷電scFvリンカーを示す。単一電荷を有する、単一の先行技術scFvリンカーは、Whitlow et al.,Protein Engineering 6(8):989−995(1993)にちなんで、「Whitlow」と呼ばれる。このリンカーは、scFvにおいて、凝集の低減、及びタンパク質分解に対する安定性の増進に向けて使用されることに留意されたい。
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図34】操作されたヘテロ二量体歪曲Fc変異体の一覧をヘテロ二量体の収率(HPLC−CIEXにより決定)及び熱安定性(DSCにより決定)と共に示す。未決定の熱安定性は、「n.d.」と示される。
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図35】タンパク質Aの親和性精製後の二重特異性体の発現量である。
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図37】再配向化T細胞細胞傷害性アッセイ、24時間のインキュベーション、10,000個のRPMI8226細胞、400,000個のT細胞である。試験物は、抗CD38×抗CD3二重特異性体である。検出は、LDHが使用された。
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図38】再配向化T細胞細胞傷害性アッセイ、24時間のインキュベーション、10,000個のRPMI8226細胞、500,000個のヒトPBMCである。試験物は、抗CD38×抗CD3二重特異性体である。検出は、LDHが使用された。
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図44】再配向化T細胞細胞傷害性アッセイ、96時間のインキュベーション、40,000個のRPMI8226細胞、400,000個のヒトPBMCである。試験物は、抗CD38×抗CD3Fab−scFv−Fcsである。検出は、フローサイトメトリー、特にCD38+細胞の消失が使用された。
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図45】
図1において説明される再配向化T細胞細胞傷害性アッセイのさらなる分析である。第1の列は、フローサイトメトリーによって検出されるCD4+及びCD8+T細胞上の活性化マーカーCD69の平均蛍光強度(MFI)を示す。第2の列は、細胞増殖の尺度であるKi−67+であるCD4+及びCD8+T細胞のパーセンテージを示す。第3の列は、フローサイトメトリーによって検出されるCD4+及びCD8+T細胞上のグランザイムB阻害剤PI−9の細胞内平均蛍光強度(MFI)を示す。
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図46】抗CD38×抗CD3Fab−scFv−Fc二重特異性体の抗腫瘍活性を調べるためのマウス研究の計画である。
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図47】時間及び処置の関数としてIVIS(登録商標)によって測定された腫瘍サイズである
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図48】IVIS(登録商標)生物発光画像(10日目)である
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図49】示された試験物の単回投与後のカニクイザルにおけるCD38
+細胞の欠乏である
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図50】カニクイザルにおいてCD69平均蛍光強度(MFI)によって測定されたT細胞活性化であり、色識別は
図49のとおりである。
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図51】示された試験物の単回投与後のIL−6の血清中レベルである。
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図64】Biacoreアッセイにおける結合親和性を示す。
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図65】軽鎖、Fab−Fc、及びscFv−Fcの比を変更して使用し、安定プールを生成させた際のヘテロ二量体の純度を示す。
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図66】huPBMCマウスモデルにおける抗CD38x抗CD3二重特異性体によるヒトIgM及びヒトIgG2の欠乏である。
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図67A】
図67は、安定性が最適化された、ヒト化抗CD3変異体scFvを示す。置換は、H1_L1.4scFv配列に対して与えられている。アミノ酸の番号付けは、Kabatの番号付けである。
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図67B】
図67は、安定性が最適化された、ヒト化抗CD3変異体scFvを示す。置換は、H1_L1.4scFv配列に対して与えられている。アミノ酸の番号付けは、Kabatの番号付けである。
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図68A】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68B】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68C】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68D】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68E】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68F】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68G】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68H】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68I】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68J】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68K】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68L】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68M】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68N】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68O】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68P】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68Q】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68R】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68S】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68T】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68U】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68V】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68W】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68X】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68Y】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
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図68Z】
図68。安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列、(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が記載される。
【
図69】再配向化T細胞細胞傷害性アッセイ、24時間のインキュベーション、10,000個のRPMI8226細胞、500,000個のPBMCである。試験物は、抗CD38(OKT10_H1L1、OKT10_H1.77_L1.24)×抗CD3Fab−scFv−Fcsである。検出は、LDHが使用された。
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図70】huPBL−SCID Ig欠乏研究である。試験物は、0.03、0.3、または3mg/kgでPBMC移植後の8日目に投与された。投与経路は腹腔内であった。血液試料は、PBMC移植後の14日目に採取され、処理して血清とし、ヒトIgM及びIgG2をアッセイされた。
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図71】XENP18967抗CD38の配列を示す。
【
図77】本発明の実施形態の可能性のある組み合わせのマトリックスを示す。「A」は、参照されるCD3配列のCDRが、左手側でCD38構築物のCDRと組み合わせることができることを意味する。すなわち、例えば左上のセルについて、可変重鎖CD3 H1.30配列からのvhCDR及びCD3 L1.47配列の可変軽鎖からのvlCDRが、CD38 OKT10 H1.77配列からのvhCDR及びOKT10L1.24配列からのvlCDRと組み合わせることができるということである。「B」は、CD3構築物からのCDRが、CD38構築物からの可変重及び軽ドメインと組み合わせることができることを意味する。すわなち、例えば左上のセルについて、可変重鎖CD3 H1.30配列からのvhCDR及びCD3 L1.47配列の可変軽鎖からのvlCDRが、可変重ドメインCD38 OKT10 H1.77配列及びOKT10L1.24配列と組み合わせることができるということである。「C」は、CD3配列からの可変重ドメイン及び可変軽ドメインが、CD38配列のCDRと共に使用されるように逆にされる。「D」では、それぞれからの可変重及び可変軽鎖の両方が組み合わされる。「E」では、CD3のscFvが、CD38抗原結合ドメイン構築物のCDRと共に使用され、「F」では、CD3のscFvが、CD38抗原結合ドメインの可変重及び可変軽ドメインと共に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.定義
本出願をより完全に理解し得るために、いくつかの定義を以下に示す。そのような定義は、文法的に等価であるものを包含することを意図する。
【0030】
本明細書では、「消去」は、活性の低減または除去を意味する。したがって、たとえば、「FcγR結合の消去」は、特定の変異体を含まないFc領域と比較して、Fc領域アミノ酸変異体が、出発結合の50%未満を有することを意味し、活性を70〜80〜90〜95〜98%喪失していることが好ましく、一般に、活性は、Biacoreアッセイにおいて、検出可能な結合水準を下回る。FcγR結合の消去において特に使用されるものは、
図16に示されるものである。
【0031】
本明細書では、「ADCC」または「抗体依存性細胞傷害」は、細胞が媒介する反応であり、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性の細胞が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後に標的細胞の溶解を引き起こすことを意味する。ADCCは、FcγRIIIaに対する結合と相関しており、FcγRIIIaに対する結合の増加は、ADCC活性の増加につながる。
【0032】
本明細書では、「ADCP」または抗体依存性細胞貪食は、細胞が媒介する反応であり、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性の細胞が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後に標的細胞の貪食を引き起こすことを意味する。
【0033】
本明細書では、「改変」は、ポリペプチド配列における、アミノ酸の置換、挿入、及び/若しくは欠失、またはタンパク質に化学的に連結された部分に対する変更を意味する。例えば、改変は、糖質の変更またはタンパク質に付加されたPEG構造であってよい。本明細書では、「アミノ酸改変」は、ポリペプチド配列における、アミノ酸の置換、挿入、及び/または欠失を意味する。明確化に向けた説明として、別段の記載が無い限り、アミノ酸改変は、常に、DNAよってコードされるアミノ酸への改変であり、例えば、DNA及びRNAにおいてコドンを有する20個のアミノ酸である。
【0034】
本明細書では、「アミノ酸置換」または「置換」は、親ポリペプチド配列における特定位置で、アミノ酸を異なるアミノ酸と置き換えることを意味する。具体的には、いくつかの実施形態では、置換は、特定位置で自然発生しないアミノ酸に対するものであり、生物内において、または何らかの生物において、いずれでも自然発生しない。例えば、置換E272Yは、変異体ポリペプチドを指し、この場合、位置272で、グルタミン酸が、チロシンで置き換えられているFc変異体である。明確化に向けた説明として、核酸がコードする配列が変わるように操作されているが、出発アミノ酸から変えていないタンパク質(例えば、CGG(アルギニンをコードする)をCGA(依然としてアルギニンをコードする)へと交換すると、宿主組織の発現水準は増加する)は、「アミノ酸置換」ではない。すなわち、同一タンパク質をコードする新しい遺伝子が創出されているにもかかわらず、タンパク質が、出発時の特定位置に、同一のアミノ酸を有するのであれば、それは、アミノ酸置換ではない。
【0035】
本明細書では、「アミノ酸挿入」または「挿入」は、親ポリペプチド配列における特定位置でのアミノ酸配列の追加を意味する。例えば、−233Eまたは233Eは、位置233の後かつ位置234の前でのグルタミン酸の挿入を指定する。さらに、−233ADEまたはA233ADEは、位置233の後かつ位置234の前でのAlaAspGluの挿入を指定する。
【0036】
本明細書では、「アミノ酸欠失」または「欠失」は、親ポリペプチド配列における特定位置でのアミノ酸配列の除去を意味する。例えば、E233−またはE233#またはE233()は、位置233でグルタミン酸の欠失を指定する。さらに、EDA233−またはEDA233#は、位置233から始まる配列GluAspAlaの欠失を指定する。
【0037】
本明細書では、「変異体タンパク質」または「タンパク質変異体」または「変異体」は、少なくとも1つのアミノ酸改変の理由によって、親タンパク質のそれとは異なるタンパク質を意味する。タンパク質変異体は、タンパク質自体、タンパク質を含む組成物、またはそれをコードするアミノ配列を指してよい。好ましくは、タンパク質変異体は、親タンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を有し、例えば、親と比較して、約1〜約70個のアミノ酸改変、好ましくは、約1〜約5個のアミノ酸改変を有する。以下に説明されるとおり、いくつかの実施形態では、親ポリペプチド、例えば、Fc親ポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来のFc領域などのヒト野生型配列であるが、変異体を有するヒト配列は、「親ポリペプチド」、例えば
図19のIgG1/2ハイブリッドとしても働くことができる。本明細書に記載されるタンパク質変異体配列は、好ましくは、親タンパク質配列との比較で、少なくとも約80%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約90%の同一性、より好ましくは、少なくとも95〜98〜99%の同一性を有する。変異体タンパク質は、変異体タンパク質自体、タンパク質変異体を含む組成物、またはそれをコードするDNA配列を指し得る。したがって、本明細書では、「抗体変異体」または「変異体抗体」は、少なくとも1つのアミノ酸改変の理由によって、親抗体と異なる抗体を意味し、本明細書では、「IgG変異体」または「変異体IgG」は、少なくとも1つのアミノ酸改変の理由によって、親IgG(再度記載するが、多くの場合、ヒトIgG配列由来)と異なる抗体を意味し、本明細書では、「イムノグロブリン変異体」または「変異体イムノグロブリン」は、少なくとも1つのアミノ酸改変の理由によって親イムノグロブリン配列のそれと異なるイムノグロブリン配列を意味する。本明細書で使用される「Fc変異体」または「変異体Fc」は、Fcドメインにおいてアミノ酸改変を含むタンパク質を意味する。本発明のFc変異体は、それを構成するアミノ酸改変に従って定義される。したがって、例えば、N434Sまたは434Sは、親Fcポリペプチドに対して、位置434で置換セリンを有するFc変異体であり、番号付けは、EUインデックスに従うものである。同様に、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対して、置換M428L及び置換N434Sを有するFc変異体を定義する。WTアミノ酸の同一性が、特定されていなくてもよく、その場合、先に記載した変異体は、428L/434Sと呼ばれる。置換が提供される規則は任意であることに留意されたい。つまり、例えば、428L/434Sは、M428L/N434Sと同一のFc変異体である等である。本発明において論じられ、抗体に関連する位置のすべてで、別段の記載が無い限り、アミノ酸位置の番号付けは、EUインデックスに従うものである。EUインデックス、またはKabat若しくはEUの番号付けスキームにあるようなEUインデックスは、EU抗体の番号付けを指す(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78−85の全体が、これにより、参照によって、本明細書に組み込まれる。)。改変は、追加、欠失、または置換であり得る。置換は、自然発生するアミノ酸を含み得、場合によっては、合成アミノ酸を含み得る。例には、米国特許第6,586,207号、WO98/48032、WO03/073238、US2004−0214988A1、WO05/35727A2、WO05/74524A2、J.W.Chin et al.,(2002),Journal of
the American Chemical Society 124:9026−9027、J.W.Chin,&P.G.Schultz,(2002),ChemBioChem 11:1135−1137、J.W.Chin,et al.,(2002),PICAS United States of America 99:11020−11024、及びL.Wang,&P.G.Schultz,(2002),Chem.1−10が含まれ、これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる。
【0038】
本明細書では、本明細書に記載される「タンパク質」は、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びペプチドが含まれる。ペプチジル基は、自然発生するアミノ酸及びペプチド結合、または合成ペプチド模倣構造、すなわち、ペプトイドなどの「アナログ」を含んでよい(Simon et al.,PNAS USA 89(20):9367(1992)参照。参照によって、全体が組み込まれる)。アミノ酸は、自然発生または合成(例えば、DNAによってコードされるアミノ酸ではない)のいずれでもよく、当業者によって理解されるとおりである。例えば、ホモ−フェニルアラニン、シトルリン、オルニチン、及びノルロイシンは、本発明の目的に向けた合成アミノ酸であると考えられ、D及びL(RまたはS)で形成されたアミノ酸の両方を利用してよい。本発明の変異体は、例えば、Schultzらによって開発された技術を使用して組み込まれた合成アミノ酸の使用を含む改変を含んでよく、限定はされないが、Cropp&Shultz,2004,Trends Genet.20(12):625−30、Anderson et al.,2004,Proc Natl Acad Sci USA 101(2):7566−71、Zhang et al.,2003,303(5656):371−3、及びChin et al.,2003,Science 301(5635):964−7によって説明される方法が含まれ、これらはすべて、全体が、参照によって組み込まれる。さらに、ポリペプチドは、1つまたは複数の側鎖または末端の合成誘導体化、グリコシル化、PEG化、円順列、環化、他の分子へのリンカー、タンパク質またはタンパク質ドメインへの融合、及びペプチドタグまたはペプチド標識の追加を含んでよい。
【0039】
本明細書では、「残基」は、タンパク質における位置を意味し、アミノ酸同一性と関連する。例えば、アスパラギン297(Asn297またはN297とも呼ばれる)は、ヒト抗体IgG1における位置297の残基である。
【0040】
本明細書では、「Fab」または「Fab領域」は、VHイムノグロブリンドメイン、CH1イムノグロブリンドメイン、VLイムノグロブリンドメイン、及びCLイムノグロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabは、この領域を単独で指してよく、または全長抗体、抗体断片、若しくはFab融合タンパク質の構成におけるこの領域を指してよい。本明細書では、「Fv」または「Fv断片」または「Fv領域」は、単一抗体のVLドメイン及びVHドメインを含むポリペプチドを意味する。当業者によって理解されるように、これらは一般に、2つの鎖で作り上げられている。
【0041】
本明細書では、「IgGサブクラス改変」または「アイソタイプ改変」は、1つのIgGアイソタイプの1つのアミノ酸を、異なる、位置合わせされたIgGアイソタイプにおいて、対応するアミノ酸に変換するアミノ酸改変を意味する。例えば、EU位置296に、IgG1は、チロシンを含み、IgG2は、フェニルアラニンを含むため、IgG2におけるF296Y置換は、IgGサブクラス改変であると考えられる。
【0042】
本明細書では、「非自然発生改変」は、アイソタイプではないアミノ酸改変を意味する。例えば、IgGのいずれも位置434にセリンを含まないため、IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4(またはそのハイブリッド)における置換434Sは、非自然発生改変であると考えられる。
【0043】
本明細書では、「アミノ酸」及び「アミノ酸同一性」は、DNA及びRNAによってコードされる自然に発生する20個のアミノ酸の1つを意味する。
【0044】
本明細書では、「エフェクター機能」は、抗体Fc領域と、Fc受容体またはFcリガンドとの相互作用からもたらされる生化学的現象を意味する。エフェクター機能には、限定はされないが、ADCC、ADCP、及びCDCが含まれる。
【0045】
本明細書では、「IgG Fcリガンド」は、IgG抗体のFc領域に結合し、Fc/Fcリガンド複合体を形成する、何らかの生物由来の分子、好ましくは、ポリペプチドを意味する。Fcリガンドには、限定はされないが、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、ブドウ球菌プロテインG、及びウイルスFcγRが含まれる。Fcリガンドは、FcγRに相同性のFc受容体のファミリーであるFc受容体相同体(FcRH)(Davis et al.,2002,Immunological Reviews 190:123−136の全体が、参照によって、組み込まれる)も含む。Fcリガンドには、Fcに結合する未発見分子を含まれてよい。特定のIgG Fcリガンドは、FcRn及びFcガンマ受容体である。本明細書では、「Fcリガンド」は、抗体のFc領域に結合し、Fc/Fcリガンド複合体を形成する、何らかの生物由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。
【0046】
本明細書では、「Fcガンマ受容体」、「FcγR」、または「FcガンマR」は、IgG抗体のFc領域に結合するタンパク質ファミリーの何らかのメンバーを意味し、FcγR遺伝子によってコードされる。ヒトにおいては、このファミリーには、限定はされないが、アイソフォームFcγRIa、アイソフォームFcγRIb、及びアイソフォームFcγRIcを含むFcγRI(CD64)、アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131及びアロタイプR131を含む)、アイソフォームFcγRIIb(FcγRIIb−1及びFcγRIIb−2を含む)、ならびにアイソフォームFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)、ならびにアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158及びアロタイプF158を含む)、及びアイソフォームFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIb−NA1及びアロタイプFcγRIIb−NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65の全体が、参照によって組み込まれる)、ならびに何らかの未発見のヒトFcγRまたはFcγRアイソフォーム若しくはFcγRアロタイプが含まれる。FcγRは、何らかの生物由来であってよく、限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルが含まれる。マウスFcγRには、限定はされないが、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、及びFcγRIII−2(CD16−2)、ならびに何らかの未発見のマウスFcγRまたはFcγRアイソフォーム若しくはFcγRアロタイプが含まれる。
【0047】
本明細書では、「FcRn」または「新生児型Fc受容体」は、IgG抗体のFc領域に結合するタンパク質を意味し、少なくとも一部がFcRn遺伝子によってコードされる。FcRnは、何らかの生物由来であってよく、限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルが含まれる。当該技術分野で知られるように、機能性FcRnタンパク質は、2つのポリペプチドを含み、重鎖及び軽鎖と呼ばれることが多い。軽鎖は、ベータ−2−ミクログロブリンであり、重鎖は、FcRn遺伝子によってコードされる。別段の記載が無い限り、FcRnまたはFcRnタンパク質は、FcRn重鎖のベータ−2−ミクログロブリンとの複合体を指す。FcRn受容体に対する結合の増加に使用され、場合によっては、血清半減期の増加に使用される様々なFcRn変異体が、
図83の図の説明に示される。
【0048】
本明細書では、「親ポリペプチド」は、後に改変されて変異体が生成する出発ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、自然発生するポリペプチド、または変異体、または自然発生するポリペプチドの操作された型であってよい。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指し得る。したがって、本明細書では、「親イムノグロブリン」は、改変されて変異体が生成する未改変イムノグロブリンポリペプチドを意味し、本明細書では、「親抗体」は、改変されて変異体抗体を生成する未改変抗体を意味する。「親抗体」は、以下に概要が記載される、既知であって、市販の、組換えで産生される抗体を含む。
【0049】
本明細書では、「Fc」または「Fc領域」または「Fcドメイン」は、第1の定常領域イムノグロブリンドメイン、及び場合によっては、ヒンジ部分を除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域イムノグロブリンドメイン、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域イムノグロブリンドメイン、ならびにこうしたドメインに対する可動性のヒンジN末端を指す。IgA及びIgM向けに、Fcは、J鎖を含んでよい。IgG向けに、Fcドメインは、イムノグロブリンドメインCγ2及びイムノグロブリンドメインCγ3(Cγ2及びCγ3)、ならびにCγ1(Cγ1)及びCγ2(Cγ2)の間の下位ヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は、変わってよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、残基C226または残基P230をそのカルボキシ末端に含めると定義されることが通常であり、番号付けは、Kabatにあるように、EUインデックスによるものである。いくつかの実施形態では、以下に、より完全に説明されるように、アミノ酸改変が、Fc領域に対してなされることで、例えば、1つまたは複数のFcγR受容体に対する結合、またはFcRn受容体に対する結合が変わる。
【0050】
本明細書では、「重定常領域」は、抗体のCH1−ヒンジ−CH2−CH3部分を意味する。
【0051】
本明細書では、「Fc融合タンパク質」または「イムノアドヘシン」は、Fc領域を含むタンパク質を意味し、当該Fc領域は、一般に、本明細書で説明される、標的タンパク質に対する結合部分などの異なるタンパク質に、連結(任意選択で、本明細書で説明されるリンカー部分を介する)される。いくつかの場合では、ヘテロ二量体抗体の一方の単量体は、抗体重鎖(scFvを含むか、または軽鎖をさらに含むかのいずれか)を含み、もう一方の単量体はFc融合であり、変異体Fcドメイン及びリガンドを含む。いくつかの実施形態では、これらの「半抗体半融合タンパク質」は、「融合体」と呼ばれる。
【0052】
本明細書では、「位置(postion)」は、タンパク質の配列における場所(location)を意味する。位置は、連続して番号付けしてよく、または確立された形式に従ってよく、例えば、抗体の番号付けのためのEUインデックスに従ってよい。
【0053】
本明細書では、「標的抗原」は、所与の抗体の可変領域によって特異的に結合される分子を意味する。標的抗原は、タンパク質、糖質、脂質、または他の化学化合物であってよい。幅広い数の適した標的抗原が以下に説明される。
【0054】
本明細書に記載される、本発明のヘテロ二量体抗体の単量体の構成における「鎖性(strandedness)」は、「適合」するDNAの2つの鎖(strand)と同様に、ヘテロ二量体化変異体が、「適合」してヘテロ二量体を形成する能力を保つように、それぞれの単量体へと取り込まれることを意味する。例えば、いくつかのpI変異体が、単量体Aへと操作導入されている(例えば、pIを高くする)のであれば、「電荷対」である立体変異体も利用することができ、pI変異体を妨害しない。例えば、pIを高くする電荷変異体を、同一「鎖」または同一「単量体」に加えることにより、両機能性が保持される。同様に、以下により完全に概要が記載される組の対で起こる「歪曲」変異体については、当業者は、pI分離も歪曲のpIを使用して最大になるように、1セットの対を組み込む鎖または単量体のどれが機能するか決定するときにpIを考慮する。
【0055】
本明細書では、「標的細胞」は、標的抗原を発現している細胞を意味する。
【0056】
本明細書では、「可変領域」は、カッパイムノグロブリン、ラムダイムノグロブリン、及び重鎖イムノグロブリンの遺伝子座位をそれぞれ構成するV.カッパ遺伝子、V.ラムダ遺伝子、及び/またはVH遺伝子のいずれかによって実質的にコードされる1つまたは複数のIgドメインを含むイムノグロブリンの領域を意味する。
【0057】
本明細書では、「野生型またはWT」は、天然においてみられるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味し、対立遺伝子変動を含む。WTタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0058】
本発明の抗体は、一般に、単離されているか、または組換え体である。「単離された」が、本明細書に開示される様々なポリペプチドについての説明に使用されるとき、それが発現される細胞または細胞培養から、同定され、分離され、及び/または回収されたポリペプチドを意味する。通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製段階によって調製されることになる。「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。「組換え体」は、抗体が、外来宿主細胞において組換え核酸技術を使用して生成されることを意味する。
【0059】
「特異的結合(Specific binding)」、または特定の抗原若しくはエピトープ「に特異的に結合する(specifically bind to)」、または特定の抗原若しくはエピトープ「に向けて特異的(specific for)」は、非特異的相互作用とは、測定可能な程に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に、結合活性を有さない類似構造の分子である対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することによって、測定できる。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子との競合によって決定できる。
【0060】
特定の抗原またはエピトープに向けた特異的結合は、例えば、抗原またはエピトープに向けて、抗体が、少なくとも約10〜4MのKD、少なくとも約10〜5MのKD、少なくとも約10〜6MのKD、少なくとも約10〜7MのKD、少なくとも約10〜8MのKD、少なくとも約10〜9MのKD、あるいは、少なくとも約10〜10MのKD、少なくとも約10〜11MのKD、少なくとも約10〜12MのKD、またはそれより高いKDを有することによって示すことができ、KDは、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指す。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体であれば、抗原またはエピトープに対して、対照分子が、20倍〜、50倍〜、100倍〜、500倍〜、1000倍〜、5,000倍〜、10,000倍〜、またはこれらを上回る倍数のKDを有することになる。
【0061】
また、特定の抗原またはエピトープに向けた特異的結合は、例えば、対照に対して、抗体が、そのエピトープに向けて、少なくとも20倍〜、50倍〜、100倍〜、500倍〜、1000倍〜、5,000倍〜、10,000倍〜、またはこれらを上回る倍数の、抗原またはエピトープに向けたKAまたはKaを有することによって示すことができ、KAまたはKaは、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を指す。
II.概要
【0062】
CD3及び腫瘍抗原標的を共捕捉する二重特異性抗体は、T細胞を再配向化して標的化腫瘍細胞を攻撃し溶解するために、設計され使用されてきた。例には、CD3及び腫瘍抗原を一価で捕捉するBiTE及びDART形式が含まれる。CD3ターゲティング手法が相当な見込みを示した一方、そのような治療の共通の副作用は、サイトカインの関連する産生であり、毒性サイトカイン放出症候群につながることが多い。二重特異性抗体の抗CD3結合ドメインが、すべてのT細胞に捕捉するため、高サイトカイン産生CD4 T細胞サブセットが補充される。その上、CD4 T細胞サブセットは、制御性T細胞を含み、その補充及び拡大は、免疫抑制に潜在的につながり、長期の腫瘍抑制に悪影響を有し得る。さらに、これらの形式は、Fcドメインを含有せず、患者に非常に短い血清半減期を示す。
【0063】
CD3ターゲティング手法が相当な見込みを示した一方、そのような治療の共通の副作用は、サイトカインの関連する産生であり、毒性サイトカイン放出症候群につながることが多い。二重特異性抗体の抗CD3結合ドメインが、すべてのT細胞に捕捉するため、高サイトカイン産生CD4 T細胞サブセットが補充される。その上、CD4 T細胞サブセットは、制御性T細胞を含み、その補充及び拡大は、免疫抑制に潜在的につながり、長期の腫瘍抑制に悪影響を有し得る。サイトカイン産生を低下させ、かつCD4 T細胞の活性化をおそらく低下させる1つのそのような可能性のある方法は、CD3に向けた抗CD3ドメインの親和性を低下させることによるものである。
【0064】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、CD3に対する「強」または「高親和性」結合体(例えば、1つの例は、H1.30_L1.47として示される重可変ドメイン、及び軽可変ドメインである(必要に応じて任意選択で荷電リンカーを含む))であり、またCD38に結合する抗CD3抗原結合ドメインを含む抗体構築物を提供する。他の実施形態では、本発明は、CD3に対する「軽(lite)」または「低親和性」結合体である抗CD3抗原結合ドメインを含む抗体構築物を提供する。追加の実施形態は、CD3に対して中間または「中」親和性を有し、またCD38に結合する抗CD3抗原結合ドメインを含む抗体構築物を提供する。
【0065】
本発明の「高、中、低」抗CD3配列が、様々なヘテロ二量体化形式において使用され得ることを理解されるべきである。本明細書の開示の大部分が、ヘテロ二量体の「ボトルオープナー」形式を使用する一方で、これらの可変重及び軽配列、ならびにscFv配列(ならびにこれらの可変重及び軽配列を含むFab配列)は、WO公開第2014/145806号の
図2に示されるもの、参照によって、明確に本明細書に組み込まれる図、形式、及び説明文などの他の形式で使用され得る。
【0066】
したがって、本発明は、2つの異なる抗原に結合するヘテロ二量体抗体を提供し、例えば、その抗体は、本発明において2つの異なる標的抗原、例えば、CD3及びCD38に結合するという点で「二重特異性」である。これらのヘテロ二量体抗体は、一価(例えば、可変重及び可変軽ドメインの対などの単一抗原結合ドメインがある)または二価(それぞれが独立に抗原に結合する2つの抗原結合ドメインがある)のいずれかでこれらの標的抗原に結合し得る。本発明のヘテロ二量体抗体は、以下により詳細に要約されるように、ヘテロ二量体形成をホモ二量体形成より優先させるアミノ酸置換物を含有する様々な単量体と、以下に同様に概要が記載されるように、ホモ二量体を除去するヘテロ二量体の単純な精製を可能にする「pI変異体」と共に使用することに基づく。本発明のヘテロ二量体二重特異性抗体については、本発明は、一般に、ヘテロ二量体タンパク質を産生するために産生細胞内で自己組織化し得る操作されたFcドメインまたは変異体Fcドメインの使用、及びそのようなヘテロ二量体タンパク質を生成し精製するための方法に依存する。
III.抗体
【0067】
本発明は、CD3及びCD38に結合する二重特異性抗体、一般には、治療用抗体の生成に関する。以下に論じられるように、「抗体」という用語が、一般に使用される。本発明において有用である抗体は、本明細書で説明される多くの形式で使用でき、伝統的な抗体、ならびに以下に説明される抗体の誘導体、断片、及び模倣体が含まれる。
【0068】
伝統的な抗体構造単位は、典型的には、四量体を含む。それぞれの四量体は、典型的には、ポリペプチド鎖の2つの同一対からなり、それぞれの対が、1つの「軽」鎖(典型的には、約25kDaの分子量を有する)、及び1つの「重」鎖(典型的には、約50〜70kDaの分子量を有する)を有する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖として分類される。本発明は、IgGクラスを対象とし、IgGクラスは、いくつかのサブクラスを有し、限定はされないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が含まれる。したがって、本明細書では、「アイソタイプ」は、その定常領域の化学的特性及び抗原特性によって定義されるイムノグロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。治療用抗体は、アイソタイプ及び/またはサブクラスのハイブリッドも含み得ることを理解されるべきである。例えば、参照によって組み込まれる米国公開第2009/0163699号に示されるように、本発明は、IgG1/G2ハイブリッドのpI操作を含む。
【0069】
それぞれの鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を第一に担う約100〜110個またはそれより多いアミノ酸の可変領域を含み、可変領域は、一般に、当該技術分野及び本明細書で「Fvドメイン」または「Fv領域」と呼ばれる。可変領域では、3つのループが、重鎖及び軽鎖のVドメインのそれぞれに向けて集まり、抗原結合部位を形成する。ループのそれぞれは、相補性決定領域と呼ばれ(以下で「CDR」と呼ばれる)、アミノ酸配列における変動が最も顕著である。「可変」は、可変領域のある一定のセグメントが、抗体間の配列において広く異なるという事実を指す。可変領域内の可変性は、均等に分布していない。その代わりに、V領域は、相対的に不変な区間からなり、当該区間は、それぞれの長さがアミノ酸で、9〜15個か、またはそれより長い「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性の、より短い領域によって分離されており、15〜30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0070】
VH及びVLは、それぞれが3つの超可変領域(「相補性決定領域」、「CDR」)及び4つのFRからなり、次の順序で、アミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。すなわち、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4である。
【0071】
超可変領域は、軽鎖可変領域における、約アミノ酸残基24〜34(LCDR1;「L」は軽鎖を示す)、50〜56(LCDR2)、及び89〜97(LCDR3)、重鎖可変領域における、およそ約31〜35B(HCDR1;「H」は、重鎖を示す)、約50〜65(HCDR2)、及び約95〜102(HCDR3)のアミノ酸残基;Kabat
et al.,SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、ならびに/または超可変ループを形成するそうした残基(例えば、軽鎖可変領域における残基26〜32(LCDR1)、50〜52(LCDR2)、及び91〜96(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域における26〜32(HCDR1)、53〜55(HCDR2)、及び96〜101(HCDR3);Chothia
and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917、由来のアミノ酸残基を包含することが一般的である。本発明の特定のCDRは、以下に説明される。
【0072】
本明細書を通して、可変ドメイン(およそ、軽鎖可変領域の残基1〜107、及び重鎖可変領域の残基1〜113)における残基を指すときは、Kabat番号付けシステム、Fc領域についてはEU番号付けシステムが一般に使用される(例えば、Kabat et al.,supra(1991))。
【0073】
本発明は、多数の異なるCDRの組を提供する。この場合、「完全なCDRのセット」は、3つの可変軽CDR及び3つの可変重CDR、例えば、vlCDR1、vlCDR2、vlCDR3、vhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む。これらは、それぞれより大きい可変軽または可変重ドメインの一部であり得る。さらに、より完全に本明細書に概要が記載されるとおり、可変重及び可変軽ドメインは、重及び軽鎖が使用される場合(例えば、Fabが使用される場合)別々のポリペプチド鎖上に、またはscFv配列の場合は単一ポリペプチド鎖上にあり得る。
【0074】
CDRは、抗体結合の形成に寄与し、またはより具体的には、抗体のエピトープ結合部位の形成に寄与する。「エピトープ」は、パラトープとして知られる、抗体分子の可変領域における特定抗原結合部位と相互作用する決定基を指す。エピトープは、アミノ酸または糖側鎖などの分子の分類であり、通常、特定の構造特性、及び特定の電荷特性を有する。単一抗原が複数のエピトープを有してよい。
【0075】
エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)、及び特異的な抗原結合ペプチドによって、効果的に遮断されるアミノ残基などの、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含んでよい。換言すれば、当該アミノ酸残基は、特異的な抗原結合ペプチドのフットプリントの範疇である。
【0076】
エピトープは、立体構造的、または直線的のいずれでもよい。立体構造的エピトープは、空間的に並置されたアミノ酸によって、直線的ポリペプチド鎖の異なるセグメントから産生される。直線的エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接アミノ酸残基によって産生されるものである。立体的エピトープ及び非立体的エピトープは、前者に対する結合であって、後者に対するものではない結合が、変性溶媒の存在下で消失するという点で区別されてよい。
【0077】
エピトープは、特有の空間的立体構造において、典型的には少なくとも3個のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも5または8〜10個のアミノ酸を含む。同一エピトープを認識する抗体は、1つの抗体が、標的抗原に対する別の抗体の結合を遮断する能力を示す単純なイムノアッセイにおいて検証でき、例えば、「ビニング(binning)」である。
【0078】
それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を第一に担う定常領域を定義する。Kabatらは、重鎖及び軽鎖の可変領域の多数の一次配列を収集した。配列保存の程度に基づき、彼らは、個々の一次配列をCDR及びフレームワークへと分類し、その一覧を作った(SEQUENCES OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,5th edition,NIH publication,No.91−3242,E.A.Kabat et al.を参照のこと。参照によって、全体が組み込まれる)。
【0079】
イムノグロブリンのIgGサブクラスでは、重鎖において、いくつかのイムノグロブリンドメインが存在する。本明細書では、「イムノグロブリン(Ig)ドメイン」は、明確に異なる三次構造を有するイムノグロブリンの領域を意味する。本発明における対象は、定常重(CH)ドメイン及びヒンジドメインを含む重鎖ドメインにある。IgG抗体の構成では、IgGアイソタイプは、それぞれが3つのCH領域を有する。したがって、IgGの構成における「CH」ドメインは、次の通りである。「CH1」は、Kabatにあるように、EUインデックスによる位置118〜220を指し、「CH2」は、Kabatにあるように、EUインデックスによる位置237〜340を指し、及び「CH3」は、Kabatにあるように、EUインデックスによる位置341〜447を指す。本明細書に示され、以下に説明されるように、pI変異体は、以下に論じられる1つまたは複数のCH領域、及びヒンジ領域であり得る。
【0080】
本明細書に示される配列は、位置118であるCH1領域から始まり、別段の記載が無い限り、可変領域は含まれないことに留意されるべきである。例えば、配列識別番号2の第1のアミノ酸は、配列一覧表で、位置「1」であると指定されるが、EU番号付けによるCH1領域の位置118に対応する。
【0081】
重鎖のIgドメインの別の型は、ヒンジ領域である。本明細書では、「ヒンジ」または「ヒンジ領域」または「抗体ヒンジ領域」または「イムノグロブリンヒンジ領域」は、抗体の第1の定常ドメイン及び第二定常ドメインの間にアミノ酸を含む可動性のポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EU位置220で終了し、IgG
CH2ドメインは、残基EU位置237から始まる。したがって、本明細書では、IgGに向けて、抗体ヒンジは、位置221(IgG1におけるD221)〜位置236(IgG1におけるG236)を含むと定義され、番号付けは、Kabatにあるように、EUインデックスによるものである。いくつかの実施形態では、例えば、Fc領域の構成では、下位ヒンジ(lower hinge)が含まれ、「下位ヒンジ」は、一般的に位置226または位置230を指す。本明細書に示されるとおり、pI変異体は、ヒンジ領域においても作ることができる。
【0082】
軽鎖は、一般に、2つのドメイン、可変軽ドメイン(Fv領域を形成する可変重ドメインと共に軽鎖CDRを含む)、及び定常軽鎖領域(CLまたはCκと呼ばれることが多い)を含む。
【0083】
以下に概要が記載される、追加の置換向けの別の関心領域は、Fc領域である。
【0084】
したがって、本発明は、異なる抗体ドメインを提供する。本明細書で説明され、当該技術分野で知られるように、本発明のヘテロ二量体抗体は、重及び軽鎖内に異なるドメインを含み、そのドメインはまた、重複し得る。これらのドメインには、限定はされないが、Fcドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ヒンジドメイン、重定常ドメイン(CH1−ヒンジ−FcドメインまたはCH1−ヒンジ−CH2−CH3)、可変重ドメイン、可変軽ドメイン、軽定常ドメイン、FAbドメイン、及びscFvドメインが含まれる。
【0085】
したがって、「Fcドメイン」は、−CH2−CH3ドメイン、及び任意選択でヒンジドメインを含む。重鎖は、可変重ドメイン及び定常ドメインを含み、CH2−CH3を含むCH1−任意選択のヒンジ−Fcドメインを含む。軽鎖は、可変軽鎖及び軽定常ドメインを含む。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態は、自然に発生しないが、一般に、scFvリンカーによって一緒に連結される可変重ドメイン及び可変軽ドメインを含む少なくとも1つのscFvドメインを含む。本明細書に示されるように、使用され得る多くの適したscFvリンカーがあり、それらのリンカーは、組換え技術によって生成される伝統的なペプチド結合を含む。
【0087】
リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主に含んでよい。すなわち、Gly、Ser、Ala、またはThrである。リンカーペプチドは、2つの分子を連結するために適切な長さを有するべきであり、そのようにして、それらは、お互いに対して正しい立体構造をとり、その結果、それらは、所望の活性を保持する。1つの実施形態では、リンカーは、長さが、アミノ酸で約1〜50個、好ましくは、長さが、アミノ酸で約1〜30個である。1つの実施形態では、長さが、アミノ酸で1〜20個であるリンカーを、いくつかの実施形態において有用である約5〜約10個のアミノ酸と共に使用してよい。有用なリンカーには、グリシン−セリン重合体が含まれ、当該グリシン−セリン重合体には、例えば、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、及び(GGGS)n、ここで、nは、少なくとも1(かつ一般に3〜4)である整数であり、グリシン−アラニン重合体、アラニン−セリン重合体、ならびに他の可動性リンカーが含まれる。あるいは、限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体を含む様々な非タンパク質性の重合体が、リンカーとして有用であり得、すなわち、リンカーとして有用であり得る。
【0088】
他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインのすべての残基ではないが、CL/CH1ドメインの何らかの長さの何らかの配列を含んでよく、例えば、CL/CH1ドメインの最初の5〜12個のアミノ酸残基を含んでよい。リンカーは、イムノグロブリン軽鎖由来であり得、例えば、CκまたはCλである。リンカーは、何らかのアイソタイプのイムノグロブリン重鎖由来であり得、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε、及びCμが含まれる。リンカー配列は、Ig様タンパク質(例えば、TCR、FcR、KIR)、ヒンジ領域由来の配列、及び他のタンパク質由来の他の天然の配列などの他のタンパク質由来であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、リンカーは、本明細書に一緒に概要が記載されるあらゆる2つのドメインを連結させるために使用される「ドメインリンカー」である。いずれの適したリンカーも使用され得る一方で、多くの実施形態は、グリシン−セリン重合体を利用し、当該グリシン−セリン重合体には、例えば、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、及び(GGGS)n、ここでnは、少なくとも1(かつ一般に3〜4〜5)である整数であり、ならびに2つのドメインの組換え付加を可能にするいかなるペプチド配列も含まれ、当該2つのドメインは、各ドメインがその生物学的機能を保持することを可能にするのに十分な長さ及び柔軟性を有する。いくつかの場合では、以下に概要が記載されるように「鎖性」に注目すると、scFvリンカーのいくつかの実施形態において使用されるように、荷電ドメインリンカーは使用され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、scFvリンカーは、荷電scFvリンカーであり、その多くは、
図33に示される。したがって、本発明は、第1の単量体と第2の単量体との間でpIにおける分離を促進するために荷電scFvリンカーをさらに提供する。すなわち、荷電scFvリンカーを組み込むことによって、正であっても、負であっても(あるいは異なる単量体上でscFvを使用する骨格の場合は両方)、これは、荷電リンカーを含む単量体が、Fcドメインをさらに変更することなくpIを変えることを可能にする。これらの荷電リンカーは、標準リンカーを含有するあらゆるscFvに置換されることができる。かさねて、当業者によって理解されるように、荷電scFvリンカーは、pIにおける所望の変更に従って、正しい「鎖」または単量体上に使用される。例えば、本明細書で論じられるように、三重F形式のヘテロ二量体抗体を作製するために、所望の抗原結合ドメインのそれぞれについてのFv領域の最初のpIは計算され、1つがscFvを作製するために選択され、pIによって、正または負のリンカーいずれかが選択される。
【0091】
荷電ドメインリンカーはまた、本発明の単量体のpI分離を増加するためにも使用することができ、したがって、
図33に含まれるものは、リンカーが利用される本明細書のいずれの実施形態においても使用され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗体は、全長である。本明細書では、「全長抗体」は、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を意味し、特にホモ二量体を除去してヘテロ二量体化形成またはヘテロ二量体の精製のいずれかを可能にするためにFcドメインに、以下に概要が記載される1つまたは複数の改変を含む可変領域、及び定常領域を含む。全長抗体は、一般に、Fab及びFcドメインを含み、図に一般に示されるように、scFvなどの余分な抗原結合ドメインをさらに含有し得る。
【0093】
1つの実施形態では、抗体は、抗体断片であり、それが、pI操作などで、ヘテロ二量体を産生するように操作できる少なくとも1つの定常ドメインを含む場合に限られる。使用できる他の抗体断片には、pIが操作される、本発明の1つまたは複数のCH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ヒンジドメイン、及びCLドメインを含む断片が含まれる。例えば、Fc融合体は、Fc領域(CH2及びCH3、任意選択でヒンジ領域を有する)が別のタンパク質に融合した融合体である。多くのFc融合体が、当該技術分野で知られており、本発明のヘテロ二量体化変異体の追加によって改良できる。この場合、抗体融合体を、CH1と、CH1、CH2、及びCH3と、CH2と、CH3と、CH2及びCH3と、CH1及びCH3と、を含めて作ることができ、それらのいずれか、またはすべてを、本明細書において説明されるヘテロ二量体化変異体のいずれかの組み合わせを利用して、任意選択でヒンジ領域を含めて作ることができる。
【0094】
具体的には、
図1に示される形式は、通常「ヘテロ二量体抗体」と呼ばれる抗体であり、タンパク質が、ヘテロ二量体Fcドメインに自己組織化される少なくとも2つの関連Fc配列を有することを意味する。
【0095】
キメラ及びヒト化抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、異なる種由来の混合物であり得、例えば、キメラ抗体及び/またはヒト化抗体である。一般に、「キメラ抗体」及び「ヒト化抗体」の両方が、複数の種由来の領域を組み合わせる抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、伝統的に、マウス(または場合によってはラット)由来の可変領域、及びヒト由来の定常領域を含む。「ヒト化抗体」は、一般に、ヒト抗体においてみられる配列と交換された可変ドメインフレームワーク領域を有する非ヒト抗体を指す。一般に、ヒト化抗体では、CDRを除き、抗体全体が、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、またはそのCDR内は除いて、そのような抗体と同一である。CDRのいくつか、またはすべては、非ヒト生物起源の核酸によってコードされており、抗体を創出するためにヒト抗体可変領域のβシートフレームワークへ移植され、その特異性は、移植されたCDRによって決定される。そのような抗体の創出は、例えば、WO92/11018、Jones,1986,Nature 321:522−525、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536において説明されており、これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる。対応するドナー残基に対して選択されたアクセプターフレームワーク残基の「復帰突然変異(Backmutation)」が、初期移植構築物において消失した親和性を回復するために必要であることが多い(US5530101、US5585089、US5693761、US5693762、US6180370、US5859205、US5821337、US6054297、US6407213、これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる)。ヒト化抗体は、イムノグロブリンの定常領域の少なくとも一部も最適に含むであろうし、これは、典型的には、ヒトイムノグロブリンのものであることから、したがって、典型的には、ヒトFc領域を含むことになる。ヒト化抗体は、遺伝学的に操作された免疫系を有するマウスを使用して生成させることもできる。Roque et al.,2004,Biotechnol.Prog.20:639−654の全体が、参照によって、組み込まれる。非ヒト抗体のヒト化及び再形成のための様々な技術及び方法が、当該技術分野でよく知られている(Tsurushita&Vasquez,2004,Humanization of Monoclonal Antibodies,Molecular Biology of B Cells,533−545,Elsevier Science(USA)、及びそこでの引用文献参照のこと。これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる)。ヒト化の方法には、限定はされないが、Jones et al.,1986,Nature 321:522−525、Riechmann et al.,1988、Nature 332:323−329、Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534−1536、Queen et al.,1989,Proc Natl Acad Sci,USA 86:10029−33、He et al.,1998,J.Immunol.160:1029−1035、Carter et al.,1992,Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−9,Presta et al.,1997,Cancer Res.57(20):4593−9、Gorman et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4181−4185、O’Connor et
al.,1998,Protein Eng 11:321−8において説明される方法が含まれ、これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる。非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低下させるヒト化または他の方法には、例えば、Roguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:969−973において説明されるような表面再構成法(resurfacing method)が含まれ、参照によって、全体が、組み込まれる。1つの実施形態では、親抗体は、親和性が成熟しており、当該技術分野で知られるとおりである。構造に基づく方法が、ヒト化及び親和性の成熟に用いられてよく、例えば、USSN11/004,590において説明されるとおりである。ヒト化及び/または抗体可変領域の親和性成熟のために、選択に基づく方法が用いられてよく、限定はされないが、Wu et al.,1999,J.Mol.Biol.294:151−162、Baca et al.,1997,J.Biol.Chem.272(16):10678−10684、Rosok et al.,1996,J.Biol.Chem.271(37):22611−22618、Rader et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
95:8910−8915、Krauss et al.,2003,Protein
Engineering 16(10):753−759において説明される方法が含まれ、これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる。他のヒト化方法は、CDRの一部のみの移植を伴うものでよく、限定はされないが、USSN09/810,510、Tan et al.,2002,J.Immunol.169:1119−1125、De Pascalis et al.,2002,J.Immunol.169:3076−3084において説明される方法が含まれ、これらはすべて、全体が、参照によって、組み込まれる。
【0096】
IV.ヘテロ二量体抗体
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、ヘテロ二量体抗体を形成するために自己組織化する2つの異なる重鎖変異体Fcドメインの使用に依存するヘテロ二量体抗体を提供する。
【0097】
本発明は、例えば、二重特異性結合を可能にするために、複数の抗原またはリガンドへの結合を可能にするヘテロ二量体抗体を提供するために新規構築物を対象とする。ヘテロ二量体抗体構築物は、抗体の重鎖の2つのFcドメイン、例えば、「二量体」に組織化する2つの「単量体」の自己組織化の性質に基づく。ヘテロ二量体抗体は、以下により完全に論じられる各単量体のアミノ酸配列を変えることによって作製される。したがって、本発明は、一般に、いくつかの方法で、抗原を共捕捉できるヘテロ二量体抗体の創出を対象とし、それぞれの鎖で異なる、定常領域のアミノ酸変異体に依存することで、ヘテロ二量体形成の促進、及び/またはホモ二量体に関してテロ二量体精製の容易化を可能にする。
【0098】
したがって、本発明は、二重特異性抗体を提供する。抗体技術における継続問題は、2つの異なる抗原に同時に結合し、一般に、そのようにして、異なる抗原を近接させることを可能にし、新しい機能性及び新しい治療をもたらす「二重特異性」抗体が、切望されていることである。一般に、こうした抗体は、重鎖及び軽鎖それぞれの遺伝子を宿主細胞へと含めることによって作られる。これにより、一般に、所望のヘテロ二量体(A−B)、ならびに2つのホモ二量体(A−A及びB−B(軽鎖ヘテロ二量体の問題を含まない))の形成がもたらされる。しかしながら、二重特異性抗体形成における主な障壁は、ヘテロ二量体抗体を精製してホモ二量体抗体を除去すること、及び/またはホモ二量体形成を上回るようにヘテロ二量体形成に偏らせることが困難であるということである。
【0099】
本発明のヘテロ二量体を生成させるために使用できる機構は、数多く存在する。さらに、当業者によって理解されるように、こうした機構は、高いヘテロ二量体化を維持するために組み合わせることができる。したがって、ヘテロ二量体の産生につながるアミノ酸変異体は、「ヘテロ二量体化変異体」と呼ばれる。以下に論じられるように、ヘテロ二量体化変異体は、立体変異体(例えば、以下に説明される「ノブアンドホール」または「歪曲」変異体、及び以下に説明される「電荷対」変異体)、及びヘテロ二量体を除去してホモ二量体の精製を可能にする「pI変異体」を含み得る。これにより、その全体が、参照によって、組み込まれ、特に「ヘテロ二量体化変異体」の議論について以下のようにWO2014/145806において一般に説明されるとおり、ヘテロ二量体化の有用な機構には、「ノブアンドホール」(「KIH」、時に本明細書では「歪曲」変異体として(WO2014/145806の議論参照)、WO2014/145806において説明される「静電操縦」または「電荷対」、WO2014/145806において説明されるpI変異体、及びWO2014/145806及び以下に概要が記載される一般的な追加のFc変異体が含まれる。
【0100】
本発明には、ヘテロ二量体抗体の精製を容易化できるいくつかの基礎的な機構が存在する。すなわち、pI変異体の使用に依存し、その結果、単量体は、それぞれが異なるpIを有し、そうすることで、A−A二量体タンパク質、A−B二量体タンパク質、及びB−B二量体タンパク質の等電点精製を可能にするものである。あるいは、「三重F」形式などのいくつかの骨格形式は、サイズに基づく分離も可能にする。以下にさらに概要が記載されるとおり、ヘテロ二量体形成が、ホモ二量体を上回るようにする「歪曲」も可能である。したがって、立体二量体化変異体、及びpI変異体または電荷対変異体の組み合わせは、本発明において、特定用途で有用である。
【0101】
一般に、本発明において特に使用される実施形態は、歪曲変異体を含む変異体のセットに依存し、当該変異体は、2つの単量体の間でpI差異を増加させるpI変異体と共に使用するホモ二量体化形成より優先してヘテロ二量体化形成を促す。
【0102】
さらに、以下に、より完全に概要が記載されるとおり、ヘテロ二量体抗体の形式に応じて、pI変異体は、単量体の定常及び/またはFcドメイン内のいずれかに含有され得るか、あるいはドメインリンカーまたはscFvリンカーのいずれかである荷電リンカーが使用され得る。すなわち、三重F形式などのscFvを利用する骨格は、精製目的に向けて、さらなるpIの増大を与える荷電scFvリンカー(正か負のいずれか)を含むことができる。当業者によって、理解されるとおり、三重F形式によっては、荷電scFvリンカーのみを有し、追加のpI調整無しでも有用であるが、本発明は、単量体のうちの1つまたは両方にあるpI変異体、及び/または荷電ドメインリンカーも提供する。さらに、代替機能性のために操作する追加のアミノ酸はまた、Fc、FcRn、及びKO変異体などのpIの変更を与え得る。
【0103】
ヘテロ二量体タンパク質の精製を可能にするための分離機構としてpIを利用する本発明においては、アミノ酸変異体を、単量体ポリペプチドの1つまたは両方に導入することができる。すなわち、単量体(本明細書では、単純化のため「単量体A」と呼ぶ)の内の1つのpIが、単量体Bから遠ざかるように操作できるか、または単量体A及び単量体Bの両方が変更され、単量体AのpIは増加し、単量体BのpIは減少する。以下に、より完全に概略が記載されるように、単量体のいずれか、または両方のpIの変更は、荷電残基を除去若しくは追加(例えば、中性アミノ酸は、正若しくは負に荷電したアミノ酸残基によって置き換えられ、例えば、グリシンからグルタミン酸への置き換えである)するか、荷電残基を正若しくは負から反対の電荷へと変更(アスパラギン酸からリジンへ)するか、または荷電残基を中性残基へと変更(例えば、リジンからセリンへであり、これにより荷電が消失する)することによって実施できる。多くのこうした変異体が、図に示される。
【0104】
したがって、この実施形態では、本発明は、少なくとも1つの単量体において、pIの十分な変更の創出を提供し、その結果、ヘテロ二量体は、ホモ二量体から分離できる。当業者によって、理解されるように、そして、以下にさらに論じられるように、これは、「野生型」重鎖定常領域と、そのpIが増加若しくは減少(wt A−+B若しくはwt A− −B)のいずれかとなるように操作された変異体領域と、を使用することによって実施できるか、または一方の領域を増加し、もう一方の領域を減少させること(A+ −B−若しくはA− B+)によって実施できる。
【0105】
したがって、一般に、本発明のいくつかの実施形態の構成要素は、抗体の定常領域におけるアミノ酸変異体であり、当該アミノ酸変異体は、アミノ酸置換(「pI変異体」または「pI置換」)を単量体の1つまたは両方へ組み込むことによって、「pI抗体」)を形成するために、二量体タンパク質の単量体の両方か、もし両方でないなら少なくとも1つの等電点(pI)を変えることに向けられる。本明細書で示されるように、2つのホモ二量体からのヘテロ二量体の分離は、2つの単量体のpIが、わずか0.1pH単位でも異なれば達成でき、0.2、0.3、0.4、及び0.5、またはそれより大きな差異は、すべて本発明において有用である。
【0106】
当業者によって理解されるように、よい分離を得るために単量体のそれぞれまたは両方に含まれるpI変異体の数は、構成要素の出発pI、例えば、三重F形式で、対象のscFv及びFabの出発pIに依存する部分があるであろう。すなわち、どの単量体を操作するか、またはどの「方向」(例えば、より正、若しくはより負)にするかを決定するために、2つの標的抗原のFv配列が計算され、そこから決定がなされる。当該技術分野で知られるように、異なるFvであれば、本発明で活用される異なる出発pIを有する。一般に、本明細書に概要が記載されるように、pIが操作されることにより、それぞれの単量体で、少なくとも約0.1logの総pI差異がもたらされ、本明細書に概要が記載されるように当該総pI差異は、0.2〜0.5であることが好ましい。
【0107】
さらに、当業者によって理解されると共に、本明細書に概要が記載されるように、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体は、サイズに基づいてホモ二量体から分離できる。例えば
図1に示されるように、形式のいくつかは、サイズに基づくヘテロ二量体及びホモ二量体の分離を可能にする。
【0108】
pI変異体が、重鎖の定常領域を使用することによって、二量体化を達成するために使用される場合は、抗体を含む二重特異性タンパク質の設計及び精製に対する、よりモジュール型の手法が提供される。したがって、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化変異体(歪曲ヘテロ二量体化変異体及び精製ヘテロ二量体化変異体を含む)は、可変領域に含まれておらず、その結果、個々の抗体は、それぞれ操作されなければならない。さらに、いくつかの実施形態では、pI変異体からもたらされる免疫原性の可能性は、異なるIgGアイソタイプ由来のpI変異体を移入することによって、著しく低減され、その結果、pIは、著しい免疫原性を導入することなく変更される。したがって、解決すべき追加の問題は、ヒト配列含量が高い低pI定常ドメインの解明であり、例えば、何らかの特定位置における非ヒト残基の最小化または回避である。
【0109】
このpI操作で起こり得る付帯利点は、血清半減期の延長及びFcRn結合の増加でもある。すなわち、USSN13/194,904において説明されるように(参照によって、その全体が組み込まれる)、抗体定常ドメイン(抗体及びFc融合体においてみられるものを含む)のpIを下げることは、生体内において、血清での保持が長期化することにつながり得る。血清半減期の増加に向けた、こうしたpI変異体によって、精製に向けたpIの変更も促進される。
【0110】
さらに、ホモ二量体が存在する場合に、排除、最小化、及び区別するいずれかの能力が顕著であるため、ヘテロ二量体化変異体のpI変異体が、二重特異性抗体の分析論及び品質管理工程のための追加の利点をもたらすことに留意されるべきである。同様に、ヘテロ二量体抗体産生の再現性を確実に試験する能力が重要である。
【0111】
ヘテロ二量体化変異体
本発明は、ヘテロ二量体タンパク質を提供し、当該タンパク質は、ホモ二量体を除去してヘテロ二量体形成及び/または精製を可能にするためにヘテロ二量体変異体を利用する様々な形式でヘテロ二量体抗体を含む。
【0112】
多くの適したヘテロ二量体化歪曲変異体のセットの対がある。これらの変異体は、「セット」の「対」で起こる。すなわち、対の一方のセットは、第1の単量体に組み込まれ、対のもう一方のセットは、第2の単量体に組み込まれる。これらのセットは、一方の単量体上の残基ともう一方の単量体上の残基との間の1対1の対応を有する「ノブインホール」変異体として必ずしも機能せず、すなわち、これらの対のセットは、ヘテロ二量体形成を促し、ホモ二量体形成を防止する2つの単量体の間で境界面を形成し、生物学的条件で自発的に形成するヘテロ二量体のパーセンテージが、予想された50%よりもむしろ90%を超えることを可能にする(25%のホモ二量体A/A:50%のヘテロ二量体A/B:25%のホモ二量体B/B)ことに留意されたい。
【0113】
立体変異体
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体の形成は、立体変異体の追加によって促進され得る。すなわち、それぞれの重鎖におけるアミノ酸を変更することによって、同一Fcアミノ酸配列を有するホモ二量体の形成と比較して、異なる重鎖が、会合してヘテロ二量体構造を形成する可能性が高くなる。適した立体変異体は、
図29に含まれる。
【0114】
1つの機構は、当該技術分野において、「ノブアンドホール」と一般に呼ばれるものであり、立体的な影響を創出し、ヘテロ二量体形成に有利に働き、ホモ二量体形成を抑制するアミノ酸操作を指し、任意選択で使用することもできる。これは、「ノブアンドホール」と呼ばれることがあり、USSN61/596,846,Ridgway et al.,Protein Engineering 9(7):617(1996)、Atwell et al.,J.Mol.Biol.1997 270:26、米国特許第8,216,805号において説明されるとおりであり、これらはすべて、全体が、参照によって、本明細書に組み込まれる。図によって多くの「ノブアンドホール」に依存する「単量体A−単量体B」の対が特定されている。さらに、Merchant et al.,Nature Biotech.16:677(1998)において説明されるとおり、こうした「ノブアンドホール」変異は、ジスルフィド結合と組み合わせて、形成をヘテロ二量体化へと歪曲することができる。
【0115】
ヘテロ二量体の生成において有用である追加の機構は、「静電操縦」と呼ばれることがあり、Gunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285(25):19637(2010)において説明されるとおりである。当該文献は、参照によって、その全体が、本明細書に組み込まれる。これは、本明細書で「電荷対」と呼ばれることがある。この実施形態では、静電気が、形成をヘテロ二量体化へと歪曲するために使用される。当業者であれば、これらは、pIに対しても効果を有し得、そうすることで、精製に対しても影響を有し得、したがって、場合によっては、pI変異体であり得るとも考えられることを理解されるであろう。しかしながら、これらは、ヘテロ二量体化を押し進めるために生成され、精製手段としては使用されなかったため、それらは、「立体変異体」として分類される。これらには、限定はされないが、D221R/P228R/K409Rと対であるD221E/P228E/L368E(例えば、これらは、「単量体が対応するセットである)及びC220R/E224R/P228R/K409Rと対であるC220E/P228E/368Eが含まれる。
【0116】
追加の単量体A変異体、及び単量体B変異体を、本明細書に概要が記載されるpI変異体または、US2012/0149876の
図37に示される他の立体変異体などの他の変異体と、任意選択かつ独立して、何らかの量で、組み合わせることができる。当該特許文献の図及び説明文ならびに配列識別番号が、参照によって、本明細書に明確に組み込まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に概要が記載される立体変異体を、何らかのpI変異体(またはFc変異体、FcRn変異体等の他の変異体)と共に1つまたは両方の単量体へ、任意選択かつ独立して、組み込むことができ、本発明のタンパク質を独立かつ任意選択で含む、または当該タンパク質から除外することができる。
【0118】
適した歪曲変異体の一覧は、
図29にみられ、併せて
図34は、多くの実施形態における特定の有用性のいくつかの対を示す。特定用途の多くの実施形態は、限定はされないが、S364K/E357Q:L368D/K370S、L368D/K370S:S364K、L368E/K370S:S364K、T411T/E360E/Q362E:D401K、L368D/K370S:S364K/E357L、及びK370S:S364K/E357Qが含まれるセットの組である。命名法の点から、対「S364K/E357Q:L368D/K370S」は、一方の単量体が二重変異体セットS364K/E357Qを有し、もう一方が二重変異体セットL368D/K370Sを有することを意味する。
【0119】
ヘテロ二量体のpI(等電点)変異体
一般に、当業者によって理解されるように、pI変異体には2つの一般的なカテゴリーが存在する。タンパク質のpIを増加させるもの(塩基性の変更)、及びタンパク質のpIを減少させるもの(酸性の変更)である。本明細書に説明されるとおり、こうした変異体の組み合わせは、すべて実施することが可能である。すなわち、一方の単量体が、野生型、または野生型と顕著に異なるpIを示さない変異体であり得、もう一方は、より塩基性、またはより酸性であり得る。あるいは、それぞれの単量体が、1つは、より塩基性へ、1つは、より酸性へと変更される。
【0120】
pI変異体の好ましい組み合わせは
図30に示される。本明細書に概要が記載され、図に示されるとおり、こうした変更は、IgG1に対して示されるが、すべてのアイソタイプ及びアイソタイプハイブリッドを、このように変えることができる。重鎖定常ドメインが、IgG2〜4由来である場合は、R133E及びR133Qも使用できる。
【0121】
抗体ヘテロ二量体軽鎖変異体
抗体に基づくヘテロ二量体の場合で、例えば、単量体の少なくとも1つが、重鎖ドメインに加えて軽鎖を含む場合、pI変異体を軽鎖に作ることもできる。軽鎖のpIを低下させるためのアミノ酸置換には、限定はされないが、K126E、K126Q、K145E、K145Q、N152D、S156E、K169E、S202E、K207E、及び軽鎖のC末端におけるペプチドDEDEの追加が含まれる。定常ラムダ軽鎖に基づくこのカテゴリーにおける変更には、R108Q、Q124E、K126Q、N138D、K145T、及びQ199Eでの1つまたは複数の置換が含まれる。さらに、軽鎖のpIの増加も可能である。
【0122】
アイソタイプ変異体
さらに、本発明の多くの実施形態が、1つのIgGアイソタイプから別のものへの、特定位置でのpIアミノ酸の「取り込み」に依存しており、したがって、変異体へ導入される不要な免疫原性の可能性を低下または除去している。これらの多くは、米国公開第2014/0370013号の
図21に示され、これによって、参照によって、組み込まれる。すなわち、IgG1は、高いエフェクター機能を含めて、様々な理由で、治療用抗体のための共通のアイソタイプである。しかしながら、IgG1の重定常領域は、IgG2のそれと比較して、より高いpIを有している(8.10対7.31)。特定位置で、IgG2残基を、IgG1主鎖へ導入することによって、得られる単量体のpIは低下(または増加)し、付加的に血清半減期の長期化を示す。例えば、IgG1は、位置137にグリシン(pI5.97)を有し、IgG2は、グルタミン酸(pI3.22)を有している。つまり、グルタミン酸の取り込みは、得られるタンパク質のpIに影響を与えることになる。以下に説明されるとおり、多くのアミノ酸置換は、一般に、変異体抗体のpIに顕著な影響を与えることが必要とされている。しかしながら、以下に論じられるとおり、IgG2分子における変更でさえ、血清半減期の増加を可能にすることに留意されるべきである。
【0123】
他の実施形態では、非アイソタイプアミノ酸の変更がなされ、得られるタンパク質の全体の電荷状態が低下(例えば、より高いpIアミノ酸を、より低いpIアミノ酸へと変更することによって)するか、または安定に向けた構造の適応が可能になる等、以下にさらに説明されるとおりである。
【0124】
さらに、重定常ドメイン及び軽定常ドメインの両方のpI操作によって、ヘテロ二量体のそれぞれの単量体において、顕著な変化をみることができる。本明細書で論じられるように、2つの単量体のpIを少なくとも0.5異なるようにすることで、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動、または等電点感受性の他の方法によっての分離が可能になる。
【0125】
pIの計算
それぞれの単量体のpIは、変異体重鎖定常ドメイン及び融合相手を含めて、可変重鎖定常領域及び総単量体のpIに依存し得る。したがって、いくつかの実施形態では、米国公開第2014/0370013号の
図19中のチャートを使用して、変異体重鎖定常ドメインに基づいて、pIの変化が計算される。本明細書で論じられるように、どの単量体を操作するかは、一般に、Fv及び骨格領域の固有pIによって決定される。あるいは、それぞれの単量体のpIを、比較することができる。
【0126】
より良好なFcRn生体内結合も与えるpI変異体
pI変異体が、単量体のpIを低減する場合、生体内での血清における保持の改善という利点が追加され得る。
【0127】
未だ試験中であるが、Fc領域は、生体内においてより長い半減期を有すると考えられ、これは、エンドソームにおける、pH6でのFcRnに対する結合が、Fcを隔離するためである(Ghetie and Ward,1997 Immunol Today.18(12):592−598の全体が、参照によって組み込まれる)。その後、エンドソームの区画は、細胞表面へとFcを再循環させる。区画が、より高いpHである約7.4の細胞外空間へと一旦開くと、Fcの放出が誘導され、血液へ戻る。マウスにおいて、Dall’Acquaらは、pH6及びpH7.4でのFcRn結合が増加したFc変異型(Fc mutant)が、実際は、血清濃度が低下しており、野生型Fcと同一の半減期を有することを示した(Dall’Acqua et al.2002,J.Immunol.169:5171−5180の全体が、参照によって、組み込まれる)。pH7.4でのFcRnに向けたFcの親和性の上昇は、Fcが放出されて血流へ戻ることを妨げると考えられる。それ故に、生体内におけるFcの半減期を増加させるであろうFc変異は、より高いpHでのFcの放出を、可能なままにしつつ、より低いpHでFcRn結合を理想的に増加させることになる。アミノ酸であるヒスチジンは、6.0〜7.4のpH範囲において、その電荷状態が変化する。したがって、ヒスチジン残基が、Fc/FcRn複合体において、重要な位置を占めるという発見は、驚くべきことではない。
【0128】
最近、より低い等電点を有する可変領域を有する抗体が、より長い血清半減期も有し得ることが示唆された(Igawa et al.,2010 PEDS.23(5):385−392の全体が、参照によって、組み込まれる)。しかしながら、この機構の理解は、依然として不十分である。その上、可変領域は、抗体毎に異なる。pIが低下、及び半減期が延長している定常領域変異体であれば、抗体の薬物動態特性の改善に対する、よりモジュール型の手法を提供するであろうことは、本明細書で説明されるとおりである。
【0129】
追加の機能性のための追加のFc変異体
pIアミノ酸変異体に加えて、様々な理由から実施することのできる、有用なFcアミノ酸改変が多く存在し、限定はされないが、1つまたは複数のFcγR受容体に対する結合の変更、FcRn受容体に対する結合の変更等が含まれる。
【0130】
したがって、本発明のタンパク質は、アミノ酸改変を含むことができ、アミノ酸改変には、pI変異体及び立体変異体を含めて、本明細書に概要が記載されるヘテロ二量体化変異体が含まれる。変異体の各セットは、任意の特定のヘテロ二量体タンパク質を独立かつ任意選択で含む、または当該タンパク質から除外することができる。
【0131】
FcγR変異体
したがって、1つまたは複数のFcγR受容体に対する結合を変えるために作ることのできる有用なFc置換が多く存在する。結合の増加、及び結合の減少をもたらす置換が有用であり得る。例えば、Fc RIIIaに対する結合の増加は、一般に、ADCC(抗体依存性細胞傷害。これは、細胞が媒介する反応であって、FcγRを発現している、非特異性である細胞傷害性の細胞が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後に標的細胞の溶解を引き起こす反応である)の増加をもたらすことが知られている。同様に、FcγRIIb(抑制性受容体)に対する結合の減少も、状況によっては、有益であり得る。本発明において有用であるアミノ酸置換には、USSN11/124,620(特に
図41)、USSN11/174,287、USSN11/396,495、USSN11/538,406において記載されるものが含まれ、これらはすべて、全体が、参照によって、明確に本明細書に組み込まれ、特に、そこで開示される変異体に向けて組み込まれる。有用な特定の変異体には、限定はされないが、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330L、243A、243L、264A、264V、及び299Tが含まれる。
【0132】
さらに、FcRn受容体に対する結合増加、及び血清半減期の増加において有用な追加のFc置換が存在し、全体が、参照によって組み込まれるUSSN12/341,769において具体的に開示されるとおりであって、限定はされないが、434S、434A、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I、またはV/434S、436V/428L、及び259I/308F/428Lが含まれる。
【0133】
消去変異体
同様に、機能性変異体の別のカテゴリーは、「Fcγ消去変異体」または「Fcノックアウト(FcKO若しくはKO)変異体である。こうした実施形態では、いくつかの治療用途に向け、Fcγ受容体(例えば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa等)の1つまたは複数またはすべてに対するFcドメインの通常の結合を低減または除去して、作用の付加的な機構を回避することが望ましい。すなわち、例えば、多くの実施形態では、特にCD3に一価で結合する二重特異性抗体の使用において、FcγRIIIa結合を消去して、ADCC活性を排除、または著しく低下させることが一般に望ましい。Fcドメインのうちの1つは、1つ以上のFcγ受容体消去変異体を含む。これらの消去変異体は、
図31に示され、それぞれは、G236R/L328R、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K/A327G、及びE233P/L234V/L235A/G236delからなる群から選択される消去変異体を利用する好ましい態様と共に独立かつ任意選択で含める、または除外することができる。本明細書において参照される消去変異体が、一般に、FcRn結合ではなくFcγR結合を消去することに留意されたい。
【0134】
ヘテロ二量体及びFc変異体の組み合わせ
当業者によって理解されるように、その「鎖性」または「単量体区分(monomer
partition)」が保持される限り、繰り返し記載されているヘテロ二量体化変異体(歪曲及び/またはpI変異体を含む)はすべて、任意選択かつ独立に、何らかの方法で組み合わせることができる。さらに、こうした変異体はすべて、ヘテロ二量体化形式のいずれかに組み入れることができる。
【0135】
pI変異体の場合、特定用途に有用な実施形態は、図に示されているが、精製の容易化のために2つの単量体間のpI差異を変える基礎的な規則に従って、他の組み合わせを生成できる。
【0136】
さらに、ヘテロ二量体化変異体、歪曲、及びpIのうちのいずれかはまた、一般的に本明細書に概要が記載されるとおり、Fc消去変異体、Fc変異体、FcRn変異体と独立かつ任意選択で組み合わせられる。
【0137】
本発明の有用な形式
当業者によって理解され、以下により完全に論じられるように、本発明のヘテロ二量体融合タンパク質は、一般に、
図1に示されるように、幅広い種類の立体配置をとることができる。いくつかの図は、分子の一方の「アーム」上に1種類の特異性、及びもう一方の「アーム」上に異なる特異性がある「シングルエンド化(single ended)」立体配置を示す。他の図は、分子の「上部」に少なくとも1種類の特異性、及び分子の「下部」に1つ以上の異なる特異性がある「二重エンド化(dual ended)」立体配置を示す。したがって、本発明は、異なる第1の抗原及び第2の抗原を共捕捉する新規のイムノグロブリン組成物を対象とする。
【0138】
当業者によって理解されるように、本発明のヘテロ二量体形式は、異なる結合価を有し、かつ二重特異性であることができる。すなわち、本発明のヘテロ二量体抗体は、二価かつ二重特異性であることができ、CD3が、1つの結合ドメインによって結合され、CD38が、第2の結合ドメインによって結合される。ヘテロ二量体抗体はまた、三価かつ二重特異性であることができ、CD38が、2つの結合ドメインによって結合され、CD3が、第2の結合ドメインによって結合される。本明細書に概要が記載されるとおり、潜在的な副作用を減少させるために、CD3が一価のみで結合されることが好ましい。
【0139】
本発明は、抗CD3抗原結合ドメイン及び抗CD38抗原結合ドメインを利用する。当業者によって理解されるように、いずれの図(特に
図2〜7、及び
図68参照)にも示される抗CD3 CDR、抗CD3可変軽及び可変重ドメイン、Fab、及びscFvのいずれの集合も使用されることができる。同様に、いずれの図(
図8、9、及び10参照)にも示される抗CD38抗原結合ドメイン、抗CD38 CDRであっても、抗CD38可変軽及び可変重ドメイン、Fab、及びscFvのいずれも使用され、任意の組み合わせで任意選択かつ独立に組み合わせることができる。
【0140】
ボトルオープナー形式
本発明において特に使用される1つのヘテロ二量体骨格は、「三重F」または
図1A、A、及びBに示される「ボトルオープナー」骨格形式である。この実施形態では、抗体の一方の重鎖は、単鎖Fv(以下に定義される「scFv」)を含み、もう一方の重鎖は、「定型的な(regular)」FAb形式であって、可変重鎖及び軽鎖を含む。この構造は、本明細書で「三重F」形式(scFv−FAb−Fc)、またはボトルオープナーにおおよそ視覚的に類似している(
図1参照)ことから「ボトルオープナー」形式と呼ばれることがある。2つの鎖は、ヘテロ二量体抗体の形成を促進する定常領域(例えば、Fcドメイン、CH1ドメイン、及び/またはヒンジ領域)において、アミノ酸変異体を使用することによって一緒にまとめられており、以下に、より完全に説明される。
【0141】
本発明の「三重F」形式には、いくつかの明確に異なる利点が存在する。当該技術分野で知られるとおり、2つのscFv構築物に依存する抗体アナログは、安定性及び凝集の問題を有することが多いが、本発明においては、「定型的な」重鎖及び軽鎖の対を追加することによって、こうした問題を軽減できる。さらに、2つの重鎖及び2つの軽鎖に依存する形式とは対照的に、重鎖及び軽鎖が、不正確に対になる(例えば、重1が、軽2と対になる等)という問題は存在しない。
【0142】
本明細書に概要が記載される実施形態の多くは、一般に、scFvを含む第1の単量体を含むボトルオープナー形式に依存し、当該scFvは、scFvリンカー(多くの実施例において荷電)を使用して共有結合で付加される可変重及び可変軽ドメインを含み、scFvは、ドメインリンカー(本明細書に概要が記載されるとおり、非荷電または荷電であり得る)を通常介して、第1のFcドメインのN末端に共有結合で付加される。ボトルオープナー形式の第2の単量体は重鎖であり、組成物は、軽鎖をさらに含む。
【0143】
一般に、多くの好ましい実施形態では、scFvは、CD38に結合する重及び軽鎖のFabを用いて、CD3に結合するドメインである。さらに、本発明のFcドメインは、一般に、歪曲変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S、L368D/K370S:S364K、L368E/K370S:S364K、T411T/E360E/Q362E:D401K、L368D/K370S:S364K/E357L、及びK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される特に有用な歪曲変異体を有する
図29及び
図34に示されるアミノ酸置換のセット)、任意選択で消去変異体を含み、重鎖は、pI変異体を含む。
【0144】
本発明は、ボトルオープナー形式を提供し、抗CD3scFv配列が
図2〜7、及び
図68に示されるとおりである。
【0145】
本発明は、ボトルオープナー形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0146】
mAb−Fv形式
本発明において特に使用される1つのヘテロ二量体骨格は、
図1に示されるmAb−Fv形式である。この実施形態では、形式は、一方の単量体に対する「余分な」可変重ドメインのC末端付加、及びもう一方の単量体に対する「余分な」可変軽ドメインのC末端付加の使用に依存し、したがって、第3の抗原結合ドメインを形成し、2つの単量体のFab部分は、CD38に結合し、「余分な」scFvドメインは、CD3に結合する。
【0147】
この実施形態では、第1の単量体は、第1の可変重ドメイン及び第1の定常重ドメインを含む第1の重鎖を含み、当該第1の定常重ドメインは、ドメインリンカーを使用して第1のFcドメインのC末端に共有結合で付加される第1の可変軽ドメインを有する第1のFcドメインを含む。第2の単量体は、第2のFcドメインを含む第2の定常重ドメインの第2の可変重ドメインと、ドメインリンカーを使用して第2のFcドメインのC末端に共有結合で付加される第3の可変重ドメインとを含む。2つのC末端に付加された可変ドメインは、CD3に結合するscFvを構成する。この実施形態は、可変軽ドメイン及び定常軽ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用し、当該軽鎖は、CD38に結合する2つの同一Fabを形成するために重鎖に関連する。本明細書の実施形態の多くについては、これらの構築物には、本明細書で所望され説明される歪曲変異体、pI変異体、消去変異体、追加のFc変異体などが含まれる。
【0148】
本発明は、mAb−Fv形式を提供し、抗CD3scFv配列は、
図2〜7に示されるとおりである。
【0149】
本発明は、mAb−Fv形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0150】
本発明は、
図31に示される消去変異体を含むmAb−Fv形式を提供する。
【0151】
本発明は、
図29及び34に示される歪曲変異体を含むmAb−Fv形式を提供する。
【0152】
mAb−scFv
本発明において特に使用される1つのヘテロ二量体骨格は、
図1に示されるmAb−Fv形式である。この実施形態では、形式は、単量体のうちの1つに対するscFvのC末端付加の使用に依存し、したがって、第3の抗原結合ドメインを形成し、2つの単量体のFab部分は、CD38に結合し、「余分な」scFvドメインは、CD3に結合する。したがって、第1の単量体は、scFv可変軽ドメイン、scFvリンカー、及びscFv可変重ドメインを含むC末端に共有結合で付加されるscFvを有する第1の重鎖(可変重ドメイン及び定常ドメインを含む)を含む。この実施形態は、可変軽ドメイン及び定常軽ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用し、当該軽鎖は、CD38に結合する2つの同一Fabを形成するために重鎖に関連する。本明細書の実施形態の多くについては、これらの構築物には、本明細書で所望され説明される歪曲変異体、pI変異体、消去変異体、追加のFc変異体などが含まれる。
【0153】
本発明は、mAb−scFv形式を提供し、抗CD3scFv配列は、
図2〜7に示されるとおりである。
【0154】
本発明は、mAb−scFv形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0155】
本発明は、
図31に示される消去変異体を含むmAb−scFv形式を提供する。
【0156】
本発明は、
図29及び34に示される歪曲変異体を含むmAb−scFv形式を提供する。
【0157】
中心scFv
本発明において特に使用される1つのヘテロ二量体骨格は、
図1に示される中心scFv形式である。この実施形態では、形式は、挿入scFvドメインの使用に依存し、したがって、第3の抗原結合ドメインを形成し、2つの単量体のFab部分は、CD38に結合し、「余分な」scFvドメインは、CD3に結合する。scFvドメインは、単量体のうちの1つのFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入され、したがって、第3の抗原結合ドメインを提供する。
【0158】
この実施形態では、1つの単量体は、scFv可変軽ドメイン、scFvリンカー、及びscFv可変重ドメインを含むscFvを有する第1の可変重ドメイン、CH1ドメイン、及びFcドメインを含む第1の重鎖を含む。scFvは、ドメインリンカーを使用して重定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間に共有結合で付加される。この実施形態は、可変軽ドメイン及び定常軽ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用し、当該軽鎖は、CD38に結合する2つの同一Fabを形成するために重鎖に関連する。本明細書の実施形態の多くについては、これらの構築物には、本明細書で所望され説明される歪曲変異体、pI変異体、消去変異体、追加のFc変異体などが含まれる。
【0159】
本発明は、中心scFv形式を提供し、抗CD3scFv配列は、
図2〜7に示されるとおりである。
【0160】
本発明は、中心scFv形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0161】
本発明は、
図31に示される消去変異体を含む中心scFv形式を提供する。
【0162】
本発明は、
図29及び34に示される歪曲変異体を含む中心scFv形式を提供する。
【0163】
中心Fv形式
本発明において特に使用される1つのヘテロ二量体骨格は、
図1に示される中心Fv形式である。この実施形態では、形式は、挿入scFvドメインの使用に依存し、したがって、第3の抗原結合ドメインを形成し、2つの単量体のFab部分は、CD38に結合し、「余分な」scFvドメインは、CD3に結合する。scFvドメインは、単量体のうちの1つのFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入され、したがって、第3の抗原結合ドメインを提供し、各単量体は、scFvの成分を含有する(例えば、一方の単量体は、可変重ドメインを含み、もう一方は、可変軽ドメインを含む)。
【0164】
この実施形態では、一方の単量体は、第1の可変重ドメイン、CH1ドメイン、及びFcドメイン、ならびに追加の可変軽ドメインを含む第1の重鎖を含む。軽ドメインは、ドメインリンカーを使用して重定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間に共有結合で付加される。もう一方の単量体は、第1の可変重ドメイン、CH1ドメイン、及びFcドメイン、ならびに追加の可変重ドメインを含む第1の重鎖を含む。軽ドメインは、ドメインリンカーを使用して重定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間に共有結合で付加される。
【0165】
この実施形態は、可変軽ドメイン及び定常軽ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用し、当該軽鎖は、CD38に結合する2つの同一Fabを形成するために重鎖に関連する。本明細書の実施形態の多くについては、これらの構築物には、本明細書で所望され説明される歪曲変異体、pI変異体、消去変異体、追加のFc変異体などが含まれる。
【0166】
本発明は、中心scFv形式を提供し、抗CD3scFv配列は、
図2〜7に示されるとおりである。
【0167】
本発明は、中心scFv形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0168】
本発明は、
図31に示される消去変異体を含む中心scFv形式を提供する。
【0169】
本発明は、
図29及び34に示される歪曲変異体を含む中心scFv形式を提供する。
【0170】
ワンアーム化中心scFv
本発明において特に使用される1つのヘテロ二量体骨格は、
図1に示されるワンアーム化中心scFv形式である。この実施形態では、一方の単量体は、Fcドメインのみを含み、もう一方の単量体は、挿入scFvドメインを使用し、したがって、第2の抗原結合ドメインを形成する。この形式では、Fab部分が、CD38に結合し、scFvが、CD3に結合するか、またはその逆のいずれかである。scFvドメインは、単量体のうちの1つのFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入される。
【0171】
この実施形態では、1つの単量体は、scFv可変軽ドメイン、scFvリンカー、及びscFv可変重ドメインを含むscFvを有する第1の可変重ドメイン、CH1ドメイン、及びFcドメインを含む第1の重鎖を含む。scFvは、ドメインリンカーを使用して重定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間に共有結合で付加される。第2の単量体は、Fcドメインを含む。この実施形態は、可変軽ドメイン及び定常軽ドメインを含む軽鎖をさらに利用し、当該軽鎖は、Fabを形成するために重鎖に関連する。本明細書の実施形態の多くについては、これらの構築物には、本明細書で所望され説明される歪曲変異体、pI変異体、消去変異体、追加のFc変異体などが含まれる。
【0172】
本発明は、ワンアーム化中心scFv形式を提供し、抗CD3scFv配列は、
図2〜7に示されるとおりである。
【0173】
本発明は、ワンアーム化中心scFv形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0174】
本発明は、
図31に示される消去変異体を含むワンアーム化中心scFv形式を提供する。
【0175】
本発明は、
図29及び34に示される歪曲変異体を含むワンアーム化中心scFv形式を提供する。
【0176】
二重scFv形式
本発明はまた、当該技術分野で知られ、
図1に示される二重scFv形式を提供する。具体的には、本発明は、二重scFv形式を提供し、抗CD3scFv配列は、
図2〜7に示されるとおりである。
【0177】
本発明は、二重scFv形式を提供し、抗CD38配列は、
図8〜10に示されるとおりである。
【0178】
本発明の核酸
本発明は、本発明の二重特異性抗体をコードする核酸組成物をさらに提供する。当業者によって理解されるように、核酸組成物は、ヘテロ二量体タンパク質の形式及び骨格に依存する。したがって、例えば、形式が、三重F形式などのために3つのアミノ酸配列を必要とするとき(例えば、Fcドメイン及びscFvを含む第1のアミノ酸単量体、重鎖及び軽鎖を含む第2のアミノ酸単量体)、3つの核酸配列は、発現のための1つ以上の発現ベクターに組み込まれ得る。同様に、いくつかの形式(例えば、
図1に開示されるものなどの二重scFv形式)2つの核酸のみが必要とされ、再度それらは、1つまたは2つの発現ベクターに加えられ得る。
【0179】
当該技術分野で知られるように、本発明の構成要素をコードする核酸は、本発明のヘテロ二量体抗体を産生するために使用される宿主細胞によって、当該技術分野で知られる発現ベクターに組み込まれ得る。一般に、核酸は、何らかの数の制御要素(プロモーター、複製の起源、選択可能なマーカー、リボソーム結合部位、誘導物質など)に操作可能に連結される。発現ベクターは、外部染色体または統合ベクターであってもよい。
【0180】
本発明の核酸及び/または発現ベクターは、その後、哺乳類、細菌、酵母菌、昆虫、及び/または真菌細胞を含む当該技術分野でよく知られる何らかの数の異なる型の宿主細胞に変換され、哺乳細胞(例えば、CHO細胞)は、多くの実施形態において有用である。
【0181】
いくつかの実施形態では、形式に応じて適用可能であるように、各単量体をコードする核酸及び軽鎖をコードする任意選択の核酸は、一般に、異なるまたは同一のプロモーター制御下で、単一の発現ベクター内でそれぞれ含有される。本発明の特定使用の実施形態では、これらの2つまたは3つの核酸のそれぞれは、異なる発現ベクター上に含有される。本明細書及びこれによって、参照によって、組み込まれる第62/025,931号で示されるように、異なるベクターの比は、ヘテロ二量体形成を誘起するために使用され得る。すなわち、驚くべきことに、タンパク質が、1:1:2の比で第1の単量体:第2の単量体:軽鎖(ヘテロ二量体抗体を含む3つのポリペプチドを有する本明細書の実施形態の多くの場合)を含むが、これらは、最良の結果をもたらす比ではない。
図65参照。
【0182】
本発明のヘテロ二量体抗体は、当該技術分野においてよく知られている発現ベクターを含む宿主細胞を培養することによって作製される。一旦産生されると、イオン交換クロマトグラフィー段階を含む伝統的な抗体精製段階がなされる。本明細書で論じられるように、2つの単量体のpIを少なくとも0.5異なるようにすることで、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動、または等電点感受性の他の方法によっての分離が可能になる。すなわち、それぞれの単量体の等電点(pI)を変えるpI置換を含め、その結果、それぞれの単量体が異なるpIを有し、ヘテロ二量体もまた、異なるpIを有し、したがって、「三重F」ヘテロ二量体の等電点精製を容易にする(例えば、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム)。こうした置換は、何らかの混入している二重scFv−Fcホモ二量体及びmAbホモ二量体の、精製後の判定及び監視においても役に立つ(例えば、IEFゲル、cIEF、及び分析IEXカラム)。
【0183】
処置
一旦作製されると、本発明の組成物は、多くの応用において有用である。多くの造血器悪性腫瘍、ならびに非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B−CLL)、B細胞性及びT細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)を含む様々な造血器悪性腫瘍由来の細胞株において、CD38は、制御されていない。
【0184】
したがって、本発明のヘテロ二量体組成物は、これらの癌の処置において有用である。
【0185】
生体内投与用の抗体組成物
本発明に従って使用する抗体の製剤は、所望の純度を有し、任意選択で、医薬的に許容可能な担体、添加剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980])と共に抗体を混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態において、貯蔵向けに調製される。許容可能な担体、添加剤、または安定剤は、用いられる投与量及び濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくはイムノグロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸、単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の糖質、EDTAなどのキレート物質、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属複合体(例えば、亜鉛−タンパク質複合体)、ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0186】
本明細書に記載される製剤は、処置されている特定の徴候に向けて、必要に応じて複数の活性化合物を含んでもよく、好ましくは、お互いに有害な影響を及ぼすことのない相補的な活性を有するものである。例えば、他の特異性を有する抗体を提供することが望ましくあり得る。あるいは、またはさらに、組成物は、細胞傷害性物質、サイトカイン、成長阻害物質、及び/または小分子アンタゴニストを含んでよい。そのような分子は、意図する目的に向けて、有効な量の組み合わせで、適切に存在する。
【0187】
活性成分は、調製するカプセルに封入されてもよく、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって封入されてよく、これらは、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセルであり、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、またはマイクロエマルジョンにおいて、封入されてよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)において開示される。
【0188】
生体内投与に使用される製剤は、無菌、またはそれに近くあるべきである。これは、無菌ろ過膜を通過させるろ過によって容易に達成される。
【0189】
持続放出調製物を調製してよい。持続放出調製物の適した例には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれ、当該マトリックスは、成形物品の形態であり、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルである。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及び.ガンマ.エチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸リュープロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブタン酸が含まれる。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸などの重合体は、100日を超える期間の分子放出を可能にする一方で、ある一定のヒドロゲルでは、タンパク質の放出期間は、より短い。
【0190】
カプセル化された抗体が、体内に長期間残存するとき、抗体は、37℃での水分へ暴露の結果として変性または凝集し得、生物学的活性の消失と共に免疫原性が変化する可能性をもたらす。関与する機構に応じて、安定化に向けた合理的な方針を立てることができる。例えば、凝集機構が、チオジスルフィド相互交換を介した分子間S−−S結合形成であると見出されたのであれば、スルフヒドリル残基の改変、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含量の制御、適した添加物の使用、及び特定の重合体マトリックス組成物の開発によって、安定化を達成してよい。
【0191】
投与様式
本発明の抗体物質及び化学療法物質は、ボーラスとしての静脈投与、または期間にわたる継続注入による静脈投与などの既知の方法に従って、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内(intracerobrospinal)経路、皮下経路、関節内経路、関節滑液嚢内経路、くも膜下腔内経路、口腔経路、局所的経路、または吸入経路によって、対象に投与される。抗体の静脈内投与または皮下投与が好ましい。
【0192】
処置様式
本発明の方法において、治療は、病気または状態に関する有益な治療応答を提供するために使用される。「有益な治療応答」は、病気若しくは状態における改善、及び/または病気若しくは状態と関連する症状における改善を意図する。例えば、有益な治療応答は、病気における下記の改善の1つまたは複数を指すことになる。(1)新生細胞数の減少、(2)新生細胞死の増加、(3)新生細胞の生存阻害、(5)腫瘍成長の阻害(例えば、ある程度の鈍化、好ましくは停止)、(6)患者生存率の増加、及び(7)病気または状態と関連する1つまたは複数の症状のいくらかの緩和。
【0193】
何らかの所与の病気または状態における有益な治療応答は、病気または状態に特有の標準化された応答の診断基準によって決定できる。腫瘍応答は、磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、x−線画像法、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン画像法、内視鏡検査、ならびに骨髄穿刺(BMA)及び循環における腫瘍細胞の計数を含む腫瘍生検試料採取などの選別技術を使用して、腫瘍形態学(すなわち、全体的な腫瘍量、腫瘍サイズ、及び同様のもの)における変化で評価できる。
【0194】
こうした有益な治療応答に加えて、治療が進行中の対象は、病気に関連する症状において、改善の有利な効果を経験し得る。
【0195】
病気の改善は、完全奏効として特徴付けられてよい。「完全奏効」は、何らかの、以前には異常であったX線検査、骨髄、及び脳脊髄液(CSF)の所見の正常化、または骨髄腫の場合は、異常なモノクローナルタンパク質の正常化を伴って、臨床的に検出可能な病気が存在しないことを意図する。
【0196】
そのような応答は、本発明の方法による処置の後、少なくとも4〜8週間、または時には6〜8週間持続し得る。あるいは、病気の改善は、部分奏効であるとして分類されてよい。「部分奏効」は、新しい病変が存在せず、すべての測定可能な腫瘍量(すなわち、対象に存在する悪性細胞の数、または腫瘍質量の測定容積、または異常なモノクローナルタンパク質の量)が、少なくとも約50%減少することを意図し、それが4〜8週間、または6〜8週間持続し得る。
【0197】
本発明による処置は、使用する薬剤の「治療有効量」を含む。「治療有効量」は、必要な投与量及び期間で、所望の治療結果を達成するために有効である量を指す。
【0198】
治療有効量は、個々の病気の状況、年齢、性別及び体重などの要因、ならびに個々における、薬剤の所望応答を引き出す能力に応じて変化してよい。治療有効量は、抗体または抗体部分の治療上有利な効果が、何らかの毒性作用または有害作用を凌ぐ量でもある。
【0199】
腫瘍治療に向けた「治療有効量」は、病気の進行を安定化させる能力によって測定されてもよい。癌を抑制する化合物の能力を、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系において評価してよい。
【0200】
あるいは、組成物のこの性質は、当業者に知られる試験管内アッセイによって、化合物が、細胞の成長を抑制する能力、またはアポトーシスを誘導する能力を試験することによって評価してよい。治療用化合物の治療有効量によって、対象の腫瘍サイズを減少させてよく、またはそうでなければ、対象の症状を回復させてよい。当業者であれば、対象のサイズ、対象の症状の重症度、及び特定組成物、または選択する投与経路などの要因に基づいてそのような量を決定できるであろう。
【0201】
投与レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調整される(例えば、治療応答)。例えば、単回ボーラス投与をしてよく、いくつかに分割された用量を、長時間にわたって投与してよく、または治療状況の要件が示すように、比例的に用量を減少または増加してよい。非経口組成物を、投与の容易化、及び投与量の均一性担保に向けて、投与量単位形態において製剤化してよい。本明細書では、投与量単位形態は、処置される対象向けの単位投与量として適した、物理的に別々の単位を指す。それぞれの単位は、必要な医薬担体と関連して、所望の治療効果を提供するように計算され、予め決定された量の活性化合物を含む。
【0202】
本発明の投与量単位形態のための規格は、(a)活性化合物特有の特性、及び達成される特定の治療効果、ならびに(b)そのような活性化合物を、個々の感受性処置向けに配合する技術分野での固有の制限、によって決定されると共に、直接的にそれらに応じて、決定される。
【0203】
本発明において使用される二重特異性抗体に向けた、効率的な投与量及び投与レジメンは、処置される病気または状態に依存し、当業者によって決定されてよい。
【0204】
本発明において使用される二重特異性抗体の治療有効量のための、例示かつ非限定範囲は、約0.1〜50mg/kgなどの約0.1〜100mg/kg、例えば、約0.1〜10mg/kgなどの約0.1〜20mg/kg、例えば、約0.3mg/kgなどの約0.5mg/kg、約1mg/kg、または約3mg/kgである。別の実施形態では、抗体は、1〜20mg/kgの用量などの1mg/kg以上の用量で投与され、例えば、5〜20mg/kgの用量、例えば、8mg/kgの用量で投与される。
【0205】
当該技術分野の医療従事者であれば、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方し得る。例えば、医者または獣医師であれば、医薬組成物において用いられる薬剤の投与を、所望の治療効果を達成するために必要となるよりも低い用量で開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができるであろう。
【0206】
1つの実施形態では、二重特異性抗体は、注入によって、200〜400mg/kgの投与量などの10〜500mg/kgの投与量で毎週投与される。そのような投与は、例えば、3〜5回などの1〜8回繰り返されてよい。投与は、2〜12時間の時間などの2〜24時間の時間にわたる継続注入によって実施されてよい。
【0207】
1つの実施形態では、毒性を含む副作用を減らす必要があれば、二重特異性抗体は、24時間超などの長時間にわたる、緩徐な継続注入によって投与される。
【0208】
1つの実施形態では、二重特異性抗体は、4〜6回などの最大8回の投与に向け、250mg〜2000mgの投与量が毎週投与され、例えば、300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mg、または2000mgなどの投与量が毎週投与される。投与は、2〜12時間などの2〜24時間にわたる継続注入によって実施されてよい。そのようなレジメンは、必要に応じて1回または複数回繰り返されてよく、例えば、6ヶ月後または12カ月後に繰り替えされてよい。投与量は、例えば、生物学的試料を採取し、二重特異性抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することにより、投与の際に血液中に存在する本発明の化合物量を測定することによって、決定または調整してよい。
【0209】
さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、毎週1回、2〜12週間投与され、3〜10週間など、4〜8週間などの期間投与される。
【0210】
1つの実施形態では、二重特異性抗体は、維持療法によって投与され、例えば、6ヶ月またはそれより長い期間、1週間に1回などといった投与がなされる。
【0211】
1つの実施形態では、二重特異性抗体は、二重特異性抗体の1回の注入を含むレジメン
によって投与される。レジメンは、繰り返されてよく、例えば、7〜9日後に繰り返されてよい。
【0212】
非限定例として、本発明による処置は、1日の抗体投与量として提供されてよく、その量は、1日当たり、約0.1〜100mg/kgであって、1日当たり、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、または100mg/kgなどであり、処置の開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、若しくは40日目の内の少なくとも1日に提供されてよく、あるいは処置の開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20週間目の内の少なくとも1週に提供されてよく、またはそれらのいずれかの組み合わせで提供されてよく、単一または分割された用量を使用して、24、12、8、6、4、若しくは2時間毎に、またはそれらのいずれかの組み合わせで提供されてよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、その実施形態の二重特異性抗体分子は、例えば、化学療法物質といった、1つまたは複数の追加の治療用物質と組み合わせて使用される。DNA損傷化学療法物質の非限定例には、トポイソメラーゼI阻害物質(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、及びそれらのアナログまたは代謝物、ならびにドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害物質(例えば、エトポシド、テニポシド、及びダウノルビシン)、アルキル化物質(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン(decarbazine)、メトトレキサート、マイトマイシンC、及びシクロホスファミド)、DNAインターカレーター(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン)、ブレオマイシンなどのDNAインターカレーター兼遊離ラジカル発生物質、ならびにヌクレオシド模倣物質(例えば、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、及びヒドロキシウレア)が含まれる。
【0214】
細胞複製を攪乱する化学療法物質には、パクリタキセル、ドセタキセル、及び関連アナログと、ビンクリスチン、ビンブラスチン及び関連アナログと、サリドマイド、レナリドミド及び関連アナログ(例えば、CC−5013及びCC−4047)と、タンパク質チロシンキナーゼ阻害物質(例えば、メシル酸イマチニブ及びゲフィチニブ)と、プロテアソーム阻害物質(例えば、ボルテゾミブ)と、IκBキナーゼの阻害物質を含むNF−κB阻害物質と、癌において過剰発現しているタンパク質に結合し、それによって細胞複製を下方制御する抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、及びベバシズマブ)と、癌において上方制御、過剰発現、または活性化していることが知られており、それを阻害することにより、細胞複製が下方制御されるタンパク質または酵素の他の阻害物質と、が含まれる。
【0215】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)での処置に先行して、処置と同時に、または処置の後に使用できる。
【0216】
すべての引用文献は、それらの全体が、参照によって、明確に本明細書に組み込まれる。
【0217】
例示目的に向けて、本発明の特定の実施形態を上に説明したが、添付の特許請求の範囲において説明される本発明から逸脱することなく、当業者によって、詳細の変更を数多く実施し得ることを理解されるであろう。
【0218】
実施例
本発明を示すために、実施例を以下に提供する。こうした実施例は、本発明を何らかの特定の応用、または実施理論に限定しようと意図するものではない。本発明において論じられる定常領域の位置のすべてで、番号付けは、Kabat(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of
Health,Bethesda。参照によって、全体が組み込まれる)にあるように、EUインデックスに従う。抗体技術分野の当業者であれば、この慣習が、イムノグロブリン配列の特定領域における、非連続的な番号付けからなっており、イムノグロブリンファミリーにおける保存位置への標準化された参照が可能になっていることを理解されるであろう。したがって、EUインデックスによって定義される、何らかの所与のイムノグロブリンの位置は、その連続配列に必ずしも対応していないことになる。
【0219】
一般的かつ特定の科学技術は、米国公開第2015/0307629号、同第2014/0288275号、及びWO2014/145806に概要が記載され、これらはすべて、全体が、参照によって、明確に組み込まれ、特に、それらに概要が記載される技術に関して組み込まれる。
【実施例】
【0220】
実施例1:代替形式
Fab−scFv−Fc産生
【0221】
Fab−scFv−Fc発現−Fab−Fc、scFv−Fc、及びLC−のために必要とされる3つの鎖をコードするDNAを、遺伝子合成(Blue Heron Biotechnology,Bothell,Wash.)によって生成し、発現ベクターpTT5に標準分子生物学的技術を使用してサブクローニングした。置換を、部位特異的な突然変異誘発(QuikChange,Stratagene,Cedar Creek,Tex.)または追加の遺伝子合成及びサブクローニングのいずれかを使用して導入した。DNAを、発現のためのHEK293E細胞にトランスフェクトし、得られたタンパク質を、タンパク質A親和性(GE Healthcare製)及び陽イオン交換(GE
Healthcare製)クロマトグラフィーを使用して上清から精製した。Fab−scFv−Fc二重特異性体についてのアミノ酸配列を、
図3に記載する。
【0222】
表面プラズモン共鳴親和性決定
【0223】
表面プラズモン共鳴結合実験は、Biacore 3000装置(データ図示せず)を使用して実施した。親和性を調節するアミノ酸置換の後でさえ、抗CD3可変領域は、カニクイザルCD3に対して交差反応性が残存する。
【0224】
細胞表面結合
【0225】
Fab−scFv−FcsのCD3への結合は、二次抗体を用いる検出を介してT細胞上で測定された。
【0226】
再配向化T細胞細胞傷害性
【0227】
抗CD38×抗CD3 Fab−scFv−Fc二重特異性体は、CD20
+ラモスバーキットリンパ腫(BL)細胞株、CD20
+ Jeko−1マントル細胞リンパ腫(MCL)細胞株、及びCD38
+RPMI 8266骨髄腫細胞株の再配向化T細胞細胞傷害性(RTCC)について試験管内で特徴づけた。RTCCを測定し、RTCC中のIL−6産生も特徴づけた(データ図示せず)。
【0228】
huPBL−SCIDイムノグロブリン欠乏マウス研究
【0229】
ヒトB細胞または形質細胞の欠乏を介してヒトイムノグロブリンを欠乏させる抗CD38×抗CD3 Fab−scFv−Fc二重特異性体の能力を、ヒトPBMCが移植されたSCIDマウスを使用して評価した。結果を図に示す。
【0230】
実施例2:代替形式
二重特異性体産生
抗CD38×抗CD3二重特異性体の模式図を、
図1に示す。代替形式の抗CD38×抗CD3二重特異性体のアミノ酸配列を、
図39〜
図43に記載する。二重特異性発現のために必要とされる3つの鎖をコードするDNAを、遺伝子合成(Blue Heron
Biotechnology,Bothell,Wash.)によって生成し、発現ベクターpTT5に標準分子生物学的技術を使用してサブクローニングした。置換を、部位特異的な突然変異誘発(QuikChange,Stratagene,Cedar Creek,Tex.)または追加の遺伝子合成及びサブクローニングのいずれかを使用して導入した。DNAを、発現のためのHEK293E細胞にトランスフェクトし、得られたタンパク質を、タンパク質A親和性(GE Healthcare製)及び陽イオン交換(GE Healthcare製)クロマトグラフィーを使用して上清から精製した。タンパク質A親和性精製後の収率を、
図35に示す。陽イオン交換クロマトグラフィー精製を、50mM MES、pH6.0の洗浄/平衡緩衝剤及び50mM MES、pH6.0+1M NaCl直線勾配の溶離緩衝剤を用いるHiTrap SP HPカラム(GE Healthcare製)を使用して実施した(クロマトグラムについては
図36参照)。
【0231】
再配向化T細胞細胞傷害性
抗CD38×抗CD3二重特異性体は、CD38
+RPMI8266骨髄腫細胞株の再配向化T細胞細胞傷害性(RTCC)について試験管内で特徴づけた。10,000個のRPMI8266細胞を、500,000個のヒトPBMCと共に、24時間インキュベートした。RTCCを、示されるようにLDH蛍光によって測定した(
図37参照)。
【0232】
実施例3
再配向化T細胞細胞傷害性
抗CD38×抗CD3 Fab−scFv−Fc二重特異性体は、CD38+RPMI8266骨髄腫細胞株の再配向化T細胞細胞傷害性(RTCC)について試験管内で特徴づけた。40,000個のRPMI8266細胞を400,000個のヒトPBMCと共に、96時間インキュベートした。RTCCを、示されるようにフローサイトメトリーによって測定した(
図44参照)。CD69、Ki−67、及びPI−9のCD4+及びCD8+T細胞発現もまた、フローサイトメトリーによって特徴づけ、
図45に示す。
【0233】
抗腫瘍活性のマウスモデル
5匹のNOD重症複合免疫不全ガンマ(NSG)マウスの4つの群のそれぞれに、−23日目に静脈内尾静脈注射によって5×106RPMI8226TrS腫瘍細胞(多発性骨髄腫、ルシフェラーゼ発現)を移植した。0日目に、マウスに、10×106ヒトPBMCを腹腔内に移植した。0日目のPBMC移植の後、試験物を、
図4に示される用量レベルで腹腔内注射によって毎週(0、7日目)投与する。研究設計は、
図46にさらに概要を述べられる。腫瘍増殖を、生体内画像化システム(IVIS(登録商標))を使用してマウス当たりの全フラックスを測定することによって監視した。XmAb13551及びXmAb15426の両方は、実質的な抗腫瘍効果を示した(
図47及び
図48参照)。
【0234】
カニクイザルにおける研究
カニクイザルに、抗CD38×抗CD3二重特異性体を単回投与した。抗RSV×抗CD3二重特異性対照もまた含んだ。用量レベルは、20μg/kgのXmAb13551(n=2)、0.5mg/kgのXmAb15426(n=3)、3mg/kgのXmAb14702(n=3)、または3mg/kgのXmAb13245(抗RSV×抗CD3対照、n=3)(3つの独立した研究において)であった。抗CD38×抗CD3二重特異性体は、末梢血中のCD38+細胞を速やかに欠乏させた(
図49参照)。抗CD38×抗CD3二重特異性体は、CD69発現によって測定されるT細胞活性化をもたらした(
図50参照)。IL−6の血清レベルもまた測定した(
図51参照)。XmAb13551と比較して、XmAb15426は、CD38+細胞欠乏の増加した期間ならびにより低いレベルのT細胞活性化及びIL−6産生を有したこと留意されたい。
【0235】
XmAb15426及びXmAb14702を、それぞれ0.5mg/kg及び3mg/kgの単回投与で試験した。両方の抗体は、これらのより高い用量で良好な忍容性を示し、処置されたサルからの血清中で観察された中程度のレベルのIL6と一致した。その上、中間CD3親和性を有するXmAb15426は、2、5、または20μg/kgで投与された最初の高親和性XmAb13551と比較して、0.5mg/kgのCD38+細胞をより効果的に欠乏させた。XmAb15426による欠乏は、以前の研究においてXmAb13551の最高用量と比較してより持続性があった(7日目対2日目それぞれ)。注目すべきことに、標的細胞欠乏は、XmAb15426についてより大きかったが、T細胞活性化(CD69、CD25、及びPD1誘導)は、XmAb15426を用いて処置され、20μg/kgのXmAb13551の群よりも25倍高い用量で投与されたサルにおいてさらにより低かった。非常に低いCD3親和性を有するXmAb14702は、CD38+細胞及びT細胞活性化に対してほとんど効果を有しなかった。
【0236】
これらの結果は、CD3親和性を減弱させることによってT細胞活性化を調節することが、T細胞結合二重特異性抗体の治療濃度域を改善するための有望な方法であることを実証する。この方針は、CD38などの標的を用いて抗原シンククリアランスを克服するために、忍容性を改善し、より高い用量での投与を可能にすることによって、標的化T細胞免疫治療に適している抗原のセットを拡張するための潜在性を有する。CD3の親和性を低下させることによって、XmAb15426がCD38+細胞を効果的に欠乏し、一方でCRS効果を最小化することが、その高親和性対応物XmAb13551を同等の用量で投与した場合にもみられることが示された。