(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る帽子に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0018】
本発明において、帽子は使用者が頭にかぶるものである。図面において、使用者の左右方向をx方向で示し、使用者の前後方向をy方向で示し、使用者の身長方向をz方向で示す。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る帽子の側面図である。
図2及び
図3は、本発明の実施の形態に係る帽子の底面図である。
図2及び
図3については、図面に向かって手前が使用者の頭部側、図面に向かって奥が使用者の頭部とは反対側(以下では「外側」と記載することがある)である。
【0020】
上記課題を解決できた本発明の帽子とは、人体の頭部を覆うクラウン本体10と、クラウン本体10の頭部左側の肌側に配置されている左側弾性部材11aと、クラウン本体10の頭部右側の肌側に配置されている右側弾性部材11bと、を有し、左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間には第1の間隙12が存在しており、第1の間隙12とクラウン本体10の外側とは、クラウン本体10に形成されている直径5mm以上の第1の穴13を介して互いに連通していることを特徴とする帽子1である。左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間に第1の間隙12が存在することで、本発明の帽子1を使用者が着用した際には、クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に弾性部材11が有する厚み分の空間が形成される。これにより、当該部分からクラウン本体10内に空気が入りやすくなる。また、第1の間隙12とクラウン本体10の外側とが、クラウン本体10に形成されている直径5mm以上の第1の穴13を介して互いに連通していることで、当該穴からもクラウン本体10内に空気が入りやすくなる。
【0021】
クラウン本体10は、本発明の実施の形態に係る帽子1のうち、使用者の頭部を覆う部分である。本明細書内では、クラウン本体10のうちの使用者側を肌側、使用者とは反対側を外側と記載する。
【0022】
クラウン本体10を構成する生地は、不織布、編布、織布などから適宜選択すればよいが、本発明の実施の形態に係る帽子1は、歩行やランニング、マラソン、競歩、その他スポーツなどを行う際にかぶることが想定されていることから、通気性を高めるとともに、人頭へのフィット性を高めるために、編布で構成された部分を含むことが好ましい。
【0023】
クラウン本体10を構成する生地の素材については特に限定されず、例えばポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、綿、絹、麻等から適宜選択して用いればよい。クラウン本体10は、一種類の素材で構成されていてもよいし、複数の素材から構成されていてもよいが、熱中症防止や人頭への遮熱効果を高めるために、クラウン本体10を構成する生地は赤外線反射素材から構成されていることが好ましい。さらに、日焼け防止の観点から、クラウン部本体10を構成する生地はUVカット機能も有していることが好ましい。
【0024】
本発明の実施の形態に係る帽子1のクラウン本体10を構成する生地については、例えば、芯部に赤外線反射セラミックを配合したポリエステルフィラメント等を含むものとすることで、赤外線を反射する機能を持たせることができる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る帽子1のクラウン本体10を構成する生地については、例えば、チタンやセラミック、カーボン等の微粒子をポリエステルなどの化学繊維自体の中に練り込む方法や、生地に紫外線吸収剤や紫外線錯乱剤を塗る方法によって、UVカット機能を持たせることができる。しかしながら、生地に紫外線吸収剤や紫外線錯乱剤を塗る方法は、洗濯によってUVカット機能が低下しやすい。本発明の実施の形態に係る帽子1は、歩行やランニング、マラソン、競歩、その他スポーツを行う際に使用されることが想定されているため、着用中にかいた汗を多量に吸収していることが予想される。これに伴い、本発明の実施の形態に係る帽子1は、繰り返し洗濯が実施されつつ使用されることが想定される。このため、本発明の実施の形態に係る帽子1のクラウン本体10を構成する生地は、チタンやセラミック、カーボン等の微粒子を化学繊維自体の中に練り込む方法によってUVカット機能を持たせることが好ましい。
【0026】
クラウン本体10を構成する生地における、波長280nmから400nmの紫外線をどれだけ遮蔽しているかを表す紫外線遮蔽率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、クラウン本体10を構成する生地における、肌に何も着けていない地肌の状態でできた日焼けと同じ程度まで日焼けするまでに何倍の時間がかかるかを示すUPF値は、15以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましい。
【0027】
図2に示すように、弾性部材11は、クラウン本体10の肌側に配置される。左側弾性部材11aの少なくとも一部は、クラウン本体10の頭部左側の肌側に配置される。右側弾性部材11bの少なくとも一部は、クラウン本体10の頭部右側の肌側に配置される。
図2の直線Aは、クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を2等分する直線である。使用者から見て直線Aよりも左側が頭部左側であり、使用者から見て直線Aよりも右側が頭部右側である。
図2では左側弾性部材11aと右側弾性部材11bが1つずつ設けられている実施の形態が示されているが、左側弾性部材11aと右側弾性部材11bの数はこれに限られることはなく、左側弾性部材11aと右側弾性部材11bは複数個設けられていてもよい。
【0028】
弾性部材11は、嵩高く、軽く、安価なものであることが好ましい。また、弾性部材11は、吸水性を有していることが好ましい。弾性部材11の部分を水に濡らし、本発明の実施の形態に係る帽子1を着用することで、弾性部材11に含まれている水分が徐々に気化する際に使用者の頭部の熱を奪う。これによって、使用者の頭部の冷却を行うことができる。
【0029】
図4は、本発明の実施の形態に係る帽子のクラウン本体に配置される弾性部材の一実施形態を示す正面図で、
図3のP部分を示している。
図4では、図面に向かって手前が使用者の頭部側、図面に向かって奥が外側である。
図5は、
図4のV−V線における断面図である。
【0030】
弾性部材11は、着用時のフィット感を高めるため、柔らかい素材を含んでいることが好ましく、弾性部材11はJIS L 1096 A法によって測定される伸長回復率がクラウン本体10よりも高いものであることがより好ましい。弾性部材11の素材としては、例えば、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等を含んでいることが好ましい。中でも、軽く、乾きやすく、伸長回復率が高く、クッション性が高いという性質をもつため、ポリウレタンを含んでいることがより好ましく、弾性部材11全体がポリウレタンで構成されていることがさらに好ましい。弾性部材11はクラウン本体10上に直接配置されていてもよいが、弾性部材11とクラウン本体10との間にその他の布、シート等が配置されていてもよい。クラウン本体10への弾性部材11の配置は、縫い付け、接着剤による接着などの種々の方法によって行われればよい。
【0031】
弾性部材11の形状は特に限定されるものではなく、例えば、弾性部材11が有する主面の形状について、多角形、四角形、円形、長円形、楕円形、星形、その他種々の形状にすることができる。また、弾性部材11の全体の形状は、例えば、板状、薄板状、四角柱状、多角柱状、円柱状、その他種々の形状にすることができる。
【0032】
左側弾性部材11aと右側弾性部材11bは、
図2に示すようにそれぞれ独立した部材であってもよいが、
図3及び
図4に示すように左側弾性部材11aと右側弾性部材11bが1つの弾性部材11によって構成されていてもよい。
図3及び
図4の直線Aは、クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を2等分する直線を示している。
図3及び
図4のように、左側弾性部材11aと右側弾性部材11bが1つの弾性部材11によって構成されている場合は、頭部左側半分(直線Aよりも左側)に存在する弾性部材11の部分を左側弾性部材11aと呼び、頭部右側半分(直線Aよりも右側)に存在する弾性部材11の部分を右側弾性部材11bと呼ぶものとする。
【0033】
図2〜
図5に示すように、左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間には第1の間隙12が存在する。クラウン本体10の周方向における第1の間隙12の長さが長すぎると、使用者の頭部が第1の穴13または左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間に存在するクラウン本体10部分に近づいたり、使用者の頭部が第1の穴13の縁または左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間に存在するクラウン本体10部分と接触しやすくなる。そうすると、クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間の空間が小さくなったり、第1の穴13が塞がれやすくなることで、帽子1の通気性を確保しにくくなる可能性がある。クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に空間を形成しやすくするため、クラウン本体10の周方向における第1の間隙12の長さは、クラウン本体10の周方向における左側弾性部材11aまたは右側弾性部材11bの長さよりも短いことが好ましい。ここでいうクラウン本体10の周方向とは、クラウン本体10の縁が延在している方向と平行な方向をいうものとする。また、ここでいうクラウン本体10の周方向における第1の間隙12の長さとは、第1の間隙12が有するクラウン本体10の周方向における長さのうち、最も長い長さをいう(以下、「有効長さ」と記載する)。左側弾性部材11aまたは右側弾性部材11bが有するクラウン本体10の周方向における長さも同様に、左側弾性部材11aまたは右側弾性部材11bが有するクラウン本体10の周方向における長さのうち、最も長い長さをいう(以下、「有効長さ」と記載する)。
【0034】
第1の間隙12の有効長さは、使用者の年齢、性別、頭部の大きさなどに合わせて適宜設定すればよいが、例えば、0.5cm以上、1.5cm以上、3cm以上、13cm以下、11cm以下、9cm以下等にすることができる。
【0035】
左側弾性部材11aまたは右側弾性部材11bの有効長さは、使用者の年齢、性別、頭部の大きさなどに合わせて適宜設定すればよいが、例えば、5cm以上、5.5cm以上、6cm以上、20cm以下、18cm以下、16cm以下等にすることができる。
【0036】
弾性部材11の厚みが薄すぎる場合は、使用者の頭部が第1の穴13または左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間に存在するクラウン本体10部分に接近しすぎたり、使用者の頭部が第1の穴13の縁または左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間に存在するクラウン本体10部分と接触しやすくなる。そうすると、クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間の空間が小さくなったり、第1の穴13が塞がれやすくなることで、帽子1の通気性を確保しにくくなる可能性がある。クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に空間を形成しやすくするため、弾性部材11の厚みは、クラウン本体10の厚みよりも厚いことが好ましい。弾性部材11の厚みとクラウン本体10の厚みは、それぞれの部材が有する厚みのうち最も薄い部分の厚み同士を比較するものとする。
【0037】
弾性部材11の厚みは、具体的には、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。また、弾性部材11の厚みが厚すぎる場合は、着用時にごわつきが生じたり、帽子1の見た目が悪くなる可能性があるため、弾性部材11の厚みは、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
クラウン本体10の厚みは、具体的には、0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。クラウン本体10の厚みは、例えば、8.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、3.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
第1の穴13は、
図1〜
図5で示すように、クラウン本体10に形成されている直径5mm以上の穴であり、第1の間隙12とクラウン本体10の外側とが、第1の穴13を介して連通している。第1の穴13の形状は特に限定されず、多角形、四角形、円形、長円形、楕円形、星形等、種々の形状から適宜選択すればよい。なお、第1の穴13が円形でない場合には、第1の穴13の外接円と内接円の直径の平均値を第1の穴13の直径とする。
【0040】
第1の穴13の直径は、例えば、5mm以上、5.1mm以上、5.2mm以上、60mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下等にすることができる。仮に、第1の間隙12とクラウン本体10の外側とを連通させる構成が、メッシュや1mm前後の小さな穴だけであった場合は、クラウン本体10内への空気の入りが悪く、帽子の通気性を十分に確保できなくなる。このため、クラウン本体10内に空気が入りやすくするために、本発明の実施の形態に係る帽子1には、5mm以上の第1の穴13が形成される。
【0041】
第1の間隙12とクラウン本体10の外側とを連通させる第1の穴13は、1つのみ形成されていてもよいし、複数個形成されていてもよい。また、第1の穴13に加えて、第1の間隙12とクラウン本体10の外側とを連通させる直径が5mmよりも小さい穴が形成されていてもよい。
【0042】
第1の穴13は、例えば、穴開けパンチ、穴開けポンチ、レーザー加工など、種々の方法によって形成すればよい。
【0043】
図6は、使用者が本発明の実施の形態に係る帽子を着用した状態を示す断面図である。図面に向かって左側が使用者の前側であり、図面に向かって右側が使用者の後側である。
【0044】
本発明の実施の形態に係る帽子1は、
図6に示すように、さらにつば部20を有し、つば部20と、第1の間隙12は、クラウン本体10の前側に形成されていることが好ましい。
【0045】
本発明の実施の形態に係る帽子1のつば部20は、帽子1のうち、クラウン本体10の縁から周囲へ差し出ている部分である。つば部20を構成する素材や生地についてはクラウン本体10を構成する素材や生地についての説明を参酌することができる。
【0046】
クラウン本体10の前側は、クラウン本体10を前後方向(y方向)に2等分したときに着用者から見た時の前半分をいう。反対に、前後方向(y方向)に2等分したときに着用者から見た時の後半分は後側という。
【0047】
上記のように、つば部20と第1の間隙12がクラウン本体10の前側に形成されている本発明の実施の形態に係る帽子1を着用して歩行やランニングを行った場合、つば部20が壁のような働きをするために、つば部20の下側に流れ込んだ空気はクラウン本体10の外側へは逃げにくくなり、当該空気はクラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に形成されている空間へ入りこみやすくなる。上記構成とすることで、クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に形成されている空間への空気の流入を促進することができるため、帽子1内の通気性を高めることができる。
【0048】
クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を2等分する直線Aを含む前後方向(y方向)と平行な面上において、つば部20とクラウン本体10のなす角α(
図1で示すα)は、90°以上であることが好ましく、95°以上であることがより好ましく、100°以上であることがさらに好ましい。つば部20とクラウン本体10のなす角αは、150°以下であることが好ましく、145°以下であることが好ましく、140°以下であることがさらに好ましい。つば部20とクラウン本体10のなす角αを上記のような角度に設定することで、つば部20は空気をつば部20の下側に流入させやすくなる。つば部20の下側に流れ込んだ空気は、つば部20が壁のような働きをするため、クラウン本体10の外側へは逃げにくくなり、当該空気はクラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に形成されている空間へ入りこみやすくなる。上記のようにすることで、クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に形成されている空間への空気の流入を促進することができるため、帽子1内の通気性を高めることができる。
【0049】
本発明の実施の形態に係る帽子1において、クラウン本体10の前側であり、クラウン本体10を左右方向に3等分したときの中央領域10bに、第1の間隙12の少なくとも一部が存在していることが好ましく、クラウン本体10の前側であり、クラウン本体10を左右方向に3等分したときの中央領域10bに、第1の間隙12全体が存在していることがより好ましい。
【0050】
図2及び
図3に示すように、クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を3等分したときの真ん中の部分が中央領域10b、使用者から見て中央領域10bの左側に存在するのが左側領域10a、使用者から見て中央領域10bの右側に存在するのが右側領域10cである。
【0051】
クラウン本体10の前側であり、クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を3等分したときの中央領域10bに第1の間隙12が存在していることによって、額に近い領域に第1の間隙12が存在することになるため、直径5mm以上の第1の穴13も、クラウン本体10の前側、かつ、中央領域10bに形成され、額に近い領域に第1の穴13が形成されることになる。これにより、歩行やランニング、マラソン、競歩、その他スポーツをする際に前方から流れてくる空気が当該穴からクラウン本体10内に入りこみやすくなる。また、使用者の額周辺とクラウン本体10の生地とが密着している場合には、額周辺における汗の蒸発が充分でなくなることで体温調節をスムーズに行えなくなることがあるため熱中症を発症する可能性が高くなるが、上記構成とすることで、本発明の実施の形態に係る帽子1を着用した際には額周辺部分に空間が存在するため、額周辺における汗の蒸発も行われやすくなり、熱中症の発症を抑制することができる。
【0052】
図2〜
図4に示すように、クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を2等分する直線Aを含む前後方向(y方向)と平行な面上において、クラウン本体10の前側に、第1の間隙12が存在していることがより好ましい。直線Aを含む前後方向(y方向)と平行な面上において、第1の間隙12が存在していることによって、より額に近い部分に第1の間隙12が存在することになるため、直径5mm以上の第1の穴13も、クラウン本体10の前側であって、かつ、直線A付近に形成されることになる。これにより、歩行やランニング、マラソン、競歩、その他スポーツをする際に前方から流れてくる空気が当該穴からクラウン本体10内に入りこみやすくなる。また、額とクラウン本体10の生地とが密着している場合には、額における汗の蒸発が充分でなくなることで体温調節をスムーズに行えなくなることがあるため熱中症を発症する可能性が高くなるが、上記構成とすることで、本発明の実施の形態に係る帽子1の着用時にはクラウン本体10と使用者の額との間に空間が存在するため、額における汗の蒸発も行われやすくなり、熱中症の発症を抑制することができる。上記と同様の理由で、クラウン本体10が有する左右方向(x方向)の最大の幅を2等分する直線Aを含む前後方向(y方向)と平行な面上において、第1の穴13が形成されることがさらに好ましい。
【0053】
図7は、使用者が本発明の実施の形態に係る帽子を着用した状態を示す断面図である。
図7では、図面に向かって手前が使用者の前側、図面に向かって奥が使用者の後側である。
【0054】
図2、
図3、
図7に示すように、クラウン本体10を左右方向に3等分したときの中央領域10bの肌側に、スペーサ部材30の少なくとも一部が配置されていることが好ましく、クラウン本体10を左右方向に3等分したときの中央領域10bの肌側に、一のスペーサ部材30全体が配置されていることがより好ましい。
【0055】
スペーサ部材30は、クラウン本体10と使用者の頭部との間に空間を形成するための部材であって、
図7のようにクラウン本体10の肌側に配置される。そのため、スペーサ部材30の形状は、クラウン本体10と使用者の頭部との間に空間を形成できる形状であればどのような形状でもよく、例えば、円柱状、四角柱状、板状、多角柱状等、種々の形状のものを使用することができる。
【0056】
図2、
図3、
図7に示すように、クラウン本体10の中央領域10bの肌側にスペーサ部材30が配置されることで、本発明の実施の形態に係る帽子1を着用した際に、スペーサ部材30が配置された周囲において、クラウン本体10と使用者の頭部との間には空間ができる。帽子1内でもより熱がこもりやすい頭頂部を含む中央領域10bにおいてスペーサ部材30が配置されることで、当該空間部分に空気が入り込みやすくなり、帽子1内の通気性を高めることができる。
【0057】
クラウン本体10を左右方向に3等分したときの左側領域10a及び中央領域10b及び右側領域10cの肌側に、スペーサ部材30が配置されていることが好ましく、
図7に示すように、スペーサ部材30が左側領域10a及び中央領域10b及び右側領域10cのそれぞれの領域の肌側において1つまたは複数個ずつ配置されていることがより好ましい。クラウン本体10の左側領域10a及び中央領域10b及び右側領域10cの肌側にスペーサ部材30が配置されることで、本発明の実施の形態に係る帽子1を着用した際に、スペーサ部材30が配置された周囲において、クラウン本体10部分と頭部との間には空間ができる。特に、スペーサ部材30同士の間に存在する空間部分には空気が入り込みやすくなるため、帽子1内の通気性を高めることができる。
【0058】
図8は、本発明の実施の形態に係る帽子に配置されるスペーサ部材の一実施形態を示す底面図である。図面に向かって奥側がクラウン本体側で、図面に向かって手前側が使用者の頭部側である。
図9は、
図8のIX−IX線における断面図である。図面に向かって下側がクラウン本体側で、図面に向かって上側が使用者の頭部側である。
【0059】
スペーサ部材30は、
図8及び
図9で示すように、クラウン本体10と垂直な方向に0.5mm以上突出している凸部31を有する部材であることが好ましい。スペーサ部材30の凸部31は、0.8mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。凸部31は大きすぎると帽子1を着用した際にごわつきが生じたり、帽子1の見た目が悪くなる可能性があるため、5mm以下であることが好ましく、4.5mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることがさらに好ましい。
【0060】
スペーサ部材30は、
図9に示すように、複数の凸部31を有することがより好ましい。このような構成とすることで、スペーサ部材30が着用者の頭部に当接したとしても、スペーサ部材30が有する凸部31同士の間では空間が形成されるため、帽子1内での通気性を高めることができる。また、帽子1と使用者の頭部とが接触する表面積が小さくなるため、帽子1やスペーサ部材30が汗で濡れることによって生じる不快感も低減することができる。
【0061】
スペーサ部材30は、クラウン本体10の肌側に複数配置されていることが好ましく、
図2で示すように、スペーサ部材30の長手方向がクラウン本体10の前後方向(y方向)と平行になるように複数配置されることがより好ましい。ここでいう前後方向(y方向)と平行とは、実質的な前後方向(y方向)と平行の±10°以内をいうものとする。このようにスペーサ部材30を配置することで、第1の穴13またはクラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に形成されている空間から入り込んだ空気が、クラウン本体10の前後方向(y方向)に流れやすくなるため、クラウン本体10内の通気性を高めることができる。
【0062】
図2及び
図7に示すように、スペーサ部材30が複数配置されており、一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間に第2の間隙32が存在することが好ましい。このように構成することでスペーサ部材30同士の間にできた空間においてクラウン本体10内の空気が移動可能になるため、クラウン本体10内の通気性を高めることができる。
【0063】
図2及び
図7に示すように、スペーサ部材30は複数配置されており、一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間には第2の間隙32が設けられ、第2の間隙32とクラウン本体10の外側とは、クラウン本体10に形成されている直径2mm以上の第2の穴33を介して互いに連通していることが好ましい。
【0064】
第2の穴33は、クラウン本体10に形成されている直径2mm以上の穴で、第2の間隙32とクラウン本体10の外側とは、第2の穴33を介して連通する。第2の穴33の形状は特に限定されず、多角形、四角形、円形、長円形、楕円形、星形等、種々の形状から適宜選択すればよい。なお、第2の穴33が円形でない場合には、第2の穴33の外接円と内接円の直径の平均値を第2の穴33の直径とする。
【0065】
第2の穴33の直径は、例えば、2mm以上、2.1mm以上、2.2mm以上、60mm以下、50mm以下、45mm以下等にすることができる。
【0066】
第2の間隙32とクラウン本体10の外側とを連通させる第2の穴33は、1つのみ形成されていてもよいし、複数個形成されていてもよい。また、第2の間隙32とクラウン本体10の外側とを連通させる、直径が2mmよりも小さい穴が、さらに形成されているものであってもよい。
【0067】
第2の穴33は、例えば、穴開けパンチ、穴開けポンチ、レーザー加工など、種々の方法によって形成すればよい。
【0068】
図2及び
図7に示す、一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間の存在する第2の間隙32について、クラウン本体10の左右方向(x方向)における第2の間隙32の長さが長すぎると、使用者の頭部が第2の穴33または一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間に存在するクラウン本体10部分に接近しすぎたり、使用者の頭部が第2の穴33または一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間に存在するクラウン本体10部分と接触しやすくなる。そうすると、クラウン本体10と一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30と使用者の頭部との間の空間が小さくなったり、第2の穴33が塞がれやすくなることで、帽子1の通気性を確保しにくくなる可能性がある。クラウン本体10と一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30と使用者の頭部との間に空間を形成しやすくするため、クラウン本体10の左右方向(x方向)における第2の間隙32の長さは、クラウン本体10の周方向における第1の間隙12の長さよりも短いことが好ましい。ここでいう一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30の左右方向(x方向)における長さは、一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間のクラウン本体10の左右方向(x方向)における長さのうち、最も長い長さをいう(以下、「有効長さ」と記載する)。
【0069】
第2の間隙32の有効長さは、使用者の年齢、性別、頭部の大きさなどに合わせて適宜設定すればよいが、例えば、2.0cm以上、2.5cm以上、3.0cm以上、13cm以下、12.5cm以下、12cm以下等にすることができる。
【0070】
スペーサ部材30の厚みが薄すぎる場合は、使用者の頭部が第2の穴33または一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間に存在するクラウン本体10部分に接近しすぎたり、使用者の頭部が第2の穴33の縁または一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30との間に存在するクラウン本体10部分と接触しやすくなる。そうすると、クラウン本体10と一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30と使用者の頭部との間の空間が小さくなったり、第2の穴33が塞がれやすくなることで、帽子1の通気性を確保しにくくなる可能性がある。クラウン本体10と一のスペーサ部材30と他のスペーサ部材30と使用者の頭部との間に空間を形成しやすくするため、スペーサ部材30の厚みは、クラウン本体10の厚みよりも厚いことが好ましい。スペーサ部材30の厚みとクラウン本体10の厚みは、それぞれの部材が有する厚みのうち最も薄い部分の厚み同士を比較するものとする。
【0071】
スペーサ部材30の厚みは、具体的には、0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。また、スペーサ部材30の厚みが厚すぎる場合は、着用時にごわつきが生じたり、帽子1の見た目が悪くなったりする可能性があるため、弾性部材11の厚みは、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
【0072】
スペーサ部材30を構成する生地は、不織布、編布、織布などから適宜選択すればよいが、本発明の実施の形態に係る帽子1は、歩行やランニング、マラソン、競歩、その他スポーツなどを行う際にかぶることが想定されているため、通気性を高めるとともに、人頭へのフィット性を高めるために、編布で構成された部分を含むことが好ましい。
【0073】
スペーサ部材30を構成する生地の素材については特に限定されず、例えばポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、綿、絹、麻等から適宜選択して用いればよい。スペーサ部材30は、一種類の素材で構成されていてもよいし、複数の素材から構成されていてもよい。
【0074】
スペーサ部材30は、
図8、
図9に示すように、第1の生地30aと第2の生地30bで構成されていてもよい。第1の生地30aと第2の生地30bは、縫い付け、接着剤による接着など、種々の方法で接合されていればよい。その他の方法として、例えば、第1の生地30aを構成する糸の一部が第2の生地30bに編み込まれることで接合されていてもよいし、第1の生地30aを構成する糸の一部が第2の生地30bに織り込まれることで接合されていてもよい。第2の生地30bを構成する糸の一部が第1の生地30aに編み込まれることで接合されていてもよいし、第2の生地30bを構成する糸の一部が第1の生地30aに織り込まれることで接合されていてもよい。
【0075】
第1の生地30aは、不織布、編布、織布などから適宜選択すればよいが、本発明の実施の形態に係る帽子1のクラウン本体10に取付けられる部分であり、当該部分で伸びやよれが生じるとスペーサ部材30の凸部31は形状を維持できなくなる可能性があるため、伸長しにくい織布で構成される部分を含むことが好ましく、全体が織布で構成されていることがより好ましい。当該第1の生地30aにほどよく伸縮性を持たせて、着用時のフィット感を高めるため、第1の生地30aを構成する織布の縦糸として、スパンデックスが使用されていることが好ましい。
【0076】
第2の生地30bは、不織布、編布、織布などから適宜選択すればよいが、本発明の実施の形態に係る帽子1の第2の生地30bは、使用者の頭部と接する部分であるため、通気性を高めるとともに、人頭へのフィット性を高めるために、編布で構成された部分を含むことが好ましく、全体が編布で構成されていることがより好ましい。
【0077】
第2の生地30bのJIS L 1096 A法によって測定される伸長回復率は、第1の生地30aの伸長回復率よりも高いものであることが好ましい。当該構成とすることで、使用者の頭部側のクッション性が高まるため、頭部へのフィット感を高めることができる。
【0078】
フラジール形法(JIS L 1096 A法)によって測定される第2の生地30bの通気度は、第1の生地30aの生地の通気度よりも高いものであることが好ましい。当該構成とすることで、使用者の頭部側における通気性を高めることができ、使用者は本発明の実施の形態に係る帽子1を快適に着用することができる。
【0079】
図9に示すように、スペーサ部材30における凸部31は、第2の生地30bの一部を折り返すことで形成されるループ構造34で構成されることがより好ましい。上記構成とすることで、ループ構造34の内側にも空間が形成されるため、当該部分に空気の通り道ができ、通気性を高めることができる。
【0080】
スペーサ部材30が第1の生地30aと第2の生地30bから構成されている場合は、第1の生地30aは、ポリエステルを含んでいることが好ましく、第2の生地30bは、ポリエステルとポリウレタンを含んでいることが好ましい。第2の生地30bに関しては、ポリエステル70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることさらに好ましく、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、97%以下であることがさらに好ましい。
【0081】
上記のように、帽子1内でもより熱がこもりやすい頭頂部を含む中央領域10bにおいてスペーサ部材30が複数配置されることで、本発明の実施の形態に係る帽子1を着用した際には、当該部分に空間を設けることができる。また、第2の間隙32とクラウン本体の外側とが、クラウン本体10に形成されている直径2mm以上の第2の穴を介して互いに連通していることで、当該部分での空気の出入りが行われやすくなる。これにより、帽子1内における蒸れを抑制することができる。
【0082】
スペーサ部材30は、縫い付け、接着剤による接着など、種々の方法でクラウン本体10の肌側に接合されていればよい。また、スペーサ部材30の伸びや劣化を抑制するため、スペーサ部材30とクラウン本体10との間に伸び止めテープや接着芯等が配置されていることが好ましい。
【0083】
本発明の実施の形態に係る帽子1は、歩行、ランニング、マラソン、競歩、その他のスポーツをする際に好適に用いることができる。なかでも、ランニングをする際に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0084】
図2で示すような形態の帽子1であって、クラウン本体10と、左側弾性部材11aと、右側弾性部材11bと、第1の間隙12と、第1の穴13と、複数のスペーサ部材30と、第2の間隙32と、第2の穴33と、つば部20と、を有する帽子を作製した。各部材、間隙の長さ等は、下記表1に記載の通りである。スペーサ部材30としては、
図8及び
図9に示されているように、第1の生地30a及び第2の生地30bを有し、ループ構造34を有するものを使用した。スペーサ部材30の第1の生地30a及び第2の生地30bの構成は、下記表2の通りである。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
以上の通り、本発明の帽子は、左側弾性部材11aと右側弾性部材11bとの間に第1の間隙12が存在することで、本発明の帽子1を使用者が着用した際には、クラウン本体10と左側弾性部材11aと右側弾性部材11bと使用者の頭部との間に弾性部材11が有する厚み分の空間が形成され、当該部分からクラウン本体10内に空気が入りやすくなるものである。さらに、第1の間隙12とクラウン本体10の外側とが、クラウン本体10に形成されている直径5mm以上の第1の穴13を介して互いに連通している構成も有していることで、当該穴からもクラウン本体10内に空気が入りやすく、通気性に優れるものである。