(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の作業機械の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、作業機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の作業機械の第1の実施の形態としての油圧ショベルの構成について
図1を用いて説明する。
図1は本発明の作業機械の第1の実施の形態を適用した油圧ショベルを示す側面図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
【0012】
図1において、作業機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられた作業フロント4とで大略構成されている。
【0013】
下部走行体2は、左右にクローラ式の走行装置6(一方のみを図示)を備えている。左右の走行装置6はそれぞれ油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ6a、6bにより駆動する。
【0014】
上部旋回体3は、油圧アクチュエータとしての旋回油圧モータ(図示せず)によって下部走行体2に対して旋回する。上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に搭載された支持構造体としての旋回フレーム8と、旋回フレーム8上の左前側に設置されたキャブ9と、旋回フレーム8の後端部に設けられたカウンタウェイト10と、キャブ9とカウンタウェイト10の間に設けられた機械室11とを含んで構成されている。キャブ9には、下部走行体2や作業フロント4等を操作するための操作装置(図示せず)やオペレータが着座する運転席などが配置されている。カウンタウェイト10は、作業フロント4と重量バランスをとるためのものである。機械室11は、後述のエンジン21や油圧ポンプ22、第1発電機31及び第2発電機32、補機ユニット34(後述の
図2参照)などの各種機器を収容している。
【0015】
作業フロント4は、掘削作業等を行うための多関節型の作動装置であり、ブーム13、アーム14、作業具としてのバケット15を備えている。ブーム13の基端側は、上部旋回体3の前部に回動可能に連結されている。ブーム13の先端部には、アーム14の基端部が回動可能に連結されている。アーム14の先端部には、バケット15の基端部が回動可能に連結されている。ブーム13、アーム14、バケット15はそれぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18によって駆動される。
【0016】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態における油圧システム及び電動システムの構成について
図2を用いて説明する。
図2は本発明の作業機械の第1の実施の形態における油圧システム及び電動システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図2において、油圧ショベル1は、下部走行体2や作業フロント4(共に
図1参照)などを油圧によって駆動させる油圧システム20と、電力の供給によって各種機器を駆動する電動システム30とを備えている。
【0018】
油圧システム20は、原動機としてのエンジン21によって駆動される油圧ポンプ22と、油圧ポンプ22から吐出された圧油により駆動する油圧アクチュエータ群23と、油圧ポンプ22から油圧アクチュエータ群23に供給される圧油の流れ(方向及び流量)を制御する制御弁ユニット24とを含んで構成されている。油圧ポンプ22は、例えば、可変容量型のポンプである。油圧アクチュエータ群23は、左右の走行油圧モータ6a、6b、ブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18(共に
図1を参照)、旋回油圧モータ(図示せず)等の複数の油圧アクチュエータで構成されている。制御弁ユニット24は、油圧アクチュエータ群23の各油圧アクチュエータ6a、6b、16、17、18に対応する制御弁の集合体である。
【0019】
電動システム30は、原動機としてのエンジン21に機械的に接続された第1発電機31及び第2発電機32と、充電及び放電が可能な蓄電装置33と、電力の供給によって駆動される補機ユニット34とを備えている。第1発電機31及び第2発電機32は、電力ライン35を介して蓄電装置33及び補機ユニット34と電気的に接続されている。第1発電機31及び第2発電機32はそれぞれ、エンジン21によって駆動されることで発電動作を行うものであり、発電した電力を蓄電装置33及び補機ユニット34に供給可能である。第1発電機31及び第2発電機32は、例えば、交流電力を直流電力に変換するインバータを内蔵している。第1発電機31及び第2発電機32は、エンジン21のクランク軸に直結される構成やプーリ及びベルトを介してエンジン21に接続される構成、ギアを介してエンジン21に接続される構成などが可能である。蓄電装置33は、例えば、バッテリやキャパシタ等により構成されている。補機ユニット34は、電力ライン35を介して第1発電機31、第2発電機32、蓄電装置33に電気的に接続されており、第1発電機31及び第2発電機32から供給される電力または蓄電装置33から供給される電力によって駆動される。補機ユニット34は、例えば、電力の供給によって駆動する電動機37と、電動機37に機械的に接続され電動機37によって駆動される被駆動装置として補機38とで構成されている。補機38として、例えば、冷却ファンや冷却ポンプ、エアコンコンプレッサなどが挙げられる。
【0020】
第1発電機31、第2発電機32、畜電装置33は、コントローラ40によって制御されている。コントローラ40は、電力ライン35を介して第1発電機31及び第2発電機32と畜電装置33とに電気的に接続されており、第1発電機31及び第2発電機32から供給される電力又は蓄電装置33から供給される電力によって稼働する。コントローラ40は、オペレータの操作に応じて油圧システム20も制御する。
【0021】
本実施の形態においては、コントローラ40が第1発電機31及び第2発電機32の発電電
力の割合を制御することで、第1発電機31及び第2発電機32が発電動作を行う際のエネルギ損失の抑制を図るものである。第1発電機31及び第2発電機32に対するコントローラ40の制御の詳細は後述する。
【0022】
第1発電機31及び第2発電機32にはそれぞれ、第1発電機31の実回転数を検出する第1回転数センサ51及び第2発電機32の実回転数を検出する第2回転数センサ52が設けられている。第1回転数センサ51および第2回転数センサ52はそれぞれ、第1発電機31の実回転数の検出信号及び第2発電機32の実回転数の検出信号をコントローラ40へ出力する。
【0023】
また、第1発電機31及び第2発電機32にはそれぞれ、第1発電機31の温度を検出する第1温度センサ53及び第2発電機32の温度を検出する第2温度センサ54が設けられている。第1温度センサ53および第2温度センサ54はそれぞれ、第1発電機31の温度の検出信号及び第2発電機32の温度の検出信号をコントローラ40へ出力する。
【0024】
蓄電装置33には、蓄電装置33の実電圧を検出する電圧センサ55が設けられている。電圧センサ55は、蓄電装置33の実電圧の検出信号をコントローラ40へ出力する。
【0025】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラのハード構成及び機能構成について
図3を用いて説明する。
図3は
図2に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラの機能ブロック図である。
【0026】
図3において、コントローラ40は、目標電圧Vtが一定の条件下において、第1発電機31及び第2発電機32の発電電力を制御するものである。コントローラ40は、ハード構成として、例えば、RAMやROM等からなる記憶装置41と、CPUやMPU等からなる演算処理装置42とを備えている。記憶装置41には、第1発電機31及び第2発電機32の発電電力の制御に必要なプ
ログラムや各種情報が予め記憶されている。演算処理装置42は、記憶装置41からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで以下の機能を含む各種機能を実現する。
【0027】
コントローラ40は、演算処理装置42により実行される機能として、要求合計電流演算部44、最大許容電流演算部45、電流配分演算部46、およびトルク演算部47を備えている。
【0028】
要求合計電流演算部44は、記憶装置41に予め記憶されている目標電圧Vtおよび電圧センサ55からの検出電圧Vsに基づき、補機ユニット34の電動機37やコントローラ40などの電力により稼働する電動システム30の各機器に必要な電流を合計した要求合計電流IRtを演算するものである。要求合計電流演算部44は、演算結果の要求合計電流IRtを電流配分演算部46へ出力する。要求合計電流演算部44の演算方法の具体例は後述する。
【0029】
最大許容電流演算部45は、第1温度センサ53からの検出温度T1に基づき、第1発電機31の許容される最大電流である最大許容電流Ia1maxを演算すると共に、第2温度センサ54からの検出温度T2に基づき、第2発電機32の許容される最大電流である最大許容電流Ia2maxを演算するものである。最大許容電流演算部45は、演算結果の第1発電機31の最大許容電流Ia1max及び第2発電機32の最大許容電流Ia2maxを電流配分演算部46へ出力する。最大許容電流演算部45の演算方法の具体例は後述する。
【0030】
電流配分演算部46は、要求合計電流演算部44の演算結果である要求合計電流IRtに基づき、最大許容電流演算部45の演算結果である第1発電機31の最大許容電流Ia1maxおよび第2発電機32の最大許容電流Ia2maxの範囲内の制限において、第1発電機31の目標電流I1及び第2発電機32の目標電流I2を演算するものである。すなわち、電流配分演算部46は、目標電圧Vtが一定の条件下において、第1発電機31と第2発電機32の間の発電
電流の割合を決定している。電流配分演算部46は、演算結果の第1発電機31の目標電流I1及び第2発電機32の目標電流I2をトルク演算部47へ出力する。電流配分演算部46の演算方法の具体例は後述する。
【0031】
トルク演算部47は、電流配分演算部46の演算結果である第1発電機31の目標電流I1と電圧センサ55の検出電圧Vsと第1回転数センサ51の第1発電機31の検出回転数N1とに基づき、第1発電機31のトルク指令値τ1を演算すると共に、電流配分演算部46の演算結果である第2発電機32の目標電流I2と電圧センサ55からの検出電圧Vsと第2回転数センサ52からの第2発電機32の検出回転数N2とに基づき、第2発電機32のトルク指令値τ2を演算するものである。トルク演算部47は、演算結果の第1発電機31のトルク指令値τ1及び第2発電機32のトルク指令値τ2をそれぞれ第1発電機31及び第2発電機32へ出力する。
【0032】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態のコントローラにおける要求合計電流演算部の演算方法の一例について
図4を用いて説明する。
図4は
図3に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラにおける要求合計電流演算部の制御ブロック図である。
【0033】
図4において、コントローラ40の要求合計電流演算部44は、先ず、差分器441を用いて、記憶装置41(
図3参照)に予め記憶されている目標電圧Vtと電圧センサ55からの蓄電装置33の検出電圧Vsとの差分(電圧差)を演算する。目標電圧Vtは、例えば、蓄電装置33の過充放電の回避や蓄電装置33の特性に応じて設定されている。蓄電装置33の検出電圧Vsは、電動システム30の電圧に近似した値である。
【0034】
次に、要求合計電流演算部44は、第1テーブル442を参照することで、差分器441の演算結果の電圧差Vt−Vsから、電動システム30のシステム全体に必要な電力を合計した要求合計発電電力Ptを演算する。第1テーブル442では、予め設定されている目標電圧Vtと電動システム30の電圧に近似した蓄電装置33の検出電圧Vsとの差分(横軸)に対して目標電力(縦軸)が割り当てられている。例えば、電圧差Vt−Vsが0から所定の領域までの間は、当該電圧差の増加に伴い目標電力が比例して増加するように設定されている。一方、電圧差Vt−Vsが所定以上の領域では、目標電力が一定になるように設定されている。第1テーブル442を参照して差分器441の演算結果の電圧差Vt−Vsに対応した目標電力を求めることで、第1発電機31及び第2発電機32が要求される発電電力の合計である要求合計発電電力Ptを演算することができる。
【0035】
次いで、要求合計電流演算部44は、除算器443を用いて、要求合計発電電力Ptを電圧センサ55からの検出電圧Vsで除算することで、要求合計電流IRtを演算する。要求合計電流IRtは、第1発電機31及び第2発電機32が要求される発電電流の合計である。
【0036】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態のコントローラにおける最大許容電流演算部の演算方法の一例について
図5を用いて説明する。
図5は
図3に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラにおける最大許容電流演算部の制御ブロック図である。
【0037】
図5において、コントローラ40の最大許容電流演算部45は、先ず、第2テーブル451を参照することで、第1温度センサ53からの第1発電機31の検出温度T1に基づき第1発電機31の最大許容電力Pa1maxを演算する。加えて、第3テーブル452を参照することで、第2温度センサ54からの第2発電機32の検出温度T2に基づき第2発電機32の最大許容電力Pa2maxを演算する。第2テーブル451は、第1発電機31の温度に対する第1発電機31の最大許容出力が割り当てられている。第3テーブル452は、第2発電機32の温度に対する第2発電機32の最大許容出力が割り当てられている。
【0038】
第2テーブル451では、例えば、第1発電機31の温度が第1所定値T1a以下の低温領域において、第1発電機31の最大許容出力が最大値に設定されている。一方、第1発電機31の温度が第1所定値T1aから第2所定値T1bまでの高温領域においては、第1発電機31の温度が高くなるにつれて第1発電機31の最大許容出力が低下するように設定されている。第3テーブル452でも、例えば第2テーブル451と同様に、第2発電機32の温度が第1所定値T2a以下の低温領域において、第2発電機32の最大許容出力が最大値に設定されている。一方、第2発電機32の温度が第1所定値T2aから第2所定値T2bまでの高温領域においては、第2発電機32の温度が高くなるにつれて第2発電機32の最大許容出力が低下するように設定されている。
【0039】
第2テーブル451及び第3テーブル452の設定は、第1発電機31及び第2発電機32の温度上昇による発電機の不具合を未然に防止するための出力制限である。すなわち、第1発電機31及び第2発電機32の出力は、第1発電機31及び第2発電機32が低温の状態では最大値まで許容される一方、高温の状態では温度上昇に応じて制限されている。
【0040】
次に、最大許容電流演算部45は、第1除算器453を用いて第1発電機31の最大許容電力Pa1maxを電圧センサ55からの蓄電装置33の検出電圧Vsで除算することで、第1発電機31の最大許容電流Ia1maxを演算する。加えて、第2除算器454を用いて第2発電機32の最大許容電力Pa2maxを蓄電装置33の検出電圧Vsで除算することで、第2発電機32の最大許容電流Ia2maxを演算する。
【0041】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態のコントローラにおける電流配分演算部の演算方法の一例について
図6〜
図8を用いて説明する。
図6は
図3に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラにおける電流配分演算部の演算で用いるテーブルの一例を示す図である。
図7は
図2に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成する各発電機の発電電流に対する効率の一例を示す特性図である。
図8は
図3に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラにおける電流配分演算部の各発電機の目標電流の演算方法の一例を示すフローチャートである。
【0042】
コントローラ40の電流配分演算部46は、
図6に示す第4テーブルを参照することで、要求合計電流演算部44の演算結果である要求合計電流IRtに基づき第1発電機31の要求電流Id1及び第2発電機32の要求電流Id2を演算する。すなわち、電流配分演算部46は、目標電圧が一定の条件下において所望の要求合計発電電力Ptを得るための第1発電機31と第2発電機32の間の発電電流(要求電流Id1、Id2)の適切な割合を決定している。
図6に示す第4テーブルでは、要求合計電流IRtに対する第1発電機31の要求電流Id1及び第2発電機32の要求電流Id2が割り当てられている。
図6に示す第4テーブルは、第1発電機31及び第2発電機32の効率特性を示す
図7の特性図に基づいて設定されたものである。
【0043】
図7に示す特性図は、横軸が第1発電機31及び第2発電機32の発電電流を示しており、縦軸が第1発電機31の効率η1及び第2発電機32の効率η2を示している。第1発電機31及び第2発電機32はそれぞれ、発電電圧が所定値の条件下において、発電電流Iの大きさに応じて発電機効率η1、η2が変化する。
図7に示す特性図では、第2発電機32の発電電流の最大値I2maxが第1発電機31の発電電流の最大値I1maxよりも大きくなっている。すなわち、第2発電機32は、第1発電機31よりも出力の最大値が大きな発電機である。発電電流Iが低電流の領域において、第1発電機31の効率η1が第2発電機32の効率η2よりも高くなっている。一方、発電電流が高電流の領域において、第2発電機32の効率η2が第1発電機31の効率η1よりも高くなっている。
【0044】
そこで、
図7に示す第1発電機31及び第2発電機32の効率特性から、第1発電機31の効率η1が第2発電機32の効率η2よりも高い低電流の領域では、第1発電機31の発電電流が第2発電機32の発電電流よりも大きくなるように(第1発電機31に対する第2発電機32の発電電流の割合が小さくなるように)設定することで、第1発電機31及び第2発電機32の全体の発電機効率を高めることができる。一方、第2発電機32の効率η2が第1発電機31の効率η1よりも高くなる高電流の領域では、第2発電機32の発電電流が第1発電機31の発電電流よりも大きくなるように(第1発電機31に対する第2発電機32の発電電流の割合が大きくなるように)設定することで、第1発電機31及び第2発電機32の全体の発電機効率を高めることができる。
【0045】
具体的には、第1発電機31の要求電流Id1は、例えば
図6に示すように、要求合計電流IRtが0を含む低電流の第1領域では、要求合計電流IRtの増加につれて或る傾き(第1の傾き)で増加するように設定されている。要求合計電流IRtが第1領域よりも大きな第2領域では、要求電流Id1は、要求合計電流IRtの増加につれて第1の傾きよりも小さな傾きの第2の傾きで増加するように設定されている。要求合計電流IRtが第2領域よりも大きく最大値IRtmaxを含む第3領域では、要求電流Id1は、第1発電機31の発電電流の最大値I1maxで一定となるように設定されている。
【0046】
一方、第2発電機32の要求電流Id2は、要求合計電流IRtが0を含む前述の第1領域では、要求合計電流IRtの増加につれて第1発電機31の要求電流Id1の第1の傾きよりも小さな傾きの第3の傾きで増加するように設定されている。要求合計電流IRtが第1領域よりも大きな前述の第2領域及び第3領域では、要求電流Id2は、要求合計電流IRtの増加につれて、第3の傾きよりも大きく且つ第1発電機31の要求電流Id1の第2の傾きよりも大きな傾きの第4の傾きで増加するように設定されている。第2発電機32の要求電流Id2は、第2発電機32の効率η2が第1発電機31の効率η1よりも高くなる領域(
図7参照)において、第1発電機31の要求電流Id1よりも大きくなるように設定されている。
【0047】
このように、要求合計電流IRtに対する第1発電機31と第2発電機32の発電電流の配分(割合)を第1発電機31及び第2発電機32の効率特性に基づき設定することで、第1発電機31及び第2発電機32の全体を相対的に高効率な動作点にて駆動させることが可能となる。
【0048】
ただし、第1発電機31及び第2発電機32を制御するための最終的な目標電流は、第1発電機31及び第2発電機32の最大許容電流の範囲内に制限する必要がある。そこで、
図8に示す演算手順によって第1発電機31及び第2発電機32の目標電流を設定する。目標電流は、第1発電機31及び第2発電機32を実際に制御するための制御値である。
【0049】
電流配分演算部46は、先ず、
図6に示す第4テーブルを参照することで得られた演算結果の第1発電機31の要求電流Id1が最大許容電流演算部45の演算結果の第1発電機31の最大許容電流Ia1maxよりも小さいか否かを判定する(
図8に示すステップS10)。第1発電機31の要求電流Id1が最大許容電流Ia1maxよりも小さい場合(YESの場合)、ステップS20に進む。それ以外の場合(NOの場合)、ステップS60に進む。
【0050】
ステップS10においてYESの場合(Ia1max>Id1の場合)、電流配分演算部46は、
図6に示す第4テーブルを参照することで得られた演算結果の第2発電機32の要求電流Id2が最大許容電流演算部45の演算結果の第2発電機32の最大許容電流Ia2maxよりも小さいか否かを判定する(ステップS20)。第2発電機32の要求電流Id2が最大許容電流Ia2maxよりも小さい場合(YESの場合)、ステップS30に進む。それ以外の場合(NOの場合)、ステップS40に進む。
【0051】
ステップS20においてYESの場合(Ia2max>Id2の場合)、電流配分演算部46は、第1発電機31の目標電流I1を第1発電機31の要求電流Id1に設定すると共に、第2発電機32の目標電流I2を第2発電機32の要求電流Id2に設定する(ステップS30)。一方、ステップS20においてNOの場合(Id2≦Ia2maxの場合)、電流配分演算部46は、Ia1max>Id1+(Id2−Ia2max)が成立するか否かを判定する(ステップS40)。Ia1max>Id1+(Id2−Ia2max)の場合(YESの場合)、ステップS50に進む。それ以外の場合(NOの場合)、ステップS80に進む。
【0052】
ステップS40においてYESの場合(Ia1max>Id1+(Id2−Ia2max)の場合)、電流配分演算部46は、第1発電機31の目標電流I1をId1+(Id2−Ia2max)に設定すると共に、第2発電機32の目標電流I2を第2発電機32の最大許容電流Ia2maxに設定する(ステップS50)。一方、ステップS40においてNOの場合(Ia1max≦Id1+(Id2−Ia2max)の場合)、電流配分演算部46は、第1発電機31の目標電流I1を第1発電機31の最大許容電流Ia1maxに設定すると共に、第2発電機32の目標電流I2を第2発電機32の最大許容電流Ia2maxに設定する(ステップS80)。
【0053】
また、ステップS10においてNOの場合(Ia1max≦Id1の場合)、電流配分演算部46は、Ia2max>Id2+(Id1−Ia1max)が成立するか否かを判定する(ステップS60)。Ia2max>Id2+(Id1−Ia1max)の場合(YESの場合)、ステップS70に進む。それ以外の場合(NOの場合)、前述したステップS80に進む。
【0054】
ステップS60においてYESの場合(Ia2max>Id2+(Id1−Ia1max)の場合)、電流配分演算部46は、第1発電機31の目標電流I1を第1発電機31の最大許容電流Ia1maxに設定すると共に、第2発電機32の目標電流I2をId2+(Id1−Ia1max)に設定する(ステップS70)。
【0055】
このように、電流配分演算部46は、第1発電機31及び第2発電機32の温度に応じた最大許容電流Ia1max、Ia2maxの制限の範囲内において、第1発電機31の目標電流I1及び第2発電機32の目標電流
I2を設定する。これにより、第1発電機31及び第2発電機32の温度上昇による不具合の発生を未然に防ぎつつ、第1発電機31及び第2発電機32の全体の発電機効率が相対的に高効率となるように、目標電圧が一定の条件下において第1発電機31と第2発電機32の発電電流の配分を決定することができる。
【0056】
最後に、トルク演算部47は、
図3に示すように、電流配分演算部46からの第1発電機31の目標電流I1と電圧センサ55からの蓄電装置33の検出電圧Vsとを積算し、当該積算の結果を、第1回転数センサ51からの第1発電機31の検出回転数N1及び
図7に示す特性図における第1発電機31の目標電流I1に対する効率η1によって除算することで、第1発電機31のトルク指令値τ1を演算する。第2発電機32のトルク指令値τ2は、第1発電機31のトルク指令値τ1の演算と同様に、電流配分演算部46からの第2発電機32の目標電流I2と電圧センサ55からの蓄電装置33の検出電圧Vsとを積算し、当該積算の結果を、第2回転数センサ52からの第2発電機32の検出回転数N2及び
図7に示す特性図における第2発電機32の目標電流I2に対する効率η2によって除算することで演算する。
【0057】
トルク演算部47は、演算結果の第1発電機31のトルク指令値τ1を第1発電機31へ出力すると共に、演算結果の第2発電機32のトルク指令値τ2を第2発電機32へ出力する。これにより、第1発電機31は内蔵のインバータによってトルク指令値τ1となるように駆動されると共に、第2発電機32は内蔵のインバータによってトルク指令値τ2となるように駆動される。
【0058】
上述したように、本発明の第1の実施の形態に係る油圧ショベル1(作業機械)は、蓄電及び放電が可能な蓄電装置33と、蓄電装置33と電気的に接続され電力の供給により駆動する補機ユニット(補機装置)34と、エンジン21に機械的に接続されエンジン21によって駆動されることで発電動作を行う第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)と、第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)を制御するコントローラ40とを備えている。第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)は、蓄電装置33及び補機ユニット(補機装置)34と電気的に接続され、発電した電力を蓄電装置33及び補機ユニット(補機装置)34に対して供給可能である。コントローラ40は、第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)の各々の効率特性に基づいて第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)間の発電
電流の割合を決定し、
この決定した
発電電流の割合に
基づいて第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)
の発電電力を制御する。
【0059】
この構成よれば、第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)間の発電電
力を各発電機31、32の効率特性に基づいて配分することで、第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)の全体を相対的に高効率の動作点にて発電動作させることができる。したがって、目標電圧が一定の条件下において発電機31、32のエネルギ損失を抑制することができる。
【0060】
また、本実施の形態においては、油圧ショベル1(作業機械)が第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)の温度をそれぞれ検出する第1温度センサ53及び第2温度センサ54(複数の温度センサ)を備えている。さらに、コントローラ40は、第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)の発電
電流の割合を決定する際に、第1温度センサ53及び第2温度センサ54(複数の温度センサ)が検出した温度に基づいて、第1発電機31及び第2発電機32(複数の発電機)の各々の発電
電流の上限を制限するように構成されている。
【0061】
この構成によれば、各発電機31、32の温度に応じて各発電機31、32の発電電力(出力)を制限しているので、高温による発電機31、32の不具合を防止することができる。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の作業機械の第2の実施の形態を
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は本発明の作業機械の第2の実施の形態における油圧システム及び電動システムの構成を示すブロック図である。
図10は
図9に示す本発明の作業機械の第2の実施の形態の一部を構成するコントローラにおける発電機の力行動作の制御手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図9及び
図10において、
図1〜
図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0063】
本発明の作業機械の第2の実施の形態が第1の実施の形態に対して相違する点は、第2発電機32Aが発電動作及び力行動作の両動作が可能な発電電動機によって構成されていること、及び、第2発電機32Aの構成の変更に応じてコントローラ40Aの第1発電機31及び第2発電機32Aの制御方法を変更したことである。
【0064】
具体的には、
図9において、第2発電機32Aは、エンジン21によって駆動されることで発電動作を行うことが可能であると共に、蓄電装置33からの電力の供給によってエンジン21の回転駆動を補助する力行動作を行うことが可能な構成である。すなわち、第2発電機32Aは、蓄電装置33との間で電力の授受を行うことが可能である。一方、第1発電機31は、第1の実施の形態と同様に、エンジン21によって駆動されることで発電動作を行うことのみが可能であり、蓄電装置33からの電力の供給による力行動作が不能な構成である。
【0065】
コントローラ40Aは、蓄電装置33の充放電を制御すると共に、第2発電機32Aの動作を発電動作又は力行動作へ切り換える制御が可能となっている。コントローラ40Aは、例えば以下のように、第1発電機31及び第2発電機32Aを制御する。
【0066】
コントローラ40Aは、
図10に示すように、油圧ショベル1が第2発電機32Aの力行条件を満たしているか否かを判定する(ステップS110)。力行条件としては、例えば、
図9に示す油圧ポンプ22の負荷がエンジン21の動力よりも大きい場合やエンジン21の回転数を上昇させる場合(アイドル回転数から設定回転数に増加させる場合)などが挙げられる。ステップS110においてYESの場合、コントローラ40Aは、第1発電機31に対して発電動作を停止させる発電停止指令を出力する(ステップS120)。発電停止指令の出力は、発電動作を実行させる発電指令の停止としてもよい。次に、コントローラ40Aは、第2発電機32Aに対して力行動作を実行させる力行指令を出力する(ステップS130)。これにより、第1発電機31が発電動作を行う一方、第2発電機32Aが力行動作を行う非効率な運転状態を回避している。
【0067】
一方、ステップS110においてNOの場合、第1発電機31及び第2発電機32Aの両発電機に対して発電制御を行う(ステップS140)。コントローラ40Aの第1発電機31及び第2発電機32Aに対する発電制御は、前述した第1の実施の形態に係るコントローラ40の第1発電機31及び第2発電機32に対する発電制御と同様なものであり、その説明は省略する。
【0068】
上述した本発明の作業機械の第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、第1発電機31及び第2発電機32A(複数の発電機)間の発電電
力を各発電機31、32Aの効率特性に基づいて配分することで、第1発電機31及び第2発電機32A(複数の発電機)の全体を相対的に高効率の動作点にて発電動作させることができる。したがって、目標電圧が一定の条件下において発電機31、32Aのエネルギ損失を抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、第1発電機31及び第2発電機32A(複数の発電機)のうちの第2発電機32A(少なくとも1つ)が、蓄電装置33からの電力の供給によってエンジン21の回転駆動を補助する力行動作を行うことが可能な発電電動機で構成されている。さらに、コントローラ40Aは、発電電動機である第2発電機32Aの動作を発電動作または力行動作に切り換えることが可能に構成されている。
【0070】
この構成によれば、システムに必要な電
力を第1発電機31と第2発電機32A(複数の発電機)によって配分しているので、システムに必要な電
力を1つの発電機で発電する場合よりも、各発電機31、32の発電トルクが小さくなる。各発電機31、32の発電トルクが小さくなる分、第2発電機32Aにおける発電動作と力行動作間の切換時の入力トルクの偏差(発電動作時の入力トルクと発電動作時の入力トルクとは逆方向の力行動作時の入力トルクとの差分)が小さくなる。したがって、第2発電機32Aの発電動作と力行動作の切換時における入力トルクの偏差に起因したエンジン21の応答遅れを抑制することができる。
【0071】
また、本実施の形態においては、第1発電機31と第2発電機32A(複数の発電機)のうちの第1発電機31(少なくとも1つ)は力行動作が不能で発電動作のみが可能である。また、コントローラ40Aは、第2発電機32A(発電電動機)に対して力行動作をさせる制御を行う場合、発電動作のみが可能な第1発電機31に対して発電動作を停止させる制御を行うように構成されている。
【0072】
この構成によれば、発電動作のみが可能な第1発電機31で発電しながら第2発電機32Aの力行動作により電力を消費するというエネルギ効率の悪い運転を回避することができる。
【0073】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0074】
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態においては、本発明を油圧ショベル1に適用した例を示したが、本発明は油圧クレーンやホイールローダ等の各種の作業機械に広く適用することができる。
【0075】
また、上述した実施の形態においては、油圧ショベル1が第1発電機31及び第2発電機32、32Aの2つの発電機を備えた構成の例を示した。しかし、油圧ショベルは3つ以上の発電機を備えた構成も可能である。この構成では、コントローラは、3つ以上の複数の発電機間の発電
電流の割合を電圧一定の条件下の各発電機の効率特性に基づいて決定し、
この決定した
発電電流の割合に
基づいて複数の発電機
の発電電力を制御する。この構成により、3つ以上の複数の発電機の全体を相対的に高効率の動作点にて発電動作させることができる。したがって、目標電圧が一定の条件下において複数の発電機のエネルギ損失を抑制することができる。
【0076】
また、上述した実施の形態においては、第2発電機32、32Aが第1発電機31よりも出力の最大値が大きい構成の例を示した。しかし、第1発電機及び第2発電機は出力の最大値が同じである構成も可能である。また、第1発電機が第2発電機よりも出力の最大値が大きくなるような構成も可能である。
【0077】
また、上述した実施の形態においては、第1発電機31及び第2発電機32、32Aの発電
電流の割合を決定する際に、第1温度センサ53及び第2温度センサ54が検出した第1発電機31及び第2発電機32、32Aの温度に基づいて第1発電機31及び第2発電機32、32Aの発電
電流の上限を制限するように構成されたコントローラ40、40Aの例を示した。しかし、油圧ショベル1が第1発電機31及び第2発電機32、32Aを冷却する冷却機構を備え、当該冷却機構によって第1発電機31及び第2発電機32、32Aの温度上昇を所定値以下までに抑制することが可能である場合には、コントローラは、
図3に示す最大許容電流演算部45の演算を省略すると共に、電流配分演算部46における
図8に示すフローチャートの制御手順を省略する構成が可能である。この構成では、コントローラの電流配分演算部は、
図6に示す第4テーブルから求めた第1発電機31の要求電流Id1及び第2発電機32の要求電流Id2をそれぞれ第1発電機31の目標電流I1及び第2発電機32の目標電流I2として設定する。
【0078】
また、上述した第2の実施の形態においては、第1発電機31を発電動作のみが可能で力行動作が不能な構成とする一方、第2発電機32Aを発電動作と力行動作の両動作が可能な構成とした例を示した。しかし、第1発電機及び第2発電機を共に発電動作と力行動作の両動作が可能な構成とすることもできる。この構成では、
図10に示すフローチャートのステップS110において油圧ショベル1が力行条件を満たしている場合、コントローラが第1発電機及び第2発電機の両発電機に対して力行動作を行うように制御することが可能である。コントローラの第1発電機及び第2発電機に対する力行制御では、例えば上述の発電制御の場合と同様に、第1発電機と第2発電機間のモータ出力の割合を、第1発電機及び第2発電機の力行動作時の効率特性に基づいて第1発電機と第2発電機の全体の効率が相対的に高効率の動作点にて力行動作させるように決定することが可能である。この構成より、第1発電機と第2発電機の力行動作時の全体のエネルギ損失を抑制することができる。