特許第6982664号(P6982664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982664冬虫夏草CS−100菌株及びそれを用いて神経細胞内の異常タンパク質に関連する疾患を治療又は予防する用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982664
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】冬虫夏草CS−100菌株及びそれを用いて神経細胞内の異常タンパク質に関連する疾患を治療又は予防する用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/068 20060101AFI20211206BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20211206BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   A61K36/068ZNA
   A61P25/14
   A61P25/28
   A61P25/00
   C12N1/14 A
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-125424(P2020-125424)
(22)【出願日】2020年7月22日
(65)【公開番号】特開2021-20895(P2021-20895A)
(43)【公開日】2021年2月18日
【審査請求日】2020年9月11日
(31)【優先権主張番号】108126441
(32)【優先日】2019年7月25日
(33)【優先権主張国】TW
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC 14350
(73)【特許権者】
【識別番号】509013611
【氏名又は名称】生展生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】陳威仁
(72)【発明者】
【氏名】曾明中
(72)【発明者】
【氏名】魏▲玉▼珊
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104922164(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0028408(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0017982(KR,A)
【文献】 Chem. Commun., 2015, Vol.51, No.41, pp.8652-8655のElectronic Supporting Information,<https://www.rsc.org/suppdata/c5/cc/c5cc00513b/c5cc00513b1.pdf>
【文献】 Biol. Pharm. Bull., 2004, Vol.27, No.7, pp.1126-1129
【文献】 CNS Neurosci. Ther., 2020, Vol.26, pp.90-100, Epub. 2019.7.18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/068
C12N 1/00 − 1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.14350として2017年7月7日に寄託された、新規冬虫夏草CS−100菌株であって、
前記新規冬虫夏草CS−100菌株は、神経細胞内でのQN1タンパク質、TDP−43タンパク質、アミロイドβタンパク質、又はそれらの少なくとも任意の2つの組み合わせの蓄積を抑制する活性、並びにシナプスの成長を促進する活性を有し、
前記QN1タンパク質は、TDP−43タンパク質のQN1ペプチドである新規冬虫夏草CS−100菌株。
【請求項2】
前記新規冬虫夏草CS−100菌株のrDNA配列は、SEQ ID No.1に示す配列を含む、請求項1に記載の新規冬虫夏草CS−100菌株。
【請求項3】
冬虫夏草CS−100菌株又はその菌糸体抽出液を含む筋萎縮性側索硬化症を治療又は予防するための組成物であって、そのうち、前記冬虫夏草CS−100菌株は中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.14350として2017年7月7日に寄託されたものである、組成物。
【請求項4】
前記冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体抽出液の濃度は少なくとも1.7ppmである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
冬虫夏草CS−100菌株又はその菌糸体抽出液を含む神経細胞内でのQN1タンパク質、TDP−43タンパク質、アミロイドβタンパク質、又はそれらの少なくとも任意の2つの組み合わせの蓄積を抑制するための組成物であって、そのうち、
前記冬虫夏草CS−100菌株は、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.14350として2017年7月7日に寄託されたものであり、
前記QN1タンパク質は、TDP−43タンパク質のQN1ペプチドである、組成物。
【請求項6】
冬虫夏草CS−100菌株又はその菌糸体抽出液を含むシナプスの成長を促進するための組成物であって、そのうち、前記冬虫夏草CS−100菌株は中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.14350として2017年7月7日に寄託されたものである、組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の冬虫夏草菌株及びその用途に関し、特に冬虫夏草CS−100菌株及びそれを用いて神経細胞内の異常タンパク質に関連する疾患を治療又は予防する用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疫学的な統計研究によれば、将来的には神経変性疾患が癌に取って代わり主な死因になるとされている。神経変性疾患の大多数は発生の初期に顕著な症状がみられず、徐々に悪化する上、神経に対して引き起こす破壊の多くが不可逆的な損傷であるため、現状では臨床において神経変性疾患の治療に使用される薬品の数は少なく、治療効果も限られている。
【0003】
さらに、神経変性疾患は、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、多系統萎縮症、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病など種類が多く、各病気の発生はいずれも神経変性と関係しているものの、各病気の発病機序が異なるため、使用する薬品又は治療手段が異なる。例えばパーキンソン病患者は、脳内のアセチルコリン含有量が減少するか又はドーパミンの分泌が不足するため、アセチルコリンの阻害剤を投与することでパーキンソン病患者の症状を効果的に改善することができる。しかし、アセチルコリン含有量の低下に起因しない神経変性疾患に対してアセチルコリンの阻害剤を投与しても、治療効果は発揮されない。
【0004】
従って、現在の臨床では、特定の神経変性疾患に対する特異性を備えた有効な治療手段が極度に不足していることが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規の冬虫夏草を提供することを主な目的としており、それは冬虫夏草CS−100菌株であって、台湾・財団法人食品工業発展研究所に寄託番号BCRC930196として2018年9月21日に寄託され、さらに中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.14350として2017年7月7日に寄託されたものである。
【0006】
本発明の別の目的は、冬虫夏草CS−100菌株の用途を提供することであり、それを用いて神経細胞内にQN1タンパク質、TDP−43タンパク質などの原因タンパク質が蓄積するのを効果的且つ特異的に抑制することができ、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis)などの神経細胞内の異常タンパク質に関連する疾患を治療又は改善する効果を達成することができる。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、冬虫夏草CS−100菌株の用途を提供することであり、シナプスの再生を促進又は刺激することができ、シナプス伝達に関連する疾患を治療又は改善する効果を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は新規冬虫夏草CS−100菌株を開示するが、そのrDNA配列は、SEQ ID No.1に示す配列が含まれており、NCBIでのBLASTによる照合では、その冬虫夏草菌株と100%同じものはデータベース中に発見されなかった。
【0009】
本発明の実施例中、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株を培養した後、その菌糸体で実験を行ったところ、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体にQN1タンパク質及び/又はTDP−43タンパク質の凝集を抑制する機能が見いだされた。筋萎縮性側索硬化症などの特定の神経変性疾患はQN1タンパク質及びTDP−43タンパク質の異常と関連があるため、有効量の本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体、その抽出物又は上述の物質を含む組成物を個体に投与することで、当該個体の神経細胞内にQN1タンパク質及び/又はTDP−43タンパク質の異常又は蓄積の特徴がある場合に、QN1タンパク質及び/又はTDP−43タンパク質が神経細胞内に蓄積するのを当該組成物が効果的に抑制することができ、これにより、QN1タンパク質及び/又はTDP−43タンパク質の異常が惹起する疾患を治療又は改善する効果が達成される。
【0010】
本発明の実施例中、冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体は、濃度が少なくとも1.7ppmの菌糸体抽出液に調製される。
【0011】
本発明の別の実施例中、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体は、シナプスの成長を促進する機能を有するため、冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体又はその抽出液はシナプス成長促進剤を調製するのに用いることができる。具体的には、有効量の冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体、その抽出物又は上述の任意の物質を含む組成物を神経変性疾患罹患者に投与することで、シナプスの再生を効果的に促すことができ、シナプスの成長異常又は変性に関連する疾患を治療する効果が達成される。
【0012】
また、本発明のさらに別の実施例中、冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体は、神経細胞内のアミロイドβタンパク質の蓄積を抑制する機能を有するため、有効量の冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体、その抽出物又は上述の任意の物質を含む組成物をアミロイドβタンパク質の蓄積に関連する疾患に罹患した患者へ投与することで、神経細胞内のアミロイドβタンパク質が蓄積する徴候を改善することができ、アミロイドβタンパク質の蓄積に関連する疾患を治療する効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】冬虫夏草CS−100菌株のrDNA ITS1/ITS2配列である。
図2】様々な菌株に実施したAβ1−40抑制試験の結果である。
図3】様々な菌株の神権細胞を保護する有効濃度の測定結果である。
図4】本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体の神経細胞シナプスに対する再生機能の検出結果である。
図5A】TDP−43タンパク質をトランスフェクションした細胞を異なる濃度の本発明が開示する冬虫夏草CS−100の菌糸体液で処理した後の細胞生存率の測定結果である。
図5B】TDP−43タンパク質をトランスフェクションしていない細胞を異なる濃度の本発明が開示する冬虫夏草CS−100の菌糸体液で処理した後の細胞生存率の測定結果である。
図6A】トランスフェクションしておらず、冬虫夏草の菌糸体液を投入していないN2a細胞を分化誘導して2日間培養した後の観察結果である。
図6B】TDP−43タンパク質をトランスフェクションし、冬虫夏草の菌糸体液を投入していないN2a細胞を分化誘導して2日間培養した後の観察結果である。
図6C】TDP−43タンパク質をトランスフェクションし、本発明が開示する冬虫夏草の菌糸体液を投入したN2a細胞を分化誘導して2日間培養した後の観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株のrDNA ITS1/ITS2配列は、SEQ ID No.1及び図1に示す通りであり、NCBIでのBLASTによる照合では、冬虫夏草CS−100菌株のrDNA ITS1/ITS2配列は、従来の冬虫夏草菌株と異なる新規の菌株であり、台湾・財団法人食品工業発展研究所に寄託番号BCRC930196として2018年9月21日に寄託され、さらに中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.14350として2017年7月7日に寄託されたものである。
【0015】
冬虫夏草CS−100菌株の培養方法は以下の通りである。冬虫夏草CS−100菌株を平板培地に接種し、15〜20℃で30日間培養すると、平板培地上のコロニーの直径平均は約12〜15mmであり、乳白色又は淡黄色を呈しており、コロニーの成長は遅く、ほぼ拡大せず、気生菌糸は短く緻密であり、平板の背面は褐色を呈していた。
【0016】
本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株はQN1タンパク質、TDP−43タンパク質又はアミロイドβタンパク質の細胞内における蓄積を抑制し、シナプスの成長を促進する機能を有しており、医薬組成物、QN1タンパク質、TDP−43タンパク質又はアミロイドβタンパク質の阻害剤の有効成分として用いることができ、神経変性疾患を治療又は予防する効果を達成するのに用いられる。
【0017】
具体的には、QN1タンパク質、TDP−43タンパク質の神経細胞内における異常な蓄積は、筋萎縮性側索硬化症の徴候の一つである。
【0018】
本発明で述べる「筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis)」は、ALSとも呼ばれている。
【0019】
研究によれば、筋萎縮性側索硬化症罹患者の脳部には、大量の高度リン酸化及びユビキチン化されたTDP−43フラグメントが細胞質中に蓄積され、脳神経細胞の機能不全又は線維化、脳神経細胞死の促進、神経細胞シナプスの成長抑制などを引き起こすことが分かっている。現在の研究では、全長TDP−43は414個のアミノ酸であり、C末端はglutamine(Q)及びasparagine(N)に富み、筋萎縮性側索硬化症の発症のキータンパク質であるとされている。
【0020】
本発明の実施例では、神経芽細胞腫N2a(以下はN2a細胞と略称)にTDP−43をトランスフェクションすることにより、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株がTDP−43蓄積及びその毒性を抑制し、筋萎縮性側索硬化症を治療又は予防する効果を達成可能であることを検証した。
【0021】
以下、本発明の効果について説明するため、幾つかの実施例を図表とともに挙げてさらに説明する。
【0022】
以下の実施例中で使用したN2a細胞は、中央研究院生物医学所(台湾)から得たものである。
【実施例1】
【0023】
冬虫夏草菌糸体液の調製
【0024】
培養した冬虫夏草CS−100菌株を脱イオン水で再懸濁し(1.0g/50.0mL)、高圧による菌体破壊工程を行い、菌体の破壊後に 不溶物質を取り除いてから、孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過し、得られた濾液を乾燥して、本発明が開示する冬虫夏草菌糸体とした。さらに、冬虫夏草菌糸体を冬虫夏草菌糸体液に調製(1.0mg/mL)して、下記の実施例で使用した。
【実施例2】
【0025】
Aβ1−40抑制試験
【0026】
様々な菌株を使用し、それぞれは本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株、カワラタケ、ヒメマツタケ、ヤマブシタケであり、実施例1の方式を参考に抽出物を得てから、それぞれリン酸塩緩衝液で濃度50ppmの測定対象試料に調製した。それらの測定対象試料1mLを濃度30μMに調製したAβ1〜40ペプチドフラグメントと室温下でそれぞれ混合し、24時間共培養した。培養後に円二色性分散計でAβ1〜40が繊維状集合体を形成しているか否か判定する測定を行ったが、そのうち、基準は200nmとした。抑制率(inhibition%)の解析計算においては、全てのデータはバックグラウンド値を先に差し引くものとし、CD分散計における基準は200nmとし、且つAβ1〜40の培養前及び培養後をそれぞれ抑制100%及び0%と定義して、抑制率の計算を行った。試験結果は図2及び下記表1に示す通りである。
【0027】
表1:様々な菌株のAβ1〜40に対する抑制率
【0028】
図2及び表1の結果から、本発明が開示する冬虫夏草菌糸体が確かにアミロイドβタンパク質の集合を効果的に抑制可能であることが分かる。
【実施例3】
【0029】
QN1抑制試験
【0030】
様々な菌株を使用し、それぞれは本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株、冬虫夏草CS−300菌株、ヒメマツタケ、マイタケであり、そのうち、冬虫夏草CS−300菌株は、本案出願者が自身でスクリーニングした別の冬虫夏草である。実施例1の方式を参考に上述の菌株それぞれの抽出物を得てから、それぞれリン酸塩緩衝液で濃度50ppmに調製し、且つQN1(30μM)ペプチドフラグメントと室温下で7日間共培養を行った。培養完了後、円二色性分散計でQN1ペプチドが繊維状集合体を形成しているか否か判定する測定を行った(基準は200nmとした)。抑制率の計算においては、全てのデータはバックグラウンド値を先に差し引くものとし、CD分散計における基準は200nmとし、且つQN1ペプチドの培養前後をそれぞれ抑制100%及び0%と定義して、抑制率の計算を行った。試験結果は下記表2に示す通りである。
【0031】
表2の結果から、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体が確かにQN1タンパク質の神経細胞中における蓄積を抑制することができ、QN1タンパク質病変又は蓄積が惹起する疾患を治療又は改善する有効成分とし得ることが分かる。
【0032】
表2:様々な菌株のQN1に対する抑制率
【0033】
表1及び表2の結果を総合すると、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体又はその抽出物は、神経細胞に対して有害なタンパク質の集合を効果的に抑制することができ、抑制率は50%超に到達できることが分かる。QN1タンパク質と筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis,ALS)の発病は正の相関関係にあることが先行文献から分かるため、上述の結果は、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体が確かにQN1の抑制機能を有しており、筋萎縮性側索硬化症などのQN1集合に関連する疾患の治療又は予防に用い得ることをはっきりと示している。
【実施例4】
【0034】
有効濃度試験
【0035】
Aβ1〜40を有機溶媒で分散させた後、30μMで遠沈管に分注し、且つ凍結乾燥により有機溶媒を除去した。有機溶媒を取り除いた後、それぞれに異なる濃度の試料を加えて、超音波発振器で10分間振動させて均一に混合した。96ウェルプレート中、N2a細胞(10cell/per well)をDMEM培地(200μL)で1日培養した後、調製済みのAβ1〜40と試料抽出物の混合物20μLを加え、培養ウェル毎の総体積は200μLとした。そのうち、試料抽出物は実施例1に示す工程を参考に行ったものである。16時間培養した後、DMEM培地で洗い流して表面上のAβ1〜40と試料を除去してから、引き続き3日間培養した。3日後にDMEM培地を交換してからXTT試薬を25μL加えて、培養器中で2時間培養し、2時間後にUV/Vis分光器で解析を行った。そのうち、Aβ1〜40を添加していない細胞をコントロール群(A、生存率は100%と定義)とし、XTT試薬をバックグラウンド値(AXTT、生存率は0%と定義)として、それぞれ各試料の吸収度に対する統計解析を行った。試験結果は図3及び下記表3に示す通りである。
【0036】
【0037】
図3及び表3の結果から、本発明が開示する冬虫夏草菌糸体の濃度が少なくとも1.77ppmである場合に、50%以上の神経細胞をアミロイドβタンパク質などの毒性タンパク質の蓄積・破壊から保護することができ、神経損傷に関連する疾患を改善又は予防する効果が達成されることが分かる。
【実施例5】
【0038】
細胞毒性試験
【0039】
Aβ1〜40を有機溶媒で分散させた後、30μMで遠沈管に分注し、且つ凍結乾燥により有機溶媒を除去した。有機溶媒を取り除いた後、それぞれに異なる試料抽出物(50ppm)を加えてから、超音波発振器で混合した。96ウェルプレート中、N2a細胞(10cell/per well)をDMEM培地(200μL)で1日培養した後、調製済みのAβ1〜40と試料の混合物を加えた(20μL、各培養ウェル中の総体積は200μL、各培養ウェル中の最終濃度はAβ1〜40 3μM、試料5ppmとした)。16時間培養した後、DMEM培地で洗い流して表面上のAβ1〜40と試料を除去してから、さらに3日間培養した後にDMEM培地を交換し、XTT試薬を25μL加えて2時間培養してから、UV/Vis分光器で解析を行った。Aβ1〜40を添加していない細胞をコントロール群(A、生存率は100%と定義)とし、XTT試薬をバックグラウンド値(AXTT、生存率は0%と定義)として、それぞれ各試料の吸収度に対する統計解析を行った。試験結果は下記表4に示す通りである。
【0040】
表4:様々な菌株の細胞毒性
【実施例6】
【0041】
シナプスの成長促進試験(1)
【0042】
12ウェルの細胞培養トレイ表面をPoly−Lysineでコーティングをした後、培養液を加えて1日間培養した。1日後、N2a細胞(10cell/per well)を、表面修飾を有する12ウェルの細胞培養トレイ中に入れ、1日間培養した。1日後、測定対象試料(抽出物50ppm及びAβ1〜40 30μM)を培養液中に加えて10倍に希釈してから24時間培養した。24時間培養した後、培養液を取り除き、ビタミンA酸を含む培養液を加えてから再び24時間培養し、24時間後に固定細胞を免疫染色してから、蛍光顕微鏡で観察した。結果は図4に示す通りである。
【0043】
図4の結果から、リン酸緩衝液と共培養した神経細胞は、シナプスの平均長さは17.1±5.5μmしかないが、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体と共培養した神経細胞は、シナプスの平均長さが35.3±5μmであることが分かる。この結果により、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株の菌糸体は神経細胞シナプスの再生を促進する機能を有しており、神経変性関連疾患を効果的に治療又は改善する効果を達成し得ることが示された。
【実施例7】
【0044】
細胞生存率試験
【0045】
N2a細胞を96ウェルプレートに撒いた後、TDP−43タンパク質をN2a細胞内にトランスフェクションし、且つそれぞれに異なる濃度の冬虫夏草菌糸体液(実施例1で調製したもの)を加えた。結果は図5に示す通りである。そのうち、細胞生存率の計算方法は以下の通りである。
【0046】
細胞生存率=(Abssample−AbsDMSO)/(Absuntransfection−AbsDMSO
【0047】
AbsDMSOは、バックグラウンド値である。
【0048】
Absuntransfectionは、菌糸体液で処理していない正常細胞で測定した吸光度である。
【0049】
Abssampleは、菌糸体液で処理し、トランスフェクションを経た細胞で測定した吸光度である。
【0050】
図5Aの結果から、TDP−43タンパク質を細胞にトランスフェクションしてから1日後、細胞に対して毒性を生じ、生存率が52.5%まで低下したが、本発明が開示する冬虫夏草の菌糸体液を投与したことで細胞生存率が上昇したことが分かる。具体的には、本発明が開示する冬虫夏草の菌糸体液を投与していない細胞と比較すると、本発明が開示する冬虫夏草の菌糸体液の濃度が10、25及び50ppmまで増加すると、細胞生存率が59.0、60.4及び65.9%まで顕著に上昇し、TDP−43タンパク質の集合及び毒性を効果的に抑制することができた。また図5Bの結果から、TDP−43タンパク質をトランスフェクションしていないN2a細胞は、異なる濃度の冬虫夏草菌糸体液の添加の有無に関わらず、細胞生存率に顕著な下降はなかったことが分かる。
【0051】
このことから、本発明が開示する冬虫夏草CS−100菌株及びその菌糸体液は、神経細胞内のTDP−43タンパク質の蓄積又は集合を確かに変化又は抑制することができ、これにより、筋萎縮性側索硬化症を治療又は予防する効果を効果的に達成し得ることが分かる。
【実施例8】
【0052】
シナプスの成長促進試験(2)
【0053】
実施例1で調製した冬虫夏草の菌糸体液50ppmを取り、TDP−43タンパク質をトランスフェクションしたN2a細胞に投入し、10μMのビタミンA酸で2日間分化誘導した後、顕微鏡(20X)で観察した。また、トランスフェクションしておらず、冬虫夏草の菌糸体液を投入していないN2a細胞、及び、TDP−43タンパク質をトランスフェクションし、冬虫夏草の菌糸体液を投入していないN2a細胞を取り、それぞれ10μMのビタミンA酸で2日間分化誘導した後、顕微鏡(20X)で観察した。結果は図6に示す通りである。
【0054】
図6Aの結果から、TDP−43タンパク質をトランスフェクションしていない正常なN2a細胞を分化誘導して培養するとシナプスが形成されることが分かる。N2a細胞がTDP−43タンパク質のトランスフェクションを経た場合には、そのシナプスの成長が抑制された(図6B)。一方、図6Cに示す通り、TDP−43タンパク質をトランスフェクションしたN2a細胞に50ppmの冬虫夏草CS−100菌糸体液を加えた場合、シナプスが再生した。上述の結果により、本発明が開示する冬虫夏草CS−100又はその菌糸体液は、神経細胞シナプスの再生を刺激し得るだけでなく、原因タンパク質を伴う神経細胞に対してもそのシナプスを再生させる効果があることが示された。
【0055】
このことから、本発明が開示する冬虫夏草CS−100又はその菌糸体を筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患罹患者又は高リスク群へ投与することで、神経細胞のシナプス再生を効果的に刺激し、神経細胞の損傷及びそれに関連する症状の発生を改善又は緩和し得ることが分かる。
【受託番号】
【0056】
TW中華民国 台湾・財団法人食品工業発展研究所 2018/09/21 BCRC 930196
【0057】
CN中国大陸 中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター 2017/07/07 CGMCC No.14350
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]