(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理装置は、前記検出器が前記溶接対象に接触していると判定したとき、前記検出結果に基づいて、前記溶接対象に対する前記検出器の傾きの算出又は前記溶接対象の検査を実行する請求項1記載の処理システム。
前記処理装置は、前記検出器が前記溶接対象に接触していると判定したとき、前記第1判定で用いた前記検出結果に基づいて、前記溶接対象に対する前記検出器の傾きの算出又は前記溶接対象の検査を実行する請求項1記載の処理システム。
前記処理装置は、抽出された前記部分における前記反射波の強度を積算又は平均した第1判定値を、予め設定された第1閾値と比較することで、前記第1判定を実行する請求項1〜3のいずれか1つに記載の処理システム。
前記検出器が前記溶接対象に接触していると判定したとき、前記検出結果に基づいて、前記溶接対象に対する前記検出器の傾きの算出又は前記溶接対象の検査を実行する請求項11又は12に記載の処理方法。
前記検出器が前記溶接対象に接触していると判定されたとき、前記コンピュータに、前記検出結果に基づいて、前記溶接対象に対する前記検出器の傾きの算出又は前記溶接対象の検査を実行させる請求項14又は15に記載のプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る処理システムの構成を表すブロック図である。
図1に表したように、実施形態に係る処理システム100は、処理装置110及び記憶装置120を備える。記憶装置120は、溶接検査に関するデータを記憶する。処理装置110は、溶接検査に関するデータを処理する。
【0011】
図1に表した処理システム100は、検出器130、入力装置140、及び表示装置150をさらに備える。検出器130は、対象に向けて超音波を送信し、その反射波を検出(受信)する。検出器130は、例えばプローブを含む。以降では、検出器130による超音波の送信及び反射波の検出を、探査(プロ−ビング)という。
【0012】
処理装置110は、検出された反射波に基づいて、様々な処理を実行する。例えば、処理装置110は、表示装置150にユーザインタフェースを表示させる。ユーザは、表示装置150に表示されたユーザインタフェースを通して、処理によって得られたデータを容易に確認できる。また、ユーザは、入力装置140により、ユーザインタフェースを介して処理装置110へデータを入力できる。
【0013】
ここで、溶接検査について具体的に説明する。溶接検査では、溶接部の非破壊検査が行われる。
【0014】
図2は、非破壊検査の様子を表す模式図である。
検出器130は、溶接部を検査するための複数の検出素子を含む。検出器130は、例えば
図2に表したように、人が手で把持できる形状を有する。検出器130を把持した人は、検出器130の先端を溶接部13に接触させ、溶接部13を検査する。ここでは、人が検出器130を把持し、溶接検査を実行する例について説明する。以降では、検出器130を把持し、溶接検査を実行する人(例えば検査者)を、ユーザという。
【0015】
図3は、検出器先端の内部構造を表す模式図である。
検出器130先端の内部には、
図3に表したように、複数の検出素子132を含む素子アレイ131が設けられている。検出素子132は、例えば、トランスデューサである。素子アレイ131は、例えば、1MHz以上100MHz以下の周波数の超音波を発する。複数の検出素子132は、一方向に線状に配列されても良いし、互いに交差する二方向にマトリクス状に配列されても良い。
図3に表した例では、複数の検出素子132は、互いに直交するX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に配列されている。
【0016】
素子アレイ131は、例えば硬質伝搬部材133により被覆されている。検出器130の先端を溶接部13に接触させた際、硬質伝搬部材133は、素子アレイ131と溶接部13との間に位置する。硬質伝搬部材133は、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。溶接部13表面の形状に応じた硬質伝搬部材133を設けることで、溶接部13の内部まで超音波を伝搬させ易くなる。また、硬質伝搬部材133により、検出器130が溶接部13へ接触した際の素子アレイ131の変形、損傷などを抑制できる。硬質伝搬部材133は、溶接部13への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0017】
図2及び
図3は、溶接対象としての部材10を検査する様子を表している。部材10は、金属板11(第1部材)と金属板12(第2部材)が、溶接部13においてスポット溶接されて作製されている。
図3に表したように、溶接部13では、金属板11の一部と金属板12の一部が溶融し、混ざり合って凝固した凝固部14が形成されている。
【0018】
検査時には、対象と検出器130との間で超音波が伝搬し易くなるように、対象の表面にカプラント15が塗布される。それぞれの検出素子132は、カプラント15が塗布された部材10に向けて超音波USを送信し、部材10からの反射波RWを受信する。
【0019】
又は、カプラント15に代えて、超音波が伝搬し易い軟質の伝搬部材が検出器130の先端に設けられていても良い。この軟質伝搬部材は、硬質伝搬部材133よりも軟らかい。溶接部13に接触した際、軟質伝搬部材は、溶接部13の表面の形状に倣って変形する。軟質伝搬部材は、例えばゲル状の樹脂で構成される。
【0020】
例えば
図3に表したように、1つの検出素子132が溶接部13に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、部材10の上面又は下面などで反射される。複数の検出素子132のそれぞれは、この反射波RWを受信(検出)する。それぞれの検出素子132が順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子132で受信する。
【0021】
処理装置110は、得られた反射波の検出結果に基づいて、検出器130が溶接対象に接触しているかを判定する。また、処理装置110は、得られた反射波の検出結果に基づいて、溶接部13に対する傾きの算出、及び溶接部13の検査を実行しても良い。例えば、処理装置110は、接触の判定結果、傾きの算出結果、溶接部13の検査結果などを記憶装置120に記憶する。
【0022】
ここでは、溶接部13の表面の法線方向と検出器130の方向との間の角度を傾きと言う。検出器130の方向は、例えば、検出素子132の配列方向に垂直なZ方向に対応する。検出器130が溶接部13の表面と垂直に接しているとき、傾きはゼロである。
【0023】
処理装置110は、有線通信、無線通信、又はネットワークを介して記憶装置120、検出器130、入力装置140、及び表示装置150と接続される。
【0024】
図4は、実施形態に係る処理システムを用いた検出器の接触判定の流れを表すフローチャートである。
まず、検出器130が溶接対象に接触しているか判定するための条件を設定する(ステップS1)。条件を設定した後、ユーザは、検出器130が溶接部13へ接触するように、検出器130を移動させる。検出器130の先端が溶接部13へ接触したとユーザが判断すると、ユーザは、検出器130による探査を実行する(ステップS2)。例えば、検出器130には、探査を実行するためのボタンが設けられる。ユーザは、ボタンを操作することで、検出器130による探査を実行できる。又は、表示装置150に表示されたユーザインタフェースを通して、ユーザが検出器130による探査を実行できても良い。
【0025】
探査によって反射波が検出されると、処理装置110は、検出器130が溶接対象へ接触しているか判定する第1判定を実行する(ステップS3)。処理装置110は、検出された反射波と、ステップS1で設定された条件と、に基づいて、第1判定を実行する。
【0026】
第1判定の結果、検出器130が溶接対象へ接触していないと判定されると、処理装置110は、例えばユーザへ報知する(ステップS4)。報知の方法は、任意である。検出器130がユーザに向けて音又は光を発しても良い。表示装置150の表示が変化しても良い。例えば、表示装置150にエラーメッセージが表示されても良い。検出器130が溶接対象へ接触していると判定されると、例えば、検出器130の傾きの算出又は溶接対象の検査が実行される。
【0027】
検出器130が溶接対象に接触していないと、溶接部13の状態を反映した検出結果が得られない。検出器130が接触していないときの検出結果を用いて傾きの算出又は検査が実行されると、誤った結果が出力される可能性がある。第1判定が実行されることで、検出器130が接触していないときの検出結果を用いて傾きの算出又は検査が実行されることを抑制できる。
【0028】
検出器130が溶接対象と接触しているか否かの判定は、換言すると、適切な反射波の検出結果が得られているか否かの判定である。例えば、検出器130は、溶接対象と直接的に接触しておらず、カプラントを介して接触していても良い。この場合、検出器130と溶接対象との間でカプラントを介して超音波が十分に伝搬する。このため、傾きの算出又は検査に適した検出結果が得られる。検出器130が溶接対象と直接的に接触していても、検出器130と溶接対象との間がカプラントで十分に充填されていないときは、適切な検出結果が得られない可能性がある。ここでは、反射波の検出結果に基づいて、その検出結果が傾きの算出又は検査に使用可能と判定されることを、検出器130が溶接対象と接触していると言う。
【0029】
例えば、検出器130が溶接対象と接触しているように見えても、実際には、検出器130と溶接対象との間に、ゴミや加工時の残差などの異物が存在することがある。また、溶接対象の表面に凹部又は凸部がある場合、検出器130と溶接対象との間に隙間が生じることがある。実施形態によれば、これらの場合において、カプラントを介しても検出器130と溶接対象との間で超音波が十分に伝搬しないときは、ユーザに向けた報知が実行される。これにより、目視による検出器130の接触の判定が難しいケースにおいても、検出器130が溶接対象に適切に接触しているか、ユーザが知ることができる。
【0030】
ステップS1における条件の設定及びステップS3における第1判定について、具体的に説明する。
ステップS1では、検出器130が部材に接触した状態と、検出器130が部材から離れた状態と、において探査を実行する。処理装置110は、検出器130が部材に接触しているときの反射波の検出結果(第1検出結果)と、検出器130が部材から離れているときの反射波の検出結果(第2検出結果)と、を用いて、第1閾値を設定する。
【0031】
図5は、検出器による探査の様子を表す模式図である。
検出器130から超音波USが送信されると、
図5に表したように、超音波USの一部は金属板11の上面11a又は溶接部13の上面13aで反射される。超音波USの別の一部は、部材10に入射し、金属板11の下面11b、溶接部13の下面13bなどで反射する。検出器130は、各面からの反射波の強度を検出する。
【0032】
反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子132から出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、ここで説明する各種処理を実行可能である。
【0033】
図6は、反射波の検出結果を示す画像の模式図である。
図6は、
図5に表したように、検出器130が溶接対象である部材10に接触しているときの検出結果を表す。
図6は、X−Z断面における溶接対象の状態を表している。
【0034】
図6では、反射波の強度が高い点は、白色で表されている。ここでは、模式的に、反射波の強度を二値化して表している。Z方向における位置は、超音波を発してから、反射波が受信されるまでの時間に対応する。X方向又はY方向に沿って延びる白線は、部材の面を表している。
【0035】
図6において、X方向又はY方向の中央に存在する複数の白線は、溶接部13の上面13a及び下面13bからの反射波に基づく。X方向又はY方向の端側に存在する複数の白線は、金属板11の上面11a、金属板11の下面11b、及び金属板12の下面12bからの反射波に基づく。
図6では、Z方向において3本以上の白線が存在する。これは、
図5に表したように、部材10の各部の上面と下面との間を、超音波USが多重反射していることを表している。
【0036】
例えば、白線WL1は、溶接部13の上面13aからの反射波に基づく。白線WL2は、溶接部13の下面13bからの反射波に基づく。白線WL3は、上面13aと下面13bとの間で反射した多重反射波に基づく。同様に、白線WL4は、金属板11の上面11aからの反射波に基づく。白線WL5は、金属板11の下面11bからの反射波に基づく。白線WL6は、上面11aと下面11bとの間で反射した多重反射波、及び金属板12の下面12bからの反射波に基づく。また、白線WL0は、硬質伝搬部材133の表面からの反射波に基づく。
【0037】
なお、
図5に表した部材10では、金属板11の下面11bは、金属板12の上面12aと接しており、これらの面の間には空間が存在しない。また、金属板11の厚さは、金属板12の厚さと同じである。このため、
図6に表した検出結果には、金属板12の上面12aからの反射波が含まれていない。また、上面11a、下面11b、及び下面12bからの反射波に基づく白線同士の間隔は、略同一となっている。
【0038】
条件を設定する際、処理装置110は、検出された反射波の少なくとも一部の強度を平均又は積算する。
具体的には、処理装置110は、第1検出結果に含まれる反射波の少なくとも一部の強度を平均し、第1参照値を算出する。処理装置110は、第2検出結果に含まれる反射波の少なくとも一部の強度を平均し、第2参照値を算出する。又は、処理装置110は、第1検出結果に含まれる反射波の少なくとも一部の強度を積算し、第1参照値を算出しても良い。処理装置110は、第2検出結果に含まれる反射波の少なくとも一部の強度を積算し、第2参照値を算出しても良い。強度を平均又は積算する際、処理装置110は、反射波の強度を絶対値に変換しても良い。又は、処理装置110は、各強度の符号が同じになるように、各強度に所定の処理を加えても良い。処理装置110は、第1参照値と第2参照値との間の値を第1閾値として設定する。
【0039】
検出器130が対象から離れているとき、検出器130が対象に接触しているときに比べて、反射波は弱くなる。例えば、反射波が強いほど強度を示す正の値が大きくなる場合、第2参照値は、第1参照値よりも小さい。例えば、処理装置110は、第1参照値と第2参照値の中間値を、第1閾値として設定する。処理装置110は、第1参照値又は第2参照値に対して、第1参照値と第2参照値との差に応じた値を加算又は減算することで、第1閾値を設定しても良い。
【0040】
ステップS1で条件(第1閾値)が設定されると、処理装置110は、条件を記憶装置120に記憶する。ステップS3では、処理装置110は、その条件を用いて第1判定を実行する。具体的には、処理装置110は、ステップS2の探査によって検出された反射波の少なくとも一部の強度を用いて、第1判定値を算出する。第1判定値を算出する際、第1参照値及び第2参照値を算出したときと同じ演算が用いられる。すなわち、強度を平均して第1参照値及び第2参照値を算出する場合は、同様に、強度を平均して第1判定値を算出する。強度を積算して第1参照値及び第2参照値を算出する場合は、強度を積算して第1判定値を算出する。
【0041】
処理装置110は、第1判定値と第1閾値を比較する。例えば、反射波が強いほど強度を示す正の値が大きくなる場合、処理装置110は、第1判定値が第1閾値を超えているか判定する。第1判定値が第1閾値を超えているとき、処理装置110は、検出器130が溶接対象に接触していると判定する。第1判定値が第1閾値以下のとき、処理装置110は、検出器130が溶接対象から離れていると判定する。
【0042】
第1判定値の算出には、検出された全ての反射波の強度が用いられても良いし、検出された一部の反射波の強度が用いられても良い。計算量を低減し、判定に要する時間を短縮するためには、一部の反射波の強度のみを用いて第1判定値を算出することが好ましい。一部の反射波の強度のみを用いて第1判定値を算出する場合、第1参照値及び第2参照値も、同様に、第1検出結果及び第2検出結果に含まれる一部の反射波の強度を用いてそれぞれ算出される。
【0043】
図7は、反射波の強度分布を例示するグラフである。
図7において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図7は、1つのX−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を表している。また、
図7では、反射波強度を絶対値に変換した結果を表している。
【0044】
図7に表した強度分布には、複数のピークが表れている。ピークPe0は、硬質伝搬部材133とカプラント15との界面からの反射波に基づく。ピークPe1は、溶接部13の上面13aからの反射波に基づく。ピークPe2は、溶接部13の下面13bからの反射波に基づく。ピークPe3及びそれ以降の周期的な複数のピークは、上面13aと下面13bとの間の多重反射波に基づく。
図6に表した白線WL0〜WL3は、それぞれ、ピークPe0〜Pe3に対応する。また、ピークPe0〜Pe3よりも強度が小さい複数のピークは、溶接部13以外の金属板11及び12の各上面及び各下面からの反射波及び多重反射波に基づく。
【0045】
ピークPe0は、硬質伝搬部材133とカプラント15との界面からの反射波に基づく。このため、ピークPe0は、検出器130の対象への接触に拘わらず検出される。また、ピークPe0の位置は、検出器130の対象への接触に拘わらず、一定である。ピークPe0以外の強度は、検出器130が溶接対象へ接触しているか否かに応じて変化する。従って、反射波の強度を平均又は積算するとき、ピークPe0よりも後に検出された反射波の強度を用いることが好ましい。
【0046】
特に、溶接部13の検査では、超音波が、溶接部13の下面13bで反射され、且つ上面13aと下面13bとの間で多重反射される。これらの反射波の強度は、検出器130が溶接対象へ接触しているか否かに応じて大きく変化する。処理装置110は、
図7に表したように、溶接部13の下面13bからの反射波が検出される部分P1における強度と、上面13aと下面13bとの間での多重反射波が検出される部分P2における強度と、の少なくともいずれかの強度を、第1判定値の算出に用いる。これにより、第1判定において、検出器130の溶接対象への接触をより精度良く判定できる。
【0047】
部分P1及び部分P2の範囲は、予め設定されても良い。ピークPe0以外のピークの周期は、溶接部13の厚みに依存する。溶接部13の厚みが既知のとき、その厚みに基づいて、部分P1及び部分P2の範囲を設定できる。部分P2は、ピークPe3以降の全てのピークを含むように設定されても良いし、
図7に表したように、ピークPe3以降の一部のピークのみを含むように設定されても良い。
【0048】
例えば、処理装置110は、第1検出結果から、多重反射波が検出される第1部分を抽出し、その第1部分における反射波の強度を平均又は積算して第1参照値を算出する。処理装置110は、第2検出結果から、多重反射波が検出される第2部分を抽出し、その第2部分における反射波の強度を平均又は積算して第2参照値を算出する。
【0049】
また、
図6及び
図7では、1つのX−Z断面における検出結果を例示した。第1判定値は、1つのX−Z断面における強度分布に基づいて算出されても良いし、1つのX−Z断面及び1つのY−Z断面における強度分布に基づいて算出されても良い。処理装置110は、Z方向の各点においてX−Y面の少なくとも一部における強度を平均又は積算して強度分布を生成し、この強度分布に基づいて第1判定値を算出しても良い。
【0050】
例えば、溶接部13の径が既知のとき、処理装置110は、溶接部13の径に基づいて、X−Y面において第1判定値の算出に用いる範囲を設定しても良い。溶接部13の径は、金属板11と12を重ね合わせた方向に対して垂直な方向における溶接部13の長さである。X−Y面の一部の強度のみを用いることで、計算量を低減できる。
【0051】
ユーザが、表示装置150に表示されたユーザインタフェースを通して、第1判定値、第1参照値、及び第2参照値の算出に用いる検出結果の範囲を指定可能であっても良い。
【0052】
図8は、表示装置に表示されるユーザインタフェースの一例である。
例えば、処理装置110は、
図8に表したユーザインタフェース900を表示装置150に表示させる。例えば、ユーザインタフェース900には、第1画像910、第2画像920、及び第3画像930が表示される。第1画像910〜第3画像930は、各点の反射波の強度を表す。反射波の強度が高い点は、白色で表されている。ここでは、模式的に、反射波の強度を二値化して表している。
【0053】
第1画像910は、X−Y面の各点において、Z方向に反射波の強度を積算した結果を表している。第2画像920は、第1画像910のY方向の中心におけるX−Z断面における反射波の強度を表している。第3画像930は、第1画像910のX方向の中心におけるY−Z断面における反射波の強度を表している。
【0054】
例えば、ユーザは、入力装置140を用いてポインタ901を操作し、第2画像920又は第3画像930の上に枠線F1又はF2を描写できる。例えば、枠線F1及びF2の一方が設定されると、枠線F1及びF2のその一方と同じZ方向の位置に、枠線F1及びF2の他方が自動で設定される。枠線F1の大きさ、枠線F1のX方向における位置、枠線F2の大きさ、及び枠線F2のY方向における位置は、ユーザが自由に設定できる。又は、枠線F1のX方向における中心は、第2画像920のX方向における中心に固定され、枠線F2のY方向における中心は、第3画像930のY方向における中心に固定されても良い。例えば、ユーザが枠線F1及びF2の一方の大きさを変化させると、それに連動して枠線F1及びF2の他方の大きさが変化しても良い。
【0055】
例えば、ユーザは、ポインタ901を操作して、枠線F1及びF2をドラッグ&ドロップすることで、枠線F1及びF2の大きさを調整できる。枠線F1及びF2の大きさが変更されると、処理装置110は、変更後の枠線F1及びF2の位置を記憶する。処理装置110は、第1検出結果において、枠線F1及びF2に含まれる反射波の強度に基づき、第1参照値を算出する。処理装置110は、第2検出結果において、枠線F1及びF2に含まれる反射波の強度に基づき、第2参照値を算出する。処理装置110は、ステップS2の探査によって得られた検出結果において、枠線F1及びF2に含まれる反射波の強度に基づき、第1判定値を算出する。
【0056】
処理装置110は、第1参照値と第2参照値に基づいて第1範囲を設定しても良い。処理装置110は、第1範囲に加えて、第1閾値を設定しても良い。第1範囲の下限値及び上限値は、第1参照値と第2参照値との間に設定される。反射波が強いほど強度を示す正の値が大きくなる場合、第1範囲の下限値及び上限値は、第2参照値よりも大きく、第1参照値よりも小さい。例えば、処理装置110は、第1参照値と第2参照値の第1中間値を算出する。処理装置110は、第1中間値と第1参照値との中間値を、第1範囲の上限値として設定する。処理装置110は、第1中間値と第2参照値との中間値を、第1範囲の下限値として設定する。
【0057】
例えば、処理装置110は、第1中間値と第1参照値との中間値を、第1閾値として設定する。第1閾値は、第1範囲の外に設定されても良い。処理装置110は、設定した第1閾値及び第1範囲を記憶装置120に記憶する。
【0058】
第1閾値及び第1範囲が設定される場合、処理装置110は、第1判定値が第1閾値以下のときに、第1判定値が第1範囲の中にあるか判定する。処理装置110は、第1判定値が第1範囲の外(第1範囲の下限値未満)のとき、検出器130が対象から離れていると判定する。処理装置110は、第1判定値が第1範囲の下限値以上、上限値以下のとき、検出器130の状態を特定できないと判定する。
【0059】
処理装置110は、ステップS3において、検出器130が対象から離れている又は検出器130の状態を特定できないと判定したとき、ステップS4においてユーザへ報知する。
【0060】
図9は、反射波の強度分布を例示するグラフである。
図9(a)及び
図9(b)は、
図7と同様に、1つのX−Z断面における、Z方向の各点での反射波の強度を表している。処理装置110は、ステップS1において、ピークの周期又は位置に関する条件を設定しても良い。
【0061】
ステップS1では、実際に検査する対象と同じ構造の部材10を用いる。検出器130を、溶接部13に接触させ、探査を実行する。処理装置110は、検出器130が溶接部13に接触しているときに得られた検出結果から、Z方向における反射波の強度分布を生成する。処理装置110は、強度分布に存在するピークを検出する。処理装置110は、検出されたピークから、例えば
図9(a)に表したように、予め設定された閾値TH1を上回るピークPe0〜Pe4を抽出する。処理装置110は、Z方向における一番目のピークPe0を除去し、部材10からの反射波に起因するピークPe1〜Pe4のみを残す。閾値TH1は、ユーザにより予め設定されても良いし、強度分布の少なくとも一部における平均値などに基づいて設定されても良い。
【0062】
例えば、処理装置110は、
図9(a)に表したように、ピークPe1〜Pe4のそれぞれの間の周期In1〜In3の平均を算出する。処理装置110は、その平均値を基準に、ピークの周期に関する条件を設定する。又は、処理装置110は、ピークPe1〜Pe4のそれぞれの位置を基準に、ピークの位置に関する条件を設定しても良い。例えば
図9(b)に表したように、処理装置110は、ピークPe1〜Pe4に基づいて、ピークの範囲PRa1〜PRa4を設定する。例えば、範囲PRa1〜PRa4の中心の位置は、ピークPe1〜Pe4の最大強度の位置にそれぞれ対応する。ピークの範囲の大きさは、ユーザにより予め設定されても良いし、検出されたピークの半値全幅等に基づいて設定されても良い。処理装置110は、ピークの周期又は位置に関する条件を、記憶装置120に記憶する。
【0063】
処理装置110は、第1判定において、検出された反射波の強度分布から、閾値TH1以上の強度のピークを抽出する。
処理装置110は、抽出されたピークの周期が、ステップS1で設定されたピークの周期に関する条件を満たすか判定する。例えば、抽出されたピークの周期が、ステップS1で算出されたピークの周期の平均値AVGの(1−x)倍以上(1+x)倍以下のとき、処理装置110は、条件が満たされたと判定する。xは、ユーザにより予め設定される。又は、xは、ピークの周期の標準偏差等に基づいて設定されても良い。
【0064】
又は、処理装置110は、抽出されたピークの位置が、ステップS1で設定されたピークの位置に関する条件を満たすか判定する。例えば、処理装置110は、ステップS1で設定された範囲PRa1〜PRa4に、抽出されたピークがそれぞれ位置するか判定する。第1判定において、範囲PRa1〜PRa4にピークが位置するとき、処理装置110は、条件が満たされたと判定する。
【0065】
処理装置110は、ピークの周期に関する条件及びピークの位置に関する条件の両方を用いて、第1判定を実行しても良い。
【0066】
又は、処理装置110は、反射波強度のスペクトルに基づいて、検出器130の接触を判定しても良い。ステップS1では、実際に検査する対象と同じ構造の部材10を用いる。検出器130を、溶接部13に接触させ、探査を実行する。処理装置110は、検出器130が溶接部13に接触しているときに得られた検出結果から、Z方向における反射波の強度分布を生成する。処理装置110は、その強度分布をスペクトル解析し、部材の厚み(mm)の逆数と、反射波強度と、の関係を示すスペクトルを生成する。スペクトル解析には、フーリエ変換が用いられる。
【0067】
図10は、スペクトルを例示するグラフである。
図10において、横軸は、部材の厚み(mm)の逆数を表し、縦軸は、横軸の各成分に対応する反射波の強度を表す。
図5に表したように、超音波は、金属板11、金属板12、又は溶接部13において多重反射する。このため、反射波の強度は、金属板11の厚み、金属板12の厚み、及び溶接部13の厚みに応じた周期性を有する。例えば、金属板11の厚みと金属板12の厚みが同じとき、
図10に表したように、金属板11、12の厚みの逆数と、溶接部13の厚みの逆数と、において強度のピークが現れる。
【0068】
処理装置110は、ステップS1においてスペクトルを生成すると、
図10に表したように、閾値TH2以上の強度を有するピークを抽出する。処理装置110は、各ピークが現れた厚みの逆数の値V1を基準に、条件を設定する。その後、処理装置110は、第1判定においてスペクトルを生成すると、閾値TH2以上の強度を有するピークを抽出する。処理装置110は、各ピークが現れた厚みの逆数の値V2が条件を満たすか判定する。例えば、各ピークが現れた厚みの逆数の値V2が、値V1の(1−y)倍以上(1+y)倍以下のとき、処理装置110は、条件が満たされたと判定する。yは、ユーザにより予め設定される。又は、yは、周期の標準偏差等に基づいて設定されても良い。
【0069】
ピークの周期、ピークの位置、又はスペクトルにおけるピークの位置は、溶接対象に特有の値である。これらの値を第1判定の条件に用いることで、検出器130が接触しているかをより精度良く判定できる。
【0070】
処理システム100は、検出器130が溶接対象に接触していると判定されたとき、検出器130の傾きの算出又は溶接部13の検査を実行しても良い。また、処理システム100は、傾きの算出に使用する検出結果の範囲を設定しても良い。
【0071】
図11は、実施形態に係る処理システムを用いた検査の流れを表すフローチャートである。
ステップS1〜S4は、
図4に表したフローチャートと同様に実行される。ステップS3において、検出器130が溶接対象へ接触していると判定されると、処理装置110は、検出結果において、溶接部13からの反射波に対応する範囲を推定済みか判定する(ステップS5)。範囲が未だ推定されていないときは、処理装置110は、範囲を推定する(ステップS6)。
【0072】
例えば
図5、
図6、及び
図8に表したように、超音波は、溶接部13以外の面からも反射される。処理装置110は、溶接部13からの反射波に対応する範囲を推定し、この範囲に含まれる反射波に基づいて、後の傾きの算出を実行する。これにより、必要な計算量を低減できる。また、算出される傾きの精度を向上させることができる。
【0073】
処理装置110は、推定された範囲内の反射波の検出結果に基づいて、検出器130の傾きを算出する(ステップS7)。算出された傾きが許容範囲内にあるか判定される(ステップS8)。判定は、ユーザが実行しても良いし、処理装置110が実行しても良い。処理装置110が判定する場合、許容範囲は、ユーザにより予め設定されても良いし、過去の検査結果の履歴に基づいて設定されても良い。
【0074】
例えば、処理装置110は、溶接部13の検査を実行した際に、検出結果に基づいて溶接部13の径も測定する。溶接部13の径は、溶接部13の上面及び下面からの反射波が検出された部分のX方向及びY方向の長さに対応する。例えば、検出器130の傾きが大きすぎると、溶接部13の径が実際よりも小さく算出される。検出器130の傾きが小さくなるに連れて、算出される溶接部13の径が大きくなる。検出器130の傾きが十分に小さくなると、算出される溶接部13の径は、ほとんど変化しなくなる。記憶装置120には、このような過去に算出された検出器130の傾きと溶接部13の径との関係が記憶される。処理装置110は、記憶装置120に記憶されたデータを基に、検出器130の傾きの変化に対して、溶接部13の径の変化が小さくなる境界値を決定する。処理装置110は、この境界値に基づいて許容範囲の大きさを設定する。例えば、処理装置110は、境界値を許容範囲の大きさとして設定する。又は、検査の精度をより高めるために、処理装置110は、境界値に基づいて算出される、より小さな値を許容範囲として設定しても良い。
【0075】
ステップS6及びS7を実行する際、検出器130による探査が再度実行されても良い。好ましくは、ステップS6及びS7を実行する際、ステップS3における第1判定で使用された検出結果が用いられる。これにより、探査の実行回数を低減し、処理装置110及び検出器130における計算量を低減できる。
【0076】
傾きが許容範囲内に無いとき、ユーザは、検出器130の傾きを調整する(ステップS9)。処理装置110がステップS8を実行する場合、ユーザに向けて、傾きが許容範囲内に無いことが報知されても良い。ステップS9の後は、調整した後の傾きで、ステップS2が再度実行される。この結果、傾きを調整した後においても、検出器130が溶接対象に接触しているかが再度判定される。これにより、傾きの調整後において、検出器130が接触していないときの検出結果を用いて、傾きが再度算出されることを抑制できる。
【0077】
又は、傾きを調整し、ステップS2の探査を実行した後は、ステップS3を省略しても良い。傾きを調整する前のステップS3において、検出器130は溶接対象に接触していると判定されている。従って、傾きを調整した後に、検出器130が溶接対象から離れている可能性は低い。ステップS3を省略することで、処理装置110の計算量を低減できる。
【0078】
傾きが許容範囲内にあるとき、検査が実行される(ステップS10)。ユーザが傾きと許容範囲を比較する場合、ユーザは、傾きが許容範囲内にあるときに、処理装置110に検査を実行させる。処理装置110が傾きと許容範囲を比較する場合、処理装置110は、傾きが許容範囲内のときに自動的に検査を実行する。処理装置110は、表示装置150に検査の結果を出力する(ステップS11)。検査結果は、溶接されているか否かを示す情報、溶接部の径、溶接部の最小径、溶接部の最大径などを含む。
【0079】
以下で、範囲の推定、傾きの算出、及び検査について、具体的な処理の一例を説明する。
【0080】
(範囲の推定)
図12〜
図19を参照して、ステップS6について具体的に説明する。
例えば、
図6では、反射波の検出結果が2次元的に表されていた。反射波の検出結果は、3次元的に表されても良い。例えば、部材10は、複数のボクセルで表される。各ボクセルには、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれの座標が設定される。反射波の検出結果に基づき、各ボクセルには、反射波強度が紐付けられる。処理装置110は、複数のボクセルにおいて、溶接部13に対応する範囲(ボクセルのグループ)を推定する。
【0081】
設定されるボクセルの数及び各ボクセルの大きさは、自動で決定されても良いし、ユーザインタフェース900を通してユーザにより設定されても良い。
【0082】
図12(a)及び
図12(b)は、一断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示するグラフである。
図13は、Z方向における反射波の強度分布を例示するグラフである。
処理装置110は、反射波の検出結果に基づいて、Z方向における反射波の強度分布を生成する。
図12(a)及び
図12(b)は、その一例である。検出器130の接触を判定する際に強度分布を既に生成している場合は、その強度分布を用いても良い。
図12(a)及び
図12(b)において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図12(a)は、1つのX−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示している。
図12(b)は、1つのY−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示している。
図12(a)及び
図12(b)では、反射波強度を絶対値に変換した結果を表している。
【0083】
又は、処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波強度を合算し、Z方向における反射波の強度分布を生成しても良い。
図13は、その一例である。
図13において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図13では、反射波強度を絶対値に変換し、且つZ方向の各点における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じた結果を表している。
【0084】
Z方向における反射波の強度分布は、溶接部13の上面13a及び下面13bで反射した成分と、その他の部分の上面及び下面で反射した成分と、を含む。処理装置110は、フィルタリングにより、反射波の強度分布から、溶接部13の上面13a及び下面13bで反射した成分のみを抽出する。例えば、溶接部13のZ方向における厚さ(上面13aと下面13bとの間の距離)の半分の整数倍に対応する値が、予め設定される。処理装置110は、その値を参照し、その値の周期成分だけを抽出する。
【0085】
フィルタリングとしては、バンドパスフィルタ、ゼロ位相フィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、又はフィルタ後の強度に対する閾値判定などを用いることができる。
【0086】
図14は、反射波の強度分布をフィルタリングした結果を例示するグラフである。
図14において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図14に表したように、フィルタリングの結果、溶接部の上面及び下面で反射した成分のみが抽出される。
【0087】
処理装置110は、抽出結果に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定する。例えば、処理装置110は、抽出結果に含まれるピークを検出する。処理装置110は、1つ目のピークのZ方向における位置及び2つ目のピークのZ方向における位置を検出する。処理装置110は、これらの位置を基準に、例えば
図14に表した範囲Ra1を、溶接部のZ方向における範囲と推定する。
【0088】
溶接部の構造、素子アレイ131の構成などにより、溶接部の上面からの反射波強度の符号(正又は負)と、溶接部の下面からの反射波強度の符号と、が互いに反転することがある。この場合、処理装置110は、正と負の一方のピークと、正と負の他方の別のピークと、を検出しても良い。処理装置110は、これらのピークの位置を基準に、溶接部のZ方向における範囲を推定する。また、反射波強度への処理によっては、反射波強度が正の値と負の値の一方のみで表される場合がある。この場合、溶接部のZ方向における範囲は、複数のピークの位置に基づいて推定されても良いし、ピークとボトムの位置に基づいて推定されても良いし、複数のボトムの位置に基づいて推定されても良い。すなわち、処理装置110は、フィルタリングした後の反射波強度について、複数の極値の位置に基づいて溶接部のZ方向における範囲を推定する。
【0089】
X−Z断面及びY−Z断面のそれぞれにおける反射波の強度分布を生成したときは、X−Z断面における強度分布に基づくZ方向の範囲と、Y−Z断面における強度分布に基づくZ方向の範囲と、が推定される。例えば、処理装置110は、これらの複数の推定結果について、平均、加重平均、重み付き移動平均などを計算し、その計算結果を溶接部全体のZ方向における範囲と推定する。
【0090】
又は、処理装置110は、X−Z断面及びY−Z断面の一方における反射波の強度分布に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定し、その推定結果を、溶接部全体のZ方向における範囲とみなしても良い。処理装置110は、X方向の一部且つY方向の一部における反射波の強度分布に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定し、その推定結果を、溶接部全体のZ方向における範囲とみなしても良い。これらの処理によれば、反射波の強度分布の生成に必要な計算量を低減できる。
【0091】
図14の例では、範囲Ra1の下限のZ方向における位置は、1つ目のピークのZ方向における位置から、所定の値を減じた値に設定されている。範囲Ra1の上限のZ方向における位置は、2つ目のピークのZ方向における位置から、所定の値を加えた値に設定されている。こうすることで、溶接部の上面及び下面が、検出素子132の配列方向に対して傾いているときに、溶接部のX−Y面におけるいずれかの点で、2つ目のピークがZ方向の範囲から外れることを抑制できる。
【0092】
溶接部のZ方向の範囲を推定した後、処理装置110は、溶接部のX方向の範囲及びY方向の範囲を推定する。
図15及び
図17は、反射波の検出結果を例示する模式図である。
図15及び
図17において、領域Rは、素子アレイ131によって反射波の検出結果が得られた全体の領域を表す。領域Rの一断面では、溶接部の上面及び下面における反射波の成分と、その他の部分の上面及び下面における反射波の成分と、が含まれている。
【0093】
処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波の強度分布を生成する。処理装置110は、予め設定されたZ方向の範囲内において、強度分布を生成しても良い。これにより、計算量を低減できる。又は、処理装置110は、推定したZ方向の範囲内において、強度分布を生成しても良い。これにより、計算量を低減しつつ、X−Y面における反射波の強度分布を生成する際に、溶接部の下面からの反射波成分が外れることを抑制できる。
【0094】
図16(a)〜
図16(c)は、X−Y面における反射波の強度分布の一例である。
図16(a)は、Z=1の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。
図16(b)は、Z=2の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。
図16(c)は、Z=350の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。
図15、
図16(a)〜
図16(c)、及び
図17では、模式的に、反射波の強度を二値化して表している。
【0095】
処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波の強度分布の重心位置を計算する。ここでは、強度分布を示す画像の重心位置を計算することで、強度分布の重心位置を得ている。例えば
図16(a)〜
図16(c)に表したように、処理装置110は、各画像における重心位置C1〜C350を計算する。
図17において、線分Lは、Z=0〜Z=350までの全ての重心位置を繋いだ結果を表している。
【0096】
処理装置110は、Z=0〜Z=350までの重心位置を平均化する。これにより、X方向における重心の平均位置及びY方向における重心の平均位置が得られる。
図17において、平均位置APは、X方向における重心の平均位置及びY方向における重心の平均位置を表す。処理装置110は、平均位置APを中心として、X方向及びY方向のそれぞれにおいて所定の範囲を、溶接部のX方向の範囲Ra2、及び溶接部のY方向の範囲Ra3とする。
【0097】
例えば、範囲Ra2及び範囲Ra3を推定するために、検出器130(素子アレイ131)の径を示す値Vが予め設定される。処理装置110は、X方向及びY方向において、AP−V/2からAP+V/2までを、それぞれ範囲Ra2及び範囲Ra3とする。この場合、X−Y面における推定範囲は、四角形状となる。この例に限らず、X−Y面における推定範囲は、5角以上の多角形状又は円状などであっても良い。X−Y面における推定範囲の形状は、溶接部の形状に応じて適宜変更可能である。
【0098】
値Vに基づく別の値を用いて範囲Ra2及び範囲Ra3が決定されても良い。検出器130の径を示す値に代えて、溶接部の径を示す値が予め設定されても良い。溶接部の径は、検出器130の径と対応するためである。溶接部の径を示す値は、実質的に、検出器130の径を示す値とみなすことができる。
【0099】
以上の処理によって、溶接部のZ方向の範囲Ra1、X方向の範囲Ra2、及びY方向の範囲Ra3が推定される。範囲が推定された後は、推定した範囲における反射波の検出結果に基づいて、
図11に表したステップS7が実行される。
【0100】
図18は、実施形態に係る処理システムにおける範囲の推定の流れを表すフローチャートである。
処理装置110は、検出器130による反射波の検出結果に基づき、Z方向における反射波の強度分布を生成する(ステップS601)。処理装置110は、溶接部の厚さの値に基づいて強度分布をフィルタリングする(ステップS602)。これにより、溶接部13における反射波成分だけが、強度分布から抽出される。処理装置110は、抽出結果に基づき、溶接部のZ方向における範囲を推定する(ステップS603)。処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波強度の重心位置を計算する(ステップS604)。処理装置110は、計算した複数の重心位置を平均化することで、平均位置を計算する(ステップS605)。処理装置110は、平均位置と、検出器130の径と、に基づいて、X方向及びY方向におけるそれぞれの範囲を推定する(ステップS606)。
【0101】
なお、Z方向における範囲の推定は、X方向及びY方向における範囲の推定の後に実行されても良い。例えば、
図18に表したフローチャートにおいて、ステップS601〜S603は、ステップS604〜S606の後に実行されても良い。この場合、処理装置110は、推定されたX方向及びY方向の範囲内に基づいて、Z方向における反射波の強度分布を計算しても良い。これにより、計算量を低減できる。
【0102】
(傾きの算出)
図19は、反射波の検出結果を例示する画像である。
図19において、色が白いほど、その点における反射波の強度が大きいことを示している。処理装置110は、
図19に表した検出結果について、
図18に表した動作を実行する。この結果、範囲Raが推定される。
【0103】
以下では、範囲Raにおける傾きの算出方法について具体的な一例を説明する。
図20は、実施形態に係る処理システムによる処理を説明するための図である。
図21及び
図22は、実施形態に係る処理システムにより得られた画像の一例である。
【0104】
図21は、反射波の検出結果に基づいて描写される3次元のボリュームデータである。
図22(a)は、
図21に表したボリュームデータにおける溶接部13の表面を表す。
図22(b)は、
図21に表したボリュームデータにおける溶接部13近傍のY−Z断面を表す。
図22(c)は、
図21に表したボリュームデータにおける溶接部13近傍のX−Z断面を表す。
図22(b)及び
図22(c)では、上側が溶接部の表面で、下向きに深さ方向のデータが示されている。輝度が高い部分は、超音波の反射強度が大きい部分である。超音波は、溶接部13の底面、未接合の部材同士の間の面などで強く反射される。
【0105】
検出器130の傾きは、
図20に表した、溶接部13に垂直な方向13dと、検出器130の方向130aと、の間の角度に対応する。この角度は、X方向まわりの角度θxと、Y方向まわりの角度θyと、によって表される。検出器130の方向130aは、検出素子132の配列方向に対して垂直である。
【0106】
角度θxは、
図22(b)に表したように、Y−Z断面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、
図22(c)に表したように、X−Z断面での検出結果に基づいて算出される。処理装置110は、各断面ついて,3次元の輝度勾配の平均を角度θx及びθyとして算出する。処理装置110は、算出した角度θx及びθyを、検出器130の傾きとして記憶装置120に記憶する。処理装置110は、算出した傾きを表示装置150に表示させても良い。
【0107】
(検査)
図23は、実施形態に係る処理システムによる検査方法を説明するための模式図である。
図23(a)に表したように、超音波USの一部は、金属板11の上面11aまたは溶接部13の上面13aで反射される。超音波USの別の一部は、部材10に入射し、金属板11の下面11bまたは溶接部13の下面13bで反射する。
【0108】
上面11a、上面13a、下面11b、及び下面13bのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子132との間のZ方向における距離が、互いに異なる。検出素子132が、これらの面からの反射波を受信すると、反射波の強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか調べることができる。
【0109】
図23(b)及び
図23(c)は、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。
図23(b)及び
図23(c)において、縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。ここでは、反射波RWの強度を絶対値で表している。
図23(b)のグラフは、金属板11の上面11a及び下面11bからの反射波RWの検出結果を例示している。
図23(c)のグラフは、溶接部13の上面13a及び下面13bからの反射波RWの検出結果を例示している。
【0110】
図23(b)のグラフにおいて、1回目のピークPe11は、上面11aからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe12は、下面11bからの反射波RWに基づく。ピークPe11及びピークPe12が検出された時間は、それぞれ、金属板11の上面11a及び下面11bのZ方向における位置に対応する。ピークPe11が検出された時間とピークPe12が検出された時間との時間差TD1は、上面11aと下面11bとの間のZ方向における距離Di1に対応する。
【0111】
同様に、
図23(c)のグラフにおいて、1回目のピークPe13は、上面13aからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe14は、下面13bからの反射波RWに基づく。ピークPe13及びピークPe14が検出された時間は、それぞれ、溶接部13の上面13a及び下面13bのZ方向における位置に対応する。ピークPe13が検出された時間とピークPe14が検出された時間との時間差TD2は、上面13aと下面13bとの間のZ方向における距離Di2に対応する。
【0112】
処理装置110は、X−Y面内の各点において、ピーク間の時間差が、溶接部13の厚みに対応するか判定する。ピーク間の時間差が溶接部13の厚みに対応すると判定されると、その点では溶接されていると判定される。溶接されていると判定された点の集合は、溶接部13に対応する。このため、点の集合のサイズに基づいて、溶接部13の径を算出できる。例えば、処理装置110は、算出された溶接部13の径を予め設定された閾値と比較し、溶接の良否を判定する。
【0113】
また、溶接部13の上面13a及び下面13bは、金属板11の上面11aに対して傾斜していることがある。これは、溶接部13が凝固部14を含むことや、溶接の過程における形状の変形などに基づく。この場合、上面13a又は下面13bに対して平均的に垂直な方向に沿って超音波USが送信されることが望ましい。これにより、上面13a及び下面13bにおいてより強く超音波が反射され、検査の精度を向上させることができる。
【0114】
(変形例)
以上で説明した溶接部の検査は、ロボットにより自動的に実行されても良い。
図24は、実施形態の変形例に係る処理システムの構成を表す模式図である。
図25は、実施形態の変形例に係る処理システムの一部を表す斜視図である。
【0115】
図24に表した処理システム100aは、処理装置110及びロボット160を有する。ロボット160は、検出器130、撮像装置161、塗布装置162、アーム163、及び制御装置164を含む。
【0116】
撮像装置161は、溶接された部材を撮影し、画像を取得する。撮像装置161は、画像から溶接痕を抽出し、溶接部13の大凡の位置を検出する。塗布装置162は、カプラントを溶接部13の上面に塗布する。
【0117】
検出器130、撮像装置161、及び塗布装置162は、
図25に表したように、アーム163の先端に設けられている。アーム163は、例えば、複数のリンク及び複数の回転軸を含む、6自由度の垂直多関節ロボットである。アーム163は、複数のアクチュエータ(例えばモータ)を含む。複数のアクチュエータは、それぞれ複数の回転軸を動作させる。アーム163の駆動により、検出器130、撮像装置161、及び塗布装置162を変位させることができる。制御装置164は、ロボット160の各構成要素(検出器130、撮像装置161、塗布装置162、アーム163)の動作を制御する。
【0118】
図26は、実施形態の変形例に係る処理システムの動作を表すフローチャートである。
まず、処理システム100aの動作前に、検出器130の溶接対象への接触を判定するための条件を予め設定する。条件の設定方法は、上述した通りである。条件の設定後、処理装置110は、制御装置164へ、記憶装置120に記憶された溶接部13の座標を送信する。制御装置164は、アーム163を駆動させ、受信した座標に向けてアームの先端を移動させる(ステップS21)。受信した座標付近に検出器130を移動させると、撮像装置161が部材10を撮影し、取得した画像から溶接部13の詳細な位置を検出する(ステップS22)。制御装置164は、アーム163を駆動させ、塗布装置162を検出した位置近傍に移動させる(ステップS23)。塗布装置162は、カプラントを溶接部13に塗布する(ステップS24)。制御装置164は、アーム163を駆動させ、カプラントを塗布した溶接部13に検出器130の先端が接触するように、検出器130を移動させる(ステップS25)。以降は、
図11に表したフローチャートのステップS2〜S11と同様に、ステップS2〜S11が実行される。
【0119】
ステップS3における第1判定の結果、検出器130が溶接対象へ接触していないと判定されたとき、処理システム100aは、報知以外の動作を実行しても良い。例えば、処理システム100aは、ステップS22で撮影された溶接部に向けて、検出器130の先端をさらに移動させても良い。撮影時の溶接部への光の当たり形によっては、溶接部の位置を誤検出する可能性がある。検出器130の先端を移動させることで、検出器130の先端が溶接部に適切に接触する可能性がある。又は、処理システム100aは、ステップS22を再度実行しても良い。このとき、処理システム100aは、画像処理の条件、溶接部の位置検出の条件などを、直前の条件から変更しても良い。これにより、溶接部の位置がより正確に検出されうる。溶接部の位置を検出した後は、例えば、ステップS23以降が再度実行される。処理システム100aは、これらの動作に加えて、さらに報知を実行しても良い。
【0120】
変形例に係る処理システム100aにおいて、アーム163に代えて、アクチュエータを含む2自由度以上の別の可動機構が設けられても良い。検出器130は、可動機構に取り付けられる。例えば、可動機構は、6自由度のパラレルリンク機構、6自由度の水平多関節機構、及び2自由度のゴニオヘッドから選択される少なくとも1つを含む。制御装置164は、可動機構を制御し、駆動させる。可動機構が動作することで、検出器130の傾きが変化する。可動機構の自由度が6自由度未満のとき、部材10は、不図示の搬送機構によって、検出器130に接触するように搬送されることが好ましい。搬送機構の動作は、第1判定の結果に基づいて制御されても良い。
【0121】
図27は、システムのハードウェア構成を表すブロック図である。
例えば、実施形態に係る処理システム100の処理装置110は、コンピュータであり、ROM(Read Only Memory)111、RAM(Random Access Memory)112、CPU(Central Processing Unit)113、およびHDD(Hard Disk Drive)114を有する。
【0122】
ROM111は、コンピュータの動作を制御するプログラムを記憶している。ROM111には、コンピュータに上述した各処理を実現させるために必要なプログラムが記憶されている。
【0123】
RAM112は、ROM111に記憶されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。CPU113は、処理回路を含む。CPU113は、ROM111に記憶された制御プログラムを読み込み、当該制御プログラムに従ってコンピュータの動作を制御する。また、CPU113は、コンピュータの動作によって得られた様々なデータをRAM112に展開する。HDD114は、読み取りに必要なデータや、読み取りの過程で得られたデータを記憶する。HDD114は、例えば、
図1に表した記憶装置120として機能する。
【0124】
処理装置110は、HDD114に代えて、eMMC(embedded Multi Media Card)、SSD(Solid State Drive)、SSHD(Solid State Hybrid Drive)などを有していても良い。
【0125】
処理装置110のそれぞれの処理及び機能は、より多くのコンピュータの協働により実現されても良い。
【0126】
入力装置140は、マウス、キーボード、及びタッチパッドの少なくともいずれかを含む。表示装置150は、モニタ及びプロジェクタの少なくともいずれかを含む。タッチパネルのように、入力装置140及び表示装置150の両方として機能する装置が用いられても良い。
【0127】
以上では、処理システム100又は100aによってスポット溶接された溶接部13を検査する例について説明した。この例に限らず、処理システム100又は100aによって、他の方法で溶接された部材が検査されても良い。例えば、処理システム100又は100aは、アーク溶接、レーザ溶接、又はシーム溶接された部材を検査しても良い。これらの方法によって溶接された部材についても、検出器130を用いた非破壊検査が可能である。
【0128】
以上で説明した実施形態に係る処理システム、処理方法を用いることで、検出器の溶接対象への接触をより精度良く判定できる。検出器の溶接対象への接触判定を実行することで、その後に実行される傾きの算出又は検査の精度を向上させることができる。また、コンピュータを、処理システムとして動作させるためのプログラムを用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0129】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、または、他の記録媒体に記録されても良い。
【0130】
例えば、記録媒体に記録されたデータは、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0131】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。