特許第6982668号(P6982668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6982668-浄化装置 図000004
  • 特許6982668-浄化装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6982668
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】浄化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   C02F1/48 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-145813(P2020-145813)
(22)【出願日】2020年8月31日
【審査請求日】2021年5月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今岡 奏司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 幸樹
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−178875(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0105441(US,A1)
【文献】 特開2004−024990(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/170981(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/171383(WO,A1)
【文献】 特開2012−200638(JP,A)
【文献】 特開2005−203365(JP,A)
【文献】 特開2011−140018(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150534(WO,A1)
【文献】 特開2003−200164(JP,A)
【文献】 特開2001−143976(JP,A)
【文献】 特開2000−091169(JP,A)
【文献】 特表平09−509880(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/098957(WO,A1)
【文献】 特表2010−513018(JP,A)
【文献】 特開2010−206171(JP,A)
【文献】 特開2003−200168(JP,A)
【文献】 特開2015−014567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46−1/48
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
なくとも第1陽イオンおよび第2陽イオンを含む液体の通路を形成し、特定の流速で流れる前記液体を案内する流路と
記液体に含まれる第1量の前記第1陽イオンおよび第2量の前記第2陽イオンを吸着する第1長さよりも短く、前記第1量の前記第1陽イオンおよび前記第2量よりも少ない第3量の前記第2陽イオンを吸着する第2長さの接触距離で前記液体に接触する活物質を有する負極と、
前記負極から電極間距離で離れた位置に配置され前記液体に接触する正極と、
前記正極および前記負極に接続されて前記正極および前記負極の間に1.0V〜1.2Vの範囲内で一定値の電位を印加する電源と、
を備えることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浄化装置において、前記第2陽イオンはナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンであることを特徴とする浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の浄化装置において、前記第1陽イオンは、クロムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、銀イオン、インジウムイオン、スズイオン、アンチモンイオン、プラチナイオン、金イオン、鉛イオンおよびビスマスイオンの少なくともいずれかを含むことを特徴とする浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の浄化装置において、前記電源は、前記正極から前記負極に向かって直流電流を形成する第1モードと、前記負極から前記正極に向かって直流電流を形成する第2モードとで切り替えられることを特徴とする浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも陽イオンおよび陰イオンのいずれかを含む液体の通路を形成し、特定の流速で流れる液体を案内する流路と、液体に接触する接触面から、液体に含まれる陰イオンを吸着する大きさの電位を作用する活物質を有する正極と、液体に接触する接触面から、液体に含まれる陽イオンを吸着する大きさの電位を作用する活物質を有する負極と、正極および負極に接続されて正極および負極から電位を形成する電源とを備える浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はめっき処理で生じる廃水の浄化方法を開示する。廃水の浄化にあたってCDI(Capacitive Deionization)は用いられる。CDIでは正極および負極を構成する活物質(例えば活性炭)に金属イオンは吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許公報第101717136号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にめっき処理の洗浄工程では洗浄水に水道水は用いられる。水道水には、純水と違って、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびカリウムといったミネラル成分が含まれる。特許文献1では、CDIの活性炭に、洗浄液に混入するチタンや錫といっためっき金属のイオンに加えて、そもそも水道水に含まれるナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびカリウムのイオンが吸着される。チタンや錫以外の吸着に応じてチタンや錫の吸着効率は低下してしまう。活性炭の吸着力の飽和は早まってしまう。
【0005】
本発明は、選択的に対象の金属イオンを除去することで吸着力の飽和の早まりを効果的に抑制することができる浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、特定の原子番号以上の元素から形成される少なくとも第1陽イオンおよび第1陰イオンのいずれか、および、前記原子番号未満の元素から形成される少なくとも第2陽イオンおよび第2陰イオンのいずれかを含む液体の通路を形成し、特定の流速で流れる前記液体を案内する流路と、前記液体に接触する接触面から、前記液体に含まれる前記第1陰イオンを吸着し前記液体に含まれる前記第2陰イオンを通過させる大きさの電位を作用する活物質を有する正極と、前記液体に接触する接触面から、前記液体に含まれる前記第1陽イオンを吸着し前記液体に含まれる前記第2陽イオンを通過させる大きさの電位を作用する活物質を有する負極と、前記正極および前記負極に接続されて前記正極および前記負極から前記電位を形成する電源とを備える浄化装置は提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記第2陽イオンはナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンである。
【0008】
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記原子番号以上の元素は、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、プラチナ、金、鉛およびビスマスの少なくともいずれかを含む。
【0009】
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、前記電源は、前記正極から前記負極に向かって直流電流を形成する第1モードと、前記負極から前記正極に向かって直流電流を形成する第2モードとで切り替えられる。
【発明の効果】
【0010】
第1側面によれば、液体に含まれる陽イオンおよび陰イオンは、特定の原子番号以上の元素を含む第1群(第1陽イオンおよび第1陰イオン)と、特定の原子番号未満の元素を含む第2群(第2陽イオンおよび第2陰イオン)とに区分けされる。液体は流速を有することから、陽イオンおよび陰イオンは正極および負極に対して相対的に移動する。ここでは、第2陽イオンおよび第2陰イオンは第1陽イオンおよび第1陰イオンに比べて小さな移動度を有することから、正極および負極から作用する電位に応じて第2陽イオンおよび第2陰イオンは液流から離脱することはできず、第1陽イオンおよび第1陰イオンは大きな移動度の働きで液流から離脱し正極または負極に吸引されることができる。こうして第1陽イオンおよび第1陰イオンは選択的に液体から除去されることができる。第2陽イオンおよび第2陰イオンは液流中に留まることから、活物質では吸着量の飽和の早まりは効果的に抑制されることができる。
【0011】
第2側面によれば、水に一般的に含まれるナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンは液流中に留まることができる。活物質ではナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンの吸着に基づく吸着量の飽和の早まりは抑制されることができる。ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンはもともと水に含まれることから、水の再利用にあたって支障は生じずに済む。
【0012】
第3側面によれば、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、プラチナ、金、鉛およびビスマスはめっき材料として用いられることができる。めっき後の洗浄に水は用いられることができる。クロム、ニッケル、銅、銀、スズ、金、鉛およびビスマスは良好に液流から分離されることができる。クロム、ニッケル、銅、銀、スズ、金、鉛およびビスマスは正極または負極で回収されることができる。こうして洗浄水の浄化は実現されることができる。クロム、ニッケル、銅、銀、スズ、金、鉛およびビスマスは回収されて再利用されることができる。
【0013】
第4側面によれば、電源で第1モードおよび第2モードが切り替えられることで、正極の活物質に吸着された第1陰イオンや負極の活物質に吸着された第1陽イオンはそれぞれ活物質から脱離されることができる。こうして吸着された第1陰イオンや第1陽イオンは回収されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る浄化装置の構成を概略的に示す概念図である。
図2】浄化装置の電気系統の構成を概略的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る浄化装置11の構成を概略的に示す。浄化装置11は、液体の通路12を形成し、通路12内にCDI技術を実現する後述される電極ユニット13を配置する筒体14と、通路12の流入口に接続される第1導入路15と、通路12の流出口に接続される第1戻り路16とを備える。第1導入路15の流入端15aは洗浄槽17に接続される。第1戻り路16の流出端16aは洗浄槽17に接続される。第1導入路15および第1戻り路16は筒体13と洗浄槽17との間で第1循環路18を形成する。電極ユニット13は、洗浄槽17から流入する液体から特定の条件に従って陰イオンまたは陽イオンを分離する。こうして液体は浄化される。浄化された液体は洗浄槽17に戻される。筒体14は、流入口から流出口に向かって液体の通路12を形成する流路(流路体)として機能する。
【0017】
第1循環路18には例えば液ポンプ21が組み込まれる。ここでは、液ポンプ21は第1導入路15に設置される。液ポンプ21は吸込口21aから液体を吸い込み所定の圧力で吐出口21bから液体を吐出する。液ポンプ21の働きで液体は第1循環路18に沿って循環する。液ポンプ21の圧力に基づき液体の流速は設定されることができる。こうして筒体14は特定の流速で流れる液体を案内する。
【0018】
浄化装置11は、通路12の流入口に接続される第2導入路22と、通路12の流出口に接続される第2戻り路23とをさらに備える。第2導入路22の流入端22aは回収槽24に接続される。第2戻り路23の流出端23aは回収槽24に接続される。第2導入路22および第2戻り路23は筒体14と回収槽24との間で第2循環路25を形成する。
【0019】
第2循環路25には例えば液ポンプ26が組み込まれる。ここでは、液ポンプ26は第2導入路22に設置される。液ポンプ26は吸込口26aから液体を吸い込み所定の圧力で吐出口26bから液体を吐出する。液ポンプ26の働きで液体は第2循環路25に沿って循環する。液ポンプ26の圧力に基づき液体の流速は設定されることができる。こうして筒体14は特定の流速で流れる液体を案内する。
【0020】
第1導入路15には、第1導入路15内で液体の流量を制御する第1開閉弁27aが組み込まれる。第1戻り路16には、第1戻り路16内で液体の流量を制御する第2開閉弁27bが組み込まれる。同様に、第2導入路22には、第2導入路22内で液体の流量を制御する第3開閉弁27cが組み込まれる。第2戻り路23には、第2戻り路23内で液体の流量を制御する第4開閉弁27dが組み込まれる。第1〜第4開閉弁27a〜27dは例えば駆動信号(電気信号)の供給に応じて開き位置および閉じ位置で弁体を駆動する電磁弁から構成されることができる。第1開閉弁27aおよび第2開閉弁27bが開く際には第3開閉弁27cおよび第4開閉弁27dは閉じる。このとき、液ポンプ21は作動する。第1循環路18内で液体は循環する。その一方で、液ポンプ26は停止する。第2循環路25内で液体の循環は阻止される。筒体14内の電極ユニット13は洗浄槽17に湛えられる液体ISに曝される。第3開閉弁27cおよび第4開閉弁27dが開く際には第1開閉弁27aおよび第2開閉弁27bは閉じる。このとき、液ポンプ26は作動する。第2循環路25内で液体は循環する。その一方で、液ポンプ21は停止する。第1循環路18内で液体の循環は阻止される。筒体14内の電極ユニット13は回収槽24に湛えられる液体WAに曝される。
【0021】
図2に示されるように、電極ユニット13は、第1電極31と、第1電極31から決められた電極間距離DEで離れた位置に配置される第2電極32とを備える。第1電極31および第2電極32は、それぞれ、表裏に活物質33a、33bを保持する導電材シート34で形成される。活物質33a、33bは、例えば導電材シート34の表裏面に貼り付けられる活性炭シートで形成されることができる。導電材シート34にはカーボンシートが用いられることができる。裏側の活物質33bの表面は絶縁体35で覆われる。第1電極31および第2電極32が重ねられると、絶縁体35は第1電極31および第2電極32を絶縁する。絶縁体35はメッシュ構造に構成されることから、第1電極31および第2電極32の間に液体は流通することができる。第1電極31および第2電極32は幾重にも積層されることができる。
【0022】
絶縁体35は、例えば活性炭シートの表面に貼り合わせられるポリエチレンメッシュと、ポリエチレンメッシュの表面に貼り付けられるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シートとで形成されることができる。PTFEシートはメッシュ構造に構成される。ポリエチレンメッシュは、仮に活物質33bから破片が生じた際に、第1電極31および第2電極32で絶縁を確保する役割を担う。PTFEシートは、第1電極31および第2電極32の間で距離を確保しながら液体の流路を形成する役割を担う。ポリエチレンメッシュは例えば0.1[mm]の厚みを有することができる。
【0023】
第1電極31および第2電極32には、第1電極31および第2電極32に直流電力を供給する電源36が接続される。電源36の働きで第1電極31および第2電極32の間に電位は生成される。電源36は、筒体14内で第1電極31から第2電極32に向かって直流電流を形成する第1モードと、筒体14内で第2電極32から第1電極31に向かって直流電流を形成する第2モードとで切り替えられることができる。すなわち、第1モードでは第1電極31は正極として機能し第2電極32は負極として機能する。第2モードでは第1電極31は負極として機能し第2電極32は正極として機能する。電源36の第1モードでは、絶縁体35を流通する液体中の陰イオンは第1電極31の活物質33a、33bに吸着される。液体中の陽イオンは第2電極32の活物質33a、33bに吸着される。第1電極31に付着する陽イオンは第1電極31から脱離する。第2電極32に付着する陰イオンは第2電極32から脱離する。電源36の第2モードでは、絶縁体35を流通する液体中の陰イオンは第2電極32の活物質33a、33bに吸着される。液体中の陽イオンは第1電極31の活物質33a、33bに吸着される。第2電極32に付着する陽イオンは第2電極32から脱離する。第1電極31に付着する陰イオンは第1電極31から脱離する。ここでは、絶縁体35は例えば第1電極31および第2電極32の間に少なくとも10[mm]の電極間距離DEを保持する。電極間距離DEが10[mm]を超えると、液体の流通時に電気抵抗値が過度に増大してしまい、陰イオンおよび陽イオンの吸着に十分な電流が確保されることができない。
【0024】
電源36では例えば通路12を流通する液体に応じて最大電圧は設定されることができる。例えば液体に水が用いられる場合には第1モードおよび第2モードで最大電圧は2.0[V]好ましくは1.2[V]に設定される。直流電圧が1.2[V]を超えると、水が酸素および水素に電気分解し、電気分解にエネルギーが費やされるとともに、発生した気体で第1電極31および第2電極32の損傷が生じやすく、活物質33a、33bと水との接触が減少するからである。
【0025】
第1電極31は、第1モードの電源36の働きに応じて、特定の流速で流れる液体に、液体に接触する接触面から、液体に含まれて決められた原子番号以上の元素から形成される第1陰イオンを吸着し決められた原子番号未満の元素から形成される第2陰イオンを通過させる大きさの電位を作用する。第2電極32は、第1モードの電源36の働きに応じて、特定の流速で流れる液体に、液体に接触する接触面から、液体に含まれて決められた原子番号以上の元素から形成される第1陽イオンを吸着し決められた原子番号未満の元素から形成される第2陽イオンを通過させる大きさの電位を作用する。電源36では、液体の流速と、第1電極31および第2電極32の電極間距離DEと、液体の流れ方向に沿った液体および接触面の接触距離CDとに基づき電位の大きさ(または電流の大きさ)は設定されることができる。接触面の接触距離CDは、液体の流れ方向に平行であって第1電極31から第2電極32へ作用する電位の向きに直交するベクトルに平行に測定されることができる。ただし、こうして電位が設定されても、液体から全量の第1陽イオンおよび第1陰イオンが活物質33a、33bに吸着されるわけではなく全量の第2陽イオンおよび第2陰イオンが通過するわけではない。
【0026】
電源36および第1〜第4開閉弁27a〜27dには制御装置37が接続される。制御装置37は電源36に向けて第1モードおよび第2モードを切り替えるスイッチング信号を供給する。制御装置37は第1〜第4開閉弁27a〜27dのそれぞれに向けて開閉を切り替える駆動信号を供給する。電源36で第1モードが設定されると、第1開閉弁27aおよび第2開閉弁27bには開き位置の弁体を特定する駆動信号が供給され、第3開閉弁27cおよび第4開閉弁27dには閉じ位置の弁体を特定する駆動信号が供給される。こうして電源36の第1モードでは第1循環路18内で液体の循環は確立され第2循環路25内で液体の循環は阻止される。電源36で第2モードが設定されると、第1開閉弁27aおよび第2開閉弁27bには閉じ位置の弁体を特定する駆動信号が供給され、第3開閉弁27cおよび第4開閉弁27dには開き位置の弁体を特定する駆動信号が供給される。こうして電源36の第2モードでは第2循環路25内で液体の循環は確立され第1循環路18内で液体の循環は阻止される。第1モードおよび第2モードの切り替えには例えば時間が用いられることができる。その他、第1モードおよび第2モードの切り替えは電流値や電圧値、抵抗値、TDS(総溶解固形分)に基づき管理されることができる。
【0027】
次に浄化装置11の動作を説明する。ここでは、浄化装置11はめっき処理の洗浄工程で利用される。洗浄工程に先立って対象物に金属めっきを施すめっき工程が実施される。めっき工程ではめっき槽に湛えられる電解液に対象物が浸漬される。電解液は、溶解するビスマスおよびメタンスルホン酸を含む水溶液で構成される。通電に応じて対象物の表面にはビスマスのめっき膜が成膜される。成膜後、対象物はめっき槽から取り出される。
【0028】
洗浄工程では、取り出された対象物は洗浄槽17で液体ISに沈められる。ここでは、液体ISには水(例えば日本の水道水や地下水)が用いられる。水には、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンが含まれる。水ではナトリウムイオンに比べてカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンの含有量は小さい。液体ISにはビスマスイオンやメタンスルホン酸が溶け込む。したがって、液体ISは、原子番号「21」以上の元素であるビスマスから形成される第1陽イオン、および、原子番号「21」未満の元素であるナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびカリウムから形成される第2陽イオンを含む。液体ISに含まれる陽イオンは、原子番号「21」以上の元素を含む第1群と、原子番号「21」未満の元素を含む第2群とに区分けされる。ここでは、区分けに用いられる原子番号は21以上82以下のいずれか1に設定されればよい。
【0029】
浄化装置11の電源36では第1モードが設定される。第1モードの設定に応じて、第1および第2開閉弁27a、27bは開き第3および第4開閉弁27c、27dは閉じる。液ポンプ21の働きに応じて洗浄槽17の液体ISは第1循環路18を循環する。液体ISは筒体14内で通路12を通過する。通路12では流入口から流出口に向かって特定の流速が確立される。液体IS内のビスマスイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンは第1電極31(正極)および第2電極32(負極)に対して相対的に移動する。ここでは、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンはビスマスイオンに比べて小さな移動度を有することから、負極から作用する電位に応じて部分的にナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンは液流から離脱することはできず、ビスマスイオンは大きな移動度の働きで液流から離脱し負極の活物質33a、33bに吸引されることができる。ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンは液流中に留まることから、活物質33a、33bでは吸着量の飽和の早まりは効果的に抑制されることができる。
【0030】
本実施形態では、水に一般的に含まれるナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンは液流中に留まることができる。活物質33a、33bではナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンの吸着に基づく吸着量の飽和の早まりは抑制されることができる。ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンはもともと水に含まれることから、水の再利用にあたって支障は生じずに済む。
【0031】
洗浄槽17で対象物の洗浄が終了すると、対象物は洗浄槽17から取り出される。その後、電源36は第1モードから第2モードに切り換えられる。回収槽24の液体WAには例えば純水が用いられる。純水には、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンは含まれない。第2モードの設定に応じて、第1および第2開閉弁27a、27bは閉じ第3および第4開閉弁27c、27dは開く。液ポンプ26の働きに応じて回収槽24の液体WAは第2循環路25を循環する。通路12では流入口から流出口に向かって特定の流速が確立される。第2電極32から第1電極31に向かって形成される直流電流の働きで第2電極32の活物質33a、33bに吸着されたビスマスイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンは活物質33a、33bから脱離されることができる。こうして吸着されたビスマスイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびカリウムイオンは回収されることができる。
【0032】
本実施形態に係るめっき処理ではビスマスがめっき材料として用いられる。めっき後の洗浄に水は用いられる。電源36の第2モードでビスマスは良好に液流から分離されることができる。ビスマスは負極で回収されることができる。こうして洗浄水の浄化は実現されることができる。ビスマスは回収されて再利用されることができる。その他、めっき材料にはクロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、プラチナ、金および鉛といった金属が用いられることができる。
【0033】
本発明者は浄化装置11の機能を検証した。検証にあたって12リットルの水溶液が調製された。水溶液は、溶解した35[ppm]のビスマス、35[ppm]のナトリウムおよび3000[ppm]のメタンスルホン酸を含んだ。ビスマスおよびナトリウムのモル比率は1:9.6に相当する。水溶液のpHは1.8であった。液温は摂氏25度であった。電極間距離DEは1.0[mm]に設定された。ポリエチレンメッシュの厚みは0.1[mm]に設定され、PTFEシートの厚みは0.9[mm]に設定された。液体の流速は3.5[L/min]に設定された。12リットルの水溶液は通路12を通過した。電源では第1モード時および第2モード時でそれぞれ1.0[V]の直流電圧が設定された。
【0034】
1サイクルで35秒の第1モードと35秒の第2モードとが実施された。20サイクルが繰り返された。[表1]に示されるとおりに、比較例に対して実施例では接触距離CDは5分の1に設定された。20サイクルの浄化後に12リットルの水溶液中でビスマスおよびナトリウムの残留量が測定された。その結果、接触距離CDの縮小に伴ってナトリウムの除去率は減少した。その一方で、ビスマスの除去率は維持された。接触距離CDの減少はビスマスの除去に影響しなかった。比較例では接触距離CDがパラメーターとして変化する際に最大の除去率が確立されたものと考えられる。
【表1】
【0035】
本発明者はビスマスイオンおよびナトリウムイオンの仕分けにあたって金属イオンの移動度を考察した。金属イオンの移動度uは次式で与えられることができる。
【数1】
ここで、zはイオンの価数を示し、eは電気素量を示し、ηは溶液の粘度を示し、aはイオンの半径を示す。同一溶液内の複数のイオンが検討されることから、eおよびηは共通する。したがって、イオンの移動度は[価数]/[イオンの半径]に依存することが理解される。ここでは、ビスマスイオンの価数は3で半径は0.96オングストロームであって、ナトリウムの価数は1で半径は0.99オングストロームである。
【符号の説明】
【0036】
11…浄化装置、12…通路、36…電源。
【要約】
【課題】選択的に対象の金属イオンを除去することで吸着力の飽和の早まりを効果的に抑制することができる浄化装置を提供する。
【解決手段】浄化装置11は、特定の原子番号以上の元素から形成される少なくとも第1陽イオンおよび第1陰イオンのいずれか、および、当該原子番号未満の元素から形成される少なくとも第2陽イオンおよび第2陰イオンのいずれかを含む液体の通路12を形成し、特定の流速で流れる液体を案内する流路14と、液体に接触する接触面から、液体に含まれる第1陰イオンまたは第1陽イオンを吸着し液体に含まれる第2陰イオンまたは第2陽イオンを通過させる大きさの電位を作用する活物質を有する電極13と、電極13に接続されて電極13から電位を形成する電源とを備える。
【選択図】図1
図1
図2