特許第6982670号(P6982670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982670
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20211206BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20211206BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G06F3/03 400Z
   G06F3/03 400F
   G06F3/044 B
   G06F3/046 A
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-183388(P2020-183388)
(22)【出願日】2020年11月2日
(62)【分割の表示】特願2017-509536(P2017-509536)の分割
【原出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2021-9744(P2021-9744A)
(43)【公開日】2021年1月28日
【審査請求日】2020年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-71806(P2015-71806)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】桂平 勇次
(72)【発明者】
【氏名】江口 徹
【審査官】 菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/002272(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/061020(WO,A1)
【文献】 特開2009−86925(JP,A)
【文献】 特開平7−295722(JP,A)
【文献】 特開2012−221304(JP,A)
【文献】 特開2014−119936(JP,A)
【文献】 特開2007−257359(JP,A)
【文献】 特開2012−252660(JP,A)
【文献】 米国特許第6278440(US,B1)
【文献】 特開平10−214149(JP,A)
【文献】 実開平7−41629(JP,U)
【文献】 実開平3−54034(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/044
G06F 3/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有すると共に、前記貫通孔に沿う方向にコイルが巻回された磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記貫通孔に挿通される、導電性を有する芯体と、
前記芯体を通じて送出する、位置を検出させるための信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部と前記芯体との間に設けられる第1のスイッチ回路と、
蓄電部と、
前記コイルに外部磁界に応じて発生する誘導電流により前記蓄電部を充電する充電回路と、
を備え、
前記充電回路により前記蓄電部を充電するときに、前記第1のスイッチ回路をオフに制御可能に構成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
静電容量方式のセンサと共に使用する状態においては、前記第1のスイッチ回路がオンとされて、前記信号発生部からの前記信号を、前記芯体を通じて前記センサに送信するように動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
使用者により操作される操作部に対する使用者の操作状態により、使用時であるか、非使用時であるかを判別する判別回路を備え、
前記判別回路により前記非使用時であると判別したときには、前記第1のスイッチ回路をオフに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記コイルと共に共振回路を構成するためのキャパシタを備え、
電磁誘導方式のセンサと共に使用する状態においては、前記共振回路で、前記センサからの電磁エネルギーを受信し、その受信した電磁エネルギーを、前記センサに帰還するように動作すると共に、前記コイルに発生した誘導電流により前記蓄電部を充電するように動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
使用者により操作される操作部に対する使用者の操作状態により、使用時であるか、非使用時であるかを判別する判別回路を備えると共に、
前記コイルに対して前記キャパシタを接続する状態と、非接続にする状態とに切り替える第2のスイッチ回路を備え、
前記判別回路により前記非使用時であると判別したときには、前記第1のスイッチ回路をオフに切り替えると共に、前記第2のスイッチ回路を前記非接続にする状態に切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項6】
ペン先側となる軸心方向の一端側に開口が設けられ、他端側が閉塞されている筒状の筐体を有し、前記筒状の筐体内に、電子ペン本体部が収納されていると共に、前記電子ペン本体部についてのノック式ボールペンのノック機構が設けられている電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
貫通孔を有すると共に、前記貫通孔に沿う方向にコイルが巻回された磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記貫通孔に挿通される、導電性を有する芯体と、
前記芯体を通じて送出する、位置を検出させるための信号を発生する信号発生部と、
蓄電部と、
前記コイルに外部磁界に応じて発生する誘導電流により前記蓄電部を充電する充電回路と、
前記ノック機構の動作により、前記芯体の一部が前記開口を通じて外部に突出する使用状態とされているか、前記芯体の全部が前記筐体の内部に位置する非使用状態とされているかを検出する検出手段と、
前記信号発生部と、前記芯体との間の前記信号の通路を接続状態と、遮断状態とに切り替える第1のスイッチ回路と、
を備え、
前記検出手段により、前記芯体の全部が前記筐体の内部に位置する非使用状態とされていることを検出したときには、前記第1のスイッチ回路を前記遮断状態に切り替える
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
前記電子ペン本体部は、
前記コイルと共に共振回路を構成するためのキャパシタを備え、
前記共振回路が動作する状態とされると共に、前記信号発生部からの信号を、前記芯体を通じて送出する状態とを並行して備えることを可能とした
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記電子ペン本体部は、
前記コイルと共に共振回路を構成するためのキャパシタと、
前記コイルに対する前記キャパシタを接続する状態と、非接続にする状態とに切り替える第2のスイッチ回路と、
を備え、
前記検出手段により、前記芯体の全部が前記筐体の内部に位置する非使用状態とされていることを検出したときには、前記第2のスイッチ回路を前記非接続の状態に切り替える
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用される電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器の入力装置として、座標入力装置が用いられるようになっており、この座標入力装置の入力具としての電子ペンが用いられる機会が多くなっている。座標入力装置としては、従来は電磁誘導方式が主に用いられており、この電磁誘導方式の一つとして、センサからの磁界を、電子ペンが備える共振回路で受けて、センサに帰還する方式がある(例えば特許文献1(特開2009−86925号公報)参照)。
【0003】
この電磁誘導方式の座標入力装置は、多数のループコイルを座標軸のX軸方向及びY軸方向に配設してなるセンサを備える位置検出装置と、磁性体コアに巻回されたインダクタンス素子の例としてのコイルとキャパシタとからなる共振回路を有するペン形状の位置指示器としての電子ペンとで構成される。
【0004】
位置検出装置は、所定の周波数の送信信号をセンサのループコイルに供給して、電磁エネルギーとして電子ペンに送信する。電子ペンの共振回路は、送信信号の周波数に応じた共振周波数を有するように構成されており、センサのループコイルとの間での電磁誘導作用に基づいて電磁エネルギーを蓄える。そして、電子ペンは、共振回路に蓄えた電磁エネルギーを位置検出装置のセンサのループコイルに帰還させる。
【0005】
センサのループコイルは、この電子ペンからの電磁エネルギーを検出する。位置検出装置は、送信信号を供給したループコイルの位置と、電子ペンの共振回路からの電磁エネルギーを検出したループコイルの位置により、電子ペンにより指示されたセンサ上の位置のX軸方向及びY軸方向の座標値を検出する。
【0006】
また、最近は、表示部の例としてのLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)の表面側に重畳して用いられる静電結合方式の位置検出装置も、携帯装置に用いられている。そして、この静電結合方式の位置検出装置と共に使用される電子ペンとして、発信型の電子ペンが賞用されるようになっている。
【0007】
この種の静電結合方式の位置検出装置用の電子ペンは、電池を備えると共に、この電池からの電圧により駆動される信号発信回路を備え、この信号発信回路からの発信信号を位置検出用信号として位置検出センサに供給する、いわゆるアクティブ方式の電子ペンである(例えば特許文献2(特開平07−295722号公報)等参照)。電池には、一次電池の他、充電式の二次電池も用いられている。一方、位置検出システムは、位置検出手段のセンサパネルを使うが、このアクティブ方式の位置指示器からの発信信号を受信した個々の導体の信号強度から、位置指示器により指示された位置として位置検出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−86925号公報
【特許文献2】特開平07−295722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した電磁誘導方式の位置検出装置と、静電結合方式の位置検出装置とは、それぞれ一長一短があり、電子機器には、その用途や使用環境などに応じて、いずれかの方式が採用される。このため、いずれか一方の方式が多数を占めている訳ではなく、電磁誘導方式の位置検出装置を採用した電子機器だけでなく、静電結合方式の位置検出装置を採用した電子機器も多数存在する。
【0010】
従来は、利用者は、電子機器の位置検出装置に採用されている電磁誘導方式または静電結合方式のそれぞれに適合した電子ペンを用意するようにしなければならなかった。このため、電子機器に採用されている方式を確認しながら、電子ペンをその確認した方式に応じたものを使用しなければならず、面倒であった。また、一方の方式用の電子ペンを紛失した場合、当該方式が対応する電子機器は、同方式の電子ペンを新規に購入しなければ位置検出装置を使用した入力ができなくなり、不便であった。
【0011】
また、製造会社にとっても、電磁誘導方式と静電結合方式との両方式のそれぞれ用の電子ペンをそれぞれ製造して用意しなければならないので、多種多様の部品が必要となり、部品コスト・製造コスト・販売コストが嵩むという問題があった。
【0012】
この発明は、以上の問題点を解決することができる電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
貫通孔を有すると共に、前記貫通孔に沿う方向にコイルが巻回された磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記貫通孔に挿通される、導電性を有する芯体と、
前記芯体を通じて送出する、位置を検出させるための信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部と前記芯体との間に設けられる第1のスイッチ回路と、
蓄電部と、
前記コイルに外部磁界に応じて発生する誘導電流により前記蓄電部を充電する充電回路と、
を備え、
前記充電回路により前記蓄電部を充電するときに、前記第1のスイッチ回路をオフに制御可能に構成されている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0014】
上述の構成の請求項1の発明による電子ペンは、磁性体コアに巻回されたコイルで、外部からの電磁エネルギーを受信し、その受信した電磁エネルギーに基づいてコイルに発生した誘導電流により蓄電部を充電する。その充電の際に、第1のスイッチ回路がオフとされることで、信号発生部から芯体を通じて信号が送出する状態を阻止して、充電を効率良く行うように動作する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図である。
図2】この発明による電子ペンの第1の実施形態で用いられる電子ペン本体部の構成例を説明するための図である。
図3】この発明による電子ペンの第1の実施形態で用いられる電子ペン本体部の一部の構成例を説明するための図である。
図4】この発明による電子ペンの第1の実施形態における信号処理回路の構成例を示す図である。
図5】この発明による電子ペンの第1の実施形態を充電する充電器の一例を示す図である。
図6】この発明による電子ペンの第1の実施形態が使用される電子機器の例を示す図である。
図7】この発明による電子ペンの第1の実施形態と共に使用される電磁誘導方式の位置検出装置の構成例を示す図である。
図8】この発明による電子ペンの第1の実施形態と共に使用される静電結合方式の位置検出装置の構成例を示す図である。
図9】この発明による電子ペンの第1の実施形態と共に使用される静電結合方式の位置検出装置の他の構成例を示す図である。
図10】この発明による電子ペンの第2の実施形態の要部を説明するための図である。
図11】この発明による電子ペンの第2の実施形態における信号処理回路の構成例を示す図である。
図12】この発明による電子ペンの第2の実施形態における信号処理回路の他の構成例を示す図である。
図13】この発明による電子ペンの第3の実施形態を説明するための図である。
図14】この発明による電子ペンの第3の実施形態における信号処理回路の構成例を示す図である。
図15】この発明による電子ペンの第4の実施形態における信号処理回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明による電子ペン及び電子ペン本体部の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図である。この第1の実施形態の電子ペン1は、筒状の筐体2の中空部2a内に、電子ペン本体部3が収納され、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の長手方向の一端の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。この実施形態では、電子ペン本体部3は、カートリッジ式の構成とされ、筐体2に対して着脱可能とされている。
【0018】
図1(A)は、電子ペン本体部の全体が筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、図1(B)は、ノックカム機構部4により電子ペン本体部のペン先側が、筐体2の開口2bから突出した状態を示している。なお、図1の例では、電子ペン1の筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0019】
この実施形態の電子ペン1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされている。
【0020】
筐体2及び当該筐体2内に設けられるノックカム機構部4は、周知の市販のノック式ボールペンと同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。換言すれば、筐体2及びノックカム機構部4は、市販のノック式のボールペンの筐体及びノックカム機構部をそのまま用いることもできる。
【0021】
ノックカム機構部4は、図1に示すように、カム本体41と、ノック棒42と、回転子43とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体41は、筒状の筐体2の内壁面に形成されている。ノック棒42は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部42aが、筐体2のペン先側とは反対側の開口2cから突出するようにされている。回転子43は、電子ペン本体部3のペン先側とは反対側の端部が嵌合される嵌合部43aを備える。
【0022】
図1(A)の状態において、ノック棒42の端部42aが押下されると、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3は、筐体2内において図1(B)の状態にロックされ、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の開口2bから突出する状態になる。そして、この図1(B)の状態から、ノック棒42の端部42aが再度押下されると、ノックカム機構部4によりロック状態が解除され、復帰用ばね5により、電子ペン本体部3の筐体2内の位置は、図1(A)の状態に戻る。復帰用ばね5は、ノックカム機構部4と、ばね受け部材7との間に設けられている。ばね受け部材7には、筐体2の中空部内の軸心方向の所定位置に固定されて取り付けられており、電子ペン本体部3が挿通される貫通孔が形成されている。電子ペン本体部3のノックカム機構部4の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0023】
[電子ペン本体部3の実施形態]
図2は、電子ペン本体部3の構成例を、市販のノック式ボールペンの替え芯と比較して示す図である。すなわち、図2(A)は、市販のノック式ボールペンの替え芯6を示し、また、図2(B)は、この実施形態の電子ペン本体部3の構成例を示している。
【0024】
市販のノック式ボールペンの替え芯6は、図2(A)に示すように、ボールが先端に配設されているペン先部61と、インク収納部62とが、結合部63で結合されて一体化された周知の構成を備える。結合部63は、インク収納部62と同じ径を有する。
【0025】
一方、この実施形態の電子ペン本体部3においては、図2(B)に示すように、コイル31が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア32が筒状体部33と結合されている。そして、芯体34が、フェライトコア32の貫通孔(図2では図示を省略)を通じて挿通されて、後述するように、筒状体部33内に設けられている筆圧検出部(図2では図示を省略)に嵌合されて電子ペン本体部3の一部として設けられる。図2に示すように、芯体34は、一方の端部34a(以下、先端部34aという)が、ペン先として、フェライトコア32から突出する。
【0026】
図3(A)は、コイル31が巻回されたフェライトコア32と、筒状体部33の一部と、芯体34の部分の分解拡大図である。この例のフェライトコア32は、例えば円柱状形状のフェライト材料に、芯体34を挿通するための所定の径r(例えばr=1mm)の軸心方向の貫通孔32dが形成されたものとされている。このフェライトコア32の、ペン先側には、徐々に先細となるテーパー部32eが形成されている。このテーパー部32eにより、このフェライトコア32を通る磁束は、テーパー部32eで高密度となり、位置検出装置のセンサとの間の磁気的な結合を、テーパー部32eがない場合に比して、より強くすることができる。
【0027】
そして、この実施形態では、図3(A)に示すように、コイル31がフェライトコア32の軸心方向の全長に亘って巻回されるのではなく、部分的に巻回されている。すなわち、この例では、コイル31はフェライトコア32の全長の約1/2長の巻回長を有するものとされると共に、図3(A)に示すように、当該コイルのフェライトコア32における巻回部32aは、フェライトコア32の、筒状体部33との結合部側に偏った位置とされる。
【0028】
そして、フェライトコア32をその軸心方向に見たとき、ペン先側の端部から、コイル巻回部32aの一方の端までの部分は、コイルが巻回されない第1のコイル非巻回部32bとされ、また、コイル巻回部32aの他方の端から、フェライトコア32の筒状体部33との結合部側の若干の部分も、コイル31が巻回されない第2のコイル非巻回部32cとされる。第2のコイル非巻回部32cの軸心方向の長さは、筒状体部33と結合するための短い長さとされる。一方、第1のコイル非巻回部32bの軸心方向の長さは、この例では、フェライトコア32の全長の約1/2長から、第2のコイル非巻回部32cの長さ分を差し引いた、比較的長いものとされる。
【0029】
そして、この実施形態では、筒状体部33のフェライトコア32との結合部の近傍には、筆圧検出部35が設けられている。この筆圧検出部35は、この例では、例えば特許文献:特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量キャパシタの構成としている。なお、筆圧検出部35は、例えば、特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成することもできる。
【0030】
筒状体部33内には、さらにプリント基板36が収納されている。このプリント基板36には、信号発生部の例を構成する発振回路37と、後述するようにコイル31とこれに並列に接続されたキャパシタ(後述のキャパシタ及び筆圧検出部35で構成される可変容量キャパシタ)とからなる共振回路とを含む信号処理回路(図4参照)が設けられている。
【0031】
そして、図3(B)に示すように、フェライトコア32の第2のコイル非巻回部32cの全部または一部が、筒状体部33に設けられている凹部33aに嵌合されることで、フェライトコア32が筒状体部33と結合される。図示は省略するが、このフェライトコア32の筒状体部33との結合の際に、コイル31の一端31a及び31bが、筒状体部33のプリント基板36に設けられているキャパシタ38と並列に接続されるように電気的に接続される。
【0032】
芯体34は、図3(A)に示すように、径がフェライトコア32の貫通孔の径rよりも小さい、導電性を有する棒状の部材で構成されている。この例では、芯体34は、導体、例えば導電性金属や導電性粉末を混入した硬質樹脂からなる電極芯の構成とされる。この電極芯を構成する芯体34は、接続線39により、プリント基板36の信号発信部を構成する発振回路37の信号出力端に接続されている。
【0033】
この芯体34は、フェライトコア32と筒状体部33とが結合されている状態において、図3(B)に示すように、テーパー部32eが形成されている側からフェライトコア32の貫通孔32dに挿通される。そして、芯体34は、その先端部34aとは反対側の端部34bが、筒状体部33内の筆圧検出部35の嵌合部35aに嵌合される。この場合に、詳細な図示は、省略するが、筆圧検出部35の嵌合部35aには例えば弾性ゴムなどの弾性材料が配置されていて、芯体34の端部34bが当該弾性材料で保持されることにより、芯体34は容易には抜け落ちないようにされている。ただし、使用者が、芯体34を引き抜くように力を印加すれば、芯体34と筆圧検出部35の嵌合部35aとの嵌合は、容易に外れて、芯体34を引き抜くことができる。つまり、芯体34は、交換可能とされている。
【0034】
この例の場合には、図2(A)及び図2(B)に示すように、電子ペン本体部3のペン先側の寸法は、ボールペンの替え芯6のペン先側の寸法とほぼ等しくなるように構成されている。すなわち、電子ペン本体部3のペン先側に設けられるフェライトコア32の径は、ボールペンの替え芯6のペン先部61の径R1とほぼ等しくなるように構成されている。また、芯体34の先端部34aのフェライトコア32から突出する部分の長さとフェライトコア32の第1のコイル非巻回部32bの長さとの合計の長さは、図2及び図3(B)に示すように、ボールペンの替え芯6のペン先部61の長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。
【0035】
また、電子ペン本体部3のフェライトコア32のコイル31が巻回されたコイル巻回部32aの径及び筒状体部33の径は、ボールペンの替え芯6のインク収納部62の径R2とほぼ等しく、前記ペン先部61の径R1よりは大きい(R2>R1)。なお、筐体2の開口2bの径は、この径R2よりは小さい。したがって、コイル巻回部32aは、開口2bから外部に突出することはできない。
【0036】
また、図2(A)及び(B)に示すように、フェライトコア32と筒状体部33とを結合し、芯体34をフェライトコア32の貫通孔を通じて筒状体部33の筆圧検出部35に嵌合した状態の電子ペン本体部の長さ(全長)は、ボールペンの替え芯6の全長L2と等しく選定されている。
【0037】
以上のような構成の電子ペン本体部3を、ばね受け部材7の貫通孔を挿通させた後、その筒状体部33をノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合させることにより、筐体2内に収納することができる。
【0038】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、使用者は、位置検出装置と共に使用するときには、ノック棒42の端部42aを押下する。すると、電子ペン1においては、図1(B)及び図3(B)に示すように、芯体34の先端部34a及びフェライトコア32の第1のコイル非巻回部32bの一部が筐体2の開口2bから突出する状態となる。電子ペン1の使用者は、この状態で、位置検出装置のセンサ上において、指示位置の入力操作をする。
【0039】
電子ペン1の使用が終了したら、ノック棒42の端部42aを再押下することで、図1(A)に示すように、電子ペン本体部3の全体は筐体2の中空部2a内に収容させる状態とすることができる。このときには、電子ペン本体部3の全体が筐体2の中空部2a内に収容されて、電子ペン本体部3の芯体34の先端部34aは、筐体2により保護される状態となる。
【0040】
次に、この第1の実施形態の電子ペン1の信号処理回路の構成例について説明する。図4は、電子ペン1の信号処理回路300の回路構成例を示す図である、
この図4に示すように、コイル31には、プリント基板36に設けられるキャパシタ38(図3(B)参照)と、筆圧検出部35で構成される可変容量キャパシタ35Cとが並列に接続されて、共振回路300Rが構成されている。したがって、共振回路300Rの共振周波数は、筆圧検出部35で検出される筆圧に応じた周波数とされる。
【0041】
そして、この実施形態の電子ペンにおいては、この共振回路300Rは、このプリント基板36に形成されている発振回路37の発振周波数を決定する回路部分として、発振回路37に接続されている。
【0042】
また、図4において、51は蓄電部の例を構成する電気二重層キャパシタ、52は整流用ダイオード、53は電圧変換回路である。この例では、コイル31の一端は整流用ダイオード52のアノードに接続され、他端は、接地(GND)されている。また、電気二重層キャパシタ51の一端は整流用ダイオード52のカソードに接続され、他端は、接地されている。電子ペン1の外部に交番磁界が存在するときには、コイル31に誘導電流が生じ、その誘導電流が整流用ダイオード52を通じて電気二重層キャパシタ51に充電電流として供給されて、電気二重層キャパシタ51が充電されて蓄電される。
【0043】
芯体34は、コイル31が巻かれたフェライトコア32の貫通孔32dを貫通して、筆圧検出部35に物理的に結合(係合)されると共に、例えば、導電性の芯体34と筆圧検出部35との前記結合部で接続線39(図3(B)の点線参照)と電気的に接続されている。そして、前述したように、接続線39は、導電性の芯体34と発振回路37とを電気的に接続している。したがって、この実施形態の電子ペン1においては、芯体34と可変容量キャパシタ35Cを構成する筆圧検出部35との前記物理的な結合により芯体34に加えられた圧力(筆圧)が筆圧検出部35に伝達されるとともに、接続線39を経由して発振回路37からの送信信号が芯体34より送信される構成とされている。
【0044】
共振回路300Rは、前述したように、芯体34に印加される筆圧に応じて変化する筆圧検出部35の可変容量キャパシタの容量に応じた共振周波数を有する。そして、発振回路37は、共振回路300Rの共振周波数に応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を芯体34に供給する。発振回路37からの信号は、芯体34よりその信号に基づく電界として放射される。
【0045】
この場合に、電子ペン1においては、コイル31は固定電位(この例では接地電位(GND))となるため、当該コイル31は、芯体34の周囲に設けたシールド電極として作用する。なお、コイル31の固定電位は、接地電位に限らず、電源のプラス側電位であっても良いし、電源のプラス側電位と接地電位との中間の電位であっても良い。
【0046】
電圧変換回路53は、電気二重層キャパシタ51に蓄えられた電圧を一定の電圧に変換して発振回路37の電源として供給する。この電圧変換回路53は、電気二重層キャパシタ51の両端の電圧よりも低くなるような降圧タイプのものでも良いし、電気二重層キャパシタ51の両端の電圧よりも高くなるような昇圧タイプのものでも良い。また、電気二重層キャパシタ51の両端の電圧が前記一定の電圧よりも高い場合は降圧回路として動作し、前記一定の電圧よりも低い場合は昇圧回路として動作する昇降圧タイプのものでも良い。
【0047】
図5は、この実施形態の電子ペン1用の充電器の一例を示すものである。この例の充電器310は、筐体311の一部に電子ペン1用の挿入口312を備えると共に、この挿入口312に連通する凹部を具備し、当該凹部に挿入される電子ペン1を支持する支持部313を備える。支持部313には、電力供給用コイル314が巻回されている。電力供給用コイル314は、充電制御回路315に接続されている。充電制御回路315からは、商用交流電源のコンセントに接続するプラグ316が導出されている。この例では、充電制御回路315は、共振回路300Rの共振周波数とほぼ等しい周波数の交番磁界を発生するように、電力供給用コイル314を駆動する。
【0048】
この実施形態の電子ペン1を、この充電器310の挿入口312から支持部313の凹部に挿入したときに、充電器310が発生する交番磁界により、電子ペン1のコイル31には誘導起電力が発生して、整流用ダイオード52を介して電気二重層キャパシタ51を充電する。
【0049】
[電子ペン1と共に使用する位置検出装置における位置検出および筆圧検出のための回路構成]
図6は、この発明の実施形態の電子ペン1を位置指示器として用いる電子機器の例としてのタブレット型情報端末200の一例を示すものである。この例では、タブレット型情報端末200は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示画面200Dを備える。そして、この種のタブレット型情報端末200は、位置指示器を用いて入力が行える位置検出装置を備える。そして、位置検出装置としては、電磁誘導方式の位置検出装置400EMRを備えるものと、静電結合方式の位置検出装置400AESを備えるものとがある。電磁誘導方式の位置検出装置400EMRは、LCDなどの表示装置の裏側に設けられ、静電結合方式の位置検出装置400AESは、LCDなどの表示装置の表側(表示画面の上側)に設けられる。
【0050】
冒頭でも述べたが、従来は、タブレット型情報端末が、電磁誘導方式の位置検出装置400EMRを備える場合には、当該電磁誘導方式の位置検出装置400EMRに対応する専用の電子ペンを用い、また、静電結合方式の位置検出装置400AESを備える場合には、当該静電結合方式の位置検出装置400AESに対応する専用の電子ペンを用いる必要があった。これに対して、上述の構成の実施形態の電子ペン1は、電磁誘導方式と静電結合方式の両方式の位置検出装置のいずれにも、切り替え操作などを全く行わずに用いることができる。
【0051】
[電磁誘導方式の位置検出装置400EMRが用いられている場合]
図7は、上述の実施形態の電子ペン1による指示位置の検出および電子ペン1に印加される筆圧の検出を行う電磁誘導方式の位置検出装置400EMRの回路構成例を示す図である。この例の位置検出装置400EMRは、図7に示すように、位置検出センサ410と、この位置検出センサ410に接続されるペン検出回路420とで構成されている。
【0052】
電子ペン1は、この図7に示すように、図4の信号処理回路300の内の共振回路300Rのみが、電磁誘導方式の位置検出装置400EMRの位置検出センサ410と電磁結合することで、位置指示及び筆圧の伝達を行う。
【0053】
この場合に、この実施形態では、コイル31に流れる誘導電流により、電気二重層キャパシタ51が充電される。そして、電圧変換回路53からの電圧により発振回路37も動作状態であるので、芯体34を通じて信号が位置検出装置400EMRに送出される。しかし、位置検出装置400EMRでは、電界結合の信号は、電磁結合により送受する信号に比べて殆ど無視できるので、位置検出装置400EMRにおける、位置指示及び筆圧の検出においては、悪影響を及ぼすことはない。
【0054】
位置検出装置400EMRには、X軸方向ループコイル群411と、Y軸方向ループコイル群412とが積層されて位置検出センサ410が形成されている。各ループコイル群411,412は、例えば、それぞれn,m本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群411,412を構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0055】
また、位置検出装置400EMRには、X軸方向ループコイル群411及びY軸方向ループコイル群412が接続される選択回路413が設けられている。この選択回路413は、2つのループコイル群411,412のうちの一のループコイルを順次選択する。
【0056】
さらに、位置検出装置400EMRのペン検出回路420には、発振器421と、電流ドライバ422と、切り替え接続回路423と、受信アンプ424と、検波器425と、低域フィルタ426と、サンプルホールド回路427と、A/D変換回路428と、同期検波器429と、低域フィルタ430と、サンプルホールド回路431と、A/D変換回路432と、処理制御部433とが設けられている。処理制御部433は、マイクロコンピュータにより構成されている。
【0057】
発振器421は、周波数f0の交流信号を発生する。そして、発振器421は、発生した交流信号を、電流ドライバ422と同期検波器429に供給する。電流ドライバ422は、発振器421から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路423へ送出する。切り替え接続回路423は、処理制御部433からの制御により、選択回路413によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ422が、受信側端子Rには受信アンプ424が、それぞれ接続されている。
【0058】
選択回路413により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路413及び切り替え接続回路423を介して受信アンプ424に送られる。受信アンプ424は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器425及び同期検波器429へ送出する。
【0059】
検波器425は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、低域フィルタ426へ送出する。低域フィルタ426は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器425の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路427へ送出する。サンプルホールド回路427は、低域フィルタ426の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路428へ送出する。A/D変換回路428は、サンプルホールド回路427のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部433に出力する。
【0060】
一方、同期検波器429は、受信アンプ424の出力信号を発振器421からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号を低域フィルタ430に送出する。この低域フィルタ430は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器429の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路431に送出する。このサンプルホールド回路431は、低域フィルタ430の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路432へ送出する。A/D変換回路432は、サンプルホールド回路431のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部433に出力する。
【0061】
処理制御部433は、位置検出装置400EMRの各部を制御する。すなわち、処理制御部433は、選択回路413におけるループコイルの選択、切り替え接続回路423の切り替え、サンプルホールド回路427、431のタイミングを制御する。処理制御部433は、A/D変換回路428、432からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群411及びY軸方向ループコイル群412から一定の送信継続時間(連続送信区間)をもって電波を送信させる。
【0062】
X軸方向ループコイル群411及びY軸方向ループコイル群412の各ループコイルには、電子ペン1から送信(帰還)される電波によって誘導電圧が発生する。処理制御部433は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理制御部433は、送信した電波と受信した電波との位相差に応じた信号のレベルに基づいて筆圧を検出する。
【0063】
このようにして、位置検出装置400EMRでは、接近した電子ペン1の位置を処理制御部433で検出する。そして、受信した信号の位相を検出することにより、電子ペン1の筆圧値の情報を得る。
【0064】
[静電結合方式の位置検出装置400AESが用いられている場合]
図8は、上述の実施形態の電子ペン1による指示位置の検出および電子ペン1に印加される筆圧の検出を行う静電結合方式の位置検出装置400AESの回路構成例を示す図である。
【0065】
この例の位置検出装置400AESは、図8に示すように、位置検出センサ440と、この位置検出センサ440に接続されるペン検出回路450とからなる。位置検出センサ440は、この例では、断面図は省略するが、下層側から順に、第1の導体群441、絶縁層(図示は省略)、第2の導体群442を積層して形成されたものである。第1の導体群441は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体441Y1、441Y2、…、441Ym(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。
【0066】
また、第2の導体群442は、第1の導体441Y1、441Y2、…、441Ymの延在方向に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体442X1、442X2、…、442Xn(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0067】
このように、位置検出装置400AESの位置検出センサ440では、第1の導体群441と第2の導体群442を交差させて形成したセンサパターンを用いて、電子ペン1が指示する位置を検出する構成を備えている。
【0068】
この場合には、電子ペン1は、図4における発振回路37からの発信信号が、導電性を有する芯体34を通じて位置検出センサ440に送信される。このとき共振回路300Rも動作可能となっているが、位置検出装置400AESの位置検出センサ440は、共振回路300Rとは電磁結合しないので、電子ペン1による指示位置の検出及び筆圧の検出処理には影響はない。
【0069】
なお、以下の説明において、第1の導体441Y1、441Y2、…、441Ymについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第1の導体441Yと称する。同様に、第2の導体442X1、442X2、…、442Xnについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第2の導体442Xと称することとする。
【0070】
ペン検出回路450は、位置検出センサ440との入出力インターフェースとされる選択回路451と、増幅回路452と、バンドパスフィルタ453と、検波回路454と、サンプルホールド回路455と、AD(Analog to Digital)変換回路456と、制御回路457とからなる。
【0071】
選択回路451は、制御回路457からの制御信号に基づいて、第1の導体群441および第2の導体群442の中から1本の導体441Yまたは442Xを選択する。選択回路451により選択された導体は増幅回路452に接続され、電子ペン1の芯体34からの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路452により増幅される。この増幅回路452の出力はバンドパスフィルタ453に供給されて、電子ペン1の芯体34から送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0072】
バンドパスフィルタ453の出力信号は検波回路454によって検波される。この検波回路454の出力信号はサンプルホールド回路455に供給されて、制御回路457からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路456によってデジタル値に変換される。AD変換回路456からのデジタルデータは制御回路457によって読み取られ、処理される。
【0073】
制御回路457は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路455、AD変換回路456、および選択回路451に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。そして、制御回路457は、AD変換回路456からのデジタルデータから、電子ペン1の芯体34によって指示された位置検出センサ440上の位置座標を算出すると共に、筆圧検出部35で検出された筆圧を検出するようにする。
【0074】
すなわち、制御回路457は、例えばまず第2の導体442X1〜442Xnを順次に選択する選択信号を選択回路451に供給し、第2の導体442X1〜442Xnのそれぞれの選択時に、AD変換回路456から出力されるデータを信号レベルとして読み取る。そして、第2の導体442X1〜442Xnの全ての信号レベルが所定値に達していなければ、制御回路457は、電子ペン1が位置検出センサ440上に無いものと判断し、第2の導体442X1〜442Xnを順次に選択する制御を繰り返す。
【0075】
第2の導体442X1〜442Xnのいずれかから所定値以上のレベルの信号が検出された場合には、制御回路450は、最も高い信号レベルが検出された第2の導体442Xの番号とその周辺の複数個の第2の導体442Xを記憶する。そして、制御回路457は、選択回路451を制御して、第1の導体441Y1〜441Ymを順次選択して、AD変換回路456からの信号レベルを読み取る。このとき制御回路457は、最も大きい信号レベルが検出された第1の導体441Yとその周辺の複数個の第1の導体441Yの番号を記憶する。
【0076】
そして、制御回路457は、以上のようにして記憶した、最も大きい信号レベルが検出された第2の導体442Xの番号及び第1の導体441Yの番号とその周辺の複数個の複数個の第2の導体442X及び第1の導体441Yから、電子ペン1により指示された位置検出センサ440上の位置を検出する。
【0077】
制御回路457は、また、AD変換回路456からの信号の周波数を検出し、その検出した周波数から、筆圧検出部35で検出された筆圧値を検出する。すなわち、前述したように、電子ペン1の発振回路37の発振周波数は、筆圧検出部35で構成される可変容量キャパシタの静電容量に応じた周波数となっている。制御回路457は、例えば、電子ペン1の発振回路37の発振周波数と筆圧値との対応テーブルの情報を備えており、この対応テーブルの情報から、筆圧値を検出する。
【0078】
なお、上述の説明の例では、電子ペン1は、筆圧検出部35で検出した筆圧を周波数に変換して芯体34に供給するようにしたが、筆圧を対応させる信号属性としては周波数に限られるものではなく、信号の位相や信号の断続回数などに筆圧を対応させるようにしても良い。
【0079】
[静電結合方式の位置検出装置の他の例]
図8に示した静電結合方式の位置検出装置400AESでは、共振回路300Rは動作可能状態となるが、そのコイル31には、誘導電流が生じることはないので、電気二重層キャパシタ51への充電は行われることはない。したがって、長時間に亘って、電子ペン1を、静電結合方式の位置検出装置400AESと共に使用すると、電気二重層キャパシタ51に蓄積されている電圧が低下してしまい、使用を一時中断して、充電器を用いて充電を行わなければならず、不便である。
【0080】
この静電結合方式の位置検出装置の他の例は、この点を改善することができる場合の例である。すなわち、図9は、この例の静電結合方式の位置検出装置401AESの構成例を示す図である。この図9において、前述した静電結合方式の位置検出装置400AESと同一部分には、同一参照符号を付して、その説明は省略する。
【0081】
この図9の例の静電結合方式の位置検出装置401AESにおいては、位置検出センサ440を取り囲むようにして、励磁コイル443が配設されている。図9においては、励磁コイル443は、2ターンとなっているが、実際的には、より多くのターン数、例えば8〜10ターンとされている。図9に示すように、励磁コイル443は、ドライブ回路458に接続され、ドライブ回路458は、例えば共振回路300Rの共振周波数(中心周波数)で発振する発振回路459に接続されている。
【0082】
ドライブ回路458は、処理制御部457により制御される。この例では、処理制御部457は、電子ペン1からの信号を受信したことを、AD変換回路456からの信号に基づいて検出したときには、ドライブ回路458を制御して、発振回路459からの発振信号を励磁コイル443への供給を開始させるようにして、励磁コイル443から電子ペン1に電磁エネルギーを供給するようにする。
【0083】
電子ペン1の共振回路300Rのコイル31には、この励磁コイル443からの交番磁界により誘導電流が発生し、この誘導電流が整流用ダイオード52を通じて電気二重層キャパシタ51に充電電流として供給されることにより、電気二重層キャパシタ51が充電される。
【0084】
したがって、電子ペン1と共に使用される位置検出装置が、図9の静電結合方式の位置検出装置401AESである場合には、電子ペン1は、蓄電部の例としての電気二重層キャパシタ51を充電しながら、発振回路37から芯体34を通じて静電結合方式の位置検出装置401AESの位置検出センサ440に信号を供給することができるという効果がある。
【0085】
[上述の第1の実施形態の効果]
以上説明したように、上述の第1の実施形態の電子ペン1によれば、この電子ペン1が電磁誘導方式の位置検出装置400EMRの位置検出センサ410の上に持ち来たらされると、当該電子ペン1は、共振回路300Rにより電磁誘導方式の位置検出装置用として働く。また、電子ペン1が静電結合方式の位置検出装置400AESの位置検出センサ440の上に持ち来たらされると、当該電子ペン1は、発振回路37からの信号が芯体34を通じて送出される状態となって、静電結合方式の位置検出装置用として働く。そして、使用者は、上述の第1の実施形態の電子ペン1においては、両方式に対して何等の切り替え操作も行う必要がないので、使用者は、位置検出装置が、電磁誘導方式と、静電結合方式のいずれであるかを意識せずに、電子ペン1を用いることができ、非常に便利である。
【0086】
そして、上述の第1の実施形態の電子ペン1によれば、蓄電部を構成する電気二重層キャパシタを充電しながら、位置検出装置と共に使用することができる。
【0087】
また、上述の第1の実施形態の電子ペン1によれば、一つの筆圧検出部35で検出した筆圧の情報を、電磁誘導方式の位置検出装置用として用いることができると共に、静電結合方式の位置検出装置用としても用いることができる。すなわち、上述の第1の実施形態では、筆圧検出部35を、共振回路300Rの一部を構成するキャパシタとして構成すると共に、当該共振回路300Rを、発振回路37の発振周波数を決定するための回路としても用いるようにしたので、筆圧の情報は、電磁誘導方式の位置検出装置に対しては共振回路の共振周波数の変化情報として送信でき、また、静電結合方式の位置検出装置に対しては、芯体34を通じて送出する信号の周波数の変化情報として送信することできる。
【0088】
また、上述の第1の実施形態の電子ペン1によれば、電子ペン1を、静電結合方式の位置検出装置用として使用するときには、コイル31は固定電位とされているので、信号を送出する導電性の芯体34に対するシールド電極として作用する。したがって、電子ペン1の筐体2を手で持っても芯体34が出力する信号に影響を与えることがない。
【0089】
また、上述の第1の実施形態の電子ペン1によれば、芯体34の周囲に非接触充電用のコイル31が設けられる構成であるため、ペン立て形状の充電器310による非接触充電が可能で、操作性の良い電子ペンが実現できる。
【0090】
そして、上述の第1の実施形態によれば、電子ペン本体部3の細型化が実現できるので、電子ペン本体部3を、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成とすることができるようになる。
【0091】
電子ペン本体部3を、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成とした場合には、電子ペン1の筐体2を、市販のボールペンの筐体を流用することができるというメリットがある。すなわち、ボールペンの替え芯の代わりに、この実施形態の電子ペン本体部3を、ボールペンの筐体に収納することで、電子ペン1を構成することが可能となる。
【0092】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の電子ペン1の改良例である。上述の第1の実施形態においては、発振回路37からは常時芯体34を通じて信号が供給される状態とされている構成となっている。このため、電子ペン1が非使用状態のときに、充電器に装着されて充電されていない場合には、電気二重層キャパシタ51の蓄電電力が放電されてしまうという問題がある。第2の実施形態は、この問題を解決した例である。以下の説明において、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同一部分には、同一参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0093】
この第2の実施形態の電子ペンにおいては、図1(A)に示したように、芯体34の先端部34aが筐体2の開口2bからは突出しておらず、筐体2内に電子ペン本体部3の全てが収納される電子ペン1の非使用状態にあるときと、図1(B)に示したように、ノックカム機構部4におけるノック操作により、芯体34の先端部34aが筐体2の開口2bから突出される状態となる電子ペン1の使用状態とを検出する検出手段を備える。
【0094】
この第2の実施形態の場合の電子ペン本体部3Aにおいては、筒状体部33に、ノックカム機構部4による軸心方向の移動に応じてオン・オフするスイッチ部材が設けられる。
【0095】
図10(A)及び(B)は、電子ペン本体部3Aに設けられるスイッチ部材について説明するための図である。すなわち、この例においては、電子ペン本体部3Aの筒状体部33Aの所定の部位の周面には、図10(A)及び(B)に示すように、貫通孔33Aaが設けられると共に、スイッチ部材8が、この貫通孔33Aaから一部が露呈するように、筒状体部33A内に設けられる。
【0096】
この場合に、貫通孔33Aaが設けられる筒状体部33Aの所定の部位は、電子ペン本体部3Aが、電子ペンの筐体2内に全て収納される状態においてときに、筐体2内に固定されて設けられている、ばね受け部材7の貫通孔7aに収納される筒状体部33Aの部位である。
【0097】
スイッチ部材8は、弾性を有すると共に導電性を有する材料、例えば弾性を有する導電性金属で構成される。このスイッチ部材8は、図10(A)及び(B)に示すように、筒状体部33Aの貫通孔33Aaの近傍の内壁面に固定される固定端子片81と、当該固定端子片81と弾性的に接触可能な可動端子片82とからなる。可動端子片82は、固定端子片81と弾性的に接触する状態と、非接触の状態とを取り得るように構成された折り曲げ部82aを備え、この折り曲げ部82aの一部が貫通孔33Aaから突出することが可能ように、筒状体部33A内に取り付けられている。
【0098】
電子ペン本体部3Aが、芯体34の先端部34aが筐体2の開口2bから突出せずに、筐体2の中空部に存在する保護状態であるときには、図10(A)に示すように、スイッチ部材8は、丁度、ばね受け部材7の貫通孔7a内に位置する。このため、可動端子片82の折り曲げ部82aは、貫通孔7aの内壁により筒状体部33A内側に弾性的に変位し、固定端子片81と可動端子片82とは接触せずに離間する状態となる。すなわち、スイッチ部材8は、オフの状態となる。
【0099】
ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3Aが、芯体34の先端部34aが筐体2の開口2bから突出している電子ペンの使用状態になると、図10(B)に示すように、スイッチ部材8は、ばね受け部材7の貫通孔7aから脱する状態になる。すると、可動端子片82の折り曲げ部82aの一部が貫通孔33Aaから突出するように弾性変位し、これにより、可動端子片82と固定端子片81とが接触する状態となる。すなわち、スイッチ部材8は、オンの状態となる。
【0100】
図11は、この第2の実施形態の電子ペンの信号処理回路300Aの一例を示す図である。すなわち、この第2の実施形態の電子ペンの信号処理回路300Aにおいては、制御回路54を設けると共に、発振回路37と芯体34との間にスイッチ回路55を設ける。制御回路54には、スイッチ部材8の固定端子片81と可動端子片82とが電気的に接続されている。そして、この制御回路54は、スイッチ回路55に切り替え制御信号を供給すると共に、発振回路37の発振動作の制御信号を供給する。
【0101】
制御回路54は、このスイッチ部材8のオン・オフ状態を監視することで、電子ペン本体部3Aの芯体34の先端部34aが開口2bから突出する電子ペンの使用状態であるか否かを検出する。
【0102】
そして、制御回路54は、図10(A)に示すように、スイッチ部材8がオフであるときには、電子ペン本体部3Aの先端部34aが開口2bから突出しない非使用状態であると判断し、スイッチ回路55はオフとすると共に、発振回路37は、スリープ状態(発振停止状態)に制御する。これにより、電子ペンの非使用状態においては、発振回路37からの信号の、芯体34からの送出が停止されると共に、発振回路37の動作状態が低消費電力の状態となり、蓄電部を構成する電気二重層キャパシタ51の蓄電エネルギーの消耗が抑止される。この時、電子ペンが充電器310に装着されれば、効率良く充電がなされる。
【0103】
そして、制御回路54は、図10(B)に示すように、スイッチ部材8がオンとなったときには、電子ペン本体部3Aの先端部34aが開口2bから突出している使用状態であると判断し、スイッチ回路55をオンとすると共に、発振回路37は、動作状態に制御する。これにより、電子ペンの使用状態においては、発振回路37からの信号が芯体34から送出される。
【0104】
なお、電子ペン本体部3Aの先端部34aが開口2bから突出しない非使用状態では、共振回路300Rも動作させる必要はない。そこで、図12に示すように、コイル31と、キャパシタ38及び可変容量キャパシタ35Cとの並列回路との間にスイッチ回路56を設けて、制御回路54からの切り替え制御信号により、スイッチ回路55と同様にオン・オフ制御するようにしてもよい。
【0105】
上述した第2の実施形態によれば、電子ペンの非使用時には、蓄電部の蓄電電力の無駄な消費を無くすことができるという効果を奏する。
【0106】
なお、図11及び図12の例では、スイッチ回路55を、発振回路37と芯体34との間に設けることで、芯体34への発振回路37からの信号の供給を制御するようしたが、スイッチ回路55を、電圧変換回路53からの発振回路37への電源電圧の供給路に設けて、発振回路37への電源を停止することで、発振回路37の発振を停止することで、芯体34からの信号送出を停止するように構成してもよい。
【0107】
[第3の実施形態]
以上の実施形態は、筐体内に電子ペン本体部を収納する構成の電子ペンの場合であった。しかし、この発明は、このような電子ペン本体部を、カートリッジ形式として交換可能に構成するタイプのものに限らず、電子ペン本体部の全ての機能部を、電子ペンの筐体内に並べて構成するようにしてもよいことは言うまでもない。第3の実施形態は、そのように構成した電子ペンの例である。
【0108】
そして、この第3の実施形態においては、電子ペンを電磁誘導方式の位置検出装置用と、静電結合方式の位置検出装置用とで、専用に切り替えることができるように構成する。
【0109】
図13は、この第3の実施形態の電子ペン1Bの全体の概要を説明するための図である。また、図14は、この第3の実施形態の電子ペンの信号処理回路の例を説明するための図である。なお、図13及び図14に示す第3の実施形態の電子ペン1Bにおいて、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と対応する部分には、同一の参照番号に、サフィックスBを付加したものを参照符号として付与して、説明することとする。
【0110】
図13に示すように、この第3の実施形態の電子ペン1Bにおいては、筒状の筐体2B内には、図3(B)及び図4を用いて説明した第1の実施形態と同様に、コイル31B(図13では図示は省略)が巻回されているフェライトコア32B(図13では図示は省略)と、筆圧検出部35B(図13では図示は省略)が設けられている共に、プリント基板36Bが設けられている。そして、芯体34Bが、その先端部34Baが筐体2Bの開口から常に外部に突出する状態で、フェライトコア32Bの貫通孔を通じて筆圧検出部35Bに嵌合されて設けられている。この第3の実施形態においても、芯体34Bは、上述の実施形態と同様に、交換可能な構成とされている。
【0111】
そして、プリント基板36B上には、押下されたときにオンとなり、押下を停止するとオフに戻るプッシュスイッチ101及び102が設けられていると共に、このプッシュスイッチ101及び102のオン・オフ状態に応じた制御信号を発生する制御回路100が設けられている。そして、筐体2Bの側周面に穿かれた開口部には、弾性を有する絶縁性の樹脂、例えばABS樹脂からなる押圧操作部101a及び102aが設けられる。プッシュスイッチ101及び102は、この押圧操作部101a及び102aの押圧操作により、オン・オフされる。
【0112】
そして、押圧操作部101aが押下操作されるとプッシュスイッチ101がオンとなり、これを受けて制御回路100は、電子ペン1Bを電磁誘導方式の位置検出装置用とするように設定する。また、押圧操作部102aが押下操作されるとプッシュスイッチ102がオンとなり、これを受けて制御回路100は、電子ペン1Bを静電結合方式の位置検出装置用とするように設定する。
【0113】
これらプッシュスイッチ101及び102と、制御回路100とは、プリント基板36Bに、上述の実施形態と同様に形成される信号処理回路(図13では、図示を省略)に含まれている。
【0114】
図14は、この第3の実施形態の信号処理回路300Bの構成例を示すものである。この図14に示すように、この第3の実施形態においては、前述の実施形態と同様に、コイル31Bと、プリント基板36Bに設けられるキャパシタ38Bと、筆圧検出部35Bで構成される可変容量キャパシタ35CBとにより、共振回路300RBが構成される。そして、この共振回路300RBは、発振回路37Bの発振周波数を定める回路として接続されている。
【0115】
また、前述の実施形態と同様に、外部磁界に応じてコイル31Bに誘起される誘導電流が整流用ダイオード52を通じて電気二重層キャパシタ51Bに供給されることで、電気二重層キャパシタ51Bが充電される。
【0116】
そして、この第3の実施形態においては、発振回路37Bと芯体34Bとの間にスイッチ回路55Bを設けると共に、コイル31Bと整流用ダイオード52との間にスイッチ回路57Bを設ける。制御回路100は、プッシュスイッチ101及び102のオン・オフ操作に応じて、スイッチ回路55B及び57Bを切り替える。
【0117】
この第3の実施形態の電子ペン1Bにおいて、使用者が押圧操作部101aを押下すると、プッシュスイッチ101がオンとなり、制御回路100は、スイッチ回路55B及び57Bをオフに切り替える。すると、電子ペン1Bの信号処理回路300Bにおいては、共振回路300RBのみが有効となるため、電子ペン1Bは、電磁誘導方式の位置検出装置用となる。
【0118】
また、使用者が押圧操作部102aを押下すると、プッシュスイッチ102がオンとなり、制御回路100は、スイッチ回路55B及び57Bをオンに切り替える。すると、電子ペン1Bの信号処理回路300Bにおいては、発振回路37Bからの信号が芯体34Bを通じて送出する状態となり、電子ペン1Bは、静電結合方式の位置検出装置用となる。なお、この静電結合方式の位置検出装置用の構成の電子ペン1Bの信号処理回路300Bにおいては、図9に示した励磁コイル443を備える位置検出装置と共に使用される場合には、コイル31Bに誘起される誘導電流により、整流用ダイオード52を通じて電気二重層キャパシタ51Bが充電される。
【0119】
以上のようにして、この第3の実施形態の電子ペン1Bにおいては、使用者は、自分が使用とする位置検出装置の方式に応じて、押圧操作部101aまたは押圧操作部102aを押下操作することで、電磁誘導方式の位置検出装置用と、静電結合方式の位置検出装置用とで、電子ペン1Bを選択的に切り替えて使用することができる。
【0120】
なお、図14の構成において、スイッチ回路55Bは、図11及び図12の例と同様に、電圧変換回路53Bと発振回路37との間の電源電圧の供給路に設けるようにしてもよい。
【0121】
また、筐体2Bの外周面に、電子ペン1Bが、電磁誘導方式の位置検出装置用と、静電結合方式の位置検出装置用とのいずれに設定されているかを使用者に報知する手段を設けるようにしてもよい。例えば、押圧操作部101a及び102aの押圧操作に応じて点灯する発光ダイオードを設けることで、電子ペン1Bが電磁誘導方式の位置検出装置用と、静電結合方式の位置検出装置用のいずれに設定されているかを使用者に報知してもよい。この場合に、発光ダイオードは、押圧操作部101a及び102aのそれぞれに対応して1個ずつ設けるようにしてもよいし、電磁誘導方式の位置検出装置用か、静電結合方式の位置検出装置用かのいずれか1個を設けて、その1個の発光ダイオードが点灯していないときには、他方の方式の位置検出装置用の設定であることを報知するようにしてもよい。
【0122】
[第4の実施形態]
この第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に、電子ペン本体部の全ての機能部を、電子ペンの筐体内に並べて構成するようにした場合の他の例である。上述の第3の実施形態では、電磁誘導方式の位置検出装置用と、静電結合方式の位置検出装置用とで専用に設定することができるようにした。しかし、第1の実施形態と同様に、第1の実施形態と同様に、信号処理回路においては、共振回路と、発振回路とを常に動作状態とすることもできる。そして、蓄電部は、共振回路のコイルでの誘導電流により充電する方式ではなく、充電器により直接的に充電する方式であってもよい。
【0123】
この第4の実施形態は、以上のことを考慮した場合の例である。図15に、この第4の実施形態の電子ペン1Cの場合の信号処理回路300Cの構成例を示す。この図15においては、前述した第3の実施形態と対応する部分には、同一の参照番号に、サフィックスBの代わりにCを付加したものを参照符号として付与して、その詳細な説明は省略することとする。
【0124】
この第4の実施形態の電子ペン1Cの信号処理回路300Cにおいては、整流用ダイオード52Bは設けず、したがって、共振回路300RCのコイル31Cに誘起される誘導電流によって電気二重層キャパシタ51Cを充電する構成は有しない。この第4の実施形態においては、電気二重層キャパシタ51Cの両端から、充電用電極58及び59を導出して設ける。この充電用電極58及び59は、図示を省略する充電器の充電用電極に接続され、電気二重層キャパシタ51Cは、この充電器で充電される。
【0125】
[他の実施形態または変形例]
上述の実施形態では、筆圧検出部は、筆圧に応じて静電容量を可変する可変容量キャパシタを用いるようにしたが、共振回路の共振周波数を変化させる変化素子であれば、インダクタンス値や抵抗値を可変するものであってもよいことは言うまでもない。
【0126】
また、上述の実施形態では、筆圧検出部を設けるようにしたが、筆圧検出部の代わりに、芯体に印加される圧力に応じてオンとされるスイッチを設け、このスイッチがオンとされたときに、共振回路が動作するように構成したり、発振回路が発振を開始したりするように構成してもよい。また、筆圧検出部で検出される圧力に対して閾値を設け、筆圧検出部で検出された圧力が閾値を超えたときに、共振回路が動作するように構成したり、発振回路が発振を開始したりするように構成してもよい。
【0127】
また、上述の第1及び第2の実施形態のように、電子ペン本体部を、市販のボールペンの替え芯と同寸法とすることにより、この発明による電子ペンは、2本以上のボールペン芯を筐体内に設けて、ノック機構により選択的に1本のボールペン芯を使用する状態にする、いわゆる多色ボールペンの構成とすることもできる。
【0128】
また、上述の第1及び第2の実施形態では、電子ペン本体部は、市販のボールペンの替え芯と同寸法として、電子ペン1,1Mの筐体と、市販のボールペンの筐体との互換性を図ることができるようにしたが、市販のボールペンの替え芯との互換性を考慮せずに、細型化した電子ペン本体部を構成することができることは勿論である。
【0129】
また、上述の第1の実施形態では、ノックカム機構を用いて、電子ペン本体部をノック式に筐体内に出し入れするように構成したが、このようなノック式のものに限られるものではなく、単純に、電子ペン本体部を筐体内に収納した形態の電子ペンであってもよい。
【0130】
また、上述した第1〜第3の実施形態の電子ペンでは、共振回路における共振周波数の変化として、筆圧検出部で検出された筆圧の情報を位置検出装置に送信したが、筆圧の情報に限られるものではない。例えば、電子ペンのセンサ面(指示入力面)に対する傾きを検出する傾き検出センサにより検出した傾きを、共振周波数の変化として送信するようにしても良い。
【0131】
また、上述の実施形態においては、信号発生部としては、発振回路の発振信号そのものを、芯体を通じて送出する信号とするように構成したが、信号発生部は、発振回路の発振信号そのものではなく、当該発振信号を変調したりして、発振信号に何らかの処理を加えた信号を発生するように構成したものであってもよい。
【0132】
なお、上述の実施形態では、筆圧検出部で検出した筆圧の情報は、共振周波数の変化や発振信号の周波数の変化として位置検出装置に伝達するようにしたが、電子ペンから位置検出装置に伝達する方法としては、このような伝達方法に限らない。例えば、この発明の電子ペン及び位置検出装置の両方に、例えばブルートゥース(登録商標)規格の無線通信部を設け、その無線通信部を通じて筆圧の情報を伝送するようにしてもよい。また、筆圧の情報に限らず、電子ペン本体部や電子ペンの識別情報(ID)を、その無線通信部を通じて電子ペンから位置検出装置に伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…電子ペン、2…筐体、2b…開口、3…電子ペン本体部、4…ノックカム機構部、31…コイル、32…フェライトコア、34…芯体、35…筆圧検出部、35C…可変容量キャパシタ、36…プリント基板、37…発振回路、38…キャパシタ、300R…共振回路、400EMR…電磁誘導方式の位置検出装置、400AES…静電結合方式の位置検出装置、443…励磁コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15