【実施例】
【0034】
[試験電池の作製]
実施形態の液式鉛蓄電池と同じ構造の液式鉛蓄電池として、サンプルNo.1〜No.49の鉛蓄電池を作製した。
サンプルNo.1〜No.49の液式鉛蓄電池はD23型のISS車用液式鉛蓄電池であって、サンプルNo.1〜No.7は負極集電体の格子状基板の形状が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.8〜No.13は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.1およびNo.8〜No.13は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
【0035】
サンプルNo.14〜No.19は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.2と同じである。サンプルNo.2およびNo.14〜No.19は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.20〜No.25は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.3と同じである。サンプルNo.3およびNo.20〜No.25は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.26〜No.31は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.4と同じである。サンプルNo.4およびNo.26〜No.31は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
【0036】
サンプルNo.32〜No.37は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.5と同じである。サンプルNo.5およびNo.32〜No.37は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.38〜No.43は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.6と同じである。サンプルNo.6およびNo.38〜No.43は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.44〜No.49は、負極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.7と同じである。サンプルNo.7およびNo.44〜No.49は、負極集電体中のビスマスの含有率が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
【0037】
<サンプルNo.1およびNo.8〜No.13>
サンプルNo.1およびNo.8〜No.13の液式鉛蓄電池は、
図1に示す形状の負極集電体1を有し、寸法S1=114.0mm、寸法S2=108.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.75mm
2である。
先ず、帯状の鉛合金シート(複数枚の負極集電体1に対応する大きさ)に対する打ち抜き加工工程、格子状基板11への負極活物質ペーストの充填工程、予熱乾燥工程、熟成乾燥工程、および切断工程を行うことにより、
図1の負極集電体1を有する化成前の負極板を作製した。各工程は通常の方法で行った。
なお、上記負極集電体1は、金属ビスマスを0.3ppm〜270ppm含む鉛合金とした。
【0038】
正極板は、
図1に示す負極集電体1と同じ形状の正極集電体を有するが、正極集電体では、寸法S1=115.0mm、寸法S2=110.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が1.05mm
2である。化成前の正極板の作製も、負極板と同様の各工程を通常の方法で行うことにより行った。
次に、得られた化成前の負極板をポリエチレン製の袋状セパレータに入れたものを7枚と、得られた化成前の正極板6枚を、交互に積層して積層体を得た。次に、COS(キャストオンストラップ)方式の鋳造装置を用いて、各積層体の正極板および負極板にストラップと中間極柱と端子極柱を形成することで、極板群を得た。
【0039】
この極板群を六個用意し、電槽の各セル室に入れて、隣接するセル室間の中間極柱の抵抗溶接、電槽と蓋の熱溶着、注液孔から各セル室内への電解液の注入、および注液孔を塞ぐことなどの通常の工程を行うことにより、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた。その後、通常の方法で電槽化成を行うことで、電槽化成後の比重を1.285(20℃換算値)とした。
また、負極集電体中のビスマスの含有率を調整することにより、No.1で100ppm、No.8で0.3ppm、No.9で0.5ppm、No.10で22ppm、No.11で205ppm、No.12で250ppm、No.13で270ppmとした。このようにしてNo.1およびNo.8〜No.13の液式鉛蓄電池を得た。
【0040】
<サンプルNo.2およびNo.14〜No.19>
サンプルNo.2およびNo.14〜No.19の液式鉛蓄電池は、
図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.70mm
2である。それ以外の点については、サンプルNo.2はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.14はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.15はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.16はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.17はサンプルNo.11と同じであり、サンプルNo.18はサンプルNo.12と同じであり、サンプルNo.19はサンプルNo.13と同じである。
用いた負極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8〜No.13と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.2およびNo.14〜No.19の液式鉛蓄電池を得た。
【0041】
<サンプルNo.3およびNo.20〜No.25>
サンプルNo.3およびNo.20〜No.25の液式鉛蓄電池は、
図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.65mm
2である。それ以外の点については、サンプルNo.3はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.20はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.21はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.22はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.23はサンプルNo.11と同じであり、サンプルNo.24はサンプルNo.12と同じであり、サンプルNo.25はサンプルNo.13と同じである。
用いた負極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8〜No.13と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.3およびNo.20〜No.25の液式鉛蓄電池を得た。
【0042】
<サンプルNo.4およびNo.26〜No.31>
サンプルNo.4およびNo.26〜No.31の液式鉛蓄電池は、
図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.60mm
2である。それ以外の点については、サンプルNo.4はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.26はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.27はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.28はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.29はサンプルNo.11と同じであり、サンプルNo.30はサンプルNo.12と同じであり、サンプルNo.31はサンプルNo.13と同じである。
用いた負極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8〜No.13と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.4およびNo.26〜No.31の液式鉛蓄電池を得た。
【0043】
<サンプルNo.5およびNo.32〜No.37>
サンプルNo.5およびNo.32〜No.37の液式鉛蓄電池は、
図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.55mm
2である。それ以外の点については、サンプルNo.5はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.32はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.33はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.34はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.35はサンプルNo.11と同じであり、サンプルNo.36はサンプルNo.12と同じであり、サンプルNo.37はサンプルNo.13と同じである。
用いた負極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8〜No.13と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.5およびNo.32〜No.37の液式鉛蓄電池を得た。
【0044】
<サンプルNo.6およびNo.38〜No.43>
サンプルNo.6およびNo.38〜No.43の液式鉛蓄電池は、
図1に示す形状の負極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.45mm
2である。それ以外の点については、サンプルNo.6はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.38はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.39はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.40はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.41はサンプルNo.11と同じであり、サンプルNo.42はサンプルNo.12と同じであり、サンプルNo.43はサンプルNo.13と同じである。
用いた負極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8〜No.13と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.6およびNo.38〜No.43の液式鉛蓄電池を得た。
【0045】
<サンプルNo.7およびNo.44〜No.49>
サンプルNo.7およびNo.44〜No.49の液式鉛蓄電池は、
図3に示す形状の負極集電体1Aを有し、寸法S1=114.0mm、寸法S2=108.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112aの太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.50mm
2、中骨112bの太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.90mm
2である。それ以外の点については、サンプルNo.7はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.44はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.45はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.46はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.47はサンプルNo.11と同じであり、サンプルNo.48はサンプルNo.12と同じであり、サンプルNo.49はサンプルNo.13と同じである。
図3の負極集電体1Aを用いた以外はサンプルNo.1およびNo.8〜No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、No.7およびNo.44〜No.49の液式鉛蓄電池を得た。
【0046】
[分割体の切断面の各抵抗値測定]
先ず、得られたサンプルNo.1〜No.7の液式鉛蓄電池を分解して、負極板を取り出し、負極板から負極活物質を除去して洗浄することにより、No.1〜No.7の各負極集電体1,1Aを得た。次に、負極集電体1,1Aを、それぞれ
図1および
図3に示す対角線Dに沿って鋏で切断することにより、
図2および
図4に示す、耳が存在する分割体2,2Aを得た。耳が存在する分割体2において、基準線Kにより区分された第一の部分21は、中骨112の切断面を13個有する。耳が存在する分割体2Aにおいて、基準線Kにより区分された第一の部分21Aは、中骨112a,112bの切断面を合計で13個有する。
【0047】
次に、耳12の中心点Pと各中骨の切断面C1〜C13との間の各抵抗値Rn(R1〜R13)を、抵抗計(HIOKI社製 3554 BATTERY HiTESTER)を用いて三回ずつ測定し、平均値を算出した。また、中心点Pと各切断面C1〜C13の中心点との各距離Xn(X1〜X13)を、定規で測定した。これらの測定結果(各抵抗値Rnは三回測定の平均値)を表1〜表7に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
次に、サンプル毎に、x軸およびy軸が共に線形目盛である座標平面に、抵抗値Rn(三回測定の平均値)をy座標、距離Xnをx座標として、測定結果をプロットした。これにより、
図5〜
図11に示すグラフを得た。
図5はNo.1の結果を、
図6はNo.2の結果を、
図7はNo.3の結果を、
図8はNo.4の結果を、
図9はNo.5の結果を、
図10はNo.6の結果を、
図11はNo.7の結果を、それぞれ示す。
【0056】
図5に示すように、サンプルNo.1では、全てのプロットが、x=H(X8とX9との間の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1〜X8での各抵抗値(三回測定の平均値)R1〜R8の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X9〜X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表8に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
表8に示すように、サンプルNo.1の比A/Bは0.35であった。
また、
図6〜
図10に示すように、サンプルNo.2〜No.6では、それぞれ全てのプロットが、x=H(X9とX10との間の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1〜X9での各抵抗値(三回測定の平均値)R1〜R9の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X10〜X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表9〜表13に示す。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
【表11】
【0062】
【表12】
【0063】
【表13】
【0064】
表9〜表13に示すように、サンプルNo.2の比A/Bは0.40、サンプルNo.3の比A/Bは0.50、サンプルNo.4の比A/Bは0.55、サンプルNo.5の比A/Bは0.60、サンプルNo.6の比A/Bは0.70であった。
さらに
図11に示すように、サンプルNo.7では、全てのプロットが、x=H(X10の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1〜X9での各抵抗値(三回測定の平均値)R1〜R9の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X10〜X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表14に示す。
【0065】
【表14】
【0066】
表14に示すように、サンプルNo.7の比A/Bは0.60であった。
【0067】
[試験および評価]
得られたNo.1〜No.49の液式鉛蓄電池について、EUCARパワーアシストプロファイルによる寿命試験を実施した。この試験の1サイクルの充放電パターンを
図12に示す。C
2は2時間率容量である。この充放電パターンでは部分充電状態での深い放電がある。
また、この寿命試験を100サイクル行った後に、電解液の比重を電槽の上部と下部で光学比重計を用いて測定し、これらの測定値から上下の比重差を算出した。
これらの試験の結果を、各サンプルの格子状基板の構成とともに表15および表16に示す。表15は、負極集電体中のビスマスの含有率が同じ100ppmで負極集電体の抵抗値の比A/Bが異なるサンプルNo.1〜No.7について、上下比重差と寿命試験の結果をまとめたものである。表16は、サンプルNo.1〜No.49の全試験結果を、抵抗値の比A/Bが同じで負極集電体中のビスマスの含有率が異なる場合の違いが分かるようにまとめたものである。
【0068】
【表15】
【0069】
【表16】
【0070】
表15から分かるように、0.40≦A/B≦0.60を満たさないNo.1およびNo.6の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.068および0.038と大きかったのに対し、0.40≦A/B≦0.60を満たすNo.2〜No.5とNo.7の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.004〜0.013と小さかった。また、0.40≦A/B≦0.60を満たさないNo.1とNo.6の液式鉛蓄電池の寿命は、8500〜9000サイクルであったのに対し、0.40≦A/B≦0.60を満たすNo.2〜No.5とNo.7の液式鉛蓄電池の寿命は、17500〜22500サイクルと長かった。
表15の結果から、0.40≦A/B≦0.60を満たす負極集電体を備え、負極集電体中のビスマスの含有率が100ppmである液式鉛蓄電池は、部分充電状態で使用される場合に電解液の成層化が抑制されて、寿命を長くできることが確認できた。
【0071】
さらに、表16からは以下のことが分かる。
0.40≦A/B≦0.60を満たし、かつ負極集電体中のビスマスの含有率が0.5ppm以上250ppm以下であるサンプルNo.2〜No.5、No.7、No.15〜No.18、No.21〜No.24、No.27〜No.30、No.33〜No.36およびNo.45〜No.48の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.004〜0.020と小さく、寿命も17500〜22500サイクルと長かった。
これに対して、0.40≦A/B≦0.60を満たさないサンプルNo.1およびNo.8〜No.13とNo.6およびNo.38〜No.43の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.038〜0.070と大きく、寿命は8500〜9000サイクルと短かった。
【0072】
また、0.40≦A/B≦0.60を満たすが、負極集電体中のビスマスの含有率が0.3ppmであるサンプルNo.14、No.20、No.26、No.32、No.44の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.032〜0.042と大きく、寿命は7000〜8900サイクルであった。さらに、0.40≦A/B≦0.60を満たすが、負極集電体中のビスマスの含有率が270ppmであるサンプルNo.19、No.25、No.31、No.37、No.49の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差は0.009〜0.010と小さかったが、寿命は9700〜11500サイクルであった。
【0073】
このような結果となった理由は以下の様に推定できる。
先ず、0.40≦A/B≦0.60を満たしていても負極集電体中のビスマスの含有率が0.3ppmである液式鉛蓄電池では、負極の水素過電圧が低下し、ガス発生による電解液の攪拌が促進され、成層化が抑制されるという効果が発現しなかったと考えられる。
次に、0.40≦A/B≦0.60を満たしていて負極集電体中のビスマスの含有率270ppmである液式鉛蓄電池では、ガス発生が顕著になり過ぎ、電解液の減水が増加し、寿命性能が低下したと考えられる。
【0074】
このように、表16の結果から、0.40≦A/B≦0.60を満たす負極集電体を備え、負極集電体中のビスマスの含有率が0.5ppm以上250ppm以下である液式鉛蓄電池は、部分充電状態で使用される場合に電解液の成層化が抑制されて、寿命を長くできることが確認できた。