(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、車両100の概略構成図である。車両100は、エンジン1と、動力伝達装置としての自動変速機3と、オイルポンプ5と、駆動輪6と、を備える。
【0011】
エンジン1は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、走行用駆動源として機能する。エンジン1は、コントローラ10からの指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
【0012】
自動変速機3は、トルクコンバータ20と、締結要素60と、ベルト式無段変速機構(以下、「CVT」ともいう。)30と、油圧コントロールバルブユニット40(以下では、単に「バルブユニット40」ともいう。)と、オイル(作動油)を貯留するオイルパン32と、制御装置としてのコントローラ10と、を備える。
【0013】
自動変速機3は、Dレンジすなわちドライブレンジ、Rレンジすなわちリバースレンジ、Nレンジすなわちニュートラルレンジ、Pレンジすなわち駐車レンジ等のレンジを有する。自動変速機3のレンジは、シフトレバー31によって選択される。本実施形態においては、Dレンジ及びRレンジは走行レンジであり、Nレンジ及びPレンジは非走行レンジである。
【0014】
トルクコンバータ20は、エンジン1と駆動輪6の間の動力伝達経路上に設けられる。トルクコンバータ20は、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ20は、ロックアップクラッチ20aを締結することで、エンジン1からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
【0015】
CVT30は、締結要素60と駆動輪6との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更する。CVT30は、プライマリプーリ30aと、セカンダリプーリ30bと、両プーリ30a,30bに巻き掛けられたベルト30cと、を備える。プーリ圧によりプライマリプーリ30aの可動プーリとセカンダリプーリ30bの可動プーリとを軸方向に動かし、ベルト30cのプーリ接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更する。なお、プライマリプーリ30aに作用するプーリ圧及びセカンダリプーリ30bに作用するプーリ圧は、オイルポンプ5からの吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧される。
【0016】
CVT30のセカンダリプーリ30bの出力軸には、図示しない終減速ギヤ機構を介してディファレンシャル12が接続される。ディファレンシャル12には、ドライブシャフト13を介して駆動輪6が接続される。
【0017】
締結要素60は、トルクコンバータ20とCVT30の間の動力伝達経路上に配置される。締結要素60は、第1締結要素としての前進クラッチFWD/Cと、第2締結要素としての後進ブレーキREV/Bと、を有する。前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bの締結または解放は、コントローラ10からの指令に基づき、オイルポンプ5の吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧された締結圧によって制御される。
【0018】
前進クラッチFWD/Cが締結されると、エンジン1の回転トルクがトルクコンバータ20を介してCVT30へ伝達され、車両100が前進する。後進ブレーキREV/Bが締結されると、エンジン1の回転トルクがトルクコンバータ20を介してCVT30へ伝達され、車両100が後進する。
【0019】
オイルポンプ5は、エンジン1の回転がベルトを介して伝達されることによって駆動される。オイルポンプ5は、例えばベーンポンプによって構成される。オイルポンプ5は、オイルパン32に貯留される作動油を吸い上げ、バルブユニット40に作動油を供給する。バルブユニット40に供給された作動油は、バルブユニット40内で調圧され、各プーリ30a,30bの駆動や、締結要素60の駆動、自動変速機3の各要素の潤滑などに用いられる。
【0020】
コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。具体的には、コントローラ10は、自動変速機3を制御するATCU、シフトレンジを制御するSCU、エンジン1の制御を行うECU等によって構成することもできる。なお、後述するアキュムレータ80A、80Bの制御を行う制御部とは、コントローラ10が当該制御を実行する機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0021】
コントローラ10には、エンジン1の回転速度Neを検出する第1回転速度センサ51、締結要素60の出力回転速度Nout(=プライマリプーリ30aの回転速度)を検出する第2回転速度センサ52、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ53、CVT30のセレクトレンジ(前進、後進、ニュートラル及びパーキングを切り替えるセレクトレバー又はセレクトスイッチの状態)を検出するインヒビタスイッチ54、セカンダリプーリ30bの回転速度を検出する第3回転速度センサ55と、ブレーキの踏力を検出する踏力センサ56と、車速Vを検出する車速センサ57と、油温を検出する油温センサ58と、からの信号が入力される。コントローラ10は、入力されるこれら信号に基づき、エンジン1や自動変速機3の各種動作を制御する。
【0022】
バルブユニット40は、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bの動作を制御する油圧制御回路Cを備える(
図2参照)。以下に、
図2を参照しながら油圧制御回路Cについて説明する。
【0023】
油圧制御回路Cは、油圧回路71と、セレクト用油圧アクチュエータ72と、レンジセレクトバルブ73と、ON/OFFバルブ74と、流路75と、アキュムレータ80Aと、アキュムレータ80Bと、を備える。
【0024】
油圧回路71は、オイルポンプ5から吐出された作動油の圧力をコントローラ10からの指令に応じて調整する。セレクト用油圧アクチュエータ72は、油圧回路71の下流に設けられる。セレクト用油圧アクチュエータ72は、コントローラ10からの指令に応じて流路75を遮断する。セレクト用油圧アクチュエータ72は、例えば、3方向のソレノイドバルブによって構成される。
【0025】
レンジセレクトバルブ73は、セレクト用油圧アクチュエータ72の下流に設けられる。レンジセレクトバルブ73には、オイルポンプ5から吐出された作動油が油圧回路71及びセレクト用油圧アクチュエータ72を通じて供給される。
【0026】
レンジセレクトバルブ73は、スプール(図示せず)と、スプールを駆動するアクチュエータ(図示せず)と、を備える。スプールは、コントローラ10からの指示に基づいて、前進位置と、中立位置と、後進位置と、のいずれかに切り替えられる。前進位置では、流路75と前進クラッチFWD/Cとが連通し、後進ブレーキREV/BとタンクTとが連通する。中立位置では、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/BはタンクTに連通する。後進位置では、流路75と後進ブレーキREV/Bとが連通し、前進クラッチFWD/CとタンクTとが連通する。
【0027】
アキュムレータ80Aは、レンジセレクトバルブ73と前進クラッチFWD/Cとを接続する流路77に接続される。アキュムレータ80Bは、レンジセレクトバルブ73と後進ブレーキREV/Bとを接続する流路78に接続される。アキュムレータ80A、80Bの具体的な構成については、後述する。
【0028】
ON/OFFバルブ74は、流路75における油圧回路71とセレクト用油圧アクチュエータ72との間から分岐した分岐流路76に設けられる。ON/OFFバルブ74は、例えば、3方向のソレノイドバルブに構成される。ON/OFFバルブ74は、アキュムレータ80A、80Bの動作を制御する。ON/OFFバルブ74の具体的な制御については後述する。
【0029】
このように構成された油圧制御回路Cでは、ドライバがシフトレバー31をDレンジに操作すると、レンジセレクトバルブ73が前進位置に切り替えられ、オイルポンプ5から供給された作動油が、油圧回路71及びセレクト用油圧アクチュエータ72を通じて前進クラッチFWD/Cに供給される。これにより、前進クラッチFWD/Cが締結され、車両100が前進する。
【0030】
ドライバがシフトレバー31をRレンジに操作すると、レンジセレクトバルブ73が後進位置に切り替えられ、オイルポンプ5から供給された作動油が、油圧回路71及びセレクト用油圧アクチュエータ72を通じて後進ブレーキREV/Bに供給される。これにより、後進ブレーキREV/Bが締結され、車両100が後進する。
【0031】
ドライバがシフトレバー31をNレンジまたはPレンジに操作すると、レンジセレクトバルブ73が中立位置に切り替えられ、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/B内の作動油がタンクTに排出される。これにより、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bが解放され、自動変速機3がニュートラル状態になる。
【0032】
次に、アキュムレータ80A、80Bの具体的な構成について説明する。アキュムレータ80Aとアキュムレータ80Bは同じ構成であるため、以下では、アキュムレータ80Aを中心に説明し、アキュムレータ80Bについてはアキュムレータ80Aと同一の構成には図中に同じ数字の符号を付して説明を省略する。
【0033】
アキュムレータ80Aは、シリンダ部81と、ピストン82と、第1油室83と、第2油室84と、空間85と、弾性部材としてのスプリング86と、を備える。
【0034】
シリンダ部81は、略円筒形状の孔によって形成される。シリンダ部81は、大径部81aと、大径部81aよりも小径の小径部81bと、を有する。
【0035】
ピストン82は、シリンダ部81内に摺動自在に収容される。ピストン82は、大径部81aに摺動する大径部82aと、小径部81bに摺動する小径部82bと、を有する。
【0036】
第1油室83は、シリンダ部81の小径部81bにおいて、シリンダ部81の小径部81bとピストン82の小径部82bとによって画成される。アキュムレータ80Aの第1油室83は、流路77に接続され、アキュムレータ80Bの第1油室83は、流路78に接続される。
【0037】
第2油室84は、シリンダ部81の大径部81aの小径部81b側において、シリンダ部81の大径部81a、ピストン82の大径部82a及び小径部82bによって画成される。第2油室84は、分岐流路76を通じてON/OFFバルブ74に接続される。
【0038】
空間85は、シリンダ部81の大径部81aにおいて、第2油室84と大径部82aを挟んで反対側に設けられる。
【0039】
スプリング86は、空間85内に設けられる。スプリング86は、第1油室83及び第2油室84の容積を減少させる方向に向かってピストン82を付勢する。なお、スプリング86に代えて、弾性部材として、窒素等の気体を空間85内に充填するようにしてもよい。
【0040】
このように構成されたアキュムレータ80A、80Bは、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bの動作時における油圧によるショックや流路77、78における油圧の脈動を吸収する。
【0041】
次に、
図3を参照して、前進クラッチFWD/Cの具体的な構成について説明する。
【0042】
前進クラッチFWD/Cは、クラッチドラム61と、クラッチハブ62と、ドリブンプレート63と、ドライブプレート64と、第1ディッシュプレートとしてのディッシュプレート65と、第1ピストンとしてのピストン66と、を備える。
【0043】
クラッチドラム61及びクラッチハブ62は同軸に配置される。クラッチドラム61には、図示しない回転要素(軸、ギヤ等)が連結される。クラッチハブ62には、図示しない別の回転要素(軸、ギヤ等)が連結される。
【0044】
クラッチドラム61には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にドリブンプレート63が取り付けられる。クラッチハブ62には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にドライブプレート64が取り付けられる。ドリブンプレート63とドライブプレート64とは交互に配置される。ドライブプレート64の両側の摩擦面には、クラッチフェーシングが設けられる。
【0045】
クラッチドラム61は、ドリブンプレート63及びドライブプレート64を介して、クラッチドラム61に連結された回転要素から入力される回転をクラッチハブ62に伝達する。
【0046】
ピストン66は、前進クラッチFWD/Cの軸方向に対して変位可能に配置される。
【0047】
ディッシュプレート65は、例えば、皿ばねのようなバネ性を有する部材によって構成される。ピストン66によりドリブンプレート63とドライブプレート64とが押圧されたときに、圧縮反力によりドリブンプレート63とドライブプレート64とを圧接する。
【0048】
前進クラッチFWD/Cは、ピストン室67と、キャンセラ室68と、仕切りプレート69と、をさらに備える。
【0049】
第1油圧室としてのピストン室67は、クラッチドラム61とピストン66との間に画成される。ピストン室67は、流路77を通じてレンジセレクトバルブ73(
図2参照)に接続される。ピストン室67に作動油が供給されると、ピストン66はドリブンプレート63とドライブプレート64とを圧接する方向に移動する。
【0050】
ピストン66と仕切りプレート69との間には、リターンスプリング70が設けられる。リターンスプリング70は、ピストン66を解放側(ドリブンプレート63とドライブプレート64との圧接を解除する方向)に向かって付勢する。
【0051】
キャンセラ室68は、仕切りプレート69とピストン66との間に画成される。ピストン室67の油圧が遠心力で変動することを防止するために油が満たされる。
【0052】
次に、このように構成された前進クラッチFWD/Cの動作を説明する。
【0053】
レンジセレクトバルブ73が前進位置に切り替えられると、レンジセレクトバルブ73から流路77を通じてピストン室67に作動油が供給される。そして、ピストン室67内の油圧が上昇すると、ディッシュプレート65及びリターンスプリング70の付勢力に抗して、ピストン66が仕切りプレート69側(
図3における左方向)に移動する。
【0054】
さらにピストン室67内の油圧が上昇すると、ピストン66がディッシュプレート65を介してドリブンプレート63とドライブプレート64とを圧接する。これにより、前進クラッチFWD/Cが締結状態となる。
【0055】
レンジセレクトバルブ73が前進位置から中立位置または後進位置に切り替えられると、ピストン室67の作動油が流路77を通じてレンジセレクトバルブ73から排出される。ピストン室67内の油圧が低下すると、リターンスプリング70及びディッシュプレート65の付勢力によってピストン66が後退する。これにより、ドリブンプレート63とドライブプレート64とが離間して、前進クラッチFWD/Cが解放状態となる。
【0056】
次に、
図4を参照して、後進ブレーキREV/Bの具体的な構成について説明する。
【0057】
後進ブレーキREV/Bは、ケース91と、回転体であるハブ92と、第1プレート93と、第2プレート94と、第2ディッシュプレートとしてのディッシュプレート95と、第2ピストンとしてのピストン96と、を備える。
【0058】
ケース91には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在に第1プレート93が取り付けられている。ハブ92には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在に第2プレート94が取り付けられている。第1プレート93と第2プレート94とは交互に配置される。第2プレート94の両側の摩擦面には、クラッチフェーシングが設けられる。
【0059】
ハブ92は、第1プレート93と第2プレート94とが圧接される(締結される)と、ケース91に対する相対回転が規制される。
【0060】
ピストン96は、後進ブレーキREV/Bの軸方向に対して変位可能に配置される。
【0061】
ディッシュプレート95は、例えば、皿ばねのようなバネ性を有する部材によって構成される。ピストン96により第1プレート93と第2プレート94とが押圧されたときに、圧縮反力により第1プレート93と第2プレート94とを圧接する。
【0062】
後進ブレーキREV/Bは、ピストン室97と、仕切りプレート99と、をさらに備える。
【0063】
第2油圧室としてのピストン室97は、ケース91とピストン96との間に画成される。ピストン室97は、流路78を通じてレンジセレクトバルブ73(
図2参照)に接続される。ピストン室97に作動油が供給されると、ピストン96は第1プレート93と第2プレート94とを圧接する方向に移動する。
【0064】
ピストン96と仕切りプレート99との間には、リターンスプリング98が設けられる。リターンスプリング98は、ピストン96を解放側(第1プレート93と第2プレート94との圧接を解除する方向)に向かって付勢する。
【0065】
次に、このように構成された後進ブレーキREV/Bの動作を説明する。
【0066】
レンジセレクトバルブ73が後進位置に切り替えられると、レンジセレクトバルブ73から流路78を通じてピストン室97に作動油が供給される。そして、ピストン室97内の油圧が上昇すると、ディッシュプレート95及びリターンスプリング98の付勢力に抗して、ピストン96が仕切りプレート99側(
図4における右方向)に移動する。
【0067】
さらにピストン室97内の油圧が上昇すると、ピストン96がディッシュプレート95を介して第1プレート93と第2プレート94とを圧接する。これにより、後進ブレーキREV/Bが締結状態となる。
【0068】
レンジセレクトバルブ73が後進位置から中立位置または前進位置に切り替えられると、ピストン室97の作動油が流路78を通じてレンジセレクトバルブ73から排出される。ピストン室97内の油圧が低下すると、リターンスプリング98及びディッシュプレート95の付勢力によってピストン96が後退する。これにより、第1プレート93と第2プレート94とが離間して、後進ブレーキREV/Bが解放状態となる。
【0069】
ここで、前進クラッチFWD/Cの動作時におけるショックの低減及び応答性の向上について説明する。
【0070】
前進クラッチFWD/Cの解放時に、ピストン室67内の油圧が急速に低下すると、この油圧低下(油圧抜け)に伴ってショックが発生することがある。そこで、例えば、ディッシュプレート65のばね定数を下げることで、前進クラッチFWD/Cの解放時の油圧抜けショックを軽減できる。しかしながら、ディッシュプレート65のばね定数を下げてしまうと、前進クラッチFWD/Cの締結時の油圧応答性が悪化してしまう。
【0071】
これに対し、前進クラッチFWD/Cの締結時に、ピストン室67への油圧が遅いと、その分前進クラッチFWD/Cの応答が遅れる。そこで、例えば、ディッシュプレート65のばね定数を上げることで、前進クラッチFWD/Cの締結時の油圧応答性を上げられる。しかしながら、ディッシュプレート65のばね定数を上げてしまうと、前進クラッチFWD/Cの解放時の油圧抜けショックが悪化してしまう。
【0072】
このように、ディッシュプレート65のばね定数を調整するだけでは、前進クラッチFWD/Cの作動時のショックの低減及び応答性の向上を両立することは容易ではない。
【0073】
また、後進ブレーキREV/Bもディッシュプレート95を備えている。このため、後進ブレーキREV/Bにおいても、ディッシュプレート95のばね定数を調整するだけでは、後進ブレーキREV/Bの作動時の油圧抜けショックの低減及び応答性の向上を両立することは容易ではない。
【0074】
そこで、本実施形態では、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bに油圧を供給する流路77、78にそれぞれアキュムレータ80A、80Bを設け、アキュムレータ80A、80Bの作動をコントローラ10によって制御する。これにより、締結要素60(前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/B)の作動時の油圧抜けショックの低減及び応答性の向上の両立を実現する。以下に、アキュムレータ80A、80Bの制御について、
図5を参照しながら、具体的に説明する。
【0075】
図5は、本実施形態に係るアキュムレータ80A、80Bの制御の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS11において、コントローラ10は、シフトレンジが、DレンジまたはRレンジからPレンジまたはNレンジに切り替えられたか否かを判定する。つまり、コントローラ10は、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられたか否かを判定する。コントローラ10は、インヒビタスイッチ54からの信号に基づいて、シフトレバー31が、DレンジまたはRレンジからPレンジまたはRレンジに切り替えられたか否かを判定する。シフトレンジが、DレンジまたはRレンジからPレンジまたはRレンジに切り替えられていれば、ステップS12に進み、DレンジまたはRレンジからPレンジまたはRレンジに切り替えられていなければ、ステップS15に進む。
【0076】
ステップS12では、締結圧を低下させる。具体的には、コントローラ10は、レンジセレクトバルブ73を中立位置に切り替える。これにより、締結されている締結要素60(前進クラッチFWD/Cまたは後進ブレーキREV/B)の油圧(締結圧)が低下する。
【0077】
ステップS13では、締結されていた締結要素60(前進クラッチFWD/Cまたは後進ブレーキREV/B)の解放が完了したか否かを判定する。つまり、コントローラ10は、シフトレンジの切り替えが完了したか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、レンジセレクトバルブ73が中立位置に切り替えられてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していれば、ステップS14に進み、所定時間が経過していなければ、ステップS13の判定を繰り返す。なお、例えば、流路77及び流路78の圧力を検出し、この圧力に基づいて締結要素60の解放完了を判定するようにしてもよい。
【0078】
ステップS14では、アキュムレータ80A、80Bをロックする。具体的には、ON/OFFバルブ74をONにして、アキュムレータ80A、80Bの第2油室84に油圧を供給する。なお、以下では、第2油室84に供給される油圧を「背圧」ともいう。
【0079】
アキュムレータ80Aでは、第2油室84に油圧が供給されると、ピストン82がスプリング86を圧縮する方向(
図2における左方向)に移動し、大径部81aの空間85側の側壁に当接して停止する。つまり、ON/OFFバルブ74がON状態では、ピストン82はこの位置にロック(保持)される。このため、前進クラッチFWD/Cの圧力、具体的には、ピストン室67内の圧力が低下しても、アキュムレータ80Aに蓄圧された圧力(放出圧)が流路77を通じてピストン室67に供給されることはない。つまり、ON/OFFバルブ74がONの状態では、アキュムレータ80Aの放出圧のピストン室67への供給が停止される。別の言い方をすると、ON/OFFバルブ74がONの状態では、アキュムレータ80Aはロック状態になり、アキュムレータ80Aの蓄圧機能が停止する(無効になる)。
【0080】
なお、アキュムレータ80Bについても、同様に、ON/OFFバルブ74がONの状態では、アキュムレータ80Bの放出圧のピストン室97への供給が停止される。つまり、ON/OFFバルブ74がONの状態では、アキュムレータ80Bの蓄圧機能も停止する(無効になる)。
【0081】
ステップS15では、コントローラ10は、シフトレンジが、PレンジまたはNレンジからDレンジまたはRレンジに切り替えられたか否かを判定する。つまり、コントローラ10は、シフトレンジが非走行レンジから走行レンジに切り替えられたか否かを判定する。コントローラ10は、インヒビタスイッチ54からの信号に基づいて、シフトレバー31が、PレンジまたはNレンジからDレンジまたはRレンジに切り替えられたか否かを判定する。シフトレンジが、PレンジまたはNレンジからDレンジまたはRレンジに切り替えられていれば、ステップS16に進み、シフトレンジが切り替えられていない、あるいは、走行レンジから走行レンジ(例えば、DレンジからRレンジ)、または、非走行レンジから非走行レンジ(例えば、PレンジからNレンジ)に切り替えられていると判定した場合には、ENDに進む。
【0082】
ステップS16では、締結圧を上昇させる。具体的には、コントローラ10は、レンジセレクトバルブ73を選択されたシフトレンジに応じて前進位置または後進位置に切り替える。これにより、締結要素60(前進クラッチFWD/Cまたは後進ブレーキREV/B)の油圧(締結圧)が上昇する。
【0083】
ステップS17では、締結要素60(前進クラッチFWD/Cまたは後進ブレーキREV/B)の締結が完了したか否かを判定する。つまり、コントローラ10は、シフトレンジの切り替えが完了したか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、レンジセレクトバルブ73が前進位置または後進位置に切り替えられてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していれば、ステップS18に進み、所定時間が経過していなければ、ステップS17の判定を繰り返す。なお、例えば、流路77及び流路78の圧力を検出し、この圧力に基づいて締結要素60の締結完了を判定するようにしてもよい。
【0084】
ステップS18では、アキュムレータ80A、80Bのロックを解除する。具体的には、ON/OFFバルブ74をOFFにして、アキュムレータ80A、80Bの第2油室84の油圧(背圧)を低下させる。
【0085】
アキュムレータ80Aでは、第2油室84の油圧が低下すると、ピストン82は、スプリング86の付勢力によって第2油室84が縮小する方向(
図2における右方向)に移動する。そして、ピストン82は、スプリング86の付勢力とピストン82の小径部82bに作用する油圧による付勢力とが釣り合った位置で停止する。つまり、ON/OFFバルブ74がOFFの状態では、ピストン82は、ロックが解除された状態となる。このため、前進クラッチFWD/Cの圧力、具体的には、ピストン室67内の圧力が低下すると、アキュムレータ80Aから圧力(放出圧)が流路77を通じてピストン室67に供給される。つまり、ON/OFFバルブ74がOFFの状態では、アキュムレータ80Aの放出圧のピストン室67への供給が可能になる。さらに別の言い方をすると、ON/OFFバルブ74がOFFの状態では、アキュムレータ80Aの蓄圧機能が有効になる。
【0086】
また、ON/OFFバルブ74がOFFの状態では、流路77内の作動油が脈動した場合には、その脈動をアキュムレータ80Aによって吸収することもできる。
【0087】
なお、アキュムレータ80Bについても、同様に、ON/OFFバルブ74がOFFの状態では、アキュムレータ80Bの放出圧のピストン室97への供給が可能になる。つまり、ON/OFFバルブ74がOFFの状態では、アキュムレータ80Bの蓄圧機能が有効になる。
【0088】
次に、
図6に示すタイミングチャートを参照しながら、アキュムレータ80A、80Bの制御について説明する。なお、
図6は、D→N→Dの順にシフトレンジを切り換えた場合を一例として示している。
【0089】
時刻t1において、シフトレンジがDレンジからNレンジに切り替えられると、コントローラ10は、レンジセレクトバルブ73を中立位置に切り替える。これにより、前進クラッチFWD/Cのピストン室67内の油圧(締結圧)がレンジセレクトバルブ73を通じてタンクTに排出される。このとき、ON/OFFバルブ74はOFF状態であるので、アキュムレータ80Aのロック状態が解除されている。このため、FWD/Cのピストン室67内の油圧が低下すると、アキュムレータ80Aに蓄圧された圧力(放出圧)が流路77に供給される。これにより、前進クラッチFWD/Cのピストン室67内の油圧の急速な低下が抑制されるので、前進クラッチFWD/Cの解放時における油圧抜けショックを軽減することができる。
【0090】
時刻t1から所定時間経過する、具体的には、前進クラッチFWD/Cの解放が完了した(時刻t2)後、時刻t3において、コントローラ10は、ON/OFFバルブ74をONに切り替える。これにより、オイルポンプ5から吐出された作動油が流路75、分岐流路76及びON/OFFバルブ74を通じて第2油室84に供給される。
【0091】
そして、ピストン82がスプリング86の付勢力に抗して移動し、大径部81aの空間85側の側壁に当接すると、アキュムレータ80Aはロック状態になる(時刻t4)。つまり、前進クラッチFWD/Cが解放状態を維持している間は、アキュムレータ80Aの放出圧のピストン室67への供給を停止する。
【0092】
時刻t5において、シフトレンジがNレンジからDレンジに切り替えられると、コントローラ10は、レンジセレクトバルブ73を前進位置に切り替える。これにより、オイルポンプ5から吐出された作動油が、レンジセレクトバルブ73から流路77を通じて前進クラッチFWD/Cのピストン室67に供給される。このとき、アキュムレータ80Aはロック状態であるので、ピストン82は移動しない。このため、オイルポンプ5から吐出された作動油は、略全量が前進クラッチFWD/Cのピストン室67に供給される。これにより、前進クラッチFWD/Cの締結速度が、アキュムレータ80Aをロック状態にしていない場合に比べて速くなる。つまり、前進クラッチFWD/Cの締結開始から締結完了までの間、アキュムレータ80Aの放出圧のピストン室67への供給停止を行うことで、前進クラッチFWD/Cの締結時における応答性が向上する。
【0093】
時刻t5から所定時間経過する、具体的には、前進クラッチFWD/Cの締結が完了すると(時刻t6)、コントローラ10は、ON/OFFバルブ74をOFFに切り替える。これにより、第2油室84内の油圧(背圧)がON/OFFバルブ74を通じてタンクTに排出される。
【0094】
なお、時刻t6において、ON/OFFバルブ74をOFFに切り替えても、第1油室83には、高圧の作動油(前進クラッチFWD/Cを締結できる程度の油圧)が供給されているので、ピストン82は側壁に当接した位置に保持される。
【0095】
ON/OFFバルブ74のOFFへの切り替えは、締結圧がピストン82を空間85側の側壁に当接した状態に維持できる圧力まで上昇した時点以降であれば、どのような時点で行ってもよい。
【0096】
このように、本実施形態の自動変速機3では、走行レンジ(Dレンジ、Rレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ)へ切り替えた時には、締結要素60の締結完了後に、アキュムレータ80A、80Bをロックする。また、非走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ)から走行レンジ(Dレンジ、Rレンジ)へ切り替えた時には、締結要素60の締結完了後に、アキュムレータ80A、80Bのロックを解除する。
【0097】
アキュムレータ80A、80Bをロックする、つまり、アキュムレータ80A、80Bの排出機能を停止させることにより、所定タイミングにおいてはディッシュプレート65、95の特性のみに依存した締結要素60(前進クラッチFWD/Cまたは後進ブレーキREV/B)の締結又は解放動作を行うことができる。また、アキュムレータ80A、80Bのロックを解除する、つまり、アキュムレータ80A、80Bの排出機能を有効にすることにより、他の所定タイミングにおいてはディッシュプレート65、95の特性とアキュムレータ80A、80B特性とを相補的に利用した締結要素60(前進クラッチFWD/Cまたは後進ブレーキREV/B)の締結又は解放動作を行うことができる。
【0098】
そこで、ディッシュプレート65、95のばね特性(ばね定数)を締結時及び解放時の一方に設定しておき、締結時及び解放時の一方のときには、アキュムレータ80A、80Bの排出機能を停止させる(無効にしておく)。また、締結時及び解放時の他方のときには、アキュムレータ80A、80Bの排出機能を有効にすることにより、ディッシュプレート65、95のばね特性(ばね定数)を締結時及び解放時の一方に設定した場合に、他方側のばね特性の不足をアキュムレータ80A、80Bの特性で補完することができる。
【0099】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0100】
動力伝達装置(自動変速機3)は、ピストン66、96と、ピストン66、96を所定方向へ移動させる油圧が供給される油圧室(ピストン室67、97)と、ピストン66、96を所定方向と反対方向へ移動させる付勢力を発生させるディッシュプレート65、95と、を有する締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)と、油圧室(ピストン室67、97)と接続するアキュムレータ80A、80Bと、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を行う制御部(コントローラ10)と、を有する。
【0101】
アキュムレータ80A、80Bの排出機能を停止させる制御部(コントローラ10)を設けることにより、所定タイミングにおいてはディッシュプレート65、95の特性のみに依存した締結又は解放動作を行うことができ、また、他の所定タイミングにおいてはディッシュプレート65、95の特性とアキュムレータ80A、80Bの特性とを相補的に利用した締結又は解放動作を行うことができるようになる。よって、締結時の油圧応答要求と解放時の油圧応答要求とを両立できる。
【0102】
制御部(コントローラ10)は、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)を解放状態から締結状態へ遷移させるときには、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を行う。
【0103】
この構成では、アキュムレータ80A、80Bの排出機能が有効になっている場合において、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)を締結状態に移行させようとすると、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)を締結させるための油圧に加えて、アキュムレータ80A、80Bに蓄圧するための油圧が必要となることから、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の締結応答性が低下する。そこで、アキュムレータ80A、80Bの排出機能を無効にする(停止する)ことにより、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の締結応答性を向上させることができる。また、このとき、アキュムレータ80A、80Bによる締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の急締結防止機能が低下するが、ディッシュプレート65、95が存在するため、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の急締結防止機能を十分に持たせることができる。
【0104】
制御部(コントローラ10)は、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の締結開始から締結完了までの間は、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を行う。
【0105】
締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の締結途中にアキュムレータ80A、80Bのロック状態を変化させてしまうと、油圧の急変が生じて伝達駆動力の変動が起きてしまい、ドライバが違和感を覚える可能性がある。このため、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を維持することにより、伝達駆動力の変動を抑制することができる。
【0106】
制御部(コントローラ10)は、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の解放状態を維持している間は、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を行う。
【0107】
解放状態から締結状態へ遷移させる指示があった後に、アキュムレータ80A、80Bをロックする方法も考えられるが、指示してからロックされるまでにはタイムラグがある。このため、事前にアキュムレータ80A、80Bをロック状態とすることにより、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の状態遷移時におけるタイムラグを短縮することができる。
【0108】
制御部(コントローラ10)は、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)を締結状態から解放状態へ遷移させるときには、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を解除する。
【0109】
締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)を解放状態に移行させようとする場合は、アキュムレータ80A、80Bの排出機能を有効にすることにより、ディッシュプレート65、95に反する力を発生させて、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の締結容量の低下を緩やかにできる。これにより、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の油圧抜けを緩やかにでき、油圧抜けショックを抑制できる。
【0110】
制御部(コントローラ10)は、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の解放開始から解放完了までの間は、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を解除する。
【0111】
締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の解放途中にアキュムレータ80A、80Bの排出機能を停止させてしまうと、ドライバが違和感を覚える可能性がある。このため、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の解放開始から解放完了までの間は、アキュムレータ80A、80Bのロック解除状態を維持する。
【0112】
制御部(コントローラ10)は、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の締結状態を維持している間は、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を解除する。
【0113】
締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)を締結状態から解放状態へ遷移させる指示があった後に、アキュムレータ80A、80Bの背圧を制御する方法も考えられる。しかしながら、背圧を供給するように指示してから実際に背圧が供給されるまでの間にタイムラグがある。このため、事前に背圧状態を準備状態とすることにより、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の状態遷移のラグを短縮することができる。
【0114】
アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止が行われた状態では、アキュムレータ80A、80Bは蓄圧機能が停止する位置にロックされる。
【0115】
アキュムレータ80A、80Bのロック位置は、蓄圧機能が停止する位置(蓄圧されていない位置、すなわち、スプリング86が最大長となる位置)と、蓄圧機能が機能する位置(蓄圧された位置、すなわち、スプリング86が最小長となる位置)と、の2通りが考えられる。前者の場合において、締結後にアキュムレータ80A、80Bのロックを解除した場合(背圧を抜いた場合)に蓄圧機能が復活することになり、完全締結中にも関わらずピストン室67、97の油圧が変化する可能性がある。このため、後者の構成とすることにより、このような油圧変化を防止することができるようになる。
【0116】
制御部(コントローラ10)は、アキュムレータ80A、80Bへ背圧を供給することにより供給停止を行う。
【0117】
アキュムレータ80A、80Bのピストン82を、例えば、電磁アクチュエータを用いてロック位置に移動させる場合に比べて、システムを小型化できる。
【0118】
動力伝達装置(自動変速機3)は、第1ピストン(ピストン66)と、第1ピストン(ピストン66)を第1所定方向へ移動させる油圧を供給する第1油圧室(ピストン室67)と、第1ピストン(ピストン66)を第1所定方向とは反対方向へ移動させる付勢力を発生させる第1ディッシュプレート(ディッシュプレート65)と、を有する第1締結要素(前進クラッチFWD/C)と、第2ピストン(ピストン96)と、第2ピストン(ピストン96)を第2所定方向へ移動させる油圧を供給する第2油圧室(ピストン室97)と、第2ピストン(ピストン96)を第2所定方向とは反対方向へ移動させる付勢力を発生させる第2ディッシュプレート(ディッシュプレート95)と、を有する第2締結要素(後進ブレーキREV/B)と、第1油圧室(ピストン室67)と接続する第1アキュムレータ(アキュムレータ80A)と、第2油圧室(ピストン室97)と接続する第2アキュムレータ(アキュムレータ80B)と、第1アキュムレータ(アキュムレータ80A)及び第2アキュムレータ(アキュムレータ80B)をロック状態とすることにより第1アキュムレータ(アキュムレータ80A)及び第2アキュムレータ(アキュムレータ80B)の放出圧の第1油圧室(ピストン室67)及び第2油圧室(ピストン室97)への供給停止を行う制御部(コントローラ10)と、制御部(コントローラ10)を制御することにより、第1アキュムレータ(アキュムレータ80A)及び第2アキュムレータ(アキュムレータ80B)を同時にロック状態へ遷移させるロック構造(分岐流路76及びON/OFFバルブ74)と、を有する。
【0119】
この構成では、複数のアキュムレータ80A、80Bを同時にロック状態へ遷移させるロック構造(分岐流路76及びON/OFFバルブ74)を有する。これにより、システムの簡素化、コスト低減などが可能となる。
【0120】
なお、上記実施形態のように、アキュムレータ80A、80Bへの背圧供給によりロックを行うのであれば、共通の背圧供給油路である分岐流路76と、これを制御するON/OFFバルブ74がロック構造に該当する。また、機械的な機構でロックを行うであれば、アキュムレータ80A、80Bのピストン82を共通の部材で同時にロックを行える構造とする。この場合、当該共通の部材がロック構造に該当する。
【0121】
制御部(コントローラ10)は、非走行レンジが選択されている時はアキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を行う。
【0122】
締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の解放状態(非走行レンジ)から締結状態(走行レンジ)へ遷移させる指示があった後に、アキュムレータ80A、80Bの放出圧の油圧室(ピストン室67、97)への供給停止を行うことも考えられる。しかしながら、指示してから、油圧が供給されるまでにタイムラグがある。このため、非走行レンジが選択されている時は、事前にアキュムレータ80A、80Bをロック状態とすることにより、締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)の状態遷移時のタイムラグを短縮することができる。
【0123】
また、非走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ)が選択されている場合は、次のレンジ選択に応じて締結する締結要素60(前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B)が変わってしまうので、共通の油路(分岐流路76)を設けて、双方の背圧を停止状態にしておくことにより、どのようなレンジが選択された場合であっても素早い対応(タイムラグの少ない対応)が可能となる。
【0124】
第1締結要素(前進クラッチFWD/C)は、前進用締結要素であり、第2締結要素(後進ブレーキREV/B)は、後進用締結要素である。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0126】
1つのON/OFFバルブ74でアキュムレータ80A、80Bを制御したが、アキュムレータ80A、80Bを制御するバルブをそれぞれ設けてもよい。
【0127】
アキュムレータ80A、80Bのロック手段は、背圧を供給する構成に限らず、例えば、電磁アクチュエータなどを用いてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bの両方にアキュムレータを設けたが、例えば、後進ブレーキREV/Bにおいて、締結時の油圧応答要求と解放時の油圧応答要求との両立がさほど要求されていないのであれば、前進クラッチFWD/Cのみにアキュムレータを設けるようにしてもよい。
【0129】
上記実施形態では、動力伝達装置として、自動変速機3を例に説明したが、動力伝達装置は、これに限らず、例えば、減速機や、前後進切替機構などであってもよい。
【0130】
本願は、2018年2月22日に日本国特許庁に出願された特願2018−29620号に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。