特許第6982679号(P6982679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982679
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20211206BHJP
   B60W 50/032 20120101ALI20211206BHJP
   B60W 50/035 20120101ALI20211206BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20211206BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20211206BHJP
【FI】
   B60W30/06
   B60W50/032
   B60W50/035
   G08G1/16 C
   B60R99/00 322
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-507417(P2020-507417)
(86)(22)【出願日】2019年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2019004572
(87)【国際公開番号】WO2019181265
(87)【国際公開日】20190926
【審査請求日】2020年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-57050(P2018-57050)
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清宮 大司
(72)【発明者】
【氏名】松田 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂口 知靖
(72)【発明者】
【氏名】小暮 佑介
(72)【発明者】
【氏名】深澤 至貴
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−343249(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102015220355(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0301814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/06
B60W 50/032
B60W 50/035
G08G 1/16
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された複数の外界認識装置と、
前記外界認識装置に基づいて前記車両に自動駐車を行わせる制御部とを備え、
前記外界認識装置は、撮像装置および距離センサ装置を含み、
前記撮像装置および前記距離センサ装置は、前記車両の前方を検知する前方認識群と、前記車両の後方を検知する後方認識群と、前記車両の右方を検知する右方認識群と、前記車両の左方を検知する左方認識群と、の各認識群にグループ分けされており、
前記制御部は、
前記外界認識装置の機能不全を前記認識群ごとに判定し、
前記車両の駐車方法および駐車方向の組み合わせに応じた駐車経路を生成し、
前記前方認識群および前記後方認識群の両方で前記撮像装置および前記距離センサ装置がいずれも正常に機能している場合は、前記車両を前記駐車経路の切返し位置まで前進させた後に後退させて他の車両と並列に駐車させる並列後ろ入れの自動駐車において、所定の第1の上限車速を超えた車速で前記車両を前記切返し位置まで前進させることを許容し、
前記後方認識群の前記撮像装置および前記距離センサ装置がいずれも正常に機能し、かつ前記前方認識群のうち前記撮像装置が機能不全になった場合は、前記並列後ろ入れの自動駐車において、前記車両を前記切返し位置まで前進させるときの車速の上限を前記第1の上限車速に制限し、
前記後方認識群の前記撮像装置および前記距離センサ装置がいずれも正常に機能し、かつ前記前方認識群のうち前記距離センサ装置が機能不全になった場合は、前記並列後ろ入れの自動駐車における前記切返し位置までの前記駐車経路を、直線を含む駐車経路から曲線の駐車経路に変更する駐車支援装置。
【請求項2】
請求項に記載の駐車支援装置において、
前記距離センサ装置は、ソナー、ミリ波レーダ、レーザレーダのいずれか一つである駐車支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駐車支援装置において、
前記制御部は、前記右方認識群が機能不全となった場合は、左側駐車を許可する駐車支援装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の駐車支援装置において、
前記制御部は、前記左方認識群が機能不全となった場合は、右側駐車を許可する駐車支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の駐車支援装置において、
前記制御部は、
前記複数の外界認識装置の全てが正常な場合は、前記車両と前記駐車経路上の障害物との距離が所定の第1の判定閾値以内の場合に前記自動駐車を中止し、
前記複数の外界認識装置のいずれかに機能不全が発生した場合は、前記車両と前記駐車経路上の障害物との距離が前記第1の判定閾値より大きい所定の第2の判定閾値以内の場合に前記自動駐車を中止する駐車支援装置。
【請求項6】
請求項1に記載の駐車支援装置において、
前記機能不全を報知する報知部を備え、
前記制御部は、前記外界認識装置が前記機能不全になったことを検出し、前記機能不全が検出された場合に前記報知部により前記機能不全を報知する駐車支援装置。
【請求項7】
請求項に記載の駐車支援装置において、
前記報知部は表示により前記機能不全を運転者へ報知する駐車支援装置。
【請求項8】
請求項に記載の駐車支援装置において、
前記報知部は警報により前記機能不全を運転者へ報知する駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車支援装置は、運転者が目標の駐車位置を指定すれば、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作の一部あるいは全てを自動で行い、車両を目標の駐車位置に自動駐車させるものである。この駐車支援装置には、外界認識装置としてカメラやソナーなどが用いられている。
【0003】
特許文献1には、駐車支援装置の外界認識装置としてレーザレーダとミリ波レーダからなる異種のセンサを組み合わせて障害物を検知すると共に、レーザレーダの測定能力の低下を判定して、測定能力が低下した場合にはミリ波レーダに基づいて障害物を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−202049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、駐車支援装置の外界認識装置として、例えば単眼カメラとソナーのように、それぞれ異種の検知特性を有するセンサを備えている。このため、自動駐車中に一方のセンサが故障により機能不全になった場合には、他方のセンサのみとなるため、車両の挙動によっては他方のセンサの検知特性により認識が悪化して自動駐車を継続できない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による駐車支援装置は、車両に設置された複数の外界認識装置と、前記外界認識装置に基づいて前記車両に自動駐車を行わせる制御部とを備え、前記外界認識装置は、撮像装置および距離センサ装置を含み、前記撮像装置および前記距離センサ装置は、前記車両の前方を検知する前方認識群と、前記車両の後方を検知する後方認識群と、前記車両の右方を検知する右方認識群と、前記車両の左方を検知する左方認識群と、の各認識群にグループ分けされており、前記制御部は、前記外界認識装置の機能不全を前記認識群ごとに判定し、前記車両の駐車方法および駐車方向の組み合わせに応じた駐車経路を生成し、前記前方認識群および前記後方認識群の両方で前記撮像装置および前記距離センサ装置がいずれも正常に機能している場合は、前記車両を前記駐車経路の切返し位置まで前進させた後に後退させて他の車両と並列に駐車させる並列後ろ入れの自動駐車において、所定の第1の上限車速を超えた車速で前記車両を前記切返し位置まで前進させることを許容し、前記後方認識群の前記撮像装置および前記距離センサ装置がいずれも正常に機能し、かつ前記前方認識群のうち前記撮像装置が機能不全になった場合は、前記並列後ろ入れの自動駐車において、前記車両を前記切返し位置まで前進させるときの車速の上限を前記第1の上限車速に制限し、前記後方認識群の前記撮像装置および前記距離センサ装置がいずれも正常に機能し、かつ前記前方認識群のうち前記距離センサ装置が機能不全になった場合は、前記並列後ろ入れの自動駐車における前記切返し位置までの前記駐車経路を、直線を含む駐車経路から曲線の駐車経路に変更する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外界認識装置の一方が機能不全になった場合にも自動駐車を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】駐車支援装置の構成を示す図である。
図2】駐車支援装置の入出力信号を示す図である。
図3】車両の外界認識装置の配置を示す図である。
図4】駐車支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
図5】外界認識装置の機能不全の判定処理手順を示すフローチャートである。
図6】駐車制御制限情報を示す表である。
図7】駐車支援装置の自動駐車の処理手順を示すフローチャートである。
図8】駐車パターンを示す表である。
図9】経路生成の処理手順を示すフローチャートである。
図10】目標車速演算の処理手順を示すフローチャートである。
図11】目標車速基本値演算の処理手順を示すフローチャートである。
図12】目標車速基本値の算出マップである。
図13】目標車速上限値演算の処理手順を示すフローチャートである。
図14】カメラが機能不全になった場合の駐車を示すタイムチャートである。
図15】ソナーが機能不全になった場合の駐車を示すタイムチャートである。
図16】ソナーが機能不全になった場合の駐車経路である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照して駐車支援装置1の構成を説明する。
駐車支援装置1は、駐車支援制御装置100、HMI(Human Machine Interface)装置101、警報装置102、撮像装置103、距離センサ104、駆動力制御装置105、制動力制御装置106、シフト制御装置107、操舵制御装置108を備える。駐車支援制御装置100の情報が、HMI装置101、警報装置102、駆動力制御装置105、制動力制御装置106、シフト制御装置107、操舵制御装置108に出力される。他方で、HMI装置101、撮像装置103、距離センサ104、駆動力制御装置105、制動力制御装置106、シフト制御装置107、操舵制御装置108の情報が駐車支援制御装置100に入力される。
【0010】
撮像装置103は、例えば撮像素子を備えたカメラなどである。距離センサ104は、例えばソナー、ミリ波レーダ、レーザレーダ、赤外線センサ、超音波センサなどである。本実施形態では、外界認識装置として、検知特性が異なる撮像装置103と距離センサ104を用いる。撮像装置103は、例えば、単眼カメラによる外界認識では、障害物の位置を検知するために複数の画像を連続的に撮影し、それらの画像の時間視差を用いて障害物を検知する。このため、車両が直線の経路を走行している場合に比べて、車両が曲線の経路を走行している場合に、障害物をより立体的に認識できる特性がある。一方、距離センサ104は、例えば、ソナーによる外界認識では、車両と障害物との相対速度が速いと精度が悪化する特性がある。
【0011】
図2は、駐車支援装置1の入出力信号を示す図である。
駐車支援制御装置100は、入力部100i、コンピュータ100c、出力部100oを備える。図2に示すように、撮像装置103、距離センサ104、駆動力制御装置105、制動力制御装置106、シフト制御装置107、操舵制御装置108から出力された情報が駐車支援制御装置100の入力部100iに入力される。さらに、入力部100iには、駐車開始を指示する駐車開始スイッチからの信号101aおよび車速の情報101bが入力される。駐車支援制御装置100に入力された情報は、コンピュータ100c、出力部100oを介して、駆動力制御装置105、制動力制御装置106、シフト制御装置107、操舵制御装置108へ出力される。また、駐車支援制御装置100の出力部100oから情報がHMI装置101や警報装置102へ出力され、運転者に対して表示または警報音を出力する。
【0012】
HMI装置101や警報装置102は報知部を構成し、撮像装置103や距離センサ104に機能不全が検出された場合に、運転者へその旨を報知する。例えば、HMI装置101は、そのディスプレイに撮像装置103や距離センサ104が機能不全であることを表示したり、撮像装置103や距離センサ104が機能不全であることを音声によって出力する。また、警報装置102は、撮像装置103や距離センサ104が機能不全であることをビープ音などの警報音で警告する。
【0013】
駐車支援装置1は、撮像装置103、距離センサ104などの外界認識装置で駐車位置や障害物を検知し、入力部100iに入力された情報を基に、駆動力、制動力、シフト(前進、後退)、操舵を制御して駐車経路に沿って自動駐車を行う。
【0014】
図3は、車両300の外界認識装置の配置を示す図である。以下、車両300は撮像装置103としてカメラ103a〜103dを、距離センサ104としてソナー104a〜104lを備えた例で説明する。
【0015】
図3に示すように、車両300の前方301を検知するために、ソナー104b〜104eとカメラ103aが設けられる。車両300の後方303を検知するために、ソナー104h〜104kとカメラ103cが設けられる。車両300の右方302を検知するために、ソナー104f、104gとカメラ103bが設けられる。車両300の左方304を検知するためにソナー104a、104lとカメラ103dが配置される。これらの外界認識装置は、前方301を検知する前方認識群、後方303を検知する後方認識群、右方302を検知する右方認識群、左方304を検知する左方認識群にグループ分けされる。
【0016】
図4は、駐車支援装置1の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートおよび後述のフローチャートで示したプログラムを、CPU、メモリなどを備えたコンピュータにより実行することができる。全部の処理、または一部の処理をハードロジック回路により実現してもよい。更に、このプログラムは、予め駐車支援装置1の記憶媒体に格納して提供することができる。あるいは、独立した記憶媒体にプログラムを格納して提供したり、ネットワーク回線によりプログラムを駐車支援装置1の記憶媒体に記録して格納することもできる。データ信号(搬送波)などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給してもよい。
【0017】
図4の処理S401で、詳細は図5を参照して後述するが、カメラ103a〜103d、ソナー104a〜104lなどの外界認識装置の機能不全を判定する。カメラ103a〜103dの機能不全は、例えば、電気的故障、水滴付着、レンズ曇り、レンズ汚れ、照度不足、視界不良を含む。ソナー104a〜104lの機能不全は、例えば、電気的故障を含む。この処理S401で判定された機能不全の結果は、カメラ103a〜103d、ソナー104a〜104lに対応して、図示省略した記憶部に記憶される。
【0018】
次に、処理S402で、処理S401による外界認識装置の機能不全の判定結果に基づいて駐車制御制限情報を参照して車速制限または経路制限を行うかを判定する。この判定結果は図示省略した記憶部に記憶される。駐車制御制限情報は、詳細は図6を参照して後述するが、カメラ103a〜103dの機能不全の判定結果とソナー104a〜104lの機能不全の判定の結果に対応して、車速制限または経路制限が設定された情報であり、図示省略した記憶部に予め記憶されている。
【0019】
次に、処理S403で、自動駐車を実行中であるかを判定する。自動駐車を実行中であれば処理S404へ進み、自動駐車を実行中でなければ処理S405へ進む。
【0020】
処理S404では、詳細は図7を参照して後述するが、自動駐車において外界認識装置の機能不全が判定された場合は、外界認識装置の機能不全に対応した自動駐車制御を行う。処理S405では、自動駐車以外の既存の制御を行う。図4に示した処理手順は、予め定められた周期で繰り返し実行される。
【0021】
図5は、外界認識装置の機能不全の判定処理手順を示すフローチャートであり、図4の処理S401の詳細を示すフローチャートである。
【0022】
図5の処理S501と処理S502とは依存関係はなく並列に実行される。処理S501では、カメラ103a〜103dの機能不全を判定する。カメラ103a〜103dに対して正常に機能するか個別にテストを行う。カメラ103a〜103dに対応した判定fCAMNG[1]〜fCAMNG[4]は、機能不全の場合は判定fCAMNG[n](n=1〜4)の値を1とし、機能不全で無い場合は0とする。nはカメラの個数を表わし、本実施形態では4個のカメラ103a〜103dに対応し、nは1〜4である。
【0023】
処理S502では、ソナー104a〜104lの機能不全を判定する。ソナー104a〜104lに対して正常に機能するか個別にテストを行う。ソナー104a〜104lに対応した判定fSORNG[1]〜fSORNG[12]は、機能不全の場合は判定fSORNG[n](n=1〜12)の値を1とし、機能不全で無い場合は0とする。nはソナーの個数を表わし、本実施形態では12個のソナー104a〜104lに対応し、nは1〜12である。
【0024】
処理S503では、カメラおよびソナーの配置でグループ分けした前方認識群、後方認識群、右方認識群、左方認識群において、処理501と処理502の個別の判定結果に基づいて、機能不全があるかを判定する。前方認識群に機能不全があれば判定fFRNGの値を1に、後方認識群に機能不全があれば判定fRENGの値を1に、左方認識群に機能不全があれば判定fLENGの値を1に、右方認識群に機能不全があれば判定fRINGの値を1にする。ここで、各認識群の機能不全判定は、当該認識群の属する外界認識装置のいずれかが機能不全となったときに判定の値を1にする。
【0025】
図6は、駐車制御制限情報を示す表であり、図4の処理S402の判定に用いる。図6に示すように、駐車方法として、並列前入れ、並列後ろ入れ、縦列前入れ、縦列後ろ入れ、斜め前入れ、斜め後ろ入れがある。さらに、駐車方向として、車両300を基準にして右方向に駐車するか左方向に駐車するかを示す右と左がある。駐車方法、駐車方向の組み合わせにより、後述の図8に示すように、12通りの駐車パターンに区分される。
【0026】
駐車パターン毎に、前方認識群の判定fFRNG、後方認識群の判定fRENG、左方認識群の判定fLENG、右方認識群の判定fRINGに応じて、値1(機能不全)があれば、自動駐車を許可もしくは禁止する情報を出力する。例えば、駐車方法が並列前入れであり、駐車方向が右の自動駐車は、前方認識群の判定fFRNGが値1(機能不全)であれば禁止され、後方認識群の判定fRENGが値1(機能不全)であれば許可され、左方認識群の判定fLENGが値1(機能不全)であれば許可され、右方認識群の判定fRINGが値1(機能不全)であれば禁止される。さらに、駐車方法が並列前入れであり、駐車方向が右の自動駐車は、カメラ103a〜103dの判定fCAMNG[1]〜fCAMNG[4]のいずれかが値1(機能不全)の場合は車速制限を示す情報を出力し、ソナー104a〜104lの判定fSORNG[1]〜fSORNG[12]のいずれかが値1(機能不全)の場合は経路制限を示す情報を出力する。
【0027】
駐車支援制御装置100は、前述の処理S404において、図6に示す駐車制御制限情報を参照して自動駐車を許可、もしくは禁止する。例えば、駐車支援制御装置100は、車両の前方に設置された認識群が機能不全となった場合は、切返し無しの後方駐車のみ許可する。また、車両の後方に設置された認識群が機能不全となった場合は、切返し無しの前方駐車のみ許可する。また、車両の右側に設置された認識群が機能不全となった場合は、左側駐車のみ許可する。また、車両の左側に設置された認識群が機能不全となった場合は、右側駐車のみ許可する。
【0028】
図7は、駐車支援装置1の自動駐車の処理手順を示すフローチャートである。図4の処理S404の詳細を示すフローチャートである。
【0029】
処理S701では、現在の車両の駐車方法、駐車方向に応じた駐車パターンPTNPAを取得する。駐車パターンPTNPAは図8に示すように、駐車方法、駐車方向の組み合わせにより駐車パターン1から駐車パターン12が設定されている。運転者は自動駐車に先立って、駐車パターン1から駐車パターン12のうち、HMI装置101に候補として表示された駐車パターンの中から所望の駐車パターンを選択する。ここで、選択された駐車パターンにおいて、図4の処理S401の機能不全判定で機能不全と判定され、図6に示す駐車制御制限情報を参照した結果、「禁止」と設定されている駐車パターンは自動駐車の実施を禁止とする。
【0030】
次の処理S702では、処理S701で取得した駐車パターンに従って駐車経路を設定する。図9は、処理S702の詳細を示す経路生成のフローチャートである。図9の処理S901で、ソナー104a〜104lの判定fSORNG[1]〜fSORNG[12]のいずれかが値1(機能不全)と判定されていて、図6の駐車制御制限情報が「経路制限」と設定されているかを判定する。ソナー104a〜104lの判定fSORNG[1]〜fSORNG[12]が機能不全ではなく、「経路制限」と設定されていなければ、処理S902で、制限なしとして処理する。一方、「経路制限」と設定されていれば、処理S903へ進む。
【0031】
図9の処理S903では、当初の駐車経路に替えて、駐車経路が曲率の小さな曲線の経路を含むように新たに経路生成を行う。新たに経路生成を行うことにより切り返し回数が増えたとしても曲線の経路を含むように経路生成を行う。これにより、ソナー104a〜104lの機能不全の場合に、カメラ103a〜103dによる対象物の立体の認識精度を向上させることができる。
【0032】
図7に戻り、処理S703で、障害物衝突判定を行う。障害物衝突判定は、車両300と駐車経路上の障害物との接近を判定し、車両300と障害物との距離が所定閾値以内の場合に、車両を停車する。ここで、車両300と障害物との距離の判定閾値は、カメラ103a〜103dやソナー104a〜104lが正常の場合に対して、そのいずれかが機能不全のときは安全を考慮して大きくする。カメラ103a〜103dやソナー104a〜104lのいずれかが機能不全のときは、車両300と障害物との距離が判定閾値以内の場合に自動駐車を中止することが望ましい。処理S703で障害物への接近が無ければ処理S704へ進む。
【0033】
処理S704で、入力された車速の情報101bに基づいて車両300の実速度Vspを取得する。そして、処理S705で、目標車速TVspを演算する。処理S705の詳細は、図10図13を用いて後述する。
【0034】
次の処理S706で、目標車速TVspに対応した目標駆動力の演算を、次の処理S707で、目標車速TVspに対応した目標制動力の演算を行う。次の処理S708で、駐車経路に沿った目標操舵角の演算を行う。そして、処理S709で、演算結果を駆動力制御装置105、制動力制御装置106、操舵制御装置108へ出力する。その結果、車両300は経路に沿って所定の速度で移動する。
【0035】
次に、処理S710で、HMI装置101や警報装置102により、図4の処理S401で判定した機能不全の判定結果、および処理S402で判定した車速制限または経路制限をHMI装置101や警報装置102などの報知部で報知する。
【0036】
図10は、目標車速演算の処理手順を示すフローチャートであり、図7の処理S705の詳細である。
【0037】
図10の処理S1001では、目標車速基本値TVspBを演算する。目標車速基本値TVspBの演算の詳細は、図11に示す。図11の処理S1101では、駐車開始位置から駐車終了位置までの駐車制御走行距離DistPAを算出する。図11の処理S1102では、図12の算出マップを基に目標車速基本値を求める。図12は、目標車速基本値の算出マップを示す図である。横軸に駐車制御走行距離DistPAを、縦軸に目標車速TVspを示す。図12に示すように、駐車パターンi(i=1〜12)に応じて目標基本車速が異なる。図12に示す算出マップは図示省略した記憶部に予め記憶されている。
【0038】
図10に戻り、処理S1002では、目標車速上限値TVspLMTを演算する。目標車速上限値TVspLMTの演算の詳細は、図13に示す。図13の処理S1301では、カメラ103a〜103dの判定fCAMNG[1]〜fCAMNG[4]のいずれかが値1(機能不全)と判定されていて、図6の駐車制御制限情報が「車速制限」と設定されているかを判定する。カメラ103a〜103dの判定fCAMNG[1]〜fCAMNG[4]が機能不全ではなく、「車速制限」と設定されていなければ、処理S1302へ進み、目標車速上限値TVspLMTを制限しない設定を行う。一方、「車速制限」であれば、処理S1303へ進み、目標車速上限値を設定する。目標車速上限値は、駐車パターンPTNAPとシフト情報(前進、後退)RPSftごとに予め設定されており、図示省略した記憶部に記憶されている。
【0039】
図10に戻り、処理S1003では、目標車速上限値を超えない目標車速TVspを演算する。目標車速TVspは、駐車パターンやカメラ103a〜103dの機能不全による「車速制限」に応じて最適の速度に設定される。
【0040】
図14は、カメラが機能不全になった場合の並列後入れによる駐車を示すタイムチャートである。図14(A)は前方カメラが機能不全と判定されたタイミングを、図14(B)は自動駐車のタイミングを、図14(C)は車速の変化を示したものである。各図の横軸はいずれも時間である。
【0041】
図14(B)に示すように、時刻t1にて自動駐車を開始する。これにより、図14(C)に示すように、車速が増加を開始する。図14(A)に示すように、時刻t2で、前方カメラに機能不全が検知されたとする。すると、図14(C)に示すように、カメラ機能不全時の上限車速V1まで車速が低下する。そして、時刻t4にて切返し位置となり停車し、シフトを前進から後退に切替え、時刻t5で後退方向に車速が増加する。このとき、後方カメラは機能不全ではないため、後退時の上限車速V2を超えて走行する。時刻t7で目標の駐車位置への接近に伴い減速を開始して、時刻t8で停車する。
【0042】
このようにカメラの機能不全に対応して、車速を制限することで、ソナーにより自動駐車を継続することが可能となる。
【0043】
図15は、ソナーが機能不全になった場合の並列後入れによる駐車を示すタイムチャートである。図15(A)は前方ソナーが機能不全と判定されたタイミングを、図15(B)は自動駐車のタイミングを、図15(C)は車速の変化を示したものである。各図の横軸はいずれも時間である。
【0044】
図15(B)に示すように、時刻t1にて自動駐車を開始する。これにより、図15(C)に示すように、車速V3まで車速を増加をする。図15(A)に示すように、時刻t2にて、前方ソナーに機能不全が検知されたとする。すると、図15(C)に示すように、車速を低下させ、車両が停車する。時刻t3にてソナー機能不全時の経路生成を実行する。
【0045】
図16はソナーが機能不全になった場合の駐車経路である。図16(A)は、時刻t1〜時刻t3における駐車経路であり、図16(B)は、時刻t3〜時刻t8における駐車経路である。図16(A)において、車両300は駐車位置400を目標とする駐車経路500が設定されている。図16(B)では、時刻t3まで車両300が進んだ位置で、駐車位置400を目標とする駐車経路600が新たに設定される。すなわち、時刻t3にてソナー機能不全時の経路生成を実行して、図16(B)に示すように、駐車経路600を曲線の経路に変更する。その後、図15(C)に示すように、再び車速を車速V3まで増加し、切返し位置に向かい前進する。時刻t5にて切返し位置となり停車し、シフトを前進から後退に切替え、時刻t6で後退方向に車速が車速V4まで増加する。時刻t7で目標の駐車位置400への接近に伴い減速を開始して、時刻t8で停車する。
このようにソナーの機能不全に対応して、駐車経路を曲線に変更することで、カメラによる自動駐車を継続することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態では、外界認識装置として撮像装置103と距離センサ104を用いた例で説明したが、外界認識装置は、その他に検知特性が異なる複数の外界認識装置を用いる駐車支援装置であれば同様に適用できる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)駐車支援装置1は、車両300に設置された複数の外界認識装置(撮像装置103、距離センサ104)と、外界認識装置(撮像装置103、距離センサ104)に基づいて自動駐車を行う駐車支援制御装置100とを備え、駐車支援制御装置100は、複数の外界認識装置(撮像装置103、距離センサ104)のうち、一方が機能不全になった場合に、機能不全でない他方の外界認識装置(撮像装置103、距離センサ104)に対応した制御に変更する。
これにより、外界認識装置(撮像装置103、距離センサ104)の一方が機能不全になった場合にも、他方の外界認識装置(撮像装置103、距離センサ104)により自動駐車を継続することが可能となる。
【0048】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 駐車支援装置
100 駐車支援制御装置
101 HMI装置
102 警報装置
103 撮像装置
103a〜103d カメラ
104 距離センサ
104a〜104l ソナー
105 駆動力制御装置
106 制動力制御装置
107 シフト制御装置
108 操舵制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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