(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリットは、前記第2の加熱装置の前記加熱室上面に平行な平面を中央側の部分と外周側の部分とに区画するように配置された請求項2から4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器1の外観斜視図である。
【0017】
本実施の形態における加熱調理器1は、例えば、グリル機能を備えた電子レンジのように、前面に開口を有し被加熱物7(
図2参照)を収納する加熱室2に、マイクロ波と、輻射熱のうち少なくとも1つを供給して、被加熱物7を加熱する。
【0018】
なお、本実施の形態においては、加熱室2の前面開口側を前方とし、この前方より後方に向かって右側を右方とし、前方より本体に向かって左側を左方として、以下の説明を行う。
【0019】
加熱調理器1の本体内には、加熱室2が、設けられている。加熱調理器1の本体の前面には、加熱室2の開口を開閉する投光窓付の扉3が、設置されている。扉3の下端は、加熱調理器1の本体の下端部に、ヒンジを介して枢支されており、上下方向かつ前後方向に、回動可能な構成となっている。また、扉3は、加熱調理器1の外郭の一部を構成している。
【0020】
扉3には、取手4、加熱条件や被加熱物7の情報を入力する操作ボタン5、そして入力した内容や調理経過状況、被加熱物情報が表示される表示部6が取り付けられている。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱室の内部を側面から観た概略図であり、
図3は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱室の内部を正面から観た概略図であり、
図4は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱装置(第2の加熱装置)を上面から観た概略図である。
【0022】
図2〜
図4において、加熱室2の下方には、加熱室2にマイクロ波を供給し、被加熱物7を加熱するマイクロ波発生装置8が、設けられている。このマイクロ波発生装置8は、マグネトロン9が発生したマイクロ波を、マイクロ波攪拌部であるアンテナ10により、加熱室2内に、攪拌させながら放射する。
【0023】
アンテナ10は、マイクロ波の出力方向に関して、方向特性を有している。このアンテナ10の方向特性は、放射指向性と呼ばれている。このアンテナ10は、モータを備えたアンテナ駆動部11により、回転軸12を中心に、回転運動を行っている。アンテナ駆動部11は、通常の加熱においては、加熱室2内の被加熱物7を均一に加熱するよう、すなわち、加熱室2内のマイクロ波分布が均一になるよう、連続的にアンテナ10を回転させ、マイクロ波の出力方向を変えている。
【0024】
ガラスプレート13は、結晶化ガラスでできており、加熱室2の底面に配置されている。このガラスプレート13には、通常のマイクロ波加熱の際、被加熱物が載置される。
【0025】
載置皿14は、グリル調理に使用する。載置皿14は、被加熱物7を載置する上面と、この上面とは反対側の面である下面とを有している。載置皿14の下面には、マイクロ波を吸収して発熱する、マイクロ波吸収発熱体15が、貼付されている。
【0026】
マイクロ波発生装置8とともに第1の加熱装置を構成するマイクロ波吸収発熱体15が、加熱室2に供給されたマイクロ波を吸収して発熱すると、この発生した熱が、載置皿14の下面から上面へ熱伝導し、載置皿14に載置された被加熱物7が、下方から加熱される。したがって、マイクロ波吸収発熱体15で発生した熱は、マイクロ波を用いた焼き物調理を行うために、用いられる。
【0027】
加熱室2の右側壁と左側壁とには、載置皿14を支持するために、それぞれ上面が水平な係止部16a、16b、16cが、前後方向に水平に複数段(本実施の形態においては3段)設けられている。係止部16a、16b、16cは、載置皿14の左右端部を係止し、載置皿14を調理に最適な位置に設置可能な構成とし、載置皿14により、加熱室2内空間を上下に分割している。
【0028】
加熱装置19(第2の加熱装置)は、加熱室2の天板を構成する加熱室上面20の上部(加熱室2外側)に、取り付けられている。加熱装置19は、平面状発熱体18aが位置する領域と、平面状発熱体18bが位置する領域とに、加熱室上面20を二つに分けて、後述する制御部24により、平面状発熱体18a、18bをそれぞれ単独で、または同時に通電し、加熱室上面20を選択的に加熱できるようにしている。
【0029】
第2の加熱装置である加熱装置19は、断熱材21と遮熱板22とで構成される押圧部23により、加熱室上面20に押圧されている。加熱装置19は、加熱室上面20に密着することにより、効率よく伝熱する。
【0030】
このように、加熱装置19は、加熱室2内に露出することがなく、平面状発熱体18a、18bが、マイクロ波による影響を受けないので、スパーク等の問題がない。また、加熱室上面20が平面となるので、食品カスや油等が付着しても、簡単に拭き取ることができ、清潔に保つことができる。
【0031】
図4に示すように、平面状発熱体18aは、絶縁体である中マイカ板30に、電熱線31を巻きつけている。また、平面状発熱体18bは、絶縁体である中マイカ板32に、電熱線33を巻きつけている。そして、加熱装置19は、平面状発熱体18a、18bを絶縁体である上マイカ板34と下マイカ板35で上下方向から挟み、構成されている。
【0032】
上マイカ板34と下マイカ板35には、それぞれ平面状発熱体18a、18bと対向する部位がある。平面状発熱体18a、18bと対向する、上マイカ板34のそれぞれの部位の間には、一部分を除き、スリット36が設けられている。スリット36が設けられていない上マイカ板34の部分(
図4に示す接続部A)には、平面状発熱体18aに接続された電熱線31が、配線されている。
【0033】
そして、平面状発熱体18a、18bと対向する、下マイカ板35のそれぞれの部位の間には、一部分を除き、上マイカ板34と同様に、スリット37が設けられている。スリット37が設けられていない下マイカ板35の部分(
図4に示す接続部A)には、平面状発熱体18aに接続された電熱線31が、配線されている。
【0034】
制御部24により、平面状発熱体18a、18bへの通電を切り替え、加熱装置19の中央側の平面状発熱体18aや外周側の平面状発熱体18bを、それぞれ単独で加熱する場合などでは、両者の発熱温度に大きな差が設けられる。そのことにより、上マイカ板34および下マイカ板35は、それぞれ平面状発熱体18a、18bと対向する部位の温度が大きく異なることによって、熱膨張の差が発生する。スリット36、37は、この熱膨張の差を吸収し、歪や変形を抑制している。
【0035】
載置皿14の下面に貼付された第1の発熱装置をマイクロ波吸収発熱体15は、マイクロ波を吸収して発熱する際に、発生する熱による温度分布が高温になる高温発熱領域と、この高温領域に比べ比較的低温になる低温発熱領域とを備えている。
【0036】
加熱装置19の中央側の平面状発熱体18aは、載置皿14を挟んで、上述したマイクロ波吸収発熱体15の高温発熱領域に対向する位置に設けられている。そして、加熱装置19の外周部の平面状発熱体18bは、載置皿14を挟んで、上述した載置皿14のマイクロ波吸収発熱体15の低温発熱領域に対向する位置に、設けられている。
【0037】
一般に、加熱室2内のマイクロ波により、定在波が形成される。これは、アンテナ10を回転させマイクロ波を撹拌しても、回転によって変化する定在波があり、マイクロ波は完全な均一には成り得ないからである。
【0038】
マイクロ波吸収発熱体15は、この定在波の影響により、強く発熱する箇所と弱く発熱する箇所が発生し、温度分布が形成される。すなわち、平面状発熱体18aの取り付け領域は、マイクロ波吸収発熱体15による載置皿14の高温発熱領域を予め実験的に求め、この高温発熱領域に対向させて設けている。
【0039】
制御部24は、領域を限定して被加熱物7を効率的に加熱する場合に、アンテナ10の放射指向性を、被加熱物7の下方に相当する、載置皿14の下面の方向に向けるよう、アンテナ駆動部11を制御する。例えば、アンテナ10を加熱室2の前方、すなわち、扉3に近い側に向ければ、その方向の載置皿14の下面に、マイクロ波を集中し易くなるので、載置皿14の前方を中心に、発熱させることができる。また、加熱装置19への通電は、平面状発熱体18aだけを通電制御する。
【0040】
これにより、載置皿14の中央部に載置する被加熱物7を、集中的に加熱することが可能となる。
【0041】
載置皿14の加熱領域を限定する際に、どの領域を選択するかについては、載置皿14の扉3に近い側に限定されず、加熱室2の奥側、すなわち扉3から遠い側や、加熱室2の左右いずれかの半分の領域などでも良い。
【0042】
また、加熱室2内の右奥上部に、温度センサ25が設けられている。温度センサ25は、加熱室2内の温度が予め設定した温度を超えたことを検知すると、制御部24へ、信号を出力する。この信号を入力した制御部24は、平面状発熱体18a、18b及びマグネトロン9への電力供給を抑制する。
【0043】
図5A、
図5Bは、
図1における加熱室2内の加熱領域限定時の加熱方法を説明するための概念図である。
【0044】
図5Aに示されるように、加熱領域を限定しない場合は、アンテナ10を360度回転させるとともに、マイクロ波を加熱室2内に放射する。この場合、第2の加熱装置である加熱装置19は、平面状発熱体18a、18bの両方に通電する。ただし、通常、電源容量の制限から、マイクロ波による載置皿14加熱と加熱装置19の運転は、交互に切り替えて行う。
【0045】
これにより、載置皿14の下面全体に、マイクロ波が照射されて、載置皿14の全体(
図5Aに示される領域40)が発熱するとともに、平面状発熱体18a、18bにより、上方から載置皿14の全体を輻射加熱することができる。
【0046】
図2に示されるように、被加熱物7が、載置皿14の中央部だけに載置され、限定された領域を加熱する時には、
図5Bに示されるように、平面状発熱体18aのみを通電し、平面状発熱体18bは通電を停止する。
【0047】
それとともに、載置皿14の中央部(
図5Bに示される領域41)に、マイクロ波を集中させるようアンテナ10を制御し、被加熱物7の上面と下面から同時に被加熱物7の載置位置に集中した加熱を行うことで、高効率な調理と調理時間の短縮を行うことができる。
【0048】
載置皿14における特定領域の上下同時加熱による効果としては、載置皿14の全体領域の上面加熱、下面加熱を別々に行うよりも、被加熱物に対して効率よく加熱ができることが挙げられる。
【0049】
これは、被加熱物7に対して、上面に輻射熱を放射するのは加熱室上面20であり、平面状発熱体18a、18bは、まず加熱室上面20を加熱する必要がある。その分、熱容量や熱抵抗が増加するために、加熱室上面20の温度上昇速度を上げるには、限界がある。
【0050】
これを上面加熱と下面加熱を別々に行うと、上面加熱による温度上昇遅れが加算されるため、調理時間が長くなってしまう。しかし、単に電力を2分して、上面加熱と下面加熱とを同時に行っても、平面状発熱体18a、18bのワット密度が半減し、昇温速度が遅くなるばかりでなく、被加熱物7の焼色を付けるのに必要な温度が、得られなくなる問題もある。
【0051】
次に、
図5A、
図5Bの平面状発熱体18a、18bの形状設定について、説明する。
【0052】
図6A、
図6Bは、載置皿14上面の加熱分布を表す概念図である。
図6Aは、
図5Aに示すアンテナ10を360度回転させた場合のマイクロ波による載置皿14の温度分布を表す。
図6Bは、
図5Bに示すように、アンテナ10を載置皿14の中央部に、マイクロ波を集中させるよう制御した場合の温度分布を表す。なお、
図6の温度分布は、色の濃い方が、温度が高いことを表している。
【0053】
アンテナ10を360度回転させた場合は、
図6Aに示すように、載置皿14上面の温度分布が、アンテナ10の回転によりマイクロ波が撹拌され、ほぼ全面が均一に加熱される。
図6A、
図6Bの破線42、43、44は、この領域に対する平面状発熱体18a、18b(
図5A、
図5B)の発熱領域を示し、この場合、平面状発熱体18a、18b両者の位置が、載置皿14の発熱位置と適合するように設定している。
【0054】
アンテナ10を載置皿14の中央部に、マイクロ波を集中させるよう制御した場合は、
図6Bに示すように、載置皿14上面の温度分布は、中央部に高温領域が発生している。ただし、アンテナ10により、マイクロ波を中央部に集中させるよう制御しても、中央部だけにマイクロ波を集中できるわけではなく、比較的中央部にマイクロ波が集中しやすくなる程度である。
【0055】
また、マイクロ波の加熱室2内での定在波発生の影響で、加熱領域内でも、高温発熱領域を明確に設定することが難しい。そこで、アンテナ10の角度制御と高温発熱領域との関係を予め実験的にて求め、発生する高温発熱領域に合わせて、破線42に示すように、平面状発熱体18a(
図5A、
図5B)の形状を設定する。
【0056】
以上のように、加熱領域を限定する場合、載置皿14の高温発熱領域に合わせて、平面状発熱体18a、18bの配置形状を設定しているので、この高温発熱領域に載置した被加熱物7に対して、上下から効率よく加熱することができる。
【0057】
なお、マグネトロン9からのマイクロ波は、すべてが載置皿14の裏面に供給されるわけではなく、一部は載置皿14の上方の空間に供給される。そのため、載置皿14の上方の空間に供給されたマイクロ波により、被加熱物7は、その内部がマイクロ波加熱される。
【0058】
図2に示すように、マグネトロン9から発生したマイクロ波は、アンテナ10に供給され、アンテナ10を駆動制御することにより、載置皿14における被加熱物7の載置箇所へ、集中的に照射される。
【0059】
アンテナ10を制御することで、載置皿14における被加熱物7の載置箇所に集中したマイクロ波により、被加熱物7の直下付近のマイクロ波吸収発熱体15が発熱する。このことにより、被加熱物7の下面に焼き色を付けるような調理ができ、さらにマイクロ波加熱の特徴である被加熱物7の内部への直接加熱ができる。
【0060】
また、制御部24により、被加熱物7を上面から輻射加熱する、平面状発熱体18a、18bを選択的に加熱制御することで、被加熱物7の上面に、効率よく焼き色付けることができる。このように、調理時間の短縮と調理の良好な仕上がりを、確保することができる。
【0061】
図2から
図5A、
図5Bにおいて、下方からの加熱領域を限定する方法として、以下の方法がある。すねわち、アンテナ10の回転方向と回転速度を制御して、被加熱物7の方向またはその前後にアンテナ10が向いている場合は、それ以外の場合と比べて、アンテナ回転速度を遅くしたり、マグネトロン9への電力を増加させたりする方法である。これにより、被加熱物7への熱量を増加させ、調理時間を短縮することができる。
【0062】
また、アンテナ10のマイクロ波放射方向に関して、一定の範囲(例えば、アンテナ10が扉3の右端に向かう方向から、扉3の左端に向かう方向までの間)を往復させるなど、加熱領域の限定の方法には、いろいろな場合が考えられる。
【0063】
図2および
図3において、定格電流値の範囲内で、加熱装置19を構成する平面状発熱体18a、18bと、マグネトロン9の電力配分を行う必要がある。
【0064】
一例としては、100V−15A時の定格許容電力値1500Wのうち、被加熱物7の上面加熱重視の加熱時は、1300Wを加熱装置19へ入力し、マグネトロン9へは入力を停止する。この時、加熱装置19の平面状発熱体18a、18bへの入力は、それぞれ650Wとする。
【0065】
また、被加熱物7の下面加熱重視の加熱時は、加熱装置19を停止して、1300Wをマグネトロン9へ入力する。そして、加熱領域限定時は、加熱装置19の平面状発熱体18aに650Wを入力し、マグネトロン9へ残り650Wを入力する。そして、平面状発熱体18bへは、入力を停止する。
【0066】
上記のように、上面加熱重視の加熱の場合と、加熱領域限定の場合では、平面状発熱体18aへの入力が同じであるので、加熱領域内に載置される被加熱物7への上面からの輻射熱は、ほぼ同等量放射されることになる。しかも、加熱領域限定時は、載置皿14下面もマイクロ波により加熱され、加えて、一部のマイクロ波が、直接に、被加熱物7を内部から温めるため、同じ電力であっても、被加熱物7は上下および内部から加熱され、短時間に調理を完了することができる。
【0067】
また、被加熱物7の種類によって、各加熱装置の出力を変化させる制御や、加熱時間の制御も考えられる。例えば、トースト調理などでは、加熱初期はマイクロ波加熱の出力を大きくした加熱で水分を減らし、その後、加熱装置19の出力を大きくすることで、表面に焼き色をしっかり付け、焼き上げることができる。
【0068】
このように、被加熱物7の加熱過程で、下面をより加熱したい場合には、平面状発熱体18aに通電せず、平面状発熱体18bのみ通電させると同時に、平面状発熱体18aの電力の余剰分を用いて、定格許容電流値を超えない範囲で、マイクロ波出力を可能な限り大きくする。このことで、載置皿14のマイクロ波吸収発熱体15からの発熱量が増加するため、被加熱物7の下面加熱が促進される。
【0069】
同様に、上面をより加熱させたい場合は、マイクロ波出力を弱めることにより生じる余剰電力を、加熱装置19に投入することで、上面加熱の出力を上げ、被加熱物7の上面加熱が促進される。
【0070】
被加熱物7に応じて、上記のように加熱構成の組み合わせを変更し、時間配分や入力電力配分を行うことで、被加熱物7の仕上がりを良好にすることができるとともに、調理時間の短縮を同時に実現することができる。
【0071】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る加熱調理器における加熱装置の構成について、図面を用いて詳細に説明する。
【0072】
図7は、本発明の第2の実施の形態における加熱調理器1の加熱装置50(第2の加熱装置)を、上面から観た概略図である。なお、本実施の形態において、前述の第1の実施の形態と同様の構成や機能については、同じ符号を使い、第1の実施の形態と同様の構成については、説明を省略する。また、本実施の形態における、加熱調理器全体の構成は、
図1〜
図3、
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bに示した加熱調理器1の構成と同様である。
【0073】
図7に示すように、本実施の形態における加熱調理器の加熱装置50(第2の加熱装置)は、ステンレス鋼等の金属箔を図のように抜き加工して、上下を絶縁板である下マイカ51aと上マイカ51bとで一体的に挟み込んで固定している。そして、加熱装置50の中央側に平面状発熱体52を設け、その外周側に平面状発熱体53を設けている。そして、端子54と端子55との間に、電圧を印加することで、平面状発熱体52に電流が流れて発熱する。また、端子54と端子56との間に電圧を印加すると、平面状発熱体53に電流が流れて発熱する。平面状発熱体52と平面状発熱体53の両者に電流を流すと、両方の平面状発熱体52、53全体が発熱する。
【0074】
下マイカ51aと上マイカ51bには、中央側の平面状発熱体52とその外周側の平面状発熱体53の間にスリット57(歪抑制部)を設けている。スリット57は、平面状発熱体52と平面状発熱体53のどちらか一方だけを加熱する場合や、加熱量に大きな差がある場合などに、熱膨張により、下マイカ51aと上マイカ51bに発生する内部歪を抑制している。
【0075】
例えば、加熱装置50の中央側の平面状発熱体52だけを加熱する場合に、下マイカ51aと上マイカ51bの平面状発熱体52に対向する部位が加熱され、下マイカ51aと上マイカ51bは、熱膨張により、外周方向に面積が広がるように伸びる。一方、下マイカ51aと上マイカ51bの平面状発熱体53に対向する部位は、加熱されないので、熱膨張は発生しない。スリット57は、この伸びの差を吸収するので、下マイカ51aと上マイカ51bにおいて、大きな内部歪が発生することない。
【0076】
加熱装置50の中央側の平面状発熱体52は、外周側の第1中央部発熱体58と、中央側の第2中央部発熱体59との二つの発熱体を有している。この外周側の第1中央部発熱体58の発熱密度は、中央側の第2中央部発熱体59の発熱密度に比して、高く設定されている。例えば、第1中央部発熱体58の発熱密度を2.5W/cm
2に設定し、第2中央部発熱体59の発熱密度を1.5W/cm
2に設定する。
【0077】
加熱装置50の外周側の平面状発熱体53は、中央側の平面状発熱体52と合わせた全加熱領域の外周部の発熱密度が、中央側の平面状発熱体52の発熱密度に比して、高くなるように設定する。例えば、中央側の平面状発熱体52を構成する第1中央部発熱体58および第2中央部発熱体59の発熱密度は、上記のように設定し、外周側の平面状発熱体53の発熱密度を2.8W/cm
2に設定する。
【0078】
以上のように、加熱装置50は、中央側の平面状発熱体52の加熱領域、または平面状発熱体52と外周側の平面状発熱体53を合わせた加熱領域において、外周部分の発熱密度を高く設定し、この加熱領域を加熱する場合に、加熱室上面20への熱伝導による熱放散割合の多くなる加熱領域の外周部の発熱密度を高くすることにより、加熱領域の外周部の温度低下を抑え、被加熱物7への均一な加熱を実現することができる。
【0079】
また、被加熱物7への輻射熱は、加熱領域の対向面積が、中心部が最も広くなるので、多くの輻射熱を受け易く、周辺部は対向面積が狭くなるので、輻射熱を受けにくくなる。したがって、加熱領域の外周部の発熱密度を高くして、加熱領域の中央部より、加熱領域の外周部の温度を高くすることで、被加熱物7をより均一に加熱することができる。
【0080】
なお、加熱装置50の中央側の平面状発熱体52と外周側の平面状発熱体53とを合わせた、加熱領域の外周部の発熱密度を高く設定する方法として、平面状発熱体53と平面状発熱体52とを電力制御を行い、加熱装置50の外周側の平面状発熱体53に対して、中央側の平面状発熱体52への電力供給を抑える制御を行ってもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、加熱領域の外周部全体の発熱密度を高めたが、加熱領域の角部が最も加熱室上面20への熱放散が大きいので、加熱領域の角部の発熱密度を角部以外に比して高く設定すると、より被加熱物7の均一な加熱が可能となる。
【0082】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る加熱調理器における加熱装置の構成について、図面を用いて詳細に説明する。
【0083】
図8は、本発明の第3の実施の形態における加熱調理器1の加熱装置60(第2の加熱装置)を上面から観た概略図である。なお、本実施の形態において、前述の第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を使い、各実施の形態と同様の構成については、説明を省略する。また、本実施の形態における、加熱調理器1全体の構成は、
図1〜
図3、
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bに示した加熱調理器1の構成と同様である。
【0084】
図8に示すように、本実施の形態の加熱装置60(第2の加熱装置)は、第2の実施の形態と同様に、ステンレス鋼等の金属箔を図のように抜き加工して、上下を絶縁板である下マイカ61aと上マイカ61bとで、一体的に挟み込んで、固定した構成である。ここで、本発明の第2の実施の形態と異なるのは、中央側に設けられた平面状発熱体62(中央部発熱体)が、螺旋を描くように配置され、スリット63(歪抑制部)を平面状発熱体62の隙間に、螺旋状に配置した点にある。
【0085】
中央側の平面状発熱体62とその外周側の平面状発熱体53(外周部発熱体)の間のスリット57により、下マイカ61aと上マイカ61bに発生する内部歪を抑制するだけでなく、中央側の平面状発熱体62内に設けた螺旋状のスリット63によって、加熱装置60の平面に対して垂直方向の剛性が低下し、押圧部23(
図1)の加重により、加熱装置60の発熱面が加熱室上面20に容易に密着する。
【0086】
また、加熱による加熱装置60自身の熱変形や、加熱室上面20の熱変形に対しても加熱装置60の剛性が低いので、加熱装置60の発熱面と加熱室上面20との密着状態を維持することができる。
【0087】
したがって、加熱装置60から加熱室上面20への伝熱が良好に維持されるので、中央側の平面状発熱体62および外周側の平面状発熱体53から、加熱室上面20へ、伝熱が良好に維持される。そのため、中央側の平面状発熱体62または外周側の平面状発熱体53が過加熱となることがなくなり、平面状発熱体53、62や絶縁板である下マイカ61aと上マイカ61bの寿命を延ばすことができる。
【0088】
なお、加熱装置60の剛性を下げるスリット形状として、
図9に示すように、中央側の平面状発熱体70の中央に十字状のスリット71(歪抑制部)を設けてもよい。また
図10に示すように、中央側の平面状発熱体72側に櫛歯状のスリット73(歪抑制部)を設けても、同様の効果を得ることができる。
【0089】
以上説明したように、本発明の加熱調理器は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室上面の外側に配置する平面状の加熱装置と、加熱装置を加熱室上面に押圧する押圧部とを備える。さらに、加熱装置は、連続する板状の絶縁体と、絶縁体に内設される平面状発熱体と、平面状発熱体の加熱によって生じる絶縁体の内部歪を抑制する歪抑制部を備える。
【0090】
このように、絶縁体の内部歪を抑制する歪抑制部を備えたことにより、平面状発熱体によって絶縁体が加熱されても変形が抑えられるので、平面状発熱体と絶縁体との接触状態が維持され、加熱室上面と加熱装置との接触状態も維持される。従って、平面状発熱体から加熱室上面への伝熱が良好に維持されるので、平面状発熱体が過加熱となることがなくなり、平面状発熱体や絶縁体の寿命を延ばすことができる。
【0091】
また、平面状発熱体と加熱室上面との伝熱が良いと、加熱室上面の昇温速度が速まるので、被加熱物の加熱速度を上げることができ、熱効率がよく、短時間での加熱調理が可能となる。
【0092】
また、本発明の加熱調理器は、歪抑制部として、絶縁体の歪が大きくなる部位を切欠くスリットを設けた構成としてもよい。そして、平面状発熱体はスリットを避けて配置するようにしてもよい。
【0093】
このように、スリットを設けることによって、絶縁体の熱膨張による伸びが妨げられることがなくなるので、内部歪が抑制され、反りや膨らみなどの変形がなくなる。従って、平面状発熱体から加熱室上面への伝熱を良好に維持することができる。
【0094】
また、本発明の加熱調理器は、加熱室上面を複数の加熱領域に分割して加熱する複数の平面状発熱体を備えるとともに、歪抑制部として、平面状発熱体と平面状発熱体の間に絶縁体を切欠くスリットを配置する構成としてもよい。
【0095】
この構成により、複数の平面状発熱体の内、一部の平面状発熱体が加熱されて、この平面状発熱体と接触する一部の絶縁体が加熱される場合でも、絶縁体にスリットが設けられているので、絶縁体の熱膨張による内部歪が抑制され、反りや膨らみなどの変形がなくなる。
【0096】
また、本発明の加熱調理器は、スリットを、加熱装置の剛性を低下させるように配置してもよい。
【0097】
この構成により、加熱室上面が熱膨張により変形した場合でも、押圧部による加重により柔軟に変形し加熱室上面に密着することができる。従って、加熱装置から加熱室上面への伝熱が良好に維持されるので、平面状発熱体が過加熱となることがなくなり、平面状発熱体や絶縁体の寿命を延ばすことができる。
【0098】
また、本発明の加熱調理器は、スリットを、加熱装置の平面の外周部と中心部とを仕切るように配置してもよい。
【0099】
この構成により、加熱装置を外周部と中心部とに分割して、それぞれ独立して加熱することにより絶縁体が局部的に加熱されても、絶縁体にスリットが設けられているので、絶縁体の熱膨張による反りや変形を抑えることができる。また、被加熱物の面積が小さい場合や、分量が少ない場合などに、加熱装置の中心部だけを加熱することにより、無駄な加熱を抑え、効率的に加熱することができる。
【0100】
また、本発明の加熱調理器は、スリットを加熱装置の平面を螺旋状に仕切るように配置してもよい。
【0101】
このように、加熱装置を螺旋状に仕切るスリットを設けたので、加熱装置平面の垂直方向の剛性が低下し、押圧部の加重により、加熱装置の発熱面が加熱室上面に容易に密着する。従って、加熱装置から加熱室上面への伝熱が良好に維持されるので、平面状発熱体が過加熱となることがなくなり、平面状発熱体や絶縁体の寿命を延ばすことができる。
【0102】
また、本発明の加熱調理器は、加熱室にマイクロ波を供給するマイクロ波発生装置と、加熱室を上下に分割するように加熱室内に係止され被加熱物を載置するとともに、裏面にマイクロ波を吸収するマイクロ波吸収発熱体を設けた載置皿を設けてもよい。さらに、マイクロ波発生手段と加熱手段の運転を制御する制御部とを加え、制御部は、被加熱物の種類や数量に応じて加熱装置の加熱領域を変更すると同時にマイクロ波発生装置の出力を適正に制御する構成としてもよい。
【0103】
この構成により、載置皿上の被加熱物の加熱位置と加熱装置の加熱位置を一致させることができるので、被加熱物を上下から効率よく加熱することができ、調理時間の短縮や消費電力の低減が可能となる。