(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の食器洗い機が、
図8に示される。
図8は、従来の食器洗い機の縦断面図である。ケーシング101内には洗浄室102が形成されている。洗浄室102の前方開放部は、軸支部130を中心に上下に揺動開閉する扉103で閉塞されている。
【0003】
洗浄室102内の上下にレールRで引き出し自在に支持されたラック104が配設されている。ラックには、非洗浄物の食器類が収容される。ラック104の下方には、洗浄水を噴出するノズルアーム106が各別に配設されている。これら各ノズルアーム106には送水パイプ163が接続されている。送水パイプ163の上流端には洗浄ポンプ162の吐出部が接続されている。洗浄ポンプ162の吸引側は、濾過容器107を介して貯水槽123内に繋がっている。貯水槽123内の底部には、洗浄水と乾燥用空気を加熱するヒータ120が設けられている。
【0004】
また、乾燥用空気を供給するために、洗浄室102の奥壁127には給気ダクト189の下流端部が接続されている。給気ダクト189の上流端は、ファン180の一つの吐出口に接続されている。ファン180の他方の吐出口には空気噴出ダクト177が接続されている。空気噴出ダクト177の下流端に位置する空気噴出口176は、ケーシング101の正面上部に位置している。この構成では単一のファン180からの吐出空気が洗浄室102と空気噴出口176の両者に供給される。
【0005】
ファン180の給気側に配設された給気管188の吸引口190は、ケーシング101の後壁に形成された穴部119に接続されている。給気管188を介してファン180で吸引された外気は、給気ダクト189と空気噴出ダクト177に供給される。空気噴出ダクト177の下流端に位置する空気噴出口176は、ケーシング101の正面上部に位置している。そして、空気噴出口176の下方に隣接する位置には、洗浄室102の天井壁126部分から引出した連通通路105の排気口152が設けられている。
【0006】
このように構成された食器洗い機において、洗い工程、すすぎ工程および乾燥工程が順番に実行される。
【0007】
洗い工程、すすぎ工程が終了し、食器類Mを乾燥させる乾燥工程が始まると、ヒータ120とファン180が作動する。ファン180から給気ダクト189を介して洗浄室102内に供給された空気は、ヒータ120で加熱昇温せしめられて温風となる。この温風が食器類Mに接触して乾燥させる。そして、乾燥によって生じた湿潤空気が連通通路105の排気口152から外部に排出される。一方、ファン180から空気噴出ダクト177に供給された空気は、連通通路105の排気口152の上方に隣接する空気噴出口176から水平方向に噴出される。すると、空気噴出口176から噴出する空気Eは、排気口152から噴出する湿潤空気Fが上昇するのを抑え込む。これにより、湿潤空気がカウンタートップKの前縁K1に接触するのが防止される。
【0008】
以上の構成により、システムキッチンの流し台に於けるカウンタートップKの下方空間に嵌め込む態様で食器洗浄機を設置しても、排気口152から出る湿潤空気がその上方に突出するカウンタートップKの前縁K1に接触し難いから、カウンタートップKに結露が生成し難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明の食器洗い機は、本体と、被洗浄物を収容する食器かごと、前記本体内に設けられ前記食器かごを収容する洗浄槽と、前記被洗浄物を洗浄する洗浄装置と、前記洗浄槽の内部と前記本体の外部とを連通する連通部と、前記洗浄槽の外部の空気を送風する送風装置と、前記本体の前面に設けられた排気口と、洗浄運転において、少なくとも、洗い工程、すすぎ工程および乾燥工程のいずれかを実行する制御部と、を備える。前記連通部は、前記洗浄槽の内部と前記本体の外部とを連通する連通通路と、前記連通通路において前記本体の外部側開口となる通気口と、を有し、前記送風装置は、前記洗浄槽の外部の空気を導く送風通路および送風ファンと、前記送風通路の出口となる吹出口と、を有する。前記排気口は、下段に位置する前記通気口と、上段に位置する前記吹出口とを隔壁を挟んで隣接して構成されるとともに、前記隔壁が前記排気口の前端より後退した位置まで設けられることにより、前記排気口の内部で前記隔壁の前方に空間を有する。前記制御部は、前記通気口から前記洗浄槽の内部の空気が排出されるときに、前記送風ファンを制御して前記吹出口から送風する。
【0017】
この構成により、洗い工程、すすぎ工程および乾燥工程のうち少なくとも1つの工程において、洗浄槽の内部の高温の湿潤空気が通気口を通じて排気口から本体外部に排出されるときに、送風装置の送風ファンにより吹出口から排気口に送風される。通気口の上段に位置する吹出口からの空気は、洗浄槽の内部の空気より温度が低く、隔壁が途切れた位置から通気口からの湿潤空気が上昇しないように抑え込む。これとともに、これらの空気は、排気口から本体外部に排出される直前で混合される。これにより、通気口からの湿潤空気は、排気口の上部および上方に設けられたパネル、操作部、またはキッチンのキャビネットなどに触れることなく、パネルなどの本体表面に結露が発生することを抑制できる。さらに、排気口から排出される空気の温度が低下し、使用者が排気口に近づいたときに不快な思いをすることを抑制できる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記隔壁は、前記排気口の前端より2mm以上8mm以下の寸法だけ後退した位置まで設けられる。隔壁が、排気口の前端より2mm以上の寸法だけ後退する構成によって、通気口からの空気および吹出口からの空気は、排気口から排出されるまでに混合される。また、隔壁が、排気口の前端より8mm以下の寸法だけ後退する構成によって、送風ファンが運転されていないときに通気口から湿潤空気が排出された場合でも、吹出口を通じて送風装置側に逆流することを抑制できる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記隔壁は、前記排気口の前端より、前記吹出口の高さ寸法の40%以上160%以下の寸法だけ後退した位置まで設けられる。この構成によって、通気口からの空気および吹出口からの空気は、排気口から排出されるまでに混合される。また、送風ファンが運転されていないときに通気口から湿潤空気が排出された場合でも、吹出口を通じて送風装置側に逆流することを抑制することができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれかの発明において、前記通気口の横幅寸法は、前記吹出口の横幅寸法と同一、もしくはそれより小さく形成される。この構成によって、吹出口からの空気は、通気口からの湿潤空気が上昇しないように確実に抑え込むことができる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれかの発明において、前記送風装置は、前記本
体の前面を開閉する扉の内側に設けられ、前記送風通路は、少なくとも一部が、前記本体の外部の空気と接触する外郭に密接する、または、前記本体の外部の空気と接触する外郭を構成する、ように形成される。この構成によって、送風通路が外郭を介して外部の空気と熱交換し、送風通路を通過する空気の熱量を放出して温度を低下させる。これにより、吹出口から排出される空気は、通気口から排出される空気をより確実に抑え込むとともに、温度を低下させて使用者の不快感を低減することができる。
【0022】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれかの発明において、前記排気口は、前記隔壁と交差する方向に複数のリブを備える。この構成によって、複数のリブが、通気口および吹出口から排出される空気を撹乱し、これらの空気の混合を促進する。これにより、排気口から排出される空気の温度を低下させて使用者の不快感を低減することができる。
【0023】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれかの発明において、前記通気口の開口面積は、前記吹出口の開口面積より大きく形成される。この構成によって、排気口において、通気口の面積をできるだけ大きく構成することにより、洗浄槽の内部の空気の排出を効率よく行うことができ、乾燥工程をより効率的に行うことができる。
【0024】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれかの発明において、前記連通部は、さらに前記洗浄槽の外部の空気を導く第2連通通路を有し、第2送風ファンが、前記連通通路または前記第2連通通路に設けられ、前記制御部は、乾燥工程において第2送風ファンを制御して送風する。この構成によって、乾燥工程が実行されるときに第2送風ファンによって送風され、連通部は乾燥装置として機能する。これにより、被洗浄物の乾燥が効率よく行われ、乾燥時間が短縮される。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における食器洗い機の側面断面図である。なお、
図1は、食器洗い機がシステムキッチンSKにビルトインされた状態を示す。本実施の形態1においては、第8の発明に記載されるように、連通部は、連通通路に加えてさらに第2連通通路を有し、連通通路または第2連通通路に第2送風ファンが設けられた構成として説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態の食器洗い機は、本体1と、洗浄槽2と、洗浄ポンプ6と、給水弁10と、扉1aなどを含む。なお、以降の各実施の形態において、図中に示すように、前方向は扉1aおよび洗浄槽2が引き出される方向、後方向は洗浄槽2が収納され扉1aが閉じられる方向として、説明する。また、食器洗い機の設置側を下方、反対側を上方とし、さらに、扉1aの正面に向かって右側を右方、左側を左方として、説明する。
【0028】
具体的には、洗浄槽2は、内部に、食器かご4と、洗浄ノズル7と、排水口8と、残さいフィルタ8aなどを含む。洗浄槽2は、本体1の内部に、前後方向に出し入れ可能に設けられる。洗浄槽2は、上面に開口部2aを有する。開口部2aは、本体1内に収容されたときに、本体1内に配設された蓋3で閉塞される。食器かご4は、食器などの被洗浄物5が載置される。扉1aは、洗浄槽2の前部に設けられ、本体1の前面を開閉する。給水弁10は、本体1内部の後部に設けられる。給水弁10は、開放により、洗浄水となる、例えば水道水を、洗浄槽2に供給する。
【0029】
被洗浄物5を洗浄する洗浄装置は、洗浄ポンプ6、洗浄ノズル7、ヒータ9などを含む
。洗浄ポンプ6は洗浄槽2の底面外側、洗浄ノズル7は洗浄槽2内の底部に設けられる。洗浄ポンプ6は、洗浄水を洗浄ノズル7に圧送する。洗浄ノズル7は、圧送された洗浄水により回転しながら、被洗浄物5に向けて洗浄水を噴射する。つまり、洗浄ポンプ6は、洗浄槽2内に溜められた洗浄水を加圧して洗浄ノズル7に供給する。洗浄ノズル7から噴射された洗浄水は、被洗浄物5に衝突して洗浄を行う。なお、洗浄水は、洗剤を含んで被洗浄物5に噴射される洗浄液と、被洗浄物5をすすぐためのすすぎ水とを含む。
【0030】
排水口8とヒータ9は、洗浄槽2内の底部に設けられる。残さいフィルタ8aは、排水口8に着脱自在に設けられ、被洗浄物5から洗浄、除去された残さいを収集する。ヒータ9は、洗い工程において、洗浄槽2内に溜められた洗浄水を加熱する。ヒータ9は、乾燥工程において、洗浄槽2内の乾燥用空気を加熱する。さらに、温度センサ11は、洗浄槽2の底面外側に配設され、洗浄槽2の温度を検知する。
【0031】
なお、洗浄ポンプ6は、吸い込み側が排水口8に連通され、残さいフィルタ8aで残さいが除去された洗浄水を循環させる。さらに、洗浄ポンプ6は、循環時のモータの回転方向を反転させることにより、残さいが除去された洗浄水を排水可能に構成される。
【0032】
被洗浄物5を乾燥する乾燥装置が、洗浄槽2と扉1aとの間に設けられている。乾燥装置は、第2連通通路である給気通路12と、排気経路となる連通通路13および通気口13aと、第2送風ファンである乾燥用ファン14と、ヒータ9などを有する。通気口13aは、連通通路13において本体1の外部側開口である。給気通路12および連通通路13は、それぞれ洗浄槽2の内部と本体1の外部とを連通する。
【0033】
給気通路12に乾燥用ファン14が設けられ、洗浄槽2内に外部の空気を導入する。この導入圧力によって、洗浄槽2内の空気が、連通通路13を介して通気口13aから外部に排出される。ヒータ9は、上記したように、乾燥工程において、乾燥用ファン14により給気通路12を介して導入された乾燥用空気を加熱する。連通通路13の断面積および通気口13aの開口面積は、乾燥工程において、十分な乾燥用空気の風量が確保でき、送風抵抗が大きくならない程度に設定される。なお、乾燥用ファン14は、連通通路13に設けられてもよい。
【0034】
洗浄槽2の外部の空気を送風する送風装置が、洗浄槽2と扉1aとの間の空間S2で乾燥装置の上方に設けられている。送風装置は、洗浄槽2の外部の空気を導く送風通路15および送風ファン16と、送風通路15の出口となる吹出口15aとを有する。送風装置は、洗浄槽2の外部であって、洗浄槽2と扉1aの間の空間S2に侵入する空気を送風する。
【0035】
図2は、同食器洗い機の正面図である。
図3は、同食器洗い機の前面の要部拡大図であり、排気口を示す。
図4は、
図2のA−A断面図である。
図5は、
図2のA−A断面部分の斜視図である。
図6は、
図2のA−A断面部分の要部拡大図である。
【0036】
図2に示すように、排気口17が、扉1aに設けられている。排気口17は、
図3〜
図6に示すように、下段に位置する通気口13aと、上段に位置する吹出口15aとが隔壁18を挟んで上下に隣接して構成される。隔壁18は、一点鎖線で示す排気口17の前端17aより後退した位置まで設けられる。すなわち、隔壁18の前端18aから排気口17の前端17aまでとなる排気口17の内部に、通気口13aからの空気と吹出口15aからの空気とが合流するための空間S1が設けられている。
【0037】
制御部19が、洗浄槽2と扉1aとの間の空間S2に設けられている。制御部19は、洗浄運転において、少なくとも、洗い工程、すすぎ工程および乾燥工程のいずれかを実行
し、洗浄装置、乾燥用ファン14および送風ファン16などを制御する。特に、連通部の乾燥用ファン14は、乾燥工程において運転される。これにより、被洗浄物5および洗浄槽2内部の乾燥が効率よく行われ、乾燥時間が短縮される。
【0038】
また、送風装置の送風ファン16は、洗い工程、すすぎ工程および乾燥工程のうち少なくとも1つの工程において、洗浄槽2内の温度が上昇し、湿度が高い湿潤空気が、連通通路13を通じて排出されるときに運転され、吹出口15aから送風される。
【0039】
以上のように、本実施の形態の食器洗い機は構成される。
【0040】
つぎに、上記構成を備える食器洗い機の動作について、説明する。
【0041】
まず、使用者は、扉1aのハンドル1aaを把持して、食器洗い機の本体1から洗浄槽2を引き出す。つぎに、使用者は、洗浄槽2の上部の開口部2aから食器などの被洗浄物5を食器かご4にセットする。そして、所定量の洗剤を、洗浄槽2内に投入する。つぎに、使用者は、洗浄槽2を本体1内に押し込んで、扉1aを閉じる。
【0042】
そして、使用者は、制御部19に接続された操作部19aで、運転コースを設定し、例えば開始ボタン(図示せず)を操作して、洗浄運転を開始する。これにより、制御部19は、運転コースに基づいて、洗浄運転を実行する。つまり、制御部19は、被洗浄物5の汚れを落とす洗い工程、被洗浄物5に付着した洗剤および残さいを流す、すすぎ工程、および、被洗浄物5を乾燥させる乾燥工程を、以下で説明する方法により、順番に実行する。
【0043】
まず、洗浄運転の洗い工程について、説明する。制御部19は、はじめに、給水弁10を動作させて、所定量の洗浄水を洗浄槽2に供給する。給水が完了すると、洗浄ポンプ6を駆動して洗浄水を圧送し、洗浄槽2の底部近傍に配設された洗浄ノズル7から洗浄水を噴射する。
【0044】
つぎに、制御部19は、洗浄水を噴射しながらヒータ9に通電し、洗浄水を加熱する。このとき、制御部19は、温度センサ11により洗浄槽2の底面の壁を介して、洗浄水の温度を検知する。そして、制御部19は、洗浄水が所定温度となるように制御する。
【0045】
噴射された洗浄水は、被洗浄物5の汚れを洗浄し、残さいフィルタ8aと排水口8を通過して、再度、洗浄ポンプ6に吸い込まれる。洗浄ポンプ6は、吸い込んだ洗浄水を圧送し、洗浄ノズル7に洗浄水を供給する。つまり、洗浄水は、上記のように循環して、被洗浄物5を洗浄する。制御部19は、上記洗い工程を、所定時間だけ行う。
【0046】
制御部19は、洗い工程が終了すると、汚れを含む洗浄水を食器洗い機の本体1外に排出する。そして、制御部19は、すすぎ工程を開始し、新たに洗浄水を、洗浄槽2内に供給する。
【0047】
つぎに、制御部19は、洗い工程と同様に、洗浄ポンプ6を運転し、洗浄ノズル7から新しい洗浄水を、被洗浄物5に向けて噴射する。そして、洗浄水で、残留する洗剤および残さいなどを、被洗浄物5から洗い流す。このとき、制御部19は、洗浄水の排出、洗浄水の供給などの動作を、例えば2回〜3回繰り返して実行し、すすぎ工程を行う。特に最後のすすぎ動作において、洗浄水を高温に加熱する加熱すすぎを行う。これにより、被洗浄物5および洗浄槽2内部が高温に加熱され、乾燥工程での水分蒸発が促進される。
【0048】
そして、制御部19は、すすぎ工程が終了すると、乾燥工程を行う。制御部19は、乾
燥用ファン14およびヒータ9を制御し、洗浄槽2内に導入される空気を加熱しながら洗浄槽2内の湿潤空気を排出し、被洗浄物5を乾燥させる。制御部19は、乾燥工程を所定時間行ったのち、食器洗い機の洗浄運転を終了する。
【0049】
つぎに、本実施の形態の食器洗い機における送風装置の動作について、上記の通り行われる洗い工程およびすすぎ工程と、乾燥工程とに分けて説明する。
【0050】
まず、洗い工程およびすすぎ工程において、連通部の乾燥用ファン14は運転されない。しかし、洗浄槽2の内部では、加熱された洗浄水が、洗浄ノズル7から激しく噴射される。このため、洗浄槽2内は湿潤空気が充満する。そして、充満した湿潤空気は、洗浄槽2内での空気の対流や、ヒータ9の加熱による蒸気発生および空気の膨張により、連通通路13および通気口13aを通じて、漂うように少しずつ排出される。この現象は、連通部に給気通路12および乾燥用ファン14が設けられていなくても発生しうる現象である。
【0051】
なお、本実施の形態の食器洗い機においては、連通通路13にダンパー13bが設けられている。ダンパー13bは、洗浄槽2内で発生する水音が外部に漏れることを抑制するとともに、湿潤空気の排出も抑制している。しかしながら、ダンパー13bは少しの風量でも開く(矢印Lで示す)ように、連通通路13の口径より小さめで軽量に構成されており、これらを完全に防止できるものではない。
【0052】
通気口13aに達した湿潤空気は、排気口17から本体外部に排出される。漂うように排出される湿潤空気は、破線矢印W1のように、排気口17の上部および上方に設けられたパネル、操作部、またはキッチンのキャビネットなどの本体表面Pに沿いながら上昇する。このとき、本体表面Pは外部の気温とほぼ同じ温度であり、気温が低いと本体表面Pに結露が発生する。
【0053】
そこで、制御部19は、洗い工程およびすすぎ工程において、洗浄槽2内の温度が高く、湿潤空気が発生するときに、送風装置の送風ファン16を制御して送風する。そして、通気口13aの上段に設けられた吹出口15aから、矢印Xのように、洗浄槽2の外部の空気が吹き出される。これにより、通気口13aから排出される湿潤空気は、矢印W2のように、隔壁18が途切れた前端18aの位置から吹出口15aから吹き出される空気に抑え込まれながら、排気口17から排出され、パネルなどの本体表面Pに触れることがない。そして、本体表面Pに結露が発生することが防止される。
【0054】
また、湿潤空気は、排気口17の内部に設けられた空間S1において、吹出口15aからの空気と混合され、排気口17から排出される空気の温度が低下する。したがって、洗い工程またはすすぎ工程の洗浄運転中に、使用者が排気口17に近接しても、使用者は高温の湿潤空気に直接触れることが抑制される。これにより、使用者が排気口17に近づいたときに、熱かったり濡れたりするような不快な思いをすることを抑制できる。
【0055】
つぎに、乾燥工程における送風装置の動作について説明する。
【0056】
乾燥工程においては、連通部の給気通路12に設けられた乾燥用ファン14が運転され、洗浄槽2内に外部の空気が導入される。この導入圧力によって、洗浄槽2内の湿潤空気は、矢印W2のように、相応の風量で連通通路13を介して通気口13aから、排出される。特に、乾燥工程の初期は、高温の湿潤空気が排出されるため、乾燥用ファン14の風量は少なく設定される。しかしながら、その風量は、洗い工程およびすすぎ工程において排出される空気量より多い。したがって、制御部19は、この湿潤空気を抑え込めるように送風装置の送風ファン16を制御し、矢印Xのように、送風する。そして、湿潤空気は
、排気口17の内側に設けられた空間S1において、吹出口15aからの空気と混合され、排気口17から排出される空気の温度が低下する。これにより、使用者が排気口17に近づいても不快な思いをすることを抑制できる。
【0057】
以上説明したように、制御部19が送風装置を制御することにより、連通通路13を通じて排出される湿潤空気が、排気口17の上部および上方に設けられたパネル、操作部、またはキッチンのキャビネットなどに触れないようにして、排気口17の上部の本体表面Pに結露が発生することを抑制できる。
【0058】
さらに、通気口13aから排出される湿潤空気に吹出口15aから送風される空気を混合し、排気口17から排出される空気の温度を低下させることで、使用者が排気口に近づいたときに不快な思いをすることを抑制できる。
【0059】
なお、排気口17は、下段に位置する通気口13aと、上段に位置する吹出口15aとが隔壁18を挟んで上下に隣接して構成されている。本実施の形態の食器洗い機において、吹出口15aの高さ寸法Hは5mmである。そして、隔壁18は、排気口17の前端17aより奥行き寸法Dとして5mm後退した位置まで設けられ、排気口17の内側に空間S1が設けられている。この空間S1において、通気口13aからの湿潤空気と吹出口15aからの空気とが混合される。この空間S1の効果的な奥行き寸法Dを検証したところ、本実施の形態の食器洗い機において、隔壁18が奥行き寸法Dとして2mm以上後退する位置までで空間S1を形成すれば、これらの空気を混合できることが確認された。
【0060】
また、空間S1を大きくするほど混合が促進されるが、奥行き寸法Dが8mmを超えれば、洗い工程およびすすぎ工程において通気口13aから排出される湿潤空気が、上段の吹出口15aに侵入しやすくなることが確認された。送風ファン16が運転されるまでに湿潤空気が侵入してしまうと、送風ファン16への悪影響が想定され、吹出口15aに湿潤空気が侵入しないことが望ましい。
【0061】
以上の検証から、隔壁18は、排気口17の前端17aより、吹出口15aの高さ寸法Hの40%以上160%以下の寸法だけ後退した位置まで設けられればよい。
【0062】
このとき、空間S1内、通気口13aおよび吹出口15aなどに、例えばリブなどの空気を撹拌する要素があれば、排出される空気の混合がより促進されて、温度が低下して好ましい。本実施の形態の食器洗い機においては、排気口17の前部に、奥行き方向に幅を有し、隔壁18と直角に交差する縦方向のリブ20が、排気口17の全幅にわたって等間隔に形成されている。この複数のリブ20によって、排気口17から排出される空気が撹拌されて温度がより低下する効果があるほか、使用者が通気口13aに指を挿入することができないこと、および、通気口13a内部が見えにくく美観が損なわれないこと、などの効果がある。
【0063】
なお、このリブ20の形状や配置については、隔壁18と交差する方向に形成されることが撹拌する上では望ましいが、その他については特に限定されるものではなく、前方から見て斜めや円形状のデザインであったり、排気方向を変化させる形状であったりしてもよい。
【0064】
また、排気口17の下段に設けられる通気口13aの横幅寸法は、上段に設けられる吹出口15aの横幅寸法と同一、もしくはそれより小さく形成されることが望ましい。この構成によって、吹出口15aから吹き出される空気は、通気口13aから排出される湿潤空気が上昇しないように確実に抑え込むことができる。
【0065】
また、送風装置により送風される風量は、乾燥装置の風量より少なくてよい。そのため、送風通路15の断面積および吹出口15aの開口面積は、連通通路13の断面積より小さくてもよい。換言すれば、排気口17において、連通通路13の出口となる通気口13aは、その開口面積を吹出口15aの開口面積より大きく形成されるとともに、できるだけ大きく構成されることが望ましい。これにより、洗浄槽2の内部の空気の排出を効率よく行うことができ、乾燥工程をより効率的に行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態の食器洗い機においては、
図4および
図5に示すように、送風装置の送風通路15は、前面部分が本体表面Pとなる外郭に密接している。送風通路15は、洗浄槽2と扉1aの間の空間S2に設けられるが、この空間S2の温度は洗浄槽2内の温度に影響される。しかし、外郭は本体1の外部である室内温度に近く、外郭に密接した送風通路15の前面15bは、外郭を介して外部の空気と熱交換し、洗浄槽2内が高温になって空間S2の温度が上昇しても送風通路15の前面15bの温度は室内温度近くに維持される。
【0067】
この構成により、送風通路15が外郭を介して外部の空気と熱交換し、送風通路15を通過する空気の熱量を放出して温度を低下させる。これにより、吹出口15aから排出される空気は、通気口13aから排出される湿潤空気をより確実に抑え込むとともに、温度を低下させて使用者の不快感を低減することができる。なお、送風通路15は、それ自身が本体1の外部の空気と接触する外郭を構成するように形成されていれば、より効率的に熱交換することができる。
【0068】
さらに、本実施の形態の食器洗い機においては、乾燥効率を向上させることを目的とした乾燥装置として連通部を構成し、給気通路12と乾燥用ファン14が設けられる構成で説明した。しかし、給気通路12と乾燥用ファン14とを設けずに、連通部を連通通路13および通気口13aで構成し、少なくとも、すすぎ工程の余熱またはヒータ9による洗浄槽2内の加熱で乾燥工程を行う構成でもよい。この構成であれば、乾燥工程における湿潤空気の大量の排出はないが、洗い工程およびすすぎ工程と同様の湿潤空気の排出が発生し、本実施の形態で説明した送風装置の作用と効果は有効である。
【0069】
また、本実施の形態の食器洗い機においては、洗浄槽2が引き出し式の構成で説明したが、
図7に示されるような引き出し式の食器洗い機、および、図示しないが、前面扉が、下端を蝶番として上端が前下方に回動して開閉されるフロントオープン式の食器洗い機にも適用できる。
【0070】
図7において、本体71の内部に洗浄槽72が構成される。扉73は、支持レール74によって支えられ、前後にスライドして洗浄槽72の前面開口部72aを開閉する。食器かご75はかごレール76によって支えられ、扉73に係止されて前後にスライドする。送風装置および連通部は、扉73の内部に構成され、前面に排気口77を備える。送風装置は、扉73の側面または下面などに設けられた開口部78から外部の空気を導入することが可能である。