特許第6982736号(P6982736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982736塗布ノズルヘッドおよびそれを具備する液体塗布装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982736
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】塗布ノズルヘッドおよびそれを具備する液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20211206BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20211206BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B05C11/10
   B05D1/26 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-88999(P2018-88999)
(22)【出願日】2018年5月7日
(65)【公開番号】特開2019-30865(P2019-30865A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-153364(P2017-153364)
(32)【優先日】2017年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】深田 和岐
(72)【発明者】
【氏名】中川 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英博
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−525831(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/122683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00− 5/04
7/00−21/00
B05D1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を吐出するノズル穴と、
前記ノズル穴に液体材料を供給する供給流路と、
前記供給流路内の液体に当接して往復するプランジャと、
前記プランジャに変位を与える変位拡大機構と、
前記変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータと、を含み、
前記変位拡大機構は、レバー部と支柱部とを有し、
前記変位拡大機構と前記アクチュエータとの接触部の少なくともいずれかが曲面であり、
前記支柱部周りの回転中心となる支点と、前記レバー部と前記アクチュエータの接触面である力点との距離が変化する液体塗布装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの一端は、前記レバー部があり、
前記アクチュエータの他端には、軸受けがあり、前記他端と前記軸受けとの接触部分の曲率は同じである請求項1記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記プランジャと連結された弾性体を、さらに有する請求項1または2に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記支点部は、曲面を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記レバー部の前記支点部周りの回転中心となる支点と、前記レバー部と前記アクチュエータの接触面である力点と、
前記レバー部と前記プランジャの接触面である作用点が、
同一直線上に存在しない位置関係を有する請求項1から4のいずれかに1項に記載の液体塗布装置。
【請求項6】
前記変位拡大機構と前記アクチュエータとの接触面の少なくともいずれかが凹凸形状を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の液体塗布装置。
【請求項7】
前記変位拡大機構と前記アクチュエータとの接触面において、
前記変位拡大機構の側の前記接触面の曲率半径と、
前記アクチュエータの側の前記接触面の曲率半径と、が異なる、請求項1から6のいずれかに記載の液体塗布装置。
【請求項8】
前記変位拡大機構の側の前記接触面の曲率半径は、前記アクチュエータの側の前記接触面の曲率半径より、小さい請求項7記載の液体塗布装置。
【請求項9】
前記プランジャの動作位置に応じて、前記変位拡大機構と前記アクチュエータとの接触点の位置が変化する請求項1から8のいずれかに1項に記載の液体塗布装置。
【請求項10】
前記プランジャの変位方向に対して、前記アクチュエータの変位方向が傾きを有する請求項1から9のいずれかに記載の液体塗布装置。
【請求項11】
前記アクチュエータに圧電素子を用いる、請求項1から10のいずれかに1項に記載の液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ノズルヘッドおよびそれを具備する液体塗布装置に関する。特に、高粘度の液体を吐出する塗布ノズルヘッドおよびそれを具備する液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プランジャの往復動作によって、液体材料を吐出する装置が知られている。例えば、特許文献1に示すジェットタイプの液体塗布装置である。
【0003】
近年では、生産性向上の観点から塗布作業の高速性が求められている。このタイプの液体塗布装置において、一定時間内の吐出回数をさらに増加させる要求が高まっている。そのため、液体塗布装置のプランジャを高速に往復動作させることが必要となっている。
【0004】
プランジャを往復動作させるための駆動源としては、モータやエアー、圧電素子などのアクチュエータが用いられることが多い。圧電素子は、高速動作が可能である。しかし、その変位量は小さいため、変位拡大機構と組み合わせて変位量を大きくして用いられることが一般的である。例えば、特許文献2に記載のものが知られている。
【0005】
以下、その変位拡大機構と圧電素子を用いた従来の液体塗布装置について、図1図4を参照しながら説明する。
【0006】
従来の液体塗布装置を正面図の図1に示す。 従来の液体塗布装置の吐出部の断面図を図2に示す。液体塗布装置1は、ノズル穴60から吐出液滴65を吐出する。液体塗布装置1は、ノズル穴60と連通し、液体材料が供給される供給流路52と、先端部が供給流路52内を往復動作するプランジャ12aと、プランジャ12aを往復動作させるアクチュエータ2aと、変位拡大機構3aと、を備える。
【0007】
アクチュエータ2aが左右対称に配置され、下部にプランジャ12aが連結される弾性変形可能なU字状部材5,6,7,8,9で変位拡大機構3aが構成される。図3で、プランジャ12aの上昇時の動作を説明する。図4で、プランジャ12aの下降時の動作を説明する。アクチュエータ2が、U字状部材5,6,7,8,9の両端部を離間させる力を作用させることにより、プランジャ12を上方向に移動させる。逆に、アクチュエータ2aが、U字状部材5,6,7,8,9の両端部を近接させる力を作用させることにより、プランジャ12aを下方向に移動させる。このことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−314640号公報
【特許文献2】特開2015−051399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高粘度液体材料を吐出させるためには、大きな変位量でプランジャ12を高速駆動する必要がある。
【0010】
従来の変位拡大機構3aにおいては、U字状部材5,6,7,8,9を弾性変形させることでプランジャ12aを上下方向に往復動作させている。必要な変位量を確保するためにはU字状部材8,9の剛性を低くする必要がある。これに伴って固有振動数が低くなり、プランジャ12の変位応答速度を向上させることには限界がある。
【0011】
したがって、アクチュエータ2の変位に対する変位拡大機構3aの変位拡大率を大きくすることで、プランジャ12aの変位量を大きくすることができるが、高速駆動との両立は困難である。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高速かつ安定的に高粘度液体材料の塗布を制御できる、変位拡大機構およびそれを具備する塗布ノズルヘッドおよびそれを具備する液体塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、液体材料を吐出するノズル穴と、上記ノズル穴に液体材料を供給する供給流路と、上記供給流路内の液体に当接して往復プランジャと、上記プランジャに変位を与える変位拡大機構と、上記変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータと、を含み、上記変位拡大機構と上記アクチュエータとの接触部の少なくともいずれかが曲面である液体塗布装置を用いる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、電子デバイスの製造などの産業用途において、機能性粒子が含まれる高粘度液体材料の塗布を高速かつ安定的に制御することができ、必要な箇所に最適な量を任意パターンで塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の液体塗布装置の正面図
図2】従来の液体塗布装置の吐出部の断面図
図3】従来の液体塗布装置のプランジャ上昇時の動作説明図
図4】従来の液体塗布装置のプランジャ下降時の動作説明図
図5】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図6A】本発明の実施の形態のプランジャ先端部の断面図
図6B】本発明の実施の形態のプランジャ先端部の断面図
図6C】本発明の実施の形態のプランジャ先端部の断面図
図6D】本発明の実施の形態のプランジャ先端部の断面図
図6E】本発明の実施の形態のプランジャ先端部の断面図
図6F】本発明の実施の形態のプランジャ先端部の断面図
図7】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図8A】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図8B】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図8C】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図9A】本発明の実施の形態のプランジャ変位挙動図
図9B】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図9C】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図9D】本発明の実施の形態の液体塗布装置の断面図
図10】本発明の実施の形態の変形例の液体塗布装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、実施の形態を説明する。説明は、1つの例示であるため、本願発明は、下記説明で限定されない。
<液体塗布装置>
<構成>
図5は、本発明の実施の形態の液体塗布装置100の断面図であり、基本構成について以下に説明する。
【0017】
液体塗布装置100は、ノズル穴60から液体材料の吐出液滴65を吐出する。液体塗布装置100は、ノズル穴60と連通し、液体材料が供給される供給流路52と、先端部が供給流路内を往復動作するプランジャ12と、プランジャ12を往復動作させるアクチュエータ2と、変位拡大機構3と、を備える。
【0018】
以下に、各構成要素の特徴について説明する。
【0019】
<ノズル穴60>
ノズル穴60は、超硬合金やステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属に設けられた貫通穴である。材質は、金属だけでなく、セラミックやPEEKなどの樹脂材料でも構わない。しかし、液体材料が吐出される際に、含有粒子材料で磨耗したり、液体材料に侵食・溶出されたりすることのない材料の選定が必要である。
【0020】
また、吐出液滴サイズに応じて、ノズル内径は、Φ0.05mm〜0.5mmの範囲から選定される。液体材料の粘度やチキソ性、表面張力、ノズル面との接触角などの物性に応じて、ノズル長さは0.05mm〜5mmの範囲から選定される。
【0021】
図5においては、簡略化のため、供給流路52とノズル穴60が一体構造として図示している。しかし、製作上およびメンテナンス性向上のため、ノズル穴60を別部品として別途作製し、組み付けてもよい。
【0022】
<供給流路52>
供給流路52は、ノズル穴60と同様の材料を用いることができる。供給流路52の断面は、Φ0.5〜10mm程度の円形状でも、同程度の断面積の矩形状でも構わない。加工性や気泡溜り防止の観点から、円形状が好ましい。
【0023】
供給流路52は、液体材料を供給するタンク(図示せず)と、ノズル穴60とを連通させる。 供給流路52は、タンクに充填された液体材料を、ノズル穴60まで供給する機能を担っている。
【0024】
<プランジャ12>
プランジャ12は、ガイド110およびシール材104の孔を介して、移動する。このことによって、液体材料を供給流路52内のノズル穴60から押し出す。プランジャ12には、ノズル穴60と同様の材料を用いることができる。しかし、プランジャ12の材質は、ガイド110やシール材104、液体材料に含まれる粒子材料で摩耗劣化したり、液体材料に侵食・溶解されたりすることのない素材を選定する必要がある。また、プランジャ12を高速駆動させるためには、比重の小さな素材を選定することが好ましい。さらに、プランジャ12自身の体積を最小限に低減させて軽量化を行うことが好ましい。
【0025】
プランジャ12は、アクチュエータ2の駆動エネルギを液体材料の吐出エネルギに変換する機能を担っている。プランジャ12がノズル穴60近傍で往復運動することによって、ノズル穴60近傍の液体材料に圧力を印加して、ノズル穴60から液体材料の吐出液滴65を吐出させる。
プランジャ12の先端形状は、図5に記載のような平坦形状でも構わないが、図6A図6Fに記載のような凸形状でもあっても構わない。
<ガイド110>
ガイド110は、プランジャ12を真っ直ぐ上下で移動させるものである。ガイド110は、貫通穴を有し、その貫通穴をプランジャ12が上下する。
【0026】
<アクチュエータ2>
アクチュエータ2は、プランジャ12を往復運動させるための駆動源として用いられ、モータやエアー、圧電素子などが用いられることが多い。
【0027】
<変位拡大機構3>
変位拡大機構3は、プランジャ12と同様に、耐摩耗性と軽量性が両立できる素材を選定することが望ましく、支点部101とレバー102で構成される。
【0028】
変位拡大機構3は、プランジャ12の変位量をアクチュエータ2の変位量よりも拡大する機能を担っている。より小さなアクチュエータ2を用いて、プランジャ12をより大きく往復運動させることによって、粘性の高い液体材料や、大きな粒子を含む液体材料をノズル穴60から吐出させることができる。
【0029】
図5においては、ハウジング30に当接された支点部101の上に、レバー102が設置され、プランジャ12は弾性体103の引張力によって、レバー102先端部に当接した状態で保持される。この弾性体103がプランジャ12とハウジング30の間に設置され、圧縮力によって保持されても構わない。
【0030】
弾性体103は、スプリングコイルバネでも、板バネでも構わない。バネ定数は0.1〜10N/mmの範囲から選定されることが望ましい。バネ定数が小さすぎると、固有振動数が低くなって高速駆動できなくなり、バネ定数が大きすぎると、アクチュエータ変位量によるバネ力の変化が大きく駆動が不安定になるためである。
【0031】
<レバー102とアクチュエータ2との接触部>
レバー102とアクチュエータ2との接触部の少なくともいずれかが曲面とする構成をとる。このことによって、レバー102の上面をアクチュエータ2が当接して変位を印加することができる。レバー102が支点部101回りに回転する。この回転で、レバー102の先端に設置されたプランジャ12は、アクチュエータ2の変位によって上下に往復動作することが可能となる。
【0032】
また、レバー102とアクチュエータ2との接触部の摺動抵抗を低減するため、接触面の少なくともいずれかが凹凸形状を有してもよい。つまり、凹形状と凸形状とがどちらにあってもよい。
凹凸を形成する
<支点部101とレバー102の接触面>
支点部101は、円柱形状である。レバー102先端部は、凸曲面でプランジャ12のフランジ平面の作用点109に接触する。また、レバー102の支点部101と接触する部分は、当接する支点部101の曲率半径に比べて同等以上の曲率半径の凹曲面であることが好ましい。これらは一体となった部品構成としても構わない。なお、凹部、凸部は、逆の関係でもよい。
【0033】
ここで、レバー102の支点部101周りの回転中心を支点107とし、レバー102とアクチュエータ2の接触面を力点108とし、レバー102がプランジャ12を押す点を作用点109とする。
【0034】
図5に記載のように、支点107と力点108と作用点109は、同一直線上には存在せず、三角形を構成する。
【0035】
図5では、アクチュエータ2およびプランジャ12はレバー102回転中心となる支点107に対して同じ方向に位置しているが、それぞれ異なる方向に位置しても構わない。
【0036】
支点107から力点108までの距離L1を、支点107から作用点109までの距離L2に比べて小さくすることが重要である。これによって、アクチュエータ2の変位に比べて、プランジャ12の変位をより大きく拡大することが可能となる。
【0037】
なお、アクチュエータ2が圧電素子の場合は、引張力による圧電素子の破壊を防止するため、弾性体103によって圧縮荷重の予圧を与えることも可能である。その結果、アクチュエータ2の駆動信頼性を向上させることができる。
【0038】
<塗布動作>
次に、液体材料の塗布動作について、以下に説明する。
(1)液体材料の供給
液体材料が充填される供給流路52内をプランジャ12の先端が上方向に移動する際にノズル穴60近傍に液体材料が供給される。供給流路52に直結する液体材料の供給のタンク(図示せず)に対して、0.1〜500kPa程度の背圧をかけることによって、液体材料の供給速度を高めて、より短い吐出間隔で高粘度材料を塗布することが可能となる。背圧が高いほど液体材料の供給速度は大きくなる一方、粒子含有ペースト材料の場合には固形分と液体成分が分離してしまうことが問題となるため、背圧は300kPa程度以下であることが好ましい。また、背圧が300kPa以下であっても、ノズル穴60から液体材料が染み出た状態になると、ノズル穴60内の気液界面(メニスカス面)が不安定となり、安定な液滴吐出ができなくなる場合があるため、液体材料と吐出条件に応じた背圧設定が不可欠である。
【0039】
(2)液体の吐出
プランジャ12がノズル穴60に近接する下方向に移動する際に、ノズル穴60近傍の液体圧力が上昇して液体材料の吐出液滴65が吐出される。ここで、プランジャ12の上下運動中においてもノズル穴60近傍の液体圧力が低下しないように、プランジャ12とハウジング30に密着してシール材104が設置される。プランジャ12の下方向への移動速度が速いほどノズル圧力を急速に上昇させることができる。このため、ノズル穴60から先頭で飛び出す液体材料の吐出速度を上昇させることができる。さらに、ノズル穴60から先頭の液体材料が飛び出し始めた後にプランジャ12を上方向に速く移動させることによって、後続する液体材料の吐出速度を急速に低下させることもできる。これによって、高粘度の液体材料でも吐出液滴の糸曳きを短くすることが可能となり、より微量な吐出液滴65を安定して吐出させることができる。
【0040】
図5においては、プランジャ12先端が供給流路52内の液体材料に接液して上下動作する構成となっているが、図7に示すように、プランジャ12先端が直接的に液体材料に接液せず、ダイアフラム105面を上下動作させる構成とすることも可能である。
【0041】
図7は、図5の液体塗布装置100の変形例の断面図である。ダイアフラム105上面に、プランジャ12が位置する。プランジャ12は、ダイアフラム105を押し引きする。
【0042】
<変位拡大機構3の変形例1>
続いて、変位拡大機構3の変形例について、以下に説明する。
【0043】
図8Aは前述の液体塗布装置100と同じ基本構成である。比較するために表示した。ここで、アクチュエータ2のレバー102と当接しない側の面を図8Bに示すように、曲面の軸受106を設置しても構わない。
【0044】
このような構成にすることにより、アクチュエータ2に短軸方向(図8Aでは左右方向)の力が作用することがなくなり、駆動信頼性を向上させることができる。
【0045】
<変位拡大機構3の変形例2>
また、変位拡大機構3において、プランジャ12の変位応答速度を向上させ、長期連続駆動信頼性を確保するためには、アクチュエータ2やレバー102および支点部101、プランジャ12の摺動部の駆動抵抗を低減させることが必要である。
【0046】
そこで、図8Cに示すように、アクチュエータ2とレバー102が当接する面と、レバー102と支点部101が当接する面が、アクチュエータ2の長軸方向から見て重ならないようにすることによって、レバー102が駆動する際に受ける反力を低減させることができ、余分な摺動抵抗を抑制することが可能となる。つまり、図8Cの点線内に、レバー102と支点部101とが当接する面が含まれないようにする。
【0047】
さらに、摺動面のいずれか、あるいは両方に0.1μm以上の凹凸や溝を形成することによって、接触面積を低減して摺動抵抗を低減することも併せて可能である。
【0048】
加えて、接触界面の摺動抵抗を低減させるため、固体潤滑剤やグリスを塗布、成膜することがより好ましい。
【0049】
<変位拡大機構3の変形例3>
図9Aに、プランジャ12の変位と時間との関係を示す。理想的に理想曲線のように、プランジャ12が変位することが理想である。しかし、実際は、時間の応答遅れが発生し、実変位曲線で、プランジャ12が変位する。特に、粘性の高い液体材料を吐出させる場合には、実変位曲線となる。これは、プランジャ12に大きな変位を付与する場合に、プランジャ12の駆動抵抗が大きくなるため顕著に発生する。
【0050】
この主な要因は次の2つである。
(1)プランジャ12の先端がノズル穴60に近接するほど、プランジャ12の先端のノズル穴60近傍の圧力が高くなるためである。
(2)アクチュエータ2単体の変位や変位拡大倍率が大きくなるに伴って、弾性体103による引張力および圧縮力が大きくなるためである。
【0051】
この対策として、実施の形態としては、図9Bに示すように、アクチュエータ2とレバー102が当接する面が、曲率半径の異なる曲面で構成されることが好ましい。図9Bは、液体塗布装置100の変形例の断面図である。
アクチュエータ2のレバー102と当接する面において、レバー102側の当接面を凸曲面とする場合、レバー102側の面の曲率半径を、アクチュエータ2側の面の曲率半径より小さくする構成とすることが好ましい。一方、レバー102側の当接面を凹曲面とする場合、レバー102側の面の曲率半径を、アクチュエータ2側の面の曲率半径より大きくする構成とすることが好ましい。
【0052】
図9Cは、液体塗布装置100の変形例の断面図で、プランジャ12の下降開始時の液体塗布装置100の断面図である。図9Dは、液体塗布装置100の変形例の断面図で、プランジャ12の下降終了時の液体塗布装置100の断面図である。図9Cに示すように、プランジャ12の下降開始時にはアクチュエータ2がレバー102を押す力点と支点107の距離(矢印)は比較的短くなり、変位拡大がより大きくなるため、変位応答の立ち上りをより高速化することが可能となる。また、図9Dに示すように、プランジャ12の下降終了時にはアクチュエータ2がレバー102を押す力点と支点107の距離(矢印)は比較的長くなり、変位拡大がより小さくなるため、プランジャ12の押荷重をより大きな力にすることができ、プランジャ12の駆動抵抗に負けることなく、変位応答をより高速化することが可能となる。
【0053】
この場合、プランジャ12が下方向に移動する際に、矢印の長さが変化することで、変位拡大機構3の変位拡大倍率を徐々に小さく変化させることができる。
【0054】
<変位拡大機構3の変形例4>
また、高粘度液体材料を微量吐出させるためには、比較的小さな変位量を大きな力でプランジャ12を高速駆動させることが重要である。そのためには、変位拡大機構3の変位拡大倍率を必要最小限に小さく抑えて、レバー102の質量を最小限に低減させて軽量化する必要がある。
【0055】
しかしながら、アクチュエータ2と弾性体103とが干渉しないような構成にしなければならず、設計範囲が制限される。これは、弾性体103がプランジャ12とハウジング30の間に設置され、圧縮力によって保持される場合でも同様である。
【0056】
この対策の実施の形態として、液体塗布装置100の変形例の断面図を図10に示す。図10に示すように、プランジャ12の変位方向に対して、アクチュエータ2の変位方向が傾きθを有する構成とする。この傾きθは、1度〜90度の範囲から選定されることが多く、10〜60度の範囲で最も効果的である。なお、図10は、プランジャ12の稼働前の状態である。
プランジャ12が、稼働する時点で、アクチュエータ2の変位方向は、プランジャ12の変位方向に対して、傾いている。
【0057】
このような構成にすることにより、アクチュエータ2とレバー102が当接する面と、レバー102と支点部101が当接する面が、アクチュエータ2の長軸方向から見て重ならないようにしながらも、アクチュエータ2の変位方向に直交する方向の、支点107と力点108間の距離をより小さく設定できる。
【0058】
その上、アクチュエータ2と弾性体103との物理的距離が大きくなるため、レバー102の長さを短縮することができる。
【0059】
そのため、レバー102を軽量化することができ、レバー102とプランジャ12などの可動部の慣性モーメントを50%〜90%程度小さくすることが可能となる。
【0060】
所定トルクを作用させた場合、変位加速度は慣性モーメントに反比例するため、プランジャ12の変位加速度を2倍〜10倍程度まで大きくすることが可能となり、高粘度液体材料を微量吐出するのに有用である。
【0061】
また、図10では、アクチュエータ2およびプランジャ12はレバー102回転中心となる支点に対して同じ方向に位置しているが、それぞれ異なる方向に位置しても構わない。
【0062】
本発明の液体塗布装置は、機能性粒子が含まれる液体材料の塗布を高速、かつ、安定的に制御することができる。また、本発明の液体塗布装置は、非接触で必要な箇所に最適な量を任意のパターンで高速に塗布することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明の液体塗布装置は、長期連続駆動が不可欠となる電子デバイス製造などの産業用途で用いることが可能である。また、本願発明の液体塗布装置は、
凹凸面や曲面などの立体構造物への3D塗布や、多品種少量の電子デバイス製造における生産性向上などの目的で、任意パターン塗布するための変位拡大機構およびそれを具備する液体塗布装置として好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0064】
1 液体塗布装置
2、2a アクチュエータ
3、3a 変位拡大機構
5 字状部材
8 字状部材
12、12a プランジャ
30 ハウジング
52 供給流路
60 ノズル穴
65 吐出液滴
100 液体塗布装置
101 支点部
102 レバー
103 弾性体
104 シール材
105 ダイアフラム
106 軸受
107 支点
108 力点
109 作用点
110 ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10