特許第6982738号(P6982738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982738複合シートおよびこれを用いた電池パック
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982738
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】複合シートおよびこれを用いた電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20211206BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20211206BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20211206BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20211206BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20211206BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20211206BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20211206BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20211206BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01M10/6555
   H01M10/653
   H01M10/651
   H01M10/658
   H01M10/613
   H01M10/647
   H01M10/617
   B32B7/025
   B32B7/027
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-505874(P2018-505874)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2017009416
(87)【国際公開番号】WO2017159527
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-49294(P2016-49294)
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 佳也
(72)【発明者】
【氏名】河村 典裕
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−028880(JP,A)
【文献】 特開2016−018813(JP,A)
【文献】 特開2001−315244(JP,A)
【文献】 特開2004−081382(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/017164(WO,A1)
【文献】 特開2015−216184(JP,A)
【文献】 特開2012−084347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6555
H01M 10/653
H01M 10/651
H01M 10/658
H01M 50/20
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/617
B32B 7/025
B32B 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導シートと、
前記熱伝導シートの一方の面を覆う第1の絶縁シートと、
前記熱伝導シートの他方の面を覆い、前記第1の絶縁シートとの間で前記熱伝導シートを封止する第2の絶縁シートと、
前記熱伝導シートと前記第1の絶縁シートとの間に積層され、前記熱伝導シートの少なくとも一部の領域を覆う断熱層と、
を備え
前記熱伝導シートは、
前記断熱層が積層された断熱領域と、
前記熱伝導シートが積層され、かつ前記断熱層が積層されていない熱伝導領域と、
を有する、
複合シート。
【請求項2】
前記熱伝導シートは、グラファイトシートである、
請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記断熱層は、100kPaの圧力が加えられたときの厚み変化率が10%以下である、請求項1または2に記載の複合シート。
【請求項4】
前記断熱層の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも小さい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の複合シート。
【請求項5】
前記断熱層は、
不織布と、
前記不織布に担持されたキセロゲルと、
を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の複合シート。
【請求項6】
前記第2の絶縁シートは、前記熱伝導シートに対向する第1の面の反対側の第2の面に設けられた粘着層を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の複合シート。
【請求項7】
筺体と、
前記筺体の内部に配置された第1の電池セルと、
前記筺体の前記内部に配置されて前記第1の電池セルと隣り合う第2の電池セルと、
前記第1の電池セルの外面に貼り合わされた、請求項1から6のいずれかに記載の複合シートと、
を備え、
前記複合シートの前記第2の絶縁シートが前記第1の電池セルの外面に接し、
前記断熱層は第1の電池セルと前記第2の電池セルとの間に配置された、
電池パック。
【請求項8】
前記複合シートの前記熱伝導シートは前記断熱層が積層されていない熱伝導領域を有し、
前記第1の電池セルは、前記複合シートの前記熱伝導領域を介して前記筺体に接続されている、
請求項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合シート、およびこれを用いた電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化や小型化に伴い、電子機器に用いられる電子部品の発熱量が増大し、その放熱のために、グラファイトシートなどの熱伝導部材が用いられている。
【0003】
また、各種機器にリチウムイオン二次電池が搭載されるようになり、その電流容量も大きくなってきている。リチウムイオン二次電池の電流容量が大きくなり使用される電流も増大すると、その発熱量も大きくなり、その放熱のために、グラファイトシートなどの熱伝導部材が用いられるようになってきた。
【0004】
なお、この出願に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−225765号公報
【発明の概要】
【0006】
複合シートは、熱伝導シートと、熱伝導シートの一方の面を覆う第1の絶縁シートと、熱伝導シートの他方の面を覆い、第1の絶縁シートとの間で熱伝導シートを封止する第2の絶縁シートとを備える。複合シートは、熱伝導シートと第1の絶縁シートとの間に積層され、熱伝導シートの少なくとも一部の領域を覆う断熱層を備える。
【0007】
この複合シートは、熱伝導の優れた領域と断熱の優れた領域を有し、熱伝導部材の性能と断熱部材の性能を兼ね備える。
【0008】
電池パックは、筺体と、筺体の内部に配置された電池セルと、電池セルの外面に貼り合わされた複合シートとを備える。電池パックに貼り合わされた複合シートは、第2の絶縁シートの側において、電池セルの外面に接し、断熱層は、複合シートが貼り合わされた電池セルと隣接する他の電池セルとの間に配置される。
【0009】
この電池パックは、電池セルから筺体への放熱性に優れるとともに、隣接する電池セルの間の断熱性に優れ、高い信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、実施の形態における複合シートの平面図である。
図1B図1Bは、図1Aに示す複合シートの線1B−1Bにおける断面図である。
図1C図1Cは、図1Bに示す複合シートの要部1Cにおける断面図である。
図2A図2Aは、実施の形態における複合シートを用いた電池パックの断面図である。
図2B図2Bは、図2Aに示す電池パックを構成する複合シートの断面図である。
図2C図2Cは、図2Aに示す電池パック分解斜視図である。
図3図3は、他の実施の形態における装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態における複合シートについて、図面を参照しながら説明する。図1Aは、実施の形態における複合シート11の平面図である。図1Bは、図1Aに示す複合シート11の線1B−1Bにおける断面図である。図1Cは、図1Bに示す複合シート11の要部1Cにおける断面図である。
【0012】
複合シート11は、熱伝導シート12と、断熱層15と、第1の絶縁シート13と、第2の絶縁シート14とを有する。熱伝導シート12は相対的に熱伝導率が高く、断熱層15は相対的に熱伝導率が低い。第1の絶縁シート13と第2の絶縁シート14は、電気絶縁性を有する。第1の絶縁シート13は、熱伝導シート12の一方の面12aを覆う。第2の絶縁シート14は、熱伝導シート12の他方の面12bを覆う。第1の絶縁シート13および第2の絶縁シート14は、熱伝導シート12よりも寸法が大きく、熱伝導シート12の外周縁の外側で互いに接着され、熱伝導シート12を封止する。断熱層15は、熱伝導シート12と第1の絶縁シート13との間に積層され、熱伝導シート12の少なくとも一部の領域を覆う。断熱層15は、熱伝導シート12とともに、第1の絶縁シート13と第2の絶縁シート14によって封止される。
【0013】
複合シート11は、熱伝導特性の優れた部分と断熱特性の優れた部分を有し、単一部材で熱伝導部材と断熱部材の両方の特性を兼ね備える。複合シート11は、特に小型の電子機器において、限られた空間内で熱伝導部材と断熱部材の両方の機能を果たし、電子機器の小型化に寄与する。
【0014】
熱伝導シート12には、厚さ約50μmのグラファイトシートを用いた。グラファイトシートは熱伝導特性に優れ、そのシート面方向の熱伝導率は約1300W/m・Kである。グラファイトシートは、厚み方向よりもシート面方向の熱伝導率が高く、熱伝導性に異方性がある。複合シート11は、熱伝導シート12としてグラファイトシートを用いることにより、熱伝導特性が良好になり、特に好ましい。
【0015】
グラファイトシートからは、導電性を有するグラファイト粉末が発生する可能性があり、グラファイト粉末は電子回路に付着してショートなどの不具合を引き起こす可能性がある。そのため、グラファイトシートよりも寸法の大きい第1の絶縁シート13と第2の絶縁シート14を用いてグラファイトシートを挟み込み、グラファイトシートの外周縁の外側で封止する。これにより、グラファイト粉末の飛散を防止し、電子回路の不具合の発生を抑制することができる。
【0016】
熱伝導シート12としては、グラファイトシートの他に、金フィルム、銀フィルム、アルミニウムフィルム、銅フィルムなどの熱伝導率の高い部材を用いることができる。
【0017】
断熱層15としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)の不織布にシリカキセロゲルを担持させた厚さ約0.5mmのシートを用いた。その熱伝導率は約0.020W/m・Kであり、空気の熱伝導率である約0.026W/m・Kよりも小さい。このように、断熱層15の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも小さいため、複合シート11の断熱層15は、少ない容積で優れた断熱特性を有し、複合シート11の小型化を可能にする。
【0018】
断熱層15は、100kPaの圧力を加えた場合の厚み変化率が10%以下となるものを用いることが望ましい。PETの不織布にシリカキセロゲルを担持させた断熱層15は、圧力が加えられたときの厚みの変化率が小さく、100kPaの圧力が加えられたときの厚みの変化率は約3%である。このように構成した断熱層15は、圧力が加えられる状況においても断熱性能の低下が少なく信頼性が高い。
【0019】
以上のように、断熱層15は、不織布と、不織布に担持されたキセロゲルとを有することにより、断熱性に優れ、圧力が加わるような状況下においても良好な断熱特性を維持できる。
【0020】
断熱層15としては、この他に、空気層やウレタン製の発泡シートなどのように熱伝導率の低いものを用いることができる。断熱層15として空気層や発泡シートを使用した場合、圧力が加えられると圧縮され、断熱性が低下する場合がある。
【0021】
第1の絶縁シート13は、絶縁フィルムからなるベース層13aと、その一方の面に積層された粘着層13bとを有する。ベース層13aは厚さ約10μmのポリエチレンテレテレフタレートの絶縁フィルムである。粘着層13bは、厚み約10μmのアクリル系粘着剤からなる。第1の絶縁シート13は、粘着層13bを介して、熱伝導シート12および第2の絶縁シート14に貼り合わされる。
【0022】
第2の絶縁シート14は、絶縁フィルムからなるベース層14aと、熱伝導シート12に対向する第1の面14dに粘着層14bを有し、第1の面14dと反対側の第2の面14eに粘着層14cを有する。ベース層14aは厚さ約10μmのポリエチレンテレテレフタレートの絶縁フィルムである。粘着層14bおよび粘着層14cは、厚み約10μmのアクリル系粘着剤からなる。第2の絶縁シート14は、粘着層14bを介して、熱伝導シート12および第1の絶縁シート13に貼り合わされる。
【0023】
アクリル系粘着剤はグラファイトシートに対して大きな接着力を有する。これにより、粘着層13bおよび粘着層14bは、第1の絶縁シート13および第2の絶縁シート14をグラファイトシートに良好に接着でき、良好な熱伝達特性と機械的強度が得られる。また、断熱層15を良好に封止することができる。
【0024】
PETの不織布にシリカキセロゲルを担持させた断熱層15は、シリカ粒子が剥離しやすいため、粘着材との間の接着力は小さい。断熱層15を熱伝導シート12と第1の絶縁シート13との間で挟んで封止することにより、シリカ粒子が複合シート11の外部に飛散することを防止できる。これにより、シリカ粒子の飛散による不具合防止と断熱特性の維持ができる。また、断熱層15を熱伝導シート12と第1の絶縁シート13との間で挟んで封止することにより、断熱層15の位置ずれを防止できる。
【0025】
第2の絶縁シート14は、複合シート11の外部に向かって露出する第2の面14eの側に粘着層14cを有する。複合シート11は、粘着層14cを有することにより、複合シート11を外部装置(図示せず)に貼り合わせる際の作業効率が向上する。また、粘着層14cを介して複合シート11を外部装置(図示せず)に貼り合わせることにより、複合シート11と外部装置(図示せず)との間の熱抵抗を低減させ、熱伝導特性を向上させることができる。
【0026】
複合シート11は、熱伝導シート12が断熱層15で覆われた断熱面31と、断熱層15で覆われていない熱伝導面32を有する。複合シート11は、断熱面31に接した物体に対して優れた断熱特性を有し、熱伝導面32に接した物体に対して優れた熱伝導特性を有する。複合シート11は、単一の部材で断熱機能と熱伝導機能を併せ持ち、断熱および放熱を必要とする電子機器に用いることにより、電子機器の小型化に貢献できる。
【0027】
複合シート11は、第1の絶縁シート13と熱伝導シート12と第2の絶縁シート14が積層され、かつ、断熱層15が積層されていない熱伝導領域33を有する。熱伝導領域33において、複合シート11は、第1の絶縁シート13が積層された側の面と第2の絶縁シート14が積層された面の両方が熱伝導面32である。熱伝導領域33において、複合シート11は、厚み方向およびシート面方向の熱伝導特性に優れ、熱伝導部材として有用である。
【0028】
複合シート11は、第1の絶縁シート13と熱伝導シート12と断熱層15と第2の絶縁シート14が積層された断熱領域34を有する。断熱領域34において、複合シート11は、熱伝導シート12が断熱層15で覆われた断熱面31と、断熱層15で覆われていない熱伝導面32を有する。
【0029】
断熱領域34において、複合シート11は、断熱面31に接した物体に対して優れた断熱特性を有し、熱伝導面32に接した物体に対して優れた熱伝導特性を有し、断熱部材および熱伝導部材の両方の機能を有する。
【0030】
複合シート11は、熱伝導領域33と断熱領域34を有することにより、断熱領域34の熱伝導面32から流入した熱を熱伝導領域33の熱伝導面32から放熱することができる。また、断熱面31に対する熱伝導を抑制することができる。そのため、優れた断熱特性と優れた熱伝導特性を併せ持つ。
【0031】
複合シート11は、熱伝導領域33の熱伝導シート12と断熱領域34の熱伝導シート12が、一体もので構成されているため、断熱領域34の熱伝導面32から流入した熱を熱伝導領域33の熱伝導面32に伝達する際の熱伝達特性に優れる。
【0032】
グラファイトシートは、熱伝導特性に異方性を有し、厚み方向の熱伝導特性と比較してシート面方向に特に高い熱伝導特性を有する。複合シート11は、熱伝導シート12として、グラファイトシートを使用することにより、断熱領域34の熱伝導面32から流入した熱を熱伝導領域33の熱伝導面32に伝達することができ、断熱面31に対する断熱効果を高める。
【0033】
次に実施の形態における複合シートを用いた電池パックについて説明する。図2Aは、実施の形態における複合シート11を用いた電池パック51の断面図である。図2Bは、図2Aに示す電池パック51を構成する複合シート11の断面図である。図2Cは、図2Aに示す電池パック51の分解斜図である。
【0034】
電池パック51は、金属製の筺体52と、筺体52の内部に配置された複数の電池セル53と、各々の電池セル53の外面54に貼り合わされた複合シート11とを有する。電池セル53は角型リチウムイオン電池であり、一対の端子電極55が上面に設けられている。ただし、断面図の記載において、電池セル53の内部構造は省略する。熱伝導シート12は、厚さ約50μmのグラファイトシートからなる。断熱層15は、PETの不織布にシリカキセロゲルが担持されてなり、厚さ約0.5mmである。断熱層15は、熱伝導シート12の少なくとも一部に、熱伝導シート12からはみ出さないように積層される。熱伝導シート12と断熱層15は、第1の絶縁シート13と第2の絶縁シート14とで挟まれて封止されている。
【0035】
複合シート11は電池セル53の一方の側面から底部およびもう一方の側面にかけて貼り合わせられる。ここで、複合シート11は、第2の絶縁シート14の側が、電池セル53の外面54に接するように貼り合わされる。すなわち、電池セル53と貼り合わせる側の複合シート11の面は、熱伝導シート12が断熱層15で覆われていない熱伝導面32である。これにより、電池セル53に生じた熱は速やかに熱伝導シート12に伝達することができ、電池セル53内の温度分布を小さくすることができる。
【0036】
断熱層15は、複合シート11が貼り合わされた電池セル53と隣接する他の電池セル53との間に配置される。すなわち、電池セル53に貼り合わされた複合シート11において、熱伝導シート12が断熱層15で覆われた断熱面31が隣接する他の電池セル53に面するように配置される。
【0037】
これにより、電池パック51の中の1つの電池セル53の温度が過度に上昇した場合であっても、断熱層15によって、隣接する他の電池セル53への熱の伝達が抑制され、過度の温度上昇が連鎖的に発生することを抑制できる。
【0038】
以上のように、電池パック51は、電池セル53内の温度差を小さくするとともに、電池セル53の全体の温度上昇を抑制することができる。また一つの電池セル53が熱暴走しても、隣接する他の電池セル53との間に断熱層15が配置されているため、連鎖的な熱暴走を防ぐことができる。
【0039】
一般に二次電池は劣化する際に内蔵する電池セルが膨張する場合がある。電池セル53が膨張して断熱層15に圧力がかかったときに、断熱層15が圧縮されてしまうと断熱性が低下する。そうなると、電池セル53に連鎖的な熱暴走が発生しやすくなり、安全性が損なわれる。電池パック51の安全上、断熱層15は、100kPaの圧力を加えた場合の厚み変化率が10%以下となるものを用いることが望ましい。
【0040】
複合シート11は、熱伝導シート12に断熱層15が積層されていない熱伝導領域33を有する。複合シート11が貼り合わされた電池セル53は、複合シート11の熱伝導領域33を介して筺体52と接続されている。電池セル53は複合シート11に接し、複合シート11は筺体52に接している。電池セル53で発生した熱は熱伝導領域33を経由して筺体52に放熱することができるため、電池セル53の温度上昇を抑制することができ、電池セル53の劣化を抑制することができる。
【0041】
なお、複合シート11と筺体52との間には、シリコーングリスのような熱伝導材を設けても良い。こうすることにより、さらに効率的に電池セル53の熱を筺体52に伝えることができる。
【0042】
複合シート11を有することにより、安全性が高く、劣化の少ない電池パック51を得ることができる。
【0043】
次に、他の実施の形態における複合シート75を用いた装置71について説明する。
【0044】
図3は、他の実施の形態における複合シート75を用いた装置71の断面図である。他の実施の形態において、装置71は、複合シート75と発熱部品72とヒートシンク73と断熱を要する部品74を有する。
【0045】
発熱部品72は装置71を動作させることによって、発熱する部品である。ヒートシンク73は、装置71の内部の熱を外部に放熱することのできる部材である。断熱を要する部品74は、発熱部品72からの熱の伝達を抑制する必要のある部品である。
【0046】
複合シート75において、実施の形態の複合シート11と共通する構成要素は同じ符号を付し、その説明を省略する。他の実施の形態の複合シート75が、実施の形態の複合シート11と異なる点は、断熱層15が熱伝導シート12の一方の側のほぼ全面を覆う点である。
【0047】
複合シート75における断熱層15が積層された側に断熱を要する部品74が配置される。複合シート75における熱伝導シート12が積層された側に発熱部品72とヒートシンク73が配置される。複合シート75と発熱部品72の間、および、複合シート75とヒートシンク73の間は、熱伝達が良好に行われるように密着あるいは接着される。
【0048】
装置71は、複合シート75の断熱層15が熱伝導シート12の一方の側のほぼ全面を覆うことにより、断熱を要する部品74が熱伝導シート12の面積に匹敵する面積を有する場合であっても、優れた断熱特性を有する。
【0049】
装置71は、複合シート75の熱伝導シート12が積層された側に、発熱部品72とヒートシンク73の両方が配置された場合であっても、発熱部品72からヒートシンク73に対して放熱することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の複合シートは、熱伝導性の高い領域と熱伝導性の低い領域とを有し、熱伝導部材あるいは断熱部材として産業上有用である。
【0051】
本開示の電池パックは、放熱性が良好で、局所的に過度の温度上昇を低減することができ、各種電子機器の電源として産業上有用である。
【符号の説明】
【0052】
11 複合シート
12 熱伝導シート
12a,12b 面
13 第1の絶縁シート
13a ベース層
13b 粘着層
14 第2の絶縁シート
14a ベース層
14b 粘着層
14c 粘着層
14d 第1の面
14e 第2の面
15 断熱層
31 断熱面
32 熱伝導面
33 熱伝導領域
34 断熱領域
51 電池パック
52 筺体
53 電池セル
54 外面
55 端子電極
71 装置
72 発熱部品
73 ヒートシンク
74 部品
75 複合シート
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3