(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薬液を収納可能な医療用容器に取り付けられるオスコネクタと、該オスコネクタに下方から接続され薬液を収納可能な他の医療用容器に取り付けられるメスコネクタとを有し、外気から遮断された状態で前記医療用容器間の前記薬液の受け渡しを行うためのコネクタシステムにおいて、
前記オスコネクタは、
上部が蓋部で閉鎖された筒状のオス側本体部と、
前記蓋部に設けられた貫通孔を介して前記医療用容器と連通され、前記オス側本体部の軸線に沿って延びるとともに当該オス側本体部に下方から接続された前記メスコネクタに対して相対的に昇降可能な針管と、
前記オス側本体部に前記軸線に沿って延びるように設けられ、前記針管の外周を離間して囲うとともに前記メスコネクタに対して相対的に昇降可能な針管用筒部とを備え、
前記メスコネクタは、
下部において前記他の医療用容器を取り付け可能な筒状のメス側本体部と、
前記メス側本体部の上部に設けられ、弾性力を有し前記軸線に直交する面に前記針管用筒部を押し込むことで開閉自在なスリットを備える第1弁部と、
前記メス側本体部の内側に設けられ、前記第1弁部の下方に配置され前記針管で貫通可能な第2弁部とを備え、
前記針管用筒部は、該針管用筒部と該針管とが上昇位置にあるときに、少なくとも前記針管の先端を収納するとともに、該針管の先端を収納した状態で前記第1弁部を押し開く位置まで降下可能であり、
前記針管は、前記第2弁部を貫通する位置まで降下可能であることを特徴とするコネクタシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来のコネクタシステムは、筒状のオスコネクタと、該オスコネクタの下端部に差し込まれるメスコネクタとを備えている。オスコネクタは、該オスコネクタ上端に設けられた蓋部と、該蓋部に下方へ向かって設けられた針管と、オスコネクタ内に摺動可能に設けられたオス側弁部と、該オス側弁部と蓋部との間に設けられオス側弁部を下方に付勢する圧縮ばねとを備えている。メスコネクタは、筒状に形成され、その上端にメス側弁部が設けられている。
【0007】
メスコネクタをオスコネクタに接続する前は、オス側弁部が針管先よりも下方に位置し、針管先がオスコネクタ外に露出しないように構成されている。オスコネクタをメスコネクタに接続するときは、メスコネクタをオスコネクタ内に挿入し、メスコネクタの先端でオス側弁部を押し、さらに針管先がオス側弁部及びメス側弁部を貫通するまでメスコネクタをオスコネクタ内に押し込むことで、メスコネクタがオスコネクタに接続される。
【0008】
薬液を移送した後、メスコネクタをオスコネクタから外す。このとき、針管がメス側弁部から引き抜かれる。
【0009】
しかしながら、前記メス側弁部は、針管によって貫通され貫通孔が形成されているため、針管をメス側弁部から引き抜く際、針管に残った薬液がメス側弁部の上面から外部に出たり、或いは、気化して外部に漏れるおそれがある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、メスコネクタをオスコネクタから外した後であっても、薬液の封止性を向上することができるコネクタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]上記目的を達成するため、本発明のコネクタシステムは、
薬液を収納可能な医療用容器に取り付けられるオスコネクタと、該オスコネクタに下方から接続され薬液を収納可能な他の医療用容器に取り付けられるメスコネクタとを有し、外気から遮断された状態で前記医療用容器間の前記薬液の受け渡しを行うためのコネクタシステムにおいて、
前記オスコネクタは、
上部が蓋部で閉鎖された筒状のオス側本体部と、
前記蓋部に設けられた貫通孔を介して前記医療用容器と連通され、前記オス側本体部の軸線に沿って延びるとともに当該オス側本体部に下方から接続された前記メスコネクタに対して相対的に昇降可能な針管と、
前記オス側本体部に前記軸線に沿って延びるように設けられ、前記針管の外周を離間して囲うとともに前記メスコネクタに対して相対的に昇降可能な針管用筒部とを備え、
前記メスコネクタは、
下部において前記他の医療用容器を取り付け可能な筒状のメス側本体部と、
前記メス側本体部の上部に設けられ、弾性力を有し前記軸線に直交する面に前記針管用筒部を押し込むことで開閉自在なスリットを備える第1弁部と、
前記メス側本体部の内側に設けられ、前記第1弁部の下方に配置され前記針管で貫通可能な第2弁部とを備え、
前記針管用筒部は、該針管用筒部と該針管とが上昇位置にあるときに、少なくとも前記針管の先端を収納するとともに、該針管の先端を収納した状態で前記第1弁部を押し開く位置まで降下可能であり、
前記針管は、前記第2弁部を貫通する位置まで降下可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、オスコネクタにメスコネクタを接続する際、該針管用筒部と該針管とを上昇位置にしておくことで、前記針管の外周を離間して囲った状態で前記針管の先端を収納できるため、針管先端が外部に露出することを防止できる。
次いで、針管の先端を収納した針管用筒部をメスコネクタの前記第1弁部を押し開く位置まで降下させると、前記メス側本体部の上部に設けられた第1弁部のスリットは、針管用筒部が押し込まれることで開かれる。
次いで、針管用筒部に収納された針管を、前記第2弁部を貫通する位置まで降下させると、前記第1弁部の下方に配置された第2弁部は針管によって貫通される。
これにより、本発明のコネクタシステムによれば、外気から遮断された状態で前記医療用容器間の前記薬液の受け渡しをおこなうことができる。
逆に、本発明によれば、オスコネクタからメスコネクタを取り外す際には、針管を上昇させることで第2弁部から引き抜き、針管用筒部に収納することができる。
次いで、針管の先端を収納した針管用筒部を、第1弁部のスリットに押し込まれた位置から上昇させることで、第1弁部から引き抜くことができ、これにより、第1弁部のスリットは針管用筒部の押圧が解除され自身の弾性力によって閉じる。
したがって、針管は、針管用筒部に収納された状態で第1弁部を通過するため、第1弁部に針管は接触しない。よって、針管に薬液が付着していたとしても、該薬液が第1弁部の上面に移って付着することがない。
また、針管を第2弁部から引き抜く際に、第2弁部の上面に薬液が付着したとしても、その上方で第1弁部のスリットが閉じるため、該薬液が気化してメスコネクタの外部に露出することを防止することができる。
以上説明したとおり、本発明のコネクタシステムによれば、薬液の封止性を向上することができる。
【0013】
[2]また、本発明においては、前記メスコネクタは、前記第2弁部が前記第1弁部に離間して配置され、前記メス側本体部、第1弁部及び第2弁部に囲われた空間が形成されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、メスコネクタは、第2弁部が第1弁部に離間して配置されることで、メス側本体部、第1弁部及び第2弁部に囲われた空間が形成されるので、針管用筒部で第1弁部のスリットを押し開いた際に、スリットが空間内に収納され、スリットが第2弁部に接触しない。このため、針管を第2弁部から引き抜く際に、第2弁部の上面に薬液が付着しても、スリットに薬液が付着することを防止し、より一層、薬液の封止性を向上することができる。
【0015】
[3]また、本発明においては、前記第1弁部は、前記第1弁部の各々の裏面に、前記針管用筒部が前記第1弁部に押し込まれたとき前記メス側本体部の内壁に当接する突起が設けられていることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、第1弁部に針管用筒部が押し込まれた際、スリットから分かれるように第1弁部が下方に曲げられ、第1弁部の裏面の突起がメス側本体部の内壁に当接する。この突起がメス側本体部の内壁と針管用筒部との間に挟まれる状態となり、メス側本体部の内壁と針管用筒部との間の隙間がなくなる。そして、突起の弾性によって第1弁部で針管用筒部が本体部の軸線側に付勢されるので、針管用筒部を動かないように抑えることができる。結果、針管を安定して抜き差しすることができる。
【0017】
[4]また、本発明においては、前記メスコネクタは、メス側本体部の内部で前記第1弁部の下方に設けられ前記針管用筒部の先端を前記軸線側にガイドするガイド受け部と、前記第2弁部の上面に設けられ前記針管用筒部の下端部に嵌る凸部とを備えていることが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、ガイド受け部で針管用筒部の先端を軸線側にガイドし、第2弁部の凸部に針管用筒部の下端部が嵌るので、針管用筒部の先端がガイド受け部と凸部によって位置決めされ、針管用筒部をより動かないようにすることができる。結果、針管用筒部の下端部の位置決めをすることができる。
【0019】
[5]また、本発明においては、
前記オス側本体部は、中筒部の上側に摺動可能に嵌められた上筒部と、該中筒部の下側に摺動可能に嵌められた下筒部とを備えることで2段階に伸縮可能に構成され、
前記蓋部は、前記上筒部の上部に設けられ、
前記針管用筒部は、前記上筒部と該中筒部とが伸ばされたときに前記針管先端の外周を離間して囲うように前記中筒部に形成され、
前記下筒部は、前記上筒部乃至該下筒部が伸ばされたときに前記針管用筒部先端を離間して囲うとともに、前記メスコネクタを取り付ける取付部を有することが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、オス側本体部を、上筒部、中筒部、下筒部によって簡単な構成で2段に伸縮可能にすることができる。さらに、針管用筒部は、上筒部と該中筒部とが伸ばされたときに針管先端の外周を離間して囲うように中筒部に形成されるので、上筒部と該中筒部とを伸ばすだけで、針管先端を針管用筒部に収納することができる。さらに、下筒部は取付部を有しているので、メスコネクタを下方から容易に取付けることができる。
【0021】
[6]また、本発明においては、
前記メスコネクタは、前記メス側本体部の上部に上方へ突出するとともに前記メス側本体部の外径よりも小さい径に形成されている円筒状の挿入部と、該挿入部の上部から側方に突出し前記取付部に嵌合する一対のピンとを備えていることが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、メス側本体部の外径よりも小さい径の挿入部が上方へ突出して形成され、挿入部の上部から側方に一対のピンが突出しているので、オスコネクタの取付部に挿入部を挿入して一対のピンを取付部に係止するだけで、メスコネクタをオスコネクタに取付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図を参照して、本発明の実施形態のコネクタシステム1を詳しく説明する。
図1に示すように、コネクタシステム1は、外気から遮断された状態で医療用容器間の薬液の受け渡しをおこなうためのものである。コネクタシステム1は、薬液を収納可能な医療用容器に取り付けられるオスコネクタ10と、該オスコネクタ10に接続され薬液を収納可能な他の医療用容器に取り付けられるメスコネクタ50とを備えている。オスコネクタ10及びメスコネクタ50は、樹脂製である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、オスコネクタ10は、筒状のオス側本体部11と、該オス側本体部11の上端部を閉鎖する蓋部12と、オス側本体部11の下端部に形成されメスコネクタが接続される開口部13と、蓋部12に回動可能に設けられた端子部2とを備えている。端子部2には、オス側本体部11の軸方向に貫通する端子部貫通孔2aが形成されており、輸液バッグからの生理食塩水等を導くチューブ(不図示)が接続される。
【0026】
オス側本体部11は、蓋部12で上端部が閉鎖された筒状の上筒部14と、該上筒部14に軸方向へ摺動可能に設けられた中筒部15と、該中筒部15に軸方向へ摺動可能に設けられた下筒部16と、該下筒部16の下部を開閉可能に閉鎖する閉鎖機構30とを備えている。オスコネクタ10は、中筒部15の上側に摺動可能に嵌められた上筒部14と、中筒部15の下側に摺動可能に嵌められた下筒部16とを備えることで2段階に伸縮可能に構成されている。
【0027】
閉鎖機構30は、円筒状の外筒部31と、該外筒部31の内周に沿って回動可能な内筒部32とを備えている。外筒部31の下端部には、メスコネクタ50がオスコネクタ10から抜けることを防止する抜止め33が設けられている。内筒部32の下端部には、メスコネクタ50と共に内筒部32を回動させるために、メスコネクタ50の周方向の移動を規制するようにメスコネクタ50を内筒部32に固定する溝状の固定部34が設けられている。このように、抜止め33及び固定部34によって、メスコネクタ50を閉鎖機構30に取付けることができる。閉鎖機構30は、メスコネクタ50を取り付ける取付部でもある。
【0028】
メスコネクタ50は、筒状のメス側本体部51と、該メス側本体部51の外径よりも小さい径に形成されオスコネクタ10の内筒部32に挿入される円筒状の挿入部52と、該挿入部52から側方に突出し外筒部31の抜止め33及び内筒部32の固定部34に嵌合する一対のピン53と、挿入部52の上端を閉鎖するように設けられた端部54と、該端部の中央に形成された開口55と、該開口55を開閉する第1弁部56とを備えている。
【0029】
以下、オスコネクタ10の具体的構成について説明する。
上筒部14には、蓋部12が一体的に形成されている。蓋部12は、オス側本体部11の軸線上に沿って、上面12aに接続部17が形成され、下面12bの中央に針管固定部18aが形成されている。針管固定部18aには、針管3が挿入され固定される貫通孔(以下、蓋部貫通孔という。)18が形成されている。針管3は、蓋部貫通孔18を介して医療用容器と連通され、上筒部14の軸線に沿って延びている。
【0030】
接続部17には、端子部2の一部が挿入されるOリング19と、該Oリング19を押さえる押さえ部材21とが備えられている。
【0031】
上筒部14は、下部に内側へ突出するように形成されている上筒係止部22と、下端部から上方へ切り込むように形成されている上筒スリット14aと、下部に外側へ突き出して揺動可能に形成されている爪部14bとを備えている。
【0032】
中筒部15は、上部に外側へ突出するように形成されている中筒フランジ部23と、下部に内側へ突出するように形成されている中筒係止部24と、下端部から上方へ切り込むように形成されている中筒スリット15aとを備えている。
【0033】
また、中筒部15は、上部に形成され中筒フランジ部23と連続する天板部27と、該天板部27の中央に形成された天板貫通孔27aと、該天板貫通孔27aの縁から下方に延びるように形成され針管3の外周方向を囲う針管用筒部28と、該針管用筒部28の先端に形成され針管3が通過可能な針管用開口部28aとを備えている。針管用筒部28の先端部には、針管3の先端部を突き刺すように収納可能なゴム部材29が備えられている。針管用筒部28は、オス側本体部11の軸線に沿って延び、上筒部14と中筒部15とが伸ばされたときに針管3先端の外周を離間して囲っている。
【0034】
下筒部16は、該下筒部16の上部に外側へ突出するように形成されている下筒フランジ部25と、該下筒部16の下部に外側へ突出するように形成されている下筒係止部26と、該下筒部16に下端部から上方へ切り込むように形成されている下筒スリット16aとを備えている。そして、該下筒部16には、上筒部14乃至下筒部16が伸ばされたときに針管用筒部28先端を離間して囲うとともに、メスコネクタ50を取り付ける閉鎖機構(取付部)30が設けられる。
【0035】
図2〜
図4に示すように、閉鎖機構30は、円筒状の外筒部31と、該外筒部31の内周に沿って相対移動可能な内筒部32と、外筒部31に対する内筒部32の相対移動に応じて変位して該外筒部31または該内筒部32の下部を開閉する一対のドア部41を備える。本実施形態では、外筒部31に対する内筒部32の相対移動は、外筒部31に対する内筒部32の回動である。
【0036】
外筒部31は、該外筒部31の上端部に外側及び内側へ突出するように形成されている外筒フランジ部31aと、外筒部31の上部の側壁を貫通するように形成されている矩形状の固定孔31bと、外筒部31の下部の側壁を側面視L字状に切り抜くように形成されている抜止め33とを備えている。
【0037】
円板吊り部37は、環状に形成されている上部円板部35と、該上部円板部35から下方に吊り下がるように形成されている一対の吊下げ部36と、該吊下げ部36の下面に形成されている穴36aと、上部円板部35の中央を上下に貫通するように形成されている円板貫通孔35aと、該円板貫通孔35aの縁に設けられ弾性を有し環状に形成されている環状ゴム35bと、上部円板部35の外周に形成されている爪35cとを備えている。
【0038】
ベース部38は、環状に形成されている環状板部39と、該環状板部39から上方に突出する一対のガイドレール42と、該ガイドレール42の外側にて環状板部39から上方に延びる一対の柱部43とを備えている。この環状板部39には、中央に貫通孔39aが形成され、該貫通孔39aを挟むように一対の柱部43が平行に延びている。
【0039】
内筒部32は、該内筒部32の内周に形成されている一対のアーム44と、該アーム44の先端部に上下に貫通するように形成されている支持穴44aと、内筒部32の側壁に矩形状に形成された一対の切欠き48とを備えている。アーム44は、切欠き48の周方向の一端から、切欠き48に沿って延びてから内周方向に屈曲してさらに延び、全体として略L字状を形成している。切欠き48は、後述するように、アーム44が広がった際に該アーム44の一部を収納するように形成されている。
【0040】
ドア部41は、平面視で半月状であって、上面の端部に上方に立ち上がるように形成されている立上げピン45と、下面に設けられ弾性を有する半月状のドア弾性部46と、下面に一対のガイドレール42にそれぞれ嵌るように形成されている一対の溝部47とを備えている。
【0041】
以上に述べたオスコネクタ10における各部品の組立て、及び、各部品間の作用について説明する。
オス側本体部11においては、上筒部14の内側には、中筒部15が上下方向に摺動可能に取付けられている。この中筒部15の摺動は、中筒フランジ部23が上筒係止部22に当接することで規制される。そして、中筒部15の内側には、下筒部16が上下方向に摺動可能に取付けられている。この下筒部16の摺動は、下筒フランジ部25が中筒係止部24に当接することで規制される。
さらに、下筒部16に対して、下筒係止部26を外筒フランジ部31aの内側と上部円板部35で挟持することで、閉鎖機構30が取付けられる。
【0042】
このような構成にすることで、オス側本体部11は、上下に伸縮することができ、最も長くした状態では、上筒部14に取り付けられた針管3の先端が、中筒部15に備えられたゴム部材29の中に突き刺さって収納された状態となる。また、オス側本体部11は、最も短くした状態では、上筒部14の爪部14bを外筒フランジ部31aの外側に係止することで、オス側本体部11を短くした状態に維持することができる。
【0043】
閉鎖機構30においては、外筒部31に下方から円板吊り部37を挿入し、爪35cを固定孔31bに係止することで、外筒部31に円板吊り部37が取付けられる。
次いで、外筒部31に対して、該内筒部32とベース部38とを順次下方から挿入し、外筒部31に取り付けられた吊下げ部36の穴36aにベース部38の柱部43を圧入する。
【0044】
このとき、ドア部41は、立上げピン45が内筒部32に設けられたアーム44の支持穴44aに対してそれぞれ挿入された状態であらかじめ取り付け、かつ、溝部47がガイドレール42に嵌められた状態でベース部38によって封じられる。該立上げピン45は、アーム44の支持穴44aに対して回転可能であるため、ドア部41は、ガイドレール42に沿って摺動することができる。
【0045】
そして、ドア部41は、内筒部32に設けられたアーム44の弾性力により閉じ方向に付勢され、ベース部38の貫通孔39aは、ドア部41のドア弾性部46によって閉鎖されている。
【0046】
次いで、オスコネクタ10の抜止め33及びメスコネクタ50の固定部34について詳細に説明する。
図2〜
図4及び
図6Aに示すように、外筒部31の抜止め33は、外筒部31の下端部から軸方向に沿って形成される縦溝33a及び該縦溝33aの上端から周方向に形成される横溝33bによって構成される側面視L字状の外筒L字溝からなる。すなわち、抜止め33は、外筒L字溝である。内筒部32の固定部34は、内筒部32の下端部から軸方向に沿って形成され、外筒L字溝33の縦溝33aに重なる内筒縦溝34aからなる。
【0047】
次いで、メスコネクタ50の具体的構成について説明する。
図1、
図5に示すように、メスコネクタ50は、下部において他の医療用容器を取り付け可能な筒状のメス側本体部51と、該メス側本体部51の上部に設けられ軸線に直交する面に針管用筒部28(
図2参照)を押し込むことで開閉自在なスリット56cを有する第1弁部と、メス側本体部51の内側で前記第1弁部56を支持する筒状の弁支持筒部57と、第1弁部56から下方に離間して弁支持筒部57の内側の下部に設けられ該弁支持筒部57の下部を閉鎖する第2弁部58と、第2弁部58の下方からメス側本体部51の内側に挿入されてメス側本体部51の下部を閉鎖する筒状のメス側副筒部61とを備えている。
【0048】
メス側本体部51は、上部に上方へ突出するように形成されている円筒状の挿入部52と、該挿入部の上部から側方に突出する一対のピン53と、挿入部52の上端を塞ぐように形成されている端部54と、該端部54の中央に形成された開口55とを備えている。
【0049】
第1弁部56は、弾性を有し、中央からスリット56cで分割された第1弁部56の各々の裏面に形成され下方に突出する突起56aと、外周部分に形成され弁支持筒部57の内壁に沿って下方に延びる垂下部56bとを備えている。
【0050】
弁支持筒部57は、上部に形成され第1弁部56を支持する上端支持部57aと、上下方向中間部から軸線に向かってせり出すように形成されているせり出し部66と、該せり出し部の中央部に形成されているせり出し部貫通孔66aと、該せり出し部貫通孔66aの縁から上方へ突出するように形成されているガイド受け部67とを備えている。
【0051】
第2弁部58は、弾性を有し、上面に上方へ突出するように形成されている凸部68と、下面に環状に窪むように形成されている環状溝69とを備えている。
【0052】
メス側副筒部61は、上部に形成され弁支持筒部57を支持する環状の副天板部61aと、副天板部61aの中央の開口部から下方に延びる連通内筒部64と、外周に上下方向に延びるように形成されているリブ62と、内周に形成されているねじ部63と、副天板部61aの上面から上方に突出して形成され第2弁部58の環状溝69に嵌る弁下側支持部65とを備えている。
【0053】
以上に述べたメスコネクタ50における各部品の組立て、及び、各部品間の作用について説明する。
メスコネクタ50においては、メス側本体部51に対して、第1弁部56と弁支持筒部57とを順次下方から挿入する。これで、該弁支持筒部57とメス側本体部51の端部54で、第1弁部56が挟持される。
【0054】
さらに、メス側本体部51に対して、第2弁部58とメス側副筒部61とを順次下方から挿入する。これで、該メス側副筒部61の弁下側支持部65と弁支持筒部57のせり出し部66で、第2弁部58が挟持される。また、メス側副筒部61はメス側本体部51に圧入されており、メス側副筒部61の副天板部61aに、弁支持筒部57の下端が支持されている。
【0055】
また、第1弁部56から下方に離間して第2弁部58が配置されており、第1弁部56、弁支持筒部57及び第2弁部58によって閉鎖空間が形成されている。
【0056】
以上にそれぞれ説明したオスコネクタ10に対するメスコネクタ50の固定及び抜止めの作用について以下に説明する。
図6Aに示すように、メスコネクタ50を矢印(1)のように移動させ、ピン53を、縦溝33a及び内筒縦溝34aに嵌める。
【0057】
なお、便宜上、オスコネクタ10を固定し、メスコネクタ50を移動させるものとして説明するが、これに限定されず、固定したメスコネクタ50に対し、オスコネクタ10を移動させてもよく、すなわち、オスコネクタ10に対しメスコネクタ50を相対移動するものであれば差し支えない。
【0058】
図6Bに示すように、メスコネクタ50を矢印(2)のように回動させ、ピン53を矢印(3)のように横溝33bに移動させる。このとき、オスコネクタ10では、外筒部31が固定された状態で、内筒部32が回動する。
【0059】
図6Cに示すように、ピン53が横溝33bの端部に当接し、メスコネクタ50の回動が規制される。ピン53が横溝33b下側に当接し、ピン53の下方への移動が規制されることで、オスコネクタ10に対して、メスコネクタ50が固定されるともに抜け止めされる。
【0060】
このように、内筒部32に設けられた固定部34にメスコネクタ50を取り付けると、内筒部32に対するメスコネクタ50の周方向の移動が規制されるため、取り付けたメスコネクタ50を外筒部31と相対的に回動させることで、内筒部32を容易に回動させることができる。
【0061】
次いでドア部41の作用について説明する。
メスコネクタ50(
図6B)をオスコネクタ10に接続した直後のとき、
図7Aに示すように、オスコネクタ10では、ドア部41が閉じた状態である。ここから
図6B示すメスコネクタ50を回動させることで、内筒部32を矢印(4)のように移動させる。
【0062】
これにより
図7Bに示すように、内筒部32の回動に伴いアーム44も回動し、アーム44によってドア部41の立上げピン45が牽引され、ドア部41が開き始める。このとき、ドア部41の移動方向がガイドレール42によって規制されているので、ドア部41が矢印(5)のようにガイドレール42に沿って移動し、湾曲したアーム44は矢印(6)のように湾曲が小さくなるように変形する。
【0063】
図7Cに示すように、内筒部32の回動が規制された位置で、ドア部41が開き切った状態となり、貫通孔39aに針管用筒部28(
図2参照)及び針管3が挿通可能となる。ドア部41が開いた状態では、アーム44が外側に広げられる。内筒部32にはアーム44を逃がすがための切欠き48が形成されているので、アーム44の外側に広がる変形が妨げられないようにすることができる。
【0064】
このように、ドア部41は、該ドア部41を閉じ方向に付勢するアーム44によって支持されているため、ベース部38に設けられた貫通孔39aを封じることができる。そして、外筒部31に対して内筒部32を回動させると、ドア部41は、該内筒部32に設けられたアーム44に牽引されて内筒部32とともに回動しようとする。ところが、該ドア部41は、外筒部31に設けられたベース部38のガイドレール42にガイドされているため、ドア部41の回転運動は、アーム44自身の弾性によって変形させながら、ガイドレール42に沿った直線上の摺動運動に変換され、この結果、ドア部41は貫通孔39a上方で、該貫通孔39aを塞いだ状態から貫通孔39aの外方に移動し閉鎖機構30が開かれる。したがって、この構成によれば、メスコネクタ50をオスコネクタ10に挿入して回動させるだけで、メスコネクタ50をオスコネクタ10に接続するとともに、閉鎖機構30を開状態にすることができる。
【0065】
次いで、メスコネクタ50へ針管3を挿通する工程について説明する。便宜上、
図8ではメスコネクタ50を固定し、オスコネクタ10を移動させるものとする。
図8Aに示すように、オスコネクタ10を矢印(7)のようにメスコネクタ50に移動させる。
すると、
図8Bに示すように、オスコネクタ10の開口部13にメスコネクタ50が挿入される。
【0066】
図8Cに示すように、メスコネクタ50のピン53が固定部34に嵌っているので、オスコネクタ10の内筒部32の回動は規制されている。オスコネクタ10の外筒部31を矢印(8)のようにピン53が33bの端部に当接するまで(
図6C参照)回動させて、ドア部41を開く。
【0067】
オスコネクタ10をメスコネクタ50に接続する場合、まずオスコネクタ10全体を伸ばすことで、針管3の先端を針管用筒部28によって囲むとともに該針管用筒部28の先端を下筒部16に囲んだ状態で、オスコネクタ10の閉鎖機構(取付部)30にメスコネクタ50を取り付けることができるので、薬液を収納した医療用容器と連通するオスコネクタ10の針管3が外部に露出することを防止することができる。
【0068】
図9A、
図10に示すように、上筒部14及び中筒部15を下筒部16に対して軸線に沿って降下させてオスコネクタ10の全長を第1段階縮めると、中筒部15の針管用筒部28は貫通孔39aを通過する。さらに、該下筒部16の下方から針管用筒部28が突出して第1弁部56のスリット56cに押し込まれ、該スリット56cを開口させ、その先端はガイド受け部67に当接する。
【0069】
図9B、
図10に示すように、上筒部14を中筒部15に対して軸線に沿って降下させてオスコネクタ10の全長を第2段階縮めると、上筒部14の蓋部12に取付けられた針管3が、針管用筒部28のゴム部材29(
図10参照)を貫通し、針管用筒部28先端から針管3が突出して第2弁部58を貫通することで、針管3の先端がメスコネクタ50内に挿通される。これでコネクタシステム1を介してバイアル瓶と輸液バッグとが、抗がん剤を溶解した溶液の交換等を行うことができ、外気から遮断された状態で医療用容器間の薬液の受け渡しをおこなうことができる。
【0070】
次いで、メスコネクタ50から針管3を引き抜く工程について説明する。
図9Cに示すように、溶液の交換等を行った後、まず、上筒部14を中筒部15に対して上昇させ、上筒部14に取付けられた針管3を第2弁部58から引き抜いて針管用筒部28内に収納する。これにより、針管3は、針管用筒部28の下端よりも上方に収納された状態となる。この状態で、上筒部14及び中筒部15を下筒部16に対して上昇させると、針管用筒部28が第1弁部56から引き抜かれ、第1弁部56は自身の弾性により閉じられる。その後、オスコネクタ10を回動させてドア部41を閉じる。
【0071】
これにより、ドア部41が閉じられるので、針管3を、閉鎖空間に閉じ込めることができる。なお、閉鎖空間とは、オス側本体部11(蓋部12を含む。)、針管用筒部28及びドア部41に囲まれた空間である。
【0072】
針管3は、オス側本体部11の開口部13に接続されたメスコネクタ50の上方において、筒状のオス側本体部11と該オス側本体部11の上端部を閉鎖する蓋部12と該オス側本体部11の下部を開閉可能に閉鎖する閉鎖機構30とによって形成された閉じられた空間に配置されている。そして、閉鎖機構30はそれ自体を構成する外筒部31に対する内筒部32の相対移動に応じて変位して下部のドア部41が開閉する。したがって、ドア部41を開けてからメスコネクタ50まで針管3を下方に移動させ、蓋部12に設けられた接続部17(
図2参照)に接続した輸液バッグなどから薬液を注入、或いは、該輸液バッグなどに溶解・希釈した薬液を戻すことができる。
【0073】
そして、針管3を元の位置に戻してから、内筒部32を相対移動と逆方向に移動させて、ドア部41を閉じることで、該針管3を閉じられた空間に収納することができる。
【0074】
換言すると、メスコネクタ50からオスコネクタ10を外す際、オスコネクタ10を縮める操作と逆の操作を2段階に分けて行うことで、まず、針管3を第2弁部58から抜くとともに針管用筒部28で囲い、さらに、この針管用筒部28を第1弁部56から抜くとともに下筒部16に収納する。
【0075】
したがって、メスコネクタ50の上面にある第1弁部56に針管3は接触しないので、針管3に残った薬液が第1弁部56に付着することがない。また、第1弁部56のスリット56cは針管用筒部28の押圧が解除されることで閉じるため、仮に、第2弁部58の上面に薬液が付着したとしても、該薬液はメス側本体部51と第1弁部56及び第2弁部58とに囲われた空間に封止されるので気化してもメスコネクタの外部に露出することがない。メスコネクタは、第2弁部が第1弁部に離間して配置されることで、メス側本体部、第1弁部及び第2弁部に囲われた空間が形成されるので、針管用筒部で第1弁部のスリットを押し開いた際に、スリット56cが空間内に収納され、スリット56cが第2弁部に接触しない。このため、針管を第2弁部から引き抜く際に、第2弁部の上面に薬液が付着しても、スリット56cに薬液が付着することを防止できる。以上説明したとおり、本発明のコネクタシステム1によれば、薬液の封止性を向上することができる。
【0076】
また、オスコネクタ10をメスコネクタ50に接続する際には、針管用筒部28をメス側本体部51に移動させ第1弁部56を押し開き、その後針管用筒部28に収納されていた針管3で第2弁部58を貫通させるので、針管3は第2弁部58にしか接触しない。逆に、メスコネクタ50からオスコネクタ10を外す際には、第2弁部58から針管3を引き抜き、針管3を針管用筒部28で囲うように収納してから、針管用筒部28を第1弁部56から引き抜くので、針管3が第1弁部56に接触しない。
【0077】
このため、針管3に残った薬液が第1弁部56に付着することがない。さらに、第1弁部56は、中心からスリット56c(
図5参照)で分割されており、弾性を有するので、針管用筒部28を引き抜くと元に戻り閉じられる。結果、薬液がメスコネクタ50の外部に暴露することがなく、使用後であっても薬物の封止性を向上することができる。
【0078】
オスコネクタ10をメスコネクタ50に接続する際に、上筒部14及び中筒部15を下筒部16に対して軸線に沿って降下させることで、中筒部15の針管用筒部28が、貫通孔39aを通過し、第1弁部56を押し開いてさらに降下すると、
図10に示すように、針管用筒部28はガイド受け部67に当接した状態になる。このとき、第1弁部56において、中央のスリットから分割された第1弁部56は、下方に曲げられ、突起56aが垂下部56bに当接した状態となり、いわゆる遊びがなくなる。このため、曲げられた第1弁部56によって、針管用筒部28を強固に支持することができる。
【0079】
また、第1弁部56の外周部分は、上側の端部54と下側の弁支持筒部57とに挟まれているので、第1弁部56が下方に曲げられると共に下方に引っ張られても、第1弁部56の外周部分が端部54と弁支持筒部57の間から抜けることはない。
【0080】
さらに、針管用筒部28の先端はガイド受け部67によって軸線側にガイドされ、針管用筒部28の針管用開口部28aが凸部68に嵌っている。針管用筒部28の先端はガイド受け部67と凸部68に挟まれるので、針管用筒部28をより一層強固に支持することができる。針管用筒部28を動かないように抑えることができるので、針管3を安定して抜き差しし、針管3の先に残った薬物を飛散し難くすることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、ドア部41をベース部38上でオス側本体部11の軸直角方向に移動させ、ドア部41を引き戸のように開閉する構成としたが、この構成に限定されず、ドア部41をオス側本体部11にヒンジを介して揺動可能に設け、オス側本体部11の軸線方向に移動可能な部材を設け、この部材によってドア部41を押すことで、ドア部41を開き戸のように開閉する構成としてもよい。
【0082】
また、ドア部41を外筒部31にヒンジを介して揺動可能に設け、内筒部32を外筒部31に対して摺動可能に設け、内筒部32をドア部41に押し当てることで、ドア部41を開き戸のように開閉する構成としてもよい。このように、オス側本体部11、外筒部31または内筒部32の下部を開閉するドア部41を有すれば、ドア部41の開閉方向は問わない。
【0083】
また、実施形態では、ゴム部材29、ドア弾性部46、第1弁部56及び第2弁部58を、弾性を有する合成樹脂としたが、これに限定されず、弾性を有すればゴムであっても差し支えない。
【0084】
また、実施形態では、ドア部41の溝部47をガイドレール42に嵌めることで、ドア部41がガイドレール42に沿って直線的に移動するようにしたが、これに限定されず、ドア部41全体をガイドレール42の間に嵌めることでドア部41が直線的に移動するようにしてもよい。また、ドア部41を2つとしたが、これに限定されず、ドア部41を1つや3つにしても差し支えない。
【0085】
また、実施形態では、オスコネクタ10にメスコネクタ50を接続し、針管用筒部28で第1弁部56のスリット56cを押し開く際に、針管用筒部28と共に針管3を降下かせる構成としたが、これに限定されず、針管用筒部28のみを先に降下させて第1弁部56のスリット56cを押し開き、その後針管3を降下させる構成としてもよい。
【0086】
また、実施形態では、オスコネクタ10からメスコネクタ50を外す際、第2弁部58に貫通させていた針管3を第2弁部58から引き抜き、その後針管用筒部28と共に針管3を上昇させる構成としたが、これに限定されず、第2弁部58に貫通させていた針管3を第2弁部58から引き抜きそのまま上昇させ、その後に針管用筒部28を上昇させて、針管3が第1弁部56に接触しない構成としてもよい。