特許第6982756号(P6982756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982756
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】電力変換装置及び分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20211206BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-240855(P2017-240855)
(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公開番号】特開2019-110635(P2019-110635A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 英明
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−101670(JP,A)
【文献】 特開2002−84763(JP,A)
【文献】 特開2016−201966(JP,A)
【文献】 特開2016−116404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
H02M 3/00−3/44
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1分散型電源及び第2分散型電源を含む複数の分散型電源を商用電源系統に連系させるための電力変換装置であって、
前記第1分散型電源からの入力を変換してDCリンク線に出力する第1コンバータと、
前記第2分散型電源からの入力を変換して前記DCリンク線に出力する第2コンバータと、
前記DCリンク線から供給される直流を交流に変換して前記商用電源系統に接続されている電源配線に出力する第1及び第2インバータと、
前記第2インバータの出力が、前記第2分散型電源からの供給電力に相当する出力と等しくなるように制御する制御部とを備えている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1記載の電力変換装置において、
前記制御部は、前記第2分散型電源から前記第2コンバータへの入力情報または前記第2コンバータから前記DCリンク線への出力情報に基づいて前記制御をする
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
第1分散型電源及び第2分散型電源を含む複数の分散型電源と、
前記第1分散型電源からの入力を変換してDCリンク線に出力する第1コンバータと、
前記第2分散型電源からの入力を変換して前記DCリンク線に出力する第2コンバータと、
前記DCリンク線から供給される直流を交流に変換して用電源系統に接続されている電源配線に出力する第1及び第2インバータと、
前記第2インバータの出力が、前記第2分散型電源からの放電量に相当する出力と等しくなるように制御する制御部とを備えている
ことを特徴とする分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電手段等の分散型電源を備えた分散型電源システム、及び分散型電源システムへの適用が可能に構成された電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、逆潮流が許可された逆潮流許可電源(例えば、太陽光発電手段)と、逆潮流が許可されていない逆潮流不可電源(例えば、蓄電池)とが併存するハイブリッド型の分散型電源システムにおいて、逆潮流不可電源からの逆潮流が禁止されている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1のパワーコンディショナでは、逆潮流不可電源からの出力電力が商用電源系統に逆潮流しないように負荷追従型の制御をすることにより、上記の禁止要件を満たすようにしている。
【0004】
特許文献2には、各分散電源(逆潮流許可電源及び逆潮流不可電源)から入力されるDC電圧を適切なDC電圧に昇圧して単一ノードに統合し、その電力をインバータでAC/DC変換する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−120452号
【特許文献2】特開2015−133870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、FIT(Feed-in Tariff)認定設備と非FIT認定設備とが混在するハイブリッド型の分散型電源システムにおいて、逆潮流が禁止されている非FIT認定設備からの売電を可能とする仕組みづくりが進んでいる。ところが、特許文献2のような構成にしてFIT認定設備からの出力と非FIT認定設備からの出力をDCリンク線で接続した場合、それぞれの逆潮流電力を正確に測定することができないという問題がある。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、DCリンク線の利便性を維持しつつ、分散型電源の供給電力を区分できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る電力変換装置は、第1分散型電源及び第2分散型電源を含む複数の分散型電源を商用電源系統に連系させるためのものであって、前記第1分散型電源からの入力を変換してDCリンク線に出力する第1コンバータと、前記第2分散型電源からの入力を変換して前記DCリンク線に出力する第2コンバータと、前記DCリンク線から供給される直流を交流に変換して出力する第1及び第2インバータと、前記第2インバータの出力が、前記第2分散型電源からの供給電力に相当する出力と等しくなるように制御する制御部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様に係る分散型電源システムは、第1分散型電源及び第2分散型電源を含む複数の分散型電源と、前記第1分散型電源からの入力を変換してDCリンク線に出力する第1コンバータと、前記第2分散型電源からの入力を変換して前記DCリンク線に出力する第2コンバータと、前記DCリンク線から供給される直流を交流に変換して出力する第1及び第2インバータと、前記第2インバータの出力が、前記第2分散型電源からの放電量に相当する出力と等しくなるように制御する制御部とを備えている。
【0010】
これらの態様によると、第2インバータの出力が、第2分散型電源からの供給電力に相当する出力と等しくなるように制御されるので、DCリンク線で統合された電力を、第1分散型電源からの供給電力に基づく出力と、第2分散型電源からの供給電力に基づく出力とに分けて出力することができる。すなわち、DCリンク線の利便性を維持しつつ、第1分散型電源及び第2分散型電源のそれぞれの供給電力を区分して出力することができる。そうすると、例えば、それぞれの分散型電源の発電電力に基づく売電等が実現できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、DCリンク線の利便性を維持しつつ、分散型電源の供給電力を区分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る分散型電源システムの全体構成を示した図である。
図2A】本実施形態に係る分散型電源システムの動作を説明するための図である。
図2B】本実施形態に係る分散型電源システムの動作を説明するための図である。
図2C】本実施形態に係る分散型電源システムの動作を説明するための図である。
図3A】本実施形態に係るパワーコンディショナの他の接続例を示す図である。
図3B】本実施形態に係るパワーコンディショナの他の接続例を示す図である。
図3C】本実施形態に係るパワーコンディショナの他の接続例を示す図である。
図4A】比較例に係る分散型電源システムの動作を説明するための図である。
図4B】比較例に係る分散型電源システムの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
<第1実施形態>
図1図3は実施形態に係る分散型電源システムの構成例を示した図である。
【0015】
−分散型電源システムの構成−
分散型電源システム1は、複数の分散型電源2と、複数の分散型電源2から供給された直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換装置としてのパワーコンディショナ3とを備えている。
【0016】
図1では、複数の分散型電源2として、太陽光発電手段21と、蓄電池22とを備えた例を示している。なお、本実施形態では、太陽光発電手段21は、FIT認定設備であるものとして説明する。また、蓄電池22は、例えば、リチウムイオン電池や鉛蓄電池等の充放電可能な二次電池であり、非FIT認定設備であるものとして説明する。なお、現在、FIT認定設備と非FIT認定設備は逆潮流に関する規定が互いに異なり、FIT認定設備は商用電源系統5への逆潮流が認められ、非FIT認定設備では逆潮流が禁止されている。一方で、非FIT認定設備からの売電を可能とする仕組みづくりが進んでおり、非FIT認定設備からの売電ができるようになった場合に、FIT認定設備の発電電力の売電先と、非FIT認定設備の売電先とが異なる可能性がある。そうすると、FIT認定設備からの逆潮流電力と、非FIT認定設備からの逆潮流電力とを区分することが求められる。
【0017】
パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2を、電源配線4を介して商用電源系統5に連系させることができるように構成されている。また、電源配線4に接続された家庭用機器や産業用機器等の負荷9(以下、単に負荷9ともいう)に電力が供給できるように構成されている。すなわち、パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2から供給された電源電力を、商用電源系統5に逆潮流したり、負荷9に供給したりすることができるようになっている。
【0018】
具体的に、パワーコンディショナ3には、複数の入力端子Tiと、複数の出力端子Toが設けられている。複数の入力端子Tiは、それぞれ、分散型電源2を接続することができるように構成されている。図1では、複数の入力端子Tiのうちの、第1入力端子Ti1に太陽光発電手段21が接続され、第2入力端子Ti2に蓄電池22が接続された例を示している。
【0019】
パワーコンディショナ3の各入力端子Tiには、入力端子Tiから受けた直流を昇圧または降圧して出力するDC/DCコンバータ31が接続されている。すなわち、パワーコンディショナ3には、複数のDC/DCコンバータ31が設けられている。そして、複数のDC/DCコンバータ31の出力は、共通のDCリンク線DCLに接続されることで、統合されている。例えば、図1では、複数のDC/DCコンバータ31として、第1及び第2DC/DCコンバータ31a,31bが設けられている例を示している。第1DC/DCコンバータ31a(第1コンバータに相当)は、第1入力端子Ti1に接続され、太陽光発電手段21からの入力を変換してDCリンク線DCLに出力する。第2DC/DCコンバータ31b(第2コンバータに相当)は、第2入力端子Ti2に接続され、蓄電池22からの入力を変換してDCリンク線DCLに出力する。このような構成にすることにより、分散型電源間の電力のやり取りができるようになる。例えば、太陽光発電手段21での発電電力を、DCリンク線DCLを介して蓄電池22に蓄電することができる。なお、本実施形態では、「接続」とは、直接接続に限定されるのもではなく、電気的な接続全般を指すものとする。例えば、抵抗やリレー等の受動素子等を介して相互間が電気的に接続されているものを含む概念である。
【0020】
さらに、パワーコンディショナ3は、第1及び第2インバータ33,34と、制御部35とを備えている。第1インバータ33は、DCリンク線DCLから供給される直流を交流に変換し、複数の出力端子Toのうちの第1出力端子To1に出力する。第2インバータ34は、DCリンク線DCLから供給される直流を交流に変換し、複数の出力端子Toのうちの第2出力端子To2に出力する。なお、第1及び第2DC/DCコンバータ31a,31b並びに第1及び第2インバータ33,34の具体的な回路構成は、従来技術を適用することができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0021】
制御部35は、パワーコンディショナ3の全体動作を制御する機能を有し、例えば、マイクロコンピュータで実現することができる。例えば、制御部35は、第1DC/DCコンバータ31a及び第2DC/DCコンバータ31bの昇降圧比等を制御する。同様に、制御部35は、PWM(Pulse Width Modulation)制御等により、第1及び第2インバータの出力を制御する。本実施形態の特徴として、制御部35は、第2インバータ34の制御に関し、第2インバータ34の出力Po2が蓄電池21からの放電量(放電電力)に相当する出力Ptと等しくなるように制御する。ここで、「等しくなるように」とは、実質的に等しいことを指すものとし、すなわち、厳密に等しいことを要するものでなく、製造時に生じる誤差等に起因して第2インバータの出力Po2が出力Ptから若干(〜数%程度)ずれているものを含む概念である。なお、具体的な動作については、後述する「分散型電源システムの動作」及びその変形例において説明する。
【0022】
第1出力端子To1と第2出力端子To2とは第1電源配線41により接続されている。そして、パワーコンディショナ3は、第1電源配線41から分岐した第2電源配線42により商用電源系統5に接続されている。同様に、第1電源配線41から分岐した第3電源配線43により負荷9に接続されている。すなわち、第1インバータ33の出力Po1と第2インバータ34の出力Po2は、第1電源配線41により統合され、第2電源配線42を介して商用電源系統5に連系されるとともに第3電源配線43を介して負荷9に供給される。以下の説明では、第1電源配線41のうち、第2電源配線42と第3電源配線43の間を接続する電源配線4を第4電源配線44と呼ぶものとする。すなわち、電源配線4は、第1電源配線41(第4電源配線44)、第2電源配線42及び第3電源配線43を含んでいる。
【0023】
電源配線4には、第2インバータ34から商用電源系統5に流れる電流を測定するための電流測定手段7が設けられている。具体的に、第4電源配線44には第1CT(Current Transformer)センサ71が設けられ、第2電源配線42には第2CTセンサ72が設けられている。第1CTセンサ71では、第2インバータ34から商用電源系統5に逆潮流される電流を直接的に測定することができる。第2CTセンサ72では、パワーコンディショナ3全体(第1及び第2インバータ33,34)から商用電源系統5への逆潮流電流の総和を測定することができる。すなわち、太陽光発電手段21及び蓄電池22から商用電源系統5に逆潮流される電流の総和を測定することができる。そして、第1CTセンサ71の測定電流I71(以下、第1電流I71ともいう)は、入力端子Ii1を介して制御部35に入力されている。同様に、第2CTセンサ72の測定電流I72(以下、第2電流I72ともいう)は、電流入力部としての入力端子Ii2を介して制御部35に入力されている。
【0024】
−分散型電源システムの動作−
図2A図2Cは、図1の分散型電源システムの動作を説明するための図である。図2A図2Cでは、負荷9の消費電力Pzが異なっている。なお、図2A図2Cでは、太陽光発電手段21からの供給電力がPi1であり、蓄電池22からの放電電力がPi2であるものとして説明する。また、図2A図2Cでは、パワーコンディショナ3の各端子Ti,To,Ii1,Ii2の図示を省略している。
【0025】
(放電パターン1)
図2Aは、負荷の消費電力Pzが「0(ゼロ)」の場合における放電経路を示している。
【0026】
図2Aに示すように、第1DC/DCコンバータ31aは、太陽光発電手段21からの供給電力Pi1を受け、それをDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する。同様に、第2DC/DCコンバータ31bは、蓄電池22からの放電電力Pi2を受け、それをDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する。
【0027】
第2インバータ34では、制御部35からの制御を受け、第2インバータ34の出力Po2が蓄電池22からの放電量(放電電力)に相当する出力Ptと等しくなるように制御する。具体的に、制御部35は、第2DC/DCコンバータ31bから、DCリンク線DCLへの出力情報(Pi2×ηd2)または蓄電池22から第2DC/DCコンバータ31bへの入力情報(Pi2)を受け、第2インバータ34の出力Po2が、下式(1)で計算される出力Ptと等しくなるように制御する。
【0028】
Pt=Pi2×ηd2×ηa2 ・・・(1)
ここで、ηd2は第2DC/DCコンバータ31bの変換効率であり、ηa2は第2インバータ34の変換効率である。図2Aでは、負荷9の消費電力Pz=0なので、第2インバータ34の出力Po2がそのまま第2インバータ34から逆潮流される電力(以下、分岐逆潮流電力Pbという)となる。
【0029】
第1インバータ33は、DCリンク線DCLから供給される直流を交流に変換して出力する。ここで、第1インバータ33の出力Po1は、第2インバータ34の出力Po2が蓄電池22からの放電電力Pi2に相当する出力Ptとなっているので、太陽光発電手段21からの供給電力Pi1に相当する出力となる。具体的に、第1インバータ33の出力Po1は、下式(2)で計算される出力Pmと等しくなる。
【0030】
Pm=Pi1×ηd1×ηa1 ・・・(2)
ここで、ηd1は第1DC/DCコンバータ31aの変換効率であり、ηa1は第1インバータ33の変換効率である。
【0031】
そして、第1インバータ33の出力Po1と、分岐逆潮流電力Pb(第2インバータ34の出力Po2)とが統合され、逆潮流電力Prとして商用電源系統5に出力される。第2CTセンサ72では、この逆潮流電力Prに応じた測定電流I72を得ることができる。したがって、制御部35では、第2CTセンサ72の測定電流I72と、第1CTセンサ71の測定電流I71との差に基づいて、第1インバータ33の出力Po1を把握することができる。
【0032】
(放電パターン2)
図2Bでは、負荷9の消費電力Pzが第2インバータ34の出力Poより小さい場合の放電経路を示している。図2Bにおいて、制御部35による第1及び第2インバータ34の制御は、図2Aと同じである。すなわち、制御部35は、第2DC/DCコンバータ31bからDCリンク線DCLへの出力情報(Pi2×ηd2)または蓄電池22から第2DC/DCコンバータ31bへの入力情報(Pi2)を受け、第2インバータ34の出力Po2が、式(1)で計算される出力Ptと等しくなるように制御する。
【0033】
第2インバータ34の出力Po2は、負荷9にも供給されるので、分岐逆潮流電力Pbは、第2インバータ34の出力Po2と、負荷9での消費電力Pzとの差分になる。そして、第1インバータ33の出力Po1と、分岐逆潮流電力Pb(Pb=Po2−Pz)とが統合され、逆潮流電力Prとして商用電源系統5に出力される。第2CTセンサ72では、この逆潮流電力Prに応じた測定電流I72を得ることができる。したがって、制御部35では、第2CTセンサ72の測定電流I72と、第1CTセンサ71の測定電流I71との差に基づいて、第1インバータ33の出力Po1を把握することができる。
【0034】
(放電パターン3)
図2Cでは、負荷9の消費電力Pzが第2インバータ34の出力Poより大きい場合の放電経路を示している。図2Cにおいて、制御部35による第1及び第2インバータ34の制御は、図2Aと同じである。すなわち、制御部35は、第2DC/DCコンバータ31bからDCリンク線DCLへの出力情報(Pi2×ηd2)または蓄電池22から第2DC/DCコンバータ31bへの入力情報(Pi2)を受け、第2インバータ34の出力Po2が、式(1)で計算される出力Ptと等しくなるように制御する。
【0035】
第2インバータ34の出力Po2は、すべて負荷9に供給されるので、分岐逆潮流電力Pbは、「0(ゼロ)」となる。また、第1インバータ33の出力Po1の一部が第4電源配線44を介して、負荷Pzにも供給される。したがって、第1インバータ33の出力Po1のうち、負荷9への供給分を除いた電力が、逆潮流電力Prとして商用電源系統5に出力される。第2CTセンサ72では、この逆潮流電力Prに応じた測定電流I72を得ることができる。したがって、制御部35では、第2CTセンサ72の測定電流I72と、第1CTセンサ71の測定電流I71との差に基づいて、第1インバータ33の出力Po1を把握することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態によると、DCリンク線DCLに対して第1及び第2インバータ33,34を設け、その一方である第2インバータ34の出力が蓄電池22からの放電量に相当する出力と等しくなるようにしている。これにより、DCリンク線DCLで統合された電力を、太陽光発電手段21からの供給電力に基づく出力Po1と、蓄電池22からの供給電力に基づく出力Po2とに区分することができるようになる。すなわち、互いに逆潮流に関する規定の異なる第1分散型電源(例えば、太陽光発電手段21)の供給電力分の出力Po1と、第2分散型電源(例えば、蓄電池22)の供給電力分の出力Po2とを区別することができるようになる。これにより、例えば、FIT認定設備と非FIT認定設備とが混在するような分散型電源システムにおいて、FIT認定設備からの供給分と非FIT認定設備からの供給分とを区分し、それぞれについての買い取り契約等を実現することができるようになる。
【0037】
また、第2CTセンサ72よりも第2インバータ34側に負荷9を接続するようにしている。これにより、負荷9での電力消費があった場合に、第2インバータ34の供給電力から消費されるので、太陽光発電手段21(FIT認定設備)からの供給電力を最大限に逆潮流させることができるようになる。
【0038】
(その他の接続例)
本実施形態に係るパワーコンディショナ3は、図3A図3Cのように接続して使用するようにしてもよい。具体的に、図3A図3Cの構成は同じであり、図1の構成から第1CTセンサ71を省いた構成となっている。
【0039】
図3A図3Cでは、制御部35は、上記実施形態とは異なる制御を行う。具体的には、図3Aに示すように、負荷9の消費電力Pzが太陽光発電手段21の供給電力Pi1に相当する出力Pmよりも小さい場合(Pz<Pm)、制御部35は、蓄電手段22からの放電を停止させ、放電電力Pi2=0になるように制御する。また、図3Bに示すように、負荷9の消費電力Pzが太陽光発電手段21の供給電力Pi1に相当する出力Pmよりも大きい場合(Pz>Pm)、その差分に応じた電力Pd(Pd=Pz−Pm)を上限として、蓄電池22を放電させる。さらに、夜間のように、太陽光発電手段21の発電量が「0(ゼロ)」の場合、商用電源系統への逆潮流を止めて、蓄電池22の放電電力がすべて負荷9に供給されるように制御する。このとき、図3Cに示すように、第1インバータ33及び第2インバータ34の両方を介して負荷9に電力を供給するようにしてもよい。これにより、パワーコンディショナ3から負荷9に供給できる電力を拡大することができるようになる。
【0040】
(比較例)
図4A図4Bは、比較例に係るパワーコンディショナ8を用いた分散型電源システムの例を示している。
【0041】
図4A図4Bに示すように、パワーコンディショナ8は、第1及び第2DC/DCコンバータ81a,81bと、インバータ83と、制御部85とを備えている。
【0042】
第1DC/DCコンバータ81aは、太陽光発電手段21からの入力を変換してDCリンク線DCLに出力する。第2DC/DCコンバータ81bは、蓄電池22からの入力を変換してDCリンク線DCLに出力する。インバータ83は、DCリンク線DCLから供給される直流を交流に変換し、電源配線84に出力する。そして、制御部85は、インバータ83と商用電源系統5との間の電源配線84に設けられた電流計86の測定電流に基づいて、インバータ83の出力を制御する。
【0043】
図4A図4Bでは、DCリンク線DCLで第1DC/DCコンバータ81aの出力と第2DC/DCコンバータ81bの出力とを統合している。そして、統合された出力をインバータ83で変換するようにしている。したがって、太陽光発電手段21の供給電力分と、蓄電池22からの供給電力分とを区分することができない。そうすると、逆潮流する場合には蓄電池22の放電を止める必要があり(図4A参照)、蓄電池22の放電は負荷9による自己消費の場合に限定される(図4B参照)。一方で、本実施形態に係る構成では、そのようなことはなく、太陽光発電手段21の供給電力分と、蓄電池22からの供給電力分とを区分して逆潮流させることができる。
【0044】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態において、第1分散型電源(FIT認定設備)は、太陽光発電手段21であるものとしたが、これに限定されない。例えば、太陽光発電手段に代えて、風力発電手段、燃料電池、コージェネレーションシステム等の他の発電手段であってもよく、これらの組み合わせであってもよく、同様の効果が得られる。また、第2分散型電源(非FIT認定設備)として蓄電池22を例示したが、蓄電池22以外であってもよく、同様の効果が得られる。具体的に、図1の蓄電池22を他の非FIT認定設備としての太陽光発電手段に置き換えてもよい。すなわち、第1分散型電源と第2分散型電源との逆潮流の規定が異なればよく、第1分散型電源と第2分散型電源とは、同一種別の電力供給手段(例えば、両方ともに太陽光発電手段)であってもよいし、互いに異なる電力供給手段であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、太陽光発電手段21及び蓄電池22がそれぞれ1つずつの場合について説明したが、複数の第1分散型電源(FIT認定設備)と複数の第2分散型電源(FIT認定設備)とを有する設備に対しても、本開示に係る技術は適用が可能であり、同様の効果が得られる。
【0046】
また、上記実施形態では、制御部35は、第2DC/DCコンバータ31bからDCリンク線DCLへの出力情報(Pi2×ηd2)または蓄電池22から第2DC/DCコンバータ31bへの入力情報(Pi2)を受け、第2インバータ34の出力Po2が、式(1)で計算される出力Ptと等しくなるように制御するものとしたがこれに限定されない。例えば、制御部35が、第1DC/DCコンバータ31aからDCリンク線DCLへの出力情報(Pi1×ηd1)または太陽光発電手段21から第1DC/DCコンバータ31aへの入力情報(Pi1)を受け、第1インバータ33の出力Po1が、式(2)で計算される出力Pmと等しくなるように制御してもよく、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によると、DC/DCコンバータの出力同士を互いに接続するDCリンク線を採用した場合においても、分散型電源の供給電力を区分することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 分散型電源システム
2 分散型電源
21 太陽光発電手段(第1分散型電源)
22 蓄電池(第2分散型電源)
3 パワーコンディショナ(電力変換装置)
5 商用電源系統
31a 第1DC/DCコンバータ(第1コンバータ)
31b 第2DC/DCコンバータ(第2コンバータ)
33 第1インバータ
34 第2インバータ
35 制御部
7 CTセンサ(電流検出手段)
9 負荷
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B