(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異常制御部は、前記制御電力が遮断状態である場合に、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御部の動作に用いられる電力を蓄積するブートストラップキャパシタの端子間電圧が第1電圧閾値よりも高い第2電圧閾値を上回ると、前記3つのハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路を制御する、
請求項4に記載のモータ制御装置。
前記3つの異常制御回路の各々は、前記制御電力が遮断状態である場合に、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタの端子間電圧が前記第1電圧閾値よりも高い第2電圧閾値を上回ると、前記3つのハイサイドスイッチング素子のうち該異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御する、
請求項8に記載のモータ制御装置。
前記3つの異常制御回路の各々は、前記制御電力が遮断状態になると、前記3つのローサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するローサイド駆動回路にオフ信号を供給するように構成され、
前記3つのローサイドスイッチング素子および前記3つのローサイド駆動回路は、該3つのローサイド駆動回路に前記オフ信号が供給されると該3つのローサイドスイッチング素子がオフ状態となるように構成されている、
請求項7〜9のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係るモータ制御装置は、直流電源の電力により三相交流式のモータを制御するモータ制御装置であって、前記直流電源の正極に接続される電源線と前記モータの3つの端子にそれぞれ接続される3つの出力線との間にそれぞれ接続される3つのハイサイドスイッチング素子と、該3つの出力線と該直流電源の負極に接続される接地線との間にそれぞれ接続される3つのローサイドスイッチング素子とを有するインバータと、前記3つのハイサイドスイッチング素子、および、前記3つのローサイドスイッチング素子を制御する制御電力が遮断状態になると、前記モータが発生する回生電力に基づいて、前記3つのハイサイドスイッチング素子、または、前記3つのローサイドスイッチング素子を同時にオンオフ制御する異常制御部と、を備える。
【0012】
これにより、制御電力が遮断状態である場合であっても、モータが発生する回生電力に基づいて動作する異常制御部によって3つのハイサイドスイッチング素子、または、前記3つのローサイドスイッチング素子を同時にオンオフ制御することができる。
【0013】
また、前記モータ制御装置は、前記制御電力により動作するように構成され、前記3つのハイサイドスイッチング素子のオンオフをそれぞれ制御する3つのハイサイド駆動回路と、前記3つのハイサイドスイッチング素子を駆動するための電力をそれぞれ蓄積するように構成された3つのブートストラップキャパシタを有し、該3つのハイサイドスイッチング素子のオンオフに応じて該3つのブートストラップキャパシタを充電するブートストラップ回路と、をさらに備え、前記異常制御部は、前記回生電力に基づいて、前記3つのブートストラップキャパシタのうち少なくとも1つに充電された電力により動作するように構成され、前記制御電力が遮断状態になると、前記3つのハイサイド駆動回路を制御して前記3つのハイサイドスイッチング素子のオンオフを制御してもよい。
【0014】
これにより、異常制御部が少なくとも1つのブートストラップキャパシタに充電された電力により動作するので、制御電力が遮断状態である場合であっても、異常制御部によって3つのハイサイドスイッチング素子のオンオフをより安定的に制御することが可能になる。
【0015】
また、前記モータ制御装置は、前記制御電力により動作するように構成され、前記3つのローサイドスイッチング素子のオンオフをそれぞれ制御する3つのローサイド駆動回路を備え、前記3つのローサイドスイッチング素子および前記3つのローサイド駆動回路は、該3つのローサイド駆動回路に供給される前記制御電力が遮断状態になると該3つのローサイドスイッチング素子がオフ状態となるように構成されていてもよい。
【0016】
これにより、制御電力が遮断状態になると、3つのローサイドスイッチング素子は自動的にオフ状態になることができる。
【0017】
また、前記異常制御部は、前記制御電力が遮断状態になると、前記3つのハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路を制御してもよい。
【0018】
これにより、インバータの状態が三相短絡状態(3つのハイサイドスイッチング素子がオン状態であり3つのローサイドスイッチング素子がオフ状態である状態)になるので、モータから回生される回生電力による過電圧を抑制することができ、回生電力による耐圧破壊からモータ制御装置(特にインバータ)を保護することができる。
【0019】
また、前記ブートストラップ回路は、前記3つのブートストラップキャパシタの一端と前記電源線とをそれぞれ接続する3つの充電線を有し、前記3つのブートストラップキャパシタの他端は、前記3つの出力線にそれぞれ接続され、前記異常制御部は、前記制御電力が遮断状態である場合に、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御部の動作に用いられる電力を蓄積するブートストラップキャパシタの端子間電圧が第1電圧閾値を下回ると、前記3つのハイサイドスイッチング素子がオフ状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路を制御してもよい。
【0020】
これにより、インバータの状態が全相開放状態(6つのスイッチング素子がオフ状態である状態)になるので、モータから回生された電力により3つのブートストラップキャパシタを充電することができ、ハイサイド駆動回路および異常制御部の動作に用いられる電力を確保することができる。
【0021】
また、前記異常制御部は、前記制御電力が遮断状態である場合に、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御部の動作に用いられる電力を蓄積するブートストラップキャパシタの端子間電圧が第1電圧閾値よりも高い第2電圧閾値を上回ると、前記3つのハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路を制御してもよい。
【0022】
これにより、インバータの状態が全相開放状態から三相短絡状態になるので、モータから回生された電力によりブートストラップキャパシタを充電するための動作を終了してモータから回生される回生電力による過電圧を抑制するための動作を再開することができる。
【0023】
また、前記異常制御部は、前記制御電力が遮断状態になると、前記3つのローサイド駆動回路にオフ信号を供給するように構成され、前記3つのローサイドスイッチング素子および前記3つのローサイド駆動回路は、該3つのローサイド駆動回路に前記オフ信号が供給されると該3つのローサイドスイッチング素子がオフ状態となるように構成されていてもよい。
【0024】
これにより、制御電力が遮断状態になった瞬間に3つのローサイドスイッチング素子をオフ状態にする確実性を増すことができる。
【0025】
また、前記異常制御部は、前記3つのハイサイド駆動回路にそれぞれ対応する3つの異常制御回路を有し、前記3つの異常制御回路の各々は、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタに充電された電力により動作するように構成され、前記制御電力が遮断状態になると、前記3つのハイサイドスイッチング素子のうち該異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御してもよい。
【0026】
これにより、3つの異常制御回路の各々が対応するハイサイドスイッチング素子をオン状態にすることにより、インバータの状態が三相短絡状態になるので、モータから回生される回生電力による過電圧を抑制することができ、回生電力による耐圧破壊からモータ制御装置を保護することができる。
【0027】
また、前記ブートストラップ回路は、前記3つのブートストラップキャパシタの一端と前記電源線とをそれぞれ接続する3つの充電線を有し、前記3つのブートストラップキャパシタの他端は、前記3つの出力線にそれぞれ接続され、前記3つの異常制御回路の各々は、前記制御電力が遮断状態である場合に、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタの端子間電圧が第1電圧閾値を下回ると、前記3つのハイサイドスイッチング素子のうち該異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオフ状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御してもよい。
【0028】
これにより、3つの異常制御回路の各々が対応するハイサイドスイッチング素子をオフ状態にすることにより、インバータ20の状態が全相開放状態になるので、モータから回生された電力により3つのブートストラップキャパシタを充電することができ、ハイサイド駆動回路および異常制御部の動作に用いられる電力を確保することができる。
【0029】
また、前記3つの異常制御回路の各々は、前記制御電力が遮断状態である場合に、前記3つのブートストラップキャパシタのうち該異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタの端子間電圧が前記第1電圧閾値よりも高い第2電圧閾値を上回ると、前記3つのハイサイドスイッチング素子のうち該異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように前記3つのハイサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御してもよい。
【0030】
これにより、3つの異常制御回路の各々が対応するハイサイドスイッチング素子をオン状態にすることにより、インバータの状態が全相開放状態から三相短絡状態になるので、モータから回生された電力によりブートストラップキャパシタを充電するための動作を終了してモータから回生される回生電力による過電圧を抑制するための動作を再開することができる。
【0031】
また、前記3つの異常制御回路の各々は、前記制御電力が遮断状態になると、前記3つのローサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するローサイド駆動回路にオフ信号を供給するように構成され、前記3つのローサイドスイッチング素子および前記3つのローサイド駆動回路は、該3つのローサイド駆動回路に前記オフ信号が供給されると該3つのローサイドスイッチング素子がオフ状態となるように構成されていてもよい。
【0032】
これにより、制御電力が遮断状態である場合に3つのローサイドスイッチング素子をオフ状態にする確実性を増すことができる。
【0033】
また、前記3つの異常制御回路の各々は、前記3つのハイサイド駆動回路のうち該異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路とともに単一の半導体チップに集積されていてもよい。
【0034】
これにより、3つの異常制御回路の各々を3つのハイサイド駆動回路のうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路とともに単一の半導体チップに集積することにより、異常制御部の構築を容易にすることができる。
【0035】
また、前記ブートストラップ回路は、前記3つの充電線にそれぞれ設けられた3つの充電抵抗を有していてもよい。
【0036】
これにより、ブートストラップキャパシタの充放電の速度(時定数)を調節することにより、ブートストラップキャパシタの充放電特性の設定を容易にすることができる。
【0037】
また、前記ブートストラップ回路は、前記3つの充電線にそれぞれ設けられた3つの充電ダイオードを有し、前記3つの充電ダイオードの各々は、前記電源線から前記3つのブートストラップキャパシタのうち該充電ダイオードに対応するブートストラップキャパシタの一端へ向かう方向が順方向となるように構成されていてもよい。
【0038】
これにより、3つの充電線における電流の方向を規制することができる。例えば、モータ制御装置の制御系が制御電力により動作してインバータのスイッチング動作を制御している場合に、ブートストラップキャパシタに蓄積された電力が充電線を経由して放電されることを防止することができる。
【0039】
本開示の一態様に係る車両駆動装置は、前記モータ制御装置と、前記モータ制御装置と電気的に接続されるとともに、前記モータと機械的に接続される変速機を制御する変速機制御装置と、を備え、前記変速機制御装置は、前記モータ制御装置の前記異常制御部が、前記3つのハイサイドスイッチング素子、または、前記3つのローサイドスイッチング素子のいずれか一方を同時にオン状態にするオン制御を実施していると判断した際に、検出した前記モータの回転数が第1回転数閾値以上となるように前記変速機の変速比を制御する。
【0040】
これにより、変速機制御装置は、オン制御が実施されていると判断すると、モータの回転数が第1回転数閾値以上となるように変速機の変速比を制御するので、モータの回転数の低下によるブレーキトルクの増大およびそれによるエンストが起きにくくなる。
【0041】
また、前記変速機制御装置は、前記異常制御部から得られる前記3つのハイサイドスイッチング素子、または、前記3つのローサイドスイッチング素子の少なくとも前記一方の制御信号を参照することにより前記オン制御が実施されているか否かを判断してもよい。
【0042】
これにより、変速機制御装置は、ハイサイドスイッチング素子の駆動信号に基づいてオン制御が実施されているか否かを判断するので、オン制御が実施されているか否の判断の確実性が高まる。
【0043】
また、前記変速機制御装置は、前記モータ制御装置から得られる通信信号が途絶えることにより、前記オン制御が実施されていると判断してもよい。
【0044】
これにより、変速機制御装置は、車載ネットワークで一般的に用いられる信号を活用することにより、信号線の追加なしで、オン制御が実施されているか否かを判断できる。
【0045】
また、前記変速機制御装置は、検出した前記モータの回転数が前記第1回転数閾値より大きい第2回転数閾値以下となるように前記変速機の変速比を制御してもよい。
【0046】
これにより、モータの回転数の低下によるブレーキトルクの増大およびそれによるエンストが起きにくくなることに加えて、モータの過回転が起きにくくなる。
【0047】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0048】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0049】
(実施形態1)
図1は、実施形態1による電気車両1の構成を例示している。この電気車両1は、駆動輪2と、モータM1と、動力伝達機構3と、直流電源P1と、モータ制御装置10とを備えている。
【0050】
〔モータ〕
モータM1は、電気車両1の駆動輪2を駆動するように構成されている。例えば、モータM1は、埋込磁石同期モータ(IPMSM)や表面磁石同期モータ(SPMSM)などの永久磁石モータによって構成されている。
【0051】
〔動力伝達機構〕
動力伝達機構3は、モータM1と駆動輪2との間において動力を伝達するように構成されている。例えば、動力伝達機構3は、ディファレンシャルギアやドライブシャフトにより構成されている。モータM1の回転力は、動力伝達機構3を経由して駆動輪2に伝達される。これと同様に、駆動輪2の回転力は、動力伝達機構3を経由してモータM1に伝達される。なお、動力伝達機構3を経由せずにモータM1と駆動輪2とが直結されていてもよい。すなわち、電気車両1は、動力伝達機構3を備えていなくてもよい。
【0052】
〔直流電源〕
直流電源P1は、駆動輪2を駆動させるための電力(駆動電力)を蓄積するように構成されている。例えば、直流電源P1は、リチウムイオン電池によって構成されている。
【0053】
〔モータ制御装置〕
図2は、実施形態1によるモータ制御装置10の構成を例示している。このモータ制御装置10は、直流電源P1の電力を用いて三相交流式のモータM1を制御するように構成されている。この例では、モータ制御装置10は、インバータ20と、平滑キャパシタ21と、3つのハイサイド駆動回路(第1,第2,第3ハイサイド駆動回路31u,31v,31w)と、3つのローサイド駆動回路(第1,第2,第3ローサイド駆動回路32u,32v,32w)と、スイッチング制御部33と、ブートストラップ回路40と、異常制御部50とを備えている。また、この例では、モータ制御装置10は、制御系電源P2を備えている。
【0054】
〈制御系電源〉
制御系電源P2は、モータ制御装置10の制御系(この例ではハイサイド駆動回路31u〜31wとローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33)を動作させるための制御電力を供給するように構成されている。例えば、制御系電源P2は、鉛バッテリによって構成されている。なお、制御系電源P2の電圧は、直流電源P1の電圧(例えば48V)よりも低い電圧(例えば12V)に設定されている。また、この例では、直流電源P2の負極は、後述する接地線LGに接続されている。
【0055】
また、以下の説明では、モータ制御装置10の制御系(この例ではハイサイド駆動回路31u〜31wとローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33)に対して制御電力が十分に供給されてモータ制御装置10の制御系が正常に動作することができる状態を「供給状態」と記載し、モータ制御装置10の制御系に対して制御電力が実質的に供給されていない状態を「遮断状態」と記載する。制御電力の遮断状態には、例えば、制御系電源P2の喪失により制御電力がモータ制御装置10の制御系に全く供給されていない状態や、制御電力の供給不足によりモータ制御装置10の制御系を正常に動作させることができない状態が含まれている。
【0056】
〈インバータ〉
インバータ20は、直流電源P1から供給される直流電力をスイッチング動作により三相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給するように構成されている。具体的には、インバータ20は、3つのハイサイドスイッチング素子(第1,第2,第3ハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3)と、3つのローサイドスイッチング素子(第1,第2,第3ローサイドスイッチング素子S4,S5,S6)とを有している。
【0057】
3つのハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3は、モータM1の3つの端子にそれぞれ接続される3つの出力線(第1,第2,第3出力線LOu,LOv,LOw)と直流電源P1の正極に接続される電源線LPとの間にそれぞれ接続されている。3つのローサイドスイッチング素子S4,S5,S6は、3つの出力線LOu,LOv,LOwと直流電源P1の負極に接続される接地線LGとの間にそれぞれ接続されている。例えば、スイッチング素子S1〜S6は、電界効果トランジスタ(FET)や絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などによって構成されている。また、スイッチング素子S1〜S6は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成されたものであってもよい。
【0058】
この例では、第1ハイサイドスイッチング素子S1は、第1ハイサイド駆動回路31uから供給される駆動信号が印加される制御端子を有している。そして、第1ハイサイドスイッチング素子S1は、その制御端子に印加される駆動信号の信号レベルがハイレベルである場合にオン状態となり、その制御端子に印加される駆動信号の信号レベルがローレベルである場合にオフ状態となるように構成されている。例えば、第1ハイサイドスイッチング素子S1は、n型のトランジスタによって構成されている。なお、第2および第3ハイサイドスイッチング素子S2,S3および第1,第2,第3ローサイドスイッチング素子S4,S5,S6の構成は、第1ハイサイドスイッチング素子S1の構成と同様となっている。
【0059】
また、この例では、第1〜第6スイッチング素子S1〜S6に第1〜第6還流ダイオードD1〜D6がそれぞれ並列に接続されている。これらの還流ダイオードD1〜D6は、スイッチング素子S1〜S6に寄生する寄生ダイオードであってもよいし、スイッチング素子S1〜S6とは別体に構成されたダイオード素子であってもよい。
【0060】
〈平滑キャパシタ〉
平滑キャパシタ21は、電源線LPと接地線LGとの間に接続され、電源線LPに印加される電圧(電源電圧)を平滑化するように構成されている。具体的には、平滑キャパシタ21は、電源電圧のリップルの低減、リップル電流の吸収、サージ電圧の吸収などを行うように構成されている。例えば、平滑キャパシタ21は、電解コンデンサやフィルムコンデンサによって構成されている。
【0061】
〈ハイサイド駆動回路〉
3つのハイサイド駆動回路31u〜31wは、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3にそれぞれ対応している。また、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wは、制御電力(この例では制御系電源P2から供給される電力)により動作するように構成され、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフをそれぞれ制御するように構成されている。
【0062】
この例では、第1ハイサイド駆動回路31uは、正側電源端子と、負側電源端子と、通常制御端子と、異常制御端子とを有している。第1ハイサイド駆動回路31uの正側電源端子は、後述する第1ブートストラップダイオード42uを経由して制御電力が供給される端子(この例では制御系電源P2の正極)に接続され、第1ハイサイド駆動回路31uの負側電源端子は、第1出力線LOuに接続されている。第1ハイサイド駆動回路31uの通常制御端子には、スイッチング制御部33から供給される制御信号が印加され、第1ハイサイド駆動回路31uの異常制御端子には、異常制御部50から供給される制御信号が印加される。
【0063】
そして、この例では、第1ハイサイド駆動回路31uは、制御電力が第1ハイサイド駆動回路31uに供給されている場合(制御電力が供給状態である場合)に、スイッチング制御部33から通常制御端子に供給される制御信号の信号レベルに応じて駆動信号を第1ハイサイドスイッチング素子S1に供給し、制御電力が第1ハイサイド駆動回路31uに供給されていない場合(制御電力が遮断状態である場合)に、異常制御部50から異常制御端子に供給される制御信号の信号レベルに応じて駆動信号を第1ハイサイドスイッチング素子S1に供給する。具体的には、第1ハイサイド駆動回路31uは、第1ハイサイド駆動回路31uの通常制御端子(または異常制御端子)に印加される制御信号の信号レベルがハイレベルである場合に、第1ハイサイド駆動回路31uの正側電源端子に印加される電圧(ハイレベル電圧)を第1ハイサイドスイッチング素子S1に供給する。これにより、第1ハイサイド駆動回路31uから第1ハイサイドスイッチング素子S1に供給される駆動信号の信号レベルがハイレベルになる。また、第1ハイサイド駆動回路31uは、第1ハイサイド駆動回路31uの通常制御端子(または異常制御端子)に印加される制御信号の信号レベルがローレベルである場合に、第1ハイサイド駆動回路31uの負側電源端子に印加される電圧(ローレベル電圧)を第1ハイサイドスイッチング素子S1に供給する。これにより、第1ハイサイド駆動回路31uから第1ハイサイドスイッチング素子S1に供給される駆動信号の信号レベルがローレベルになる。
【0064】
例えば、第1ハイサイド駆動回路31uは、通常制御端子に供給された制御信号と異常制御端子に供給された制御信号とを選択的に出力する論理回路(例えば2つの制御信号の論理和を出力する論理和回路)と、正側電源端子と負側電源端子との間に直列に接続されて論理回路の出力に応じて相補的にオンオフする2つのスイッチング素子(例えばトランジスタ)とによって構成されている。なお、第2および第3ハイサイド駆動回路31v,31wの構成は、第1ハイサイド駆動回路31uの構成と同様となっている。
【0065】
〈ローサイド駆動回路〉
3つのローサイド駆動回路32u〜32wは、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6にそれぞれ対応している。また、3つのローサイド駆動回路32u〜32wは、制御電力(この例では制御系電源P2から供給される電力)により動作するように構成され、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6のオンオフをそれぞれ制御するように構成されている。
【0066】
この例では、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6および3つのローサイド駆動回路32uは、3つのローサイド駆動回路32u〜32wに供給される制御電力が遮断状態になると3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6がオフ状態となるように構成されている。例えば、第1ローサイド駆動回路32uに供給される制御電力が遮断状態になると、第1ローサイドスイッチング素子S4がオフ状態となる。
【0067】
また、この例では、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6および3つのローサイド駆動回路32u〜32wは、3つのローサイド駆動回路32u〜32wに異常制御部50から後述するオフ信号が供給されると3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6がオフ状態となるように構成されている。例えば、第1ローサイド駆動回路32uにオフ信号が供給されると、第1ローサイドスイッチング素子S4がオフ状態となる。
【0068】
この例では、第1ローサイド駆動回路32uは、正側電源端子と、負側電源端子と、通常制御端子と、オフ制御端子とを有している。第1ローサイド駆動回路32uの正側電源端子は、制御電力が供給される端子(この例では制御系電源P2の正極)に接続され、第1ローサイド駆動回路32uの負側電源端子は、接地線LGに接続されている。第1ローサイド駆動回路32uの通常制御端子には、スイッチング制御部33から供給される制御信号が印加され、第1ローサイド駆動回路32uのオフ制御端子には、異常制御部50から供給されるオフ信号が印加される。
【0069】
そして、この例では、第1ローサイド駆動回路32uは、異常制御部50からオフ信号が供給されていない場合(この例ではオフ信号の信号レベルがローレベルである場合)であり且つ制御電力が第1ローサイド駆動回路32uに供給されている場合(制御電力が供給状態である場合)に、スイッチング制御部33から通常制御端子に供給される制御信号の信号レベルに応じて駆動信号を第1ローサイドスイッチング素子S4に供給する。具体的には、第1ローサイド駆動回路32uは、第1ローサイド駆動回路32uの通常制御端子に印加される制御信号の信号レベルがハイレベルである場合に、第1ローサイド駆動回路32uの正側電源端子に印加される電圧(ハイレベル電圧)を第1ローサイドスイッチング素子S4に供給する。これにより、第1ローサイド駆動回路32uから第1ローサイドスイッチング素子S4に供給される駆動信号の信号レベルがハイレベルになる。また、第1ローサイド駆動回路32uは、第1ローサイド駆動回路32uの通常制御端子に印加される制御信号の信号レベルがローレベルである場合に、第1ローサイド駆動回路32uの負側電源端子に印加される電圧(ローレベル電圧)を第1ローサイドスイッチング素子S4に供給する。これにより、第1ローサイド駆動回路32uから第1ローサイドスイッチング素子S4に供給される駆動信号の信号レベルがローレベルになる。
【0070】
また、この例では、第1ローサイド駆動回路32uは、異常制御部50からオフ信号が供給されている場合(この例ではオフ信号の信号レベルがハイレベルである場合)、または、制御電力が第1ローサイド駆動回路32uに供給されていない場合(制御電力が遮断状態である場合)に、第1ローサイド駆動回路32uの負側電源端子に印加される電圧(ローレベル電圧)を第1ローサイドスイッチング素子S4に供給する。これにより、第1ローサイド駆動回路32uから第1ローサイドスイッチング素子S4に供給される駆動信号の信号レベルがローレベルになり、第1ローサイドスイッチング素子S4がオフ状態になる。
【0071】
例えば、第1ローサイド駆動回路32uは、通常制御端子に供給された制御信号とオフ制御端子に供給されたオフ信号とを入力してオフ信号の信号レベルがローレベルである場合に通常制御端子に供給された制御信号を出力する一方でオフ信号の信号レベルがハイレベルである場合に制御信号の信号レベルに拘わらずローレベルの信号を出力する論理演算回路(例えば論理和回路や論理積回路などの論理回路の組合せ)と、正側電源端子と負側電源端子との間に直列に接続されて論理演算回路の出力に応じて相補的にオンオフする2つのスイッチング素子(例えばトランジスタ)とによって構成されている。なお、第2および第3ローサイド駆動回路32v,32wの構成は、第1ローサイド駆動回路32uの構成と同様となっている。
【0072】
なお、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6は、いずれも制御電力が遮断状態になるとオフ状態となるように構成されているため、制御電力が遮断状態になると自動的にオフ状態となる。しかし、制御電力が遮断状態になる直前までは供給状態であるので、遮断状態になった瞬間は3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6のいずれかがオン状態である可能性がある。そこで、実施形態1では、3つのローサイド駆動回路32u〜32wには、異常制御部50からオフ信号が供給される構成としている。これにより、遮断状態になった瞬間に3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6をオフ状態にする確実性が増す。
【0073】
〈スイッチング制御部〉
スイッチング制御部33は、制御電力(この例では制御系電源P2から供給された電力)により動作するように構成されている。また、スイッチング制御部33は、モータM1に流れる電流を検知する電流センサ(図示を省略)やモータM1の磁極位置を検知する磁極位置センサ(図示を省略)などの各種センサにより検知された情報や外部から入力された制御指令などに基づいて、ハイサイド駆動回路31u〜31wおよびローサイド駆動回路32u〜32wを制御してインバータ20のスイッチング素子S1〜S6のスイッチング動作を制御するように構成されている。例えば、スイッチング制御部33は、モータM1のトルクが目標トルク指令に示された目標トルク(例えば電気車両1のアクセルペダルの操作量に応じたトルク)となるように、インバータ20のスイッチング動作を制御する。
【0074】
この例では、スイッチング制御部33は、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wおよび3つのローサイド駆動回路32u〜32wの各々の通常制御端子に制御信号を供給して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3および3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6のオンオフを制御する。具体的には、スイッチング制御部33は、第1ハイサイドスイッチング素子S1をオン状態にする場合に、第1ハイサイド駆動回路31uに供給される制御信号の信号レベルをハイレベルにし、第1ハイサイドスイッチング素子S1をオフ状態にする場合に、第1ハイサイド駆動回路31uに供給される制御信号の信号レベルをローレベルにする。なお、スイッチング制御部33による第2および第3ハイサイド駆動回路31v,31wおよび第1,第2,第3ローサイド駆動回路32u,32v,32wの制御は、スイッチング制御部33による第1ハイサイド駆動回路31uの制御と同様となっている。
【0075】
また、この例では、スイッチング制御部33は、制御電力がスイッチング制御部33に供給されていない場合(制御電力が遮断状態である場合)にスイッチング制御部33から3つのハイサイド駆動回路31u〜31wおよび3つのローサイド駆動回路32u〜32wに供給される制御信号の信号レベルがローレベルになるように構成されている。
【0076】
例えば、スイッチング制御部33は、CPUなどの演算処理部と、演算処理部を動作させるためのプログラムや情報などを記憶するメモリなどの記憶部と、ハイサイド駆動回路31u〜31wおよびローサイド駆動回路32u〜32wに制御信号(例えばPWM信号)を供給する制御信号生成回路とによって構成されている。
【0077】
〈ブートストラップ回路〉
ブートストラップ回路40は、3つのブートストラップキャパシタ(第1,第2,第3ブートストラップキャパシタ41u,41v,41w)を有している。3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wは、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3を駆動するための電力をそれぞれ蓄積するように構成されている。そして、ブートストラップ回路40は、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフに応じて3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電するように構成されている。
【0078】
この例では、ブートストラップ回路40は、制御電力(この例では制御系電源P2から供給された電力)が供給状態である場合に、制御電力を用いて3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電するように構成されている。具体的には、この例では、ブートストラップ回路40は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wの他に、3つのブートストラップダイオード(第1,第2,第3ブートストラップダイオード42u,42v,42w)を有している。3つのブートストラップダイオード42u,42v,42wは、制御電力が供給される端子(この例では制御系電源P2の正極)と3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wの一端との間にそれぞれ接続されている。また、3つのブートストラップダイオード42u,42v,42wの各々は、制御電力が供給される端子(この例では制御系電源P2の正極)から3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちそのブートストラップダイオードに対応するブートストラップキャパシタの一端へ向かう方向が順方向となるように構成されている。
【0079】
また、この例では、ブートストラップ回路40は、制御電力が遮断状態である場合に、モータM1から回生された電力を用いて3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電するように構成されている。具体的には、この例では、ブートストラップ回路40は、3つの充電線(第1,第2,第3充電線45u,45v,45w)を有している。3つの充電線45u,45v,45wは、3つのブートストラップキャパシタ41u,41v,41wの一端(具体的には3つのブートストラップキャパシタ41u,41v,41wと3つのブートストラップダイオード42u,42v,42wとの接続点)と電源線LPとをそれぞれ接続している。なお、3つのブートストラップキャパシタ41u,41v,41wの他端は、3つの出力線LOu,LOv,LOwにそれぞれ接続されている。
【0080】
そして、この例では、ブートストラップ回路40は、3つの充電抵抗(第1,第2,第3充電抵抗46u,46v,46w)と、3つの充電ダイオード(第1,第2,第3充電ダイオード47u,47v,47w)とを有している。3つの充電抵抗46u,46v,46wは、3つの充電線45u,45v,45wにそれぞれ設けられている。3つの充電ダイオード47u,47v,47wは、3つの充電線45u,45v,45wにそれぞれ設けられている。また、3つの充電ダイオード47u〜47wの各々は、電源線LPから3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその充電ダイオードに対応するブートストラップキャパシタの一端へ向かう方向が順方向となるように構成されている。
【0081】
〈異常制御部〉
異常制御部50は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうち少なくとも1つ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)に充電された電力により動作するように構成されている。そして、異常制御部50は、制御電力(この例では制御系電源P2から供給される電力)が遮断状態になると、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフを制御するように構成されている。
【0082】
この例では、異常制御部50は、制御電力が遮断状態になると、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となるように3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御する。
【0083】
また、この例では、異常制御部50は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうち異常制御部50の動作に用いられる電力を蓄積するブートストラップキャパシタ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)の端子間電圧VBCを監視するように構成されている。
【0084】
そして、この例では、異常制御部50は、制御電力が遮断状態である場合に、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうち異常制御部50の動作に用いられる電力を蓄積するブートストラップキャパシタ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)の端子間電圧VBCが予め定められた第1電圧閾値Vth1を下回ると、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオフ状態となるように、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御する。第1電圧閾値Vth1は、例えば、ハイサイド駆動回路(この例では第1ハイサイド駆動回路31u)と異常制御部50を動作させるために最低限必要となる電力がブートストラップキャパシタ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)に蓄積されているとみなすことができるときのブートストラップキャパシタの端子間電圧VBCよりも高い電圧に設定されている。
【0085】
また、この例では、異常制御部50は、制御電力が遮断状態である場合に、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうち異常制御部50の動作に用いられる電力を蓄積するブートストラップキャパシタ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)の端子間電圧VBCが予め定められた第2電圧閾値Vth2(第1電圧閾値Vth1よりも高い電圧閾値)を上回ると、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となるように、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御する。第2電圧閾値Vth2は、例えば、直流電源P1とインバータ20とを接続する電力線(電源線LPと接地線LG)が過電圧(例えばスイッチング素子S1〜S6の耐圧)であるとみなすことができるときのブートストラップキャパシタ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)の端子間電圧VBCよりも低い電圧に設定されている。
【0086】
また、この例では、異常制御部50は、制御電力が遮断状態になると、3つのローサイド駆動回路32u〜32wにオフ信号を供給するように構成されている。
【0087】
また、この例では、異常制御部50は、制御電力が供給状態である場合(すなわちモータ制御装置10の制御系に制御電力が供給されてモータ制御装置10の制御系が正常に動作することができる場合)に3つのハイサイド駆動回路31u〜31wの制御および3つのローサイド駆動回路32u〜32wへのオフ信号の供給を行わないように構成されている。
【0088】
〔異常制御部の構成〕
図3に示すように、この例では、異常制御部50は、状態検知回路51と、異常制御回路52とを有している。状態検知回路51および異常制御回路52は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wの1つ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)に蓄積された電力により動作するように構成されている。
【0089】
〈状態検知回路〉
状態検知回路51は、制御電力(この例では制御系電源P2から供給される電力)を監視して制御電力が供給状態および遮断状態のいずれであるのかを検知するように構成されている。
【0090】
この例では、状態検知回路51は、制御電力に応じて変化する制御電圧VC(この例では制御系電源P2から供給される電圧)と予め定められた基準電圧Vrefとを比較して検知信号S51を出力するように構成されている。具体的には、状態検知回路51は、制御電圧VCが基準電圧Vrefを下回る場合に検知信号S51の信号レベルをハイレベルにし、制御電圧VCが基準電圧Vrefを下回らない場合に検知信号S51の信号レベルをローレベルにする。なお、基準電圧Vrefは、例えば、モータ制御装置10の制御系を動作させるために最低限必要となる制御電力がモータ制御装置10の制御系に供給されているとみなすことができるとき(すなわち制御電力が供給状態であるとみなすことができる最小の制御電力になっているとき)の制御電圧VCよりも高い電圧に設定されている。
【0091】
この例では、状態検知回路51は、比較器によって構成されている。この比較器は、第1ブートストラップキャパシタ41uの一端に接続される正側電源端子と、接地電圧GNDが印加される負側電源端子と、制御電圧VCが印加される第1入力端子と、基準電圧Vrefが印加される第2入力端子と、異常制御回路52に接続される出力端子とを有している。すなわち、この例では、状態検知回路51は、ハードウェアによって構成されている。
【0092】
〈異常制御回路〉
異常制御回路52は、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wの各々の異常制御端子に制御信号を供給して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフを制御するように構成されている。なお、異常制御回路52によるハイサイド駆動回路31u〜31wの制御は、スイッチング制御部33によるハイサイド駆動回路31u〜31wの制御と同様となっている。
【0093】
また、異常制御回路52は、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知される(この例では検知信号S51の信号レベルがローレベルからハイレベルになる)と、三相短絡制御を行うように構成されている。三相短絡制御では、異常制御回路52は、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となるように3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御する。
【0094】
また、異常制御回路52は、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知されている場合(この例では検知信号S51の信号レベルがハイレベルである場合)に第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、全相開放制御を行うように構成されている。全相開放制御では、異常制御回路52は、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオフ状態となるように3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御する。
【0095】
また、異常制御回路52は、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知されている場合(この例では検知信号S51の信号レベルがハイレベルである場合)に第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、三相短絡制御を行うように構成されている。
【0096】
また、異常制御回路52は、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知される(この例では検知信号S51の信号レベルがローレベルからハイレベルになる)と、3つのローサイド駆動回路32u〜32wにオフ信号を供給するように構成されている。この例では、異常制御回路52は、3つのローサイド駆動回路32u〜32wに供給されるオフ信号の信号レベルをハイレベルにするように構成されている。
【0097】
また、異常制御回路52は、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知されない場合(この例では検知信号S51の信号レベルがローレベルである場合)に3つのハイサイド駆動回路31u〜31wの制御および3つのローサイド駆動回路32u〜32wへのオフ信号の供給を行わないように構成されている。この例では、異常制御回路52は、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知されない場合(制御電力が供給状態である場合)に異常制御回路52から3つのハイサイド駆動回路31u〜31wに供給される制御信号の信号レベルがローレベルになり且つ3つのローサイド駆動回路32u〜32wに供給されるオフ信号の信号レベルがローレベルになるように構成されている。
【0098】
なお、この例では、異常制御回路52は、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧と第1電圧閾値Vth1と第2電圧閾値Vth2とを比較する比較器(例えばヒステリシスを有する比較器)と、比較器の出力と状態検知回路51の出力を入力してハイサイド駆動回路31u〜31wに制御信号を出力し且つローサイド駆動回路32u〜32wにオフ信号を出力する論理演算回路(例えば論理和回路や論理積回路などの論理回路の組合せ)とによって構成されている。すなわち、この例では、異常制御回路52は、ハードウェアによって構成されている。
【0099】
〔モータ制御装置の動作モード〕
モータ制御装置10の動作モードは、制御電力が供給状態である場合に行われる通常モードと、制御電力が遮断状態である場合に行われる異常モードとに大別される。制御電力が供給状態から遮断状態になると、モータ制御装置10の動作モードが通常モードから異常モードになり、制御電力が遮断状態から供給状態になると、モータ制御装置10の動作モードが異常モードから通常モードになる。
【0100】
〔通常モードにおける動作〕
次に、モータ制御装置10の通常モードにおける動作について説明する。通常モードでは、制御電力によりモータ制御装置10の制御系(この例ではハイサイド駆動回路31u〜31wとローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33)が動作する。なお、通常モードでは、異常制御部50の異常制御回路52は、ハイサイド駆動回路31u〜31wの制御およびローサイド駆動回路32u〜32wへのオフ信号の供給を行わない。
【0101】
具体的には、ハイサイド駆動回路31u〜31wとローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33は、それぞれに供給された制御電力により動作する。これにより、スイッチング素子S1〜S6のスイッチング動作により直流電源P1の電力が三相の交流電力に変換され、その交流電力がモータM1に供給される。
【0102】
また、通常モードにおいて、ブートストラップ回路40は、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフに応じて3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電する。
【0103】
例えば、
図4に示すように、通常モードにおいて第1ハイサイドスイッチング素子S1がオフ状態となり第1ローサイドスイッチング素子S4がオン状態になると、制御系電源P2の正極から第1ブートストラップダイオード42uと第1ブートストラップキャパシタ41uとオン状態の第1ローサイドスイッチング素子S4とを順に経由して制御系電源P2の負極に至る電流経路(
図4の白抜き矢印で示した経路)が形成される。これにより、第1ブートストラップキャパシタ41uが充電される。これと同様に、通常モードにおいて第2ハイサイドスイッチング素子S2がオフ状態となり第2ローサイドスイッチング素子S5がオン状態になると、第2ブートストラップキャパシタ41vが充電される。また、通常モードにおいて第3ハイサイドスイッチング素子S3がオフ状態となり第3ローサイドスイッチング素子S6がオン状態になると、第3ブートストラップキャパシタ41wが充電される。
【0104】
また、通常モードにおいて、異常制御部50の状態検知回路51は、制御電力の遮断状態を検知するための処理(制御電力が遮断状態であるか否かの判定)を継続する。状態検知回路51により制御電力の供給状態から遮断状態への変化が検知されると、モータ制御装置10の動作モードが通常モードから異常モードになる。
【0105】
〔異常モードにおける動作〕
次に、
図5を参照して、モータ制御装置10の異常モードにおける動作について説明する。異常モードでは、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうち少なくとも1つ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)に蓄積された電力により異常制御部50が動作する。なお、異常モードでは、モータ制御装置10の制御系(この例ではローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33)は、動作を停止している。
【0106】
具体的には、制御電力が供給状態から遮断状態に変化すると、異常制御部50の状態検知回路51は、制御電力が遮断状態であることを検知する。異常制御部50の異常制御回路52は、制御電力の供給状態から遮断状態への変化が状態検知回路51によって検知されると、
図5に示した動作を行う。なお、また、以下では、第1ブートストラップキャパシタ41uに蓄積された電力により異常制御部50(この例では状態検知回路51と異常制御回路52)が動作する場合を例に挙げて説明する。なお、この例では、異常制御回路52は、ソフトウェア(プログラム)によって構成されたものではなくハードウェア(専用回路)によって構成されたものであり、
図5は、CPUにより実行されるプログラムの流れを例示するものではない。
【0107】
〈ステップST11〉
まず、異常制御回路52は、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知されると三相短絡制御を開始する。これにより、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となり、インバータ20の状態が三相短絡状態(3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態であり3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6がオフ状態である状態)になる。これにより、モータM1から回生される回生電力による過電圧を抑制することができ、回生電力による耐圧破壊からモータ制御装置10(特にインバータ20)を保護することができる。
【0108】
〈ステップST12〉
次に、異常制御回路52は、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回るまで三相短絡制御を継続する。
【0109】
〈ステップST13〉
第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、異常制御回路52は、三相短絡制御を終了して全相開放制御を開始する。これにより、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオフ状態となり、インバータ20の状態が全相開放状態(6つのスイッチング素子S1〜S6がオフ状態である状態)になる。その結果、モータM1から回生された電力により3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電することができ、ハイサイド駆動回路31u〜31wおよび異常制御部50の動作に用いられる電力を確保することができる。
【0110】
例えば、第1ブートストラップキャパシタ41uの充電を例に挙げて説明すると、
図6に示すように、全相開放状態において、車両の慣性走行によりモータM1が回転し続けると、モータM1におけるコイルが磁石により生成している磁界の中を回り続けるので、回生電力が発生する。このとき、回生電力により、例えば、第1出力線LOuと第2出力線LOvとの電圧差が電源線LPの電圧より高くなる瞬間が存在する。その結果、第2,第4還流ダイオードD2,D4が導通状態となる。第4還流ダイオードD4が導通状態になると、電源線LPから第1充電線45u(具体的には第1充電抵抗46uと第1充電ダイオード47u)と第1ブートストラップキャパシタ41uと導通状態の還流ダイオードD4とを順に経由して接地線LGに至る電流経路(
図6の白抜き矢印で示した経路)が形成される。これにより、第1ブートストラップキャパシタ41uが充電される。これと同様にして、全相開放状態において、回生電力による第1出力線LOuと第2出力線LOvと第3出力線LOwとの間の電圧の大小関係の変動に応じて、第2ブートストラップキャパシタ41vおよび第3ブートストラップキャパシタ41wが充電される。
【0111】
〈ステップST14〉
次に、異常制御回路52は、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回るまで全相開放制御を継続する。
【0112】
〈ステップST15〉
第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、異常制御回路52は、全相開放制御を終了して三相短絡制御を開始する。これにより、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となり、インバータ20の状態が全相開放状態から三相短絡状態になる。その結果、モータM1から回生された電力によりブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電するための動作を終了してモータM1から回生される回生電力による過電圧を抑制するための動作を再開することができる。これにより、ハイサイド駆動回路31u〜31wおよび異常制御部50の動作に用いられる電力を確保しつつ、回生電力による耐圧破壊からモータ制御装置10(特にインバータ20)を保護することができる。次に、ステップST12へ進む。
【0113】
なお、異常モードにおいて、状態検知回路51は、制御電力の供給状態を検知するための処理(制御電力が供給状態であるか否かの判定)を継続する。状態検知回路51により制御電力の遮断状態から供給状態への変化が検知されると、モータ制御装置10の動作モードが異常モードから通常モードになる。
【0114】
〔異常モードにおける動作の具体例〕
次に、
図7を参照して、モータ制御装置10の異常モードにおける動作を具体的に説明する。以下では、電気車両1の走行中に制御電力が供給状態から遮断状態となる場合を例に挙げて説明する。
【0115】
時刻t0になると、制御電力が供給状態から遮断状態になる。これにより、スイッチング制御部33は、動作を停止する。また、状態検知回路51の検知信号S51の信号レベルがローレベルからハイレベルに変化する。すなわち、制御電力が遮断状態であることが状態検知回路51によって検知される。これにより、異常制御回路52が三相短絡制御を開始し、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となる。また、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6がオフ状態となる。
【0116】
時刻t0から時刻t1までの期間では、インバータ20の状態が三相短絡状態(3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態であり3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6がオフ状態である状態)になっているので、モータM1から回生される回生電力が抑制される。また、第1ブートストラップキャパシタ41uに蓄積された電力が第1ハイサイド駆動回路31uと異常制御部50(この例では状態検知回路51と異常制御回路52)とによって消費される。これにより、第1ブートストラップキャパシタ41uに蓄積された電力が次第に減少し、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが次第に低下する。これと同様に、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wに蓄積された電力が第2および第3ハイサイド駆動回路31v,31wによってそれぞれ消費されて次第に減少する。
【0117】
時刻t1になると、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回る。これにより、異常制御回路52が三相短絡制御を終了して全相開放制御を開始し、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオフ状態となる。
【0118】
時刻t1から時刻t2までの期間では、インバータ20の状態が全相開放状態(6つのスイッチング素子S1〜S6がオフ状態である状態)になっているので、モータM1から回生される回生電力により第1ブートストラップキャパシタ41uが充電される。これにより、第1ブートストラップキャパシタ41uに蓄積された電力が次第に増加し、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが次第に上昇する。これと同様に、モータM1から回生される回生電力により第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wが充電され、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wに蓄積された電力が次第に増加する。
【0119】
時刻t2になると、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回る。これにより、異常制御回路52が全相開放制御を終了して三相短絡制御を開始し、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となる。
【0120】
時刻t2から時刻t3までの期間では、時刻t0から時刻t1までの期間と同様に、ブートストラップキャパシタ41u〜41wに蓄積された電力が次第に減少していき、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが次第に低下していく。そして、時刻t3になると、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回る。
【0121】
〔実施形態1による効果〕
以上のように、異常制御回路52(異常制御部50)が3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうち少なくとも1つ(この例では第1ブートストラップキャパシタ41u)に蓄積された電力により動作するように構成されているので、制御電力が遮断状態である場合であっても、異常制御回路52(異常制御部50)によって3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフを制御することができる。
【0122】
また、制御電力が遮断状態である場合に異常制御部50から3つのローサイド駆動回路32u〜32wにオフ信号を供給することにより、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6をオフ状態にする確実性を増すことができる。
【0123】
また、3つの充電線45u〜45wに3つの充電抵抗46u〜46wをそれぞれ設けることにより、ブートストラップキャパシタ41u〜41wの充放電の速度(時定数)を調節することができる。これにより、ブートストラップキャパシタ41u〜41wの充放電特性の設定を容易にすることができる。例えば、充電抵抗46u〜46wの抵抗値を高くすることにより、モータ制御装置10の制御系が制御電力により動作してインバータ20のスイッチング動作を制御している場合に、ブートストラップキャパシタ41u〜41wに蓄積された電力が充電線45u〜45wを経由して放電されることを抑制することができる。また、充電抵抗46u〜46wの抵抗値を低くすることにより、制御電力が遮断状態でありインバータ20の状態が全相開放状態(6つのスイッチング素子S1〜S6がオフ状態である状態)である場合に、ブートストラップキャパシタ41u〜41wの充電を迅速に行うことができる。
【0124】
また、3つの充電線45u〜45wに3つの充電ダイオード47u〜47wをそれぞれ設けることにより、3つの充電線45u〜45wにおける電流の方向を規制することができる。これにより、モータ制御装置10の制御系が制御電力により動作してインバータ20のスイッチング動作を制御している場合に、ブートストラップキャパシタ41u〜41wに蓄積された電力が充電線45u〜45wを経由して放電されることを防止することができる。これにより、ブートストラップキャパシタ41u〜41wに蓄積された電力を有効に利用することができる。
【0125】
また、異常制御部50(この例では状態検知回路51と異常制御回路52)をハードウェアによって構成することにより、異常制御部50をソフトウェアによって構成する場合よりも、異常制御部50の動作を迅速にすることができる。
【0126】
(実施形態2)
図8は、実施形態2によるモータ制御装置10の構成を例示している。実施形態2によるモータ制御装置10は、実施形態1によるモータ制御装置10と比べて、異常制御部50の構成が異なっている。実施形態2によるモータ制御装置10のその他の構成は、実施形態1によるモータ制御装置10の構成と同様となっている。
【0127】
〔異常制御部の構成〕
実施形態2では、異常制御部50は、3つの状態検知回路(第1,第2,第3状態検知回路51u,51v,51w)と、3つの異常制御回路(第1,第2,第3異常制御回路52u,52v,52w)とを有している。この例では、第1状態検知回路51uと第1異常制御回路52uと第1ブートストラップキャパシタ41uと第1ハイサイド駆動回路31uと第1ローサイド駆動回路32uとが互いに対応し、第2状態検知回路51vと第2異常制御回路52vと第2ブートストラップキャパシタ41vと第2ハイサイド駆動回路31vと第2ローサイド駆動回路32vとが互いに対応し、第3状態検知回路51wと第3異常制御回路52wと第3ブートストラップキャパシタ41wと第3ハイサイド駆動回路31wと第3ローサイド駆動回路32wとが互いに対応している。
【0128】
〈状態検知回路〉
3つの状態検知回路51u〜51wの各々は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその状態検知回路に対応するブートストラップキャパシタに充電された電力により動作するように構成されている。また、3つの状態検知回路51u〜51wの各々は、制御電力(この例では制御系電源P2から供給される電力)を監視して制御電力が遮断状態であることを検知するように構成されている。
【0129】
この例では、第1状態検知回路51uは、実施形態1の状態検知回路51と同様に、制御電力に応じて変化する制御電圧VC(この例では制御系電源P2から供給される電圧)と予め定められた基準電圧Vrefとを比較して検知信号S51を出力するように構成されている。
【0130】
なお、この例では、第1状態検知回路51uの構成は、
図3に示した実施形態1の状態検知回路51の構成と同様となっている。また、第2および第3状態検知回路51v,51wの構成は、第1状態検知回路51uの構成と同様となっている。
【0131】
〈異常制御回路〉
3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタに充電された電力により動作するように構成されている。また、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、制御電力(この例では制御系電源P2から供給される電力)が遮断状態になると、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のうちその異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子のオンオフを制御するように構成されている。
【0132】
この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、制御電力が遮断状態になると、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のうちその異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御する。
【0133】
また、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタの端子間電圧VBCを監視するように構成されている。
【0134】
そして、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、制御電力が遮断状態である場合に、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のうちその異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオフ状態となるように、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路を制御する。
【0135】
また、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、制御電力が遮断状態である場合に、3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のうちその異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子がオン状態となるように、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路52に対応するハイサイド駆動回路を制御する。
【0136】
また、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、制御電力が遮断状態になると、3つのローサイド駆動回路32u〜32wのうちその異常制御回路に対応するローサイド駆動回路にオフ信号を供給するように構成されている。
【0137】
なお、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、制御電力が供給状態である場合(モータ制御装置10の制御系に制御電力が供給されてモータ制御装置10の制御系が正常に動作することができる場合)に3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路の制御および3つのローサイド駆動回路32u〜32wのうちその異常制御回路に対応するローサイド駆動回路へのオフ信号の供給を行わないように構成されている。
【0138】
〈異常制御回路の詳細〉
具体的には、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路の異常制御端子に制御信号を供給して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のうちその異常制御回路に対応するハイサイドスイッチング素子のオンオフを制御するように構成されている。なお、異常制御回路52u〜52wによるハイサイド駆動回路31u〜31wの制御は、スイッチング制御部33によるハイサイド駆動回路31u〜31wの制御と同様となっている。
【0139】
また、第1異常制御回路52uは、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知される(この例では第1状態検知回路51uの検知信号S51の信号レベルがローレベルからハイレベルになる)と、ハイサイド短絡制御を行うように構成されている。ハイサイド短絡制御では、第1異常制御回路52uは、第1異常制御回路52uに対応する第1ハイサイドスイッチング素子S1がオン状態となるように、第1異常制御回路52uに対応する第1ハイサイド駆動回路31uを制御する。これと同様に、第2異常制御回路52v(または第3異常制御回路52w)は、制御電力が遮断状態であることが第2状態検知回路51v(または第3状態検知回路51w)によって検知されるとハイサイド短絡制御を行うように構成されている。
【0140】
また、第1異常制御回路52uは、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知されている場合(この例では第1状態検知回路51uの検知信号S51の信号レベルがハイレベルである場合)に、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、両サイド開放制御を行うように構成されている。両サイド開放制御では、第1異常制御回路52uは、第1異常制御回路52uに対応する第1ハイサイドスイッチング素子S1がオフ状態となるように、第1異常制御回路52uに対応する第1ハイサイド駆動回路31uを制御する。これと同様に、第2異常制御回路52v(または第3異常制御回路52w)は、制御電力が遮断状態であることが第2状態検知回路51v(または第3状態検知回路51w)によって検知されている場合に、第2ブートストラップキャパシタ41v(または第3ブートストラップキャパシタ41w)の端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、両サイド開放制御を行うように構成されている。
【0141】
また、第1異常制御回路52uは、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知されている場合(この例では第1状態検知回路51uの検知信号S51の信号レベルがハイレベルである場合)に、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、ハイサイド短絡制御を行うように構成されている。これと同様に、第2異常制御回路52v(または第3異常制御回路52w)は、制御電力が遮断状態であることが第2状態検知回路51v(または第3状態検知回路51w)によって検知されている場合に、第2ブートストラップキャパシタ41v(または第3ブートストラップキャパシタ41w)の端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、ハイサイド短絡制御を行うように構成されている。
【0142】
また、第1異常制御回路52uは、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知される(この例では第1状態検知回路51uの検知信号S51の信号レベルがローレベルからハイレベルになる)と、第1異常制御回路52uに対応する第1ローサイド駆動回路32uにオフ信号を供給するように構成されている。この例では、第1異常制御回路52uは、第1ローサイド駆動回路32uに供給されるオフ信号の信号レベルをハイレベルにするように構成されている。これと同様に、第2異常制御回路52v(または第3異常制御回路52w)は、制御電力が遮断状態であることが第2状態検知回路51v(または第3状態検知回路51w)によって検知されると第2ローサイド駆動回路32v(または第3ローサイド駆動回路32w)にオフ信号を供給するように構成されている。
【0143】
また、第1異常制御回路52uは、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知されない場合(この例では第1状態検知回路51uの検知信号S51の信号レベルがローレベルである場合)に第1ハイサイド駆動回路31uの制御および第1ローサイド駆動回路32uへのオフ信号の供給を行わないように構成されている。この例では、第1異常制御回路52uは、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知されない場合(制御電力が供給状態である場合)に第1異常制御回路52uから第1ハイサイド駆動回路31uに供給される制御信号の信号レベルがローレベルになり第1ローサイド駆動回路32uに供給されるオフ信号の信号レベルがローレベルになるように構成されている。これと同様に、第2異常制御回路52v(または第3異常制御回路52w)は、制御電力が遮断状態であることが第2状態検知回路51v(または第3状態検知回路51w)によって検知されない場合に第2ハイサイド駆動回路31v(または第3ハイサイド駆動回路31w)の制御および第2ローサイド駆動回路32v(または第3ローサイド駆動回路32w)へのオフ信号の供給を行わないように構成されている。
【0144】
なお、この例では、第1異常制御回路52uは、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧と第1電圧閾値Vth1と第2電圧閾値Vth2とを比較する比較器(例えばヒステリシスを有する比較器)と、比較器の出力と状態検知回路51の出力を入力して第1ハイサイド駆動回路31uに制御信号を出力する一方で第1ローサイド駆動回路32uにオフ信号を出力する論理演算回路(例えば論理和回路や論理積回路などの論理回路の組合せ)とによって構成されている。すなわち、この例では、第1異常制御回路52uは、ハードウェアによって構成されている。また、第2および第3異常制御回路52v,52wの構成は、第1異常制御回路52uの構成と同様となっている。
【0145】
また、この例では、3つの異常制御回路52u〜52wの各々は、3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路とともに単一の半導体チップに集積されている。さらに、この例では、3つの状態検知回路51u〜51wの各々は、3つの異常制御回路52u〜52wのうちその状態検知回路に対応する異常制御回路とともに単一の半導体チップに集積されている。すなわち、この例では、第1ハイサイド駆動回路31uと第1状態検知回路51uと第1異常制御回路52uとが単一の半導体チップに集積され、第2ハイサイド駆動回路31vと第2状態検知回路51vと第2異常制御回路52vとが単一の半導体チップに集積され、第3ハイサイド駆動回路31wと第3状態検知回路51wと第3異常制御回路52wとが単一の半導体チップに集積されている。
【0146】
〔通常モードにおける動作〕
次に、実施形態2によるモータ制御装置10の通常モードにおける動作について説明する。実施形態2によるモータ制御装置10の通常モードにおける動作は、実施形態1によるモータ制御装置10の通常モードにおける動作と同様となっている。なお、通常モードでは、異常制御部50の異常制御回路52u〜52wは、ハイサイド駆動回路31u〜31wの制御およびローサイド駆動回路32u〜32wへのオフ信号の供給を行わない。
【0147】
具体的には、実施形態1と同様に、ハイサイド駆動回路31u〜31wとローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33が制御電力により動作し、スイッチング素子S1〜S6のスイッチング動作により直流電源P1の電力が三相の交流電力に変換され、その交流電力がモータM1に供給される。また、ブートストラップ回路40では、6つのスイッチング素子S1〜S6のオンオフに応じて3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wがそれぞれ充電される。
【0148】
また、通常モードにおいて、状態検知回路51u〜51wは、制御電力の遮断状態を検知するための処理(制御電力が遮断状態であるか否かの判定)を継続する。状態検知回路51u〜51wにより制御電力の供給状態から遮断状態への変化が検知されると、モータ制御装置10の動作モードが通常モードから異常モードになる。
【0149】
〔異常モードにおける動作〕
次に、
図9を参照して、実施形態2によるモータ制御装置10の異常モードにおける動作について説明する。異常モードでは、ブートストラップキャパシタ41u〜41wに蓄積された電力により状態検知回路51u〜51wおよび異常制御回路52u〜52wがそれぞれ動作する。なお、異常モードでは、モータ制御装置10の制御系(この例ではローサイド駆動回路32u〜32wとスイッチング制御部33)は、動作を停止している。
【0150】
具体的には、制御電力が供給状態から遮断状態に変化すると、状態検知回路51u〜51wは、制御電力が遮断状態であることを検知する。3つの異常制御回路52u〜52wは、制御電力の供給状態から遮断状態への変化が状態検知回路51u〜51wによって検知されると、
図9に示した動作を行う。なお、この例では、異常制御回路52u〜52wは、ソフトウェア(プログラム)によって構成されたものではなくハードウェア(専用回路)によって構成されたものであり、
図9は、CPUにより実行されるプログラムの流れを例示するものではない。
【0151】
〈ステップST21〉
まず、第1異常制御回路52uは、制御電力が遮断状態であることが第1状態検知回路51uによって検知されるとハイサイド短絡制御を開始する。これと同様に、第2および第3異常制御回路52uは、制御電力が遮断状態であることが第2および第3状態検知回路51v,51wによって検知されるとハイサイド短絡制御を開始する。これにより、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となり、インバータ20の状態が三相短絡状態(3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態であり3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6がオフ状態である状態)になる。これにより、モータM1から回生される回生電力による過電圧を抑制することができ、回生電力による耐圧破壊からモータ制御装置10(特にインバータ20)を保護することができる。
【0152】
〈ステップST22〉
次に、第1異常制御回路52uは、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回るまでハイサイド短絡制御を継続する。これと同様に、第2および第3異常制御回路52v,52wは、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回るまでハイサイド短絡制御を継続する。これにより、インバータ20の状態が三相短絡状態に維持される。
【0153】
〈ステップST23〉
第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、第1異常制御回路52uは、ハイサイド短絡制御を終了して両サイド開放制御を開始する。これと同様に、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wの端子間電圧VBCが第1電圧閾値Vth1を下回ると、第2および第3異常制御回路52v,52wは、ハイサイド短絡制御を終了して両サイド開放制御を開始する。これにより、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオフ状態となり、インバータ20の状態が全相開放状態(6つのスイッチング素子S1〜S6がオフ状態である状態)になる。その結果、モータM1から回生された電力により3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電することができ、ハイサイド駆動回路31u〜31wおよび異常制御部50の動作に用いられる電力を確保することができる。
【0154】
〈ステップST24〉
次に、第1異常制御回路52uは、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCを監視し、第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回るまで両サイド開放制御を継続する。これと同様に、第2および第3異常制御回路52v,52wは、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wの端子間電圧VBCを監視し、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回るまで両サイド開放制御を継続する。これにより、インバータ20の状態が全相開放状態に維持される。
【0155】
〈ステップST25〉
第1ブートストラップキャパシタ41uの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、第1異常制御回路52uは、両サイド開放制御を終了してハイサイド短絡制御を開始する。これと同様に、第2および第3ブートストラップキャパシタ41v,41wの端子間電圧VBCが第2電圧閾値Vth2を上回ると、第2および第3異常制御回路52v,52wは、両サイド開放制御を終了してハイサイド短絡制御を開始する。これにより、3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3がオン状態となり、インバータ20の状態が全相開放状態から三相短絡状態になる。その結果、モータM1から回生された電力によりブートストラップキャパシタ41u〜41wを充電するための動作を終了してモータM1から回生される回生電力による過電圧を抑制するための動作を再開することができる。これにより、ハイサイド駆動回路31u〜31wおよび異常制御部50の動作に用いられる電力を確保しつつ、回生電力による耐圧破壊からモータ制御装置10(特にインバータ20)を保護することができる。次に、ステップST22へ進む。
【0156】
なお、異常モードにおいて、状態検知回路51u〜51wは、制御電力の供給状態を検知するための処理(制御電力が供給状態であるか否かの判定)を継続する。状態検知回路51u〜51wにより制御電力の遮断状態から供給状態への変化が検知されると、モータ制御装置10の動作モードが異常モードから通常モードになる。
【0157】
〔実施形態2による効果〕
以上のように、3つの異常制御回路52u〜52wの各々が3つのブートストラップキャパシタ41u〜41wのうちその異常制御回路に対応するブートストラップキャパシタに充電された電力により動作するように構成されているので、制御電力が遮断状態である場合であっても、異常制御回路52u〜52wによって3つのハイサイド駆動回路31u〜31wを制御して3つのハイサイドスイッチング素子S1〜S3のオンオフを制御することができる。
【0158】
また、制御電力が遮断状態である場合に3つの異常制御回路52u〜52wから3つのローサイド駆動回路32u〜32wにオフ信号をそれぞれ供給することにより、3つのローサイドスイッチング素子S4〜S6をオフ状態にする確実性を増すことができる。
【0159】
また、3つの異常制御回路52u〜52wの各々を3つのハイサイド駆動回路31u〜31wのうちその異常制御回路に対応するハイサイド駆動回路とともに単一の半導体チップに集積することにより、異常制御部50の構築を容易にすることができる。すなわち、ハイサイド駆動回路のみが集積された半導体チップの代わりに、異常制御回路とハイサイド駆動回路とが集積された半導体チップ(この例では状態検知回路と異常制御回路とハイサイド駆動回路とが集積された半導体チップ)をモータ制御装置10に搭載することにより、異常制御部50を備えたモータ制御装置10を構築することができる。
【0160】
(実施形態2の変形例)
図10に示すように、異常制御部50は、3つの状態検知回路51u〜51wに代えて1つの状態検知回路51を有していてもよい。
図10の例では、3つの異常制御回路52u〜52wは、状態検知回路51の出力(具体的には検知信号S51)に応じて動作するように構成されている。なお、異常制御回路52u〜52wの状態検知回路51の出力に応じた動作は、実施形態2の異常制御回路52u〜52wの状態検知回路51u〜51wの出力に応じた動作と同様となっている。
【0161】
なお、実施形態1、2の説明では、制御電力を供給する制御系電源P2が設けられている場合を例に挙げたが、制御系電源P2の代わりに、直流電源P1の電力を制御電力に変換する変換回路(例えばDC−DCコンバータ、図示を省略)が設けられていてもよい。すなわち、制御電力は、直流電源P1とは異なる電源により供給される電力であってもよいし、直流電源P1から変換回路を経由して供給される電力であってもよい。
【0162】
(実施形態3)
図11は、実施形態3による車両駆動装置100の構成を例示している。車両駆動装置100は、ハイブリッド車両に用いられる車両駆動装置であり、駆動輪2と、モータM1と、変速機T1と、直流電源P1と、モータ制御装置10と、変速機制御装置12とを備えている。この例では、駆動輪2、モータM1、およびモータ制御装置10は、実施形態1または実施形態2による駆動輪2、モータM1、およびモータ制御装置10とそれぞれ同様となっている。モータ制御装置10については、実施形態3に関連する機能的なブロックとして、インバータ20、スイッチング制御部33、および異常制御部50のみを示している。なお、エンジンE1およびエンジン制御
装置11はハイブリッド車両の一般的な構成要素であり、車両駆動装置100の特徴部分を構成していない。
【0163】
〔変速機〕
変速機T1は、モータM1と機械的に接続され、モータM1と駆動輪2との間において、可変の変速比で動力を伝達するように構成されている。変速機T1は、変速機制御装置12による制御に従って変速比を変更する。ここでは、変速段数が5段の変速機T1を用いたものとして説明する。変速機T1は、実施形態1による動力伝達機構3の一部分を構成していてもよい。変速機T1は、5段以外の変速段数であってもよいし、無段変速機であってもよい。
【0164】
〔変速機制御装置〕
変速機制御装置12は、モータ制御装置10の異常制御部50がオン制御を実施していると判断した際に、モータM1の回転数rが第1回転数閾値である回転数閾値r1以上となるように変速機T1の変速比を制御する。オン制御とは、インバータ20における3つのハイサイドスイッチング素子、または、3つのローサイドスイッチング素子のいずれか一方を同時にオン状態にする制御である。
【0165】
変速機制御装置12は、スイッチング制御部33から通信線C1を介して得られる通信信号が途絶えることにより、オン制御が実施されていると判断してもよい。この例では、通信線C1は、車載ネットワークを構成する配線であり、通信信号は車載ネットワークに接続されているスイッチング制御部33を含む各ユニットが定期的に発行する死活監視用の信号である。
【0166】
また、変速機制御装置12は、異常制御部50から得られる3つのハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3、または、3つのローサイドスイッチング素子S4,S5,S6の少なくとも一方の制御信号を、通信線C2を介して参照することにより、オン制御が実施されているか否かを判断してもよい。この例では、通信線C2は、変速機制御装置12と異常制御部50とをポイントツーポイントで結ぶ配線である。
【0167】
また、変速機制御装置12は、モータM1の回転数rを、モータM1から供給されるモータ回転数信号Rによって検出してもよい。
【0168】
〔エンジン〕
エンジンE1は、モータM1とともに駆動輪2を駆動するように構成されている。
【0169】
〔エンジン制御装置〕
エンジン制御装置11は、エンジンE1の回転数、トルクなどについて、モータM1との協調制御を行う。
【0170】
〔オン制御中の回転数−トルク特性〕
図12は、モータ制御装置10の異常制御部50がオン制御を実施しているときの、モータM1の回転数−ブレーキトルク特性を例示している。
図12に示すように、オン制御中は、モータM1の回転数rが回転数閾値r1を下回るとブレーキトルクが増大するため、エンストの可能性が高まる(A)。これに対し、変速機制御装置12は、オン制御が実施されていると判断した際に、モータM1の回転数rが回転数閾値r1以上となるように変速機T1の変速比を制御する(B)。その結果、モータM1の回転数rが回転数閾値r1以上の範囲でオン制御が継続するので、ブレーキトルクの低い状態が維持され、エンストが起こりにくくなる(C)。なお、回転数閾値r1は、
図12の特性に基づいて、ブレーキトルクが低い状態を維持できる下限のモータM1の回転数rから予め決定される。
【0171】
〔変速機制御装置の動作〕
次に、
図13を参照して、変速機制御装置12のオン制御中の動作について説明する。なお、実施形態3では、モータ制御装置10への制御電力だけが供給されず、変速機制御装置12へは制御電力が供給される場合について述べる。したがって、モータ制御装置10がインバータ20を制御できないものの、変速機制御装置12は動作できる。これは、例えば、制御系電源P2からモータ制御装置10への配線が断たれる故障が該当する。
【0172】
〈ステップST31〉
まず、変速機制御装置12は、異常制御部50がオン制御を実施中か否かを判断する。オン制御中は、インバータ20における3つのハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3、または、3つのローサイドスイッチング素子S4,S5,S6のいずれか一方が同時にオン状態となっている。
【0173】
オン制御の一例である実施形態1、2の三相短絡制御では、ハードウェアの動作により、制御電力が遮断状態になると同時に、モータM1が発生した回生電力を用いて3つのハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3が同時にオン状態に制御される。三相短絡制御のための回生電力は、ブートストラップキャパシタ41u,41v,41wに蓄積されている。
【0174】
この例では、変速機制御装置12は、通信線C2を介して、ハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3の駆動信号を監視し、駆動信号が3つともハイレベルである場合、三相短絡制御中と判断してもよい。また、インバータ20にハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3の駆動信号が3つともハイレベルであることを示す論理信号を出力する論理回路を組み込み、通信線C2を介して、論理信号を参照することにより、三相短絡制御中か否かを判断してもよい。この例では、変速機制御装置12は、ハイサイドスイッチング素子S1,S2,S3の駆動信号または論理信号を参照するので、三相短絡制御中か否かの判断の確実性が高まる。
【0175】
また、モータ制御装置10から通信線C1を介して得られる死活監視用の信号が途絶えることで、制御電力が遮断状態になったと推定し、三相短絡制御中と判断してもよい。この例では、変速機制御装置12は、車載ネットワークで一般的に用いられる信号を活用することにより、追加的な構成を用いることなく、三相短絡制御中か否かを判断できる。
【0176】
なお、三相短絡制御の例には限られず、3つのローサイドスイッチング素子S4,S5,S6を同時にオン状態とする制御もオン制御に含まれる。3つのローサイドスイッチング素子S4,S5,S6に対するオン制御は、三相短絡制御と同様、通信線C2を介したローサイドスイッチング素子S4,S5,S6の制御信号または論理信号の監視、もしくは通信線C1を介して得られる死活監視用の信号の途絶により判断される。
【0177】
〈ステップST32〉
オン制御中と判断されると、変速機制御装置12は、モータM1の回転数rを、モータM1から供給されるモータ回転数信号Rによって検出する。
【0178】
〈ステップST33〉
モータ回転数rが回転数閾値r1より大きい場合、回転数の低下によってブレーキトルクが生じる可能性が小さいため、現在のギアを維持する。
【0179】
〈ステップST34〉
モータ回転数rが回転数閾値r1以下でかつギアがローギアである場合、車速が十分に低いことからブレーキトルクが生じてもその影響は小さいため、ローギアを維持する。
【0180】
〈ステップST35〉
モータ回転数rが回転数閾値r1以下でかつギアがローギア以外である場合、ギアを1段下げる。変速機T1が、無段変速機であれば、モータ回転数rが回転数閾値r1になるように無段変速制御する。これにより、モータの回転数rが回転数閾値r1未満に下がることを回避し、モータの回転数の低下によるブレーキトルクの増大およびそれによるエンストの可能性を低減できる。
【0181】
例えば、車両がトップ(5th)ギアにて走行中に制御電圧の遮断状態が検知されオン制御中となった場合を例に挙げて説明すると、
図14に示すように、車速の低下に伴ってモータM1の回転数rが低下し、回転数rが回転数閾値r1に達するたびに、トップ(5th)ギアからローギア側へ1段ずつシフトダウンが行われる。これにより、ローギア以外のギアでは、モータM1の回転数rが回転数閾値r1未満に下がることがないので、モータM1の回転数の低下によるブレーキトルクの増大およびそれによるエンストの可能性が低減される。
【0182】
〔実施形態3による効果〕
以上のように、変速機制御装置12は、オン制御が実施されていると判断すると、モータM1の回転数rが回転数閾値r1以上となるように変速機T1の変速比を制御するので、モータの回転数の低下によるブレーキトルクの増大およびそれによるエンストが起きにくくなる。これにより、オン制御が実施されるような異常が発生した際に、例えば、リンプホームモードでのスムーズな走行を提供することができる。
【0183】
(実施形態4)
実施形態4によるオン制御時における変速機制御装置12の動作について説明する。
【0184】
図15は、実施形態4によるオン制御時における変速機制御装置12の動作を例示している。実施形態4による動作は、実施形態3による動作に、モータM1の過回転を抑制するためのステップST41〜ST44の動作を追加して構成される。
【0185】
なお、ハイサイド短絡制御中にモータM1が過回転になると、モータM1の回転に伴いコイルに流れる電流が増大し、モータM1の永久磁石が減磁されてしまう可能性がある。そのため、実施形態4では、モータM1の過回転を抑制する動作が行われる。ただし、変速機T1が、例えばローギアやセカンドギアのように低い変速段であれば、モータM1に接続されたエンジンE1がエンジンブレーキを発生するため、モータM1の回転数rの増大が抑制される。したがって、実施形態4の動作は、車両がサードギア以上の変速段(1段分のシフトダウンを行ってもエンジンブレーキがあまり得られない変速段)で高速走行中にハイサイド短絡制御が実施され、さらに下り坂に差し掛かるなどしてモータM1の回転数rが増加する場合に行われる。
【0186】
モータM1の過回転を抑制するための動作は、ステップST33で、モータ回転数rが回転数閾値r1より大きいと判断された場合に、次のように実行される。
【0187】
〈ステップST41〉
モータ回転数rが、回転数閾値r1より大きい第2回転数閾値である回転数閾値r2未満の場合、モータM1が過回転となる可能性が小さいため、現在のギアを維持する。なお、回転数閾値r2は、モータM1の永久磁石が減磁されてしまう可能性がある電流がコイルに流れる際のモータM1の回転数rから予め決定される。
【0188】
〈ステップST42〉
モータ回転数rが回転数閾値r2以上で、かつギアがトップ(5th)ギアであれば、トップギアを維持する。
【0189】
〈ステップST43〉
モータ回転数rが回転数閾値r2以上で、かつ、ギアがサード(3rd)ギアまたはフォース(4th)ギアであれば、ギアを1段上げる(ステップST44)。これにより、モータM1の回転数rが回転数閾値r2以下となるので、モータM1の過回転が起きにくくなる。
【0190】
一方、モータ回転数rが回転数閾値r2以上で、かつ、ギアがサード(3rd)ギアまたはフォース(4th)ギアでなければ(ステップST43でNo)、ギアはロー(Lo)ギアまたはセカンド(2nd)ギアであるので、十分にエンジンブレーキが得られ、それによりモータM1の回転数rの増加を抑制できるので、現在のギアを維持する。
【0191】
例えば、実施形態3による制御動作に従ってサード(3rd)ギアへシフトダウンした状態で車両が下り坂にさしかかった場合を例に挙げて説明すると、
図16に示すように、車速の増加に伴ってモータM1の回転数rが上昇し、回転数rが回転数閾値r2に達するたびに、サード(3rd)ギアからトップ(5th)ギアへ1段ずつシフトアップが行われる。これにより、サード(3rd)ギアおよびフォース(4th)ギアでは、モータM1の回転数rが回転数閾値r2以下となるので、モータM1の過回転が起きにくくなる。
【0192】
なお、実施形態4では、変速段がサード(3rd)ギア以上であれば、ギアを1段上げる(シフトアップする)動作について説明したが、この例には限られない。すなわち、シフトダウンを行っても十分にエンジンブレーキが得られず、かつ、過回転によるモータM1の永久磁石が減磁する可能性のある変速段を求めておき、その変速段以上ならシフトアップする動作を行うようにすればよい。同様に、変速機T1が無段変速機であれば、十分にエンジンブレーキが得られず、かつ、過回転によるモータM1の永久磁石が減磁する可能性のある変速比を求めておき、その変速比以上ならモータM1の回転数rが回転数閾値r2になるように変速比を制御すればよい。
【0193】
また、実施形態3、4の説明では、変速機制御装置12をエンジン制御装置11とは別体の構成要素として説明したが、この例には限られない。例えば、変速機制御装置12がエンジン制御装置11に内蔵され、エンジン制御装置11が変速機制御を行っても構わない。
【0194】
(その他の実施形態)
以上、一つまたは複数の態様に係るモータ制御装置および車両駆動装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれてもよい。