(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遷移金属は、銅、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、銀、および金よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
前記少なくとも一方の電極の前記触媒層において、前記第2触媒粒子の存在割合が、前記第1触媒粒子の存在割合よりも小さい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
本発明の実施形態に係る膜電極接合体は、電解質膜と、電解質膜を挟む一対の電極とを備え、一対の電極は、それぞれ、電解質膜側に配置された触媒層と、触媒層の電解質膜と反対側に配置されたガス拡散層とを備える。一対の電極の少なくとも一方の触媒層は、第1触媒粒子および第2触媒粒子を含む。第1触媒粒子は、白金粒子および白金合金粒子の少なくとも一方である。第2触媒粒子は、白金以外の遷移金属から選択された少なくとも1種で形成されたコア部と、コア部を覆うとともに、白金および白金合金の少なくとも一方で形成されたシェル部と、を備えたコアシェル粒子である。少なくとも一方の電極の触媒層において、第2触媒粒子の存在割合が、ガス拡散層側よりも電解質膜側で小さくなっている。なお、第2触媒粒子の存在割合が、ガス拡散層側よりも電解質膜側で小さくなっているとは、触媒層の電解質膜側で第2触媒粒子が存在しない場合を含む。
【0012】
本実施形態では、少なくとも一方の電極の触媒層の厚み方向において第2触媒粒子(コアシェル粒子)の存在割合を変えている。すなわち、当該触媒層において、第2触媒粒子の存在割合を、ガス拡散層側よりも電解質側で小さくしている。これにより、コア部から溶出した遷移金属等と電解質膜との接触が抑制され、遷移金属等と電解質膜との接触による電解質膜の劣化が抑制される。
【0013】
一方、触媒層のガス拡散層側では、第2触媒粒子(コアシェル粒子)の存在割合を大きくすることで、コスト低減を図ることができる。
【0014】
触媒層の電解質膜側とは、触媒層における電解質膜に接する所定の厚みtを有する領域aを指す。厚みtは、例えば、触媒層の厚みTの50%である。この場合、触媒層のガス拡散層側とは、触媒層における領域a以外の50%の領域を指す。
【0015】
触媒層は、例えば、電解質膜の表面に形成された層A1(電解質膜側)と、層A1の表面に形成された層A2(ガス拡散層側)とを備える。層A1は、第1触媒粒子を含み、かつ、第2触媒粒子を含むか、もしくは含まない。層A2は、第2触媒粒子を含み、かつ、第1触媒粒子を含むか、もしくは含まない。層A1に含まれる第2触媒粒子の存在割合は、層A2に含まれる第2触媒粒子の存在割合よりも小さい。
【0016】
上記の層A1および層A2で触媒層を構成する場合、層A1の第2触媒粒子の存在割合は、層A1に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する層A1に含まれる第2触媒粒子の質量割合MA1で表すことができる。層A2の第2触媒粒子の存在割合は、層A2に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する層A2に含まれる第2触媒粒子の質量割合MA2で表すことができる。
【0017】
上記の質量割合MA1と、上記の質量割合MA2とは、関係式:
0≦MA1/MA2<1
を満たす。MA1/MA2は、0〜0.8が好ましく、0〜0.3がより好ましい。
【0018】
コア部から溶出した遷移金属等による電解質膜の劣化抑制の観点から、上記の質量割合MA1は、50質量%以下であることが好ましい。一方、上記の質量割合MA2は、50質量%超であることが好ましい。
【0019】
コア部から溶出した遷移金属等と電解質膜との接触抑制の観点から、層A1の厚みは、0.5μm以上であることが好ましい。
【0020】
層A2の厚みT2に対する層A1の厚みT1の比:T1/T2は、例えば、0.5〜1.0である。
【0021】
触媒層の厚み(層A1および層A2の合計厚み)は、例えば、1〜100μmである。
【0022】
また、第1触媒粒子および第2触媒粒子を含む複数の層を、ガス拡散層側から電解質膜側に向かうにつれて、層中の第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する第2触媒粒子の質量割合が徐々に小さくなるように積み重ねて、触媒層を構成してもよい。
【0023】
触媒層の電解質膜側の第2触媒粒子の存在割合および触媒層のガス拡散層側の第2触媒粒子の存在割合は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、略してEDX)を用いて求めることができる。例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、略してSEM)を用いて触媒層の厚み方向に沿った断面を観察する。そして、その断面のSEM像を用いてEDXにより触媒層の電解質膜側の第2触媒粒子の存在割合および触媒層のガス拡散層側の第2触媒粒子の存在割合を求めることができる。
【0024】
少なくとも一方の電極の触媒層において、第1触媒粒子の存在割合がガス拡散層側よりも電解質膜側で大きくなっていることが好ましい。第2触媒粒子の存在割合が電解質膜側で小さくても、第1触媒粒子の存在割合を電解質膜側で大きくすることで、触媒層全体においてバランスよく反応性を高めることができる。
【0025】
少なくとも一方の電極の触媒層は、プロトン伝導性樹脂(高分子電解質)を含み、当該触媒層において、プロトン伝導性樹脂の存在割合が、ガス拡散層側よりも電解質膜側で大きくなっていることが好ましい。当該触媒層において、第2触媒粒子の存在割合が電解質膜側で小さくても、プロトン伝導性樹脂の存在割合を電解質膜側で大きくすることで、触媒層の反応性を高めることができる。
【0026】
コア部からの遷移金属等の溶出は、特にカソード側で起こりやすいため、第2触媒粒子の存在割合がガス拡散層側よりも電解質膜側で小さい触媒層は、カソード側の触媒層であることが好ましい。
【0027】
[第2実施形態]
また、本発明の他の実施形態に係る膜電極接合体は、電解質膜と、電解質膜を挟む一対の電極とを備え、一対の電極は、それぞれ、電解質膜側に配置された触媒層と、触媒層の電解質膜と反対側に配置されたガス拡散層とを備える。一対の電極の少なくとも一方の触媒層は、第1触媒粒子および第2触媒粒子を含む。第1触媒粒子は、白金粒子および白金合金粒子の少なくとも一方である。第2触媒粒子は、白金以外の遷移金属から選択された少なくとも1種で形成されたコア部と、コア部を覆うとともに、白金および白金合金の少なくとも一方で形成されたシェル部と、を備えたコアシェル粒子である。少なくとも一方の電極の触媒層において、第2触媒粒子の存在割合が、当該触媒層のガス出口側よりも当該触媒層のガス入口側で小さくなっている。なお、第2触媒粒子の存在割合が、当該触媒層のガス出口側よりも当該触媒層のガス入口側で小さくなっているとは、触媒層のガス入口側で第2触媒粒子が存在しない場合を含む。
【0028】
本実施形態では、少なくとも一方の電極の触媒層の面方向において第2触媒粒子(コアシェル粒子)の存在割合を変えている。すなわち、当該触媒層において、第2触媒粒子の存在割合を、ガス出口側よりも、発電が集中しやすく、コア部から遷移金属等が溶出しやすいガス入口側で小さくしている。これにより、触媒層中のコア部からの遷移金属等の溶出が抑制され、遷移金属等の溶出による電解質膜の劣化が抑制される。また、コア部からの遷移金属等の溶出によるコアシェル構造の崩壊(第2触媒粒子のサイズの減少)に伴う第2触媒粒子の触媒活性の低下も抑制される。
【0029】
一方、触媒層のガス出口側では、第2触媒粒子の存在割合を大きくすることで、コスト低減を図ることができる。
【0030】
触媒層のガス入口側とは、電解質膜における触媒層のガス入口側に対応する所定領域Pの上に形成された触媒層の一部を指し、触媒層のガス出口側とは、触媒層の残りの部分を指す。
【0031】
例えば、触媒層の電解質膜と対向する面の形状が四角形であり、その四角形の1組の対辺のうちの一方の辺L1にガス入口が設けられ、他方の辺L2にガス出口が設けられている。この場合、触媒層のガス入口側とは、四角形を、辺L1からの距離と辺L2からの距離とが等しい中間線で区切ることで形成される2つの領域のうち、ガス入口を含む領域b1である。触媒層のガス出口側とは、四角形を、辺L1からの距離と辺L2からの距離とが等しい中間線で区切ることで形成される2つの領域のうち、ガス出口を含む領域b2である。この場合、電解質膜の所定領域Pとは、触媒層の領域b1に対応する領域である。
【0032】
触媒層は、例えば、電解質膜の触媒層のガス入口側(例えば領域b1)に対応する所定領域Pの上に形成された層B1(ガス入口側)と、電解質膜の所定領域P以外の領域の上に形成された層B2(ガス出口側)とを備える。層B1は、第1触媒粒子を含み、かつ、第2触媒粒子を含むか、もしくは含まない。層B2は、第2触媒粒子を含み、かつ、第1触媒粒子を含むか、もしくは含まない。層B1に含まれる第2触媒粒子の存在割合は、層B2に含まれる第2触媒粒子の存在割合よりも小さい。
【0033】
上記の層B1および層B2で触媒層を構成する場合、触媒層のガス入口側(層B1)の第2触媒粒子の存在割合は、層B1に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する層B1に含まれる第2触媒粒子の質量割合MB1で表すことができる。触媒層のガス出口側(層B2)の第2触媒粒子の存在割合は、層B2に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する層B2に含まれる第2触媒粒子の質量割合MB2で表すことができる。
【0034】
上記の質量割合MB1と、上記の質量割合MB2は、関係式:
0≦MB1/MB2<1
を満たす。MB1/MB2は、0以上かつ0.8以下が好ましく、0以上かつ0.3以下がより好ましい。
【0035】
コア部から溶出した遷移金属等による電解質膜の劣化抑制の観点から、上記の質量割合MB1は、50質量%以下であることが好ましい。一方、上記の質量割合MB2は、50質量%超であることが好ましい。
【0036】
触媒層(層B1および層B2)の厚みは、例えば、1〜100μmである。
【0037】
触媒層のガス入口側の第2触媒粒子の存在割合および触媒層のガス出口側の第2触媒粒子の存在割合は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて求めることができる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて触媒層における電解質膜側またはガス拡散層側の主面を観察する。そして、その主面のSEM像を用いてEDXにより触媒層のガス入口側の第2触媒粒子の存在割合および触媒層のガス出口側の第2触媒粒子の存在割合を求めることができる。
【0038】
コア部からの遷移金属等の溶出は、特にカソード側で起こりやすいため、第2触媒粒子の存在割合がガス出口側よりもガス入口側で小さい触媒層は、カソード側の触媒層であることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態では、触媒層のガス入口側とは所定領域Pの上に形成された触媒層の一部を指し、触媒層のガス出口側とは触媒層の残りの部分を指すとしたが、これに限定されない。例えば、触媒層の辺L1(ガス入口側)から辺L2(ガス出口側)に向かって触媒層を3つの領域b1、b3、b2に分割し、領域b1をガス入口側、領域b2をガス出口側、領域b3をガス中央部としてもよい。この場合、第2触媒粒子の存在割合を、領域b2、領域b3、領域b1の順に小さくしてもよい。
【0040】
以下、第1実施形態および第2実施形態に共通する事項について説明する。
【0041】
(第1触媒粒子)
第1触媒粒子は、白金粒子および白金合金粒子の少なくとも一方である。第1触媒粒子を形成する白金合金は、主成分として白金を含む。ここでいう主成分とは、白金合金中の白金の含有量が、90質量%以上かつ100質量%未満であることをいう。白金合金に含まれる白金以外の金属元素としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、金、コバルト、パラジウム、銀、鉄、、銅、が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
第1触媒粒子の平均粒径は、例えば0.5〜10nmである。
【0043】
(第2触媒粒子)
第2触媒粒子のシェル部は、高い触媒活性を有する、白金および白金合金の少なくとも一方で形成されている。白金合金としては、第1触媒粒子で用いられる白金合金を用いればよい。
【0044】
第2触媒粒子のコア部は、白金以外の遷移金属から選択された少なくとも1種で形成されている。
【0045】
白金以外の遷移金属としては、例えば、パラジウム、銅、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、銀、金、が挙げられる。遷移金属の中でも、銅、鉄、ニッケル、コバルトは、コスト面で有利である反面、溶出しやすい。よって、遷移金属の溶出による電解質膜の劣化を抑制する効果が顕著に得られる。
【0046】
上記で例示した各種金属は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、合金として用いてもよい。
【0047】
第2触媒粒子におけるコア部とシェル部との質量比は、例えば、100:(50〜200)である。
【0048】
コア部の遷移金属等の溶出により第2触媒粒子の内部に空隙が形成されると、第2触媒粒子(シェル部)は凝集し易くなる。このため、第2触媒粒子が、第1触媒粒子よりも凝集し易い傾向がある。よって、少なくとも一方の電極の触媒層において、第2触媒粒子の存在割合が、第1触媒粒子の存在割合よりも小さいことが好ましい。この場合、第2触媒粒子の遷移金属の溶出量の増大が抑制され、第2触媒粒子の凝集が抑制される。特に、電解質膜側またはガス入口側での第2触媒粒子の凝集が抑制されることが好ましい。
【0049】
コスト面および第2触媒粒子の凝集抑制の観点から、触媒層中の第2触媒粒子の含有量は、第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計100質量部あたり30質量部以上かつ70質量部以下であることが好ましい。
【0050】
第2触媒粒子の平均粒径は、第1触媒粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。この場合、第2触媒粒子の凝集が抑制される。第2触媒粒子の触媒活性確保および凝集抑制の観点から、第2触媒粒子の平均粒径は、2nm以上かつ10nm以下であることが好ましい。
【0051】
(触媒層)
触媒層は、例えば、炭素材料と、触媒粒子と、プロトン伝導性樹脂と、を備える。炭素材料は、繊維状および/または粒子状である。触媒粒子には、上記の第1触媒粒子または第2触媒粒子が用いられる。
【0052】
繊維状炭素材料としては、例えば、気相成長法炭素繊維(Vapor Growth Carbon Fiber、略してVGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。繊維状炭素材料の長さは、特に限定されない。
【0053】
粒子状炭素材料としては特に限定されないが、導電性に優れる点で、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。その粒径(あるいは、複数の連結した一次粒子で構成されたストラクチャーの長さ)は特に限定されず、従来、燃料電池の触媒層に用いられるものを使用することができる。
【0054】
第1触媒粒子および第2触媒粒子の少なくとも一部は、炭素材料に担持されている。触媒粒子は、粒子状炭素材料に加えて、繊維状炭素材料に担持されていることが好ましい。触媒粒子がガスに接触し易くなって、ガスの酸化反応あるいは還元反応の効率が高まるためである。
【0055】
プロトン伝導性樹脂としては特に限定されないが、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、炭化水素系高分子等が例示される。なかでも、耐熱性と化学的安定性に優れる点で、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子等が好ましい。パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子としては、例えばNafion(登録商標)が挙げられる。
【0056】
触媒層において、繊維状炭素材料は、触媒粒子、粒子状炭素材料およびプロトン伝導性樹脂の合計100質量部に対して3質量部以上かつ15質量部以下が好ましく、5質量部以上かつ10質量部以下がより好ましい。繊維状炭素材料が所望の状態に配置され易くなって、ガス拡散性および電気化学反応の効率が高まり易いためである。同様の観点から、粒子状炭素材料および繊維状炭素材料を併せた炭素材料全体に占める繊維状炭素材料の割合は、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0057】
触媒層は、例えば、触媒粒子を含む触媒インクを電解質膜の表面に塗布し、乾燥させて形成することができる。なお、触媒インクは、触媒粒子以外に、炭素材料、プロトン伝導性樹脂、および分散媒を含む。分散媒には、例えば、水、エタノール、プロパノール等が用いられる。
【0058】
塗布法としては、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、および、ブレードコーター、ナイフコーター、グラビアコーターなどの各種コーターを利用するコーティング法等が挙げられる。
【0059】
ガス拡散層側よりも電解質膜側で第2触媒粒子の存在割合が小さい触媒層の形成方法の一例を以下に示す。
【0060】
まず、触媒インクA1および触媒インクA2を準備する。触媒インクA1は、第1触媒粒子を含み、かつ、第2触媒粒子を含むか、もしくは含まない。触媒インクA2は、第2触媒粒子を含み、かつ、第1触媒粒子を含むか、もしくは含まない。触媒インクA1中の第2触媒粒子の存在割合は、触媒インクA2中の第2触媒粒子の存在割合よりも小さい。
【0061】
触媒インクA1中の第2触媒粒子の存在割合は、触媒インクA1に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する触媒インクA1に含まれる第2触媒粒子の質量割合Ma1で表すことができる。触媒インクA2中の第2触媒粒子の存在割合は、触媒インクA2に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する触媒インクA2に含まれる第2触媒粒子の質量割合Ma2で表すことができる。
【0062】
上記の質量割合Ma1と、上記の質量割合Ma2とは、関係式:
0≦Ma1/Ma2<1
を満たす。Ma1/Ma2は、0以上かつ0.8以下が好ましく、0以上かつ0.3以下がより好ましい。
【0063】
次に、電解質膜の表面に触媒インクA1を塗布し、乾燥させて、層A1を形成する。その後、層A1の表面に触媒インクA2を塗布し、乾燥させて、層A2を形成する。
【0064】
また、ガス拡散層側よりも電解質膜側で第2触媒粒子の存在割合が小さい触媒層の形成方法の他の一例を以下に示す。
【0065】
まず、第1触媒粒子および第2触媒粒子を含み、第2触媒粒子の存在割合が異なる複数の触媒インクを準備する。第2触媒粒子の存在割合が小さい触媒インクから順に、電解質膜の表面に、塗布と乾燥を繰り返し行う。
【0066】
ガス出口側よりもガス入口側で第2触媒粒子の存在割合が小さい触媒層の形成方法の一例を以下に示す。
【0067】
まず、触媒インクB1および触媒インクB2を準備する。触媒インクB1は、第1触媒粒子を含み、かつ、第2触媒粒子を含むか、もしくは含まない。触媒インクB2は、第2触媒粒子を含み、かつ、第1触媒粒子を含むか、もしくは含まない。触媒インクB1中の第2触媒粒子の存在割合は、触媒インクB2中の第2触媒粒子の存在割合よりも小さい。
【0068】
触媒インクB1中の第2触媒粒子の存在割合は、触媒インクB1に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する触媒インクB1に含まれる第2触媒粒子の質量割合Mb1で表すことができる。触媒インク
B2中の第2触媒粒子の存在割合は、触媒インクB2に含まれる第1触媒粒子および第2触媒粒子の合計質量に対する触媒インクB2に含まれる第2触媒粒子の質量割合Mb2で表すことができる。
【0069】
上記の質量割合Mb1と、上記の質量割合Mb2は、関係式:
0≦Mb1/Mb2<1
を満たす。Mb1/Mb2は、0以上かつ0.8以下が好ましく、0以上かつ0.3以下がより好ましい。
【0070】
次に、触媒層のガス入口側に対応する電解質膜の所定領域P以外の領域の上にシート状のマスキング部材を配置した後、触媒インクB1を塗布し、乾燥させて、電解質膜の所定領域Pの上に層B1を形成する。上記マスキング部材を取り除き、層B1の上に別途シート状のマスキング部材を配置した後、電解質膜の所定領域P以外の領域の上に触媒インクB2を塗布し、乾燥させて、層B2を形成する。
【0071】
(電解質膜)
電解質膜として、高分子電解質膜が好ましく用いられる。高分子電解質膜の材料としては、プロトン伝導性樹脂として例示した高分子電解質が挙げられる。電解質膜の厚みは、例えば5〜30μmである。
【0072】
(ガス拡散層)
ガス拡散層は、基材層を有する構造でもよく、基材層を有さない構造でもよい。基材層を有する構造としては、例えば、基材層と、その触媒層側に設けられた微多孔層とを有する構造体が挙げられる。基材層には、カーボンクロスやカーボンペーパー等の導電性多孔質シートが用いられる。微多孔層には、フッ素樹脂等の撥水性樹脂と、導電性炭素材料と、プロトン伝導性樹脂(高分子電解質)との混合物等が用いられる。基材層を有さない構造は、例えば、フッ素樹脂等の撥水性樹脂、導電性炭素材料等を含む複合材料もしくは組成物の成形体であり得る。撥水性樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が挙げられる。導電性炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラックが挙げられる。導電性炭素材料は、粒子状でもよく、繊維状でもよい。
【0073】
[第3実施形態]
本発明の実施形態に係る燃料電池は、第1実施形態または第2実施形態の膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を備える。触媒層に含まれるコアシェル粒子のコア部を形成する白金以外の遷移金属等の溶出による電解質膜の劣化が抑制されるため、安定した発電性能が得られる。
【0074】
以下、本開示の実施形態に係る燃料電池の構造の一例を、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池に配置される単セルの構造を模式的に示す断面図である。通常、複数の単セルは積層されて、セルスタックとして燃料電池に配置される。
図1では、便宜上、1つの単セルを示している。
【0075】
単セル200は、電解質膜110と、第1触媒層120Aと、第2触媒層120Bと、第1ガス拡散層130Aと、第2ガス拡散層130Bと、第1セパレータ240Aと、第2セパレータ240Bと、を備える。ここで、第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bは、電解質膜110を挟むように配置される。第1ガス拡散層130Aおよび第2ガス拡散層130Bは、第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bをそれぞれ介して、電解質膜110を挟むように配置される。第1セパレータ240Aおよび第2セパレータ240Bは、第1ガス拡散層130Aおよび第2ガス拡散層130Bをそれぞれ介して、電解質膜110を挟むように配置される。第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bのうちの一方はアノードとして機能し、他方は、カソードとして機能する。電解質膜110は、第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bより一回り大きいため、電解質膜110の周縁部は、第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bからはみ出している。電解質膜110の周縁部は、一対のシール部材250A、250Bで挟持されている。
【0076】
第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bの少なくとも一方は、第1触媒粒子および第2触媒粒子を含み、第2触媒粒子の存在割合が、ガス拡散層側よりも電解質膜側で小さいか、もしくはガス出口側よりもガス入口側で小さい。第1触媒層120Aまたは第2触媒層120Bが、第1実施形態および第2実施形態のいずれの触媒層でもない場合、触媒層としては、公知の材質および公知の構成が採用できる。
【0077】
(セパレータ)
第1セパレータ240Aおよび第2セパレータ240Bは、気密性、電子伝導性および電気化学的安定性を有すればよく、その材質は特に限定されない。このような材質としては、炭素材料、金属材料などが好ましい。金属材料には、カーボンを被覆してもよい。例えば、金属板を所定形状に打ち抜き、表面処理を施すことにより、第1セパレータ240Aおよび第2セパレータ240Bが得られる。
【0078】
本実施形態においては、第1ガス拡散層130Aの第1セパレータ240Aと当接する側の面には、ガス流路260Aが形成されている。一方、第2ガス拡散層130Bの第2セパレータ240Bと当接する側の面には、ガス流路260Bが形成されている。そのため、第1セパレータ240Aおよび第2セパレータ240Bには、ガス流路が形成されなくてもよい。ガス流路の形状は特に限定されず、パラレル型、サーペンタイン型などに形成すればよい。第1ガス拡散層130Aまたは第2ガス拡散層130Bがガス流路260Aまたは260Bを有さない場合、対応するセパレータのガス拡散層に対向する面に、ガス流路を形成する。
【0079】
(シール部材)
シール部材250A、250Bは、弾性を有する材料であり、ガス流路260A、260Bから燃料および/または酸化剤がリークすることを防止している。シール部材250A、250Bは、例えば、第1触媒層120Aおよび第2触媒層120Bの周縁部をループ状に取り囲むような枠状の形状を有する。シール部材250A、250Bとしては、それぞれ、公知の材質および公知の構成が採用できる。