特許第6982793号(P6982793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982793
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   B32B27/00 101
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-182525(P2017-182525)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-55567(P2019-55567A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 真司
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−069868(JP,A)
【文献】 特開昭55−133466(JP,A)
【文献】 特開2011−201118(JP,A)
【文献】 特開昭64−085224(JP,A)
【文献】 特開2010−195015(JP,A)
【文献】 特開2012−006213(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/099556(WO,A1)
【文献】 特開2006−289670(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08G 77/00−77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に、ポリシロキサン成分を離型層全固形分に対し70重量%以上含む離型層が設けられており、かつ、該ポリシロキサン成分が下記式(1)で示される単位と下記式(2)で示される単位よりなり、両者のモル比が80:20〜30:70の範囲である離型フィルム。
【化1】
【化2】
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R2はエポキシ基を含有する有機官能基を表す。)
【請求項2】
離型層の厚みが0.01〜1.0μmである請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
離型層がノニオン系界面活性剤を含有する請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
離型層が一次粒子径1〜100nmのシリカ粒子を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
離型層を形成した側の表面粗さRaが1〜30nmであり、Rzが10〜800nmである請求項1〜4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
プラスチックフィルムがポリエステルフィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項7】
プラスチックフィルムの示差走査熱量測定(DSC)により求められる吸熱サブピーク温度(Tsm)が180℃以上である請求項1〜6のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項8】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に、離型層を設けた離型フィルムの製造方法であって、該離型層が下記式(3)で示されるトリアルコキシシランと下記式(4)で示されるトリアルコキシシランよりなるコーティング組成物を塗布、乾燥することで形成された離型層であることを特徴としており、
下記式(3)で示されるトリアルコキシシランと下記式(4)で示されるトリアルコキシシランのモル比が80:20〜30:70の範囲であり、離型層が、ポリシロキサン成分を離型層全固形分に対し70重量%以上含む、離型フィルムの製造方法
R1−Si(−OR3) (3)
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
R2−Si(−OR4) (4)
(式中、R2はエポキシ基を含有する有機官能基、R4は炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【請求項9】
コーティング組成物が、上記式(3)で示されるトリアルコキシシランと上記式(4)で示されるトリアルコキシシランを加水分解することにより水へ溶解させた水系コーティング組成物である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
離型層の厚みが0.01〜1.0μmである請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
プラスチックフィルムの示差走査熱量測定(DSC)により求められる吸熱サブピーク温度(Tsm)が180℃以上である請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂層成型時の濡れ性と樹脂層の剥離性に優れた離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、従来より粘着剤、接着剤、貼薬剤等よりなる粘着面を保護する目的、或は硬化性樹脂、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の硬化反応性、形成性を保護する目的等で用いられ、また、近年積層セラミックコンデンサー用のグリーンシート成型時のライナーとして特に需要が旺盛である。かかる離型フィルムとして、従来から、プラスチックフィルムの少なくとも片面にポリジメチルシロキサンの付加重合硬化物または縮重合硬化物よりなる皮膜を設けたものが用いられている。この硬化物は非粘着で離型効果に優れ、また熱安定性に優れるという利点を有するが、塗布面の表面自由エネルギーを著しく低下させるため樹脂コーティングの濡れ性に乏しく樹脂層成型時に濡れ性不良に起因する塗工欠陥を発生させやすい。一方、表面自由エネルギーを向上させるためにオレフィン等を離型層として用いると、樹脂層の剥離強度が増大し、樹脂層の破れや剥離不良が発生するという問題点がある。従って、樹脂層成形時の濡れ性と剥離性に優れた離型フィルムが求められている。上記課題に対して、特許文献1には架橋剤成分量の調整によりシリコーン離型層の濡れ性を向上させる技術が開示されているが、未だ濡れ性は不十分であり、更に濡れ性を上げようとすれば、架橋基の残留による重剥離化が発生する問題がある。また、特許文献2にはシリコーン離型層にポリビニルアルコール樹脂を混和し、剥離強度と濡れ性を調整する技術が開示されているが、シリコーン樹脂とポリビニルアルコールの相溶性が悪いため、微小領域ではシリコーン樹脂が偏析する箇所が発生し、局所的な濡れ性不良となるため、樹脂コーティング時の塗工欠陥を防止するに至らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−6213号公報
【特許文献2】特開2010−195015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、樹脂層成型時の濡れ性と剥離性に優れた離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、かかる課題を達成するために鋭意検討した結果、特定の単位よりなるポリシロキサン成分を含有する離型層を使用することにより、樹脂層成型時の濡れ性と剥離性に優れた離型フィルムが得られることを見出し、上記課題を解決するに至った。すなわち、上記課題はプラスチックフィルムの少なくとも片面に、ポリシロキサン成分を離型層全固形分に対し70重量%以上含む離型層が設けられており、かつ、該ポリシロキサン成分が下記式(1)で示される単位と下記式(2)で示される単位よりなり、両者のモル比が80:20〜30:70の範囲である離型フィルムにより達成される。
【化1】
【化2】
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R2はエポキシ基を含有する有機官能基を表す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂層成型時の濡れ性と剥離性に優れた離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
[プラスチックフィルム]
本発明におけるプラスチックフィルムは、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレントリアセチルセルロース、アクリル、ポリイミド等からなるシートあるいはフィルムを例示することができる。中でも、機械特性、耐熱性に優れ、またこれらの特性と価格とのバランスが良いという観点から、ポリエステルからなるフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるフィルムがより好ましい。また、かかるフィルムとしては、二軸延伸フィルムであることが、機械特性、耐熱性にさらに優れるため好ましい。プラスチックフィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合には、該ポリエステルフィルムは従来から知られている方法で製造できる。例えば、ポリエステルを乾燥後溶融し、ダイ(例えばTダイ、Iダイ等)から冷却ドラム上に押出し冷却して未延伸フィルムとし、該未延伸フィルムを二軸方向に延伸し、更に熱固定することによって製造することができる。フィルムの厚みは、特に制限がないが、12〜250μmが好ましい。ポリエステルフィルムとしては滑剤を含まないフィルムが表面平坦性の点で好ましいが、表面粗さ制御のため滑剤、例えば炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化チタン等の如き無機微粒子および/または触媒残渣の析出微粒子等を含有させたフィルムであっても良く、またドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの如き帯電防止剤、色調調整剤等の如き他の添加剤を含有させたフィルムであっても良い。
【0009】
[離型層]
本発明における離型層は、ポリシロキサンを離型層全固形分に対し70重量%以上含み、かつ、該ポリシロキサン成分が下記式(1)で示される単位と下記式(2)で示される単位よりなり、両者のモル比が80:20〜30:70の範囲である離型層である。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R2はエポキシ基を含有する有機官能基を表す。)
【0012】
ポリシロキサンの離型層固形分全体に対する重量は70重量%以上であり、75重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。離型層全固形分に対するポリシロキサン重量が下限未満であると離型性が発現せず、樹脂層剥離強度が重剥離となり許容されない。なお、ポリシロキサンの離型層固形分全体に対する重量の上限は、特に規定されないが、98重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、92重量%以下がさらに好ましい。
【0013】
式(1)において、R1がアルキル基以外の官能基の場合は離型性が発現せず、また炭素数が5より大きいと架橋反応性が著しく低下するため許容されない。また、式(2)において、R2はエポキシ基を含有する有機官能基であり、具体的には2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−グリシドキシプロピル基、3−グリシドキシプロピルメチル基等を挙げることができる。該エポキシ基含有有機官能基はプラスチックフィルム表面に対する離型層の密着性を向上し、また離型層の架橋密度を向上させるために用いる。そのような観点からR2のエポキシ基は未反応のままに限らず、反応した残基であってもよい。また、単位(1)と単位(2)とのモル比は80:20〜30:70であり、70:30〜40:60が好ましく、70:30〜50:50がより好ましい。モル比が上記範囲を外れると塗膜硬度と離型性のバランスが崩れるため、所望の濡れ性と剥離性を両立できない。なお、ポリシロキサン成分は、主たるポリシロキサン成分が前記の単位(1)および単位(2)であればよく、本発明の効果を阻害しない範囲において、他のポリシロキサン成分を含んでいてもよい。ポリシロキサン成分中の単位(1)および単位(2)の合計の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
【0014】
[離型層厚み]
本発明における離型層の厚みは0.01〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5μmであり、更に好ましくは0.01〜0.1μmである。離型層厚みが0.01μmを下回るとプラスチックフィルム表面が完全に被覆されず、離型性が失われる場合がある。また、離型層厚みが1.0μmを超えると離型フィルムを工程でロールtoロール搬送する際の曲げや引張に塗膜が耐えられず、塗膜の割れや脱落が発生し、また、塗膜硬化に必要な熱量が増大し、さらに、本発明における離型層を使用する場合必要な熱量が大きいため、生産性が著しく低下する場合がある。
【0015】
[界面活性剤]
本発明における離型層を設けるためのコーティング組成物には、プラスチックフィルムへの濡れを促進するために界面活性剤を添加することができる。かかる界面活性剤はアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性等が挙げられるが、好ましくはノニオン系界面活性剤である。なお、イオン性界面活性剤はシランの硬化反応を阻害する可能性があるため好ましくない。
【0016】
[シリカ粒子]
本発明における離型層には架橋反応促進および低分子シラン成分の揮散防止のためにシリカ粒子を添加するのが好ましい。離型層に添加するシリカ粒子は離型面の表面粗さへの影響を小さくするために小粒径のものが良く、一次粒子径は好ましくは1〜100nm、より好ましくは2〜80nm、さらに好ましくは3〜50nmである。一次粒子径が100nmより大きくなると、離型面の表面平滑性が悪化する場合があり、一次粒子径が1nmより小さくなると、表面積が増大し、シリカ粒子表面の反応活性が向上し、被着体との相互作用が増大するため重剥離化する場合がある。
【0017】
シリカ粒子の量は、離型層全重量に対して、1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%であることがより好ましい。シリカ粒子の量が離型層全重量に対して1重量%未満であると、架橋反応が進まない場合があり、他方20重量%を超えると離型層最表面においてシリカ粒子の占有面積が増大し重剥離化する場合があるため好ましくない。
【0018】
[その他の添加剤]
更に、本発明における離型層には、本発明の効果を消失させない範囲において、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、有機フィラー、潤滑剤、ブロッキング防止剤等の他の添加剤を混合することができる。
【0019】
[離型フィルムの製造方法]
本発明の離型フィルムは特に限定されないが、例えば以下の様態で製造することができる。すなわち、下記式(3)で示されるトリアルコキシシランと下記式(4)で示されるトリアルコキシシランを加水分解することにより水へ溶解させた水性コーティング組成物を、プラスチックフィルムの少なくとも片面に塗布し、次いで乾燥させることで、離型フィルムを製造できる。塗布は、通常の塗布工程、すなわちポリエステルフィルムに、該フィルムの製造工程と切離して塗布する工程で行ってもよい。しかし、この工程では、芥、塵埃などを巻込み易いから、クリーンな雰囲気での塗工が望ましい。かかる観点よりポリエステルフィルム製造工程での塗工が好ましい。特に、この工程中で結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに水性コーティング組成物として塗布することが好ましい。
R1−Si(−OR3) (3)
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
R2−Si(−OR4) (4)
(式中、R2はエポキシ基を含有する有機官能基、R4は炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
【0020】
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、ポリエステルを熱溶融してそのままフィルム状となした未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向(長手方向)または横方向(幅方向)の何れか一方に配向せしめた一軸延伸フィルム、さらには縦方向及び横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたフィルム(最終的に縦方向または横方向に再延伸せしめて配向結晶可を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0021】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えば、キスコート法、バースコート法、ダイコート法、リバースコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤバーコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独又は組み合わせて適用するとよい。
【0022】
水性コーティング組成物を塗布された、結晶配向完了する前のポリエステルフィルムは、乾燥され、延伸、熱固定等の工程に導かれる。例えば水性コーティング組成物を塗布した縦一軸延伸ポリエステルフィルムは、ステンターに導かれて横延伸及び熱固定される。この間、水性コーティング組成物は乾燥され熱架橋される。
【0023】
ポリエステルフィルムの配向結晶化条件、例えば延伸等の条件は、従来から当業界に蓄積された条件で行うことができるが、熱固定温度は、フィルムの融解サブピーク温度(Tsm)が好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上になるように調整することが好ましい。ここで融解サブピーク温度(Tsm)とは、示差走査熱量計測定(DSC)によるポリエステルの結晶融解前に現れる微小な吸熱ピークであり、この融解サブピーク(Tsm)はフィルムの熱固定温度に相当する温度に微小ピークとして観測され、熱固定処理で形成された結晶構造のうち不完全な部分(擬結晶)が融解するために生じるものである。Tsmが180℃を下回ると、本発明における離型層を硬化させるために必要な熱量が大きいため、塗膜硬化に充分な熱量が供給されず、架橋不足となり、所望の離型性が発現しないことがある。
【0024】
[表面粗さ]
本発明の離型フィルムの離型層を形成した側の表面粗さは、Raが1〜30nmであることが好ましく、1〜20nmであることがより好ましく、1〜15nmであることがさらに好ましい。また、Rzが10〜800nmであることが好ましく、10〜600nmであることがより好ましく、10〜500nmであることがさらに好ましい。表面粗さが該範囲にあることで、離型フィルムのハンドリング性が良好となり、かつ、離型面上に形成する樹脂層の平滑性を満足させることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明する。
【0026】
[実施例1〜8及び比較例1〜5]
平均粒子径が0.7μmの炭酸カルシウム粒子を0.1重量%を含むポリエチレンテレフタレート([η]=0.64dl/g、Tg=78℃)を、20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出して未延伸フィルムを得、次に機械軸方向に3.6倍延伸したのち、一軸延伸フィルムの片面に表1に記載の水性コーティング組成物をロールコーターで塗布した。次いで115℃で乾燥し、145℃で横方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理し、厚み30μmの離型フィルムを得た。
【0027】
[比較例6]
水性コーティング組成物を、水性付加重合型ポリジメチルシロキサン(信越化学製、KM−3951)6重量部と白金触媒0.06重量部を水93.9重量部で希釈したコーティング組成物とした以外は実施例1と同条件で離型フィルムを得た。
【0028】
なお、物性の評価は以下の方法により実施した。
1)離型層厚み
離型フィルムサンプルを三角形の小片に切り出した後、コーティングにより、厚み2nmのPt(白金)層を離型層表面に形成した。得られたサンプルを多軸包埋カプセルに固定して、エポキシ樹脂を用いて包埋処理し、ミクロトームULTRACUT−Sを用いて、フィルムの面方向に垂直な方向にスライスして、厚さ50nmの超薄サンプルを得た。次いで、得られた超薄サンプルをグリッドに載台して、2%オスミウム酸により、60℃、2時間の条件で蒸気染色した。蒸気染色後の超薄サンプルを用いて、透過電子顕微鏡LEM−2000により、加速電圧100kvの条件でフィルム断面を観測し、離型層の厚みを測定した。測定は、任意の10点について実施し、それらの平均値を離型層の厚み(単位:μm)とした。
【0029】
2)表面粗さ(Ra、Rz)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)および十点平均粗さ(Rz)を求めた。
【0030】
3)融解サブピーク温度(Tsm)
フィルム約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差走査熱量計(TA Instruments社製、DSCQ100)に装着し、昇温速度20℃/分でDSC曲線を描かせ、融解による明瞭な吸熱ピークより低温側の吸熱ピークを融解サブピーク温度とした。また、融解サブピークが結晶融解ピークに近接しピークとして明瞭でない場合には、DSC曲線の2次微分曲線が0となる点をサブピーク温度とした。
【0031】
4)離型層均一性
作成した離型フィルム表面を目視で観察し、離型層の均一性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
○:離型層表面1mに長径0.5mm以上の塗布欠陥が観察されない。
△:離型層表面1mに長径1mm以上の塗布欠陥が観察されない。
×:離型層表面1mに長径1mm以上の塗布欠陥が1つ以上観察される。
【0032】
5)樹脂層塗工時欠陥数
作成した離型フィルムの離型層を形成した面上に、ポリビニルブチラール(積水化学製、BM−2)をトルエンーエタノール1:1(w/w)混合液に溶解させた溶液を、アプリケータを用いて樹脂層の厚みが0.5μmとなるように塗布、乾燥させ、樹脂層を形成した。形成した樹脂層のハジキ欠陥を顕微鏡で1cm□検査し、欠点数を計測した。該欠点数が6個/1cm□以上であるとMLCCチップを製造した際に電気特性不良率が高くなる。
【0033】
6)樹脂層剥離強度
作成した離型フィルムの離型層を形成した面上に、ポリビニルブチラール(積水化学製、BM−2)をトルエンーエタノール1:1(w/w)混合液に溶解させた溶液を、アプリケータを用いて樹脂層の厚みが3.0μmとなるように樹脂層を形成した。形成した樹脂層を剥離角度90度、剥離速度300mm/分、サンプル幅25mmで剥離し、その際の剥離抵抗を測定した。剥離強度が7.0g/25mmを超えると樹脂層の伸びや破断が発生するため、実用上問題がある。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかの如く、本発明の離型フィルムは、樹脂層塗工時の濡れ性と剥離性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の離型フィルムは、濡れ性と剥離性に優れるため、各種の用途に使用できるため、産業上の利用価値は極めて高い。