(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族ヒドロキシカルボン酸類、芳香族ジオール類から選ばれる少なくとも1種類以上の粉末原料を、原料投入口のバルブを介して投入ラインから容器内に投入する際に、前記粉末原料の投入後に、投入口のバルブを閉止した状態で前記バルブの底部と投入ラインに液体として無水酢酸を吹き付けて洗浄を行う工程を含む、粉末原料の投入方法。
前記粉末原料と、前記吹き付けに用いた液体と、前記粉末原料をスラリー状に調整するための液体原料とを、容器内でスラリー状態に調整した後、更に別の容器に投入する工程を含む、請求項4に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明は、芳香族ヒドロキシカルボン酸類、芳香族ジオール類などの粉末状の原料を用いるポリエステル樹脂の製造に使用可能であり、そのようなポリエステル樹脂としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸類を必須成分とする液晶性ポリエステル樹脂が好ましい。液晶性ポリエステル樹脂としては、p−アミノ安息香酸、アミノフェノールなどのアミノ基含有モノマーを用いる液晶性ポリエステルアミド樹脂も含まれ、本発明は液晶性ポリエステルアミド樹脂の製造にも使用可能である。
【0014】
液晶性ポリエステル樹脂を構成する構造単位としては、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位などから選ばれた構造単位が好ましい。
【0015】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位が挙げられ、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。芳香族または脂肪族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどから生成した構造単位が挙げられ、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンが好ましい。芳香族または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0016】
液晶性ポリエステル樹脂の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらの中でも好ましい組み合わせとして、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる組み合わせや、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる組み合わせが例示される。
【0017】
液晶性ポリエステル樹脂の、とくに異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル樹脂の好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0019】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
【0020】
以下、この液晶性ポリエステル樹脂を例に挙げて説明する。
上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の共重合量は任意である。しかし、液晶性ポリエステル樹脂の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であることが好ましい。より好ましくは68〜78モル%である。構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であることが好ましい。より好ましくは55〜78モル%であり、最も好ましくは58〜73モル%である。構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%であることが好ましい。より好ましくは55〜90モル%であり、最も好ましくは60〜85モル%である。
【0021】
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計とは実質的に等モルである。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとはならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。
中でも、構造単位(I)が、全5構造単位の合計の、30モル%以上である液晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。30モル%以上であると、液晶性ポリエステル樹脂が目標とする耐熱性を得られるため好ましい。
【0022】
上記好ましく用いられる液晶性ポリエステル樹脂は、上記構造単位(I)〜(V)を構成する成分以外に、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸化合物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸化合物、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸化合物、クロロハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール化合物、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール化合物および脂環式ジオール化合物、ならびにm−ヒドロキシ安息香酸、ポリエチレンテレフタレートなどを、液晶性や特性を損なわない程度の範囲で有していてもよい。
【0023】
液晶性ポリエステル樹脂の原料としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物、ジオール化合物、ジカルボン酸化合物、アミノ基を有するモノマーが挙げられる。
【0024】
中でも、p−ヒドロキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、エチレングリコールなどのジオール化合物、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0025】
ハイドロキノン、エチレングリコール、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸およびイソフタル酸以外に用いるモノマーとしては、以下のモノマーが挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物としては、例えば6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が挙げられ、芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などが、それぞれ挙げられる。芳香族ジオール化合物としては、例えばレゾルシノール、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどが挙げられる。アミノ基を有するモノマーとしては、p−アミノ安息香酸、p−アミノフェノールなどが挙げられる。
【0026】
例えば、上記液晶性ポリエステル樹脂の製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。なお下記の製造方法は、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸からなる液晶性ポリエステル樹脂の合成を例にとり説明したものであるが、共重合組成としてはこれらに限定されるものではなく、それぞれをポリエチレンテレフタレート、その他のヒドロキシカルボン酸化合物、芳香族ジオール化合物または芳香族ジカルボン酸化合物に置き換え、下記の方法に準じて製造することもできる。
【0027】
本発明の実施形態において、液晶性ポリエステル樹脂における各構造単位の含有量は、以下の処理によって算出することができる。すなわち、液晶性ポリエステルをNMR(核磁気共鳴)試験管に量りとり、液晶性ポリエステルが可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d2混合溶媒)に溶解して、1H−NMRスペクトル測定を行う。各構造単位の含有量は、各構造単位由来のピーク面積比から算出することができる。
【0028】
以下、本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法について詳述する。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造においては、まず、所定量のモノマー混合物と無水酢酸をスラリー状に混合し、反応容器を窒素雰囲気下で攪拌しながら加熱し、還流しながら水酸基をアセチル化させる。次いでオリゴマー化反応では、留出管へと切り替えて酢酸を留出させながら所定の温度まで昇温を行い、規定量まで酢酸を留出させる。更に反応容器を減圧しながら脱酢酸重縮合反応を行い、規定の攪拌トルクに到達すれば、脱酢酸重縮合反応を終了させる。脱酢酸重縮合反応が終了すれば、攪拌を停止し、反応容器を窒素などの不活性ガスで加圧し、反応容器底部から口金を経由してストランド状にし、カッティング装置にてペレット化する。
【0029】
本発明の液晶性樹脂の製造方法は、芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物、ジオール化合物から選ばれる化合物を原料モノマーとして用い、これらとその他のモノマーを加え、無水酢酸との反応によってモノマーの水酸基をアセチル化し、その後、系を昇温、減圧することで、脱酢酸重縮合もしくは条件によっては脱フェノール重縮合によって製造するものであり、アセチル化反応を行う前に、原料モノマーを液体と混合してスラリー状に調整することが好ましい。
【0030】
なお、スラリー化を行う工程とアセチル化反応を行う工程は同一の反応容器を用いてもよいが、スラリー化とアセチル化反応を異なる反応容器で行ってもよく、さらにアセチル化反応と重縮合反応は同一の反応容器で連続して行ってもよいが、アセチル化反応と重縮合反応を異なる反応容器で行ってもよい。好ましくは、粉末原料と無水酢酸を、スラリー工程を行う容器で調整し、アセチル化反応と重縮合反応を異なる反応容器で行う方法である。
【0031】
上記のスラリーを調整する際、粉末状の原料モノマーと液体を混合する方法としては特に制限はなく、均一にスラリー化し得る方法であればよく、スラリー化に用いる液体としては無水酢酸が最もよく用いられる。無水酢酸でスラリーを調整しておけば、そのままアセチル化反応を行うことが可能であり、効率的で好ましい。
【0032】
本発明において最も重要な点は、上記方法にて粉末状の原料をスラリー化する工程において、液晶性ポリエステル樹脂の製造に用いる粉末原料を、原料投入口のバルブを介して投入ラインから投入する際に、前記粉末原料の投入後に、投入口のバルブを閉止した状態で前記バルブの底部と投入ラインに液体
として無水酢酸を吹き付けて洗浄を行う点にある。以下、本発明の液晶性ポリエステル樹脂の粉末原料の投入方法について詳述する。
【0033】
初めに、規定量の粉末原料を容器に計量し、前記容器の下部に取り付けられた投入口バルブと投入ラインを介して、スラリー状態に調整するための容器内に前記粉末原料を投入し、投入口のバルブを閉止した状態で、前記バルブの底部と投入ラインに液体を吹き付けて洗浄を行う。吹き付けに用いる設備としては特に制限はなく、前記バルブの底部と投入ラインを洗浄しうるものであれば問題ないが、具体的には、投入口バルブの下部に位置する配管周囲から流体の圧力によって螺旋状に噴射できる構造のものや、噴射ノズルを配管周囲に複数取り付けて噴射する構造のものが好ましく、より好ましくは、噴射ノズルを配管周囲から複数取り付けて噴射する構造のものであれば、噴射ノズルの構造や向きを容易に変更できる。噴射ノズルの種類は、液体をムラなく広範囲に噴射できるものであれば問題ないが、扇形、円錐型、直進型から選択することが好ましく、円錐型がより好ましい。噴射ノズルは配管周囲の複数箇所に等間隔に取り付けることが好ましく、取り付ける個数には特に制限はないが、2箇所以上に取り付けることが好ましく、より好ましくは3〜6箇所である。3〜6箇所取り付けることで、ノズル設置による設備コストが抑えられ、更にバルブ底部と投入ライン全体を均一に洗浄できる。
【0034】
また、吹き付けに用いる液体に
は、エチレングリコール、酢酸、無水酢酸が好ましく用いられ
るが、本発明では無水酢酸
を用いる。無水酢酸を用いることで、アセチル化反応に必要な無水酢酸分から使用することができ、アセチル化反応や重縮合反応に影響を与えることがなく、コスト的にも生産性的にも有利である。吹き付けに用いた液体は、前記のスラリー状態に調整するために混合しても構わない。吹き付けに無水酢酸を用いる場合は、前記スラリー状態に調整するための液体にも無水酢酸を用い、前記粉末原料を投入する前に、スラリー状態に調整する容器に規定量を仕込んでおくことが好ましい。さらには、前記吹き付けに用いる無水酢酸の重量は、スラリー状に調整するために用いる無水酢酸の全重量の内から分割した重量とし、なおかつ下記式で表される前記粉末原料投入重量の1〜50%に相当する割合であることが好ましく、3〜40%が更に好ましく、5〜30%が最も好ましい。
【0035】
無水酢酸吹き付け割合(%)=液体原料吹き付け量(kg)/粉末原料投入量(kg)×100% (式1)
【0036】
吹き付けに用いる無水酢酸の重量が、粉末原料投入重量の50%を超えると、スラリー状態に調整するために用いる無水酢酸の量が不足し、粉末原料をスラリー混合槽で混合する際に用いる攪拌機に過剰な運転負荷がかかるため好ましくない。また、吹き付けに用いる無水酢酸の重量が粉末原料投入重量の1%を下回ると、吹き付け不足となって投入口バルブの底部と投入ラインに付着した粉体を完全に洗い落とすことができず、繰り返し付着した粉末原料によって投入口バルブの底部と投入ラインが徐々に閉塞し、投入不良を引き起こすため、好ましくない。
【0037】
また、吹き付けを行う際には、投入口バルブを閉止してから行うことが必要であり、投入口バルブを開けたままの状態で吹きつけを行うと、粉末原料容器の内部まで無水酢酸が飛散し、粉末原料容器内部の粉体が無水酢酸で湿った状態となって、粉末原料の落下不良を引き起こしてしまうため好ましくない。さらに、吹きつけを開始するタイミングは、粉末原料の投入を行った後、投入口バルブを閉止してから5時間以内であることが好ましく、前記投入口バルブを閉止してから3時間以内がより好ましく、前記投入口バルブを閉止してから30分以内が最も好ましい。前記投入口バルブを閉止してから5時間を超えると、投入口バルブの底部および投入ラインに付着している粉末原料に、スラリー容器内で混合中の無水酢酸が揮発して付着し、粘性をもつ固形物を形成したり、アセチル化反応によって高結晶化物を形成してしまい、無水酢酸を吹き付けても除去できなくなるため好ましくない。
【0038】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の基本的な製造方法は特に制限はないが、本発明の粉末原料モノマー投入口バルブの底部及び投入ラインへの液体吹き付けによる洗浄の工程を経た後、モノマーをスラリー化する工程と、液晶性樹脂原料中のフェノール性水酸基、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオールのフェノール性水酸基を無水酢酸によりアセチル化反応を行う工程と、その後残りの液晶性樹脂原料(芳香族ジカルボン酸やその他のモノマー)と重縮合反応(好ましくは液晶性樹脂が溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合)を行う工程を含む製造方法が好ましい。
【0039】
無水酢酸の使用量は、用いる液晶性樹脂原料中のフェノール性水酸基の合計の1.00〜1.20モル当量であることが好ましく、1.03〜1.16モル当量がより好ましい。
【0040】
アセチル化反応は125℃以上150℃以下の温度で還流しながら、芳香族ジオールのモノアセチル化物の残存量が特定範囲となるまで反応を行うことが好ましい。アセチル化反応の装置としては例えば還留管や精留塔を備えた反応容器を用いることができる。アセチル化の反応時間としては大まかには1〜5時間程度であるが、芳香族ジオールのモノアセチル化物の残存量が特定範囲となるまでの時間は、用いる液晶性樹脂原料や、反応温度によっても異なる。好ましくは、1.0〜2.5時間であり、反応温度が高い程短時間でよく、無水酢酸のフェノール性水酸基末端に対するモル比が大きい程短時間でよい。
【0041】
例えば、攪拌翼、精留塔、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中で、所定量のハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸、イソフタル酸からなるモノマー混合物と無水酢酸(液晶性樹脂原料中の水酸基に対して1.00〜1.20モル当量)を20〜40℃で0.1〜3時間攪拌混合することによりスラリーとし、100℃以上130℃未満に温調する。別容器でp−ヒドロキシ安息香酸と無水酢酸を20〜40℃で0.1〜3時間攪拌混合することによりスラリーとし、前記100℃以上130℃未満に温調したハイドロキノンを含む無水酢酸スラリーに混合し、140℃まで20分で昇温し、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し、還留しながら140〜150℃で1.0〜2.5時間反応して水酸基をアセチル化させた後、留出管へと切り替えてアセチル化工程を終了し、酢酸を留出させながら液晶性樹脂の融点+5〜40℃まで2.5〜6.5時間で昇温し、0.2〜1.5時間程度加熱撹拌した後、次いで665Pa以下まで0.5〜2時間で減圧し、0.1〜3時間程度重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。
【0042】
なお、スラリー化を行う工程とアセチル化反応を行う工程は同一の反応容器を用いても良いが、スラリー化とアセチル化を異なる反応容器で行ってもよく、さらにアセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。好ましくはハイドロキノンを含みp−ヒドロキシ安息香酸を含まない無水酢酸スラリーをスラリー工程を行う容器で調整し、アセチル化を行う容器に移行した後、スラリー工程を行う容器でp−ヒドロキシ安息香酸を含みハイドロキノンを含まない無水酢酸スラリーを再度調整し、アセチル化を行う容器に移行する場合であり、より好ましくは、これら2種のスラリーを調整する容器が別の場合である。
【0043】
重縮合反応の条件としては、減圧度を1333Pa(10torr)以下とするのが好ましく、最終重合温度は、融点+20℃程度が好ましく、370℃以下であることが好ましい。攪拌速度は50rpm以下が好ましい。
【0044】
減圧度が667Pa(5torr)以下になった後、所定トルクが検出されて重合を終了するまでの重合時間は0.5〜1時間がより好ましい。
【0045】
重合終了後、得られたポリマーを反応容器から取り出すには、ポリマーが溶融する温度で反応容器内を、例えばおよそ0.02〜0.5MPaに加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出し、ストランドを冷却水中で冷却して、ペレット状に切断する方法によって樹脂ペレットを得ることができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ好ましい。
【0046】
本発明の液晶性樹脂を製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、本発明の液晶性樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性樹脂の融点−5℃〜融点−50℃の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
【0047】
液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0048】
本発明の液晶性樹脂は、数平均分子量は3,000〜25,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜20,000、より好ましくは8,000〜18,000の範囲である。
【0049】
なお、この数平均分子量は液晶性樹脂が可溶な溶媒を使用してGPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定することが可能である。
【0050】
本発明においては、液晶性樹脂の機械強度その他の特性を付与するために、さらに充填材を配合することが可能である。充填材は特に限定されるものでないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、バサルト繊維、酸化チタンウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。本発明に使用される上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0051】
これら充填材のなかで特にガラス繊維が入手性、機械的強度のバランスの点から好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、これらのうち2種以上を併用して使用することもできる。本発明で使用されるガラス繊維としては、弱アルカリ性のものが機械的強度の点で優れており、好ましく使用できる。また、ガラス繊維はエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。
【0052】
なお、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0053】
充填材の配合量は、液晶性ポリエステル100重量部に対し、通常30〜200重量部であり、好ましくは40〜150重量部である。
【0054】
さらに、本発明の液晶性樹脂には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ハイドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料および顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤、熱可塑性樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0055】
これらの添加剤を配合する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜350℃、より好ましくは250〜320℃の温度で溶融混練して液晶性樹脂組成物とすることができる。その際には、1)液晶性樹脂、任意成分である充填材およびその他の添加剤との一括混練法、2)まず液晶性ポリエステルにその他の添加剤を高濃度に含む液晶性樹脂組成物(マスターペレット)を作成し、次いで規定の濃度になるようにその他の熱可塑性樹脂、充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、3)液晶性樹脂とその他の添加剤の一部を一度混練し、ついで残りの充填材およびその他の添加剤を添加する分割添加法など、どの方法を用いてもかまわない。
【0056】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂およびそれを含む液晶性ポリエステル樹脂組成物は、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムなどに加工することが可能である。なかでも射出成形により得られる電気・電子部品用途に適している。
【0057】
このようにして得られた液晶性ポリエステル樹脂およびそれを含む液晶性ポリエステル樹脂組成物は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレイ部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、こと務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、セパレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベーン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などに用いることができる。フィルムとして用いる場合は磁気記録媒体用フィルム、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルム、シート用途としては自動車内部天井、ドアトリム、インストルメントパネルのパッド材、バンパーやサイドフレームの緩衝材、ボンネット裏等の吸音パット、座席用材、ピラー、燃料タンク、ブレーキホース、ウインドウォッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブおよびそれらの周辺部品に有用である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下によって制限されるものではない。また、実施例1〜12および比較例1〜4の粉末原料投入方法による液晶性ポリエステル樹脂の製造をそれぞれ最大30回(30バッチ)行い、以下について評価した。なお、実施例1〜12および比較例1〜4の結果については、まとめて表1に示す。
【0059】
(1)液体原料吹き付け割合(%):
液体原料吹き付け割合(%)=液体原料吹き付け量(kg)/粉末原料第1ホッパー1への粉末原料投入量(kg)×100
【0060】
(2)粉末原料投入口のバルブおよび投入ラインの詰まり傾向バッチ数(バッチ):
試験1バッチ目の粉末原料第1ホッパー1からスラリー混合槽への投入時間を基準に、その所要時間が3倍を超過した時点のバッチ数を測定した。
【0061】
(3)粉末原料投入口のバルブおよび投入ラインの詰まり発生バッチ数(バッチ):
粉末原料第1ホッパー1の投入口のバルブおよび投入ラインが閉塞し、粉末原料が落下しなくなった時点のバッチ数を測定した。
【0062】
(実施例1)
図1に装置の概略構成を示すように、攪拌機9を備えた内容積3.0m
3のスラリー混合槽10に、無水酢酸718質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に粉末原料としてp−ヒドロキシ安息香酸(表1においてはHBAと略記)562質量部を計量し、スラリー混合槽10内を30rpmで混合しながら、粉末原料の投入口バルブ3を開として投入ライン4からスラリー混合槽10に粉末原料の全量を仕込み、粉末原料第1ホッパー1が空になってから粉末原料の投入口バルブ3を閉止した。次に、投入口バルブ3を閉止してから5分後に液体吹き付けバルブ7を開として、液体吹き付けライン8より、粉末原料投入口バルブ3の底部と投入ライン4に、前記粉末原料の仕込み量に対して13.0%の無水酢酸を吹き付けた。また、その他の粉末原料として、4,4−ジヒドロキシビフェニル(表1においてはDHBと略記)227質量部、テレフタル酸(表1においてはTPAと略記)188質量部、イソフタル酸(表1においてはIPAと略記)101質量部、ハイドロキノン(表1においてはHQと略記)61質量部(過剰添加分として3質量部を含む)をそれぞれ計量し、粉末原料第2ホッパー2から投入口バルブ5と投入ライン6を経由してスラリー混合槽10に全量を仕込んだ。なお、粉末原料第2ホッパー2からスラリー混合槽10への粉末原料の投入は、粉末原料第1ホッパー1の投入前に実施した。次にスラリー混合槽10内の温度を25℃〜35℃に保ちながら30分間攪拌を続けた。
【0063】
次に、スラリー混合槽10からスラリー仕込みライン(図示略)によって連結された、攪拌機(図示略)を備えた内容積3.0m
3のアセチル化反応槽(図示略)に、前記スラリー混合槽10内のスラリーをスラリー仕込みライン(図示略)経由で全量を仕込んだ後、スラリー混合槽10から63質量部の無水酢酸でスラリー仕込みラインの洗浄を行った。次に、145℃で1.5時間アセチル化反応させ、その後副生した酢酸を留出しながら4時間かけて270℃まで反応を続け、オリゴマー反応液を得た。
【0064】
次に、アセチル化反応槽(図示略)から移液ライン(図示略)によって連結された、攪拌機(図示略)を備えた内容積2.5m
3の重縮合反応槽(図示略)に、前記オリゴマー反応液を移液ライン(図示略)経由で重縮合反応槽(図示略)に移液した。
【0065】
次に、重縮合反応槽(図示略)の反応液を2時間かけて335℃まで昇温し、減圧装置(図示略)を用いて減圧を開始し、2時間かけて133Pa(1torr)まで減圧を行い、規定の攪拌トルクに到達したところで重縮合反応を終了させた。その後重縮合反応槽(図示略)を0.25MPaに窒素で加圧後、口金(図示略)を経由してポリマーをストランド状に吐出し、冷却水にて固化させながらカッター(図示略)にてペレット化した。
【0066】
上記の方法で、繰り返し重合を行ったところ、粉末原料ホッパー1は25バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0067】
(実施例2)
スラリー混合槽10に無水酢酸762質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に、粉末原料として4,4−ジヒドロキシビフェニルを計量し、残りの粉末原料を粉末原料第2ホッパー2に計量した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は29バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0068】
(実施例3)
スラリー混合槽10に無水酢酸783質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に、粉末原料としてハイドロキノンを計量し、残りの粉末原料を粉末原料第2ホッパー2に計量した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は20バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0069】
(実施例4)
スラリー混合槽10に無水酢酸689質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に、粉末原料としてp−ヒドロキシ安息香酸と4,4−ジヒドロキシビフェニルを計量し、残りの粉末原料を粉末原料第2ホッパー2に計量した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は27バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0070】
(実施例5)
スラリー混合槽10に無水酢酸754質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に、粉末原料として4,4−ジヒドロキシビフェニルとハイドロキノンを計量し、残りの粉末原料を粉末原料第2ホッパー2に計量した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は24バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0071】
(実施例6)
スラリー混合槽10に無水酢酸680質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に、粉末原料としてp−ヒドロキシ安息香酸とテレフタル酸とイソフタル酸を計量し、残りの粉末原料を粉末原料第2ホッパー2に計量した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料ホッパー1は25バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0072】
(実施例7)
スラリー混合槽10に無水酢酸724質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に、粉末原料として4,4−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸とイソフタル酸を計量し、残りの粉末原料を粉末原料第2ホッパー2に計量した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は30バッチ目まで詰まり傾向バッチは発生せず、30バッチの連続運転は可能であった。
【0073】
(実施例8)
スラリー混合槽10に無水酢酸527質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に投入した粉末原料の仕込み量に対して47.0%の無水酢酸を吹き付けた以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料の投入完了後から無水酢酸の吹き付けが完了するまでの間に、スラリー混合槽10の攪拌機9の電流値が上昇傾向となった。粉末原料第1ホッパー1は29バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0074】
(実施例9)
スラリー混合槽10に無水酢酸785質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に投入した粉末原料の仕込み量に対して1.0%の無水酢酸を吹き付けた以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は21バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0075】
(実施例10)
スラリー混合槽10に無水酢酸482質量部を仕込んでおき、粉末原料第1ホッパー1に投入した粉末原料の仕込み量に対して55.0%の無水酢酸を吹き付けた以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料の投入完了後から無水酢酸の吹き付けが完了するまでの間に、スラリー混合槽10の攪拌機9の電流値が上昇傾向となり、更に電流値のハンチングが見られた。粉末原料第1ホッパー1は30バッチ目まで詰まり傾向バッチは発生せず、30バッチの連続運転は可能であった。
【0076】
(実施例11)
スラリー混合槽10に無水酢酸787質量部を仕込んでおき、粉末原料ホッパー1に投入した粉末原料の仕込み量に対して0.8%の無水酢酸を吹き付けた以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は19バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0077】
(実施例12)
粉末原料投入口のバルブ3を閉止してから4時間45分後に無水酢酸の吹き付けを開始した以外は、実施例1と同様な方法で繰り返し30バッチの重合を実施した。粉末原料第1ホッパー1は22バッチ目で詰まり傾向バッチとなったが、30バッチの連続運転は可能であった。
【0078】
(比較例1)
粉末原料投入口のバルブ3を開として投入ライン4からスラリー混合槽10に粉末原料の全量を仕込み、粉末原料第1ホッパー1が空になってから1分後に、粉末原料投入口のバルブ3を開けた状態で無水酢酸の吹き付けを行った以外は、実施例1と同様な方法で繰り返しの重合を実施したところ、粉末原料第1ホッパー1は2バッチ目で詰まりが発生し粉末原料が落下しなくなったため、2バッチ目で試験を中止した。
【0079】
(比較例2)
粉末原料投入口バルブ3の底部に無水酢酸の吹き付けを行わなかった以外は、実施例1と同じ方法で繰り返し重合を実施したところ、粉末原料第1ホッパー1は15バッチ目で詰まり傾向バッチとなり、25バッチ目で詰まりが発生し粉末原料が落下しなくなったため、25バッチ目で試験を中止した。
【0080】
(比較例3)
スラリー混合槽10に無水酢酸791質量部を仕込んでおき、粉末原料投入口バルブ3の底部と投入ライン4に無水酢酸の吹き付けを行わなかった以外は、実施例1と同じ方法で繰り返し重合を実施したところ、粉末原料第1ホッパー1は10バッチ目で詰まり傾向バッチとなり、18バッチ目で詰まりが発生し粉末原料が落下しなくなったため、18バッチ目で試験を中止した。
【0081】
(比較例4)
スラリー混合槽10を用いないで、無水酢酸854質量部を直接アセチル化反応槽(図示略)に仕込み、粉末原料第1ホッパー1および粉末原料第2ホッパー2から直接アセチル化反応槽(図示略)に粉末原料を仕込み、粉末原料投入口バルブ3の底部と投入ライン4に無水酢酸の吹き付けを行わなかった以外は、実施例1と同じ方法で繰り返し重合を実施した。
【0082】
まず、無水酢酸をアセチル化反応槽(図示略)に仕込み、アセチル化反応槽(図示略)内を30rpmで混合しながら、粉末原料投入口のバルブ3,5を開として投入ライン4,6からアセチル化反応槽(図示略)に粉末原料の全量を仕込み、粉末原料第1ホッパー1と粉末原料第2ホッパー2が空になってから、粉末原料投入口のバルブ3,5を閉止した。それ以降のアセチル化反応、重縮合反応、ペレット化は実施例1と同様に実施した。
【0083】
その結果、粉末原料第1ホッパー1は17バッチ目で詰まり傾向バッチとなり、26バッチ目で詰まりが発生し粉末原料が落下しなくなったため、26バッチ目で試験を中止した。
【0084】
【表1】