特許第6982801号(P6982801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982801積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982801
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20211206BHJP
   G11B 5/73 20060101ALI20211206BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B32B27/36
   G11B5/73
   C08J5/18CFD
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-14771(P2018-14771)
(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公開番号】特開2019-130777(P2019-130777A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 周
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
(72)【発明者】
【氏名】東條 光峰
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−030442(JP,A)
【文献】 特開2011−195692(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/058152(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G11B 5/73
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる樹脂成分が芳香族ジカルボン酸成分と炭素数2〜6のアルキレングリコール成分であるポリエステルからなるフィルム層Aとフィルム層Bとが積層された積層ポリエステルフィルムであって、
少なくともフィルム層Bを形成するポリエステルは、炭素数31〜51の脂肪族ダイマー酸が共重合されており、
全ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、積層ポリエステルフィルム全体における前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WAB)が、0.5〜3.5モル%の範囲で、かつフィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)がフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の含有量よりも0.3モル%以上多く、
フィルムの幅方向におけるカールが、−1.0〜2.0mmの範囲にあることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)が0.6〜8.0モル%の範囲である請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)が0〜3.0モル%の範囲である請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
フィルム層A側の表面粗さ(RaA)とフィルム層B側の表面粗さ(RaB)の差が、1.0nm以上ある請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルム層AおよびBの少なくとも一方のフィルム層が、前記共重合ポリエステルのほかに、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、該フィルム層の質量を基準として、0.5〜25質量%の範囲で含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
フィルム層Aの厚み(dA)とフィルム層Bの厚み(dB)との厚み比dA/dBが、0.7以下で、フィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)とフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の差が、0.3〜2.5モル%の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
フィルム層Aの厚み(dA)とフィルム層Bの厚み(dB)との厚み比dA/dBが2.0以上で、フィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)とフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の差が、2.5〜7.0モル%の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
フィルム面方向における少なくとも一方向が、温度膨張係数が14(ppm/℃)以下でかつ湿度膨張係数が1〜8.5(ppm/%RH)の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項9】
フィルムの長手方向における110℃でのフィルム伸びが3.0%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項10】
磁気記録媒体のベースフィルムに用いる請求項1〜9のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の積層ポリエステルフィルムと、その片面に形成された磁性層とからなる磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のダイマー酸を共重合した共重合ポリエステルを用いた積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代表される芳香族ポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。
【0003】
近年の磁気記録媒体などにおける記録密度向上への要求は厳しく、それに伴いベースフィルムに求められる寸法安定性も、ポリエチレンテレフタレートはもちろん、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムでも達成できない状況となってきていた。
【0004】
そこで、特許文献1では4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を共重合すること、特許文献2では、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(成分A)とテレフタル酸成分、イソフタル酸成分、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分(成分B)と、グリコール成分としてエチレングリコール成分(成分C)と脂肪族ダイマージオール成分(成分D)とを共重合することなどで、湿度変化に対する寸法安定性を向上させることなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−268375号公報
【特許文献2】特開2013−173870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分は非常に複雑な構造で原料の入手が困難であり、特許文献2の方法では4種類もの原料による共重合であること製造が非常に複雑であった。また、4成分からなるポリエステルであるため、長手方向の110℃時のフィルム伸び率が大きく、磁気層やバックコート層を塗布する際にトラフが生じ、塗り斑の原因になってしまう。
【0007】
そのため、本発明の目的は、より簡便に寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れ、長手方向の110℃時のフィルム伸び率が小さいポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリエステルフィルムにおいて、湿度膨張係数と温度膨張係数はともにヤング率と非常に密接な関係にあり、ヤング率が高いほど一般的に低くなる。しかしながら、ヤング率はいくらでも高められるというわけではなく、製膜性や直交する方向のヤング率確保の点から自ずと限界がある。そのため、同じヤング率なら温度や湿度に対するより低い膨張係数をもつフィルムが得られないか鋭意研究したところ、前述のポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレートからなるフィルムは、低い湿度膨張係数を示すことから、製膜性に問題があるものの好適なフィルムとして考えた。
そこで、本発明者らは、特定のダイマー酸成分を共重合成分として用いたとき、驚くべきことに優れた特性を兼備するフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、以下の(1)〜(11)に記載の積層ポリエステルフィルムと、(12)に記載の磁気記録媒体が提供される。
(1)主たる樹脂成分が芳香族ジカルボン酸成分と炭素数2〜6のアルキレングリコールであるポリエステルからなるフィルム層Aとフィルム層Bとが積層された積層ポリエステルフィルムであって、
少なくともフィルム層Bを形成するポリエステルは、炭素数31〜51の脂肪族ダイマー酸が共重合されており、
全ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、積層ポリエステルフィルム全体における前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WAB)が、0.5〜3.5モル%の範囲で、かつフィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)がフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の含有量よりも0.3モル%以上多い積層ポリエステルフィルム。
(2)フィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)が0.6〜8.0モル%の範囲である前記(1)記載の積層ポリエステルフィルム。
(3)フィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)が0〜3.0モル%の範囲である前記(1)記載の積層ポリエステルフィルム。
(4)フィルム層A側の表面粗さ(RaA)とフィルム層B側の表面粗さ(RaB)の差が、1.0nm以上ある前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(5)フィルム層AおよびBの少なくとも一方のフィルム層が、前記共重合ポリエステルのほかに、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、該フィルム層の質量を基準として、0.5〜25質量%の範囲で含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(6)フィルム層Aの厚み(dA)とフィルム層Bの厚み(dB)との厚み比dA/dBが、0.7以下で、フィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)とフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の差が、0.3〜2.5モル%の範囲である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(7)フィルム層Aの厚み(dA)とフィルム層Bの厚み(dB)との厚み比(dA/dB)が2.0以上で、フィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)とフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の差が、2.5〜7.0モル%の範囲である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(8)フィルム面方向における少なくとも一方向が、温度膨張係数が14(ppm/℃)以下でかつ湿度膨張係数が1〜8.5(ppm/%RH)の範囲にある前記(1)〜(7)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(9)フィルムの幅方向におけるカールが、−1.0〜2.0mmの範囲にある前記(1)〜(8)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(10)フィルムの長手方向における110℃でのフィルム伸びが3.0%以下である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(11)磁気記録媒体のベースフィルムに用いる前記(1)〜(10)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(12)前記(11)に記載の積層ポリエステルフィルムと、その片面に形成された磁性層とからなる磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡便に寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れ、巻取り性などにも優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができる。さらに本発明によれば、フィルムの長手方向における110℃でのフィルム伸び率とフィルムの幅方向におけるカールも抑制された、特に塗布工程での塗り斑が起こりにくい積層ポリエステルフィルムを提供することもできる。
【0011】
したがって、本発明によれば、湿度と温度による影響も加味した高度の寸法安定性が求められる用途、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムに適したフィルムが提供される。そして、本発明のフィルムを用いれば、優れた寸法安定性を有する高密度磁気記録媒体なども提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体は、主たる樹脂成分が芳香族ジカルボン酸成分と炭素数2〜6のアルキレングリコールであるポリエステルからなるフィルム層Aとフィルム層Bとが積層された積層ポリエステルフィルムであって、
少なくともフィルム層Bを形成するポリエステルは、炭素数31〜51の脂肪族ダイマー酸が共重合されており、
全ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、積層ポリエステルフィルム全体における前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WAB)が、0.5〜3.5モル%の範囲で、かつフィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)がフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の含有量よりも0.3モル%以上多いことを特徴とする。
以下、本発明の積層ポリエステルフィルムについて、詳述する。
【0013】
<主たる樹脂成分>
本発明における主たる樹脂成分は、芳香族ジカルボン酸成分と炭素数2〜6のアルキレングリコール成分であるポリエステルである。
本発明における芳香族ジカルボン酸成分としては、フェニレン基またはナフタレンジイル基を有するものが挙げられ、具体的にはテレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の点からは、比較的機械強度などの物性を向上させやすいテレフタル酸成分および2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
【0014】
また、本発明における炭素数2〜6のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の点からは、比較的機械強度などの物性を向上させやすいエチレングリコール成分が好ましい。
【0015】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくともフィルム層Bを形成するポリエステルに、炭素数31〜51の脂肪族ダイマー酸成分を共重合していることにある。具体的なダイマー酸としては、分岐鎖を含んでいることが好ましく、シクロヘキサン環構造などの脂環部分を有することが好ましく、特に分岐鎖とシクロヘキサン環の両方を有するものが好ましい。好ましいダイマー酸の炭素数は34〜46の範囲である。なお、フィルム層Aを形成するポリエステルは、後述のWABおよびWB−WAの関係を満たせば、炭素数31〜51の脂肪族ダイマー酸成分を共重合していなくてもよいし、共重合したものであっても良い。
【0016】
ところで、本発明の積層ポリエステルフィルムの特徴のひとつは、全ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、積層ポリエステルフィルム全体における前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WAB)が、0.5〜3.5モル%の範囲にあることである。
【0017】
積層ポリエステルフィルム全体における前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WAB)が、下限以上にあることで、湿度膨張係数を低減する効果が発現される。他方、上限を超えると、製膜性が損なわれ、ヤング率などの機械的特性を延伸によって向上させにくく、温度膨張係数を下げにくくなることや、さらにひどい場合は延伸などの製膜工程で破断してしまう。なお、本発明における特定のダイマー酸成分による湿度膨張係数の低減効果は、比較的少ない量でも効率的に発現され、これは驚くべき効果である。そのような観点から、好ましい特定のダイマー酸成分の含有量(WAB)の上限は、3.5モル%、さらに好ましくは3.2モル%、よりさらに好ましくは2.9モル%であり、他方下限は、0.5モル%、さらに0.7モル%、よりさらに0.9モル%である。そのような観点から、前記芳香族ジカルボン酸成分の好ましい割合は、上限が99.5モル%、さらに99.3モル%、特に99.1モル%であり、下限が96.5モル%、さらに96.8モル%、よりさらに97.1モル%である。
【0018】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムのもう一つの特徴はフィルム層Bにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)がフィルム層Aにおける前記脂肪族ダイマー酸の含有量(WA)の含有量よりも0.3モル%以上多いことである。このようにフィルム層Aの含有量(WA)とフィルム層Bの含有量(WB)とに差(WB−WA)を持たせることで、湿度膨張係数を低減する効果と、製膜性やヤング率などをより高度に維持することができる。
【0019】
本発明における好ましい含有量の差(WB−WA)の下限は、0.4モル%以上、さらに0.5モル%以上である。他方含有量の差(WB−WA)の上限は特に制限されないが、フィルム層Bの製膜性を過度に低下させないことから、7.0モル%以下、さらに6.0モル%以下である。
【0020】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、このような特定量の特定のダイマー酸成分を用いることで、温度膨張係数と湿度膨張係数の両方をともに低い成形品、例えばフィルムなどを製造することができる。
【0021】
なお、上記特定のダイマー酸成分の共重合量は、重合段階で所望の共重合量となるように原料の組成を調整するか、酸成分として上記特定のダイマー酸成分のみを用いたホモポリマーもしくはその共重合量が多いポリマーと、共重合していないポリマーまたは共重合量の少ないポリマーとを用意し、所望の共重合量となるようにこれらを溶融混練によってエステル交換させることで調整できる。
【0022】
なお、本発明における前記ポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の共重合成分、例えば脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、前述のいずれにも該当しないアルキレングリコール成分、ヒドロキシカルボン酸成分、トリメリット酸などの3官能以上の官能基を有する酸成分やアルコール成分などを共重合してもよい。
【0023】
<ダイマー酸を共重合したポリエステルの製造方法>
本発明におけるダイマー酸を共重合したポリエステルの製造方法について、詳述する。
前述のダイマー酸成分としては、Croda社製のダイマー酸 “Priplast 1838”、 “Pripol 1004”、 “Pripol 1009”等を用いることで得ることができる。
【0024】
また、本発明における共重合ポリエステルは、ポリエステル前駆体を重縮合反応することで得ることができる。具体的には芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体、たとえば2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとダイマー酸として前述のPriplast 1838およびエチレングリコールをエステル交換反応させて、ポリエステル前駆体を得ることができる。その後、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在かで重合することで製造でき、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られる芳香族ポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.2dl/g、特に0.55〜0.8dl/gの範囲にあることが本発明の効果の点から好ましい。
【0025】
また、ポリエステルの前駆体を製造する際の反応温度としては、190℃〜250℃の範囲で行なうことが好ましく、常圧下または加圧下で行なう。190℃よりも低いと反応が十分に進行しにくく、250℃よりも高いと副反応物であるジエチレングリコールなどが生成しやすい。
【0026】
なお、ポリエステルの前駆体を製造する反応工程では、公知のエステル化もしくはエステル交換反応触媒を用いてもよい。例えば酢酸マンガン、酢酸亜鉛、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、チタン化合物などが上げられる。フィルムにしたときの表面高突起を抑えることができるチタン化合物が好ましい。
【0027】
つぎに、重縮合反応について説明する。まず、重縮合温度は得られるポリマーの融点以上でかつ230〜300℃以下、より好ましくは融点より5℃以上高い温度から融点より30℃高い温度の範囲である。重縮合反応では通常100Pa以下の減圧下で行なうのが好ましい。
【0028】
重縮合触媒としては、少なくとも一種の金属元素を含む金属化合物が挙げられる。なお、重縮合触媒はエステル化反応においても使用することができる。金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、ロジウム、イリジウム、ジルコニウム、ハフニウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。より好ましい金属としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズなどであり、前述したように、特にチタン化合物を使用するとフィルムとしたときに触媒で使用した残存金属の影響による表面の高突起物を抑えられるため、これを使用することが好ましい。
【0029】
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、共重合ポリエステルの繰り返し単位のモル数に対して、0.001〜0.1モル%、さらには0.005〜0.05モル%が好ましい。
【0030】
具体的なエステル化触媒、エステル交換触媒および重縮合触媒としてのチタン化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステル、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸、又は塩基からなる反応生成物などが挙げられる。
【0031】
そして、本発明におけるダイマー酸を共重合したポリエステルは、前述の通り、所望の共重合量の共重合ポリエステルとなるように重合してもよいし、溶融混練時にエステル交換反応が進むので、2種以上の共重合量の異なる芳香族ポリエステルを作成し、それらを溶融混練して所望の共重合量となるようにブレンドして作成してもよい。
なお、上記の説明はダイマー酸を共重合したポリエステルについて行ったが、ダイマー酸を共重合しないポリエステルは、それ自体公知の方法で製造でき、例えば前述の方法で、ダイマー酸を原料として加えなければ製造することができる。
【0032】
<ポリエステル組成物>
本発明における前述のポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の添加剤や他の樹脂をブレンドして組成物としてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などが挙げられ、用いられる用途の要求に応じて適宜選択すればよい。また、他の樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、液晶性樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
【0033】
ところで、本発明におけるポリエステルは、前述のポリエステルの他に、さらにポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、各フィルム層の質量を基準として、0.5〜25重量%の範囲で含有させてポリエステル組成物としてもよい。このような樹脂を上記範囲で含有させることで、ポリエステル樹脂組成物としてのガラス転移温度を高くでき、結果として寸法安定性をより高めやすい。これらの中でもポリエーテルイミドはより均一に分散させやすく、かつガラス転移温度を高めやすいことから好ましい。含有量は少なすぎると耐熱性向上の効果は少なく、多すぎると相分離する。そのような観点から好ましい含有量は、各フィルム層の質量を基準として、2〜20重量%、より好ましくは4〜18重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。なお、具体的なポリエーテルイミドとしては、特開2000−355631号公報などで開示したものを挙げられる。また、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、国際公開2008/096612号パンフレットに記載された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などを共重合したものも好ましい。
【0034】
<積層ポリエステルフィルム>
本発明の積層ポリエステルフィルムは、後述のヤング率などを高めやすいことから延伸された配向フィルムであることが好ましく、特に直交する2方向に配向させた二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。例えば、前述のポリエステル組成物を溶融製膜して、シート状に押出し、製膜方向(以下、縦方向、長手方向またはMD方向と称することがある。)およびそれに直交する方向(以下、幅方向、横方向またはTD方向と称することがある。)に延伸することで作成できる。
【0035】
もちろん、前述のダイマー酸を特定量含有する積層ポリエステルフィルムであることから、特定のダイマー酸成分と前述のジカルボン酸成分と直鎖状グリコール成分からなる芳香族ポリエステルの優れた機械的特性なども具備している。
【0036】
本発明の積層ポリエステルフィルムを磁気記録用のベースフィルムに使用する場合、積層ポリエステルフィルムの厚みは、カートリッジの巻長を長くするために薄い方が好ましい。そのような観点から、本発明の積層ポリエステルフィルムの厚みの上限は、好ましくは5μmであり、さらに好ましくは4.8μm、特に好ましくは4.6μmである。他方、下限は特に制限されないが、3.2μm、さらに3.4μm、特に3.6μmであることが好ましい。
【0037】
ところで、本発明の積層ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、フィルムのその面方向における少なくとも1方向の温度膨張係数(αt)が、14ppm/℃以下であることが好ましい。なお、好ましくはフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)がフィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が上限以下であることで、例えば最も寸法安定性が求められるフィルムの方向と合わせることで、環境変化に対する優れた寸法安定性を得られるフィルムに発現することが出来る。好ましい温度膨張係数(αt)の下限は、−10ppm/℃以上、さらに−7ppm/℃以上、特に−5ppm/℃以上であり、また上限は10ppm/℃以下、さらに7ppm/℃以下、特に5ppm/℃以下である。また、例えば磁気記録テープとしたとき、雰囲気の温湿度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから、上記温度膨張係数を満足する方向は、積層ポリステルフィルムの幅方向であることが好ましい。
【0038】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、フィルム面方向の少なくとも一方向、好ましくは上記温度膨張係数が14ppm/℃以下である方向のフィルムのヤング率が少なくとも4.5GPa以上あることが好ましく、上限は特に制限されないが通常12GPa程度が好ましい。特に好ましいヤング率の範囲は5〜11GPa、特に6〜10GPaの範囲にあることが好ましい。この範囲から外れると、前述のαtやαhを達成することが困難になることや、機械的特性が不十分になることがある。このようなヤング率は、特定のダイマー酸を、前述のWAB、WA、WBの関係を満足させつつ、後述の延伸によって調整することができる。なお、上記温度膨張係数が14ppm/℃以下の方向については、少なくとも一方向、好ましくは前述のとおり、幅方向が満足していれば良い。もちろん、幅方向に直交する方向も寸法安定性の点からは、同様な温度膨張係数や湿度膨張係数、さらにヤング率などを満足することが好ましい。
【0039】
ところで、積層ポリエステルフィルムに磁気層やバックコート層等を塗布する際は乾燥するためにオーブンで加熱をする。この乾燥工程での工程適正能力の一つの指標として後述の長手方向の110℃時のフィルム伸び率が考えられる。フィルム伸び率が高い場合、工程でトラフが発生し、塗り斑の原因となることから一般的にはフィルム伸び率は低いほうが良く、3.0以下であることが好ましい。フィルム伸び率は2.5%以下が好ましく、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
【0040】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、例えば磁気テープ用のベースフィルムに用いたときなど、電磁変換特性とフィルムの搬送性を両立させるために、フィルム層A側の表面と、フィルム層B側の表面とで、異なる表面性を付与させることができるので好ましい。例えば、表面粗さの小さい平坦な表面に磁気層、表面粗さの大きい粗い表面にバックコート層を塗布することで、要求される平坦性と搬送性とをより高度に両立できる。そのような観点から、フィルム層A側の表面の表面粗さ(RaA)と、フィルム層B側の表面の表面粗さ(RaB)の差の絶対値(|RaA−RaB|)は、1.0nm以上であることが好ましい。一方、|RaA−RaB|が大きすぎると、初期は平坦性を確保できても、フィルムロールなどの状態で保管した際に転写によって平坦性が損なわれるため、6.0nm以下に抑えることが好ましい。好ましい|RaA−RaB|は1.5〜5.5nmであり、より好ましくは2.0〜5.0nm、特に好ましくは2.5〜4.5nmである。
【0041】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、フィルム層Aの厚み(dA)とフィルム層Bの厚み(dB)の比(dA/dB)は、前述のWAB,WA,WBの関係を満たせば特に制限されないが、前述の表面性を制御する観点から0.03〜33の範囲、さらに好ましくは0.05〜20の範囲にあることか好ましい。この際、表面粗さの大きいフィルム層は、製品にならなかった部分を回収して再利用するのに適していることから、表面粗さの大きいフィルム層を表面粗さの小さいフィルム層よりも厚くすると、製品にならなかった部分を回収して多く利用することが可能となる。一方、表面粗さの小さいフィルム層が表面粗さの大きいフィルム層をよりも厚くなると、良好な平面性をより高度に付与することが可能となる。そのような観点から、求められるベースフィルムの特性に合わせて、表面粗さの小さいフィルム層の厚みと、/表面粗さの大きいフィルム層の厚みの比を調整することは効果的であり、より低コストな積層ポリエステルフィルムが求められる場合は、当該厚みの比を0.7以下、さらに0.6以下、特に0.5以下とすることが好ましく、他方磁性層を塗布するなどの観点からより良好な表面性が求められる場合は、当該厚みの比を2.0以上、より3.0以上、特に4.0以上とすることが好ましい。
【0042】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、磁気記録媒体のベースフィルムに用いる場合、表面粗さの大きい粗い表面の表面粗さの上限は、8.0nm、さらに7.0nm、特に6.0nmであることが好ましく、他方下限は2.0nm、さらに3.0nm、特に4.0nmであることが好ましい。また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、磁気記録媒体のベースフィルムに用いる場合、表面粗さの小さい平坦な表面の表面粗さの上限は、5.0nm、さらに4.5nm、特に4.0nmであることが好ましく、他方下限は1.0nm、さらに1.5nm、特に2.0nmであることが好ましい。
【0043】
ところで、本発明の積層ポリエステルフィルムは、dA/dBの範囲と前述のWB−WAを制御することで、優れた寸法安定性だけでなく、フィルムの幅方向におけるカールも抑制することもでき、その好ましい態様として、以下で第1と第2の2つの態様について説明する。
【0044】
まず、第1の態様は、dA/dBの比が0.7以下の範囲で、フィルム層Aとフィルム層Bのダイマー酸の含有量差(WB−WA)が0.3〜2.5モル%にあることが好ましい。より好ましいWB−WAは、0.5〜2.3モル%であり、さらに0.7〜2.1モル%であり、特に0.9〜1.9モル%である。このようにdAの厚みが薄く、dBの厚みが厚い場合、WB−WAを小さくすることでカールを効果的に抑制することができる。好ましいdA/dBの比の上限は0.6、さらに0.5、特に0.4である。他方下限は特に制限されないが、0.1、さらに0.15、特に0.20である。
【0045】
次に、第2の態様は、dA/dBの比が2.0以上の範囲で、フィルム層Aとフィルム層Bのダイマー酸の含有量差(WB−WA)が2.5〜7.0モル%にあることが好ましい。より好ましい(WB−WA)は2.7〜6.8モル%であり、さらに2.9〜6.6モル%であり、特に3.1〜6.4モル%である。このようにdBの厚みが薄く、dAの厚みが厚い場合、WB−WAを大きくすることでカールを効果的に抑制することができる。好ましいdA/dBの比の下限は2.5、さらに3.0、特に3.5である。他方上限は特に制限されないが、9.0、さらに8.5、特に8.0である。
【0046】
積層ポリエステルフィルムのカールを抑制することで、例えば磁気層などを塗布する工程での塗布斑をより小さくでき、磁気記録テープとしたときの磁気ヘッドで記録の読み書きする際の不具合を低減することができる。そのような観点から、後述のカールの測定で算出される積層ポリエステルフィルムのカールは、−1.0〜2.0の範囲にあることが好ましく、さらに−0.8〜1.8、より−0.6〜1.6、特に−0.4〜1.4の範囲にあることが好ましい。
【0047】
<積層ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明の積層ポリエステルフィルムは、前述の通り、配向ポリエステルフィルムであることが好ましく、特に製膜方向と幅方向に延伸してそれぞれの方向の分子配向を高めたものであることが好ましい。このような積層ポリエステルフィルムは、例えば以下のような方法で製造することが製膜性を維持しつつ、ヤング率を高め、温度膨張係数や湿度膨張係数を低減しやすいことから好ましい。
【0048】
まず、上述の各フィルム層の原料として用いるポリエステルまたはポリエステル組成物を乾燥後、それぞれの溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出し、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で押出すか、2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、さらに該積層未延伸フィルムを、例えば二軸延伸することで配向積層ポリエステルフィルムとすることができる。
【0049】
なお、本発明で規定するαt、αh、さらにヤング率などを達成するためには、その後の延伸を進行させやすくすることが必要であり、本発明におけるポリエステルは結晶化速度が速い傾向にあり、そのような観点から冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましい。そのような観点から、20〜60℃という低温で行なうことが好ましい。このような低温で行なうことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0050】
二軸延伸としては、それ自体公知のものを採用でき、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
ここでは、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行なう逐次二軸延伸の製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理として共重合ポリエステルの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。
【0051】
前述の説明は逐次二軸延伸について説明したが、本発明の積層ポリエステルフィルムは縦延伸と横延伸とを同時に行なう同時二軸延伸でも製造でき、例えば先で説明した延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
【0052】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、易滑性や易接着性を付与するために塗布層を設けてもよい。塗布層を設ける場合、前記した未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述のと同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうことが好ましい。
【0053】
ところで、本発明の積層ポリエステルフィルムに、前述の|RaA−RaB|を具備させるには、フィルム層に不活性粒子を含有させ、その含有させる不活性粒子の形状、粒子径、含有量で調整することができる。含有させる不活性粒子としては、もともと粗大粒子を含まないか含有するとしても極めて少ない粒子が好ましい。そのため、粒径分布曲線がシャープなものにしやすく、一次粒子の状態で存在しやすい粒子が好ましく、シリコーン粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子などの有機高分子粒子および球状シリカ粒子、シリカと有機高分子の複合体粒子、からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特にシリコーン粒子、架橋ポリスチレン粒子および球状シリカ粒子、シリカーアクリルの複合体粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。もちろん、これらの粒子を含有させる場合は、さらに粗大粒子をなくすため、フィルターでのろ過を行ったり、分散剤で粒子の表面を処理したり、押出機での混練を強化することが好ましい。
【0054】
本発明によれば、本発明の積層ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、その一方の面に非磁性層および磁性層をこの順で形成し、他方の面にバックコート層を形成することなどでデータストレージなどの磁気記録テープとすることができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0056】
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて10点厚みを測定して平均値を求め、フィルム厚みとした。
【0057】
(2)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
【0058】
(3)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向および幅方向がそれぞれ測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分間前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(×10−6/℃)である。
【0059】
(4)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向および幅方向がそれぞれ測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度30%RHと湿度70%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L70−L30)/(L30×△H)
ここで、上記式中のL30は30%RHのときのサンプル長(mm)、L70は70%RHのときのサンプル長(mm)、△H:40(=70−30)%RHである。
【0060】
(5)ダイマー酸の特定
試料20mgを重トリフルオロ酢酸:重クロロホルム=1:1(容積比)の混合溶媒0.6mLに室温で溶解し、500MHzでH−NMRでポリマーチップおよびフィルム中のダイマー酸の量を算出した。
【0061】
(6)表面粗さ(Ra)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて、測定倍率10倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより中心面平均粗さ(Ra)を求めた。
【0062】
(7)厚み比(dA/dB)
未延伸フィルムの場合は、その製膜方向に直交する方向の断面をミクロトーム(ULTRACUT−S)で切り出した後、光学顕微鏡を用いて層AおよびBのそれぞれの厚みを算出し、厚み比dA/dBを求めた。また、配向積層ポリエステルフィルム場合は、同様にして切り出した後、透過型電子顕微鏡を用いて層AおよびBのそれぞれの厚みを算出した。
【0063】
(8)固有粘度(IV)
得られたポリエステルおよびフィルムの固有粘度は、P−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
【0064】
(9)ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)
ガラス転移点(補外開始温度)、融点はDSC(TAインスツルメンツ株式会社製、商品名:Thermal Analyst2100)により、試料量10mgで昇温速度20℃/minで測定した。
【0065】
(10)カール
積層ポリエステルフィルムをフィルムの製膜方向(MD)に長さ170mm、幅方向(TD)に幅15.7mmとなるように短冊状に切りだした。ロール間距離が約6cmあるフリーロールに表面粗さが小さい面をロールに接触させるように静置する。両端にそれぞれ0.07MPaの加重を加え、フィルムの端がロール方向もしくはロールと反対方向にカールするかを見る。ロールと同じ方向にカールする場合をマイナスの値にカール、ロールと逆方向にカールする場合をプラスの値にカールすると定義する。両端のカールの大きさをキーエンス製LK−G30を用いて読み取る。その平均値をカールの大きさと定義する。
【0066】
(11)110℃時のフィルム伸び率
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向が測定方向となるように長さ20mm、幅4mmに切り出し、SII製EXSTAR6000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、30℃で保持した後、製膜方向に20MPaの応力をかけた状態で2℃/minで150℃まで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、30℃で保持した後の昇温する前のフィルム長(L30)に対し、110℃におけるフィルム長(L110)から、以下の式にて、どの程度長さ方向に伸長したかを計算した。
フィルム伸び率(%)=(L110−L30)/L30×100
【0067】
(12)磁気テープの作成
各実施例及び比較例で得られた幅1000mm、長さ1000mの積層二軸配向ポリエステルフィルムの粗面層側表面に、下記組成のバックコート層塗料をダイコータ(加工時の張力:20MPa、温度:120℃、速度:200m/分)で、塗布し、乾燥させた後、フィルムの平坦層側表面に下記組成の非磁性塗料、磁性塗料をダイコータで同時に膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テ−プを12.65mmにスリットし、カセットに組み込み磁気記録テープとした。なお、乾燥後のバックコート層、非磁性層および磁性層の厚みは、それぞれ0.5μm、1.2μmおよび0.1μmとなるように塗布量を調整した。
【0068】
<非磁性塗料の組成>
・二酸化チタン微粒子 :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<磁性塗料の組成>
・鉄(長軸:0.037μm、針状比:3.5、2350エルステッド):100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<バックコート層塗料の組成:>
カーボンブラック :100重量部
熱可塑性ポリウレタン樹脂 :60重量部
イソシアネート化合物 :18重量部
(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)
シリコーンオイル :0.5重量部
メチルエチルケトン :250重量部
トルエン :50重量部
【0069】
(13)電磁変換特性
電磁変換特性測定には、ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムを用いた。記録は、電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.1μm)を用い、再生はMRヘッド(8μm)を用いた。ヘッド/テープの相対速度は10m/秒とし、記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力Cと、スペクトル全域の積分ノイズNの比をC/N比とし、上記12の方法で作成した実施例1を0dBとした相対値を求め、以下の基準で、評価した。
◎ : +1dB以上
○ : −1dB以上、+1dB未満
× : −1dB未満
【0070】
(14)エラーレート
上記(12)で作製したテープ原反を12.65mm(1/2インチ)幅にスリットし、それをLTO用のケースに組み込み、磁気記録テープの長さが850mのデータストレージカートリッジを作成した。このデータストレージを、IBM社製LTO5ドライブを用いて23℃50%RHの環境で記録し(記録波長0.55μm)、次に、カートリッジを50℃、80%RH環境下に7日間保存した。カートリッジを1日常温に保存した後、全長の再生を行い、再生時の信号のエラーレートを測定した。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。次の基準で寸法安定性を評価する。
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
◎:エラーレートが1.0×10−6未満
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−4未満
×:エラーレートが1.0×10−4以上
【0071】
(15)ドロップアウト(DO)
上記(14)でエラーレートを測定したデータストレージカートリッジを、IBM社製LTO5ドライブに装填してデータ信号を14GB記録し、それを再生した。平均信号振幅に対して50%以下の振幅(P−P値)の信号をミッシングパルスとし、4個以上連続したミッシングパルスをドロップアウトとして検出した。なお、ドロップアウトは850m長1巻を評価し、1m当たりの個数に換算して、下記の基準で判定する。
◎:ドロップアウト 3個/m未満
○:ドロップアウト 3個/m以上、9個/m未満
×:ドロップアウト 9個/m以上
【0072】
[実施例1]
ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ジオール成分としてエチレングリコールをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、ポリエチレンナフタレートペレットA1を用意した(IV=0.58dl/g、Tg=115℃、Tm=263℃)。
【0073】
ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、Priplast 1838、ジオール成分としてエチレングリコールをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、ダイマー酸を共重合せしめた共重合ポリエチレンナフタレートペレットB1を用意した(IV=0.60dl/g、Tg=58℃、Tm=232℃)。なお、ジカルボン酸成分としてのダイマー酸の含有量はNMRによる解析によって10.6mol%であることが分かった。
【0074】
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で97:3の割合でブレンドし、樹脂C1とした。この樹脂C1に含有されるダイマー酸の組成比は0.3mol%である。ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で90:10の割合でブレンドし、樹脂C2とした。この樹脂C2に含有されるダイマー酸の組成比は0.9mol%である。樹脂C1をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C2をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、300℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0075】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0076】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ4.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で94:6の割合でブレンドし、樹脂C3とした。この樹脂C3に含有されるダイマー酸の組成比は0.5mol%である。ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で84:16の割合でブレンドし、樹脂C4とした。この樹脂C4に含有されるダイマー酸の組成比は1.5mol%である。
【0078】
樹脂C3をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C4をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、300℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0079】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0080】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3]
実施例2で得られた未延伸フィルムを製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.7倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0082】
[実施例4]
実施例2で得られた未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0083】
[実施例5]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で69:31の割合でブレンドし、樹脂C5とした。この樹脂C5に含有されるダイマー酸の組成比は1.5mol%である。ペレットA1およびB2をそれぞれ質量比で47:53の割合でブレンドし、樹脂C6とした。この樹脂C6に含有されるダイマー酸の組成比は3.7mol%である。
【0084】
樹脂C5をフィルム層Aとして280℃で押し出し、樹脂C6をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、280℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0085】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0086】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が120℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0087】
[実施例6]
実施例2と同様の方法で未延伸を得る際にフィルム層Aに平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させ、フィルム層Bに平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させた。その後、実施例2と同様の方法で、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0088】
[実施例7]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で96:4の割合でブレンドし、樹脂C7とした。この樹脂C7に含有されるダイマー酸の組成比は0.4mol%である。ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で67:33の割合でブレンドし、樹脂C8とした。この樹脂C8に含有されるダイマー酸の組成比は3.1mol%である。
【0089】
樹脂C7をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C8をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、300℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=2.3となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0090】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0091】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0092】
[実施例8]
実施例7と同様の方法で未延伸を得る際にフィルム層Aに平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させ、フィルム層Bに平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させた。その後、実施例7と同様の方法で、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0093】
[実施例9]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で93:7の割合でブレンドし、樹脂C9とした。この樹脂C9に含有されるダイマー酸の組成比は0.6mol%である。ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で30:70の割合でブレンドし、樹脂C10とした。この樹脂C10に含有されるダイマー酸の組成比は7.0mol%である。
【0094】
樹脂C9をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C10をフィルム層Bとして270℃で押し出した。その後、280℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=9.0となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0095】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0096】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が120℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0097】
[実施例10]
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル、ジオール成分としてエチレングリコールをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、ポリエチレンテレフタレートペレットA2を用意した(IV=0.58dl/g、Tg=76℃、Tm=254℃)。
【0098】
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル、ジオール成分としてエチレングリコールをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、ダイマー酸を共重合せしめた共重合ポリエチレンテレフタレートペレットB2を用意した(IV=0.58dl/g、Tg=47℃、Tm=244℃)。なお、ジカルボン酸成分としてのダイマー酸の含有量は10.6mol%となるように調製した。
【0099】
ペレットA2およびB2をそれぞれ質量比で98:2の割合でブレンドし、樹脂C11とした。この樹脂C11に含有されるダイマー酸の組成比は0.2mol%である。ペレットA2およびB2をそれぞれ質量比で81:19の割合でブレンドし、樹脂C12とした。この樹脂C12に含有されるダイマー酸の組成比は1.7mol%である。
【0100】
樹脂C11をフィルム層Aとして280℃で押し出し、樹脂C12をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、280℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0101】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.40質量%、平均粒径0.2μmの架橋ポリスチレン粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.01質量%となるように含有させた。
【0102】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、90℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0103】
[実施例11]
フィルム層A、Bの両方に不活性粒子を添加せず、実施例11と同様の方法で未延伸フィルムを得た。その後、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。その後、滑り性付与のため、フィルム層Aに塗布層Aを乾燥後に得られる被膜層Aの厚みが8nmとなるように、フィルム層Bに塗布層Bを乾燥後に得られる被膜層Bの厚みが8nmとなるようにコーターを用いて塗布層を設けた。なお、塗布層Aおよび塗布層Bの形成に用いた水溶性塗液中の固形分組成を以下に示す。
【0104】
塗布層Aの形成に用いた水溶性塗液:固形分濃度1.0質量%
固形分組成
・バインダー樹脂 アクリル変性ポリエステル 67質量%
・不活性粒子 架橋アクリル樹脂粒子(平均粒径15nm) 6質量%
・界面活性剤 日本油脂株式会社 ノニオンNS−208.5 1質量%
・界面活性剤 日本油脂株式会社 ノニオンNS−240 26質量%
塗布層Bの形成に用いた水溶性塗液:固形分濃度1.9質量%
固形分組成
・バインダー樹脂 アクリル変性ポリエステル 58質量%
・バインダー樹脂 メチルセルロース 20質量%
・バインダー樹脂 シロキサン共重合アクリル樹脂 3質量%
・不活性粒子 架橋アクリル粒子(平均粒径40nm) 9質量%
・界面活性剤 三洋化成株式会社 ナロアクティーN85 10質量%
【0105】
この塗布層が設けられた一軸延伸フィルムをステンターに導き、90℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0106】
[実施例12]
実施例10と同様の方法で未延伸フィルムを得た。フィルム層Aには平均粒径0.1μmの架橋ポリスチレン粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの架橋ポリスチレン粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.40質量%、平均粒径0.2μmの架橋ポリスチレン粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.01質量%となるように含有させた。その後、実施例11と同様の方法で延伸を行い、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0107】
[実施例13]
ポリエーテルイミドとしてSABICイノベーティブプラスチック社製の“Ultem1010”を用意した。
【0108】
ポリエーテルイミドとペレットA2、B2を質量比で5:87:8の割合でブレンドし、樹脂C13とした。樹脂C13のダイマー酸の組成比は0.7mol%である。ポリエーテルイミドとペレットA2、B2をそれぞれ質量比で5:43:52の割合でブレンドし、樹脂C14とした。樹脂C14のダイマー酸の組成比は5.3mol%である。
【0109】
樹脂C13、樹脂C14をそれぞれ280℃で押し出し、フィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=5.7となるように2層に積層せしめた。その後、回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0110】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.40質量%、平均粒径0.2μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.01質量%となるように含有させた。
【0111】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.6倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、100℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.6倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0112】
[実施例14]
ポリエーテルイミドとペレットA2、B2を質量比で20:70:10の割合でブレンドし、樹脂C15とした。樹脂C15のダイマー酸の組成比は1.0mol%である。ポリエーテルイミドとペレットA2、ペレットB2をそれぞれ質量比で20:251:55の割合でブレンドし、樹脂16とした。樹脂16のダイマー酸の組成比は5.7mol%である。
【0113】
樹脂C15、樹脂C16とそれぞれ280℃で押し出し、フィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=5.7となるように2層に積層せしめた。その後、回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0114】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.40質量%、平均粒径0.2μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.01質量%となるように含有させた。
【0115】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.6倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、100℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.8倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0116】
[実施例15]
ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸、Pripol1004、ジオール成分としてエチレングリコールをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、ダイマー酸を共重合せしめた共重合ポリエチレンナフタレートペレットB3を用意した(IV=0.58dl/g)。なお、酸成分としてのダイマー酸の含有量は10.6mol%となるように調製した。
【0117】
ペレットA1およびB3をそれぞれ質量比で94:6の割合でブレンドし、樹脂C17とした。この樹脂C17に含有されるダイマー酸の組成比は0.5mol%である。ペレットA1およびB3をそれぞれ質量比で83:17の割合でブレンドし、樹脂C18とした。この樹脂C18に含有されるダイマー酸の組成比は1.5mol%である。樹脂C17をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C18をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、300℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0118】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0119】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0120】
[実施例16]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で97:3の割合でブレンドし、樹脂C19とした。この樹脂C19に含有されるダイマー酸の組成比は0.3mol%である。樹脂A1をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C19をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、300℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0121】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0122】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ4.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0123】
[実施例17]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で74:26の割合でブレンドし、樹脂C20とした。この樹脂C20に含有されるダイマー酸の組成比は2.4mol%である。樹脂A1をフィルム層Aとして300℃で押し出し、樹脂C20をフィルム層Bとして280℃で押し出した。その後、300℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0124】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0125】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が120℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ4.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0126】
[実施例18]
ペレットA2とペレットB2をそれぞれ質量比で80:20の割合でブレンドし、樹脂C21とした。この樹脂C21に含有されるダイマー酸の組成比は1.8mol%である。樹脂A2をフィルム層Aとして、280℃で押出し、樹脂C21をフィルム層Bとして280℃で押出した。その後、280℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0127】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0128】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、90℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0129】
[比較例1]
フィルム層A、フィルム層BともにペレットA2を用いて、ダイマー酸が含有しないようにした。280℃で押し出し、フィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.40質量%、平均粒径0.2μmの架橋ポリスチレン粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.01質量%となるように含有させた。
【0130】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0131】
[比較例2]
フィルム層A、フィルム層BともにペレットA1を用いて、ダイマー酸が含有しないようにした。300℃で押し出し、フィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0132】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、130℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0133】
[比較例3]
ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で41:59の割合でブレンドし、樹脂C22とした。この樹脂C21に含有されるダイマー酸の組成比は5.9mol%である。ペレットA1をフィルム層Aとして310℃で押し出し、樹脂C22をフィルム層Bとして270℃で押し出した。その後、290℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。
【0134】
なお、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。
【0135】
そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が110℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムはカールが強く、塗料を塗ることが困難であった。また、乾燥時のフィルム伸びも大きく、磁気テープの作成が困難であるため、特性評価は行わなかった。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0136】
[比較例4]
フィルム層Aとフィルム層Bでダイマー酸の組成比が4.0mol%となるようにするため、ペレットA1およびB1をそれぞれ質量比で59:41の割合でブレンドした。また、フィルム層Aには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Aの質量を基準としたとき、0.08質量%となるように含有させ、フィルム層Bには、平均粒径0.1μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.12質量%、平均粒径0.3μmの真球状シリカ粒子を、フィルム層Bの質量を基準としたとき、0.13質量%となるように含有させた。その後、フィルム層A、Bともに280℃で押し出し、280℃でフィードブロックを用いて、フィルム層A、フィルム層Bの厚み比dA/dB=0.4となるように2層に積層せしめ、回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、未延伸フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が110℃になるように加熱して、縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5.0μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
【0137】
得られたポリエステルフィルムは、前記(12)磁気テープの作成における乾燥時のフィルム伸びが大きく、磁気テープの作成が困難であるため、特性評価は行わなかった。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
なお、表1中のNDCは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分ン、TAはテレフタル酸成分、PEIはポリエーテルイミド、WABは積層ポリエステルフィルム全体における脂肪族ダイマー酸の含有量、WAはフィルム層Aにおける脂肪族ダイマー酸の含有量、WBはフィルム層Bにおける脂肪族ダイマー酸の含有量(WB)、MDは製膜方向、TDは幅方向を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を有することから、高密度磁気記録媒体のベースフィルムなどに好適に使用できる。