(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラズマ処理制御装置は、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させるに際して、前記移動機構の速度を同期して増減させるように前記移動機構を制御する請求項1に記載のプラズマ処理装置。
誘電体部材で囲まれた環状のチャンバ内に第1ガスを供給しつつ、前記チャンバに連通する線状の開口部から、基材載置台に載置された基材に向けて第1ガスを噴出すると共に、コイルに高周波電力を供給することで、前記チャンバ内に高周波電磁界を発生させてプラズマを発生させ、前記開口部の長手方向に対して交差する向きに、前記チャンバと前記基材とを移動機構で相対的に移動させつつ前記基材の表面を処理する、誘導結合型プラズマトーチユニットを用いるプラズマ処理方法であって、
前記チャンバを囲む前記誘電体部材のうち、前記基材載置台に相対する面を構成する部位を基材対向部としたとき、前記基材対向部は前記基材載置台の基材載置面に平行な平面であり、
前記基材対向部を前記開口部の長手方向に対して垂直な面で切った断面を、前記基材載置台が下方になるような向きに配置したとき、前記基材対向部と前記基材載置台の間の空間に、左ガス噴出口と右ガス噴出口とからガスを供給するとともに、
前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させることにより、前記基材対向部と前記基材載置台の間の前記空間において前記プラズマを左右に位置変更させながらプラズマ処理するプラズマ処理方法。
前記プラズマと前記基材載置台との相対的な移動速度が一定となるよう、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させるに際して、前記移動機構の速度を同期して増減させながら処理する請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0015】
本発明の第1の態様のプラズマ処理装置は、
線状の開口部と、前記開口部に連通し前記開口部を除いて周囲が囲まれた環状のチャンバとを有する誘電体部材と、
前記チャンバ近傍に設けられたコイルと、
前記コイルに接続されて高周波を前記コイルに印加する高周波電源と、
基材を基材載置面に載置可能な基材載置台と、
前記開口部の長手方向に対して交差する向きに、前記チャンバと前記基材載置台とを相対的に移動可能とする移動機構とを備えた誘導結合型プラズマトーチユニットを用いるプラズマ処理装置であって、
前記チャンバを囲む前記誘電体部材のうち、前記基材載置台に相対する面を構成する部位を基材対向部としたとき、前記基材対向部は前記基材載置台の前記基材載置面に平行な平面であり、
前記基材対向部を前記開口部の長手方向に対して垂直な面で切った断面を、前記基材載置台が下方になるような向きに配置したとき、前記基材対向部と前記基材載置台の間の空間に、左右両側からガスをそれぞれ供給する左ガス噴出口及び右ガス噴出口が設けられ、
前記左ガス噴出口及び前記右ガス噴出口から噴出するガス流量を各々独立に制御する第1及び第2流量制御装置を備え、
前記第1及び第2流量制御装置のうち少なくとも一方の流量制御装置を制御して、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させるプラズマ処理制御装置を備える。
【0016】
このような構成により、高パワーでも誘電体部材が損傷しにくくなり、高速で安定な処理が可能なプラズマ処理装置を実現できる。
【0017】
本発明の第2の態様のプラズマ処理装置において、前記態様において、前記プラズマ処理制御装置は、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量を連続的に増減させるように前記第1流量制御装置を制御し、前記右ガス噴出口から噴出するガス流量を連続的に増減させるように前記第2流量制御装置を制御するとともに、
前記プラズマ処理制御装置は、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量を増加させる期間は、前記右ガス噴出口から噴出するガス流量を減少させるように前記第2流量制御装置を制御し、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量を減少させる期間は、前記右ガス噴出口から噴出するガス流量を増加させるように前記第2流量制御装置を制御し、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量及び前記右ガス噴出口から噴出するガス流量を同期して増減させることが可能なように前記第1及び第2流量制御装置が制御されるようにしてもよい。
【0018】
このような構成により、安定性に優れたプラズマ処理を実現できる。
【0019】
本発明の第3の態様のプラズマ処理装置において、前記第1又は2態様において、前記プラズマ処理制御装置は、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させるに際して、前記移動機構の速度を同期して増減させるように前記移動機構を制御するようにしてもよい。
【0020】
このような構成により、均一なプラズマ処理を実現できる。
【0021】
本発明の第4の態様のプラズマ処理方法は、
誘電体部材で囲まれた環状のチャンバ内に第1ガスを供給しつつ、前記チャンバに連通する線状の開口部から、基材載置台に載置された基材に向けて第1ガスを噴出すると共に、コイルに高周波電力を供給することで、前記チャンバ内に高周波電磁界を発生させてプラズマを発生させ、前記開口部の長手方向に対して交差する向きに、前記チャンバと前記基材とを移動機構で相対的に移動させつつ前記基材の表面を処理する、誘導結合型プラズマトーチユニットを用いるプラズマ処理方法であって、
前記チャンバを囲む前記誘電体部材のうち、前記基材載置台に相対する面を構成する部位を基材対向部としたとき、前記基材対向部は前記基材載置台の基材載置面に平行な平面であり、
前記基材対向部を前記開口部の長手方向に対して垂直な面で切った断面を、前記基材載置台が下方になるような向きに配置したとき、前記基材対向部と前記基材載置台の間の空間に、左ガス噴出口と右ガス噴出口とからガスを供給するとともに、
前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させることにより、前記基材対向部と前記基材載置台の間の前記空間において前記プラズマを左右に位置変更させながらプラズマ処理する。
【0022】
このような構成により、高パワーでも誘電体部材が損傷しにくくなり、高速で安定な処理が可能なプラズマ処理方法を実現できる。
【0023】
本発明の第5の態様のプラズマ処理方法において、前記第4の態様において、前記プラズマと前記基材載置台との相対的な移動速度が一定となるよう、前記左ガス噴出口から噴出するガス流量または前記右ガス噴出口から噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させるに際して、前記移動機構の速度を同期して増減させながら処理するようにしてもよい。
【0024】
このような構成により、均一なプラズマ処理を実現できる。
【0025】
本発明の第6の態様の電子デバイスの製造方法は、第4又は5の態様の前記プラズマ処理方法を、例えばエッチング又は成膜又はドーピング又は表面改質又は加熱の処理に用いて、電子デバイスを製造するようにしてもよい。
【0026】
このような構成により、高パワーでも誘電体部材が損傷しにくくなり、高速で安定な処理が可能な電子デバイスの製造方法を実現できる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置及び方法について図面を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、
図1A〜
図5を参照して説明する。
【0029】
図1Aは、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、プラズマ処理装置の誘導結合型プラズマトーチユニットTを、1本の直線状の開口部8がなす線方向(すなわち長手方向)に垂直で、かつ、
図1B及び
図1Cの点線A−A’を通る面で切った断面図である。
図1B〜
図1Cは、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、開口部8がなす線方向に平行で、かつ、
図1Aの点線B−B’及びC−C’を通る面でそれぞれ切った断面図である。すなわち、
図1Bは、
図1Aの点線B−B’で切った断面図である。
図1Cは、
図1Aの点線C−C’で切った断面図である。
図2は、
図1Aに示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(言い換えれば、一部)の斜視図を並べたものである。
図3は、ガス流量と、プラズマ位置と、基材ステージ速度との変化を示すグラフである。
図4A及び
図4Bは、プラズマの状態を示す断面図であり、
図1Aの開口部8近傍の拡大図である。
図5は、プラズマ処理装置の構成を示すブロック図である。
【0030】
プラズマ処理装置は、1本の直線状の開口部8と開口部8に連通するチャンバ7とを有する誘電体部材4,5と、ガス供給配管10と、コイル3とを備える誘導結合型プラズマトーチユニットTを用いる。ガス供給配管10は、プラズマトーチユニットT外からチャンバ7内にガスを導入する。
【0031】
図1Aなどにおいて、基材載置台の一例としての基材ステージ1の平面である基材載置面1a上に基材2が配置されている。
【0032】
誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、コイル3は、一例として、導体製の中空管で構成され、誘電体製の第1セラミックスブロック4及び誘電体製の第3セラミックスブロック6の近傍に配置される。コイル3は、断面が円形の銅管を、断面が直方体の銅ブロックに接着したものである。コイル3内の銅管の内部は冷媒流路となっている。すなわち、水などの冷媒を冷媒流路に流すことで、銅管の冷却が可能である。また、その外側に接着された銅ブロックは、接着剤(図示しない)によって第1セラミックスブロック4又は第3セラミックスブロック6に接着されている。
【0033】
誘導結合型プラズマトーチユニットTの下端には、細い長方形の線状の開口部8が設けられ、基材ステージ1の基材載置面1a或いは、基材ステージ1の基材載置面1a上の基材2の対向面は、開口部8と対向して配置されている。
【0034】
誘電体の第1セラミックスブロック4、第2セラミックスブロック5、第3セラミックスブロック6、及び基材2によって囲まれた細長い直方体形状の空間70により、誘電体で囲まれた長尺のチャンバ7が画定される。すなわち、チャンバ7は、基材ステージ1の基材載置面1aに垂直な面に沿って設けられている。また、コイル3の中心軸は、基材ステージ1の基材載置面1aに平行で、かつ、チャンバ7を含む平面に垂直な向きになるよう構成される。コイル3は、第1セラミックスブロック4の外側、第3セラミックスブロック6の外側に各一つずつ配置され、かつ、チャンバ7から離れた位置で直列に接続され、高周波電源71から高周波電力を印加した際にチャンバ7に発生させる高周波電磁界の向きが互いに等しくなるようになっている。
【0035】
チャンバ7は、第1セラミックスブロック4の一つの平面、例えば第2セラミックスブロック側の端面と、第2セラミックスブロック5に設けた溝に囲まれている。また、これら誘電体部材としての2つの誘電体ブロック4,5は貼り合わされている。つまり、チャンバ7は、開口部8以外が誘電体で囲まれている構成である。
【0036】
また、チャンバ7は環状である。ここでいう環状とは、一続きの閉じたヒモ状をなす形状を意味し、円形に限定されるものではない。本実施の形態1においては、長方形(2つの長辺をなす直線部7a,7cと、その両端に2つの短辺をなす直線部7e,7eとが連結されてなる、一続きの閉じたヒモ状の形状)のチャンバ7を例示している。チャンバ7に発生したプラズマPは、チャンバ7における長尺で線状であるスリット状の開口部8において、基材2の表面に接触する。また、チャンバ7の長手方向と開口部8の長手方向とは平行に配置されている。
【0037】
第2セラミックスブロック5の内部に、第1ガスを供給する第1ガス供給配管10と接続される第1ガスマニホールド9が設けられている。第1ガスマニホールド9の内部に多孔質セラミックス材をはめ込んでもよい。第1ガス供給配管10より第1ガスマニホールド9に供給されたアルゴン又はアルゴンと水素との混合ガスなどの第1ガスは、第2セラミックスブロック5に設けられたガス導入部としての第1ガス供給穴11(例えば貫通穴)を介して、チャンバ7に導入される。第1ガス供給配管10へ導入するガスの流量は、第1ガス供給配管10の上流に流量制御装置としての第1マスフローコントローラ72を備えることにより制御される。また、第1ガスマニホールド9内を多孔質セラミックス材で構成すると、ガス流れの均一化が実現できるとともに、第1ガスマニホールド9近傍での異常放電を防止することができる。第1ガス供給穴11は、長尺のスリットであるが、丸い穴状のものを長手方向に複数設けたものであってもよい。
【0038】
また、第2セラミックスブロック5の内部に、第2ガスが供給される第2ガス供給配管13と接続される第2ガスマニホールド12が設けられている。第2ガスマニホールド12の内部に多孔質セラミックス材をはめ込んでもよい。第2ガス供給配管13より第2ガスマニホールド12に供給されたアルゴン又はアルゴンと水素との混合ガスなどの第2ガスは、第2セラミックスブロック5に設けられたガス導入部としての第2ガス供給穴14(例えば貫通穴)及びその先端の第2ガス噴出口14aを介して、
図1Aの開口部8の左上端に噴出する。第2ガス供給配管13へ導入するガスの流量は、第2ガス供給配管13の上流に流量制御装置の例としての第2マスフローコントローラ44を備えることにより制御される。また、第2ガスマニホールド12内を多孔質セラミックス材で構成すると、ガス流れの均一化が実現できるとともに、第2ガスマニホールド12近傍での異常放電を防止することができる。第2ガス供給穴14は、長尺のスリットであるが、丸い穴状のものを長手方向に複数設けたものであってもよい。第2ガスマニホールド12は、チャンバ7が構成する環の内側に配置されている。
【0039】
さらに、第2セラミックスブロック5の内部に、第3ガスが供給される第3ガス供給配管16と接続される第3ガスマニホールド15が設けられている。第3ガスマニホールド15の内部に多孔質セラミックス材をはめ込んでもよい。第3ガス供給配管16より第3ガスマニホールド15に供給されたアルゴン又はアルゴンと水素との混合ガスなどの第3ガスは、第2セラミックスブロック5に設けられたガス導入部としての第3ガス供給穴17(例えば貫通穴)及びその先端の第3ガス噴出口17aを介して、
図1Aの開口部8の右上端に噴出する。第3ガス供給配管16へ導入するガスの流量は、第3ガス供給配管16の上流に流量制御装置の例としての第3マスフローコントローラ45を備えることにより制御される。また、第3ガスマニホールド15内を多孔質セラミックス材で構成すると、ガス流れの均一化が実現できるとともに、第3ガスマニホールド15近傍での異常放電を防止することができる。第3ガス供給穴17は、長尺のスリットであるが、丸い穴状のものを長手方向に複数設けたものであってもよい。第3ガスマニホールド15は、チャンバ7が構成する環の内側に配置されている。
【0040】
チャンバ7内にアルゴンなどのガスを第1ガス供給配管10と第2ガス供給配管13と第3ガス供給配管16とから供給しつつ、開口部8から基材2に向けてガスを噴出させながら、高周波電源71よりコイル3に高周波電力を供給することにより、チャンバ7にプラズマPを発生させ、開口部8からプラズマPを基材2に照射することにより、基材2をプラズマ処理することができる。開口部8の線方向(すなわち、長手方向)に対して交差する向き、例えば垂直な向きに、移動機構の例としての直動装置、例えばリニアスライダ43によりチャンバ7を有する誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材ステージ1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。ここでは、リニアスライダ43により、誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、
図1Aの左右方向へ基材ステージ1を動かす。
【0041】
基材2を効率的に処理するために誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材2との距離を小さくしていったとき、最も大きな熱量を受けるのは、基材ステージ1近傍のチャンバ7の下側の長辺をなす直線部7cの底面、すなわち、基材ステージ1とは反対側の部分(基材ステージ1に相対する部分)たる基材対向部としての内壁面7dである。したがって、この内壁面7dの損傷を抑制するためには、この内壁面7dをより効果的に冷却する必要がある。
【0042】
特許文献5には、内壁面7dを構成する部分を円筒状のセラミックス管とし、これを回転させることで、プラズマから熱を受ける面が常に入れ替わる構成としている。つまり、プラズマから熱を受けて高温になった部分は、回転によって速やかにプラズマPから熱を受けない位置に移動し、急速に冷却される構成である。しかしながら、回転を可能とするために、モータ及びギアなどの回転機構、及び、冷媒及び高周波電力の供給のためのロータリーコネクタ及びロータリージョイントなど複雑な構成を要する。
【0043】
これに対して、本実施の形態1においては、基材対向部である内壁面7dと基材ステージ1の基材載置面1aの間の空間70において、プラズマPを
図1Aの左右(言い換えれば、基材ステージ1と誘導結合型プラズマトーチユニットTとの相対移動方向沿いの前後方向)に揺動させながら処理する構成としている。
【0044】
図3に示すように、第2ガス供給穴14から直線部7cに噴出するアルゴンガスの流量は、第2マスフローコントローラ44によって最少流量g
2MINと最大流量g
2MAXとの間で増減を周期的に繰り返すように制御される。ここでは、流量が直線的に変化する場合を例示したが、正弦波形又は方物波形など種々の波形を採用してもよい。一方で、第3ガス供給穴17から直線部7cに噴出するアルゴンガスの流量は、第3マスフローコントローラ45によって一定の値g
3を保つよう制御される。この一定の値g
3は、g
2MIN<g
3<g
2MAXを満たすような値とする。第2ガス流量が最少流量g
2MINであるとき、
図4Aに示すように、プラズマPは第3ガス供給穴17から噴出するガスの圧力に押されて左に寄る。逆に、第2ガス流量が最大流量g
2MAXであるときは、
図4Bに示すように、プラズマPは第2ガス供給穴14から噴出するガスの圧力に押されて右に寄る。ここで、
図3のプラズマPの位置は、
図4A及び
図4Bの左から右へ向かう方向を+方向とした場合の、ヒモ状のプラズマPの断面の中心位置を示している。先述のようにプラズマPの位置は、第2ガス供給穴14から噴出するガスの流量と、第3ガス供給穴17から噴出するガスの流量の大小によって変化するので、第2ガス流量が徐々に増加していく期間Fにおいては、プラズマPの位置が左から右へと移動する。逆に、第2ガス流量が徐々に減少していく期間Rにおいては、プラズマPの位置が右から左へと移動する。
【0045】
このように、本実施の形態1においては、内壁面7dを開口部8の長手方向に対して垂直な面で切った断面を、基材ステージ1が下方になるような向きに配置したとき、内壁面7dと基材ステージ1の基材載置面1aの間の空間70に、左右両側からガスを供給するための左ガス噴出口14a及び右ガス噴出口17aが設けられている。さらに、左ガス噴出口14a及び右ガス噴出口17aから噴出するガス流量を各々独立に制御可能とするための流量制御装置の例としての第2マスフローコントローラ44と第3マスフローコントローラ45とを備えている。その上、左ガス噴出口14a及び右ガス噴出口17aのうちのいずれか一方、例えば左ガス噴出口14aから噴出するガス流量を連続的に増減させるプラズマ処理制御装置として機能するタイミング制御装置46を備えている。このように構成することにより、内壁面7dのうち、プラズマPから熱を受ける位置が常に入れ替わる構成としている。つまり、プラズマPから熱を受けて高温になった部分は、プラズマPの移動によって速やかにプラズマPから熱を受けない状態となり、急速に冷却される構成である。したがって、従来例と比べて飛躍的に高い高周波電力をコイル3に印加できるようになり、高速のプラズマ処理が可能となる。
【0046】
基材ステージ1は、固定されている誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して一定速度v
oで直線運動させてもよい。が、そのように直線運動させると、プラズマPが左右に揺動するのに対応して、プラズマPと基材ステージ1の相対的な移動速度が変動することとなる。このことは、プラズマ処理の強さ(基材2の表面温度など)が面内で不均一になることを意味する。プロセス条件のマージンが広い場合は何ら問題とならないが、マージンが狭い場合はプラズマPと基材ステージ1との相対的な移動速度の変動を抑制する必要がある。
【0047】
そこで、
図3に示すように、基材ステージ1の速度を、一定速度v
oに対して時間的に変動させる構成とすることができる。なお、
図3の基材ステージ速度は、
図4A及び
図4Bの左から右へ向かう方向を+方向とした場合の、基材ステージ1の速度を示している。ここでは、プラズマPの位置の微分波形がプラズマPの位置の変化速度を示すことから、これを基材ステージ1の移動速度に加えている。つまり、プラズマ位置が左から右へ移動している期間Fにおいては、基材ステージ速度を一定速度である基準速度v
oよりも速くし、逆に、プラズマ位置が右から左へ移動している期間Rにおいては、基材ステージ速度を基準速度v
oよりも遅くする。第2マスフローコントローラ44の流量設定値と、リニアスライダ43の速度設定値は、同期して増減させる必要があるため、タイミング制御装置46が設けられる。
【0048】
なお、特許文献5には、左ガス噴出口及び右ガス噴出口から噴出する構成が開示されているが、基材対向部が円筒状のセラミックス管の曲面である。このような場合、本実施の形態1と同様のガス流量変化を与えても、プラズマが円滑に揺動できないという問題がある。何故なら、基材対向部が曲面であるため、左右の位置によってプラズマの位置安定性が異なり、プラズマ位置の制御が難しいためである。
【0049】
一方、本実施の形態1においては、内壁面7dは基材ステージ1の基材載置面1aに平行な平面である。したがって、左ガス噴出口14aから噴出するガス流量または右ガス噴出口17aから噴出するガス流量のうち、少なくとも一方を連続的に増減させることにより、プラズマPを左右に、すなわち、相対移動方向沿いに円滑に揺動させることができる。本実施の形態1においては、
図4Aに示すように、相対移動方向沿いの内壁面7dの幅wは、直線部7cの深さとしての、第3セラミックスブロック6の最下面から内壁面7dまでの高さhの約5倍としているが、幅wは高さhの2倍以上10倍以下であることが好ましい。幅wが高さhの2倍未満である場合、揺動するための空間70が確保できず、逆に、幅wが高さhの10倍より大きいと、第2セラミックスブロック5が大きくなり、誘導結合型プラズマトーチユニットTの重量及び部品コストの上昇を招くため、好ましくない。
【0050】
このように、本実施の形態1によれば、左ガス噴出口14a及び右ガス噴出口17aから噴出するガス流量を周期的に異ならせるように制御するため、プラズマPの位置を相対移動方向の前後に周期的に移動させることができる。この結果、内壁面7dのうち、プラズマPから熱を受ける位置が常に入れ替わるので、プラズマPから熱を受けて高温になった部分は、プラズマPの移動により、速やかにプラズマPから熱を受けない状態となり、急速に冷却される。よって、従来よりも高い高周波電力をコイル3に投入することができる。つまり、基材2の表面近傍を、ごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、短時間の加熱及び高速な処理が可能で、かつ、プラズマPを安定的に利用することができる。つまり、大きな電力で運転できるため、プラズマPの照射強度が上げられ、結果として処理速度(単位時間当たりに処理できる基板数)が大きくなる。
【0051】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、
図6を参照して説明する。
【0052】
図6は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、実施の形態2におけるプラズマ処理装置において、
図1Aの点線B−B’で切った断面図に相当する断面図であり、
図1Bに相当する図である。
【0053】
図6において、実施の形態1において1つであった、第2ガスマニホールド12及び第2ガス供給穴14は、開口部8の長手方向に対して3つに分割され、奥側の第2ガスマニホールド121、中間の第2ガスマニホールド122、手前側第2ガスマニホールド123、及び、奥側の第2ガス供給穴141、中間の第2ガス供給穴142、手前側第2ガス供給穴143が設けられている。奥側の第2ガスマニホールド121、中間の第2ガスマニホールド122、手前側第2ガスマニホールド123には、ガス流量を各々独立に制御するための流量制御装置(マスフローコントローラなど)441,442,443がそれぞれ接続される。同様に、第3ガスマニホールド15及び第3ガス供給穴17は、開口部8の長手方向に対して3つに分割され、奥側の第3ガスマニホールド、中間の第3ガスマニホールド、手前側第3ガスマニホールド、及び、奥側の第3ガス供給穴、中間の第3ガス供給穴、手前側第3ガス供給穴が設けられる。奥側の第3ガスマニホールド、中間の第3ガスマニホールド、手前側第3ガスマニホールドには、ガス流量を各々独立に制御するための流量制御装置(マスフローコントローラなど)が接続される。第3ガスマニホールド15及び第3ガス供給穴17の分割状態の図は、符号が異なるだけで、
図6と同じ図となる。
【0054】
このように、左側のガス噴出口141a,142a,143a及び右側のガス噴出口から噴出するガス流量を、開口部8の長手方向に複数個に分割して制御することにより、長手方向のプラズマ処理の強さ分布を制御できる。また、このような構成により、プラズマPの位置をより精密に制御できる。
【0055】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、
図7A〜
図12Bを参照して説明する。
【0056】
図7Aは、本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、プラズマ処理装置の誘導結合型プラズマトーチユニットTを、1本の直線状の開口部8がなす線方向(長手方向)に垂直で、かつ、
図7B〜
図7E及び
図8の点線A−A’を通る面で切った断面図である。
図7B〜
図7Eは、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、開口部8がなす線方向に平行で、かつ、
図7Aの点線B−B’、C−C’、D−D’、E−E’を通る面で切った断面図である。
図7Bは、
図7Aの点線B−B’で切った断面図である。
図7Cは、
図7Aの点線C−C’で切った断面図である。
図7Dは、
図7Aの点線D−D’で切った断面図である。
図7Eは、
図7Aの点線E−E’で切った断面図である。
図8は、
図7Aなどに示した誘導結合型プラズマトーチユニットTを
図7Aの下方から上向きに見た平面図である。
図9は、プラズマPの発生領域を示す斜視図であり、
図7Aの右手前から斜め下方向を見た図である。
図10は、プラズマ処理装置のコイル3の構成を示す斜視図であり、
図9と同様、
図7Aの右手前から斜め下方向を見た図である。
図11は、プラズマ処理装置のファラデーシールドの構成を示す斜視図であり、
図9及び
図10と同様、
図7Aの右手前から斜め下方向を見た図である。
図12A及び
図12Bは、プラズマの状態を示す断面図であり、
図7Aの開口部8近傍の拡大図である。
【0057】
図7Aなどにおいて、基材載置台の一例としての基材ステージ1の基材載置面1a上に基材2が配置されている。
【0058】
誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、コイル3は、一例として、
図10に示すように、導体製の第1コイル3a及び第2コイル3bで構成されている。これらの第1コイル3a及び第2コイル3bが、誘電体部材の一例である第1セラミックスブロック4と第2セラミックスブロック5と基材2の表面(言い換えれば、装置構成的には、基材ステージ1の基材載置面1aの表面)とによって囲まれた空間により画定される長尺で、かつ、基材2の表面又は基材ステージ1の基材載置面1aの表面に対して垂直な面内に配置された環状のチャンバ7の近傍に配置される。第2セラミックスブロック5及び第3セラミックスブロック6の開口部8には、内部が空洞になった大略筒状のセラミックス管33が配置される。大略筒状のセラミックス管33は、縦断面形状において弓形の部分が一部欠落して、外周面の一部に平面33aを有している。
【0059】
より具体的には、コイル3、すなわち、第1コイル3a及び第2コイル3bは共に1本の直線状に配置されている。基材ステージ1から遠い側(すなわち、
図7Aでは上側)の第1コイル3aは、第5セラミックスブロック23に、線状の開口部8の長手方向沿いに延びるように設けられた真っ直ぐな溝内に配置される。基材ステージ1に近い側(すなわち、
図7Aでは下側)の第2コイル3bは、セラミックス管33の軸方向沿いの真っ直ぐな内部空洞内に配置される。このようにして、基材ステージ1の基材載置面1aに概ね垂直な面(例えば、
図7Aの上下方向沿いの面)に沿ってコイル3及びチャンバ7が配置されている。
【0060】
チャンバ7は、第1セラミックスブロック4に設けた溝、及び、第2セラミックスブロック5と第3セラミックスブロック6の下方の溝、セラミックス管33の外周面に大部分が囲まれて形成されている。つまり、チャンバ7全体が、誘電体部材で囲まれている構成である。また、チャンバ7は環状である。ここでいう環状とは、一続きの閉じたヒモ状をなす形状を意味している。
【0061】
本実施の形態3において、チャンバ7の下側の直線部7cは、第2セラミックスブロック5及び第3セラミックスブロック6の最下部に設けられ、下側直線部7cの内壁面7dは、セラミックス管33の平面33aで構成されている。この平面33aは、セラミックス管33の
図7Aの下面であり、開口部8の方向に露出している部分である。
【0062】
また、コイル3は、環状のチャンバ7の2つの線状の領域(すなわち、長辺をなす直線部7a,7c)のみに沿って配置された2本の線状の導体で構成される。
図10に示すように、第1コイル3aの一端と第2コイル3bの一端とが高周波電源38に接続され、第1コイル3aの他端と第2コイル3bの他端とがそれぞれ接地されている。よって、第1コイル3aと第2コイル3bとには、開口部8の長手方向に沿って逆向き(すなわち、逆位相)の高周波電力を高周波電源38から印加する。ここでは、1つの高周波電源38を分岐する場合を例示しているが、2台の高周波電源を2つの第1コイル3aと第2コイル3bとにそれぞれ別々に接続し、2台の高周波電源を、フェーズシフターなどを適宜用いて同期運転させてもよい。
【0063】
第1コイル3aの両端には、第1コイル3aの長手方向とは直角方向に屈曲して連続した接続部の例としての銅棒37がそれぞれ設けられ、各銅棒37が冷媒流路126bと第5セラミックスブロック23とを貫通して外部との電気的接続がなされる。一方、第2コイル3bは、セラミックス管33を貫通するなどして、誘導結合型プラズマトーチユニットTの外部との電気的接続がなされる。
【0064】
チャンバ7に発生したプラズマPは、チャンバ7の最下部をなすプラズマ噴出口(第2セラミックスブロック5及び第3セラミックスブロック6の最下部に設けた長辺をなす直線状の開口部8)より基材2に向けて噴出する。また、チャンバ7の長手方向と開口部8の長手方向とは、平行に配置されている。
【0065】
第1セラミックスブロック4の第2セラミックスブロック5に対向する面の上部に設けた縦断面長方形の溝は、第1ガスマニホールド9である。第1ガス供給配管10より第1ガスマニホールド9に供給されたガスは、第1ガスマニホールド9から、第1セラミックスブロック4の第2セラミックスブロック対向面の中間部に設けられた溝と第2セラミックスブロック5の
図7Aの縦方向沿いの平面部との間に縦方向沿いに位置するガス導入部の例としての第1ガス供給穴11を介してチャンバ7に、導入される。
【0066】
第2セラミックスブロック5と第3セラミックスブロック6の最下部の湾曲した凹部内に、大略筒状のセラミックス管33が設けられ、チャンバ7の最下部の上面が、セラミックス管33の平面状の底面(内壁面7d)33aにより構成される配置となっている。セラミックス管33は、内部に空洞を持つ管であり、その内部の空洞の冷媒流路126eに冷媒26を流す機構が備えられている。
【0067】
第1セラミックスブロック4と第4セラミックスブロック22とに囲まれた冷媒26の冷媒流路126a,126dが設けられ、冷媒26で第1セラミックスブロック4の冷却がなされる。
【0068】
また、第1コイル3aは、断面が円形の銅棒を、第2セラミックスブロック5と第5セラミックスブロック23とに囲まれた冷媒26の冷媒流路126bの内部に配置したものである。また、第3セラミックスブロック6と第6セラミックスブロック24とに囲まれた冷媒26の冷媒流路126cも配置している。各コイル3を中空の管とし、冷媒流路126a,126bとは別系統で冷媒26を給排してもよい。このように、セラミックス管33の内部空洞、コイル3の中空の管内、及び冷媒流路126a,126bに水などの冷媒26を流すことで、コイル3及び各セラミックス部品の冷却が可能である。第1セラミックスブロック4と第4セラミックスブロック22との間、第2セラミックスブロック5と第5セラミックスブロック23との間、及び、第3セラミックスブロック6と第6セラミックスブロック24との間の冷媒流路の周りには、オーリング27が配置され、冷媒26が漏れないように構成されている。
【0069】
図7Dに示すように、シールド筒32は、セラミックス管33の端部にねじ込まれたシールド筒端部34と導通しており、ブラシなどを介して回転しながら、常時、外部回路と電気的な接続が確保される。シールド筒端部34にねじ込まれたセラミックスアダプタ35に、第2コイル3bの第1端部36がねじ込まれており、第2コイル3bの第1端部36に第2コイル3bが導通している。また、第2コイル3bの第2端部31がセラミックス管33の端部にねじ込まれ、第2コイル3bの第2端部31に第2コイル3bが導通している。従って、第2コイル3bへの通電は、ブラシなどの回転導通手段を適宜用いることにより、第2コイル3bの第1端部36及び第2コイル3bの第2端部31を介して実現される。
【0070】
図8〜
図9からわかるように、発生するプラズマPは、開口部8の線方向の長さと同じ長さの2つの長方形がL字状に接合された立体の外縁と同じような形状となる。このように、本実施の形態3では、プラズマPが、レーストラック形状に対して若干いびつな形状となっている。これは、チャンバ7をセラミックス管33と干渉しないように配置する必要があるためである。
【0071】
図11に示すように、ファラデーシールドとして作用するシールド筒32は、第2コイル3bを構成する素線の周りに、第2コイル3bがなす線方向とは交差する向きに多数の導通部としての導体線32aを有する導体部からなる。導体線32aが1つの直線に沿って等間隔で並べられ、その内部に第2コイル3bを配置する。複数の導体線32aは、その電位を等しく保つため、接続線32bによって導通が図られる。第2コイル3bには高い高周波電圧が印加されるので、第2コイル3bとシールド筒32との間で放電が起きるのを防止するため、セラミックス管33の内部の冷媒流路126eには、水ではなく絶縁性に優れた冷媒26、たとえば、絶縁油、又は、パーフロロポリエーテル等のフッ素化液などを流すことが好ましい。第2コイル3bとシールド筒32との間に、ガラス又はセラミックス材などの筒を配置してもよい。
【0072】
本実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、第2ガス供給穴14から直線部7cに噴出するアルゴンガスの流量を増減し、
図12A及び
図12Bに示すように、プラズマPの位置を左右に揺動することができる。
【0073】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、
図13を参照して説明する。
【0074】
図13は、実施の形態4における、ガス流量と、プラズマ位置と、基材ステージ速度との変化を示すグラフである。
図13に示すように、第2ガス供給穴14から直線部7cに噴出するアルゴンガスの流量は、タイミング制御装置46の制御の下に、第2マスフローコントローラ44によって最少流量g
2MINと最大流量g
2MAXの間で増減を繰り返すように制御される。また、この増減に同期して、タイミング制御装置46の制御の下に、第3ガス供給穴17から直線部7cに噴出するアルゴンガスの流量を、第3マスフローコントローラ45によって最少流量g
3MINと最大流量g
3MAXとの間で増減を繰り返すように制御する。典型的には、g
2MIN=g
3MIN、g
2MAX=g
3MAXである。タイミング制御装置46の制御の下に、第2ガス流量g
2が徐々に増加していく期間Fにおいて、第3ガス流量g
3が徐々に減少していくよう、また、第2ガス流量g
2が徐々に減少していく期間Rにおいて、第3ガス流量g
3が徐々に増加していくように、2系統のガス流量を同期して制御する。
【0075】
このような構成によっても、プラズマPの位置を左右に揺動することができる。
【0076】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、
図14を参照して説明する。
【0077】
図14は、開口部8近傍の拡大図であり、
図12Aに相当する。
【0078】
本実施の形態5においては、実施の形態3と異なり、セラミックス管33の断面が長方形である。
【0079】
このような構成によっても、プラズマPの位置を左右に揺動することができる。
【0080】
(変形例等)
以上述べた前記実施の形態1〜5にかかるプラズマ処理装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。
【0081】
例えば、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、直交ロボットのような移動機構により、固定された基材ステージ1に対して走査してもよいし、固定された誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、基材ステージ1をXYステージのようなステージ移動機構で走査してもよい。
【0082】
また、本発明の種々の構成によって、基材2の表面近傍を高温処理することが可能となる。それにより、電子デバイス、例えば、従来例で述べたTFT用半導体膜の結晶化又は太陽電池用半導体膜の改質に適用可能であることは勿論、シリコン半導体集積回路の酸化、活性化、シリサイド形成などのアニール、種々の電子デバイスのリフロー、又は、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、様々な表面処理に適用できる。
【0083】
また、この明細書においては、簡単に理解しやすくするため「熱プラズマ」という言葉を用いているが、熱プラズマと低温プラズマとの区分けは厳密には難しく、また、例えば、田中康規「熱プラズマにおける非平衡性」プラズマ核融合学会誌、Vol.82、No.8(2006)pp.479−483において解説されているように、熱的平衡性のみでプラズマの種類を区分することも困難である。本発明は、基材を熱処理することを一つの目的としており、熱プラズマ、熱平衡プラズマ、又は、高温プラズマなどの用語にとらわれず、高温のプラズマを照射する技術に関するものに適用可能である。誘導結合型プラズマトーチにおいては、弱い放電と強い放電との2つのモードが存在しうるが、本発明は、強い放電を効果的に利用するためのものであるということもできる。
【0084】
なお、前記様々な実施形態1〜5又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。