(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1光電変換部は、第1画素電極と、前記第1画素電極の上方に位置する第1上部電極と、前記第1画素電極と前記第1上部電極とに挟まれる第1光電変換膜と、を含み、
前記第2光電変換部は、第2画素電極と、前記第2画素電極の上方に位置する第2上部電極と、前記第2画素電極と前記第2上部電極とに挟まれる第2光電変換膜と、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本願発明者が考察した従来技術の問題点を説明する。
【0012】
特許文献1に開示された画像合成では、複数の画像データが時系列に取得される。そのため、一枚の合成画像を得るには通常の撮像時間の数倍の時間が必要となる。また、時間差のある画像を合成するので画像の同時性が損なわれ、動きのある被写体の画像に乱れが生じてしまう。
【0013】
特許文献2では、感度および飽和電子数が同一である、同じ大きさの複数のフォトダイオードを用いている。それぞれのフォトダイオードに入射する光量を大小の2種類に分けるオンチップトップレンズを備えている。この構成によれば、複数の撮像セルの間では実
効的に感度が異なるように見せかけられる。1画素上に2つのセルが搭載されているので、同時に撮像が可能となり、画像の同時性は確保される。
【0014】
一方、1画素内に2つのセルを配置する必要があるので、フォトダイオードの面積は従来と比べて1/2以下にならざるを得なくなる。フォトダイオードの面積と、感度または飽和電子数とは、略比例関係にある。その結果、フォトダイオードの面積が1/2以下になれば、感度および飽和電子数も従来の1/2以下となる。
【0015】
図1は、従来の撮像セル特性と、望ましい撮像セル特性とを模式的に示している。横軸は感度を示し、縦軸は飽和電子数を示している。ここでいう、感度とは、撮像装置(イメージセンサ)の特性を示す指標の1つであり、入射光に対して撮像セルに発生する電荷(電子正孔対)の数を意味する。感度は一般的に単位(e
-/Lux・sec)で表される
。また、飽和電子数とは、撮像セルに蓄積される電子数の許容量を意味し、単位(e
-)
で表される。感度および飽和電子数は原則、光電変換素子の有効面積に比例する。ただし、感度は、マイクロレンズの設計にも依存する。
【0016】
単一の画素内に1つの撮像セルを有する通常のセル(以下、「通常セル」と称する。)に対し、高ダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)撮影では、単一の画素内の2つの撮像セルを用いる。これら2つの撮像セルはそれぞれ、(a)通常セルと同程度の感度および飽和電子数である撮像セル特性と、(b)飽和電子数は通常セルと同程度であり、感度は通常セルと比べて低い撮像セル特性と、を備えていることが望ましい。図中の「a」および「b」はその望ましい組み合わせを示している。
【0017】
図1中の「a’」および「b’」は、特許文献2における2つの撮像セルの組み合わせを示している。上述したとおり、各撮像セル(フォトダイオード)の面積は、通常セルと比べて1/2以下になる。そのため、各撮像セルの感度は低下し、飽和電子数も減少する。これは、望ましい特性から乖離してしまうことを意味している。このように、特許文献2における撮像セルの特性は、要求される特性と比べると著しく劣る。
【0018】
図2は、従来の撮像セル特性と、さらに望ましい撮像セル特性とを模式的に示している。
図2の「b」に示すように、感度を低下させることにより、入射光の光量が高いときに発生し得る飽和が緩和される。加えて、飽和電子数そのものを増大できれば、ダイナミックレンジはさらに拡大する。
【0019】
下記の表1は、フォトダイオードを有する従来のSiセンサと特許文献3に開示された光電変換膜を有する積層型センサとを比較して素子機能およびセンサ性能を決定するそれぞれの要因を表している。表1から分かるように、従来のSiセンサでは、感度・飽和電子数はいずれもフォトダイオードの性能によって決定される。これに対して、光電変換膜を有する積層型センサでは、感度は光電変換膜の面積とその量子効率に依存し、飽和電子数は電荷蓄積ノードの容量に依存する。そのため、電荷蓄積ノードの容量が増大すれば、飽和電子数は増加する。このように、積層型センサにおいては、飽和電子数が光電変換膜の性能に依存しないため、本質的には飽和電子数を増加させることができる。しかしながら、電荷蓄積ノードの容量を増大させると、大きな副作用が発生する。
【0021】
図3は、電荷蓄積ノードの容量と、飽和電子数(e
-)およびランダムノイズ(e
-)との関係を模式的に示している。横軸は電荷蓄積ノードの容量を示し、縦軸は飽和電子数およびランダムノイズを示している。電荷蓄積ノードの容量を大きくすることにより、飽和電子数を増大させることは可能であるが、それと同時にランダムノイズが増大してしまうという課題が発生する。
【0022】
ランダムノイズには主に、電荷検出回路が電荷蓄積ノードに蓄積された電荷を読み出すとき、つまり転送するときに発生するノイズ、および電荷検出回路が電荷蓄積ノードに蓄積された電荷をリセットするときに発生するノイズ(以下、「リセットノイズ」と呼ぶ。)などが含まれる。電荷蓄積ノードを大容量化すると、飽和電子数は増大できるが、電荷蓄積ノード電圧の変化量に対する、蓄積電荷数の変化量の割合は大きくなる。電荷検出回路で発生するノイズは電圧ノイズであり、その結果として蓄積電荷数に換算されたノイズは大きくなってしまう。
【0023】
また、シリコンフォトダイオードを光電変換に用いるセンサでは、電荷の完全転送がなされるので、CDS(相関2重サンプリング)がリセットノイズの抑制に効果的である。これに対し、光電変換膜を用いる積層型センサでは、電荷の完全転送はできないので、CDSを用いてリセットノイズをキャンセルできない。そのため、詳細は後述するが、例えば特許文献4で提案されているようなフィードバックを用いたノイズキャンセルが必要である。しかし、上述したように、電荷蓄積ノードを大容量化すると、蓄積電荷数の変化量に対する電荷蓄積ノード電圧の変化量の割合は小さくなるので、フィードバックによってリセットノイズが十分に抑制される効果が得られなくなる。
【0024】
以下、図面を参照しながら、本開示による実施形態を説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、一の実施形態と他の実施形態とを組み合わせることも可能である。以下の説明において、同一または類似する構成要素については同一の参照符号を付している。また、重複する説明は省略する場合がある。
【0025】
(第1の実施形態)
図4から
図12Bを参照して、本実施形態による撮像装置100の構造、機能および駆動方法を説明する。以下、半導体基板としてP型シリコンの基板を用いた例を説明する。また、信号電荷として正孔を利用する例を示す。なお、信号電荷として電子を用いても構
わない。
【0026】
(撮像装置100の構造)
まず、
図4を参照しながら、撮像装置100の構造を説明する。
【0027】
図4は、撮像装置100の構造の一例を模式的に示している。撮像装置100は、2次元に配列された複数の単位画素30を備えている。なお、実際には、数百万個の単位画素30が2次元に配列され得るが、
図4は、そのうちの2×2の行列状に配置された単位画素30を示している。なお、撮像装置100は、ラインセンサであっても構わない。その場合、複数の単位画素30は、1次元(行方向または列方向)に配列され得る。
【0028】
単位画素30は、第1の撮像セル31および第2の撮像セル31’を含んでいる。第1の撮像セル31は高飽和に対応した撮像セルであり、第2の撮像セル31’は低ノイズに対応した撮像セルである。典型的には、第1の撮像セル31は低感度用の撮像セルとして機能し、第2の撮像セル31’は高感度用の撮像セルとして機能する。撮像装置100は、第1の撮像セル31用に、行毎に配置された複数のリセット信号線47および複数のアドレス信号線48と、列毎に配置された複数の垂直信号線45、電源配線46および複数のフィードバック信号線49と、を備えている。また、撮像装置100は、第2の撮像セル31’用に、行毎に配置された複数のリセット信号線47’および複数のアドレス信号線48’と、列毎に配置された複数の垂直信号線45’、電源配線46’および複数のフィードバック信号線49’と、を備えている。
【0029】
撮像装置100には、第1の撮像セル31からの信号を処理する第1の周辺回路と、第2の撮像セル31’からの信号を処理する第2の周辺回路とがそれぞれ個別に設けられている。第1の周辺回路は、第1の垂直走査回路52、第1の水平走査回路53および第1の列AD変換回路54を有し、第2の周辺回路は、第2の垂直走査回路52’、第2の水平走査回路53’および第2の列AD変換回路54’を有している。ただし、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’とのアドレス信号線は画素の構成次第で共通にすることが可能である。
【0030】
第1の撮像セル31に着目すると、第1の垂直走査回路52は、複数のリセット信号線47および複数のアドレス信号線48を制御する。垂直信号線45は第1の水平走査回路53に接続され、画素信号を第1の水平走査回路53に伝達する。電源配線46は、すべての単位画素30に電源電圧を供給する。フィードバック信号線49は、後述するフィードバックアンプ50からのフィードバック信号を単位画素30の第1の撮像セル31に伝達する。第2の撮像セル31’においても、第1の撮像セル31と同様に各種の信号線が配線されており、それぞれの回路が各信号線を制御する。
【0031】
(第1および第2の撮像セル31、31’の回路構成)
次に、
図5を参照しながら、第1および第2の撮像セル31、31’の回路構成の一例を説明する。なお、第1および第2の撮像セル31、31’はそれぞれ、独立した実質的に同じ回路構成を有している。
【0032】
図5は、単位画素30の拡大図であり、第1および第2の撮像セル31、31’の回路構成を模式的に示している。第1の撮像セル31は、容量素子、第1の光電変換部43および第1の電荷検出回路51を含み、第2の撮像セル31’は、第2の光電変換部43’および第2の電荷検出回路51’を含んでいる。容量素子は、例えば後述するMOM容量6である。以下、第1の撮像セル31に着目して回路構成を説明する。
【0033】
第1の電荷検出回路51は、増幅トランジスタ40と、リセットトランジスタ41と、
アドレストランジスタ42とを含んでいる。
【0034】
第1の光電変換部43は、リセットトランジスタ41のドレイン電極と、増幅トランジスタ40のゲート電極とに電気的に接続されており、第1の撮像セル31に入射する光(入射光)を光電変換する。第1の光電変換部43は、入射光の光量に応じた信号電荷を生成する。生成された信号電荷は、電荷蓄積ノード44によって蓄積される。
【0035】
電源配線46は、増幅トランジスタ40のソース電極に接続されている。電源配線46は、列方向に配線されている。これは以下の理由による。第1の撮像セル31は行単位で選択される。そのため、電源配線46を行方向に配線すると、一行分の画素駆動電流がすべて1本の電源配線46に流れて電圧降下が大きくなるからである。電源配線46により、撮像装置100におけるすべての第1の撮像セル31内の増幅トランジスタ40に共通のソースフォロア電源電圧が印加される。
【0036】
増幅トランジスタ40は、電荷蓄積ノード44に蓄積された信号電荷の量に応じた信号電圧を増幅する。
【0037】
リセットトランジスタ41のゲート電極は、リセット信号線47を介して第1の垂直走査回路52に接続され、ソース電極は、フィードバック信号線49に接続されている。リセットトランジスタ41は、電荷蓄積ノード44に蓄積された電荷をリセット(初期化)する。換言すると、リセットトランジスタ41は、増幅トランジスタ40のゲート電極の電位をリセットする。
【0038】
アドレストランジスタ42のゲート電極は、アドレス信号線48を介して第1の垂直走査回路52に接続され、ドレイン電極は、垂直信号線45を介して第1の水平走査回路53に接続されている。アドレストランジスタ42は、増幅トランジスタ40の出力電圧を垂直信号線45に選択的に出力する。
【0039】
第1の垂直走査回路52は、アドレストランジスタ42のオンおよびオフを制御する行選択信号をアドレストランジスタ42のゲート電極に印加する。これにより、垂直方向(列方向)に読み出し対象の行が走査され、読み出し対象の行が選択される。選択された行の単位画素30から垂直信号線45に信号電圧が読み出される。また、第1の垂直走査回路52は、リセットトランジスタ41のオンおよびオフを制御するリセット信号をリセットトランジスタ41のゲート電極に印加する。これにより、リセット動作の対象となる単位画素30の第1の撮像セル31の行が選択される。
【0040】
第1の列AD変換回路54は、行毎に第1の撮像セル31から垂直信号線45に読み出された信号に対し、例えば相関2重サンプリングに代表される雑音抑圧信号処理およびアナログ−デジタル変換(AD変換)などを行う。第1の水平走査回路53は、第1の列AD変換回路54で処理された信号の読み出しを駆動する。
【0041】
(単位画素30のデバイス構造)
図6は、本実施形態による撮像装置100中の単位画素30のデバイス構造の断面を模式的に示している。
【0042】
単位画素30は、典型的にはP型シリコン基板1、第1の撮像セル31、第2の撮像セル31’、光電変換膜9、上部電極10、カラーフィルタ11、およびマイクロレンズ12を有している。ただし、モノクロ撮像だけを行う場合、カラーフィルタ11は設けられていなくてもよい。また、マイクロレンズによる集光を行わない場合、マイクロレンズ12は設けられていなくてもよい。
【0043】
光電変換部は、光電変換膜9、上部電極10、第1の画素電極7および第2の画素電極8によって形成されている。光電変換部は、第1の撮像セル31の第1の光電変換部43と第2の撮像セル31’の第2の光電変換部43’とを有している。光電変換膜9は、第1の撮像セル31用の第1の光電変換領域33と、第2の撮像セル31’用の第2の光電変換領域33’とを含んでいる。第1の光電変換領域33は、第1の画素電極7と接している。第2の光電変換領域33’は、第2の画素電極8と接している。本実施形態では、第1の撮像セル31の感度は、第2の撮像セル31’の感度よりも低い。また、第1の撮像セル31の電荷蓄積ノードの容量は、第2の撮像セル31’の電荷蓄積ノードの容量よりも大きい。
【0044】
図6の断面図からは、第1の画素電極7は、第2の画素電極8を間に介して2つに分かれているように見える。しかし実際は、
図6における2つの第1の画素電極7は、電気的に等電位であり、単一の画素電極である。
【0045】
マイクロレンズ12は、光電変換部全体を覆うようにP型シリコン基板1に支持されている。このように、第1の撮像セル31および第2の撮像セル31’は共通のマイクロレンズ12を有している。マイクロレンズ12は、単位画素30への入射光を単位画素30の中央(第2の画素電極8)に集光する。第2の画素電極8は、マイクロレンズ12の光軸上に配置されてもよい。
【0046】
光電変換膜9は、P型シリコン基板1の上方に積層されている。光電変換膜9は、例えば有機材料またはアモルファスシリコンから形成され得る。光電変換膜9は、外部からの入射光を光電変換する。第1の画素電極7および第2の画素電極8は、光電変換膜9のP型シリコン基板1側の面に接している。言い換えると、第1の画素電極7および第2の画素電極8は、P型シリコン基板1と光電変換膜9との間に配置されている。第1の画素電極7は第1の光電変換領域33に発生した信号電荷を収集する。また第2の画素電極8は第2の光電変換領域33’に発生した信号電荷を収集する。
【0047】
上部電極10は透明電極であり、光電変換膜9における第1の画素電極7および第2の画素電極8に対向する面に接して形成されている。上部電極10には、正の定電圧が印加され、第1の画素電極7および第2の画素電極8には、負の定電圧が印加される。これにより、光電変換膜9には電子正孔対が光電変換により発生する。第1の画素電極7上の第1の光電変換領域33で発生した正孔は、第1の画素電極7に移動する。第2の画素電極8上の第2の光電変換領域33’で発生した正孔は、第2の画素電極8に移動する。
【0048】
第1の撮像セル31は、単位画素30の領域の内、第2の撮像セル31’以外の領域を含んでいる。第1の撮像セル31は、第1の光電変換領域33と、第1の画素電極7と、第1の電荷蓄積ノード32と、第1の電荷検出回路51と、STI(Shallow Trench Isolation)分離層2とを含んでいる。
【0049】
第1の電荷検出回路51は、P型シリコン基板1に形成されている。第1の電荷検出回路51は、第1の電荷蓄積ノード32を介して第1の画素電極7に電気的に接続されている。図中の第1の拡散層22は、第1のリセットトランジスタ41(
図5を参照)のN型のソース領域である。また、矢印は、第1の増幅トランジスタ40(
図5を参照)のゲート幅を示している。なお、第1の増幅トランジスタ40のドレインおよびソース領域などは紙面に垂直な方向に配置されていて、図示されていない。
【0050】
第1の電荷蓄積ノード32は、第1の画素電極7に移動した電荷(正孔)を蓄積する。第1の電荷蓄積ノード32以外に、第1の画素電極7、第1の拡散層22、第1の増幅ト
ランジスタ40のゲート電極3およびこれらを電気的に接続する配線(不図示)も、正孔を蓄積する電荷蓄積ノードとして機能し得る。これらの電荷蓄積ノードとして機能するものを総称して「電荷蓄積ノード44」(
図5を参照)と称する。ゲート電極3はポリシリコンから形成され得る。
【0051】
第1の撮像セル31は、第1の電荷検出回路51と第1の画素電極7との間に、一端が電気的に接続されたMOM(Metal Oxide Metal)容量6をさらに含んでいる。MOM容量6により、電荷蓄積ノード44の容量は増加する。その結果、
図3に示されるように第1の撮像セル31の飽和電子数を増大させることができる。第1の撮像セル31は高飽和に対応した撮像セルとして機能する。
【0052】
第2の撮像セル31’は、第2の光電変換領域33’と、第2の画素電極8と、第2の電荷蓄積ノード32’と、第2の電荷検出回路51’と、STI分離層2と、を含んでいる。
【0053】
第2の電荷検出回路51’は、P型シリコン基板1に形成されている。第2の電荷検出回路51’は、第2の電荷蓄積ノード32’を介して第2の画素電極8に電気的に接続されている。図中の第2の拡散層23は、第2のリセットトランジスタ41’(
図5を参照)のN型のソース領域である。
【0054】
第2の電荷蓄積ノード32’は、第2の画素電極8に移動した正孔を蓄積する。第2の電荷蓄積ノード32’以外に、第2の画素電極8、第2の拡散層23、第2の増幅トランジスタ40’のゲート電極3およびこれらを電気的に接続する配線(不図示)も、正孔を蓄積する電荷蓄積ノードとして機能し得る。これらを総称して「電荷蓄積ノード44’」(
図5を参照)と称する。
【0055】
第2の撮像セル31’には、MOM容量などの容量素子は設けていない。
図3に示されるように、第2の撮像セル31’において電荷蓄積ノード44’の容量を相対的に小さくすることで、ランダムノイズを抑制できる。第2の撮像セル31’は低ノイズに対応した撮像セルとして機能する。
【0056】
第1の電荷蓄積ノード32および第2の電荷蓄積ノード32’は、コンタクトプラグ5を介してローカル配線4に接続されている。第1の電荷蓄積ノード32は、ローカル配線4を介してゲート電極3および第1の拡散層22に電気的に接続されている。また、第2の電荷蓄積ノード32’は、ローカル配線4を介してゲート電極3および第2の拡散層23に電気的に接続されている。なお、ローカル配線4は、ポリシリコンから形成され得る。
【0057】
図7は、P型シリコン基板1の法線方向から見たときの単位画素30内の画素電極(第1の画素電極7および第2の画素電極8)の平面形状を示している。第2の画素電極8は、単位画素30の中央に配置され、略円形状を有している。その半径は、例えば0.75μmである。第1の画素電極7は、第2の画素電極8を取り囲むように間隙を介して配置されている。第2の画素電極8の面積は、第1の画素電極7の面積よりも小さい。
【0058】
単位画素30の一辺の長さWは、例えば3μmである。単位画素30は、3層Cu配線を含んでいる。長さWは、隣接する単位画素30の中心の間の距離(画素ピッチ)に相当する。
【0059】
本実施形態では、第1の画素電極7の面積は、第2の画素電極8の面積よりも大きい。また、マイクロレンズ12により光が集光される領域(単位画素30の中央近辺)に第2
の画素電極8を配置している。このように配置することにより、マイクロレンズ12の集光を利用して、面積の小さい第2の撮像セル31’を高感度用の撮像セルとして機能させ、第1の撮像セル31を低感度用の撮像セルとして機能させている。その結果、第1の撮像セル31によって低感度の画像を撮像し、第2の画像セル31’によって高感度の画像を撮像することができる。例えば、高感度の画像とは、暗い環境下で得られる暗い被写体などの画像を指し、低感度の画像とは、明るい環境下で得られる明るい被写体など画像を指す。
【0060】
ここで、
図8を参照して、第1の撮像セル31および第2の撮像セル31’の感度をより詳細に説明する。
【0061】
図8は、単位画素30全体での集光率を100%として規格化したとき、第2の画素電極8の半径と第2の画素電極8の集光率との関係を示している。横軸は第2の画素電極8の半径(μm)を示し、縦軸は第2の画素電極8の集光率(%)を示している。
【0062】
第2の画素電極8の半径が0.75μmであるとき、その面積は画素単位30全体の面積の20%程度となる。その場合でも、90%以上の高い集光率が得られることが分かる。マイクロレンズ12により入射光は主に画素中央に集光されるからである。集光率は、画素電極上の光電変換膜に発生する電荷(正孔)数に比例する。マイクロレンズ12により光が集光されている限り、第2の画素電極8の面積が小さくても90%以上の高い感度が維持される。
【0063】
これに対して、第1の画素電極7の面積は単位画素30全体の面積の80%を占める。しかしながら、第1の画素電極7上の第1の光電変換領域33には入射光の10%以下の光しか入射しないので、第1の撮像セル31の感度は10%以下に低下する。このように、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’との間において略1桁の感度差を生じさせることができる。
【0064】
なお、単位画素30の各電極および各配線の材料として、シリコン半導体デバイスの製造に一般に用いられる材料を広く利用することができる。
【0066】
撮像装置100では、信号電荷を転送またはリセットするときに、ランダムノイズが発生し得る。ただし、以下においては、信号電荷をリセットするときに発生するリセットノイズに主に起因したランダムノイズを説明する。
【0067】
リセット時にランダムノイズが残存すると、次に電荷蓄積ノード44に蓄積される信号電荷には残存したノイズが加算され得る。その場合、信号電荷を読み出すときにランダムノイズが重畳された信号が出力される。
【0068】
撮像装置100は、このランダムノイズを除去するためにフィードバック回路を備えている。以下、フィードバック回路によるフィードバック動作を説明する。
【0069】
フィードバック回路はフィードバックアンプ50を含んでいる。フィードバックアンプ50は、単位画素30の各列に対応して設けられている。フィードバックアンプ50の負側の入力端子は、対応した垂直信号線45に接続されている。また、フィードバックアンプ50の出力端子と、リセットトランジスタ41のソース電極とは、フィードバック信号線49によってスイッチを介して接続されている。従って、フィードバックアンプ50は、増幅トランジスタ40と、アドレストランジスタ42と、リセットトランジスタ41と
が導通状態にあるときに、アドレストランジスタ42の出力値を負端子に受ける。増幅トランジスタ40のゲート電位が所定のフィードバック電圧となるように、フィードバックアンプ50はフィードバック動作を行う。
【0070】
撮像装置100では、第1の垂直走査回路52により選択された1行分の単位画素30が選択される。選択された単位画素30内の第1の光電変換部43で光電変換された信号電荷が増幅トランジスタ40によって増幅される。単位画素30内の信号電荷が、アドレストランジスタ42を介して垂直信号線45に出力される。
【0071】
出力された信号電荷は、第1の水平走査回路53により選択されて外部に出力される。また、第1の撮像セル31内の信号電荷は、リセットトランジスタ41をオン状態とすることにより排出される。その際、リセットトランジスタ41からkTC雑音と呼ばれる大きな熱雑音(ランダムノイズ)が発生する。この熱雑音は、リセット動作後においても電荷蓄積ノード44に残留している。
【0072】
この熱雑音を抑えるために、垂直信号線45をフィードバックアンプ50の負側の入力端子に接続させている。負側の入力端子への電圧値は、フィードバックアンプ50により反転増幅される。電荷蓄積ノード44の電荷がリセットトランジスタ41によってリセットされるとき、3つのトランジスタは導通状態になる。反転増幅された信号はフィードバック信号線49を介してリセットトランジスタ41のソース電極にフィードバックされている。具体的には、電荷蓄積ノード44に発生するランダムノイズは、増幅トランジスタ40、アドレストランジスタ42、垂直信号線45、フィードバックアンプ50およびフィードバック信号線49を介してリセットトランジスタ41のソース電極に負帰還される。電荷蓄積ノード44のノイズ成分が打ち消され、ランダムノイズを負帰還制御により抑圧することができる。なお、熱雑音の交流成分がリセットトランジスタ41のソース電極にフィードバックされる。直流成分は、0V近傍の正電圧である。
【0073】
上述したように、飽和電子数は光電変換膜9で発生した電荷(正孔)を蓄積する電荷蓄積ノード44の容量によって決定される。
【0075】
第1の撮像セル31における電荷蓄積ノード44の容量は主に、第1の画素電極7と上部電極10との間の容量、第1の画素電極7と第2の画素電極8との間の容量、第1の画素電極7と、隣接する単位画素30の第1の画素電極7との間の容量、Cu配線間の寄生容量、第1の増幅トランジスタ40のゲート容量、および第1の拡散層22の接合容量の成分を含んでいる。第2の撮像セル31’における電荷蓄積ノード44’の容量は主に、第2の画素電極8と上部電極10との間の容量、第1の画素電極7と第2の画素電極8との間の容量、Cu配線間の寄生容量、第2の増幅トランジスタ40’のゲート容量、および第2の拡散層23の接合容量の成分を含んでいる。この内、電荷蓄積ノード44および44’のそれぞれの容量に占める割合が大きい成分は、第1の画素電極7と第2の画素電極8とに関係する容量成分である。
【0076】
第1の撮像セル31は光量の高い、明るい被写体を撮像する撮像領域として機能する。第1の撮像セル31に求められる望ましい特性は、飽和電子数が高いこと(高飽和)である。本実施形態では、
図7に示されるように、入射光がマイクロレンズ12により集光される単位画素30の中央領域を避けるようにその領域の外側に第1の画素電極7を配置しているので、第1の画素電極7の面積を十分に確保できる。その結果、第1の撮像セル31において電荷蓄積ノード44の容量が増えるので、高飽和な望ましい特性を得ることができる。
【0077】
また、
図6に示されるように、第1の画素電極7にMOM容量6を電気的に接続することにより、第1の撮像セル31の電荷蓄積ノード44の容量をさらに大きくしている。第2の撮像セル31’の電荷蓄積ノード44’の容量は、ノイズを抑制するため小さくする必要がある。電荷蓄積ノード44’の容量が小さいと、隣接する電荷蓄積ノード44’間の、電気的な容量カップリングは小さくなる。しかし、電荷蓄積ノード44’の電圧に対する互いの影響は大きくなる。MOM容量6を、隣接する第2の撮像セル31’のCu配線間に配置することにより、隣接する電荷蓄積ノード44’間の容量カップリングを抑制し、混色を抑制することができる。なお、MOM容量6により、第1の撮像セル31の電荷蓄積ノード44と、第2の撮像セル31’の電荷蓄積ノード44’との間の容量カップリングは増加する。しかし、第1の撮像セル31の電荷蓄積ノード44の容量が大きいため、電荷蓄積ノード44の電圧の振れ幅は小さくなり、混色への影響は軽微である。
【0078】
一方、第2の撮像セル31’は光量の低い、暗い被写体を撮像する撮像領域として機能する。第2の撮像セル31’に求められる望ましい特性は、ランダムノイズが小さいことである。飽和電子数は低くても、つまり低飽和でも良い。
【0079】
図7および
図8に示されたように、第2の画素電極8では、マイクロレンズ12による集光を利用して、比較的小さい面積で高感度を実現できる。また、
図3に示されるように、第2の画素電極8の面積を小さくすることにより、第2の撮像セル31’では電荷蓄積ノード44’の容量が抑制され、増幅トランジスタ40’において比較的大きな変換ゲインが確保される。
図5のフィードバック回路では、この変換ゲインが大きいほど、フィードバック回路の動作が有効となり、ランダムノイズを効果的に抑制することができる。
【0080】
また、フィードバック回路では、増幅トランジスタ40’の相互コンダクタンスgmを大きくするとトランジスタの駆動能力が高くなり、ランダムノイズをより抑制し易くなる。本実施形態では、第2の電荷検出回路51’の面積を、第1の電荷検出回路51の面積よりも大きくしている。具体的には、第2の撮像セル31’内の増幅トランジスタ40’のゲート幅を、第1の撮像セル31内の増幅トランジスタ40のゲート幅よりも大きくしている。その結果、増幅トランジスタ40’に流れるドレイン電流が増えるので、増幅トランジスタ40’の駆動能力を高めることができる。第2の撮像セル31’では、低ノイズによる撮像を実現できる。
【0081】
第2の撮像セル31’と比べて、第1の撮像セル31ではノイズが比較的大きくなる。ただし、高ダイナミックレンジの処理において、第1の撮像セル31で得られた画像と、第2の撮像セル31’で得られた画像とは合成される。その結果、合成後のS/Nは改善され、合成画像では第1の撮像セル31に起因したノイズは問題とはならない。
【0082】
図9は、単位画素30における第1の電荷検出回路51および第2の電荷検出回路51’のそれぞれの占有面積を模式的に示している。領域60は、第1の電荷検出回路51の面積を示し、領域61は、第2の電荷検出回路51’の面積を示している。第1の電荷検出回路51および第2の電荷検出回路51’の面積のそれぞれは、P型シリコン基板1に形成された各トランジスタの面積の総和を意味する。第1の電荷検出回路51を構成するトランジスタの占有面積を抑えることにより、第2の電荷検出回路51’のトランジスタの占有面積を大きくすることができる。その結果、第2の電荷検出回路51’の駆動能力を高めることができ、第2の撮像セル31’では低ノイズによる撮像を実現できる。
【0083】
(撮像装置100の駆動方法)
図10を参照しながら、撮像装置100の動作シーケンスの一例を説明する。
【0084】
図10は、撮像装置100における1サイクル(1フレーム)期間の露光および読み出し動作を模式的に示している。横軸は時間を示し、縦軸は読み出し行を示している。
図10は、いわゆるローリングシャッタ読み出しの様子を示している。撮像装置100において、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’とを用いて同じタイミングで露光および読み出し動作を行えば、原則、ダイナミックレンジを拡大させることができる。
【0085】
図6に示したデバイス構成においては第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’との間において略1桁の感度差を生じさせたが、同じ露光および読み出しを行った場合でも、通常画素に対して略1桁ダイナミックレンジを向上させることができる。
【0086】
本実施形態では、ダイナミックレンジをさらに拡大するために、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’とはそれぞれ独立した露光および読み出しタイミングを有している。撮像動作の1サイクルで、第2の撮像セル31’に第1の蓄積時間T1において露光させて、第1の撮像セル31に第1の蓄積時間T1よりも短い第2の蓄積時間T2、T3において露光させている。以下、具体的に説明する。
【0087】
本実施形態では、例えば1サイクルは1/60秒である。まず、第2の撮像セル31’では、1サイクルに近い蓄積時間T1において露光がなされ、蓄積時間経過後、第2の撮像セル31’内の電荷が行毎に順次読み出される(読み出し1)。行毎の読み出しが完了すると、その読み出し対象の行すべての第2の撮像セル31’に蓄積された電荷がリセットされる。
【0088】
第1の撮像セル31では、いわゆる非破壊読み出しが1サイクルに少なくとも2回行われる。例えば、1サイクル期間の1/30(1/1800秒)の蓄積時間T2で1回目の露光が行われ、露光完了後に読み出しが行われる(読み出し2)。その後、蓄積電荷のリセットを行わずに、1サイクル期間の1/2(1/120秒)の蓄積時間T3で2回目の露光が行われ、露光完了後に読み出しが行われる(読み出し3)。このような動作シーケンスでは、1サイクル期間において露光時間の異なる3つの撮像データを取得できる。同じ露光および読み出しを行った場合には略1桁のダイナミックレンジ向上が可能であったが、これらの撮像データを合成することにより更に略1桁半、トータルで略2桁半、高ダイナミックレンジの画像を生成できる。
【0089】
以下、
図11Aから
図12Bを参照して、撮像装置100の変形例を説明する。
【0090】
図11Aから
図11Cはそれぞれ、第2の画素電極8の平面形状の変形例を示している。図示するように、第2の画素電極8の平面形状は円形状でなくてもよく、例えば
図11Aに示されるようなドーナツ形状、
図11Bに示されるような十字形状、または
図11Cに示されるような切り欠き形状であってもよい。さらに、切り欠きは、矩形でなく円形であってもよい。このような形状によれば、光の入射角度の変化による、第1の撮像セル31の感度の変化を抑えることができる。また、光の入射角度が変化しても、第2の撮像セル31’の感度と、第1の撮像セル31の感度との比を一定に維持できる。
【0091】
本実施形態では、マイクロレンズ12を用いて入射光を単位画素30の中央に集光する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。撮像装置100はマイクロレンズ12を備えていなくてもよい。光を集光しないとき、感度および飽和電子数は、画素電極の面積だけに依存し、それに略比例する。従って、マイクロレンズ12をなくし、画素電極の面積比のみで感度比を設定することも可能である。
【0092】
図12Aおよび
図12Bは、マイクロレンズ12をなくしたときの画素電極の形状の一例を示している。
図12Aに示すように第2の画素電極8を単位画素30の中央に配置し
、間隙を介してその周囲に第1の画素電極7を配置してもよい。または、
図12Bに示すように第1の画素電極7を単位画素30の中央に配置し、間隙を介してその周囲に第2の画素電極8を配置してもよい。第2の画素電極8の面積が第1の画素電極7の面積よりも大きい限りにおいて、画素電極の形状を任意に決定し得る。
【0093】
なお、この構成によれば、第1の画素電極7の面積は小さくなり、セル感度および容量の両方が低下する。そこで、第1の画素電極7にMOM容量6を接続することにより、第1の撮像セル31における電荷蓄積ノード44の容量を大きくすることができる。
【0094】
本実施形態では、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’との間で、ランダムノイズおよび飽和電子数が互いに異なる例を説明した。しかし、本開示はこれに限定されず、ランダムノイズおよび容量の少なくとも一方が互いに異なっていてもよい。本実施形態ではフィードバック回路を用いてランダムノイズを抑制するために第2の撮像セル31’の電荷蓄積ノードの容量を抑制し、変換ゲインを高くしている。その結果として第2の撮像セル31’の飽和電子数を小さくすることができる。ただし、外部メモリーを用いて撮像前後のデータの差分を取ることによりランダムノイズをキャンセルする場合は、第2の撮像セル31’の電荷蓄積ノードの容量を抑制しなくてもよい。第2の撮像セル31’にも容量素子(例えば、MOM容量)を接続して飽和電子数を高くすることにより画像合成を容易化できる。また、例えば、マイクロレンズ12を含まない構成において、第1の画素電極7と第2の画素電極との面積を同じにすれば、感度および容量は略同一になる。そこで、第1の画素電極7にMOM容量を接続することにより、第1の撮像セル31における電荷蓄積ノード44の容量が増える。つまり、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’との間で、容量だけを異ならせることができる。その場合、感度性能は劣ってしまうが、画像合成は容易化できる。
【0095】
本開示において、「蓄積容量(storage capacitance)」とは、画素電極に接続された全ての容量成分を意味する。本実施形態において、第1の蓄積容量は、電荷蓄積ノード44およびMOM容量6によって例示される。第2の蓄積容量は、電荷蓄積ノード44’によって例示される。容量素子(capacitor)は、MOM容量6によって例示される。
【0096】
(第2の実施形態)
図13から
図16を参照しながら、第2の実施形態による撮像装置100を説明する。
【0097】
第2の実施形態による単位画素30Aは、第1の撮像セル31は容量素子としてMIM(Metal Insulator Metal)容量素子13を有している点で第1の実施形態による単位画素30とは異なる。以下、単位画素30との差異点を中心に説明する。
【0098】
図13は、本実施形態による単位画素30Aのデバイス構造の断面を模式的に示している。第1の撮像セル31は、容量素子としてMIM容量素子13を有している。MIM容量素子13は、上部電極14、下部電極16および上部電極14と下部電極16とに挟まれた絶縁体15を含む積層構造を有している。
【0099】
絶縁体15には、シリコン窒化膜、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)および酸化チタン(TiO2)などの高誘電率材料が用いられる。なお、シリコン窒化膜は、アナログ回路用の容量として一般的に用いられている。酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)の容量絶縁膜に用いられている。絶縁体15にリーク電流があると、それに寄与した電荷は電荷蓄積
ノードに蓄積される。その結果、そのリーク電流は暗時のノイズ成分となってしまう。
【0100】
高誘電率材料の膜組成は成膜後の熱処理により変化し易い。例えば400℃程度の熱処理によっても結晶化が進み、電流リーク特性が悪化する場合がある。従って、MIM容量素子13は、画素において配置配線が完了した後で形成することが望ましく、または、配線層のできるだけ上層部に形成することが望ましい。また、成膜温度が400℃を超えるポリシリコンまたはタングステンの材料を用いる、配線およびコンタクトプラグは、MIM容量素子13を形成する前に形成しておく。
【0101】
MIM容量素子13には、配線とは独立した材料及び構造を採用できる。MIM容量13は、高い比誘電率を有する材料から形成され、厚さ数十nmの絶縁体15を用いることにより、第1の実施形態で説明したMOM容量6よりも十分に大きな容量を確保することができる。ただし、MIM容量素子を形成するための追加プロセスが要求される。その結果、製造コストはその分上昇してしまうので留意されたい。これに対し、容量素子としてMOM容量6を用いると、画素内または画素間で信号をやり取りするための配置配線に用いられる配線構造を流用できる。そのため、製造コストの上昇を抑制できる。ただし、MOM容量6の容量密度が、流用される配線構造に制限されてしまい、また、配置配線が混雑してくると、MOM容量6を配置できるスペースを確保できなくなり、その結果、充分な容量が得られない場合がある。このような場合には、配線の混雑とは無関係に配置するスペースを確保できるMIM容量素子13を、容量素子として用いることが望ましい。最終的には設計仕様などに応じて最適な容量素子を適宜選択すればよい。
【0102】
MIM容量素子13により、第1の撮像セル31の電荷蓄積ノード44の容量は増加する。その結果、第1の実施形態と同様に、第1の撮像セル31の飽和電子数を増大させることができる。第1の撮像セル31は高飽和に対応した撮像セルとして機能する。なお、第2の撮像セル31’は、第1の実施形態による単位画素30の第2の撮像セル31’と同一の構造を有しているので、第2の撮像セル31’は低ノイズに対応した撮像セルとして機能する。
【0103】
図14は、本実施形態の変形例による3×3の単位画素30Bに着目し、撮像装置100におけるそのレイアウトの様子を模式的に示している。
図15は、単位画素30Bのデバイス構造の断面を模式的に示している。
図16は、
図14に示されるA−A’線に沿った単位画素30Bの断面を模式的に示している。
【0104】
単位画素30Bは、第1の画素電極7を有する第1の撮像セル31および第2の画素電極8を有する第2の撮像セル31’を有している。3×3の単位画素30Bに着目すると、
図14に示されるA−A’線(図中のx軸となす角度が略45°の方向)に沿って、3つの単位画素30Bが配置されている。2×2の行列状に位置する第2の画素電極8の略中心に1つの第1の画素電極7は位置している。第2の画素電極8の面積は、第1の画素電極7のそれよりも大きい。このように、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’とを密に配置することができて、レイアウトの効率化が図れる。
【0105】
図15に示されるように、マイクロレンズ12は、第1の実施形態とは異なり、第2の光電変換部43’を覆うようにP型シリコン基板1に支持されている。P型シリコン基板1の法線方向から見たとき、MIM容量素子13は、第1の光電変換部43と第2の光電変換部43’との間に配置されている。換言すると、MIM容量素子13は、第1の画素電極7と第2の画素電極8との間に配置されている。また、図示されるように、MIM容量素子13の少なくとも一部は、第1の画素電極7および第2の画素電極8の両方または一方に重なるようにMIM容量素子13を形成してもよい。これにより、MIM容量素子13のサイズが大きくなり、その容量を増加させることができる。
【0106】
その変形例によると、第2の実施形態と同様に、第1の撮像セル31の電荷蓄積ノード44の容量を増加させることができる。その結果、第1の撮像セル31の飽和電子数は増大し、第1の撮像セル31を高飽和に対応した撮像セルとして機能させることができる。
【0107】
図17は、本実施形態の他の変形例による単位画素30Cのデバイス構造の断面を模式的に示している。2つのマイクロレンズ12のそれぞれが、第1の光電変換部43および第2の光電変換部43’をそれぞれ覆うようにP型シリコン基板1に支持されていてもよい。その場合、第2の撮像セル31’のマイクロレンズの集光面積は、第1の撮像セル31のマイクロレンズの集光面積よりも大きい。このように、第1の撮像セル31にもマイクロレンズを配置することで、第1の撮像セル31と第2の撮像セル31’との入射角特性を揃えることができ、より自然な合成画像を得ることができる。
【0108】
第2の撮像セル31’は、MIM容量素子13よりも小さい容量を有するMIM容量13’を含んでいてもよい。第2の電荷蓄積ノード44’にMIM容量素子13’を接続する目的は以下のとおりである。第2の電荷蓄積ノード44’に接続されたMIM容量素子13’の端子と反対側の端子55に制御電圧を印加する。これによるMIM容量素子13’を介した容量カップリングを利用して第2の電荷蓄積ノード44’の電圧を制御することで、ランダムノイズおよびリーク電流を抑制する。
【0109】
例えば、MIM容量素子13’を接続していない第2の電荷蓄積ノード44’の容量は0.5fFから3fFである。ただし、電荷蓄積ノードの容量は画素サイズに大きく依存する。MIM容量素子13’を接続する場合には、第2の電荷蓄積ノード44’の容量を、ランダムノイズの増大を回避できる容量に設定する。なお、MIM容量素子13は、第1の電荷蓄積ノード44の容量を増大させる目的で用いられる。そのため、その容量は、MIM容量素子13が接続されていない第1の電荷蓄積ノード44の容量を超える容量に設定される。例えば、第1の電荷蓄積ノード44の容量は、MIM容量素子13’を接続していない第2の電荷蓄積ノード44’の容量と同様に、0.5fFから3fFである。
【0110】
(第3の実施形態)
図18を参照しながら、本実施形態による撮像モジュール200を説明する。
【0111】
図18は、撮像装置100を搭載した撮像モジュール200の機能ブロックを模式的に示している。
【0112】
撮像モジュール200は、第1の実施形態による撮像装置100とDSP(Digital Signal Processor)300とを備える。撮像モジュール200は、撮像装置100で得られた信号を処理して外部に出力する。
【0113】
DSP300は、撮像装置100からの出力信号を処理する信号処理回路として機能する。DSP300は、撮像装置100から出力されたデジタル画素信号を受け取る。DSP300は、例えばガンマ補正、色補間処理、空間補間処理、およびオートホワイトバランスなどの処理を行う。なお、信号処理回路は、ユーザにより指定された各種設定に従い撮像装置100を制御し、撮像モジュール200の全体動作を統合するマイクロコンピュータなどによっても実現され得る。
【0114】
DSP300は、撮像装置100から出力されたデジタル画素信号を処理して最適なリセット電圧(VRG、VRBおよびVRR)を算出する。DSP300は、そのリセット電圧を撮像装置100にフィードバックしている。ここで、VRG、VRBおよびVRRはそれぞれ、G画素に関するリセット電圧、B画素に関するリセット電圧およびR画素に
関するリセット電圧を示す。なお、リセット電圧は、フィードバック信号線49または垂直信号線45から伝達されたフィードバック信号であってもよい。撮像装置100とDSP300とは、一つの半導体装置(いわゆるSoC(System on a Chip))として製造することも可能である。これにより、撮像装置100を用いた電子機器を小型化することができる。
【0115】
なお、モジュール化せずに、撮像装置100だけを製品化することも当然可能である。その場合、信号処理回路を撮像装置100に外部接続して、撮像装置100の外部で信号処理を行えばよい。また、第1および第2の実施形態では、シリコン基板1の表面側に光電変換膜を配置し、その表面側からの入射光を検知する例を示した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、光電変換膜をシリコン基板1の裏面側に配置して、その裏面側からの入射光を検知するBSI(Backside Illumination)方式によるイメージセンサも含む。