(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4の何れかに記載の木質化粧板の製造方法にて製作した木質化粧板の、前記突板の前記保護層とは反対側の表面に、接着層と接着機能面とのうちの少なくとも一方を形成することと、
インサート成形で、前記接着層と前記接着機能面とのうちの少なくとも一方に成形樹脂層を射出成形することと、
を含むインサート成形品の製造方法。
請求項1に記載の木質化粧板の製造方法にて製作した木質化粧板の、前記突板の前記保護層とは反対側の表面に、接着層と接着機能面とのうちの少なくとも一方を形成することと、
インサート成形で、前記接着層及び前記接着機能面のうちの少なくとも一方に成形樹脂層を射出成形することと、
前記熱プレス加工と前記インサート成形とのうちの少なくとも一方の工程において、前記フィルム上から、木目調の凹凸シボが表面に形成された型を用いて加圧することで、前記木目調の凹凸シボを、前記保護層の前記突板とは反対側の表面および前記突板の前記保護層側の表面に転写させることと、を含み
前記導管による複数の凹凸の一部に、前記木目調の凹凸シボによって転写された凹凸を入り込ませる、
インサート成形品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら
図6、7で説明した従来の木質化粧板を用いた成形品では次の課題がある。インサート成形品の加飾工法では、突板4の表面に例えば100μmの厚膜の透明フィルムのハードコート層7を配置することで、突板4の表面に光沢感と透明フィルム表面の厚みによる奥行き感で高級感を出す加飾はできるが、見た目は突板4の表面の導管による凹凸は表れず触感を出すことが難しく、天然木本来の風合いを再現させつつ工業製品としての信頼性を担保することが難しい状況である。
【0010】
また、ハードコート層7を成す厚膜の透明フィルムを突板4の表面に配置した場合、突板4を工業製品に使用する目的で成形加工によって変形させた場合、形状の変形、絞り量が大きくなるにつれて突板4と透明フィルムの伸び等の機械特性の違いにより、突板4よりも伸び易い厚膜の透明フィルムとの間での破断や層間剥離が起こり易い。突板4の表面の木の導管を残した塗装による凹凸感のある保護層10で凹凸触感は残るが、保護層10が不均一な凹凸膜になる塗装不良のゆず肌とならない様に、突板4の表面への均一な塗装が難しく、ノウハウと技能が必要なモノづくりである。
【0011】
また、インサート成形品12の場合には、成形後の後工程で塗装が必要なため、工程数が増えることや塗装での塗料の塗着効率が悪く材料ロスが多いこと、また突板4の表面の導管をキレイに残すための品質管理が難しく、製造コストが高くなる傾向にある。
【0012】
また、後工程で塗装するために突板4の表面の導管による凹凸は残るが、塗装面が平滑になり易く、光沢感が出てしまい突板4本来の艶消し感が無くなり、見た目が天然木本来の風合いと異なる木質化粧板の成形品となってしまう。そのため、天然木をスライスした突板4の本来の触感、風合いと工業製品に使用できる耐久性、工業製品に適用する際の安定したロスの少ないモノづくりの条件を満たすことができないのが現状である。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、突板4の表面の触感である凹凸感と見た目の艶消しの風合いのある木質化粧板と、それを安定して材料ロスを少なく高歩留まりで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の
第1の木質化粧板の製造方法は、
表面に木の導管による複数の凹凸が形成された天然木から作られた突板の一方の表面に、保護層と剥離層とベースフィルムとをこの順に備える転写フィルムを重ね合わせて、熱プレス加工にて、前記保護層と前記突板の前記一方の表面とを他の層を介在させずに直接接着させて、
前記保護層の前記突板と接着する表面とは反対側の表面に、前記導管による複数の凹凸と相似形状の第一の凹凸を形成するとともに、
前記ベースフィルムの前記保護層側の表面と、前記剥離層の前記保護層側の表面との少なくとも一方に、前記導管による複数の凹凸とは異なる形状の凹凸を形成することで、前記保護層の前記突板と接着する表面とは反対側の表面に、前記第一の凹凸とは異なる第二の凹凸を形成し、
その後に、前記剥離層とベースフィルムとを、前記突板に接着された保護層から剥離させること、
を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の
第2の木質化粧板の製造方法は、
表面に木の導管による複数の凹凸が形成された天然木から作られた突板の一方の表面に、
保護層と剥離層とベースフィルムとをこの順に備える転写フィルムを重ね合わせて、
真空成形、圧空成形、真空圧空成形、熱ラミネートのどれかの工法で、前記保護層と前記突板の一方の表面とを他の層を介在させずに直接接着させて、
前記保護層の前記突板と接着する表面とは反対側の表面に、前記導管による複数の凹凸と相似形状の第一の凹凸を形成する
とともに、
前記ベースフィルムの前記保護層側の表面と、前記剥離層の前記保護層側の表面との少なくとも一方に、前記導管による複数の凹凸とは異なる形状の凹凸を形成することで、前記保護層の前記突板と接着する表面とは反対側の表面に、前記第一の凹凸とは異なる第二の凹凸を形成し、
その後に前記剥離層とベースフィルムとを、前記突板に接着された保護層から剥離させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のインサート成形品の製造方法は、
上記した本発明の木質化粧板の製造方法にて製作した木質化粧板の、前記突板の前記保護層とは反対側の表面に、接着層と接着機能面とのうちの少なくとも一方を形成することと、インサート成形で、前記接着層と前記接着機能面とのうちの少なくとも一方に成形樹脂層を射出成形することと、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の
インサート成形品の製造方法により得られるインサート成形品は、上記した木質化粧板と、射出成形樹脂と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明木質化粧板の製造方法によると、特に
ベースフィルムの保護層側の表面と、剥離層の前記保護層側の表面との少なくとも一方に、導管による複数の凹凸とは異なる形状の凹凸を形成することで、前記保護層の突板と接着する表面とは反対側の表面に、第一の凹凸とは異なる第二の凹凸を形成することによって、保護層の表面状態を光沢〜艶消しまで、
第二の凹凸の粗さの調整のみで細かく調整可能となり、突板本来の凹凸触感を有しつつ、顧客ニーズに合わせて薄膜のハードコート層
や保護機能層の表面の光沢感、艶消し感などを自由に微調整できるため、従来では難しかった顧客ニーズに合わせたよりきめ細かな木質化粧板の成形部品が提供可能となる。
【0019】
本発明の木質化粧板とその製造方法によれば、従来の木質化粧板やそれを用いて加飾した成形品では実現が難しかった本来の突板の表面の凹凸触感と見た目の風合いを有した成形品となり、突板本来の状態に近い外観品位と工業製品に使用可能な耐久性を両立でき、突板本来の品位を有した木質化粧板を低コストで安定した製造を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
なお、
図6,7と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1〜
図4は本発明の実施の形態1を示す。
【0024】
図1は本発明の木質化粧板107の層構成の断面図を示す。
【0025】
この木質化粧板107は、
図2のS1〜S3の製造プロセスで作成できる。この製造プロセスでは
図3に示した転写フィルム100を使用する。
図4は本発明の木質化粧板107を使用したインサート成形品110の製造方法を示している。
【0026】
本発明の木質化粧板107において、天然木の突板4には不織布3が貼り付けられている。不織布3の突板4とは反対側の面には第1接着層2が設けられている。突板4の不織布3とは反対側の面には、厚みが均一で100μmよりも遙かに薄い転写層101が設けられている。転写層101の表面には凹凸106が形成されている。これは突板4の表面の導管13により形成された凹凸形状の相似形である。ここで、導管13の平均的な直径は100〜200μm程度、転写層の膜厚は4μm以上30μm以下である。
【0027】
転写層101は、
図3に示した転写フィルム100の突板用接着層105とハードコート層104とで構成されている。転写フィルム100は、ベースフィルム102の上に剥離層103を介してハードコート層104が形成され、ハードコート層104の上に突板用接着層105が形成されている。さらに詳しく説明する。
【0028】
転写フィルム100は、ベースフィルム102の表面に凹凸形状が形成された剥離層103が形成され、剥離層103の上にはハードコート層104が形成され、ハードコート層104の上には突板用接着層105が形成されている。
【0029】
転写フィルム100上の転写層101が形成される側のベースフィルム102表面の粗さ、もしくはベースフィルム102上の転写層101が形成される側に形成された剥離層103の表面粗さを変えることで、突板4の表面に転写される転写層101の最表面の粗さを調整する。転写フィルム100上の転写層101が形成される側のベースフィルム102の表面の粗さ、もしくはベースフィルム102上の転写層101が形成される側に形成された剥離層103の表面粗さが突板4の表面の導管13により形成された凹凸での粗さよりも粗さが小さいことが好ましい。
【0030】
転写フィルム100は、連続したロールフィルムで製作しても、枚葉フィルムで製作しても問題ないが、生産性の高いロールフィルムで製作するのが一般的である。ベースフィルム102の平均厚みは20μm以上50μm以下の範囲で使用することが望ましい。また、突板の表面へ転写する際の転写フィルム100の追従性をより高めるためには、30μm以上50μm以下が好ましい。
【0031】
ベースフィルム102が20μmよりも薄い場合、転写フィルム100を製造する際に、ベースフィルム102上に剥離層103、ハードコート層104、突板用接着層105を形成する際に、それぞれの層を形成する過程で熱乾燥やUV乾燥を加えることでベースフィルム102が薄すぎて、シワ、破れ、反りが出やすくハンドリングが悪くなる問題がある。
【0032】
またベースフィルム102の厚みが50μmよりも厚い場合、転写フィルムの被転写物への追従性が悪くなり易く、かつ、転写フィルム100の転写後、ベースフィルム102を被転写体から直ぐに剥がさずに保持したい場合、突板4とベースフィルム102の収縮量を比較した際に、ベースフィルムの102の収縮量が突板4よりも大きいため、ベースフィルム102の収縮に突板4が引っ張られ反るため、木質化粧板として扱い難くなる。
【0033】
また、薄いフィルムと比較し同じ巻き数のロールフィルムの厚みが厚く重量も重くなりフィルムの持ち運び等でのハンドリング性が悪くなる上にベースフィルムのコストが高くなる。目的に応じてベースフィルム102の厚みは適宜選択すれば良いが、目的の効果が得られれば上記範囲を超えても良い。
【0034】
ベースフィルム102にはPETやアクリルフィルムを用いるのが一般的であるが、それ以外の材料でも同じ効果が得られれば特に限定する必要はない。
【0035】
剥離層103は、転写フィルム100からハードコート層104と突板用接着層105を剥離させ突板4へ転写させる役割を果たす。剥離層103は熱硬化型のメラミン樹脂や2液硬化タイプのウレタン樹脂や、熱硬化型のシリコーン樹脂等が有る。これらの材料と同じ効果が得られれば特に限定する必要はない。
【0036】
剥離層103の平均厚みは0.2μm以上2μm以下の範囲で形成することが望ましい。平均厚みが0.2μmよりも薄くなると剥離層としての機能を十分に発現することが難しくなり、平均厚みが2μmよりも厚くなると追従性が悪くなり割れ易い。上記も同様に目的の効果が得られれば上記範囲に限定される必要はない。
【0037】
また、剥離層103にはフィラーを分散せることで剥離層103上に凹凸を形成することが出来る。もしくは剥離層103上のスタンパー等を用いて凹凸を形成しても良い。他にベースフィルム102上に最初に凹凸加工を施しておき、その上に剥離層103をベースフィルム102上の凹凸に沿わせて形成して剥離層103面を凹凸にしも良い。それぞれどの方法で形成したとしもて剥離層103上の凹凸を調整することで転写層101の最表面を光沢から艶消しまで調整できる。
【0038】
ハードコート層104は、突板4の表面へ転写された際に突板の表面を保護する役割である。ハードコート層104は紫外線硬化型のアフターキュアタイプのアクリル樹脂を用いることが一般的であるが、プレキュアタイプの紫外線硬化型のアクリル樹脂や、熱乾燥タイプの1液タイプのアクリル樹脂、熱乾燥タイプの2液硬化タイプのウレタンアクリル樹脂、EB(電子線)硬化タイプのアクリル樹脂を用いても良く、用途に応じて適宜選択すれば良い。目的の効果が得られれば上記以外の材料でも問題ない。また、アフターキュアタイプの材料を用いる場合、一般的に木質化粧板を成形して、ベースフィルム102、剥離層103を剥がした最終工程で紫外線、EB照射することが望ましい。理由は木質化粧板107の成形時はハードコート層104が完全硬化していない方が、成形時のハードコート層104の追従性が良く割れにくくなるためである。しかし、特に最終工程に限定する必要は無く、用途に応じて適切なタイミングで硬化させれば良い。
【0039】
ハードコート層104の厚みは2μm以上10μm以下で形成することが望ましい。より好ましくは5μm以上7μm以下である。ハードコート層104の厚みが2μmより薄いと突板の表面の保護機能が十分発現されず、厚み10μmを超えると曲面形状などに成形する際の追従性が悪くなる。しかし、目的の効果が得られれば上記範囲外の膜厚でも問題ない。
【0040】
突板用接着層105は、ハードコート層104と突板を接着させる役割である。突板用接着層105は塩酢ビニルの共重合樹脂やアクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂等を用いることができる。また熱可塑性樹脂、2液硬化型性樹脂、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、EB硬化樹脂などの種類が一般的であるが、上記特に限定はなく突板と接着する機能があれば他の材料でも問題ない。両面にセパレーターの付いた粘着剤の接着層を用いても片面のセパレーターを剥がしてハードコート層104と接着させることで、粘着剤を突板用接着層105として使用しても問題ない。
【0041】
突板用接着層105の厚みは2μm以上10μm以下が望ましい。突板用接着層105の厚みが2μmより薄くなると、ハードコート層104と突板4を接着する機能が弱くなり、十分な接着性が得られない。また10μmよりも厚くしても接着機能は大きく変わらず製造コストだけが高くなり意味がない。しかしながら上記範囲外でも目的の効果が得られれば特に限定する必要はない。
【0042】
また、必要に応じて転写フィルム100は他の保護機能層を追加して形成しても良く、例えば耐光性を上げるための紫外線カット層や、各層間の密着性を上げるためのアンカー層、ハードコート層表面に防汚機能を付与する親水層などの複数層を追加して転写フィルム100を形成しても良く、転写層101の総厚が4μm以上30μm以下の範囲で形成されれば問題ない。より好ましくは5μm以上20μm以下が望ましい。総厚が4μmより薄くなると各層の最低限必要な機能が十分に発現できない。また30μmより厚くなると、転写フィルム100の突板4への転写時に、突板4の表面の凹凸形状への追従性が悪くなるため、突板の表面の凹凸がハードコート層104の表面へ相似形状として反映され難くなる。転写層101は多層構成であり、転写層101の突板4と接着する面に突板用接着層105と転写層101の接着面105と反対側の面にハードコート層104または保護機能層の少なくとも一層を有すものであればよい。
【0043】
次に、木質化粧板の製造プロセスを説明する。
【0044】
図2は熱プレス加工を用いて転写フィルム100と突板4を接着させて木質化粧板107を製造するプロセスである。
【0045】
最初の工程S1では、プレス加工用の第1プレス型200と第2プレス型201を所定の温度に予め加熱しておき、枚葉の転写フィルム100と片面に不織布3が予め付いた枚葉の突板4を挟み込む。それにより転写フィルム100の突板用接着層105と突板4を加熱、加圧接着させる。
【0046】
なお、不織布3については、片面に不織布3が予め付いた突板4を用いも良いし、不織布3が予め片面に付いていない突板4の場合、枚葉の転写フィルム100を突板4へ接着させる工程で、突板4の転写フィルム100が配置された面と逆側に、突板4と接着可能な不織布3もしくは片面に接着剤が付与された不織布3を配置して、同時に突板4へ接着させても良い。また、突板4が連続したシートの場合、転写フィルム100については枚葉でなくロールで供給して接着させても良い。
【0047】
熱プレス加工に使用する型は、金属製の型、木型、樹脂型でも良く、またそれ以外の材質で作られても同様の効果が得られれば限定される必要はない。
【0048】
S1−2は工程S1の部分拡大図で、転写フィルム100と突板4の断面拡大図である。S1−2に示すように、第1プレス型200と第2プレス型201で挟み込む際に、第1プレス型200で転写フィルム100側から突板4を加圧した際に、転写フィルム100と突板4の間にあった空気層が、第1プレス型200の加圧により突板4の表面に沿って外部へと抜ける。その際に、突板4の表面に存在する導管13の内部に入っている空気も抜ける。突板4の導管13の内部は木の繊維が疎な部分でありポーラス状になっている。転写フィルム100の突板用接着層105と突板4が第1プレス型200の加圧により加熱接着する際に転写フィルム100の突板用接着層105が第1プレス型200からの熱伝導で軟化し、突板4の導管13に転写フィルム100の突板用接着層105の一部が入り込む。この時、突板4の導管13内部にあった空気も第1プレス型200と第2プレス型201の加熱により活性化され活発になっており、転写フィルム100の突板用接着層105が入り込むことで、突板4の導管13内の空気の一部が押し出される。この時、S1−2に示すように導管13から矢印の方向へと導管13内の空気は動き、突板4の第2プレス型201の側より空気の一部が抜ける。これにより突板4の導管13上にある転写フィルム100の各層は、突板用接着層105を起点に突板4の導管13の内部に突板用接着層105の一部が徐々に入り込む。工程S1において木の表面を転写フィルム100と突板4へ十分な熱と圧力が加わった後に、工程S2で第1プレス型200を稼働させて、転写フィルム100上に移動させる。この時、工程S1の熱プレス加工の結果、S2−2に示すように突板4の導管13の内部に転写フィルム100の突板用接着層105の一部が入り込んだ形となり、転写フィルム100の他の各層も突板用接着層105の突板4の導管13に入り込んだ形状に引っ張られ僅かに変形する。これにより突板4の表面の導管13で形成された凹凸形状が転写フィルム100の転写層に相似形で凹凸が形成される。
【0049】
最終の工程S3は、転写フィルム100と突板4が一体化された状態の木質化粧板107を型内から取り出す工程となる。
【0050】
なお、転写フィルム100内の剥離層103の表面には、突板4の導管13で形成された凹凸形状よりも小さい凹凸が無数に存在する。そのため、第1のプレス型200で転写フィルム100のベースフィルム102上から突板4を間接的に加熱、加圧をした際に転写フィルム100の剥離層103の表面に形成された図示されていない凹凸により、突板4の表面に加わる圧力が剥離層103の凹凸により加圧力が分散される。その結果、突板4の表面の導管13により形成された凹凸形状が熱プレスによる加圧力で潰され難くい。
【0051】
突板4の表面の導管13により形成された凹凸形状が潰され難いため、転写フィルム100の転写層101は突板4の導管13により形成された凹凸形状に追従でき、転写層101の表面には突板4の導管13に沿った凹凸形状が相似形で転写される。また転写フィルム100の突板4への追従性を上げるために、第1プレス型200と第2プレス型201をフッ素樹脂素材や耐熱樹脂材料などの金属以外の材質で製作したプレス型を熱プレス加工時に使用しても良い。それにより金属材料を用いた場合よりプレス型の可撓性が増し転写フィルム100の突板4への加熱・加圧時の追従性が良くなる。また、突板4へ樹脂含浸処理を予めしておくことで、突板4の内部の木質繊維が樹脂によりほぐれることで突板4自体に可撓性が出て、熱プレス加工時に転写フィルム100と突板4が追従し易くなる。
【0052】
突板4への含浸用の樹脂はポリエチレングリコール、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が有るが用途に応じて適切な樹脂を選定すれば良く、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、2液硬化性樹脂、紫外線・EB硬化型のプレキュア樹脂、紫外線・EB硬化型のアフターキュアタイプ樹脂でも問題ない。樹脂含浸については必須ではなく必要に応じて樹脂含浸の有無を決めれば良い。
【0053】
熱プレス加工以外の加工方法として非接触式での加熱・加圧方式として真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、熱ラミネーターによる加熱、加圧方式で転写フィルム100と突板4を接着させても良い。
【0054】
真空圧空成形法の場合、真空引きによりS1−2,S2−2で説明した突板4の導管13内の空気が更に減圧されて抜け易くなり、転写フィルム100の突板用接着層105の一部が突板4の導管13内部に引き込まれ易くなる。その結果、転写フィルム100がより突板4の表面の導管13で形成された凹凸形状に追従し易くなり、転写フィルム100の転写層101の表面に形成される凹凸形状もより顕著なものとなる。
【0055】
このようにして作成した木質化粧板107をさらに詳しく説明する。
【0056】
木質化粧板107は、転写フィルム100のベースフィルム102と剥離層103が取れた状態であり、突板4の表面の導管13により形成された凹凸上に、転写フィルム100の転写層101が突板4の導管13により形成された凹凸形状の相似形の凹凸形状が転写層101の最表面に凹凸106として形成されている。
【0057】
そのため突板4の元々の表面の風合いと触感を残した状態で、突板4の表面にハードコート層104が形成可能となる。またハードコート層104の表面には突板4の導管13の相似形の凹凸とは別に、剥離層103上の突板4の導管13の凹凸よりも小さい凹凸が転写された状態であり、突板4本来の艶消し感に近い状態のハードコート層104の表面となる。
【0058】
これにより突板4本来の表面のマット感に近い木質化粧板107となる。また木質化粧板107のハードコート層104が形成された面と逆側には不織布層3が形成されているが、不織布3の代わりの支持体としてベースフィルムや、接着機能を有した多孔質の不織布層が形成されていても良い。用途に応じて、支持体の種類を変更することは可能である。
【0059】
また、使用する突板4の平均厚みは、0.1mm以上0.7mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上0.6mm以下となる。0.1mmより薄くなると突板4が薄くハンドリング時に割れやすい。また、0.7mmよりも厚くなるとシートとしての成形時の追従性が悪くなる。しかしながら、突板の厚みに関しては目的の効果が得られれば上記範囲外でも問題ない。
【0060】
次に、木質化粧板107をインサート成形にて成形品の表面に転写させる製造プロセスを
図4に基づいて説明する。
【0061】
先ず、工程A1では、プリフォーム用の可動プレス型1Aと固定プレス型2Aの間に木質化粧板107を配置する。この例の木質化粧板107は枚葉である。木質化粧板107は転写層101側を固定プレス型2Aに向け配置される。
【0062】
工程A2では、可動プレス型1Aを可動させ型締めを行い、木質化粧板107をプリフォームする。その後、工程A3で可動プレス型1Aを元に戻しプリフォームされた木質化粧板107を型内から取り出す。この時、木質化粧板107に水分を予め含ませることで木質化粧板107の突板4内の木質繊維を水分でほぐし、プリフォーム時に木質化粧板107をプリフォーム型に追従し易くできる。更に、プリフォーム時に木質化粧板107へ水分や水蒸気を同時に与えることで、木質化粧板107内の突板4内の木質繊維をほぐして木質化粧板107の可撓性を出しても良い。
【0063】
工程B1では、木質化粧板107の端面の不要な部位をカッター108にてトリミングする。トリミングが終了した工程B2で木質化粧板107の完成となる。
【0064】
工程C1では、プリフォームされた工程B2の木質化粧板107からベースフィルム102を剥離してインサート成形用の可動型2B内に配置する。この時、突板4の転写層101側を可動型2Bの側に向けて配置する。可動型2Bには吸引穴(図示せず)が形成されており、可動型2Bに木質化粧板107を吸引させる。
【0065】
工程C2では、可動型2Bを固定型1Bの側へ可動させて型締めを行う。
【0066】
工程C3では、固定型1Bのゲート109から射出成形樹脂を型内に流し込み、流し込んだ射出成形樹脂1を、木質化粧板107において突板4の転写層101とは反対面に予め設けた第1接着層2に接着させる。ここでは不織布3とは別に第1接着層2を設けた場合を説明したが、接着機能面として不織布3の片面に接着剤が付与、または流し込まれた射出成形樹脂1の熱で不織布3に含浸させた樹脂が接着機能を果たすものでも実現できる。
【0067】
工程C4では、型開きを行い突き出しピン(図示せず)にて型内から木質化粧板107と一体成形されたインサート成形品110を取り出す。
【0069】
なお、工程C1〜C3のインサート成形工程においてもプリフォーム工程と同様に木質化粧板107に水分を与えて可撓性を増して、可動型2Bへの追従性を向上させても良い。
【0070】
なお、工程C1ではベースフィルム102を剥離した木質化粧板107を可動型2B内に配置したが、木質化粧板107の表面の凹凸形状をより精緻に維持したい場合には、転写フィルム100と突板4を工程S1,S2の熱プレス加工で接着させた後で、転写フィルム100のベースフィルム102を剥がさずに残した状態で木質化粧板107をインサート成形し、インサート成形終了後に剥離層103の付いたベースフィルム102をインサート成形品から剥がすことで、インサート成形時に、転写層101上に形成されている凹凸形状がインサート成形型の表面に直接に接することがないため、転写層101の表面に形成された凹凸形状が潰れにくく、精緻な凹凸形状を表面に残したインサート成形品110を得ることできる。
【0071】
また、木質化粧板107の表面の凹凸形状をより効果的に見せるために、
図4の工程A1〜A3のプリフォーム工程の固定プレス型2Aと、工程C1〜C4のインサート成形工程の可動型2Bとの、転写層101が転写される突板4の側の少なくとも一方の表面に木目調シボが形成された金型を用いても良い。理由は、プリフォーム工程もしくはインサート成形工程で、金型表面の木目調シボが転写層101及び突板4の表面へプリフォーム時の加熱・加圧、もしくはインサート成形工程の射出圧力により、金型表面の木目調シボの一部もしくは全部を転写層101及び突板4の表面に形成させることで、転写フィルム100と突板4の一部もしくは全部に版および金型表面の木目調シボの形状の一部もしくは全部が形成される。この方法により、成形品表面により触感のあるリアルな木目調シボと木目調デザインが付与されたインサート成形品を製作可能である。
【0072】
本発明の木質化粧板とその製造方法およびそれを用いた成形品の製造方法によれば、天然木をスライスして製造した突板本来の凹凸触感と見た目の風合いが損なわれることなく、工業製品に必要な耐久性も突板の表面に付与することができる。またこの方法によれば本木の風合いを残した木質化粧板を低コストかつ、品質が安定したモノづくりが可能となる。
【0073】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における木質化粧板107の製造プロセスを説明する。
【0074】
なお、
図1〜4と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
【0075】
図5は
図2と同様に熱プレス加工を用いて転写フィルム100と突板4を接着させて木質化粧板107を製造するプロセスである。
【0076】
先ず工程S1では、プレス加工用の第1プレス型202と第2プレス型201を所定の温度に予め加熱しておき、枚葉の転写フィルム100と枚葉の突板4を挟み込む。第1プレス型202の表面にはシボが形成されている。シボについての制約は特にはないが、突板4の表面の木目の凹凸形状に近いシボ形状、シボパターンを第1プレス型202の表面に形成することで、突板4本来の木目と同期させることが可能となり、突板4本来の木目をより強調して表現することが可能となる。
【0077】
この工程S1で転写フィルム100の突板用接着層105と突板4を加熱、加圧接着させ、かつ第1プレス型202の表面のシボ形状を転写フィルム100を介して転写層101及び突板4の表面にもシボ形状を転写させる。第1プレス型202と第2プレス型201の代わりに第1版と第2版を用いて熱プレスしても良い。
【0078】
転写フィルム100と突板4へ十分な熱と圧力が加わった後に、工程S2では、第1プレス型202を動かして工程S1での加圧を解除する。
【0079】
工程S3では、転写フィルム100と突板4が一体化された状態の木質化粧板107を、型内から取り出す。
【0080】
この実施の形態2の製造プロセスを用いることで、転写フィルム100のベースフィルム102上から突板4に間接的に加熱、加圧を加えることと、転写フィルム100内の剥離層103が凹凸形状のため、突板4の表面に加わる圧力が凹凸形状の大小で分散されるため、突板4の表面の導管による凹凸形状が潰され難くい。
【0081】
これにより突板4の表面の凹凸形状に沿った形で転写フィルム100の転写層101が追従して転写される形となる上に、更に第1プレス型202の表面に形成されたシボ形状が転写される。そのため工程S4で転写フィルム100のベースフィルム102と剥離層103を木質化粧板107から剥がした際に、転写層101から突板4の表面まで第1プレス型のシボ形状が入り込み、突板4の表面に深い凹凸が形成され、かつ、突板4本来の導管による凹凸形状の一部と第1プレス型202のシボ形状の凹凸が同期する。
【0082】
そのため突板4の表面の凹凸形状が第1プレス型202のシボにより、より深い凹凸形状となるため、突板本来の触感と見た目の風合いが強調された木質化粧板107を得ることが可能となる。
【0083】
突板4の表面にある導管による凹凸形状と第1プレス型202表面のシボの凹凸の大きさについては、突板4の表面の導管による凹凸形状の幅よりも第1プレス型202のシボ形状の凹凸幅を狭くした方が良い。突板4の表面の導管による凹凸形状の幅よりも第1プレス型202のシボの凹凸幅が広い場合、突板4の表面の導管による凹凸が第1プレス型202のシボの凹凸により潰され、突板4の表面の本来の導管による凹凸が広げられてもだれた形状になるため、突板4の表面に不自然な凹凸ができる。第1プレス型202の表面のシボの凹凸の長さについては、突板4の表面の導管による凹凸形状の長さはランダムなため特に限定は無く、見た目に不自然に見えない範囲の長さで設定すれば良い。また、第1プレス型202のシボの凹凸深さは、突板4が割れずに、かつ、熱プレス加工後に転写フィルム100から第1プレス型202のシボの凹凸が離型できる範囲で設定すれば良い。
【0084】
なお、第1プレス型202のシボの転写率を上げる場合に、ヒート&クールのプレス加工を用いても良い。ヒート&クールのプレスプ加工を取り入れることで、転写フィルム100を介して、突板4の表面へ第1プレス型202のシボが入り込む。この時、第1プレス型202は高温のため第1プレス型202のシボは突板4の表面に入り込み易くなる。第1プレス型202のシボを突板4へ一定時間熱プレスすることで転写した後に、第1プレス型での加圧は維持した状態で、即座に第1プレス型202の温度を低下させる。これにより転写フィルム100を介して突板4へ入り込んだ第1プレス型のシボが、第1プレス型202が開く前に冷却されるため、突板4の表面へ転写された第1プレス型202のシボ形状が突板4の表面で固定される。その後、第1プレス型202を転写フィルム100から離型する際に、突板4の表面に転写された第1プレス型202のシボ形状が突板4の表面で固定されて元に戻り難いため、第1プレス型202のシボを突板4の表面に高精度に転写できる。