(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982850
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】排液処理システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
A61M1/00 170
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-150699(P2017-150699)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-25230(P2019-25230A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(72)【発明者】
【氏名】横井 洋
(72)【発明者】
【氏名】勝田 聡一
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2017−512603(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/049654(WO,A1)
【文献】
特開2002−065843(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/112598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00−38
G01F 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から排出された排液が貯留される排液槽を有し、前記排液槽が底部及び天井部にて閉じられた排液バッグを備えた排液処理システムにおいて、
前記排液バッグは、前記排液槽を第1空間と第2空間とに区画するように前記天井部から前記底部付近まで上下方向に延びることにより、前記底部付近にて前記第1空間と前記第2空間とを連通させる区画壁と、前記排液が流入し前記第1空間に連通する排液ポートと、吸引源が発生源である負圧を前記第1空間に供給する負圧供給手段と、前記第2空間に連通し前記第2空間内の圧力を測定可能な圧力測定ポートと、を更に有し、
前記第1空間内の圧力と前記第2空間内の圧力との圧力差に基づいて、前記排液槽に貯留された前記排液の量を算出する算出手段と、前記第1空間内の圧力を取得する第1圧力取得手段と、前記第2空間内の圧力を取得する第2圧力取得手段と、を更に備え、
前記算出手段は、前記第1圧力取得手段が取得した前記第1空間内の圧力と前記第2圧力取得手段が取得した前記第2空間内の圧力とに基づいて前記圧力差を算出する排液処理システム。
【請求項2】
前記負圧供給手段として、前記第1空間に連通し前記吸引源が接続される吸引ポートが設けられ、前記第1圧力取得手段として、前記吸引源と前記吸引ポートとの間の圧力を測定する第1圧力センサが設けられ、前記第2圧力取得手段として、前記圧力測定ポートに接続された第2圧力センサが設けられている請求項1に記載の排液処理システム。
【請求項3】
前記負圧供給手段として、前記第1空間に連通し、かつ液体が収められた水封槽と、前記水封槽に連通し前記吸引源が接続される吸引ポートと、が設けられ、前記第1圧力取得手段として、前記第1空間内の圧力を測定する第1圧力センサ又は前記吸引ポートに接続された第3圧力センサが設けられている請求項1に記載の排液処理システム。
【請求項4】
患者から排出された排液が貯留される排液槽を有し、前記排液槽が底部及び天井部にて閉じられた排液バッグを備えた排液処理システムにおいて、
前記排液バッグは、前記排液槽を第1空間と第2空間とに区画するように前記天井部から前記底部付近まで上下方向に延びることにより、前記底部付近にて前記第1空間と前記第2空間とを連通させる区画壁と、前記排液が流入し前記第1空間に連通する排液ポートとを更に有し、
前記第1空間内の圧力と前記第2空間内の圧力との圧力差に基づいて、前記排液槽に貯留された前記排液の量を算出する算出手段と、前記第1空間内の圧力と前記第2空間内の圧力との圧力差を測定する差圧センサと、を更に備え、
前記算出手段は、前記差圧センサが測定した前記圧力差に対して前記第1空間の横断面積と排液の密度とを乗じて前記区画壁の下端よりも上側の前記第1空間に存在する排液の量を算出し、その算出結果に基づいて前記排液槽に貯留された前記排液の量を算出する排液処理システム。
【請求項5】
前記排液槽の前記底部は、前記第1空間に対応し前記区画壁の下端と高さが合わせられた高底部と、前記第2空間に対応し前記高底部よりも低い位置に設けられた低底部とを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の排液処理システム。
【請求項6】
患者から排出された排液が貯留される排液槽を有し、前記排液槽が底部及び天井部にて閉じられた排液バッグを備えた排液処理システムにおいて、
前記排液バッグは、前記排液槽を第1空間と第2空間とに区画するように前記天井部から前記底部付近まで上下方向に延びることにより、前記底部付近にて前記第1空間と前記第2空間とを連通させる区画壁と、前記排液が流入し前記第1空間に連通する排液ポートとを更に有し、
前記第1空間内の圧力と前記第2空間内の圧力との圧力差に基づいて、前記排液槽に貯留された前記排液の量を算出する算出手段を更に備え、
前記排液槽の前記底部は、前記第1空間に対応し前記区画壁の下端と高さが合わせられた高底部と、前記第2空間に対応し前記高底部よりも低い位置に設けられた低底部とを有する排液処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から排出された体液等の排液を貯留する排液バッグを備えた排液処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、心臓や消化器系の手術後において、患者の各種器官に留置したドレーンチューブを硬質な素材で構成された排液バッグに接続し、患部に溜まった血液等の体液を排液バックに貯留する処置が施されることがある。また、胸部外科手術後においては、胸腔内に留置したドレーンチューブと吸引ポンプとを排液バッグにそれぞれ接続して患者の胸腔に溜まった血液等の体液を吸引する処置が施される。
【0003】
このような排液バッグには、患者から排出された体液である排液を貯留する排液槽が設けられており、排液槽に貯留された排液の状態を目視で確認できるように、排液バッグは透明な素材で構成されている。そして、排液槽には目盛りが記載されていて貯留された排液の量を把握することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の排液バッグの場合、観察時点で排液槽に貯留された排液の量を目視で確認できるにすぎない。このため、その量の時間的変化を把握するために排液槽に貯留された排液の液面位置に観察者が日時を書き込んで対処することが多かった。この時間的変化を自動的に記録するため、排液槽にレベルセンサを設けて液面レベルを測定し、その測定結果を逐次記憶する処理をコンピュータに実施させることが考えられる。しかし、レベルセンサは比較的高価であるし、液面に泡が溜まっている場合にはレベルセンサの測定精度が悪化するおそれがある。また、排液が貯留された排液バッグの重量を重量センサによって測定し、その測定結果を逐次記憶する処理をコンピュータに実施させることも考えられる。しかし、排液バッグにはドレーンチューブや吸引ポンプ等が接続されるので、これらの荷重の影響を受けて測定精度が悪化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、排液バッグの排液槽に貯留された排液の液面のレベルや排液バッグの重量を計測することなく、排液槽に貯留された排液の量の時間的変化を記録することを容易に実現できる排液処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排液処理システムは、患者から排出された排液(Ld)が貯留される排液槽(7、22、32、42)を有し、前記排液槽が底部(8、24、35、43)及び天井部(9、25、36、44)にて閉じられた排液バッグ(3、21、31、41)を備えた排液処理システム(1A、1B、1C、1D)において、前記排液バッグは、前記排液槽を第1空間(7A、22A、32A、42A)と第2空間(7B、22B、32B、42B)とに区画するように前記天井部から前記底部付近まで上下方向に延びることにより、前記底部付近にて前記第1空間と前記第2空間とを連通させる区画壁(10、26、37、45)と、前記排液が流入し前記第1空間に連通する排液ポート(13、28、39、47)とを更に有し、前記第1空間内の圧力と前記第2空間内の圧力との圧力差に基づいて、前記排液槽に貯留された前記排液の量を算出する算出手段(5)を更に備えるものである。
【0007】
この排液処理システムによれば、排液バッグの排液槽が区画壁によって第1空間と第2空間とに区画され、かつ排液槽の底部付近にてこれらの空間が連通する。排液ポートから排液が流入して排液槽に貯留された排液の量が増加してゆくと、排液の液面が区画壁の下端に達する前は第1空間と第2空間とは同じ圧力であるが、排液の液面が区画壁の下端に達すると連通部分が排液に満たされて第2空間が密閉された状態となる。さらに貯留される排液の量が増加すると第1空間と第2空間との間に圧力差が生じ、排液の量の増加に従ってその圧力差が比例して増加する。この圧力差は、第1空間における排液の液面と第2空間における排液の液面との間の液面差として反映される。つまり、排液を水と仮定した場合、この液面差は水頭圧に相当する。したがって、この圧力差に基づいて液面差を算出できる。すなわち、この液面差に第1空間の横断面積と排液の密度とを乗じることにより、区画壁の下端よりも上側の第1空間内に存在する排液の量(体積)を算出できる。区画壁の下端よりも下側に存在する排液の量は予め特定可能な一定値である。したがって、液面差に基づいて算出された上記排液の量に対して、この一定値を加算することにより排液槽に貯留された排液の量を算出できる。このように、排液バッグの排液槽に貯留された排液の量を第1空間と第2空間との間の圧力差に基づいて算出できるから、排液槽に貯留された排液の液面のレベルや排液バッグの重量を計測することなく、排液槽に貯留された排液の量の時間的変化を記録することを容易に実現できる。
【0008】
本発明の排液処理システムの一態様において、前記排液バッグは、吸引源(4、Asp)が発生源である負圧を前記第1空間に供給する負圧供給手段(12、23及び27、33及び38)と、前記第2空間に連通し前記第2空間内の圧力を測定可能な圧力測定ポート(14、29、40、48)と、を更に有してもよい。例えば、患者の胸腔から体液を排出させる場合は吸引することが必要となるが、この態様においては第1空間を負圧にして排液槽に排液を導くことができる。
【0009】
第1空間内の圧力と第2空間内の圧力との圧力差はどのように取得しても構わない。例えば、前記第1空間内の圧力を取得する第1圧力取得手段(15A)と、前記第2空間内の圧力を取得する第2圧力取得手段(15B)と、を更に備え、前記算出手段は、前記第1圧力取得手段が取得した前記第1空間内の圧力と前記第2圧力取得手段が取得した前記第2空間内の圧力とに基づいて前記圧力差を算出してもよい。
【0010】
負圧供給手段、第1圧力取得手段、及び第2圧力取得手段のそれぞれは適宜の構成を採用できる。例えば、前記負圧供給手段として、前記第1空間に連通し前記吸引源が接続される吸引ポート(12)が設けられ、前記第1圧力取得手段として、前記吸引源と前記吸引ポートとの間の圧力を測定する第1圧力センサ(15A)が設けられ、前記第2圧力取得手段として、前記圧力測定ポートに接続された第2圧力センサ(15B)が設けられてもよい。また、前記負圧供給手段として、前記第1空間に連通し、かつ液体(L)が収められた水封槽(23、33)と、前記水封槽に連通し前記吸引源が接続される吸引ポート(27、38)と、が設けられ、前記第1圧力取得手段として、前記第1空間内の圧力を測定する第1圧力センサ(15A)又は前記吸引ポートに接続された第3圧力センサ(15C)が設けられてもよい。
【0011】
本発明の一態様において、前記排液バッグは、前記第1空間を大気に開放する状態と前記第1空間を閉鎖する状態とを切り替え可能なベント(46)を更に有してもよい。排液バッグのベントによって第1空間を開放することにより排液槽を大気圧に保持できるので、例えば、心臓や消化器系の手術後において、排液を排液槽にスムーズに導くことができる。
【0012】
本発明の一態様において、前記第1空間内の圧力と前記第2空間内の圧力との圧力差を測定する差圧センサ(50)を更に備え、前記演算手段は、前記差圧センサが測定した前記圧力差に対して前記第1空間の横断面積と排液の密度とを乗じて前記区画壁の下端よりも上側の前記第1空間に存在する排液の量を算出し、その算出結果に基づいて前記排液槽に貯留された前記排液の量を算出してもよい。この態様によれば、第1空間内の圧力と第2空間内の圧力との圧力差を直接測定し、その測定結果を排液槽に貯留された排液の量の算出に利用することができる。
【0013】
本発明の排液処理システムの一態様において、前記排液槽の前記底部は、前記第1空間に対応し前記区画壁の下端と高さが合わせられた高底部(8a)と、前記第2空間に対応し前記高底部よりも低い位置に設けられた低底部(8b)とを有してもよい。この態様によれば、高底部と低底部との間に高低差が存在し、区画壁の下端に達する前には低底部側のみに排液が貯留される。したがって、その高低差を適宜調整することにより、区画壁の下端に達する前に排液槽の底部全体に排液が貯留される態様に比べて、区画壁の下端に達する前に貯留される排液の量を少なくできる。これにより、この排液の量を加算することによる誤差を低減できる。
【0014】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、排液バッグの排液槽に貯留された排液の量を第1空間と第2空間との間の圧力差に基づいて算出できるから、排液槽に貯留された排液の液面のレベルや排液バッグの重量を計測することなく、排液槽に貯留された排液の量の時間的変化を記録することを容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の形態に係る排液処理システムを模式的に示した図。
【
図2】本発明の第2の形態に係る排液処理システムを模式的に示した図。
【
図3】本発明の第3の形態に係る排液処理システムを模式的に示した図。
【
図4】本発明の第4の形態に係る排液処理システムを模式的に示した図。
【
図5】差圧センサを設けた変形例を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の形態)
図1に示したように、排液処理システム1Aは、吸引源を内蔵する電動式吸引器として構成されており、例えば、胸部外科手術後の患者や気胸の治療中の患者の胸腔に留置したドレーンチューブ2と、そのドレーンチューブ2に接続された排液バッグ3と、吸引回路6を介して排液バッグ3に接続された吸引源としての吸引ポンプ4と、吸引ポンプ4等の各部を制御したり必要な演算処理を実行したりする演算ユニット5とを備えている。
【0018】
排液バッグ3は吸引された患者の体液である排液Ldを貯留する排液槽7を有している。排液槽7は底部8及び天井部9にて閉じられている。底部8には一例として階段状に高低差が設けられている。排液槽7は区画壁10にて第1空間7Aと第2空間7Bとに区画されている。区画壁10は天井部9から底部8付近まで上下方向(図の上下方向)に延びることにより、底部8付近にて第1空間7Aと第2空間7Bとを連通させる。区画壁10の下端10aは底部8と非接触となっている。底部8は、区画壁10の下端10aと高さが合わせられた高底部8aと、高底部8aよりも低い位置に設けられた低底部8bとを有する。高底部8aは第1空間7Aに対応し、低底部8bは第2空間7Bに対応する。
【0019】
排液バッグ3には、吸引回路6の接続位置に設けられて排液槽7の第1空間に連通する吸引ポート12と、ドレーンチューブ2の接続位置に設けられて排液槽7の第1空間7Aに連通する排液ポート13と、排液槽7の第2空間7Bに連通し第2空間7B内の圧力を測定可能な圧力測定ポート14と、第1空間7A内の圧力を取得する第1圧力取得手段の一例としての第1圧力センサ15Aと、第2空間7B内の圧力を取得する第2圧力取得手段の一例としての第2圧力センサ15Bとを有している。吸引ポート12は吸引ポンプ4が発生源である負圧を第1空間7Aに供給する負圧供給手段の一例として機能する。排液ポート13はドレーンチューブ2が接続されることにより排液Ldを第1空間7Aに流入させる。第1圧力センサ15Aは吸引回路6に接続されていて吸引ポンプ4と吸引ポート12との間の圧力を測定する。第2圧力センサ15Bは圧力測定ポート14に接続されていて第2空間7B内の圧力を測定する。
【0020】
演算ユニット5は一例としてコンピュータとして構成されている。演算ユニット5は、所定のプログラムを実行するとともに、第1圧力センサ15A及び第2圧力センサ15Bの各信号を参照することによって排液槽7に貯留された排液の量を算出する。排液槽7に貯留された排液Ldの量が増加してゆくと、排液Ldの液面が区画壁10の下端10aに達する前は第1空間7Aと第2空間7Bとは同じ圧力であるが、排液Ldの液面が区画壁10の下端10aに達すると連通部分が排液に満たされて第2空間7Bが密閉された状態となる。さらに貯留される排液Ldの量が増加すると第1空間7Aと第2空間7Bとの間に圧力差が生じ、排液Ldの量の増加に従ってその圧力差が比例して増加する。この圧力差は、第1空間7Aにおける排液Ldの液面P1の高さと第2空間7Bにおける排液Ldの液面P2の高さとの間の液面差Δhとして反映される。つまり、排液Ldを水と仮定した場合、この液面差Δhは水頭圧に相当する。したがって、この圧力差に基づいて液面差Δhを算出できる。
【0021】
そこで、演算ユニット5は、次式1に基づいて液面差Δhを算出するとともに、次式2に基づいて液面差Δhに第1空間7Aの横断面積Sと排液の密度ρとを乗じることにより、区画壁10の下端10aよりも上側の非ハッチング領域に存在する排液の量(体積)Vaを算出する。
【0022】
Δh[cm]=PA−PB ……1
ここで、PAは第1空間7A内の圧力[cmH
2O]であり、PBは第2空間7B内の圧力[cmH
2O]である。
【0023】
Va[cm
3]=Δh×S×ρ ……2
【0024】
区画壁10の下端10aよりも下側のハッチング領域に存在する排液の量Vbは予め特定可能な一定値である。したがって、演算ユニット5は次式3に基づいて、排液槽7に貯留された排液の量LVを算出し、その算出結果を所定の記憶手段に時間と関連付けて記憶する。これにより、演算ユニット5は本発明の算出手段の一例として機能する。なお、演算ユニット5は記憶した算出結果を必要に応じて所定の出力手段に出力させる。
【0026】
このように、排液バッグ3の排液槽7に貯留された排液の量LVを第1空間7A内の圧力と第2空間7B内の圧力との間の圧力差に基づいて算出できるから、排液槽7に貯留された排液Ldの液面のレベルや排液バッグ3の重量を計測することなく、排液槽7に貯留された排液Ldの量LVの時間的変化を記録することを容易に実現できる。
【0027】
また、第1の形態によれば、排液槽7の底部8において高底部8aと低底部8bとの間に一例として階段状の高低差が存在し、区画壁10の下端10aに達する前には低底部8b側のみに排液Ldが貯留される。したがって、その高低差を適宜調整することにより、区画壁10の下端10aに達する前に底部8全体に排液が貯留される態様に比べて、区画壁10の下端10aに達する前に貯留される排液Ldの量Vbを少なくできる。これにより、この排液の量Vbを加算することによる誤差を低減できる。
【0028】
(第2の形態)
次に、
図2を参照しながら本発明の第2の形態を説明する。なお、以下の説明において、第1の形態と共通の構成には図面に同一の参照符号を付して説明を省略ないし簡略化する。第2の形態の排液処理システム1Bは電動式吸引器として構成されていてドレーンチューブ2が接続された排液バッグ21を備えている。排液バッグ21は排液Ldを貯留する排液槽22と、この排液槽22に連通する水封槽23とを有している。排液槽22は底部24及び天井部25にて閉じられていて、底部24及び天井部25のそれぞれは同一高さで水封槽23と共通である。また、排液槽22は区画壁26にて第1空間22Aと第2空間22Bとに区画される。区画壁26は天井部25から底部24付近まで上下方向に延びることにより、底部24付近にて第1空間22Aと第2空間22Bとを連通させる。水封槽23は水等の液体Lが収められていて患者側への外気の逆流を防止するために設けられている。
【0029】
排液バッグ21には、水封槽23に連通し吸引回路6を介して吸引ポンプ4が接続される吸引ポート27と、ドレーンチューブ2の接続位置に設けられて排液槽22の第1空間22Aに連通する排液ポート28と、排液槽22の第2空間22Bに連通し第2空間22B内の圧力を測定可能な圧力測定ポート29と、第1空間22A内の圧力を取得する第1圧力取得手段の一例としての第1圧力センサ15Aと、第2空間22B内の圧力を取得する第2圧力取得手段の一例としての第2圧力センサ15Bと、吸引ポート27に吸引回路6を介して接続され、吸引ポンプ4の制御に使用される第3圧力センサ15Cと、を有している。水封槽23と吸引ポート27とは吸引ポンプ4が発生源である負圧を第1空間22Aに供給する負圧供給手段の一例として機能する。排液ポート28はドレーンチューブ2が接続されることにより排液Ldを第1空間22Aに流入させる。
【0030】
演算ユニット5は、第1の形態と同様に、式1〜式3に基づいて排液槽22に貯留された排液の量LVを算出する。すなわち、演算ユニット5は、第1空間22A内の圧力と第2空間22B内の圧力との圧力差に基づいて液面差Δhを算出する。そして、その液面差Δhに対して第1空間22Aの横断面積Sと排液Ldの密度とを乗じることにより、区画壁26の下端26aよりも上側の非ハッチング領域に存在する排液の量Vaを算出する。そして、その排液の量Vaに下端26aよりも下側のハッチング領域に存在する排液の量Vbを加算することにより、排液槽22に貯留された排液の量LVを算出し、その算出結果を所定の記憶手段に時間と関連付けて記憶する。これにより、演算ユニット5は本発明に係る算出手段の一例と機能する。なお、演算ユニット5は記憶した算出結果を必要に応じて所定の出力手段に出力させる。
【0031】
第2の形態によれば、第1の形態と同様に、排液バッグ21の排液槽22に貯留された排液の量LVを第1空間22Aと第2空間22Bとの間の圧力差に基づいて算出できるから、排液槽22に貯留された排液Ldの液面のレベルや排液バッグ21の重量を計測することなく、排液槽22に貯留された排液Ldの時間的変化を記録することを容易に実現できる。
【0032】
なお、第2の形態を、第1圧力センサ15Aを省略した形態に変更し、吸引ポート27に接続された第3圧力センサ15Cを本発明に係る第1圧力取得手段の一例として機能させることもできる。水封槽23の水頭圧を考慮することによって第3圧力センサ15Cが測定する圧力に基づいて第1空間22A内の圧力を算出できるからである。
【0033】
(第3の形態)
次に、
図3を参照しながら本発明の第3の形態を説明する。なお、以下の説明において、第1の形態と共通の構成には図面に同一の参照符号を付して説明を省略ないし簡略化する。第3の形態の排液処理システム1Cはドレーンチューブ2が接続された排液バッグ31を備えている。排液バッグ31は排液Ldを貯留する排液槽32と、この排液槽32に連通する水封槽33と、水封槽33と連通しかつ大気開放された調圧槽34とを有している。排液槽32は底部35及び天井部36にて閉じられており、底部35及び天井部36は水封槽33及び調圧槽34と共通である。また、排液槽32は区画壁37にて第1空間32Aと第2空間32Bとに区画される。区画壁37は天井部36から底部35付近まで上下方向に延びることにより底部35付近にて第1空間32Aと第2空間32Bとを連通させる。水封槽33は水等の液体Lが収められていて患者側への外気の逆流を防止するために設けられている。調圧槽34には水等の液体L′が収められている。
【0034】
排液バッグ31には、水封槽33に連通し吸引回路6を介して壁掛け式の吸引器Aspが接続される吸引ポート38と、ドレーンチューブ2の接続位置に設けられて排液槽32の第1空間32Aに連通する排液ポート39と、排液槽32の第2空間32Bに連通し第2空間32B内の圧力を測定可能な圧力測定ポート40と、第1空間32A内の圧力を取得する第1圧力取得手段の一例としての第1圧力センサ15Aと、第2空間32B内の圧力を取得する第2圧力取得手段の一例としての第2圧力センサ15Bと、を有している。水封槽33と吸引ポート38とは吸引器Aspが発生源である負圧を第1空間32Aに供給する負圧供給手段の一例として機能する。排液ポート39はドレーンチューブ2が接続されることにより排液Ldを第1空間32Aに流入させる。
【0035】
演算ユニット5は、第1の形態と同様に、式1〜式3に基づいて排液槽32に貯留された排液の量LVを算出する。すなわち、演算ユニット5は、第1空間32A内の圧力と第2空間32B内の圧力との圧力差に基づいて液面差Δhを算出する。そして、その液面差Δhに対して第1空間32Aの横断面積Sと排液Ldの密度とを乗じることにより、区画壁37の下端37aよりも上側の非ハッチング領域に存在する排液の量Vaを算出する。そして、その排液の量Vaに対して下端37aよりも下側のハッチング領域に存在する排液の量Vbを加算することにより、排液槽32に貯留された排液の量LVを算出し、その算出結果を所定の記憶手段に時間と関連付けて記憶する。これにより、演算ユニット5は本発明に係る算出手段の一例と機能する。なお、演算ユニット5は記憶した算出結果を必要に応じて所定の出力手段に出力させる。
【0036】
第3の形態によれば、第1の形態と同様に、排液バッグ31の排液槽32に貯留された排液の量LVを第1空間32Aと第2空間32Bとの間の圧力差に基づいて算出できるから、排液槽32に貯留された排液Ldの液面のレベルや排液バッグ31の重量を計測することなく、排液槽32に貯留された排液Ldの量LVの時間的変化を記録することを容易に実現できる。
【0037】
(第4の形態)
次に、
図4を参照しながら本発明の第4の形態を説明する。なお、以下の説明において、第1の形態と共通の構成には図面に同一の参照符号を付して説明を省略ないし簡略化する。第4の形態の排液処理システム1Dはドレーンチューブ2が接続された排液バッグ41を備えている。排液バッグ41は排液Ldを貯留する排液槽42を有している。排液槽42は、底部43及び天井部44にて閉じられている。また、排液槽42は区画壁45にて第1空間42Aと第2空間42Bとに区画される。区画壁45は天井部44から底部43付近まで上下方向に延びることにより底部43付近にて第1空間42Aと第2空間42Bとを連通させる。
【0038】
排液バッグ41には、第1空間42Aを大気に開放する状態と第1空間42Aを閉鎖する状態とを切り替え可能なベント46と、ドレーンチューブ2の接続位置に設けられて排液槽42の第1空間42Aに連通する排液ポート47と、排液槽42の第2空間42Bに連通し第2空間42B内の圧力を測定可能な圧力測定ポート48と、第1空間42A内の圧力を取得する第1圧力取得手段の一例としての第1圧力センサ15Aと、第2空間42B内の圧力を取得する第2圧力取得手段の一例としての第2圧力センサ15Bと、を有している。排液ポート47はドレーンチューブ2が接続されることにより排液Ldを第1空間42Aに流入させる。
【0039】
演算ユニット5は、第1の形態と同様に、式1〜式3に基づいて排液槽42に貯留された排液の量LVを算出する。すなわち、演算ユニット5は、第1空間42A内の圧力と第2空間42B内の圧力との圧力差に基づいて液面差Δhを算出する。そして、その液面差Δhに対して第1空間42Aの横断面積Sと排液Ldの密度とを乗じることにより、区画壁45の下端45aよりも上側の非ハッチング領域に存在する排液の量Vaを算出する。そして、その排液の量Vaに対して下端45aよりも下側のハッチング領域に存在する排液の量Vbを加算することにより、排液槽42に貯留された排液の量LVを算出し、その算出結果を所定の記憶手段に時間と関連付けて記憶する。これにより、演算ユニット5は本発明に係る算出手段の一例と機能する。なお、演算ユニット5は記憶した算出結果を必要に応じて所定の出力手段に出力させる。
【0040】
第4の形態によれば、第1の形態と同様に、排液バッグ41の排液槽42に貯留された排液Ldの量LVを第1空間42Aと第2空間42Bとの間の圧力差に基づいて算出できるから、排液槽42に貯留された排液Ldの液面のレベルや排液バッグ41の重量を計測することなく、排液槽42に貯留された排液Ldの量LVの時間的変化を記録することを容易に実現できる。
【0041】
本発明は上記各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記各形態の排液槽は、その横断面積が上下方向に関して一定となる構成であるが、上下方向に関して横断面積が変化する構成となる形態で本発明を実施することもできる。この形態の場合は、横断面積を高さの関数として表現し、液面差Δhの範囲で積分することにより区画壁の下端よりも上側の排液の量を算出できる。
【0042】
また、上記各形態では、第1圧力センサ及び第2圧力センサによって第1空間内の圧力と第2空間内の圧力とをそれぞれ測定してこれらの圧力差を算出している。しかしながら、
図5に示すように、第1圧力センサ及び第2圧力センサの代わりに、その圧力差を直接測定できる差圧センサ50を設け、その測定結果に基づいて排液Ldの量LVを算出する形態に上記各形態を変更することもできる。
【0043】
この場合、例えば、演算ユニット5は、上記の圧力差ΔPを差圧センサ50の出力信号に基づいて取得し、上記式1及び式2の代わりに下記の式4を使用して下端45aよりも上側の排液Ldの量Vaを算出する。そして、式3に基づいて排液Ldの量LVを算出する。これにより、演算ユニット5は本発明に係る算出手段の一例として機能する。この変形例によれば、第1空間内の圧力と第2空間内の圧力との圧力差を直接測定し、その測定結果を排液槽に貯留された排液の量の算出に利用することができる。なお、
図5の変形例は、第1の形態を変更したものであるが、第2〜第4の各形態においても、各圧力センサ15A、15Bの代わりに差圧センサ50を設ける形態に変更することができる。
【0044】
Va[cm
3]=ΔP×S×ρ ……4
【符号の説明】
【0045】
1A〜1D 排液処理システム
4 吸引ポンプ(吸引源)
5 演算ユニット(算出手段)
3、21、31、41 排液バッグ
7、22、32、42 排液槽
7A、22A、32A、42A 第1空間
7B、22B、32B、42B 第2空間
8、24、35、43 底部
9、25、36、44 天井部
10、26、37、45 区画壁
10a、26a、37a、45a 区画壁の下端
12、27、38 吸引ポート(負圧供給手段)
13、28、39、47 排液ポート
14、29、40、48 圧力測定ポート
23、33 水封槽(負圧供給手段)
Asp 吸引器