特許第6982871号(P6982871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982871
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】工具ホルダー
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/00 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   B25H3/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-11466(P2018-11466)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-126897(P2019-126897A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514324405
【氏名又は名称】奥村 誠二
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】奥村 誠二
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−104734(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3012321(JP,U)
【文献】 米国特許第06119909(US,A)
【文献】 特開2017−217741(JP,A)
【文献】 特開2017−052076(JP,A)
【文献】 特開2010−137307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 3/00
A45C 11/00
B26B 29/02
A45F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道具や工具を保持するための工具ホルダーであって、
基材となるベース部の表面に断面凸状をなす状態で組み合わせられて筒状の空間である収容部を形成する筒形成部と、
該断面凸状をなす前記筒形成部の内側に位置するように前記ベース部の表面に組み合わせられる占有部と、を含み、
前記収容部には、道具や工具の本体のほか、道具や工具の本体を吊り下げて保持するために該本体の外周側に設けられるかぎ状のフックを収容可能であり、
前記ベース部の表面における前記占有部は、前記収容部の筒方向と直交する幅方向に偏って位置していると共に、当該占有部の上端が、前記収容部の入口をなす前記筒形成部の上端を越えて位置しており、
該筒形成部の上端には、前記占有部が設けられた側とは反対側から、該筒形成部が該占有部と対面する箇所に向けて、次第に下がる傾斜が設けられている工具ホルダー。
【請求項2】
請求項1において、前記占有部の外表面のうち、前記対面する箇所の上方、前記筒形成部の上端を越える位置にピンが立設され、
前記傾斜は、前記占有部が設けられた側とは反対側から前記ピンの下部に向けて設けられている工具ホルダー。
【請求項3】
請求項1または2において、前記筒方向において前記入口とは反対側に当たる前記筒形成部の下端に切欠きが設けられている工具ホルダー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、右利き用と左利き用との区別があり、
右利き用の工具ホルダーでは、前記幅方向において前記占有部の位置が、前記ベース部の表面に向かって右側に偏っており、前記傾斜は、向かって左側から右側に向けて下がる傾斜である一方、
左利き用の工具ホルダーでは、前記幅方向において前記占有部の位置が、前記ベース部の表面に向かって左側に偏っており、前記傾斜は、向かって右側から左側に向けて下がる傾斜である工具ホルダー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記筒形成部及び前記占有部の少なくとも一方は、弾性変形可能であり、
該筒形成部及び該占有部の少なくとも一方の弾性変形に応じて前記収容部の断面形状が変形可能である工具ホルダー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記占有部は、断面凸状をなし、前記ベース部の表面側に筒状の空間を形成している工具ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道具や工具を保持するためにベルトなどに装着されて使用される工具ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
建設作業を担う大工などの職人の多くは、各種の工具を保持するための工具ホルダーをベルトに装着している。ベルトに装着した工具ホルダーに各種の工具を携帯していれば、作業の途中で工具を取りに戻る回数を少なくでき、作業効率を向上できる。工具ホルダーとしては、ドライバーやペンチや金槌など比較的小型の工具等を収容あるいは保持するものが一般的である。
【0003】
一方、釘打ち機やインパクトドライバーなどの比較的大型の電動工具やエアー工具の場合、ドライバーやペンチ等とは相違し、本体部分を収容することは現実的ではない。収容部分が大きくなり過ぎるからである。そこで、このような電動工具等のメーカの多くは、ズボンのベルトなどに直接、電動工具等を取り付けるための専用のフックを提供している(例えば、下記の特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−127049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大工などの職人の多くは、ドライバーやペンチやノミなどの工具を保持するための腰袋を腰回りに装着するため、ズボンのベルトが腰袋等に覆われてしまい、大型の電動工具やエアー工具をズボンのベルト等に引っ掛けることが難しいという問題がある。電動工具等のフックをズボンポケットに引っ掛けて作業する職人もいるが、ズボンポケットの縁がすぐにボロボロになってしまう。ノミやドライバー等を保持するためのホルダーを流用して電動工具等のフックを引っ掛けようとしても、電動工具やエアー工具のフックには、板材を折り曲げた金属製のものや、樹脂成形品のものなど、様々な形態のものがあるので、確実性高く電動工具等を保持することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、特にフックを備える電動工具等を保持するために好適な工具ホルダーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、道具や工具を保持するための工具ホルダーであって、
基材となるベース部の表面に断面凸状をなす状態で組み合わせられて筒状の空間である収容部を形成する筒形成部と、
該断面凸状をなす前記筒形成部の内側に位置するように前記ベース部の表面に組み合わせられる占有部と、を含み、
前記収容部には、道具や工具の本体のほか、道具や工具の本体を吊り下げて保持するために該本体の外周側に設けられるかぎ状のフックを収容可能であり、
前記ベース部の表面における前記占有部は、前記収容部の筒方向と直交する幅方向に偏って位置していると共に、当該占有部の上端が、前記収容部の入口をなす前記筒形成部の上端を越えて位置しており、
該筒形成部の上端には、前記占有部が設けられた側とは反対側から、該筒形成部が該占有部と対面する箇所に向けて、次第に下がる傾斜が設けられている工具ホルダーにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の工具ホルダーでは、筒状の収容部を形成する筒形成部の内側に位置するように占有部が設けられている。ベース部の表面におけるこの占有部の位置は、幅方向に偏って位置している。そのため、収容部の筒状の空間では、占有部が存在する部分と、占有部が存在しない部分とで、スペース的なアンバランスが生じている。占有部が存在する部分では、ベース部の表面から張り出す方向における収容部の寸法が小さくなる一方、占有部が存在しない部分では、同方向における収容部の寸法が大きくなる傾向にある。
【0009】
このように収容部のスペース的なアンバランスは、様々な断面形状の収容物に対して有効に作用する。例えば薄い板状に近い断面形状の収容物であれば、占有部の存在により前記張り出す方向における収容部の寸法が小さく隙間に近いスペースが適している。また、例えば正方形や円形に近い断面形状の収容物であれば、占有部が存在せず、前記張り出す方向における収容部の寸法が大きいスペースが適している。
【0010】
例えば電動工具やエアー工具等に取り付けられるフックとしては、金属製の板を折り曲げた薄い断面形状のフックや、樹脂材料製の比較的厚みのあるフックなど、様々な断面形状のものがある。上記のように収容部にスペース的なアンバランスが生じている本発明の工具ホルダーは、いずれのフックも確実性高く収容でき、比較的大型の電動工具等を確実性高く保持できる。
【0011】
このように、本発明の工具ホルダーは、スペース的にアンバランスな収容部を備えているため、様々な断面形状の収容物に対応でき汎用性が高くなっている。この工具ホルダーは、特に、ベルト等に引っ掛けるためのフックを備える電動工具の保持に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】工具ホルダーの斜視図。
図2】工具ホルダーの組立構造を示す説明図。
図3】工具ホルダーの側面図。
図4】工具ホルダーの収容部を筒方向から見込む図。
図5】金属製のフックを備えるインパクトドライバーを示す説明図。
図6】樹脂製のフックを備える釘打ち機を示す説明図。
図7】その他の工具ホルダーを示す正面図(a)及び側面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、電動工具やエアー工具を保持するためにベルトに装着して使用される工具ホルダー1に関する例である。この内容について、図1図7を用いて説明する。
図1に例示する工具ホルダー1は、インパクトドライバーや釘打ち機などの電動工具やエアー工具等を保持するのに好適な工具ホルダーである。この工具ホルダー1は、ズボンのベルトや腰袋のベルトなどに装着して使用され、電動工具等に設けられたフックを利用して、比較的大型の電動工具やエアー工具などの保持を可能とする。
【0014】
工具ホルダー1は、フックを挿入可能な筒状の収容部10を備えている。この筒状の収容部10の内側には、仕切り革13が設けられている。この仕切り革13は、収容部10の内部において、収容部の筒方向に直交する幅方向にずらして設けられ、これにより、収容部10の断面形状が幅方向において非対称な形状となっている(図4参照。)。工具ホルダー1は、収容部10の断面形状が非対称となっていることにより、様々なタイプのフックに対応可能な汎用性の高いものとなっている。
【0015】
工具ホルダー1は、図2のごとく、3枚の革シートを重ね合わせて組み立てられた革製品である。この工具ホルダー1では、土台(基材)となるベース革15(ベース部)に対して、筒状の空間を形成するように表革11(筒形成部)及び仕切り革13(占有部)が組み合わされている。仕切り革13は表革11の内側に位置しており、これにより2重の筒状構造が形成されている。工具ホルダー1では、仕切り革13の外側であって、かつ、表革11の内側に形成される筒状の空間が、フックを挿入するための収容部10となっている。仕切り革13の内側は、筒状の小さな空間130が形成されている。仕切り革13の内側の筒状の空間130は、例えば小さい釘打ち機などの細いフック、小径のポンチ、ボールペンなどの収容に利用できる。
【0016】
ベース革15、表革11及び仕切り革13は、弾性的に屈曲可能な厚めの1枚革から所定形状をなすように切り出された革シートである。土台となるベース革15は、短冊状の革シートであり、ループ状の折返しによりベルトループ150(ベルトに対する装着部)を形成できるよう、長手方向の寸法が長くなっている。ベース革15を折り返してベルトループ150を形成したとき、ベルトループ150の横幅が末窄まりとなるよう、ベース革15の横幅が適宜調整されている。ベルトループ150とは反対側をなすベース革15の端部側は、表革11や仕切り革13を重ね合わせる接合エリア151となっている。この接合エリア151は、工具ホルダー1の正面形状において、下側半分の範囲に相当している。
【0017】
接合エリア151では、表革11を重ね合わせる接合エリア151Aと、仕切り革13を重ね合わせる接合エリア151Bと、が位置をずらして配置されている。表革11用の接合エリア151Aは、ベース革15の幅と同じ幅である一方、仕切り革13用の接合エリア151Bは、ベース革15の幅の3/4程度の幅となっている。さらに、接合エリア151Bの上下方向の寸法は、接合エリア151Aよりも小さくなっている。接合エリア151Aよりもひと回り小さい接合エリア151Bは、幅方向の一方の側縁部のみが接合エリア151Aの側縁部と一致し、その上縁部が接合エリア151Aよりも上方にずれて位置するように形成されている。なお、以下の説明では、接合エリア151Bの幅方向の側縁部のうち、接合エリア151Aの側縁部に一致しない他方の側縁部が対面する箇所を中間箇所151Cという。また、左側、右側など左右の表記は、工具ホルダー1に正対したときの幅方向の両側に当たる左右の表記であるとする。
【0018】
表革11は、横長幅広の革シートであり、ベース革15の接合エリア151Aに接合される。組立前の表革11の横幅の寸法は、ベース革15の横幅の2倍を若干、下回る程度となっている。表革11は、幅方向の左右両側の側縁部が、ベース革15の左右両側の側縁部と一致する状態で接合エリア151Aに組み合わせられる。このようにベース革15に対して表革11を組み合わせると、表革11が断面凸湾曲状に変形した状態となり、接合エリア151Aに面して収容部10となる筒状の空間が形成される。なお、表革11の一方の側縁部には、幅方向に張り出す張出し部111が設けられている。この張出し部111は、工具ホルダー1の製品状態において、ベース革15の裏側にループ状に折り返されてDカン17を保持する。
【0019】
仕切り革13は、表革11よりもひと回り小さい革シートであり、ベース革15の接合エリア151Bに接合される。組立前の仕切り革13の横幅の寸法は、ベース革15の横幅と同程度である。仕切り革13は、幅方向の側縁部のうちの一方がベース革15の側縁部と一致し、他方がベース革15の中間箇所151Cに位置するように接合エリア151Bに組合せられる。このようにベース革15に対して仕切り革13を組み合わせると、表革11と同様、仕切り革13が断面凸湾曲状に変形した状態となり、接合エリア151Bに面して筒状の空間130が形成される。
【0020】
工具ホルダー1では、鋲打ちによってベース革15、表革11、及び仕切り革13が強固に接合されると共に、ベルトループ150が形成される。鋲16は、工具ホルダー1の上下方向(長手方向)における略等間隔の5段階の位置に配置されている(図1参照。)。5段階のうちの1段目は、ベルトループ150の付け根付近に当たる位置であり、5段目は、ベルトループ150とは反対側の工具ホルダー1の下端部に当たる位置である。以下、図1及び図2を参照して、各段の鋲16の配置等に言及することで、工具ホルダー1の組立構造を説明する。
【0021】
1段目の鋲161A・Cは、ベース革15に仕切り革13の上端部を固定するための鋲である。向かって右側の鋲161Aは、ベース革15の右側の側縁部に位置し、仕切り革13の右側の側縁部を固定している。左側の鋲161Cは、ベース革15の中間箇所151Cに位置し、この位置に仕切り革13の左側の側縁部を固定している。
【0022】
2段目の鋲162A〜Cは、表革11の上端部、及び仕切り革13をベース革15の表面側に固定すると共に、ベルトループ150を形成するために折り返したベース革15の先端159を裏面に固定するための鋲である。2段目の鋲162A〜Cは、ベース革15の幅方向両側の側縁部、及び上記の中間箇所151Cの全部で3箇所に配置されている。鋲162A、Bは、ベース革15の幅方向両側の側縁部に表革11の側縁部を固定すると共に、ベース革15の裏側にベース革15の先端159を固定している。そして、鋲162Cは、仕切り革13の左側の側縁部をベース革15の中間箇所151Cに固定している。
【0023】
ここで、仕切り革13の右側の側縁部には、2段目の鋲162Aに当たる位置に切欠き139が設けられている。このように仕切り革13に切欠き139を設けることで、鋲打ちの箇所で革が4枚以上重ならないようにしている(図3参照。)。これにより、鋲打ち箇所の厚さが過大となることを回避し、鋲打ちの作業性や鋲16の耐久性を高めている。
【0024】
3段目の鋲163A〜Cは、表革11及び仕切り革13をベース革15に固定するための鋲である。3段目の鋲163A〜Cは、2段目と同様、ベース革15の幅方向両側の側縁部、及び上記の中間箇所151Cの全部で3箇所に配置されている。右側の鋲163Aは、ベース革15に対して仕切り革13、表革11を固定している。左側の鋲163Bは、ベース革15に対して表革11の左側の側縁部を固定している。中間箇所151Cの鋲163Cは、ベース革15に対して仕切り革13の左側の側縁部を固定している。
【0025】
4段目及び5段目の鋲164A・B及び鋲165A・Bは、表革11をベース革15に固定するための鋲であって、仕様が共通している。鋲164A・B及び鋲165A・Bは、ベース革15の幅方向両側の側縁部に配置され、ベース革15に対して表革11を固定している。左側の鋲164B、165Bは、ベース革15の表側に表革11を固定すると共に、幅方向に張り出す表革11の張出し部111をベース革15の裏側に固定している。張出し部111は、幅方向外側に舌状に張り出す部分であり、ループ状に折り返されてDカン17を保持している。このDカン17は、例えば工具が備える落下防止紐の先端を結び付けるために好適である。
【0026】
以上のように鋲打ちで組み立てられた工具ホルダー1は、ベース革15の折返しによるベルトループ150が上側の半分に形成され、断面凸湾曲状をなす表革11による筒状の収容部10が下側の半分に形成されたものである。工具ホルダー1は、ベルトに対する装着部をなすベルトループ150にベルト等を通すことで大工などの職人が身に着けて使用可能である。
【0027】
工具ホルダー1における表革11は、図3の矢印の方向から収容部10を見込む図4のごとく、断面凸湾曲状に外側に張り出す形状をなしている。表革11は、ベース革15の表面に組み付けられて筒状の収容部10を形成している。表革11の内側に位置するようにベース革15に組み付けられた仕切り革13は、表革11同様に断面凸湾曲状をなし、表革11側に張り出す形状をなしている。
【0028】
仕切り革13がなす断面凸湾曲形状は、図4のごとく、表革11よりもひと回り小さくなっており、表革11がなす断面凸湾曲形状の内側において幅方向に偏って位置している。収容部10の断面形状は、小さい円が大きな円に内接する二重円を半割りしたような断面形状をなしている。ここで、小さい円が仕切り革13に相当し、大きな円が表革11に相当している。なお、図4では、ベース革15を裏側に折り返した部分の図示を省略している。
【0029】
収容部10では、小さい円をなす仕切り革13の存在によってスペース的なアンバランスが生じている。小さい円をなす仕切り革13は、大きい円をなす表革11との間でスリット状のスペース10Sを形成している。このスリット状のスペース10Sは、ベース革15の表面側において表革11が張り出す方向の寸法が小さい空間となっている。一方、大きい円をなす表革11の内側のうち、仕切り革13がなす小さい円に侵食されていない部分では、上記の張り出す方向の寸法が大きく、断面形状の縦横比が1に近い領域的なスペース10Bが形成されている。
【0030】
以上のような構成の工具ホルダー1は、ベルトループ150を利用してベルトに装着でき、フックを備える電動工具やエアー工具など、比較的大型の電動工具等の保持に利用できる。特に本例の工具ホルダー1は、電動工具やエアー工具等が備える金属製のフック、樹脂製のフックのいずれにも好適である。
【0031】
図5(a)に例示するインパクトドライバー等の電動工具5Aでは、例えばステンレス製の板材を折り曲げて形成された金属製のフック51がバッテリ58の付け根に当たる部分にビス止めされている。電動工具5Aについては、フック51が収容部10に対する収容物となって工具ホルダー1による保持が可能となる。金属製のフック51のうち、工具ホルダー1に収容される部分の断面形状は、薄い幅広の板状を呈している(図5(b))。なお、図5(b)及び後出の図6(b)は、図4で図示した収容部10において、フック(ハッチングで示す断面形状)がどのように収容されるかを例示する図である。これらの図では、工具本体の図示を省略している。
【0032】
金属製のフック51が収容物であれば、工具ホルダー1が備える収容部10のうち、スリット状のスペース10Sが好適である。工具ホルダー1では、弾性的に変形可能な厚手の革シートよりなる表革11及び仕切り革13により収容部10が形成されている。そのため、金属製のフック51を収容する際には、表革11及び仕切り革13がフック51の断面形状に沿うように弾性的に変形し(図5(b))、これによりフック51の外周面に適度な押圧力を作用して挟持できる。
【0033】
図6(a)に例示する釘打ち機等のエアー工具5Bでは、樹脂成形品であるカギ状のフック52がグリップ部59の端面に取り付けられている。このエアー工具5Bについては、フック52が収容部10に対する収容物となって工具ホルダー1による保持が可能となる。樹脂製のフック52は、曲げ剛性を確保するために厚さ方向の寸法が大きく確保されて断面正方形状の角錐状をなしている(図6(b))。
【0034】
角錐状の樹脂製のフック52が収容物であれば、工具ホルダー1が備える収容部10のうち、領域的なスペース10Bが好適である。工具ホルダー1では、弾性的に変形可能な厚手の革シートよりなる表革11及び仕切り革13により収容部10が形成されている。そのため、樹脂製の角錐状のフック52を収容する際には、表革11及び仕切り革13がフック52の外周表面に沿うように弾性的に変形し(図6(b))、これによりフック52の外周面に適度な押圧力を作用して挟持できる。
【0035】
以上のように、例示した工具ホルダー1によれば、平らな金属製のフックであるか角錐状の樹脂製のフックであるかに依らず、フックの外周面に沿うように弾性変形すると共に適度な押圧力を作用しながらフックを挟持でき、電動工具5Aやエアー工具5Bを確実性高く保持できる。この工具ホルダー1は、フックの形状(形態)の違いに関わらず電動工具等を保持できる汎用性が高い製品となっている。
【0036】
ここで、大工などの職人の多くは、ドライバーやペンチなどを保持させるための腰袋を腰回りに巻き付けているが、この腰袋はズボンのベルトを覆い隠すように装着されるため、ズボンのベルトには電動工具やエアー工具を引っ掛け難いという実情がある。また、腰袋を腰に巻き付けるためのベルトが外周側に位置しているものの、腰袋に収容されたペンチやハンマーなど様々な道具の重さによりテンションがかかっている。そのため、腰袋のベルトはピンと張った状態となるので、内側に隙間を設け難く電動工具等のフックを引っ掛け難い。仮にフックを引っ掛けることができても、張った状態のベルトによってフックが腰に押し付けられて食い込むため、痛くなることがある。このような実情から、従来、多くの職人が、仕方なくズボンポケット等に電動工具等のフックを引っ掛けて作業している。ベルトよりも低く位置するズボンポケットであれば、上着によって隠れてしまうおそれが少なくなるので、上着の必要な季節であっても電動工具等のフックを容易に引っ掛けることができる。
【0037】
しかしながら、ズボンポケットの場合、開口部が横に長いので、フックが左右に動いてしまい脱落のおそれがあり安全性を十分に確保できない。また、重量のある電動工具等のフックをズボンポケットに引っ掛けて作業を続ければ、ポケットの開口部の縁の部分がすぐにボロボロになってしまうという不都合がある。
【0038】
そこで、本例の工具ホルダー1をズボンのベルト、あるいは腰袋のベルトに予め装着しておくと良い。この工具ホルダー1を利用すれば、ズボンポケット等に電動工具等のフックを引っ掛ける必要がなくなるので、ズボンが傷むこともなくなる。また、工具ホルダー1は、フックの形状に対応する収容部10を備えているので、フックを介して確実性高く電動工具等を保持でき、作業中の安全を十分に確保できる。
【0039】
腰にぶら下げた工具ホルダー1は、腰袋を含めて他のホルダー等により覆い隠されるおそれが少なく外側に露出するので、電動工具等のフックをいつでも容易に引っ掛けることができる。また、この工具ホルダー1は、ベルトループ150を介してズボンのベルト等からぶら下がるように装着されるので、フックを差し入れる収容部10の開口部が上着等によって隠れるおそれが少ない。それ故、この工具ホルダー1では、ズボンポケットにフックを引っ掛けるのと同様の容易さで、電動工具等のフックを引っ掛けることが可能である。さらに、ベルトループ150に腰袋のベルトを通して使用する場合であっても、ベルトの内側にはシート状のベース革15が1枚重なるだけなので、ベルトが張った状態になっても体が痛くなるようなこともない。
【0040】
また、本例の工具ホルダー1では、平らな一枚革から切り出された表革11及び仕切り革13が断面湾曲状に変形された状態で接合されており、その変形に伴う応力がベース革15に生じている。この応力等の作用により、収容部10を形成するベース革15(接合エリア151)は、表革11側に向かって張り出す断面湾曲状をなすように変形した状態となっている(図4参照)。ベース革15のこの断面湾曲形状は、収容部10に対する収容物の挟み込みに有効である。ベース革15のこの断面湾曲形状が平面に近づくような弾性変形に応じて、収容物を挟み込むように作用する適度な押圧力が発生するからである。
【0041】
なお、本例の工具ホルダー1では、仕切り革13と表革11との上端の位置が段違いになっており、仕切り革13の上端部がベルトループ150側に近く位置している(図1参照)。このような段違いの構造は、フック51等を収容部10に挿入する際に非常に便利である。仕切り革13の外表面に沿ってフック51の先端側面を滑らせるようにすれば、フック51等を確実、かつ、容易に収容部10に差し入れできるからである。
【0042】
組立前の表革11について、横幅一定の長方形状ではなく、下側に向けて末窄まりの台形状のものを採用しても良い。この場合には、組付け後の表革11の断面凸湾曲形状が工具ホルダー1の下端に向けて次第に小さくなり、下側に向けて末窄まりの収容部10を実現できる。電動工具やエアー工具のフックは、先端に向かって末窄まりの楔形状を呈するものが多いため、末窄まりの収容部10は好適である。
【0043】
図7のように、表革11の下端の中央に切欠き119を設けることも良い。この切欠き119に工具側のネジ等の凸形状が引っ掛かれば、収容物であるフックの抜け止めになる。また、表革11の湾曲変形に伴う応力が切欠き119では発生しないので、切欠き119を設けることで、表革11がなす断面凸湾曲形状に形状的な変化を生じさせることができる。具体的には、切欠き119の幅方向両外側の裾部分に作用する応力が少なくなるため、この裾部分の湾曲変形が少なくなり、切欠き119が設けられた収容部10の断面形状が台形状に近づく。このように収容部10の断面形状が台形状に近づけば、幅方向の寸法が小さくなり、切欠き119を設けた筒方向下端に向けて末窄まりの収容部を実現できる。
【0044】
さらに図7のように、表革11の上端の位置を幅方向の両側で異ならせ、仕切り革13とは反対側の左側の上端部の位置を高くすることも良い。このとき、1段目の鋲161を2個から3個に増やして、表革11の上端部の左側の側縁部を鋲打ち固定することも良い。この場合には、幅方向において収容物を一層確実にサポートできるようになる。
【0045】
さらに、図7のように、収容部10の下端に当たるベース革15の表面にマグネット18を配置することも良い。金属製のフック51(図5参照。)を磁気的に吸着でき、電動工具5A等を一層確実に保持できるようになる。例えば差し金等の軽量な工具等を保持する際には、磁気的な吸着により脱落等を確実性高く防止できる。
【0046】
さらに、図7のように、表革11の内側に位置するように仕切り革13の外表面にピン19を立設させても良い。例えば、図5のように板状を呈する一方、内周部分に貫通窓519が形成されたフック51などの場合、この貫通窓519にピン19が引っ掛かることで、フック51を抜け止め可能になる。
【0047】
ピン19との組合せにおいて、表革11の左側の上端部の位置が高いという構成が有効に作用する。図7に示すように表革11の上端部は、左側縁部からピン19の下部に向けて右下がりに傾斜した形状となっており、ピン19の下側に向かってフック51が入り込むための滑り台のように機能する。この機能によれば、ピン19の存在によってフック51を差し入れ難くなってしまうことを回避しつつ、フック51を差し入れる際、ピン19がフック51側に確実に引っ掛かるようにできる。さらに、収容部10に差し入れた状態のフック51については、ピン19の下側の位置からの位置ズレを抑制できるので、ピン19により確実性高く抜け止めできる。
【0048】
なお、図7の工具ホルダー1の収容部10からフック51を抜き取る際には、フック51を収容部10の筒方向に軽く押し込んで貫通窓519に係合するピン19を外した後、フック51を図7中の反時計回りに回転させればピン19との干渉を回避しながらフック51を抜き取ることができる。このようなフック51の抜き取り方法は、図7に示す右利き用の工具ホルダー1を体の右側に装着し、右利き用のインパクトドライバーを抜き取る際の好適な方法である。工具ホルダー1にぶら下がるインパクトドライバーのグリップを把持し、工具本体を前方に振り出すようにひねることで、上記のように図7中の反時計回りにフック51を回転でき、抜き取りが可能になる。一方、左利きの場合、体の左側に装着した工具ホルダーから同様の方法でフックを抜き取るためには、表革11の内側において仕切り革13が図7とは反対側の左側に偏っている左利き用の工具ホルダーを採用すれば良い。
【0049】
本例では、鋲打ちにより革シートを接合して工具ホルダー1を組み立てているが、接着接合や、縫製等により革シートを接合しても良い。さらに、例えば樹脂成形等によりベース部、筒形成部、占有部の各構成を一体的に作り込み、本例と同様の断面形状を呈する収容部を形成することも良い。
【0050】
ベルトループ150を備え、ズボンのベルト等に装着されて使用される工具ホルダー1を例示したが、腰袋やベルトやズボンポケットに対する装着部として、ボタンやフックや装着用のベルト・ひもなどを備える工具ホルダーであっても良い。ベルトループやボタン等の装着部を排して収容部10がほぼ全体を占める工具ホルダーであっても良い。この形態の工具ホルダーは、内部空間がひと回り大きい他の筒状のホルダーに収容して使用すると良い。このように本例の工具ホルダーをコンバーターのように利用すれば、他の筒状のホルダーの内部空間を、電動工具等のフックを収容するのに適した空間に変換できる。
【0051】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0052】
1 工具ホルダー
10 収容部
10S・B スペース
11 表革(筒形成部)
13 仕切り革(占有部)
139 切欠き
15 ベース革(ベース部)
150 ベルトループ(装着部)
151 接合エリア
16 鋲
17 Dカン
18 マグネット
19 ピン
5A 電動工具
5B エアー工具
51、52 フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7