特許第6982878号(P6982878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982878
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】穴掘り機
(51)【国際特許分類】
   A01C 5/04 20060101AFI20211206BHJP
   E02F 3/02 20060101ALI20211206BHJP
   E02F 3/06 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   A01C5/04 B
   E02F3/02 Z
   E02F3/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-221200(P2018-221200)
(22)【出願日】2018年11月27日
(65)【公開番号】特開2020-80753(P2020-80753A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】平岡 伸明
(72)【発明者】
【氏名】幡上 宏政
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓也
【審査官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−089338(JP,U)
【文献】 特開2000−008756(JP,A)
【文献】 実開昭57−133689(JP,U)
【文献】 特開2016−140347(JP,A)
【文献】 特開平11−303118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 5/04
E02F 3/02
E02F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に穴を掘るための穴掘り機であって、
把持ハンドルを有するハンドル部と、
前記ハンドル部に対して回動可能に保持され、上下に延びるシャフトと、
前記シャフトの周囲および先端部に配置され、前記シャフトとともに回転するスクリューと、
前記シャフトに回転動力を供給する動力供給部と、
前記ハンドル部に対して固定されるカバーと、
を有し、
前記シャフトは、
前記スクリューよりも上側に配置され、工具を係合可能な回り留め部
を有し、
前記カバーは、
前記スクリューよりも上側において、前記シャフトの周囲を取り囲むシャフトカバー部
を有し、
前記回り留め部の下端部は、前記シャフトカバー部の下端部よりも下側に配置される、穴掘り機。
【請求項2】
請求項1に記載の穴掘り機であって、
前記回り留め部の外周面は、
前記シャフトの回転軸を挟んで対向する一対の把持面
を有する、穴掘り機。
【請求項3】
請求項2に記載の穴掘り機であって、
前記回り留め部の外周面は、回転軸方向に見て四角形状または六角形状である、穴掘り機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の穴掘り機であって、
前記カバーは、
前記シャフトカバー部の下端から前記シャフトの回転軸に略垂直に拡がるフランジ部
をさらに有する、穴掘り機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の穴掘り機であって、
前記シャフトカバー部は、
貫通孔または周方向の一部に設けられた間隙
を有し、
前記カバーの外側から、前記貫通孔または前記間隙を介して前記回り留め部の少なくとも一部を視認可能である、穴掘り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面等に穴を掘るための穴掘り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植林や造園において、苗木や植物の苗を植える植穴を形成するために、穴掘り機が用いられている。穴掘り機には、例えば、特許文献1に記載のように、油圧ショベルのアームの先端に取り付けられる大型のものがある(図5参照)。また、例えば、特許文献2に記載のように、動力部である小型エンジンと、スクリューを有する作業部から成る持ち運び可能な小型の穴掘り機もある(図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−3778号公報
【特許文献2】特開2016−140347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような穴掘り機では、動力部と作業部との動力伝達構成上、動力部によるスクリューの回転方向が一方方向のみである場合が多い。一方、穴掘り機で植穴を形成する場合、例えば森林においては、植物の根などに作業部のスクリューが絡まって抜けなくなる場合がある。その場合、スクリューを逆回転する必要がある。
【0005】
その際に、動力部自体、または、動力部と作業部との動力伝達構成を逆回転可能なものとすると、コストが上がったり、構成が複雑化して装置が大型化したりするという問題が生じる。一方で、スクリューを逆回転できない場合、作業部全体を逆回転させる必要が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、装置構成を複雑化することなく、スクリューを簡易な方法で逆回転させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、地面に穴を掘るための穴掘り機であって、把持ハンドルを有するハンドル部と、前記ハンドル部に対して回動可能に保持され、上下に延びるシャフトと、前記シャフトの周囲および先端部に配置され、前記シャフトとともに回転するスクリューと、前記シャフトに回転動力を供給する動力供給部と、前記ハンドル部に対して固定されるカバーと、を有し、前記シャフトは、前記スクリューよりも上側に配置され、工具を係合可能な回り留め部を有し、前記カバーは、前記スクリューよりも上側において、前記シャフトの周囲を取り囲むシャフトカバー部を有し、前記回り留め部の下端部は、前記シャフトカバー部の下端部よりも下側に配置される
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の穴掘り機であって、前記回り留め部の外周面は、前記シャフトの回転軸を挟んで対向する一対の把持面を有する。
【0009】
本願の第3発明は、第2発明の穴掘り機であって、前記回り留め部の外周面は、回転軸方向に見て四角形状または六角形状である。
【0011】
本願の第発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの穴掘り機であって、前記カバーは、前記シャフトカバー部の下端から前記シャフトの回転軸に略垂直に拡がるフランジ部をさらに有する。
【0012】
本願の第発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの穴掘り機であって、前記シャフトカバー部は、貫通孔または周方向の一部に設けられた間隙を有し、前記カバーの外側から、前記貫通孔または前記間隙を介して前記回り留め部の少なくとも一部を視認可能である。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明から第発明によれば、スクリューが地面の中で木の根等に引っ掛かってしまった場合に、回り留め部に一般的な工具を係合させて、シャフトを逆回転することができる。これにより、スクリューを有する作業部全体を逆回転させたり、装置構成を変更したりすることなく、簡易な方法でスクリューを地面の中から抜くことができる。さらに、シャフトカバー部に遮られることなく、回り留め部を工具と係合させやすい。
【0014】
特に、本願の第2発明によれば、一対の把持面を有することにより、モンキーレンチで回り留め部を固定できる。これにより、簡単な操作でスクリューを地面の中から抜くことができる。
【0015】
特に、本願の第3発明によれば、モンキーレンチで掴みやすく、かつ、回り留め部を製造しやすい。
【0017】
特に、本願の第発明によれば、フランジが地面に接触することにより、穴が深くなり過ぎるのを抑制する。
【0018】
特に、本願の第発明によれば、上部から回り留め部を視認できることにより、地面にスクリューが刺さった状態であっても、回り留め部に工具を係合させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】穴掘り機の斜視図である。
図2】穴掘り機の作業部の背面図である。
図3】穴掘り機の作業部の断面図である。
図4】回り留め部の横断面図である。
図5】従来の穴掘り機の一例である。
図6】従来の穴掘り機の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、穴掘り機のシャフトの延びる方向を「上下方向」と称する。また、上下方向のうち、シャフトの基端側から先端側を向く方向を「下向き」と称する。なお、これらの方向の定義は、穴掘り機の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0021】
<1.第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る穴掘り機1の斜視図である。図2は、穴掘り機1の作業部10の背面図である。図3は、穴掘り機1の作業部10の断面図である。
【0022】
穴掘り機1は、小型エンジン11と、肩ベルト12と、動力伝達部13と、作業部10とを有する。小型エンジン11は、回転動力を作業部10の後述するシャフト4に供給するための動力供給部である。小型エンジン11を駆動させると、回転動力が動力伝達部13へと出力される。
【0023】
肩ベルト12は、作業者が小型エンジン11を背負うためのベルトである。作業者は、肩ベルト12を用いて小型エンジン11を背負い、作業部10を手に持って穴掘り作業を行う。このように、小型エンジン11を背負うことにより、手に持つ作業部10の重量を軽減するとともに、穴掘り機1全体の移動を容易としている。
【0024】
動力伝達部13は、小型エンジン11から出力された回転動力を作業部10へと伝達する。本実施形態の動力伝達部13は、アウターチューブと、インナーコアシャフトとから成り、フレキシブルライナーまたはフレキシブルシャフトと呼ばれる動力伝達機構である。この動力伝達部13では、管状のアウターチューブの内部においてインナーコアシャフトが回転することにより、インナーコアシャフトの一端に入力された回転動力が他端に伝達される。動力伝達部13は屈曲可能であるため、小型エンジン11と作業部10との相対的な位置関係を所定の範囲内で変更することが可能である。
【0025】
作業部10は、ハンドル部2、動力変換部3、シャフト4、スクリュー5と、カバー6とを有する。
【0026】
ハンドル部2は、作業者が作業部10を把持するための部位である。ハンドル部2は、本体部20と、一対の把持ハンドル21と、操作スイッチ22と、駆動レバー23とを有する。
【0027】
本体部20は、上下方向に延びる部材である。把持ハンドル21は、本体部20の上端に固定される。作業者は、穴掘り作業時に把持ハンドル21を把持する。操作スイッチ22は、シャフト4を回転可能状態と、停止状態とに切り替えるためのスイッチである。操作スイッチ22は、本体部20の上端に固定され、一対の把持ハンドル21の間に配置される。
【0028】
駆動レバー23は、把持ハンドル21の一方に沿って配置される。このため、作業者は、駆動レバー23を、把持ハンドル21とともに把持することで、駆動レバー23をONにすることができる。操作スイッチ22を回転可能状態として、駆動レバー23をONとすると、小型エンジン11から動力伝達部13および動力変換部3を介して伝達された回転動力によってシャフト4が回転する。
【0029】
動力変換部3は、図3に示すように、ケーシング31と、ケーシング31の内部に収容された減速機32とを有する。ケーシング31は、ハンドル部2の本体部20に固定された筐体である。
【0030】
この減速機32は、上側に、上下方向に延びる入力軸321を有し、下側に、上下方向に延びる出力軸322を有する。入力軸321の上端には、動力伝達部13のインナーコアシャフトの他端が接続される。これにより、小型エンジン11から出力された回転動力が動力伝達部13を介して入力軸321に入力される。減速機32は、入力軸321に入力された回転動力の回転数を変換して、出力軸322へ回転動力を出力する。
【0031】
シャフト4は、上下に延びる円柱状の部材である。シャフト4は、ハンドル部2に対して、上下に延びる回転軸を中心として回動可能に保持される。シャフト4の上端は、減速機32の出力軸322と接続される。これにより、減速機32から出力された回転動力がシャフト4に入力される。
【0032】
スクリュー5は、シャフト4に固定され、シャフト4とともに回転する。スクリュー5は、シャフト4の周囲に配置される第1スクリュー51と、シャフト4の先端部に配置される第2スクリュー52とから成る。第1スクリュー51と第2スクリュー52とは、一体に成型されていてもよいし、別部材であってもよい。
【0033】
カバー6は、シャフトカバー部61と、フランジ部62とを有する。
【0034】
シャフトカバー部61の上端は、動力変換部3のケーシング31に固定される。また、シャフトカバー部61は、スクリュー5よりも上側において、シャフト4から間隔を空けて、シャフト4の周囲を取り囲む。
【0035】
シャフトカバー部61は、複数の貫通孔63と、周方向の一部に設けられた間隙64とを有する。貫通孔63や間隙64を設けることにより、シャフトカバー部61の軽量化がなされている。
【0036】
フランジ部62は、シャフトカバー部61の下端から、シャフト4の回転軸に略垂直に拡がる。穴掘り作業時に、スクリュー5が十分な深さまで植穴を形成すると、フランジ部62が地面に接触する。これにより、植穴が深くなり過ぎるのを抑制できる。
【0037】
このような穴掘り機1において、シャフト4は、工具を係合可能な回り留め部9を有する。回り留め部9は、スクリュー5よりも上側に配置される。図4は、回り留め部9の横断面図である。図4に示すように、本実施形態では、回り留め部9の外周面が、シャフト4の回転軸方向に観て四角形状である。すなわち、回り留め部9の外周面が、シャフト4の回転軸を挟んで対向する一対の把持面91を有する。これにより、モンキーレンチ等の一般的な工具Tで回り留め部9を把持し、固定することができる。したがって、モンキーレンチ等の一般的な工具Tを用いてシャフト4を逆回転することが可能である。
【0038】
このように、工具を係合可能な回り留め部9を設けることにより、スクリュー5が地面の中で木の根等に引っ掛かってしまった場合に、工具を用いてシャフト4を逆回転することができる。したがって、作業部10の全体を逆回転させたり、装置構成を変更したりすることなく、簡易な方法でスクリュー5を逆回転させることができる。
【0039】
なお、本実施形態において、回り留め部9は、回転軸方向に見て四角形状の外周面を有していたが、本発明はこの限りではない。例えば、回り留め部は、回転軸方向に見て六角形状の外周面を有していてもよい。この場合であっても、シャフトの回転軸を挟んで対向する一対の把持面を有するため、モンキーレンチ等の工具で把持して固定することができる。回り留め部の外周面が回転軸方向に見て四角形状や六角形状である場合、モンキーレンチ等の工具で掴みやすく、かつ、回り留め部を製造しやすい。
【0040】
また、回り留め部は、係合した工具が周方向に滑るのを抑制する構成であれば、必ずしも把持面を有するものでなくてもよい。例えば、回転軸方向に見て円形のシャフト4の外周面の周方向の一部から突出する突出部であってもよい。その場合、シャフト4の外周面をモンキーレンチ等の工具で把持した場合に、工具が周方向に滑ったとしても、当該突出部に当たって周方向への回り留めとなる。これにより、モンキーレンチ等の工具を用いてシャフト4およびスクリュー5を地面の中から抜くことができる。
【0041】
この穴掘り機1では、回り留め部9の下端部が、シャフトカバー部61の下端部よりも下側に配置される。これにより、回り留め部9の少なくとも一部は、カバー6よりも下方においてカバー6から露出している。これにより、カバー6に遮られることなく、回り留め部9に工具を係合させやすい。
【0042】
さらに、この穴掘り機1では、シャフトカバー部61が、複数の貫通孔63と、周方向の一部に設けられた間隙64とを有する。これにより、カバー6の外側から、貫通孔63または間隙64を介して回り留め部9の少なくとも一部を視認可能である。したがって、回り留め部9およびその周辺を、回り留め部9よりも上方から視認しやすい。これにより、地面にスクリュー5が刺さった状態であっても、回り留め部9に工具を係合させやすい。
【0043】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
上記の実施形態の穴掘り機は、動力供給部である小型エンジンが、作業部に対して相対的に移動可能であったが、本発明はこれに限られない。動力供給部と作業部とが一体に構成されていてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態の穴掘り機では、動力供給部がエンジンであったが、本発明はこれに限られない。動力供給部は、回転動力を供給可能であれば、モータ等の他の構成であってもよい。
【0046】
また、上記の穴掘り機は、工具との係合面となる回り留め部の外表面がシャフトの外表面よりも外側に配置されたが、本発明はこれに限られない。工具との係合面が、シャフトの外表面の一部を平らに削ることによって形成されていてもよい。
【0047】
また、穴掘り機の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 穴掘り機
2 ハンドル部
3 動力変換部
4 シャフト
5 スクリュー
6 カバー
9 回り留め部
10 作業部
11 小型エンジン
13 動力伝達部
21 把持ハンドル
32 減速機
51 第1スクリュー
52 第2スクリュー
61 シャフトカバー部
62 フランジ部
63 貫通孔
64 間隙
91 把持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6