特許第6982931号(P6982931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982931
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】連続鋳造圧延機の張力制御装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/48 20060101AFI20211206BHJP
   B22D 11/12 20060101ALI20211206BHJP
   B22D 11/20 20060101ALI20211206BHJP
   B21B 37/26 20060101ALI20211206BHJP
   B21B 1/46 20060101ALI20211206BHJP
   B21B 1/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B21B37/48 Z
   B22D11/12 A
   B22D11/20 A
   B21B37/26
   B21B1/46 B
   B21B1/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-168480(P2018-168480)
(22)【出願日】2018年9月10日
(65)【公開番号】特開2020-40081(P2020-40081A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2020年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】三村 俊裕
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−319909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−37/78
B22D 11/00−11/22
B21B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1速度制御装置によって駆動され、異なるスラブ形状を有するスラブを搬送するセグメントロールと、第2速度制御装置によって駆動され、前記セグメントロールによって搬送された前記スラブを圧延する圧延ロールと、の間で前記スラブの張力を制御する連続鋳造圧延機の張力制御装置であって、
前記異なるスラブ形状および前記スラブ形状の変動する変動点の座標をあらかじめ設定したスラブ形状設定装置と、
前記第1速度制御装置のために設定された所定の第1速度基準にもとづいて、前記スラブの先端の位置および前記変動点の位置をそれぞれ算出し、算出された前記先端の位置および前記変動点の位置が、前記圧延ロールの位置に等しくなるごとに信号を出力する追跡装置と、
前記第1速度制御装置が出力する負荷電流にもとづいて、前記第2速度制御装置のための所定の第2速度基準を補正して、第2速度基準補正値を出力する補正制御回路と、
前記信号が出力されるタイミングごとに、前記第2速度基準補正値の変化量に応じて、前記負荷電流を補正して、前記補正制御回路に供給する演算装置と、
を備え、
前記スラブ形状設定装置では、前記変動点の座標は、前記スラブの先端を基準して設定され、
前記追跡装置が算出する前記先端の位置および前記変動点の位置は、前記圧延ロールよりも上流の所定の位置を通過するタイミングでそれぞれ初期化される連続鋳造圧延機の張力制御装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記信号が出力されるタイミングの前後の前記第2速度基準補正値の変化量を入力することによって、前記負荷電流を補正する請求項1記載の連続鋳造圧延機の張力制御装置。
【請求項3】
前記異なるスラブ形状のそれぞれに対応する負荷電流のデータを、前記先端の位置または前記変動点の位置に応じてあらかじめ取得して記憶したデータ記憶装置をさらに備え、
前記データ記憶装置は、
前記スラブ形状設定装置から入力された前記異なるスラブ形状のうちの1つのスラブ形状に一致する前記負荷電流のデータを選択し、
前記追跡装置から入力された前記先端の位置または前記変動点の位置に応じた前記負荷電流のデータを前記演算装置に供給する請求項1記載の連続鋳造圧延機の張力制御装置。
【請求項4】
前記負荷電流のデータは、前記異なるスラブ形状に対応するスラブ形状サンプルを用いて測定された請求項3記載の連続鋳造圧延機の張力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、連続鋳造圧延機の張力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブの鋳造から圧延、巻き取りまでを連続的に行う連続鋳造圧延技術が実用化されている。近年、異なる形状のスラブを連続かつ一体で鋳造し、圧延する技術を実用化することによって、生産効率の向上をはかることが望まれている。
【0003】
従来の連続鋳造圧延技術では、最初にスラブの先端が圧延機に噛み込まれるときや、スラブ形状が変動することを考慮していないので、スラブ先端噛み込み前およびスラブ形状変動前の情報にもとづいて、張力制御を行っている。そのため張力制御装置は、不安定な動作になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−319909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、上記の課題を解決するためのもので、最初にスラブ先端が噛み込まれるときや、圧延中のスラブ形状の変動による張力変動を抑制する連続鋳造圧延機の張力制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る連続鋳造圧延機の張力制御装置は、第1速度制御装置によって駆動され、異なるスラブ形状を有するスラブを搬送するセグメントロールと、第2速度制御装置によって駆動され、前記セグメントロールによって搬送された前記スラブを圧延する圧延ロールと、の間で前記スラブの張力を制御する。この張力制御装置は、前記異なるスラブ形状および前記スラブ形状の変動する変動点の座標をあらかじめ設定したスラブ形状設定装置と、前記第1速度制御装置のために設定された所定の第1速度基準にもとづいて、前記スラブの先端の位置および前記変動点の位置をそれぞれ算出し、算出された前記先端の位置および前記変動点の位置が、前記圧延ロールの位置に等しくなるごとに信号を出力する追跡装置と、前記第1速度制御装置が出力する負荷電流にもとづいて、前記第2速度制御装置のための所定の第2速度基準を補正して、第2速度基準補正値を出力する補正制御回路と、前記信号が出力されるタイミングごとに、前記第2速度基準補正値の変化量に応じて、前記負荷電流を補正して、前記補正制御回路に供給する演算装置と、を備える。前記スラブ形状設定装置では、前記変動点の座標は、前記スラブの先端を基準して設定される。前記追跡装置が算出する前記先端の位置および前記変動点の位置は、前記圧延ロールよりも上流の所定の位置を通過するタイミングでそれぞれ初期化される
【発明の効果】
【0007】
本実施形態では、圧延中のスラブの形状変動による張力変動を抑制する連続鋳造圧延機の張力制御装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る連続鋳造圧延機の張力制御装置を例示する模式的なブロック図である。
図2】比較例の連続鋳造圧延機の張力制御装置を例示する模式的なブロック図である。
図3】実施の形態2に係る連続鋳造圧延機の張力制御装置を例示する模式的なブロック図である。
図4】実施の形態2の連続鋳造圧延機の張力制御装置の動作を説明するための模式図である。
図5】実施の形態2の連続鋳造圧延機の張力制御装置の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る連続鋳造圧延機の張力制御装置を例示する模式的なブロック図である。
連続鋳造圧延機の張力制御装置20は、鋳造設備および圧延機とともに用いられる。鋳造設備は、タンディッシュ1と、モールド2と、セグメントロール3a〜3Lと、を含む。圧延機は、圧延ロール6を含む。タンディッシュ1には、溶鋼が装入されている。モールド2は、タンディッシュ1から抽出された溶鋼を冷却する。セグメントロール3a〜3Lは、モールド2から取り出されたスラブを圧延機に向かって搬送する。圧延機は、圧延ロール6によって、搬送されてきたスラブを圧延する。
【0011】
張力制御装置20は、速度制御装置4a〜4Lおよび電流検出器9a〜9Lを介して、セグメントロール3a〜3Lの速度を制御しつつセグメントロール3a〜3Lを駆動する。張力制御装置20は、速度制御装置7を介して、圧延ロール6の速度を制御しつつ駆動する。速度制御装置4a〜4Lおよび速度制御装置7は、張力制御装置20から供給される速度基準にしたがって、各ロールを駆動する電動機を駆動する。速度制御装置7は、後述するように、速度制御装置4a〜4Lの負荷電流にもとづいて補正された速度基準を用いることによって、速度制御装置4a〜4Lとの間でスラブの張力制御を行う。
【0012】
張力制御装置20は、速度制御装置4a〜4Lが出力する電流値をそれぞれ検出して、これらの平均値にもとづいて、速度制御装置7の速度基準を補正する。また、張力制御装置20は、スラブ形状の変動に応じて発生する速度基準の補正量または負荷電流の変化にもとづいて、速度制御装置7の速度基準をさらに補正する。このようにして、張力制御装置20は、形状が変動するスラブに対しても張力を一定にするように速度基準を補正して速度制御装置7に供給する。
【0013】
張力制御装置20の構成について詳細に説明する。
張力制御装置20は、スラブ形状設定装置13と、演算装置14と、追跡装置15と、を備える。張力制御装置20は、演算回路12と、データサンプリング装置10と、補正制御回路11と、速度基準回路5,8と、をさらに含んでいる。
【0014】
演算回路12には、各電流検出器9a〜9Lによって検出された電流値のデータが入力される。演算回路12は、検出された電流値の平均値を演算してデータサンプリング装置10に供給する。なお、以下では、検出された電流値の平均値を負荷電流ということとする。
【0015】
データサンプリング装置10は、負荷電流のデータを所定の周期でサンプリングして補正制御回路11に供給する。
【0016】
補正制御回路11は、速度基準回路8から供給される圧延ロール6のための速度基準およびデータサンプリング装置10から供給される負荷電流のサンプリングデータを入力し、これらにもとづいて速度基準を補正して、補正された速度基準を速度制御装置7に供給する。補正制御回路11は、たとえば負荷電流が減少したときには、速度基準を大きくするように補正し、負荷電流が増加したときには、速度基準を小さくするように補正する。
【0017】
ここで、データサンプリング装置10には、演算装置14の演算結果がさらに入力される。演算装置14には、追跡装置15およびスラブ形状設定装置13の出力が供給されている。
【0018】
スラブ形状設定装置13では、スラブの形状のデータがあらかじめ設定されている。スラブの形状とは、たとえば、スラブの厚さおよび幅の寸法のデータによって規定されている。スラブ形状設定装置13に設定されたスラブ形状のデータは、スラブの厚さおよび幅の寸法のデータに、搬送方向に沿った位置座標が関連付けられたデータである。ここで、位置座標は、たとえば、スラブの先端を基準として設定され、スラブ形状の変動点の座標が設定されている。スラブ形状のデータは、スラブの厚さ、幅および全長のデータとしてもよい。
【0019】
追跡装置15は、スラブの先端の位置およびスラブ形状の変動点の位置を算出する。追跡装置15が算出するスラブの先端の位置やスラブ形状の変動点の位置は、たとえばモールド2から出力されるタイミングによって初期化される。そのため、鋳造設備中のスラブの先端の位置やスラブ形状の変動点の位置は、セグメントロール3a〜3Lに対する速度基準を用いることによって算出することができる。モールド2の出力と圧延ロール6との間の距離は既知であるので、追跡装置15は、スラブの先端およびスラブ形状の変動点が圧延ロールに達するタイミングを計算して、信号を出力する。なお、スラブ形状の変動点とは、異なるスラブ形状を有するスラブの境界である。この境界は、スラブ形状がゆるやかに変動、たとえば、スラブの厚さが座標値の進行にしたがって次第に厚くなる等である。そのため、たとえば異なる厚さの平均の厚さになる位置(座標)が変動点として規定されている。
【0020】
演算装置14は、スラブの先端が圧延ロール6に達するタイミングを表す信号を追跡装置15から取得し、同時に、そのスラブの形状のデータをスラブ形状設定装置13から取得する。また、演算装置14は、補正制御回路11から得られる速度基準の補正量の変化量を入力する。この補正量の変化は、たとえば追跡装置15が信号を出力する前後の補正量にもとづいて計算される。
【0021】
演算装置14は、スラブ先端が圧延ロール6に達したタイミングで、速度基準の補正量の変化量にもとづいて、そのスラブ形状の場合のサンプリングデータの補正量(負荷電流の補正量)を演算し、データサンプリング装置10に供給する。演算装置14は、たとえば速度基準の補正量の変化量が大きいときには、データサンプリング装置10に供給する負荷電流の補正量のデータをより大きく設定する。演算装置14は、速度基準の補正量の変化量が小さいときには、データサンプリング装置10に供給する負荷電流の補正量をより小さく設定する。
【0022】
データサンプリング装置10は、演算装置14から供給された負荷電流の補正量にしたがって、サンプリングデータを補正(たとえば、負荷電流のサンプリングデータに負荷電流の補正量を加算)して、補正制御回路11に供給する。補正制御回路11は、スラブ先端が圧延ロール6に噛み込むときに必要な出力電流を供給できるように、速度基準を補正して、補正された速度基準を速度制御装置7に供給する。
【0023】
スラブ形状の変動点が圧延ロール6に達するタイミングについても同様である。すなわち、演算装置14は、スラブ形状の変動点が圧延ロール6に達するタイミングを追跡装置15から取得し、同時に、そのスラブの形状のデータをスラブ形状設定装置13から取得する。また、演算装置14は、補正制御回路11から得られる速度基準の補正量の変化量を入力する。演算装置14は、スラブ形状の変動点が圧延ロール6に達したタイミングで、速度基準の補正量の変化量にもとづいて、そのスラブ形状の場合のサンプリングデータの補正量を演算し、データサンプリング装置10に供給する。
【0024】
このようにして、本実施形態の張力制御装置20は、スラブ先端およびスラブ形状の変動点が圧延ロール6に達したタイミングで、負荷電流の変化量にもとづいて、速度基準の補正量を演算する。そのため、本実施形態の連続鋳造圧延機の張力制御装置20は、スラブ先端およびスラブ形状の変動点が圧延ロール6に到達したタイミングにおけるスラブの張力変動を抑制することができる。
【0025】
張力制御装置20は、たとえばプログラマブルコントローラ(PLC)によって構成されてもよい。PLCによって構成される場合には、上述した各ブロック(回路、装置等)は、PLCのプログラムの1つまたは複数のステップを実行することによって実現することができる。1つのPLCを動作させる場合に限らず、複数のPLCを連携させて動作させてもよい。
【0026】
本実施形態の張力制御装置20の効果について、比較例の張力制御装置と比較しつつ説明する。
図2は、比較例の連続鋳造圧延機の張力制御装置を例示する模式的なブロック図である。
図2に示すように、比較例の張力制御装置120は、演算回路12と、データサンプリング装置10と、補正制御回路11と、を備えているが、スラブ形状設定装置13、演算装置14および追跡装置15を備えていない(たとえば特許文献1参照)。
【0027】
電流検出器9a〜9Lは、検出した負荷電流を演算回路12にフィードバックする。演算回路12は、フィードバックされた負荷電流の平均値をデータサンプリング装置10に供給する。データサンプリング装置10は、圧延ロール6圧下前のセグメントロール3a〜3Lの実負荷電流の平均値を一定時間ごとに採取し、その平均値と圧延ロール6圧下後のセグメントロール3a〜3Lの実負荷電流との偏差を補正制御回路11へ出力する。補正制御回路11はデータサンプリング装置10からの出力を受けて、圧延ロール6の速度基準回路8からの基準速度を補正して速度制御装置7へ出力する。
【0028】
このように、比較例の張力制御装置120では、スラブ先端やスラブ形状の変動点が圧延ロール6に到達した場合においても、上述のフィードバック制御を実行するのみであるので、張力制御が不十分となり、制御が不安定となるおそれがある。
【0029】
これに対して、本実施の形態の張力制御装置20では、スラブ形状設定装置13と、演算装置14と、追跡装置15と、を備える。そのため、スラブ先端およびスラブ形状変動点が圧延ロール6に到達した時点で、圧延ロール6の速度制御装置7に供給する速度基準を適切に補正することができ、安定して張力制御を行うことができる。
【0030】
本実施の形態の張力制御装置20によれば、異なる形状のスラブを連続的に鋳造して圧延する連続鋳造圧延機を実現することができるので、圧延工程の生産効率を著しく向上させることができる。
【0031】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係る連続鋳造圧延機の張力制御装置を例示する模式的なブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態の張力制御装置220は、データ記憶装置16をさらに備える。データ記憶装置16以外の構成要素は、上述の他の実施の形態1の場合と同じであり、同一の構成要素には同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
【0032】
データ記憶装置16には、あらかじめスラブ形状ごとに、負荷電流とスラブ先端位置との関係(以下、スラブ形状パターンという)のデータであるスラブ形状パターンデータが記憶されている。データ記憶装置16は、スラブ形状設定装置13から供給されるスラブ形状のデータおよび追跡装置15から供給されるスラブ形状の変動点の位置のデータを入力する。
【0033】
データ記憶装置16は、スラブ形状設定装置13からスラブ形状のデータを取得するとそのスラブ形状のデータに対応するスラブ形状パターンデータを選択する。
【0034】
データ記憶装置16は、選択されたスラブ形状パターンデータにもとづいて、負荷電流のデータを演算装置14に供給する。演算装置14は供給された負荷電流のデータおよび補正制御回路11からフィードバックされる負荷電流のデータにもとづいて、補正量を演算して、データサンプリング装置10に供給する。
【0035】
図4および図5は、実施の形態2の連続鋳造圧延機の張力制御装置の動作を説明するための模式図である。
図4には、スラブ形状パターンデータをあらかじめ取得して、データ記憶装置16に格納する方法が模式的に示されている。
【0036】
スラブ形状パターンデータは、製品のスラブを投入するのに先立って取得される。たとえば、スラブ形状パターンデータは、複数のスラブ形状をそれぞれ有するスラブ形状パターンサンプルを用いて取得される。複数のスラブ形状のそれぞれは、製品のスラブとして投入され得るスラブの形状である。スラブ形状パターンサンプルは、このようなスラブ形状を有する試験的なサンプルである。なお、スラブ形状パターンサンプルは、セグメントロール3a〜3Lから圧延ロール6に達する程度の長さがあればよく、製品のスラブの搬送方向の長さよりも短くてもよい。
【0037】
この例では、スラブ形状パターンデータは、N個のスラブ形状に対応するスラブ形状パターンサンプルを用いて取得される。
【0038】
図4に示すように、各スラブ形状パターンデータP1,P2,…,PNは、演算装置14によって、負荷電流のデータがそれぞれ取得され、追跡装置15によって、スラブ形状パターンサンプルの先端の位置が負荷電流のデータに応じて取得される。なお、スラブ形状パターンサンプルの先端の位置は、製品のスラブ投入時には、それが最初のスラブの場合には、先端位置であり、後続するスラブの場合には、スラブ形状の変動点の位置に置き換えられる。
【0039】
このようにして、あらかじめ取得された各スラブ形状パターンデータP1,P2,…,PNは、スラブ形状1,2,…,Nにそれぞれ関連付けられて、データ記憶装置16に格納される。
【0040】
図5には、スラブ形状設定装置13が所定のスラブ形状のデータ(ここではスラブ形状Xとする)をデータ記憶装置16に供給し、追跡装置15がスラブ形状Xの変動点位置のデータをデータ記憶装置16に供給している場合が示されている。
【0041】
データ記憶装置16は、スラブ形状Xからスラブ形状パターンデータPXを選択し、変動点位置のデータから負荷電流のデータを取得する。取得された負荷電流のデータは、演算装置14に供給される。
【0042】
本実施の形態では、スラブ先端および変動点が圧延ロール6に到達するタイミングに合わせて、負荷電流の補正量を決定することができるので、より安定した張力制御を実行することが可能になる。
【0043】
以上説明した実施形態によれば、最初にスラブ先端が噛み込まれるときや、圧延中のスラブ形状の変動による張力変動を抑制する連続鋳造圧延機の張力制御装置を実現することができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 タンディッシュ、2 モールド、3a〜3L セグメントロール、4a〜4L 速度制御装置、5 速度基準回路、6 圧延ロール、7 速度制御装置、8 速度基準回路、9a〜9L 電流検出器、10 データサンプリング装置、11 補正制御回路、12 演算回路、13 スラブ形状設定装置、14 演算装置、15 追跡装置、16 データ記憶装置、20,220 張力制御装置
図1
図2
図3
図4
図5