(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術(特許文献1)は、大型の設備が必要となるため、コストの高騰は避けられない。また、固定式の装置であるため、閉鎖水域の全体についての処理は困難である。仮に、閉鎖水域の全体についての処理を行うとすれば、さらに高コストとなってしまう。
【0006】
また、上記他の従来技術にかかる曝気装置や流動発生装置等は、固定式であるため、浅瀬や吹き溜まり等の場所に流れが届かず、浮遊性藍藻類の大量発生を適切に抑制することができない。
【0007】
そこで、本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な本体部と、前記本体部に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部と、前記本体部に設けられた、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく前記浮遊性藍藻類の流動状態を制御する流動制御部と、を備えたことを特徴としている。
より具体的には、本発明は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な本体部と、前記本体部に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部と、前記本体部に設けられた、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく前記浮遊性藍藻類の流動状態を制御する流動制御部とを備え、
前記本体部の後方位置に、二つの振動翼部が設けられており、前記水質改善装置が
前記振動翼部を用いて装置進行方向に進むことによって、前記浮遊性藍藻類は前記水質改善装置に向かってくる方向に接近し、接近した前記浮遊性藍藻類は、前記流動制御部によって前記超音波照射部による照射位置に流通され、前記超音波照射部から前記浮遊性藍藻類に対して照射される前記超音波の照射方向が、水平方向であって、且つ前記浮遊性藍藻類の浮遊性藍藻類流通方向と並行していることを特徴としている。
【0009】
このように、本発明の第一態様にかかる水質改善装置は、前記本体部、および前記本体部に設けられた前記超音波照射部と前記流動制御部とを用いて構成されている。
このような構成によれば、前記本体部が前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、前記水域の全体に対して前記水質改善装置を移動させることができる。また、このような構成によれば、前記本体部に前記超音波照射部が設けられ、前記流動制御部によって前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導することができる。
したがって、このように構成された水質改善装置によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域(前記浮遊性藍藻類の生息する水域)全体における前記浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置を得ることができる。
【0010】
本発明の第二態様は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部を有する船体部と、前記船体部に設けられた推進部と、前記双胴部の間に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部と、前記双胴部に設けられた、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく前記浮遊性藍藻類の流動状態を制御する、一対の流動制御板と、を備えたことを特徴としている。
より具体的には、本発明は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部を有する船体部と、前記船体部に設けられた推進部と、前記双胴部の間に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部と、前記双胴部に設けられた、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく前記浮遊性藍藻類の流動状態を制御する、一対の流動制御板とを備え、
前記船体部の後方位置に、前記推進部として二つの振動翼部が設けられており、前記水質改善装置が
前記振動翼部を用いて装置進行方向に進むことによって、前記浮遊性藍藻類は前記水質改善装置に向かってくる方向に接近し、接近した前記浮遊性藍藻類は、前記一対の流動制御板によって、前記船体部の底面と前記双胴部にて形成される半閉鎖空間に前記浮遊性藍藻類が誘導され、前記超音波照射部から前記浮遊性藍藻類に対して照射される前記超音波の照射方向が、水平方向であって、且つ誘導された前記浮遊性藍藻類の浮遊性藍藻類流通方向と並行していることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の第二態様にかかる水質改善装置は、前記船体部、および前記船体部に設けられた前記推進部と前記超音波照射部と前記流動制御板とを用いて構成されている。
このような構成によれば、前記推進部を用いることによって前記船体部が前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、前記水域の全体に対して前記水質改善装置を移動させることができる。また、このような構成によれば、前記船体部に前記超音波照射部が設けられ、前記流動制御板によって前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導することができる。
したがって、このように構成された水質改善装置によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における前記浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置を得ることができる。
【0012】
本発明の第三態様は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部を有する船体部と、前記船体部に設けられた推進部と、前記双胴部の間に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部と、前記双胴部に設けられた、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく前記浮遊性藍藻類の流動状態を制御する、一対の流動制御板とを備え、前記超音波の音圧が高い領域が、8V〜20Vであり、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が、5秒〜15秒となるべく、前記推進部による前記船体部の移動速度が制御されることを特徴としている。
より具体的には、本発明は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部を有する船体部と、前記船体部に設けられた推進部と、前記双胴部の間に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部と、前記双胴部に設けられた、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく前記浮遊性藍藻類の流動状態を制御する、一対の流動制御板とを備え、
前記船体部の後方位置に、前記推進部として二つの振動翼部が設けられており、前記水質改善装置が
前記振動翼部を用いて装置進行方向に進むことによって、前記浮遊性藍藻類は前記水質改善装置に向かってくる方向に接近し、接近した前記浮遊性藍藻類は、前記一対の流動制御板によって、前記船体部の底面と前記双胴部にて形成される半閉鎖空間に前記浮遊性藍藻類が誘導され、前記超音波照射部から前記浮遊性藍藻類に対して照射される前記超音波の照射方向が、水平方向であって、且つ誘導された前記浮遊性藍藻類の浮遊性藍藻類流通方向と並行しており、前記超音波の音圧が高い領域が、8V〜20Vであり、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が、5秒〜15秒となるべく、前記推進部による前記船体部の移動速度が制御されることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、前記推進部を用いることによって前記船体部が前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、前記水域の全体に対して前記水質改善装置を移動させることができる。また、このような構成によれば、前記船体部に前記超音波照射部が設けられ、前記流動制御板によって前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導することができる。
さらに、この第三態様にかかる水質改善装置によれば、前記超音波の音圧が高い領域(8V〜20V)に対して、前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜15秒となるべく、前記船体部の移動速度が制御されているため、誘導された前記浮遊性藍藻類の沈降処理を効率よく実施することができる。
したがって、このように構成された水質改善装置によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における前記浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置を得ることができる。
【0014】
また、この第三態様にかかる水質改善装置においては、前記超音波の音圧が高い領域が10V〜15Vであり、この超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が3秒〜10秒となるべく、前記船体部の移動速度を制御することが好ましい。さらに、この第三態様にかかる水質改善装置においては、前記超音波の音圧が高い領域が10V(10V以上)であり、この超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が10秒(10秒以上)となるべく、前記船体部の移動速度を制御することがより好ましい。
【0015】
本発明の第四態様は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部を有する船体部と、前記船体部に設けられた推進部と、前記双胴部の間に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部とを備え、前記双胴部が、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく構成されており、前記超音波の音圧が高い領域が、8V〜20Vであり、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が、5秒〜15秒となるべく、前記推進部による前記船体部の移動速度が制御されることを特徴としている。
より具体的には、本発明は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置であって、前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部を有する船体部と、前記船体部に設けられた推進部と、前記双胴部の間に設けられた、前記浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部とを備え、
前記船体部の後方位置に、前記推進部として二つの振動翼部が設けられており、前記双胴部が、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく構成されており、前記水域の水面と前記超音波照射部の照射中心位置との間隔が95mm〜115mmであり、前記水質改善装置が
前記振動翼部を用いて装置進行方向に進むことによって、前記浮遊性藍藻類は前記水質改善装置に向かってくる方向に接近し、接近した前記浮遊性藍藻類は、前記超音波照射部による照射位置に流通され、前記超音波照射部から前記浮遊性藍藻類に対して照射される前記超音波の照射方向が、水平方向であって、且つ前記浮遊性藍藻類の浮遊性藍藻類流通方向と並行しており、前記超音波の音圧が高い領域が、8V〜20Vであり、前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が、5秒〜15秒となるべく、前記推進部による前記船体部の移動速度が制御されることを特徴としている。
【0016】
このように、本発明の第四態様にかかる水質改善装置は、前記双胴部を有する前記船体部、および前記船体部に設けられた前記推進部と前記超音波照射部とを用いて構成されている。また、前記双胴部は、前記浮遊性藍藻類を前記超音波の音圧が高い領域に誘導すべく構成されている。
このような構成によれば、前記推進部を用いることによって前記船体部が前記浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、前記水域の全体に対して前記水質改善装置を移動させることができる。また、このような構成によれば、前記船体部に前記超音波照射部が設けられ、前記双胴部によって前記超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導することができる。
さらに、この第四態様にかかる水質改善装置によれば、前記超音波の音圧が高い領域(8V〜20V)に対して、前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜15秒となるべく、前記船体部の移動速度が制御されると共に、前記双胴部によって前記浮遊性藍藻類の滞留領域が適切に構成される。よって、このような構成によれば、比較的簡単な構成に基づき、適切な領域に誘導された前記浮遊性藍藻類の沈降処理を効率よく実施することができる。
【0017】
この第四態様にかかる水質改善装置においては、前記超音波の音圧が高い領域が10V〜15Vであり、この超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜15秒となるべく、前記船体部の移動速度を制御することが好ましい。加えて、この第四態様にかかる水質改善装置においては、前記超音波の音圧が高い領域が10V(10V以上)であり、この超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類が滞留する時間が10秒(10秒以上)となるべく、前記船体部の移動速度を制御することがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域(前記浮遊性藍藻類の生息する水域)全体における前記浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態にかかる水質改善装置について説明する。本実施形態にかかる水質改善装置は、水面に滞留している浮遊性藍藻類を処理(沈降処理)して水質を改善すべく構成されている。また、この水質改善装置は、浮遊性藍藻類の滞留している場所へ自動で移動し、この滞留している浮遊性藍藻類を適切に沈降処理すべく構成されている。つまり、本実施形態にかかる水質改善装置は、自律型の水質改善装置である。
なお、本実施形態において、「浮遊性藍藻類」とは、Anabaena種、Aphanizomenon種、Microcystis種、Oscillatoria種、およびPlankthothrix種等を含む概念である。
【0021】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態にかかる水質改善装置の概略側面図を示したものである。また、
図2は、本発明の第一実施形態にかかる水質改善装置の概略上面図および概略底面図であり、
図2(a)は
図1の矢視線Ha方向の概略上面図、
図2(b)は
図1の矢視線Hb方向の概略底面図を示したものである。また、
図3は、本発明の第一実施形態にかかる水質改善装置の概略前面図および概略後面図であり、
図3(a)は
図1の矢視線Va方向の概略前面図、
図3(b)は
図1の矢視線Vb方向の概略後面図を示したものである。また、
図4は、本発明の第一実施形態にかかる水質改善装置の主要寸法および水質改善装置や浮遊性藍藻類の動き等を示す概略図であり、
図4(a)は概略側面図、
図4(b)は概略底面図、
図4(c)は概略後面図を示したものである。
以下、これらの
図1〜
図4に基づき、本実施形態にかかる水質改善装置について説明する。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態にかかる水質改善装置1は、双胴部20を有する船体部10(本発明の「本体部」に相当)と、この船体部10に設けられた振動翼部50(本発明の「推進部」に相当)と、この船体部10に設けられた超音波照射部30と、この船体部10に設けられた流動制御板70(本発明の「流動制御部」に相当)等とを用いて構成されている。また、記載は省略しているが、水質改善装置1を構成する船体部10内には、各構成要素を駆動および制御するためのCPU(中央演算処理装置)を有するコンピュータが設けられている。つまり、本実施形態にかかる水質改善装置1は、後述する蓄電池からの電力に基づき、各構成要素がコンピュータを介して、駆動および制御されるべく構成されている。本実施形態において、コンピュータ(図示省略)は、ネットワーク機能やWebサーバとしての機能も有している(あるいは、コンピュータは、ネットワーク機能やWebサーバ機能を有する装置(図示省略)と接続されている)。
【0023】
本実施形態にかかる水質改善装置1を構成する船体部10は、例えば、プラスチック系、金属系、あるいは木材系等の材料を用いて構成される。本実施形態において、船体部10は、繊維強化プラスチック(FRP)を用いて一体的に構成されている。また、この船体部10の底面には、双胴部20(第一双胴部20A,第二双胴部20B)が設けられており、この双胴部20が、船体部10等から成る水質改善装置1を水面に浮かせるための浮力をまかなっている。つまり、この双胴部20は、水質改善装置1の総重量等に対応した体積(内部空間の体積等)を有すべく構成されている。
【0024】
さらに、この双胴部20のそれぞれには、その内部に蓄電池(図示省略)が設けられている。本実施形態にかかる水質改善装置1を駆動および制御等するためのエネルギは、この蓄電池から供給される。双胴部20内に設けられた蓄電池は、後述する太陽光発電シート15と電気的に接続されており、太陽光エネルギを用いて充電される。また、この蓄電池は、必要に応じて、一般のコンセント等からも充電可能に構成されている。特に説明しない限り、本実施形態にかかる電気的エネルギを必要とする各構成要素は、直接的あるいは間接的に(例えば、CPU(中央演算処理装置)等を介して)、この蓄電池に接続されている。
【0025】
また、この船体部10には、その上面部に太陽光発電シート15が設けられている。この太陽光発電シートとしては、例えば、厚さが1mm〜2mm程度、重量が1.5kg〜2.5kg程度、一枚で108W前後(90W〜115W)を発電可能なシートが用いられる。本実施形態においては、このシートを1枚用いて、船体部10の上面部に設けられる太陽光発電シート15が構成されている。この太陽光発電シート15は、前述したように、蓄電池に接続されている。
【0026】
さらに、この船体部10の外周部には、船体部10を保護すべく、防舷部13が設けられている。このような防舷部は、例えば、ゴム系、発泡スチロール系等の材料を用いて構成される。本実施形態にかかる防舷部13は、ゴムを用いて構成されている。この防舷部13は、23mm程度の寸法を有する帯状のD型防舷材を船体部10の外周部を覆うべく設けられている。つまり、本実施形態においては、障害物等に接触する可能性がある船体部10の外周部に防舷部13が設けられている。
【0027】
また、この船体部10には、その前方位置(進行方向位置)に前方手すり部91が設けられ、その後方位置(反進行方向位置)に後方手すり部92が設けられている。それぞれの手すり部91,92は、手すり本体部(前方手すり本体部91a,後方手すり本体部92a)と、手すり支持部(前方手すり支持部91b,後方手すり支持部92b)とを用いて構成されている。それぞれの手すり部91,92は、手すり本体部91a,92aの両端部および中央部を三つの手すり支持部91b,92bを用いて支持固定することによって構成されている。
この手すり部91,92は、本実施形態にかかる水質改善装置1を係留等するために用いられる。
【0028】
さらに、この船体部10には、その前方位置に障害物センサ81が設けられている。
本実施形態にかかる水質改善装置1は、この障害物センサ81と人工知能CPU(コンピュータ)等とを用いることによって、自律航行時に障害物を回避すべく構成されている。具体的には、この障害物センサ81から照射されるレーザにより周囲の障害物が自動的に検知され、この検知された信号に基づきコンピュータ内の障害物回避ロジックが作用して、後述する振動翼部50(本発明の「推進部」に相当)に制御指令が与えられる。この制御指令によって振動翼部50の動きが制御され、本実施形態にかかる水質改善装置1は、周囲の障害物と接触しないルートで自律航行することができる。つまり、本実施形態にかかる水質改善装置1によれば、自動で水面の障害物を回避しながら、水面に滞留している浮遊性藍藻類を沈降処理することによって、水質改善を実現することができる。
【0029】
また、この船体部10には、流動制御板70(本発明の「流動制御部」に相当)が設けられている。より具体的には、船体部10の底面に設けられた一対の双胴部20(第一双胴部20A,第二双胴部20B)の前方位置(進行方向位置)に、それぞれ一つずつの流動制御板70(第一流動制御板70A,第二流動制御板70B)が設けられている。
【0030】
図2(b)等に示すように、これらの流動制御板70A,70Bは、板状の繊維強化プラスチック等を用いて、湾曲形状となるべく形成されている。湾曲形状を有する流動制御板70A,70Bは、それぞれの一方端部が双胴部20A,20Bの内面側に接続されている。流動制御板70A,70Bを双胴部20A,20Bに固着する際、本実施形態においては、流動制御板70A,70Bの他方端部が、双胴部20A,20Bの外面側に広がる形状となるべく(八の字を描くように)、流動制御板70A,70Bの一方端部が双胴部20A,20Bの内面側に固着接続されている。本実施形態にかかる流動制御板70A,70Bは、このように設けられているため、水面に滞留している浮遊性藍藻類は、適切に双胴部20A,20Bの間に誘導されることとなる。
【0031】
本実施形態にかかる水質改善装置1を構成する超音波照射部30は、船体部10の前方位置であり、且つ一対の双胴部20の間に設けられている。
図3および
図4等に示すように、超音波照射部30は、三つの超音波振動子(第一超音波振動子31,第二超音波振動子32,第三超音波振動子33)を用いて構成されており、この超音波照射部30の超音波照射面30a(全ての超音波振動子31〜33の照射面)が、船体部10の前方から後方に向くように構成されている。また、本実施形態においては、一対の双胴部20の間に形成される領域に、超音波照射部30から超音波が照射される。
【0032】
この超音波照射部30は、超音波発生装置(図示省略)と三つの超音波振動子31〜33とを用いて構成されており、それぞれの超音波振動子31〜33に高出力のパルス電力を加えることによって、高出力の超音波を発生させることができる。
【0033】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、船体部10の後方位置に、二つの振動翼部50(第一振動翼部50A,第二振動翼部50B)(本発明の「推進部」に相当)が設けられている。この振動翼部50A,50Bは、翼本体部51(第一翼本体部51A,第二翼本体部51B)と回転軸部52(第一回転軸部52A,第二回転軸部52B)等とを用いて構成されている。本実施形態においては、
図1および
図2等に示すように、各回転軸部52A,52Bにそれぞれ翼本体部51A,51Bが設けられている。各回転軸部52A,52Bは、蓄電池から供給される電力にて駆動するモータやプーリやタイミングベルト等(それぞれ図示省略)を介して、回転駆動すべく構成されている。この回転軸部52A,52Bは、船体部10の内部に設けられたベアリング(図示省略)等を用いて回転可能に支持されている。
【0034】
振動翼部50A,50Bを成す翼本体部51A,51Bは、ポリプロピレン、シリコーン(有機ケイ素化合物)等を用いて、魚類の尾ひれのような形状に構成されている。また、本実施形態にかかる尾ひれ型の翼本体部51A,51Bには、その中央部にスリットが設けられているため、滑らかで静かな動きを実現することができる。各翼本体部51A,51Bは、上述したように、それぞれ回転軸部52A,52Bに取り付けられており、回転軸部52A,52Bの動きに応じて(プーリやタイミングベルト等の設定に応じて)、魚類の尾ひれのような動きを実現することができる。つまり、本実施形態にかかる水質改善装置1は、二つの尾ひれ型の振動翼部50A,50Bを推進機構として有するため、静かで環境にやさしい自律航行可能な装置とすることができる。
【0035】
さらに、本実施形態にかかる水質改善装置1は、推進部が上述した振動翼部50(魚類の尾ひれのような形状を有する振動翼部50)を用いて構成されているため、水質改善装置1が航行する際において、この推進部が、水中の水草に絡まったり、無駄に水中をかき混ぜたりすることがない。したがって、本実施形態によれば、静かで環境に優しい水質改善装置1を得ることができる。
【0036】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、以上のように構成されており、その具体的な構成(適切な寸法等)は、
図4に示す通りである。ここで、
図4は、本実施形態にかかる水質改善装置1の主要寸法および水質改善装置1や浮遊性藍藻類の動き等を示す概略図であり、
図4(a)は概略側面図、
図4(b)は概略底面図、
図4(c)は概略後面図を示したものである。
【0037】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、種々の実験や創意工夫を経て、船体部10、双胴部20、超音波照射部30、および流動制御板70等の位置関係が定められている。以下、
図1〜
図4(主に
図4)を用いて、本実施形態にかかる水質改善装置1の適切な寸法等について説明する。
【0038】
まず、
図4に基づき、本実施形態にかかる水質改善装置1および浮遊性藍藻類の動きについて、簡単に説明する。
【0039】
図4(a)に示すように、本実施形態にかかる水質改善装置1は、振動翼部50を駆動させることによって、装置進行方向R1に航行可能に構成されている。水質改善装置1は、振動翼部50A,50Bの一方あるいはそれぞれを適宜制御することによって、その進行方向を調整することができる。また、この水質改善装置1の航行速度は、後述する浮遊性藍藻類滞留領域に浮遊性藍藻類が5秒〜15秒程度滞留するように、振動翼部50の左右振動回数あるいは左右振動速度等によって制御されている。
【0040】
図4(a)に示すように、本実施形態にかかる水質改善装置1が装置進行方向R1に進むことによって、水面の浮遊性藍藻類は、水質改善装置1に向かってくる方向(浮遊性藍藻類接近方向R2)に接近することとなる。
次いで、
図4(b)に示すように、浮遊性藍藻類接近方向R2に接近した浮遊性藍藻類は、超音波照射部30と流動制御板70との間を、それぞれの流動制御板70A,70Bにて所定方向(浮遊性藍藻類誘導方向R3)に誘導される。この浮遊性藍藻類誘導方向R3に誘導された浮遊性藍藻類は、
図4(b)に示すように、水質改善装置1を成す船体部10の底面部における第一双胴部20Aと第二双胴部20Bとの間を所定方向(浮遊性藍藻類流通方向R4)に流通する。
【0041】
また、本実施形態においては、
図4(b)に示すように、第一双胴部20A(の内面側)と第二双胴部20B(の内面側)との間の距離を双胴部間距離X1と定義し、超音波照射部30の超音波照射面30aから双胴部20の後端部(双胴後端部21)までの距離を滞留領域進行方向距離Y1と定義している。そして、本実施形態においては、船体部10の底面部における「双胴部間距離X1」と「滞留領域進行方向距離Y1」とを掛け合わせた領域(略矩形の領域)を、「浮遊性藍藻類滞留領域」として定義する。
本実施形態にかかる水質改善装置1においては、双胴部間距離X1が500mm〜600mm程度、滞留領域進行方向距離Y1が500mm〜1500mm程度に設定されている。これらの寸法および位置関係は、超音波照射部30にて照射される超音波の音圧と、水質改善装置1の航行速度との関係において、適宜設定される。
【0042】
さらに、本実施形態においては、
図4(c)に示すように、超音波照射部30を成す第一超音波振動子31と第二超音波振動子32との間の距離、および第二超音波振動子32と第三超音波振動子33との間の距離が、超音波振動子間距離X2として定義されている。この超音波振動子間距離X2は、隣接する超音波振動子の中心間距離として定義されている。本実施形態にかかる超音波振動子31〜33としては、その直径が160mm程度のものが用いられている。本実施形態にかかる超音波照射部30は、このような超音波振動子31〜33を用いて構成されており、超音波振動子間距離X2は、110mm〜210mm程度に設定される。
【0043】
図4(a)および
図4(c)に示すように、本実施形態にかかる水質改善装置1は、船体部10が水面S上に位置すべく、双胴部20の体積等が定められている。
加えて、水質改善装置1の総重量に起因する双胴部20の体積(双胴部20による浮力)等は、超音波照射部30の照射位置が水面S下の適切な位置となるように定められている。具体的には、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、水面Sと超音波照射部30の照射中心位置との間の間隔(照射中心距離Z1)が、95mm〜115mm程度となるように、水質改善装置1の総重量と双胴部20による浮力とが定められている。本実施形態においては、照射中心距離Z1が100mm〜110mm程度となるように、双胴部20による浮力等が定められているため、超音波照射部30から照射される超音波によって効果的に浮遊性藍藻類を沈降処理することができる。
【0044】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、上述したように構成されており(
図1〜
図4参照)、その内部にはコンピュータ(図示省略)が搭載されている。このコンピュータには、携帯ネットワークにアクセス可能なネットワーク機能およびWebサーバ機能が実装されている。このような構成であるため、本実施形態にかかる水質改善装置1は、データ通信機能を有するタブレット端末等(図示省略)のWebブラウザを利用することによって、全ての動きについて遠隔操作することができる。
また、本実施形態にかかる水質改善装置1は、GPS(Global Positioning System)、地磁気センサ、ジャイロセンサ等を有すると共に、これらの各機器から得られる位置情報や方向情報を処理する演算装置を有するため、適宜自動航行することが可能となっている。ここで用いられる演算装置は、独立して設けられる場合もあれば、コンピュータがその機能を有する場合もある。
つまり、本実施形態にかかる自律航行型の水質改善装置1は、タブレット端末等を用いて送信された各種の信号を受信することによって、装置自身が自動的に適切な航行状態等を維持すべく構成されている。但し、場合によっては、タブレット端末等をリモコン的に用いて、水質改善装置1を遠隔操作することも可能である。
【0045】
以下、これまでに説明した
図1〜
図4に加え、
図5〜
図9の図面を用いて、本実施形態にかかる水質改善装置1の作動状態等について説明する。なお、本実施形態にかかる水質改善装置1は、閉鎖水域の水上に待機した状態においては、手すり部91,92の少なくとも一方と陸上のブイ(係留ブイ)等とをロープ等にて結びつけることによって、係留されている。
【0046】
ここで、
図5は、本発明の第一実施形態にかかる水質改善装置の操作および作動状態に関するフローチャートを示したものである。また、
図6は、
図5における本体移動に関するサブルーチンを示したものである。さらに、
図7は、
図5における超音波処理に関するサブルーチンを示したものである。
【0047】
本実施形態にかかる水質改善装置1を使用する場合には、まず、
図5に示すように、ダムや湖水等の閉鎖水域内における浮遊性藍藻類の存在する位置(処理位置)の確認が行われる(ステップS501)。つまり、閉鎖水域内の浮遊性藍藻類の存在する位置を確認することによって、水質改善装置1を航行移動させて、浮遊性藍藻類を沈降処理すべき位置の確認が行われる。この処理位置確認(S501)は、実際に目視することによって、あるいはWebカメラや衛星画像等の情報を用いることによって行われる。
【0048】
水質改善装置1を用いて浮遊性藍藻類の沈降処理を行うべき処理位置の確認(S501)が行われた後、本実施形態においては、水質改善装置1の操作を行うための機器であるタブレット端末(図示省略)を用いて、種々の情報に関する入力処理(タブレット操作)が行われる(ステップS502)。ここでは、タブレット端末を用いて、水質改善装置1に対して、処理位置、航行移動速度、処理パターン等、浮遊性藍藻類の沈降処理を行うための種々の情報の入力操作が行われる。
なお、本実施形態においては、水質改善装置1の操作を行うための機器として、タブレット端末を用いる場合について説明するが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、ノートパソコンや一般的なパソコン等を用いてもよい。
【0049】
このタブレット操作(S502)時においては、まず、水質改善装置1の蓄電池残量および航行可能時間(航行可能距離)等がタブレット端末の表示画面に表示され、必要であれば、蓄電池に対して充電操作等が行われる。次いで、タブレット端末に閉鎖水域の地図情報が表示され、立ち入り禁止領域の指示(座標設定、あるいは地図上での領域設定等の指示)、沈降処理領域の指示(座標設定、あるいは地図上での領域設定等の指示)、航行移動ルートの指示(複数の沈降処理領域の指示、およびそれらの領域の移動の順番等の指示)、航行移動速度の指示、沈降処理領域における超音波振動子による超音波照射時間等の種々の指示情報の入力が行われる。上述した種々の指示情報が入力された後、タブレット端末の表示画面上には、指示情報の確認を行うために、指示情報の一覧が表示される。本実施形態においては、操作者がこの指示情報の一覧を確認した後、必要に応じて、指示情報の修正や削除が行われ、修正や削除が終了した後、指示情報の承認作業が行われる。
【0050】
上述したタブレット操作(S502)が完了した後、本実施形態においては、係留ブイ等に係留されている水質改善装置1の係留状態を解除する作業が行われる(ステップS503)。具体的には、手すり部91,92の少なくとも一方と陸上の係留ブイ等とを結び付けているロープ等の締結状態を解除して、本実施形態にかかる水質改善装置1が、閉鎖水域内を自由に航行することができる状態とする。
また、本実施形態においては、この係留解除(S503)を行った後、タブレット端末を介して、水質改善装置1に対して係留解除信号を送信する。つまり、本実施形態においては、人的あるいは自動的に係留解除(S503)を行った後、直ちにその旨の情報をタブレット端末を介して水質改善装置1に送り、その後の浮遊性藍藻類の沈降処理を行うための準備を速やかに行う。なお、自動的に係留解除を行う場合には、必要に応じて、係留解除情報についても自動的に水質改善装置1に送信してもよい。
【0051】
本実施形態にかかる水質改善装置1においては、浮遊性藍藻類の沈降処理を行うべき処理位置の確認(S501)、種々の指示情報の入力に関するタブレットの操作(S502)、および水質改善装置1と係留ブイとの係留状態を解除する処理(S503)を完了した後、再度、タブレット端末の表示画面にて、浮遊性藍藻類の沈降処理を行うための種々の情報(係留解除情報を含む)が入力されているか否かを確認する。本実施形態においては、全ての情報(以下「沈降処理開始可能情報」ともいう。)に問題がなければ、水質改善装置1の航行を開始するための処理開始信号がタブレット端末を介して水質改善装置1に送信される。
【0052】
ここで、本実施形態にかかるタブレット端末は、沈降処理開始可能情報が適切か否かを判断するアルゴリズムを有しており、仮に沈降処理開始可能情報が不適切な場合(例えば、指示情報が不足している場合等)には、上記処理開始信号の送信を行うことはできないように構成されている。したがって、沈降処理開始可能情報が不適切な場合には、再度、操作者が指示情報の一覧を確認し、適宜指示情報の修正等の処理が行われる。これらの修正等の処理が適切に行われた後、沈降処理開始可能情報が適切であると判断されれば、タブレット端末における処理開始信号の送信が可能となる。
【0053】
本実施形態においては、上述した沈降処理開始可能情報が適切であることが確認された後、タブレット端末を介して処理開始信号が水質改善装置1に送信され、水質改善装置1(「本体」ともいう。)の移動が開始される(ステップS504)。この水質改善装置1(本体)の移動については、
図6を用いて後述する。
【0054】
本実施形態においては、上述した本体移動処理(S504)が実行され、予め設定された浮遊性藍藻類の沈降処理を行うべき位置に水質改善装置1が到達した後、タブレット端末を用いて事前に入力された超音波照射時間等の設定値に基づき、超音波照射部30を用いた超音波の照射処理が行われる(ステップS505)。この超音波照射部30を用いた超音波処理(S505)については、
図7を用いて後述する。
【0055】
本実施形態にかかる水質改善装置1を用いた浮遊性藍藻類の沈降処理を行う場合、先にも説明したように、タブレット端末を用いて、一つあるいは複数の処理位置が設定される。したがって、一つの処理位置の浮遊性藍藻類の沈降処理が完了した後には(超音波処理S505が完了した後には)、その処理位置が最終処理位置か否かの判断が行われる(ステップS506)。
【0056】
ステップS506において、その完了した処理位置が最終処理位置であると判断された場合(「YES」の場合)、その判断結果に基づいて、その後、ステップS507以降の処理が行われる。
また、ステップS506において、その完了した処理位置が最終処理位置ではないと判断された場合(「NO」の場合)、その判断結果に基づいて、再度、ステップS504およびステップS505の処理が行われる。このように、ステップS504およびステップS505の処理が再度行われる場合には、ステップS502にて入力された情報に基づき、次の処理位置に対して本体移動(S504)および超音波処理(S505)が行われる。
【0057】
本実施形態においては、ステップS506にて「YES」と判断された場合(その完了した処理位置が最終処理位置であると判断された場合)、次いで、水質改善装置1を初期位置(係留されていた位置、あるいは新たに設定された係留位置)へ移動させるための処理が開始される(ステップS507)。具体的には、予め入力された情報に基づいて、最終処理位置における浮遊性藍藻類の沈降処理が完了した旨の信号(終了信号)が水質改善装置1からタブレット端末に送信され、移動目的位置として初期位置が設定される。
【0058】
水質改善装置1からタブレット端末に対して終了信号が送信されると、水質改善装置1(本体)は、初期位置への移動処理(S507)が開始され、初期位置を移動目的位置とした航行移動が開始される(ステップS508)。この水質改善装置1(本体)の移動(S508)については、先のステップS504と同様であるため、
図6を用いて後述する。
【0059】
本実施形態にかかる水質改善装置1においては、本体移動処理(S508)を経て、水質改善装置1が初期位置への移動を完了させた後、手すり部91,92の少なくとも一方と陸上のブイ(係留ブイ)等とをロープ等にて結びつけることによって、水質改善装置1に対する係留処理が行われる(ステップS509)。この係留処理(S509)は、人的あるいは自動的に行われる。
【0060】
そして、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、係留ブイ等に係留された状態にて、太陽光発電シート15を用いた充電が蓄電池に対して行われる(ステップS510)。なお、この蓄電池に対する充電は(太陽光発電シート15を用いた充電は)、当然のことながら、係留状態のみではなく、必要に応じて、水質改善装置1が航行移動しているときにも行われる。
このように、水質改善装置1が係留ブイ等に係留され(S509)、太陽光発電シート15を用いた充電処理が開始された段階において、本実施形態にかかる水質改善装置1の所定の処理(設定された処理位置に対する浮遊性藍藻類の沈降処理)が終了することとなる。
【0061】
次に、
図6および
図7を用いて、本体移動処理(S504,S508)、および超音波処理(S505)について説明する。
【0062】
図6は、本実施形態にかかる水質改善装置の本体移動に関するフローチャート(
図5の「本体移動」に関するサブルーチン)を示したものである。
【0063】
図5にて説明したように、本実施形態においては、係留解除処理(S503)時に係留解除情報が水質改善装置1に送信された後、本実施形態にかかる水質改善装置1は、処理開始信号の待機状態となる。そして、水質改善装置1は、タブレット端末から送信された処理開始信号を受信することによって、その本体移動(S504)が開始される。また、本実施形態においては、設定された全ての領域(沈降処理領域)の超音波処理が完了した後(S506にて「YES」の場合)、初期位置への移動(S507)を行うために、水質改善装置1の本体移動(S508)が開始される。
つまり、
図6に示すフローチャートは、このステップS504およびステップS508の本体移動に関するものである。
【0064】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、処理開始信号を受信した後、
図6に示した本体移動に関するサブルーチンに基づき、所定速度での移動が開始される(ステップS601)。この際、水質改善装置1の移動速度(所定速度)は、例えば、2cm/s〜15cm/s程度に設定される。この移動速度は、後述する超音波処理(S505,
図7等参照)との関係から(効果的に超音波処理を行うために)、2cm/s〜10cm/s程度に設定されることが好ましい。また、この移動速度は、2cm/s〜5cm/s程度に設定することがより好ましい。
先に説明したように、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、滞留領域進行方向距離Y1を500mm〜1500mmに設定している。したがって、浮遊性藍藻類に対する超音波照射部30による超音波の照射時間を10秒以上確保するためには、上述した移動速度に設定することが好ましい。
【0065】
水質改善装置1が所定速度で移動する際、その目的地(沈降処理領域等)は、先にも説明したように、タブレット操作(S502)にて、事前に入力されている。より具体的には、タブレット操作(S502)にて、航行移動速度の指示と共に、立ち入り禁止領域、沈降処理領域(一つ以上)、および航行移動ルート等に関する指示が、水質改善装置1に対して行われている。
したがって、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、所定速度での移動処理(S601)が開始された後、予め定められた(事前に入力された)航行移動ルートに基づき、沈降処理領域を目指して、水質改善装置1が自律して航行することとなる。
【0066】
上述したように自律した航行移動を行う水質改善装置1は、その航行中は常に障害物センサ81によって障害物の検知を行っている。この障害物センサ81は、例えば、少なくとも水質改善装置の船体部10の幅以上に対してレーザを照射して、そのレーザの反射光に基づいて障害物の有無を検知すべく構成されている。
そして、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、所定速度での移動が開始された(S601)後、所定の間隔あるいは連続的に障害物センサ81による障害物の有無の判断が行われる(ステップS602)。ステップS602において、障害物が無いと判断された場合(「YES」の場合)には、次いで、ステップS603以降の処理が行われる。ステップS602において、障害物が有ると判断された場合(「NO」の場合)には、次いで、ステップS604以降の処理が行われる。
【0067】
ステップS602にて、障害物が無いと判断された場合(「YES」の場合)、本実施形態においては、水質改善装置1の現在位置が予め設定された目的地(沈降処理位置、初期位置等)であるか否かが判断される(ステップS603)。
【0068】
水質改善装置1の現在位置が目的地であると判断された場合(S603にて「YES」の場合)には、この
図6に示したサブルーチンが完了する。そして、ステップS504の本体移動のときには、超音波処理(S505)以降の処理が行われ、ステップS508の本体移動のときには、係留処理(S509)以降の処理が行われる。
水質改善装置1の現在位置が目的地でないと判断された場合(S603にて「NO」の場合)には、再度、ステップS601以降の処理が行われる。
【0069】
ステップS602にて、障害物が有ると判断された場合(「NO」の場合)、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、回避動作が行われる(ステップS604)。そして、この回避動作(S604)が完了した後には、再度、ステップS601以降の処理が行われる。
【0070】
ここで、「回避動作」とは、障害物センサ81にて得られた障害物情報に基づき、振動翼部50を制御して、水質改善装置1が障害物に接触しないように(障害物を回避すべく)、適切なルートを選択して(あるいは、予め定められたルートを変更して)、水質改善装置1を航行させる動作である。なお、本実施形態においては、障害物の存在を確認した後、必要に応じて、水質改善装置1を減速あるいは停止させる構成であることが好ましい。そして、本実施形態においては、減速あるいは停止させた状態から、より安全な状態を維持しつつ、上述した回避動作が行われることが好ましい。
【0071】
上述したように、この
図6にて示したサブルーチン(「本体移動」のサブルーチン)が完了した後、ステップS504の本体移動のときには、超音波処理(S505)以降の処理が行われ、ステップS508の本体移動のときには、係留処理(S509)以降の処理が行われることとなる。
【0072】
次に、
図7を用いて、超音波処理(S505)について説明する。
図7は、本実施形態にかかる水質改善装置の超音波処理に関するフローチャート(
図5の「超音波処理」に関するサブルーチン)を示したものである。
【0073】
先に説明したように、本実施形態においては、本体移動処理(S504)が実行され、予め設定された浮遊性藍藻類の沈降処理を行うべき位置に水質改善装置1が到達した後、事前に入力された超音波照射時間等の設定値に基づき、超音波照射部30を用いた超音波の照射処理が浮遊性藍藻類に対して行われる(ステップS505)。この超音波照射部30を用いた超音波処理(S505)については、以下、
図7等を用いて具体的に説明する。
【0074】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、その現在位置が目的地(処理位置)であると判断された場合(S603にて「YES」の場合)、
図7に示す超音波処理が開始される。具体的には、
図7に示したサブルーチンに基づき、所定速度での移動が開始される(ステップS701)。この際、水質改善装置1の移動速度(所定速度)は、例えば、2cm/s〜15cm/s程度に設定される。また、この移動速度は、効果的に超音波処理を行うために、2cm/s〜10cm/s程度に設定されることが好ましい。また、この移動速度は、2cm/s〜5cm/s程度に設定することがより好ましい。
【0075】
このステップS701における所定速度での移動は、予めタブレット操作(S502)にて入力されたルート(沈降処理を行うルート等)に基づいて行われる。
つまり、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、所定速度での移動処理(S701)が開始された後、予め定められた(事前に入力された)沈降処理ルートに基づき、所定領域内の沈降処理を完了すべく、水質改善装置1が自律して航行することとなる。
【0076】
このように自律した航行移動を行う水質改善装置1は、その航行中は常に障害物センサ81によって障害物の検知を行っている。この障害物センサ81は、例えば、少なくとも水質改善装置の船体部10の幅以上に対してレーザを照射して、そのレーザの反射光に基づいて障害物の有無を検知すべく構成されている。
本実施形態にかかる水質改善装置1においては、所定速度での移動が開始された(S701)後、所定の間隔あるいは連続的に障害物センサ81による障害物の有無の判断が行われる(ステップS702)。ステップS702において、障害物が無いと判断された場合(「YES」の場合)には、次いで、ステップS703以降の処理が行われる。ステップS702において、障害物が有ると判断された場合(「NO」の場合)には、次いで、ステップS704以降の処理が行われる。
【0077】
ステップS702にて、障害物が無いと判断された場合(「YES」の場合)、本実施形態においては、沈降処理領域に対して超音波照射(ステップS703)が行われる。また、ステップS702にて、障害物が有ると判断された場合(「NO」の場合)、本実施形態においては、回避動作(ステップS704)が行われる。そして、この回避動作(S704)が完了した後には、再度、ステップS701以降の処理が行われる。
【0078】
ここで、「回避動作」とは、障害物センサ81にて得られた障害物情報に基づき、振動翼部50を制御して、水質改善装置1が障害物に接触しないように(障害物を回避すべく)、適切なルートを選択して(あるいは、予め定められたルートを変更して)、水質改善装置1を航行させる動作である。本実施形態においては、障害物の存在を確認した後、必要に応じて、水質改善装置1を減速あるいは停止させる構成であることが好ましい。そして、本実施形態においては、減速あるいは停止させた状態から、より安全な状態を維持しつつ、上述した回避動作が行われることが好ましい。
【0079】
ステップS703における「超音波照射」工程とは、本実施形態にかかる超音波照射部30を成す超音波振動子31〜33を用いて、浮遊性藍藻類に対して超音波を照射する工程である。この際、この超音波照射工程(S703)においては、水質改善装置1の底面部を流通する浮遊性藍藻類に対して超音波照射が行われる。この超音波照射(S703)については、水質改善装置1の構造と合わせて後述する。
【0080】
本実施形態においては、超音波照射工程(S703)の際、予め設定された処理範囲についての超音波処理を完了したか否かについての判断が行われる(ステップS705)。
このステップS705にて、予め設定された処理範囲についての超音波処理を完了したと判断された場合(「YES」の場合)には、この
図7に示したサブルーチンが完了する。そして、このステップS705にて、予め設定された処理範囲についての超音波処理を完了していないと判断された場合(「NO」の場合)には、再度、ステップS701以降の処理が行われる。
【0081】
このステップS705において判断されている「処理範囲」は、事前にタブレット操作時(S502)に設定されており、その範囲は、三角形領域、四角形領域、あるいは円形領域等の種々の形状にて設定されている。ここでは、処理範囲の一例として三角形領域が設定された場合について説明する。
【0082】
図8は、本実施形態にかかる水質改善装置1を用いて行われる超音波処理の航行ルートの一例を示した図である。この
図8に示すように、本実施形態においては、処理範囲である三角形領域として、「処理開始座標」「目標座標」および「処理終了座標」の三つの座標が与えられる。
【0083】
本実施形態においては、
図7にて説明したように、障害物が無い場合には、
図8に定められた航行ルートを所定速度で移動しながら、超音波照射工程が行われることとなる。そして、この
図8に示す三角形領域の超音波照射工程が完了した(S705にて「YES」)と判断されれば、その領域に関する超音波処理(S505)が終了することとなる。
【0084】
具体的には、次の通りである。
まず、本実施形態にかかる水質改善装置1は、本体移動工程(S504、
図6参照)を経て、
図8に示す処理開始座標(
図6の「目的地」)に到着し、この処理開始座標から超音波処理(S505、
図7参照)が開始される。
処理開始座標に到着した水質改善装置1は、(1)この処理開始座標から目標座標に向かって、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で進む。次いで、(2)目標座標に到着した水質改善装置1は、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で処理終了座標方向に2m程度進む。次いで、(3)水質改善装置1は、その地点(2m程度進んだ地点)から処理開始座標に向かって、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で進む。次いで、(4)処理開始座標に到着した水質改善装置1は、その場で180度程度反転する。次いで、(5)水質改善装置1は、目標座標から処理終了座標方向に4m程度の位置を到着位置として、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で進む。次いで、(6)(5)の到着位置に到着した水質改善装置1は、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で処理終了座標方向に2m程度進む。つまり、目標座標から処理終了座標方向に6m程度進んだ位置を目指して進む。次いで、(7)水質改善装置1は、その地点(6m程度進んだ地点)から処理開始座標に向かって、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で進む。次いで、(8)処理開始座標に到着した水質改善装置1は、その場で180度程度反転する。次いで、(9)水質改善装置1は、処理終了座標に向かって、超音波照射を行いながら、5cm/s程度の速度で進む。そして、(10)水質改善装置1が処理終了座標に到着すれば、本実施形態においては、
図7のステップS705にて処理範囲が完了した(「YES」)との判断がなされる。つまり、その領域(
図8に示す三角形領域)に関する超音波処理(S505)が完了することとなる。
【0085】
さて、本実施形態においては、
図4等にて説明したように、水質改善装置1が装置進行方向R1に自律航行することによって、浮遊性藍藻類が水質改善装置1に接近し(浮遊性藍藻類接近方向R2に接近し)、接近した浮遊性藍藻類は、流動制御板70A,70Bによって浮遊性藍藻類誘導方向R3に誘導される。そして、このようにして誘導された浮遊性藍藻類が、水質改善装置1を成す船体部10の底面部における第一双胴部20Aと第二双胴部20Bとの間を浮遊性藍藻類流通方向R4に流通し、このように流通する浮遊性藍藻類に対して、超音波振動子31〜33を用いた超音波照射工程(S703)が行われる。
【0086】
本件発明者らは、鋭意研究の結果、浮遊性藍藻類を効果的に沈降処理するための超音波照射条件等を見出した。より具体的には、浮遊性藍藻類の気泡を効果的に破壊するための「超音波の音圧」「超音波照射時間」等について、適切な関係を見出すに至った。加えて、本実施形態にかかる水質改善装置1は、これらの適切な関係をより効果的に実現可能な構造を有している。
【0087】
図1〜
図4を用いて説明したように、本実施形態にかかる水質改善装置1は、船体部10の底面に双胴部20A,20Bを有し、自律航行することによって、この底面および双胴部20A,20Bにて形成される半閉鎖空間(進行方向に対して左右と上面が閉鎖された水中空間)に浮遊性藍藻類を誘導すべく構成されている。このようにして半閉鎖空間に誘導された浮遊性藍藻類に対し、本実施形態にかかる水質改善装置1は、超音波振動子31〜33を駆動させて超音波を照射すべく構成されており(S703)、この際の適切な超音波照射条件について、本件発明者らは想到するに至った。具体的には、本実施形態にかかる水質改善装置1は、超音波の音圧が高い領域(8V〜20V)に、浮遊性藍藻類を所定時間(5秒〜15秒)滞留させるべく構成されている。より好ましくは、本実施形態にかかる水質改善装置1は、超音波の音圧が高い領域(10V以上)に、浮遊性藍藻類を所定時間(10秒以上)滞留させるべく構成されている。
【0088】
上記の「より好ましい構成」を実現すべく、本実施形態にかかる水質改善装置1は
図4等にて説明した構成を有し、より好ましい超音波照射条件を実現すべく、本実施形態にかかる船体部10、双胴部20、および超音波照射部30等は構成されている。
【0089】
具体的には、双胴部20A,20B間に設けられた超音波照射部30を成す超音波振動子31〜33は、それぞれ周波数200kHz、出力3kWのものが用いられている。本実施形態においては、このような仕様の三つの超音波振動子31〜33を横一列に配置し、その中心位置(照射中心距離Z1)が水面S下10cm程度となるように設けている。照射中心距離Z1をこのような値に設定しているのは、水質改善装置1が、水深が浅い領域(250mm程度)へ進入しやすくするためである。照射中心距離Z1をこのような値に設定すれば、水質改善装置1を成す超音波照射部30(超音波振動子31〜33)や船底が水底に接触せず、浮遊性藍藻類の濃度が濃い表層領域についても、効果的に超音波処理(沈降処理)を実施することができる。
また、本実施形態にかかる水質改善装置1においては、半閉鎖空間を成す双胴部20A,20Bの間に、三つの超音波振動子31〜33を横一列に配置して、超音波照射部30が構成されている。つまり、このような構成によれば、超音波が双胴部20A,20Bに反射することとなり、少ないエネルギにて超音波の音圧が高い領域を形成することが可能となる。
【0090】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、
図1〜
図8を用いて説明したように構成され機能するため、以下のような作用効果を有する。以下、本実施形態にかかる水質改善装置1の構成と作用効果について説明する。
【0091】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置1であって、浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部20A,20Bを有する船体部10と、船体部10に設けられた推進部たる振動翼部50と、双胴部20A,20Bの間に設けられた、浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部30と、双胴部20A,20Bに設けられた、超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類を誘導すべく浮遊性藍藻類の流動状態を制御する、一対の流動制御板70A,70Bと、を備えたことを特徴としている。
【0092】
このように、本実施形態にかかる水質改善装置1は、船体部10、および船体部10に設けられた推進部たる振動翼部50と超音波照射部30と流動制御板70A,70Bとを用いて構成されている。このような構成によれば、推進部たる振動翼部50を用いることによって船体部10が浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、水域の全体に対して水質改善装置1を移動させることができる。また、このような構成によれば、船体部10に超音波照射部30が設けられ、流動制御板70A,70Bによって超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類を誘導することができる。
したがって、このように構成された水質改善装置1によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置1を得ることができる。
【0093】
また、本実施形態にかかる水質改善装置1は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置1であって、浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部20A,20Bを有する船体部10と、船体部10に設けられた推進部たる振動翼部50と、双胴部20A,20Bの間に設けられた、浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部30と、双胴部20A,20Bに設けられた、超音波の音圧が高い領域に前記浮遊性藍藻類を誘導すべく浮遊性藍藻類の流動状態を制御する、一対の流動制御板70A,70Bとを備え、超音波の音圧が高い領域が、8V〜20Vであり、超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類が滞留する時間が、5秒〜15秒となるべく、推進部たる振動翼部50による船体部10の移動速度が制御されることを特徴としている。
【0094】
このような構成によれば、振動翼部50を用いることによって船体部10が浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、水域の全体に対して水質改善装置1を移動させることができる。また、このような構成によれば、船体部10に超音波照射部30が設けられ、流動制御板70A,70Bによって超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類を誘導することができる。
さらに、本実施形態にかかる水質改善装置1によれば、超音波の音圧が高い領域(8V〜20V)に対して、浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜15秒となるべく、船体部10の移動速度が制御されているため、誘導された前記浮遊性藍藻類の沈降処理を効率よく実施することができる。
したがって、このように構成された水質改善装置1によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置1を得ることができる。
また、このように構成された水質改善装置1においては、超音波の音圧が高い領域が10V〜15Vであり、この超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜10秒となるべく、船体部10の移動速度を制御することが好ましい。さらに、このように構成された水質改善装置1においては、超音波の音圧が高い領域が10V(10V以上)であり、この超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類が滞留する時間が10秒(10秒以上)となるべく、船体部10の移動速度を制御することがより好ましい。
【0095】
本実施形態にかかる水質改善装置1は、以上のように構成され機能する。したがって、本実施形態によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置1を得ることができる。
【0096】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態にかかる水質改善装置について説明する。
図9は、本発明の第二実施形態にかかる水質改善装置の概略図を示したものであり、
図9(a)は概略側面図、
図9(b)は概略底面図、
図9(c)は概略後面図を示したものである。
【0097】
図9に示すように、本実施形態にかかる水質改善装置101は、双胴部120を有する船体部110(本発明の「本体部」に相当)と、この船体部110に設けられた振動翼部150(本発明の「推進部」に相当)と、この船体部110に設けられた超音波照射部130等とを用いて構成されている。また、第一実施形態と同様に、その記載は省略しているが、水質改善装置101を構成する船体部110内には、各構成要素を駆動および制御するためのCPU(中央演算処理装置)を有するコンピュータが設けられている。つまり、本実施形態にかかる水質改善装置101は、蓄電池からの電力に基づき、各構成要素がコンピュータを介して、駆動および制御されるべく構成されている。本実施形態において、コンピュータ(図示省略)は、ネットワーク機能やWebサーバとしての機能も有している(あるいは、コンピュータは、ネットワーク機能やWebサーバ機能を有する装置(図示省略)と接続されている)。
【0098】
本発明の第二実施形態にかかる水質改善装置101は、
図9に示すように、その基本的な部分については第一実施形態と同様である。したがって、以下においては、その詳細な説明は省略し、主に異なる構成要素について説明する。
【0099】
本実施形態にかかる水質改善装置101と第一実施形態にかかる水質改善装置1との主な違いは、流動制御板70の有無である。第一実施形態にかかる水質改善装置1は、流動制御板70を有しているが、第二実施形態は有していない。
しかしながら、第二実施形態にかかる水質改善装置101においては、双胴部120の先端部(双胴部先端部125)が、浮遊性藍藻類を船体部110の底面に誘導すべく構成されている。つまり、第二実施形態にかかる水質改善装置101は、流動制御板70を有しないが、流動制御板70と同様の機能を有する双胴部120(を成す双胴先端部125)を用いて構成されている。
【0100】
この第二実施形態にかかる水質改善装置101は、以上のように構成されているため、基本的には第一実施形態と同様の作用効果を有する。また、第二実施形態にかかる水質改善装置101は、流動制御板を用いることなく構成しているため、第一実施形態よりもさらに簡単な構成を実現することができる。
【0101】
本実施形態にかかる水質改善装置101は、
図9を用いて説明したように構成され機能するため、以下のような作用効果を有する。以下、本実施形態にかかる水質改善装置101の構成と作用効果について説明する。
【0102】
また、本実施形態にかかる水質改善装置101は、浮遊性藍藻類の繁殖を抑制すべく構成された水質改善装置101であって、浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能な、双胴部120A,120Bを有する船体部110と、船体部110に設けられた推進部たる振動翼部150と、双胴部120A,120Bの間に設けられた、浮遊性藍藻類に超音波を照射する超音波照射部130とを備え、双胴部120(を成す第一双胴部先端部125Aおよび第二双胴部先端部125B)が、超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類を誘導すべく構成されており、超音波の音圧が高い領域が、8V〜20Vであり、超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類が滞留する時間が、5秒〜15秒となるべく、振動翼部150による船体部110の移動速度が制御されることを特徴としている。
【0103】
このように、本実施形態にかかる水質改善装置101は、双胴部120A,120Bを有する船体部110、および船体部110に設けられた振動翼部150と超音波照射部130とを用いて構成されている。また、双胴部120の先端部125A,125Bは、浮遊性藍藻類を超音波の音圧が高い領域に誘導すべく構成されている。
このような構成によれば、振動翼部150を用いることによって船体部110が浮遊性藍藻類の生息する水域を移動可能であるため、水域の全体に対して水質改善装置101を移動させることができる。また、このような構成によれば、船体部110に超音波照射部130が設けられ、双胴部120A,120Bによって超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類を誘導することができる。
さらに、このように構成された水質改善装置101によれば、超音波の音圧が高い領域(8V〜20V)に対して、浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜15秒となるべく、船体部110の移動速度が制御されると共に、双胴部120A,120Bによって浮遊性藍藻類の滞留領域が適切に構成される。よって、このような構成によれば、比較的簡単な構成に基づき、適切な領域に誘導された浮遊性藍藻類の沈降処理を効率よく実施することができる。
【0104】
この水質改善装置101においては、超音波の音圧が高い領域が10V〜15Vであり、この超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類が滞留する時間が5秒〜10秒となるべく、船体部110の移動速度を制御することが好ましい。加えて、この水質改善装置101においては、超音波の音圧が高い領域が10V(10V以上)であり、この超音波の音圧が高い領域に浮遊性藍藻類が滞留する時間が10秒(10秒以上)となるべく、船体部10の移動速度を制御することがより好ましい。
【0105】
本実施形態にかかる水質改善装置101は、以上のように構成され機能する。したがって、本実施形態によれば、比較的低コスト且つ簡単な構成により、ダムや湖沼等の閉鎖水域全体における浮遊性藍藻類の大量発生を抑制することによって、閉鎖水域の水質を改善することが可能な、水質改善装置101を得ることができる。
【0106】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0107】
上記実施形態においては、推進部が振動翼部を用いて構成される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、推進部として水上プロペラや噴流等を用いてもよい。これらの水上プロペラや噴流を用いる場合も、水中のゴミ等が推進部に絡むことはないため、上述した各実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【0108】
また、上記実施形態においては、閉鎖水域内の浮遊性藍藻類の存在する位置等の確認(例えば、処理位置確認S501)を行うために、Webカメラや衛星画像等の情報を用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、水質改善装置1自身に画像認識手段(例えば、小型のCCDカメラ等)を搭載し、この画像認識手段からの情報に基づき、自動的に超音波処理を行う位置の特定や変更、あるいは処理完了の判断等を行うべく構成してもよい。さらに、例えば、このような画像認識手段からの情報をタブレット端末等に表示可能として、この情報に基づき(目視確認して)、処理範囲の最終確認や変更、あるいは予め設定された処理範囲の超音波処理の完了具合を判断してもよい。当然のことながら、これらの種々の判断は、予め設定された自動的な判断と、目視による人的な判断とを適宜併用してもよい。したがって、例えば、先に説明したステップS705における判断と、目視における判断とを併用すべく構成してもよい。