(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0013】
以下、本開示の実施の態様を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
【0014】
以下、本開示の1実施態様における導電性部材および積層体について説明する。
【0015】
A.導電性部材
本開示の1実施態様の導電性部材は、樹脂材料中に金属粒子が分散された金属含有層と、上記金属含有層の一方の面上の粘着層と、を有し、上記粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である部材である。
【0016】
本開示の1実施態様の導電性部材について図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の1実施態様における導電性部材の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本開示の導電性部材10は、樹脂材料中に金属粒子が分散された金属含有層1と、金属含有層の一方の面上の粘着層2とを有する。また、本開示の1実施態様においては、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である。
【0017】
本開示の1実施態様の導電性部材によれば、金属含有層の一方の面上に粘着層を有する構成であっても、マイグレーションの発生を抑制できる導電性部材とすることができる。
このような効果が得られる具体的な理由としては、以下のことが考えられる。
【0018】
従来、導電性部材においては、マイグレーションの発生が課題の一つとなっている。マイグレーションは、主に、導電性部材に電圧が印加されることにより、金属含有層に含まれる金属粒子が金属イオンとなって移動し、例えば絶縁領域において金属が析出するという現象である。したがって、導電性部材をタッチパネルのセンサ電極等に用いた際、マイグレーションの発生により、短絡等の不具合が生じてしまうという課題がある。そこで、本発明者等は、マイグレーションの発生について検討を重ねたところ、金属含有層の表面に粘着層が配置された構成を有する導電性部材の場合に、特にマイグレーションの発生が顕著となるという課題を新たに発見した。
【0019】
本発明者等は、金属含有層の表面に粘着層が配置された構成を有する導電性部材を用いた場合に、マイグレーションの発生が顕著となる理由について検討を重ねた。その結果、粘着層に含まれるアンモニアおよびアミン類が影響しているという新たな知見を得た。具体的には、次の通りである。まず、アンモニアおよびアミン類は、孤立電子対を有することにより、下記式に示すような銀酸化物や、その他のハロゲン化銀等と反応して錯体を形成すると考えられる。上記錯体は、イオン化して電荷を帯びるため、電圧が印加されて勾配が生じることで移動しやすくなると考えられる。このような理由から、金属含有層の表面に粘着層が配置された構成を有する場合には、粘着層に含まれたアンモニアおよびアミン類によって、金属イオンが移動しやすくなり、マイグレーションの発生が顕著になると考えられる。
【0021】
したがって、本開示の1実施態様によれば金属含有層の一方の面上に粘着層を有する構成であっても、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量を所定の範囲内とすることにより、上述した反応を抑制し、マイグレーションの発生を抑制することができると考えられる。なお、ここでは、具体例として金属含有層に含まれる金属粒子が銀粒子である場合について説明したが、銅粒子等のその他の金属粒子においても同様とすることができる。
【0022】
以下、本開示の1実施態様における導電性部材の各構成について説明する。
【0023】
1.粘着層
本開示の1実施態様における粘着層は、金属含有層の一方の面上に配置される部材である。また、本開示の1実施態様においては、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である。
【0024】
本開示の1実施態様においては、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下であれば良く、中でも7ng/g以下であることが好ましく、特に1ng/g以下であることが好ましい。粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が上記範囲内であることにより、粘着層に含まれるアンモニアまたはアミン類が、金属含有層に含まれる金属粒子と反応して金属イオンとなることを抑制することができる。したがって、導電性部材に電圧が印加された際に、当該金属イオンが移動し、例えば導電性を有しない絶縁領域において金属が析出する等の不具合の発生を抑制することができる。
【0025】
なお、ここでいう「アミン類」とは、1級アミン、2級アミン、3級アミン等を指し、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0026】
粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量は、次のような方法により測定することができる。例えば、粘着層をポリプロピレンの袋に入れ、さらに60mlの超純水を入れて、当該袋内にて粘着層を超純水に浸す。次に当該袋をヒートシーラーにて封止し、それを100℃のウォーターバス浴中に入れ、1時間静置する。これにより、超純水に粘着層に含まれる成分が溶出される。最後に、得られた溶出液のイオン濃度を、イオンクロマトグラフ ICS−3000を用いて測定することにより、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量を測ることができる。
なお、粘着層として液状の粘着層形成用組成物を用いる場合には、基材上に液状の粘着層形成用組成物を塗布して乾燥させたものを用いて、上述した方法と同様にしてアンモニアおよびアミン類の総量を測定することができる。
【0027】
本開示の1実施態様における粘着層は、シート状のものを用いても良く、あるいは液状の粘着層形成用組成物を塗布して乾燥させたものとしても良い。粘着層がシート状である場合には、金属含有層の一方の面上に、シート状の粘着層を貼合することで配置することができる。また、粘着層が液状である場合には、金属含有層の一方の面上に、粘着層を構成する液状の材料を塗布して乾燥させることで配置することができる。
【0028】
粘着層を構成する粘着層形成用組成物は、導電性部材に用いることができ、かつアンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下であれば特に限定されない。このような粘着層を構成する粘着層形成用組成物には、例えば、アクリル系粘着組成物、ウレタン系粘着組成物、シリコーン系粘着組成物等を用いることができる。中でも、アクリル系粘着組成物を用いることが好ましい。アクリル系粘着組成物を用いた場合には、ウレタン系粘着組成物に比べて優れた接着力、耐熱性および耐候性を得ることができる。また、シリコーン系粘着組成物に比べて優れた接着力を得ることができ、またコスト面でも優れている。
【0029】
粘着層の材料としてアクリル系粘着組成物を用いる場合、粘着層形成用組成物は、主剤樹脂と硬化剤とを含有する熱硬化型粘着組成物であっても良いし、主剤樹脂と電離放射線重合性モノマーまたはオリゴマーとを含有する電子線硬化型粘着組成物であっても良い。ここで、「電離放射線」とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線又は電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0030】
アクリル系粘着組成物に用いられる主剤樹脂としては、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
アクリル系粘着組成物に用いられる硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤が広く用いられる。イソシアネート系硬化剤として、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。エポキシ系硬化剤として、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂;エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン及び1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0032】
アクリル系粘着組成物に用いられる電離放射線重合性モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、光ラジカル重合性、光カチオン重合性、光アニオン重合性等のオリゴマーが挙げられる。これらの中でも、光ラジカル重合性のモノマー又はオリゴマーが好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができるからである。
【0033】
アクリル系粘着組成物に電離放射線重合性モノマーまたはオリゴマーが用いられる場合、電離放射線重合性モノマーまたはオリゴマーの感応性を高め、電離放射線による重合硬化時間や電離放射線の照射量を低減することを目的として、重合開始剤を添加することが好ましい。
【0034】
本開示の1実施態様における粘着層は、上述した材料の他にも、必要に応じて、可塑剤、金属キレート剤、シランカップリング剤、分散剤、消泡剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等を添加することができる。これらは、公知のものを特に制限なく使用することができ、粘着層に求められる性能に応じて、適宜選択することができる。
【0035】
粘着層の厚みは、本開示の1実施態様における導電性部材の用途等に応じて適宜調整することができる。粘着層の厚みとしては、例えば、25μm以上であることが好ましく、中でも50μm以上であることが好ましく、特に100μm以上であることが好ましい。また、粘着層の厚みとしては、例えば、500μm以下であることが好ましく、中でも300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましい。粘着層の厚みが上記範囲内であることにより、所定の粘着性を得ることができ、また、導電性部材にフレキシブル性を付与することが可能となる。
【0036】
本開示の1実施態様における粘着層の形成方法としては、例えば、粘着層がシート状である場合には、金属含有層の一方の面上にシート状の粘着層を貼合する方法が挙げられる。一方、液状の粘着層形成用組成物を用いる場合には、金属含有層の一方の面上に液状の粘着層形成用組成物を塗布して乾燥させる方法が挙げられる。このとき用いられる塗布法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ビードコート法等の公知の方法が挙げられる。
【0037】
2.金属含有層
本開示の1実施態様における金属含有層は、樹脂材料中に金属粒子が分散された部材である。
【0038】
ここで、「樹脂材料」とは、特に言及しない限り、モノマー、オリゴマー、ポリマー等も包含する概念である。
【0039】
また、「粒子」とは、例えば、平均一次粒子径が、0.1nm以上100μm以下であり、繊維状、球状および鱗片状等の形状を有するものをいう。
なお、平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、「粒子」が繊維状である場合、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(例えば、日立ハイテク製 H−7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の短軸の長さ、すなわち繊維径の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。また、「粒子」が球状や鱗片状等のその他の形状である場合、TEMにて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の一次粒子の最長部の長さの平均値を平均一次粒径とすることができる。
【0040】
本開示の1実施態様における金属含有層は、例えば、
図1に示すように、金属含有層1の全体に金属粒子が均一に分散され、金属含有層1の全域が所定の導電性を有する導電部1aであっても良く、あるいは、
図2(a)、(b)に示すように、金属含有層に金属粒子が不均一に分散されていても良い。具体的には、
図2(a)に示すように、金属含有層1の粘着層2側の表層に金属粒子が集中し、金属含有層1の粘着層2側の表層が所定の導電性を有する導電部1aであり、金属含有層1の粘着層2とは反対側の表層が非導電部1bであっても良い。また、
図2(b)に示すように、金属含有層1の粘着層2とは反対側の表層に金属粒子が集中し、金属含有層1の粘着層2とは反対側の表層が所定の導電性を有する導電部1aであり、金属含有層1の粘着層2側の表層が非導電部1bであっても良い。
【0041】
ここで、「表層」とは、金属含有層の表面付近の領域を指す。また、「導電部」とは、金属粒子により導電性を有する領域を指し、「非導電部」とは、金属含有層において、導電部以外の領域をいう。なお、「導電性を有する」とは、例えば表面抵抗値が1×10
6Ω/□以下であることをいう。
【0042】
本開示の1実施態様における金属含有層の厚みは、導電性部材の用途や金属含有層に含まれる金属粒子の大きさ等に応じて適宜調整することができるため、ここでの記載は省略する。
【0043】
以下、本開示の1実施態様における金属含有層について、導電部および非導電部に分けて説明する。
【0044】
(1)導電部
本開示の1実施態様における金属含有層は、例えば
図1に示すように、金属含有層1の全域が導電部1aであっても良く、あるいは
図2(a)、(b)に示すように、金属含有層1のいずれか一方の表層が導電部1aであっても良い。
【0045】
本開示における1実施態様においては、金属含有層における導電部が、金属粒子を所定の量以上有することにより、所望の導電性を有する導電性部材を得ることができる。導電部が有する導電性は、本開示の1実施態様における導電性部材の用途等に応じて適宜調整することができるが、例えば、導電部の表面抵抗値が、1000Ω/□以下であることが好ましく、中でも500Ω/□以下であることが好ましく、特に100Ω/□以下であることが好ましい。金属含有層における導電部の表面抵抗値が上記範囲内であることにより、所望の導電性を有する導電性部材とすることができる。また、本開示の1実施態様においては、導電部の表面抵抗値を、1×10
6Ω/□以上とすることができる。
【0046】
なお、導電部の表面抵抗値は、例えば、Loresta−AX MCP−T370(Mitsubishi Chemical Analytec)を導電部の表面に接触させることにより測定することができる。
【0047】
本開示の1実施態様における金属含有層は、樹脂材料中に金属粒子が分散されている。換言すると、樹脂材料中に、金属粒子が埋め込まれた構成を成す。本開示の1実施態様における金属含有層中に含まれる金属粒子の含有量は、例えば、金属含有層が所望の導電性を達成することができる程度であることが好ましい。具体的には、樹脂材料100重量部に対して、金属粒子が20重量部以上であることが好ましく、中でも50重量部以上であることが好ましい。また、樹脂材料100重量部に対して、金属粒子が3000重量部以下であることが好ましく、中でも1000重量部以下であることが好ましい樹脂材料中に含まれる金属粒子の含有量が、上記範囲内であることにより、充分な導電性を有する導電性部材とすることができる。
【0048】
本開示の1実施態様における導電部は、例えば、金属粒子の元素の割合が、原子組成百分率で、0.05at%以上であることが好ましく、中でも0.10at%以上であることが好ましく、特に0.15at%以上であることが好ましい。また、金属粒子の元素の割合が、原子組成百分率で、10at%以下であることが好ましく、中でも7at%以下であることが好ましく、特に5at%以下であることが好ましい。導電部における金属粒子の元素の割合が上記範囲内であることにより、導電部に所定の導電性を付与することができる。
なお、導電部に存在する金属粒子の元素の割合は、例えば、X線光電子分光分析法を用い、以下の条件により測定することができる。
・加速電圧:15kV
・エミッション電流:10mA
・X線源:A1デュアルアノード
・測定面積:300×700μmφ
・表面からの深さ10nmを測定
・n=3回の平均値
【0049】
本開示の1実施態様における導電部の厚みは、導電性基材の用途や導電部に含まれる金属粒子の大きさ等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。例えば、導電部に含まれる金属粒子が繊維状である場合には、導電部の厚みは当該繊維径未満であることが好ましい。なお、金属粒子の繊維径については後述するため、ここでの説明は省略する。
【0050】
(a)金属粒子
本開示の1実施態様における金属粒子は、導電部に含まれる材料であり、樹脂材料中に分散される材料である。
【0051】
本開示の1実施態様における金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウムまたは白金等からなる粒子が挙げられる。本開示の1実施態様においては、中でも銀粒子または銅粒子であることが好ましく、特に銀粒子であることが好ましい。本開示の1実施態様における導電性部材を用いることにより、マイグレーションの発生を抑制することができるという効果が顕著になるからである。導電部に含まれる金属粒子は、1種を有していても良く、2種以上を有していても良い。
【0052】
ここで、「銀」とは、銀または銀合金を指し、「銅」とは、銅または銅合金を指す。
また、「銀合金」とは、銀を主成分とし、導電性部材に用いた際にマイグレーションが生じる程度に銀を含有する合金をいい、具体的には銀の元素の割合が、原子組成百分率で90at%以上であることをいう。
さらに、「銅合金」とは、銅を主成分とし、導電性部材に用いた際にマイグレーションが生じる程度に銅を含有する合金をいい、具体的には銅の元素の割合が、原子組成百分率で90at%以上であることをいう。
なお、銀合金または銅合金における銀または銅の元素の割合は、例えば、X線光電子分光分析法を用いた元素の定量を行うことにより測定することができる。
【0053】
本開示の1実施態様における金属粒子の形状は、樹脂材料中に分散することができ、導電性を有する導電部を構成することができるような形状であることが好ましい。例えば、繊維状、球状および鱗片状等の形状が挙げられる。本開示の1実施態様においては、中でも繊維状の金属粒子を用いることが好ましい。
【0054】
ここで、「繊維状」とは、例えば、短軸の長さに対する長軸の長さの比、すなわちアスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)が10より大きくなるような形状をいう。
また、「繊維状を有する金属粒子」は、直線状であっても曲線状であっても良く、その一部に直線部または曲線部を有していても良い。さらに、「繊維状を有する金属粒子」は、例えば、繊維状を有する金属粒子が、複数連結したものも包含する。
【0055】
本開示の1実施態様において、金属粒子が繊維状である場合、例えば、短軸の長さとなる繊維径が200nm以下であり、長軸の長さとなる繊維長が1μm以上であることが好ましい。繊維径が上記範囲内であることにより、導電性部材のヘイズ値の上昇や、光透過性の低下を抑制することが可能である。
【0056】
また、金属粒子が繊維状である場合、例えば、繊維径は、10nm以上であることが好ましく、この場合、充分な導電性を有する導電部を形成することが可能となる。さらに、繊維長が上記範囲内であることにより、充分な導電性を有する導電部を形成することが可能である。
【0057】
さらに、金属粒子が繊維状である場合、例えば、繊維長は、500μm以下であることが好ましく、この場合、凝集が発生することによるヘイズ値の上昇や、光透過性の低下を抑制することが可能である。
【0058】
金属粒子が繊維状である場合の上述した事項を考慮すると、本開示の1実施態様においては、金属粒子の繊維径が15nm以上であることが好ましく、180nm以下であることが好ましい。
また、金属粒子の繊維長が3μm以上であることが好ましく、中でも10μm以上であることが好ましい。また、金属粒子の繊維長が300μm以下であることが好ましく、中でも30μm以下であることが好ましい。
【0059】
なお、金属粒子の繊維径および繊維長は、例えば、SEMと称する走査型電子顕微鏡、TEMと称する透過型電子顕微鏡およびSTEMと称する走査透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡を用い、1000〜50万倍にて繊維状の金属粒子の繊維径および繊維長を測定した10か所の平均値として求めることができる。
【0060】
本開示の1実施態様における金属粒子が銀粒子または銅粒子であり、かつ繊維状である場合、銀粒子および銅粒子は、いわゆる銀ナノワイヤおよび銅ナノワイヤのような金属繊維であっても良く、あるいは、アクリル繊維に、銀または銅をコーティングした金属被覆合成繊維であっても良い。なお、本開示の1実施態様においては、金属繊維または金属被覆合成繊維の1種を用いても良く、金属繊維および金属被覆合成繊維を組み合わせて用いても良い。
【0061】
本開示の1実施態様における金属粒子が金属繊維である場合、金属粒子の形成方法としては、例えば、銀や銅等の金属を長く伸ばす伸線法、または切削法等が挙げられる。また、金属粒子が金属被覆合成繊維である場合、金属粒子の形成方法としては、例えば、アクリル繊維に銀や銅等の金属をコーティングする方法が挙げられる。
【0062】
(b)樹脂材料
本開示の1実施態様における樹脂材料は、導電部に含まれる材料であり、上述した金属粒子が分散される材料である。
【0063】
本開示の1実施態様における樹脂材料は、上述した金属粒子を分散させることができる樹脂材料であることが好ましく、例えば、透明性を有する材料であることが好ましい。ここで、「透明」とは、特段の断りがない限り、例えば、本開示の1実施態様における導電性部材をタッチパネル表示装置等に用いた際に、操作者からの視認を妨げない程度に透明であることをいう。したがって、「透明」は、無色透明、および視認性を妨げない程度の有色透明を含み、また厳密な透過率で定義されず、本開示の1実施態様における導電性部材の用途等に応じて透明性の度合いを決定することができる。
【0064】
このような本開示の1実施態様における樹脂材料は、例えば、電離放射線により硬化する電離放射線硬化型樹脂であることが好ましい。ここで、「電離放射線」とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線又は電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0065】
電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系等の官能基を有する化合物等の1または2以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能化合物等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)及びペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)が好適に用いられる。なお、上述した「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、本開示の1実施態様においては、電離放射線硬化型樹脂として、上述した化合物をPO、EO等で変性したものも使用できる。
【0066】
本開示の1実施態様においては、上述した化合物の他にも、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0067】
また、電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。ここで、「溶剤乾燥型樹脂」とは、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂をいう。溶剤乾燥型樹脂を併用することにより、樹脂材料を用いて導電部を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥等の発生を有効に抑制することができる。
【0068】
このような溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴムまたはエラストマー等が挙げられる。
【0069】
また、熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒等の有機溶媒に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0070】
さらに、樹脂材料は、熱硬化性樹脂を含有していても良い。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0071】
(2)非導電部
本開示の1実施態様における金属含有層は、例えば
図2(a)、(b)に示すように、金属含有層1のいずれか一方の表層が導電部1aであり、その他の領域が非導電部1bであっても良い。
【0072】
本開示の1実施態様においては、非導電部は、樹脂材料により構成され、非導電性を有する領域である。
【0073】
ここで、「非導電性を有する」とは、導電性を有しないことをいう。
【0074】
本開示の1実施態様における非導電部に含まれる樹脂材料は、上述した導電部に用いられる樹脂材料と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0075】
また、本開示の1実施態様における非導電部は、樹脂材料の他にも、必要に応じてその他の材料を有していても良い。その他の材料としては、例えば、マイグレーションを抑制するためのマイグレーション抑制剤が挙げられる。非導電部がマイグレーション抑制剤を有することにより、本開示の1実施態様の導電性基材のマイグレーション耐性を効果的に向上させることができる。なお、マイグレーション抑制剤については、例えば、特開2014−32792号公報に記載されたものと同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
【0076】
本発明における非導電部の厚みは、本発明の導電性基材の用途等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。例えば、50nm〜3000nmの範囲内とすることができる。
【0077】
3.剥離基材
本開示の1実施態様においては、例えば、
図3に示すように、粘着層2の金属含有層1とは反対側の面上に剥離基材3を有していても良い。剥離基材は、金属含有層を、粘着層を介して所望の部材に貼合する際には剥離される部材である。したがって、剥離基材を有する場合には、金属含有層を、粘着層を介して所定の部材に貼合するまでの間に、粘着層の表面が汚染されるといった不具合や、粘着層の表面に傷が入る等の不具合を抑制することができ、品質の高い導電性部材とすることができる。
【0078】
剥離基材の材料は、粘着層の表面上に配置することができ、かつ粘着層から剥離することが可能な材料であることが好ましい。本開示の1実施態様における剥離基材は、透明性を有していても良く、あるいは透明性を有さなくても良いが、中でも透明性を有することが好ましい。このような剥離基材としては、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等から構成された層が挙げられる。
【0079】
剥離基材の厚みは、粘着層の表面上に配置し、その後、粘着層の表面から剥離することができる程度の厚みであることが好ましい。例えば、15μm以上であることが好ましく、中でも25μm以上であることが好ましい。また、剥離基材の厚みは、100μm以下であることが好ましく、中でも50μm以下であることが好ましい。剥離基材の厚みが上記範囲内であることにより、粘着層の表面に配置した剥離基材を、容易に剥離することが可能となる。
【0080】
本開示の1実施態様における剥離基材は、粘着層に対して所定の剥離力を有することが好ましい。具体的な剥離力としては、例えば、10mN/25mm以上であることが好ましく、中でも25mN/25mm以上であることが好ましい。また、剥離基材の、粘着層に対する剥離力は、1000mN/25mm以下であることが好ましく、中でも500mN/25mm以下であることが好ましい。粘着層に対する剥離基材の剥離力が上記範囲内であることにより、粘着層の表面に配置された剥離基材を、容易に剥離することが可能となる。
【0081】
本開示の1実施態様においては、剥離基材の剥離性を高めるために、剥離基材の粘着層側の表面に離型処理を行っても良い。離型処理には、一般的に公知の処理を用いることができる。
【0082】
4.基材
本開示の1実施態様における基材は、例えば
図3に示すように、金属含有層の金属含有層1側の面上に配置され、金属含有層を支持する部材である。
【0083】
本開示の1実施態様における基材は、透明性を有していても良く、あるいは透明性を有さなくても良いが、中でも透明性を有することが好ましい。ここで、「透明」とは、特段の断りがない限り、例えば、本発明の導電性部材をタッチパネル表示装置等に用いた際に、操作者からの視認を妨げない程度に透明であることをいう。したがって、「透明」は、無色透明、および視認性を妨げない程度の有色透明を含み、また厳密な透過率で定義されず、本開示の1実施態様における導電性部材の用途等に応じて透明性の度合いを決定することができる。
【0084】
基材を構成する材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0085】
また、本発明における基材は、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムであっても良い。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体等が用いられる基材で、例えば、日本ゼオン社製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト社製のスミライトFS−1700、JSR社製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学社製のアペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成社製のオプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ社製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)を用いることもできる。
【0086】
基材の厚みは、本開示の1実施態様における導電性部材の用途等に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、1μm以上であることが好ましく、中でも20μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましい。また、基材の厚みは、100μm以下であることが好ましく、中でも80μm以下であることが好ましく、特に60μm以下であることが好ましい。基材の厚みが上記範囲内であることにより、基材に機械的強度を付与することができるとともに、所望のフレキシブル性を実現することが可能となる。
【0087】
5.その他の構成
本開示の1実施態様における導電性部材は、上述した構成の他にも、必要に応じてその他の構成を有していても良い。なお、その他の構成については、導電性部材の用途等に応じて適宜選択することができるため、ここでの記載は省略する。
【0088】
6.用途
本開示の1実施態様における導電性部材は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等のディスプレイや、タッチパネル、太陽電池等の透明電極として用いることができる。
【0089】
B.積層体
本開示の1実施態様における積層体は、樹脂材料中に金属粒子が分散された金属含有層、および金属含有層の一方の面上の粘着層を有する導電性部材と、導電性部材の粘着層側の面上の機能層と、を有し、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である部材である。
【0090】
本開示の1実施態様の積層体について図面を参照しながら説明する。
図4は、本開示の1実施態様における積層体の一例を示す概略断面図である。
図4に示すように、本開示の積層体20は、導電性部材10と機能層6とを有する。また、導電性部材10は、樹脂材料中に金属粒子が分散された金属含有層1と、金属含有層の一方の面上の粘着層2とを有し、また、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である。
【0091】
本開示の1実施態様の積層体によれば、導電性部材が金属含有層の一方の面上に粘着層を有する構成であっても、マイグレーションの発生を抑制できる積層体とすることができる。なお、具体的な効果については、上述した「A.導電性部材」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
【0092】
以下、本開示の1実施態様における積層体の各構成について説明する。
【0093】
1.導電性部材
本開示の1実施態様における導電性部材は、樹脂材料中に金属粒子が分散された金属含有層、および金属含有層の一方の面上の粘着層を有する部材である。また、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である部材である。
【0094】
なお、導電性部材を構成する粘着層、金属含有層およびその他の構成については、上述した「A.導電性部材」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
【0095】
2.機能層
本開示の1実施態様における機能層は、導電性部材の粘着層側の面上に配置される部材である。
【0096】
本開示の1実施態様における機能層は、通常、タッチパネル表示装置を構成する機能部材であり、必要に応じて適宜選択することができる。機能層としては、例えば、カラーフィルタ、タッチパネル、加飾部材、保護層、液晶層等が挙げられる。また、カラーフィルタ、タッチパネルおよび加飾部材のような機能層は、透明基材を有していても良く、透明基材を有していなくても良い。さらに、本開示の1実施態様においては、上述した機能層を単層として用いても良く、2層以上を組み合わせて用いても良い。
【0097】
なお、本開示の1実施態様において用いられる機能層としては、一般的な機能部材が挙げられるため、ここでの記載は省略する。
【実施例】
【0098】
(金属含有層形成工程)
基材(材料:PET、厚み:50μm)上に、銀ナノワイヤ(短軸の長さ:35±15nm、長軸の長さ:15μm、Blueano社(製) SLV−NW−35)を約0.01wt%、テトラキスエポキシシロキサンを0.01wt%、(n−ピロリドンプロピル)メチルシロキサンージメチルシロキサンコポリマーを0.2wt%、イソプロピルアルコールを39.78%、1−ブタノールを30%、シクロヘキサンを30%含有した金属粒子組成物を、ダイコート法を用いて塗布し、wetな塗膜(厚み:10μm)を形成した。その後、基材上に形成された塗膜を、70℃で1分間オーブン加熱し、導電部を形成した。
【0099】
次に、得られた導電部上に、紫外線硬化型材料であるBS−1200W(荒川化学工業(株)製)を20%、シクロヘキサノンを15%、メチルエチルケトンを65%含有した樹脂組成物を、ダイコート法を用いて塗布し、wetな塗膜(厚み:1μm)を形成した。その後、70℃で1分間オーブン加熱して、非導電部を形成した。
【0100】
(粘着層配置工程)
得られた金属含有層の一方の面上に、市販の粘着層(厚み:50μmまたは100μm)を配置した。各粘着層に含まれるアンモニアおよびアミン類の量については下記表1に示す。
なお、粘着層に含まれるアンモニアおよびアミン類の量については、次のような方法により測定した。すなわち、粘着層をポリプロピレンの袋に入れ、さらに60mlの超純水を入れて、当該袋内にて粘着層を超純水に浸した。次に当該袋をヒートシーラーにて封止し、それを100℃のウォーターバス浴中に入れ、1時間静置する。これにより、超純水に粘着層に含まれる成分を溶出させた。最後に、得られた溶出液のイオン濃度を、イオンクロマトグラフ ICS−3000を用いて測定することにより、粘着層に含まれる、アンモニアおよびアミン類の量を測った。
ここでは、アミン類として、モノメチルアミン(MMA)、ジメチルアミン(DMA)、トリエチルアミン(TMA)の量を測定した。
【0101】
【表1】
【0102】
[評価]
(抵抗上昇率)
得られた導電性部材の抵抗上昇率について評価した。抵抗上昇率の評価方法について、図を参照しながら説明する。
【0103】
図5(a)〜(d)は、抵抗上昇率の評価方法を説明するための説明図である。
図5(a)に示すように、導電性部材10を準備し、次に、導電性部材10の表面の中央部をポリエチレンテレフタレートフィルムによりマスキングし、この状態でAPC(フルヤ金属(株))をスパッタ成膜(装置:E400、キヤノンアネルバ(株)製)して
図5(b)に示すように、導電性部材10の表面に、パターン状の金属層5を形成する。その後、
図5(c)に示すように、導電性部材10をレーザー(λ=1064nm)によりパターニングし、配線5a、5bを作製した。配線5a、5bの長さTは40mm、配線幅wは3mm、配線間のギャップGは30μmであった。
【0104】
抵抗上昇率の評価は、
図5(d)に示すように、一方の配線5bに6Vの電圧を印加し、その状態でで、60℃、95%Rhの環境下にて最長100時間保管し、配線5bの両端のパターン状の金属層に抵抗測定計の端子を接触させ、抵抗値を電圧印加前後で測定し評価した。
【0105】
(配線変質幅)
配線変質幅の評価は、
図5(d)に示すように、一方の配線5bに6Vの電圧を印加し、その状態で、60℃、95%Rhの環境下にて最長100時間保管し、配線5bの配線変質幅、すなわち、配線5bの配線幅の減少量について評価した。
【0106】
【表2】
【0107】
表2の結果から、粘着層に含まれるアンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以下である実施例1、2では、粘着層に含まれるアンモニアおよびアミン類の総量が10ng/g以上の比較例1、2に比べて、抵抗上昇率の増加を抑制できることが分かった。また、実施例1、2では、比較例1、2に比べて配線変質幅も小さく、マイグレーションの発生を抑制できることが分かった。