特許第6982957号(P6982957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982957
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ゲムシタビンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20211206BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C07H19/10CSP
   A61K9/08
   A61K31/7068
   A61K47/10
   A61K47/20
   A61K47/22
   A61K47/40
   A61P1/04
   A61P1/16
   A61P1/18
   A61P7/00
   A61P11/00
   A61P13/08
   A61P13/10
   A61P13/12
   A61P15/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 105
   A61P43/00 123
【請求項の数】12
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-573536(P2016-573536)
(86)(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公表番号】特表2017-519014(P2017-519014A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】GB2015051857
(87)【国際公開番号】WO2015198058
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年5月7日
【審判番号】不服2020-5488(P2020-5488/J1)
【審判請求日】2020年4月22日
(31)【優先権主張番号】1411253.6
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】2050/MUM/2014
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】516375207
【氏名又は名称】ヌカナ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】マクギガン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スラサルジク,マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】セルピ,ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ,ヴァレンティナ
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/076490(WO,A1)
【文献】 特表2012−510499(JP,A)
【文献】 YAKUGAKU ZASSHI,2012,132(1),85−105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
90%を超えるジアステレオ異性体純度を有するゲムシタビン−[フェニル−(ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3:
【化1】

またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
なくとも1種の薬学的に許容される添加剤、
水、および
極性有機溶媒む、医薬配合物。
【請求項2】
非経口投与用である、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項3】
静脈内投与用である、請求項2に記載の医薬配合物。
【請求項4】
シクロデキストリンをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬配合物。
【請求項5】
経口投与用である、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項6】
前記ゲムシタビン−[フェニル−(ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3が、遊離塩基の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬配合物。
【請求項7】
前記ゲムシタビン−[フェニル−(ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3が、95%を超えるジアステレオ異性体純度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬配合物。
【請求項8】
前記ゲムシタビン−[フェニル−(ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3が、98%を超えるジアステレオ異性体純度を有する、請求項7に記載の医薬配合物。
【請求項9】
前記ゲムシタビン−[フェニル−(ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3が、99.5%を超えるジアステレオ異性体純度を有する、請求項8に記載の医薬配合物。
【請求項10】
前記極性有機溶媒が、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬配合物。
【請求項11】
癌を治療するために使用するためのものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬配合物。
【請求項12】
前記癌が、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、胆管細胞癌腫、腎臓癌、子宮頚癌、胸腺癌、原発不明癌、リンパ腫または白血病から選択される、請求項11に記載の医薬配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周知の腫瘍薬ゲムシタビンのモノホスフェートのプロドラッグに関する。詳細には、本発明は、単一のホスフェートジアステレオ異性体として存在する場合のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(化学名:2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−D−シチジン−5’−O−[フェニル(ベンゾキシ−L−アラニニル)]ホスフェート)に関するものであり、特に、本発明は、(R)−ジアステレオ異性体に比べて溶解度において顕著で予想外の上昇を示す、(S)−ホスフェートジアステレオ異性体に関する。(S)−ホスフェートジアステレオ異性体はまた、(R)−ジアステレオ異性体より優先的に、シクロデキストリン溶液中に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
ゲムシタビン(1、Gemzar(登録商標)として販売されている)は、乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および膵臓癌を治療するために現在承認されていて、膀胱癌、胆道癌、結腸直腸癌およびリンパ腫を含む様々なその他の癌を治療するために広く使用されている、有効なヌクレオシド類似体である。
【0003】
【化1】
【0004】
ゲムシタビンの臨床的有用性は、いくつかの生得および獲得の耐性機構によって限定される。細胞レベルで、耐性は、3つのパラメーターに依存する:(i)リン酸化部分にする活性化のために必要である、デオキシシチジンキナーゼのダウンレギュレーション、(ii)癌細胞による取り込みのために必要とされるヌクレオシド輸送体、特にhENT1の発現の減少、および(iii)ゲムシタビンを分解する触媒酵素、特にシチジンデアミナーゼのアップレギュレーション。
【0005】
国際公開第2005/012327号パンフレットは、ゲムシタビンおよび関連するヌクレオシド薬物分子のための一連のヌクレオチドプロドラッグを記載している。一連のヌクレオチドプロドラッグの中で、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(NUC−1031;2)は、特に有効な化合物として確認されている。これらのプロドラッグは、ゲムシタビンの有用性を限定する、生得および獲得の耐性機構の多くを回避すると思われる('Application of ProTide Technology to Gemcitabine: A Successful Approach to Overcome the Key Cancer Resistance Mechanisms Leads to a New Agent (NUC-1031) in Clinical Development'; Slusarczyk et al.; J. Med. Chem.; 2014, 57, 1531-1542)。
【0006】
NUC−1031 2は、ホスフェート中心でエピマーの2つのジアステレオ異性体の混合物として調製される。
【0007】
【化2】
【0008】
残念ながら、NUC−1031 2は、極度に親油性であり、したがって、水に溶解しにくく(計算によると、<0.1mg/mL)、イオン化できる部分、ピリミジン窒素およびフェノール性ヒドロキシルは、非経口投与にとって適切なpH範囲外にある、計算されたpKaを有する。NUC−1031 2は、塩含有量またはpHにかかわらず、水に本質的に不溶性であり、これは、有効な治療にとって十分に高い用量でプロドラッグを送達するための配合物の開発に影響する。これは、高い対費用効果でNUC−1031の生成を可能にすることになる、効率的製造方法の開発にもまた影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有効な医薬組成物中に配合できる形態で、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(NUC−1031;2)を提供することが、本発明の特定の実施形態の目的である。
【0010】
調製でき、長期間貯蔵できる、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(NUC−1031;2)の形態を提供することもまた、本発明の特定の実施形態の目的である。
【0011】
先行技術の形態より高い溶解度を有する形態で、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(NUC−1031;2)を提供することが、本発明の特定の実施形態の目的である。
【0012】
リンでの単一ジアステレオ異性体として、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(NUC−1031;2)を提供することが、本発明の特定の実施形態の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特定の実施形態は、上の目的のいくつかまたは全てを満足させる。
本開示は以下の[1]から[23]を含む。
[1]ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、
【化1】

またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
[2]医学的使用のための、上記[1]に記載の化合物。
[3]癌治療における使用のための、上記[1]に記載の化合物。
[4]癌治療用の医薬品の製造における使用のための、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
[5]癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
[6]上記癌が、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、胆管細胞癌腫、腎臓癌、子宮頚癌、胸腺癌、原発不明癌、リンパ腫または白血病から選択される、上記[3]もしくは上記[4]に記載の化合物または上記[5]に記載の治療の方法。
[7]約90%を超えるジアステレオ異性体純度を有するゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む、医薬配合物。
[8]静脈内投与用である、上記[7]に記載の医薬配合物。
[9]極性有機溶媒もまた含む水性配合物である、上記[8]に記載の医薬配合物。
[10]シクロデキストリンをさらに含む、上記[7]から[9]のいずれか一項に記載の医薬配合物。
[11]経口投与用である、上記[7]に記載の医薬配合物。
[12]上記ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3が、遊離塩基の形態である、上記[1]から[11]のいずれか一項に記載の化合物、方法または配合物。
[13]ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4、
【化2】

またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
[14]医学的使用のための、上記[13]に記載の化合物。
[15]癌治療における使用のための、上記[13]に記載の化合物。
[16]癌治療用の医薬品の製造における使用のための、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
[17]癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
[18]上記癌が、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、胆管細胞癌腫、腎臓癌、子宮頚癌、胸腺癌、原発不明癌、リンパ腫または白血病から選択される、上記[15]もしくは上記[16]に記載の化合物または上記[17]に記載の治療の方法。
[19]約90%を超えるジアステレオ異性体純度を有するゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む、医薬配合物。
[20]静脈内投与用である、上記[19]に記載の医薬配合物。
[21]極性有機溶媒もまた含む水性配合物である、上記[20]に記載の医薬配合物。
[22]経口投与用である、上記[19]に記載の医薬配合物。
[23]上記ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4が、遊離塩基の形態である、上記[13]から[20]のいずれか一項に記載の化合物、方法または配合物。
【0014】
本発明のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェートは、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェート(NUC−1031;2)と、好ましくは、実質的に同じ活性がある。しかし、本発明のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェートは、わずかにより低い活性を有するが、本明細書に記載されているその他の利点を有し、その場合、この形態でそれを使用する製造または治療上の利点がある。
【0015】
本発明においては、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、
【0016】
【化3】
または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物が提供される。好ましくは、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3は、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態である。
【0017】
本発明者らは、2つのジアステレオ異性体の溶解度における、驚くべき、顕著な差異を発見した。(S)−エピマー3は、それを、治療薬剤として配合および投与に適切なものにする、いくつかの極性有機溶媒と水との混合物中での十分な溶解度を有する。(R)−エピマー4は、測定されたほとんどの溶媒混合物中で、実質的に不溶性である。溶解度におけるこの顕著な差異は、以前は確認されておらず、(S)−エピマーのこの特性の潜在的利点は、確認されていなかった。試験された、いくつかの溶媒混合物において、(S)−エピマーと(R)−エピマーとの間の溶解度における差異は、100倍を超える。
【0018】
驚いたことに、(S)−エピマーはまた、(R)−エピマーより優先的に、シクロデキストリン溶液中に取り込まれる。これは、その他のゲムシタビンホスフェート誘導体では観察されなかった。
【0019】
本発明の第2の態様において、約90%を超えるジアステレオ異性体純度を有するゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む、医薬配合物が提供される。
【0020】
配合物は、非経口用、例えば、静脈内、皮下または筋肉内投与用であってよい。好ましくは、配合物は、静脈内投与用である。
【0021】
配合物は、極性有機溶媒を場合によってまた含む、水性配合物であってよい。非経口(例えば、静脈内)投与の場合、配合物は、極性有機溶媒を好ましくはまた含む。
【0022】
配合物は、シクロデキストリンをまた含んでよい。
【0023】
本発明の第3の態様において、医学的使用のための、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0024】
本発明の第4の態様において、癌治療における使用のための、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0025】
本発明の第5の態様において、癌治療用の医薬品の製造における使用のための、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0026】
本発明の第6の態様において、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、方法が提供される。
【0027】
溶媒和物は、典型的に、水和物ということになる。したがって、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェートは、塩または水和物の形態であってよい。ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェートは、塩および/または溶媒和物(例えば、水和物)の形態ではないことがあり得る。好ましくは、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェートは、遊離塩基の形態である。
【0028】
ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェートは、約90%を超えるジアステレオ異性体純度を有してよい。ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェートは、95%、98%、99%、または99.5%さえも超えるジアステレオ異性体純度を有してよい。「実質的にジアステレオマー的に純粋な」は、約90%を超えるジアステレオマー純度として、本発明の目的のために定義される。
【0029】
癌は、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、胆管細胞癌腫、腎臓癌、子宮頚癌、胸腺癌、原発不明癌から選択される、癌であってよい。癌はまた、リンパ腫または白血病であってもよい。
【0030】
本発明の第7の態様において、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェートの少なくとも1つのジアステレオ異性体を生成する方法であって、
ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4とゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3との混合物を得るステップ、
混合物に分離技法を実施するステップ、ならびに
いったん分離したら、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態で、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4および/またはゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3を単離するステップ
を含む、方法が提供される。
【0031】
本発明の第8の態様において、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェートの少なくとも1つのジアステレオ異性体を生成する方法であって、
3'−保護されたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4と3'−保護されたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3との混合物を得るステップ、
混合物に分離技法を実施するステップ、
いったん分離したら、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態で、3'−保護されたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4および/または3'−保護されたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3を単離するステップ、
分離されたジアステレオ異性体の一方または両方から3’−保護基を除去し、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態で、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4および/またはゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3を生成するステップ
を含む、方法が提供される。
【0032】
3’−保護されたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェートは、3’−ヒドロキシ基がヒドロキシルの保護基であることを特徴とする、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−ホスフェートの誘導体である。当該の保護基は、明確に除去可能でなければならない。代表的な保護基としては、シリル保護基(例えば、tert−ブチルジメチルシリルおよびトリエチルシリル)が挙げられ、その場合、保護基は、TFA、HF、フルオロケイ酸およびテトラブチルアンモニウムフルオリドから選択される試薬を使用して、除去されてよい。代替の保護基は、カーボネート基(例えば、tertブチルカーボネート)であり得て、その場合、保護基は、ブロンステッド酸(例えば、TFA)またはルイス酸(例えば、ZnBr)を使用して、除去してよい。
【0033】
分離技法は、クロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィーまたは分取HPLCであってよい。分離技法が分取HPLCである場合、キラルカラム、例えば、アミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)を含むキラルカラムを使用して、実行されてよい。本発明の方法において有用なキラルカラムの例は、Chiralpak AD(商標)であり、その固定相は、アミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)が物理的にコーティングされた、20μmのシリカ担体から成る。
【0034】
分離技法は、シクロデキストリン溶液中への選択的取り込みであってよい。この技法は、一方のエピマーが、他方のエピマーに優先してシクロデキストリン溶液中へ取り込まれるように、混合物をシクロデキストリン溶液と接触させること、および次に、溶解されなかった固形物からシクロデキストリン溶液を分離することを伴う。シクロデキストリン溶液は、シクロデキストリン水溶液であってよい。固形物からの溶液の分離は、ろ過によって達成されてよい。
【0035】
本発明はまた、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4、
【0036】
【化4】
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。本発明はまた、約90%を超えるジアステレオ異性体純度を有するゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される添加剤を含む、医薬配合物、ならびに化合物4の医学的使用ならびに化合物4を使用する治療の方法を提供する。(R)−エピマーのこれらの態様は、上に記載された本発明の第3から第6の態様における化合物3に関して記載されたものに対応する。ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェートは、実質的にジアステレオ異性体的に純粋な形態であってよい。ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェートは、塩および/または溶媒和物(例えば、水和物)ではないことがあり得る。好ましくは、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェートは、遊離塩基として存在する。
【0037】
R−エピマーは、S−エピマーの4倍である、単離されたヒト肝細胞でのインキュベーションにおける半減期を有することが示された(実施例4参照)。R−異性体に関するより長い半減期は、より低い固有クリアランスを意味し、S−異性体とは異なる薬物動態および薬力学のプロファイルをもたらすはずである。このプロファイルは、体循環におけるR−異性体のより高く、より長時間の濃度、それ故に、S−エピマーで達成され得るより大きなR−エピマーへの暴露を意味し得る。したがって、R−異性体についてのAUCは、より大きくなり、例えば、初回通過効果がより明白である、経口の投与経路のための部分への、より大きくより長時間の暴露をもたらし得る。R−エピマーへのこの長時間の暴露は、R−エピマーへの実質的に長時間の腫瘍暴露を可能にし、より高い有効性をもたらし、そこでは、肝臓における初回通過代謝が減少することによって、より高い薬物濃度がもたらされることになる。この異なる特性はまた、より長いPKプロファイルが、脈管構造の貧弱な、接近が困難な腫瘍部位に、より高い有効性をもたらし得る、特定の腫瘍のターゲッティングを可能にし得る。R−エピマーへの長時間の暴露は、細胞分裂を含む、細胞周期のより多くの期を通じて、活性代謝物の十分な薬物濃度を確実にし得る。
【0038】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら、以降にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】Chiralpak ADカラムおよびn−ヘプタン/IPAグラジェント溶媒系を使用するHPLCによる、化合物3と4の分離のためのクロマトグラフを示す図である。
図2】x線回析によって測定された化合物4の構造を示す図である。
図3】x線回析によって測定された化合物3の構造を示す図である。
図4】モル比1:2.3のHP−β−CDの添加後の、NUC−1031異性体混合物(3.12mM)の31P-NMRスペクトル(202MHz、DO)を示す図である。
図5】(B)モル比1:2.3のHP−β−CDの添加後のHO中(A)MeOH中のNUC−1031(3.12mM)のHPLC痕跡量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書全体にわたって、用語S−エピマーまたはS−ジアステレオ異性体は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェートを指す。同様に、本明細書全体にわたって、用語R−エピマーまたはR−ジアステレオ異性体は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェートを指す。
【0041】
本発明の化合物は、人体の治療において使用できる。本発明の化合物は、動物体の治療において使用してよい。特に、本発明の化合物は、家畜などの商業用動物を治療するために使用できる。代替方法として、本発明の化合物は、猫、犬等などのペットを治療するために使用できる。
【0042】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で、得られ、貯蔵されおよび/または投与されてよい。適切な薬学的に許容される塩としては、これらに限定されるものではないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が挙げられる。適切な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩および亜鉛塩が挙げられる。酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩、ヘミシュウ酸塩およびヘミカルシウム塩もまた形成され得る。特定の実施形態、特に、s−エピマーに適用される実施形態において、化合物は、HCl塩またはヘミシュウ酸塩の形態である。
【0043】
本発明の化合物は、単結晶形態もしくは結晶形態の混合物で存在してよい、または本発明の化合物は、非晶質であってよい。したがって、医薬的使用を目的とする本発明の化合物は、結晶性または非晶質生成物として投与されてよい。本発明の化合物は、例えば、沈殿、晶析、凍結乾燥、または噴霧乾燥、または蒸発乾燥などの方法によって、固形プラグ、粉末、または薄膜として、得られてよい。マイクロ波または高周波乾燥が、この目的のために使用されてよい。
【0044】
本発明の、上に記載された化合物について、投与される用量は、使用される化合物、投与の方法、所望の治療および治療の必要を示された障害によって、もちろん変動することになる。例えば、本発明の化合物が非経口的に投与される場合、本発明の化合物の用量は、0.1から5g/mの範囲内、例えば、0.5から2g/mであってよい。本発明の化合物の治療目的用の一回分の量は、医薬の周知の原則に従って、状態の性質および重症度、動物または患者の年齢および性別、ならびに投与経路によって、当然変動することになる。
【0045】
本発明の化合物の服用レベル、投薬回数、および治療期間は、配合物、ならびに患者の臨床的徴候、年齢、および併存する病状に応じて異なることが、予期される。
【0046】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、それ自体で使用されてよいが、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩が薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤または担体と合併している、医薬組成物の形態で一般的に投与されることになる。適切な医薬配合物の選択および調製のための従来の手順は、例えば、"Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs", M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0047】
本発明の化合物の投与の方法に応じて、本発明の化合物を投与するために使用される医薬組成物は、好ましくは、0.05から99%w(重量パーセント)の本発明の化合物、より好ましくは、0.05から80%wの本発明の化合物、さらにより好ましくは、0.10から70%wの本発明の化合物、もっとより好ましくは、0.10から50%wの本発明の化合物を含むことになり、全ての重量パーセントは、全組成物に対するものである。
【0048】
経口投与のために、本発明の化合物は、アジュバントまたは担体、例えば、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチもしくはアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチンもしくはポリビニルピロリドン;および/または滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ロウ、パラフィン等と混合し、次に、圧縮して錠剤にしてよい。コーティング錠剤が必要とされる場合、上に記載された通りに調製された核は、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルカムおよび二酸化チタンを含有してよい濃縮糖溶液で、コーティングされてよい。代替方法として、錠剤は、容易に揮発する有機溶媒中に溶解された適切なポリマーでコーティングしてよい。
【0049】
軟ゼラチンカプセル剤の調製のために、本発明の化合物は、例えば、植物油またはポリエチレングリコールと混合してよい。硬ゼラチンカプセル剤は、錠剤のための上述の添加剤のいずれかを使用し、化合物の顆粒を含有してよい。また、本発明の化合物の液状もしくは半流動の配合物が、硬ゼラチンカプセル中に充填されてもよい。
【0050】
経口適用のための液体製剤は、シロップまたは懸濁液、例えば、本発明の化合物を含有する溶液の形態であってよく、残余は、糖ならびにエタノール、水、グリセロールおよびプロピレングリコールの混合物である。場合によって、かかる液体製剤は、着色剤、香味剤、甘味剤(サッカリンなど)、防腐剤および/もしくは増粘剤としてカルボキシメチルセルロース、または当業者に公知のその他の添加剤を含有してよい。
【0051】
非経口(例えば、静脈内)投与のために、本発明の化合物は、無菌の水性または油性溶液として投与されてよい。本発明の化合物は、非常に親油性である。したがって、水性配合物は、薬学的に許容される極性有機溶媒を、典型的に含有することにもなる。
【0052】
シクロデキストリンには、薬物送達において広い適用があるとわかった(Rasheed et al, Sci. Pharm., 2008, 76, 567-598)。シクロデキストリンは、環状オリゴ糖のファミリーである。シクロデキストリンは、薬物分子を被包し、溶解度などのそれらの薬物分子の特性を変更する、「分子のカゴ」として働く。シクロデキストリンは、(α−1,4)結合したα−D−グルコピラノース単位を含む。シクロデキストリンは、6、7または8グルコピラノース単位(それぞれ、α−、β−およびγ−シクロデキストリンと呼ばれる)を含有してよい。医薬配合物中で使用されるシクロデキストリンは、しばしばβ-シクロデキストリンである。側鎖のヒドロキシル基は、C〜C置換または非置換アルキル基でアルキル化できる。シクロデキストリンの例は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム塩、部分的にメチル化されたβ−シクロデキストリンである。
【0053】
本発明の化合物の治療目的用の一回分の量は、医薬の周知の原則に従って、状態の性質および重症度、動物または患者の年齢および性別、ならびに投与経路によって、当然変動することになる。
【0054】
本発明の化合物の服用レベル、投薬回数、および治療期間は、配合物、ならびに患者の臨床的徴候、年齢、および併存する病状に応じて異なることが、予期される。
【0055】
本発明はまた、化合物3または4の全ての薬学的に許容される同位体標識形態を含み、1つまたは複数の原子が、同じ原子番号を有するが、通常自然界にみられる主な同位体の原子質量または質量数と違う、原子質量または質量数を有する原子によって、置換されている。
【0056】
本発明の化合物に含めるのに適切な同位体の例としては、HおよびHなどの水素、11C、13Cおよび14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、18Fなどのフッ素、123Iおよび125Iなどのヨウ素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17Oおよび18Oなどの酸素、32Pなどのリン、ならびに35Sなどのイオウの同位体が挙げられる。
【0057】
特定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を組み込んだ化合物は、薬物および/または基質組織分布研究において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち、H、および炭素14、すなわち、14Cは、組み込みの容易さおよび検出の迅速な手段を考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0058】
重水素、すなわちHなどのより重い同位体での置換は、より高い代謝的安定性に起因する特定の治療の優位性、例えば、インビボ半減期の増加または必要用量の減少をもたらし得るし、それ故に、いくつかの状況において好まれ得る。
【0059】
11C、18F、15Oおよび13Nなどのポジトロン放出同位体での置換は、基質受容体占有率を調査するためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究において有用であり得る。
【0060】
同位体標識化合物は、当業者に公知の従来技法によって、または以前に使用された非標識試薬の代わりに好適な同位体標識試薬を使用する、記載された方法と類似の方法によって、一般的に調製できる。
【0061】
治療の方法または癌の治療における使用のための化合物は、本発明の化合物に加えて、従来の外科手術または放射線療法または化学療法を伴ってよい。かかる化学療法は、1種または複数のその他の活性薬剤の投与を含んでよい。
【0062】
さらなる活性薬剤が本発明の治療の方法の一部として投与される場合、かかる併用治療は、治療の個々の成分の同時、順次または分離投薬によって達成されてよい。かかる併用生成物は、上文に記載された治療有効用量の範囲内の本発明の化合物および承認された用量の範囲内の1種または複数のその他の薬学的活性薬剤(複数可)を使用する。
【0063】
したがって、本発明の医薬配合物は、別の活性薬剤を含んでよい。
【0064】
1種または複数のその他の活性薬剤は、抗腫瘍薬剤の以下の分類の1つまたは複数であってよい:
(i)抗増殖性/抗悪性腫瘍性薬物およびその組合せ、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ベンダムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミドおよびニトロソ尿素);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビンならびに葉酸代謝拮抗薬、例えば、5−フルオロウラシルおよびテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキサート、ペメトレキセド、シトシンアラビノシド、ならびにヒドロキシ尿素);抗生物質(例えば、アントラサイクリン類、例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンカアルカロイド類、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン、ならびにタキソイド類、例えば、タキソールおよびタキソテール、ならびにポロキナーゼ阻害剤);プロテアソーム阻害剤、例えば、カルフィルゾミブおよびボルテゾミブ;インターフェロン療法;ならびにトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシン類、例えば、エトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、ミトキサトロン、ならびにカンプトテシン);
(ii)細胞分裂阻害剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾールおよびエキセメスタン)、およびフィナステリドなどの5α−レダクターゼの阻害剤;
(iii)抗浸潤剤、例えば、ダサチニブおよびボスチニブ(SKI−606)、ならびにメタロプロテアーゼ阻害剤、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤またはヘパラナーゼに対する抗体;
(iv)増殖因子機能の阻害剤:例えば、かかる阻害剤としては、増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体、例えば、抗erbB2抗体トラスツズマブ[Herceptin(商標)]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗erbB1抗体セツキシマブ、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブおよび6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(Cl1033)、erbB2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ);肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤;インスリン増殖因子ファミリーの阻害剤;細胞アポトーシスのタンパク質制御因子の調節剤(例えば、Bcl−2阻害剤);血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、例えば、イマチニブおよび/またはニロチニブ(AMN107);セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、Ras/Rafシグナル伝達阻害剤、例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ、チピファルニブおよびロナファルニブ)、MEKおよび/またはAKTキナーゼによる細胞シグナル伝達の阻害剤、c−kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、Plt3キナーゼ阻害剤、CSF−1Rキナーゼ阻害剤、IGF受容体キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤ならびにサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えば、CDK2および/またはCDK4阻害剤が挙げられる;
(v)血管内皮増殖因子の効果を阻害する剤などの抗血管新生剤、[例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標));サリドマイド;レナリドミド;ならびに、例えば、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バンデタニブ、バタラニブ、スニチニブ、アキシチニブおよびパゾパニブ;
(vi)遺伝子療法アプローチ、例えば、異常p53または異常BRCA1もしくはBRCA2などの異常遺伝子を置き換えるアプローチを含む;
(vii)免疫療法アプローチ、例えば、抗体療法、例えば、アレムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))およびオファツムマブ;インターフェロン、例えば、インターフェロンα;インターロイキン、例えば、IL−2(アルデスロイキン);インターロイキン阻害剤、例えば、IRAK4阻害剤;HPVワクチンなどの予防および治療ワクチンを含む、癌ワクチン、例えば、ガーダシル、サーバリックス、オンコファージおよびシプロイセル−T(Provenge);ならびにtoll様受容体調節剤、例えば、TLR−7またはTLR−9アゴニストを含む;ならびに
(viii)細胞障害性剤、例えば、フルダラビン(フルダラ)、クラドリビン、ペントスタチン(Nipent(商標));
(ix)ステロイド剤、例えば、糖質コルチコイドおよびミネラルコルチコイドを含む、副腎皮質ステロイド剤、例えば、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉相酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、クロプレドノール、コルチゾン、酢酸コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、イソニコチン酸デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオコルトロン、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルランドレノロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、アソポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、吉草酸ヒドロコルチゾン、イコメタゾン(icomethasone)、イコメタゾンエンブテート(icomethasone enbutate)、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、モメタゾンフロエート一水和物、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、ピバリン酸チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコールおよびそれらのそれぞれの薬学的に許容される誘導体。ステロイド剤の組合せ、例えば、この段落に述べられた2種以上のステロイド剤の組合せが、使用されてよい;
(x)標的療法、例えば、PI3Kd阻害剤、例えば、イデラリシブおよびペリフォシン;またはPD−1、PD−L1およびCAR Tを阻害する化合物。
【0065】
1種または複数のその他の活性薬剤はまた、抗生物質であってもよい。
【0066】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、語「含む」および「含有する」ならびにそれらの変化形は、「含むが限定されない」ことを意味し、語「含む」および「含有する」ならびにそれらの変化形は、その他の部分、添加物、成分、整数またはステップを排除することを意図しない(および排除しない)。本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、単数形は、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、明細書は、複数も単数も考慮していると理解されるべきである。
【0067】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と共に記載されている特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または基は、矛盾がなければ、本明細書に記載されている他のいずれの態様、実施形態または実施例にも適用可能であると理解されるべきである。本明細書(いずれの添付の特許請求の範囲、要約および図面も含む)に開示された特徴の全て、および/またはそのように開示されたいずれの方式または方法のステップの全ても、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかが、相互排他的である組合せを除いて、いずれの組合せで組み合わされてもよい。本発明は、いずれの前述の実施形態の詳細にも制限されない。本発明は、本明細書(いずれの添付の特許請求の範囲、要約および図面も含む)に開示された特徴のいずれの新規の1つもしくはいずれの新規の組合せ、またはそのように開示されたいずれの方式もしくは方法のステップのいずれの新規の1つもしくはいずれの新規の組合せにも及ぶ。
【0068】
読者の注目は、本出願に関連して、本明細書と同時にまたは本明細書に先立って申請され、本明細書と一緒に公衆の閲覧に付されている、全ての文書に向けられ、全てのかかる文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
以下の略語が、本明細書で使用される。
DMF − N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO − ジメチルスルホキシド
IPA − イソプロピルアルコール
NMP − N−メチルピロリドン
PEG − ポリエチレングリコール
TBDMS − tert−ブチルジメチルシリル
TFA − トリフルオロ酢酸
【実施例1】
【0070】
(R)および(S)異性体を、以下の条件下で、HPLCによって分離した。
装置:DAD検出器付きAgilent1200(商標)シリーズ
流速:1.0mL/分
カラム:Chiralpak AD(商標)、250×4.6mm ID(順相)
温度:気温
粒子径:20μm
フィード:MeOH中に溶解される、10g/L
溶媒:n−ヘプタン/IPA 10−>50%IPA
クロマトグラムを、図1に示す。(S)−エピマーは、8.6分で溶出し、(R)−エピマーは、10.3分で溶出した。
【0071】
特性決定方法および材料:プロトン(H)、炭素(13C)、リン(31P)およびフッ素(19F)NMRスペクトルを、25℃で、Bruker Avance500分光計で記録した。スペクトルを、重水素化溶媒ピークに自動較正し、全ての13C NMRおよび31P NMRを、プロトンデカップリングした。最終化合物の純度を、35分内にHO/MeOH、100/0から0/100のグラジェント溶離による分析カラムとして、Varian Polaris C18−A(10μΜ)を使用するHPLC分析により、>95%であると検証した。HPLC分析を、Varian Prostar(LC Workstation−Varian prostar335LC検出器)によって実行した。
2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−D−シチジン−5’−O−[フェニル(ベンジルオキシ−L−アラニニル)]−(S)−ホスフェート 3
検出(ES+)m/z:(M+Na)603.14。必要C2527NaP:(M)580.47。
31P NMR (202 MHz, MeOD): δΡ 3.66
1H NMR (500 MHz, MeOD): δΗ 7.58 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-6), 7.38-7.32 (m, 7H, ArH), 7.26-7.20 (m, 3H, ArH), 6.24 (t, J = 7.5 Hz, 1H, H-1'), 5.84 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-5), 5.20 (AB系, JAB= 12.0 Hz, 2H, OCH2Ph), 4.46-4.43 (m, 1H, H-5'), 4.36-4.31 (m, 1H, H-5'), 4.25-4.19 (m, 1H, H-3'), 4.07-4.00 (m, 2H, H-4', CHCH3), 1.38 (d, J= 7.2 Hz, 3H, CHCH3).
19F NMR (470 MHz, MeOD): δF- 118.0 (d, J = 241 Hz, F), - 120.24 (広幅なd, J = 241 Hz, F).
13C NMR (125 MHz, MeOD): δC174.61 (d, 3JC-P = 5.0 Hz, C = O, エステル), 167.63 (C-NH2), 157.74 (C=O ベース), 152.10 (d, 2JC-P = 7.0 Hz, C-Ar), 142.40 (CH-ベース), 137.22 (C-Ar), 130.90, 129.63, 129.39, 129.32, 126.32 (CH-Ar), 124.51 (d, 1JC-F = 257 HZ, CF2), 121.47, 121.43 (CH-Ar), 96.67 (CH-ベース), 85.92 (広幅シグナル, C-1'), 80.31 (C-4'), 71.27 (見かけ上t, 2JC-F= 23.7 Hz, C-3'), 68.03 (OCH2Ph), 65.73 (d, 2JC-P= 5.30 Hz, C-5'), 51.66 (CHCH3), 20.42 (d, 3JC-P= 6.25 Hz, CHCH3).
35分内にHO/MeOH、100/0から0/100で溶出する、逆相HPLCは、t=22.53分でジアステレオ異性体の1つのピークを示した。
2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−D−シチジン−5’−O−[フェニル(ベンジルオキシ−L−アラニニル)]−(R)−ホスフェート 4.
検出(ES+)m/z:(M+Na)603.14。必要C2527NaP:(M)580.47。
31P NMR (202 MHz, MeOD): δΡ 3.83
1H NMR (500 MHz, MeOD): δΗ 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-6), 7.38-7.31 (m, 7H, ArH), 7.23-7.19 (m, 3H, ArH), 6.26 (t, J = 7.5 Hz, 1H, H-1'), 5.88 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-5), 5.20 (s, 2H, OCH2Ph), 4.49-4.46 (m, 1H, H-5'), 4.38-4.34 (m, 1H, H-5'), 4.23-4.17 (m, 1H, H-3'), 4.07-4.01 (m, 2H, H-4', CHCH3), 1.38 (d, J = 7.2 Hz, 3H, CHCH3).
19F NMR (470 MHz, MeOD): δF- 118.3 (d, J = 241 Hz, F), - 120.38 (広幅なd, J = 241 Hz, F).
13C NMR (125 MHz, MeOD): δC174.65 (d, 3JC-P = 5.0 Hz, C = O, エステル), 167.65 (C-NH2), 157.75 (C=O ベース), 152.10 (d, 2JC-P = 7.0 Hz, C-Ar), 142.28 (CH-ベース), 137.50 (C-Ar), 130.86, 129.63, 129.40, 129.32, 126.31 (CH-Ar), 124.50 (d, 1JC-F = 257 Hz, CF2), 121.44, 121.40 (CH-Ar), 96.67 (CH-ベース), 85.90 (広幅シグナル, C-1'), 80.27 (C-4'), 71.30 (見かけ上t, 2JC-F= 23.7 Hz, C-3'), 68.02 (OCH2Ph), 65.50 (C-5'), 51.83 (CHCH3), 20.22 (d, 3JC-P = 7.5 Hz, CHCH3).
35分内にHO/MeOH、100/0から0/100で溶出する、逆相HPLCは、t=21.87分でジアステレオ異性体の1つのピークを示した。
【0072】
X線回析データをまた、2つの異性体について取得し、結果の画像を、図2および3に示す。対応する回析データおよび方法を、下の表1から4に提供する。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2-1】
【0075】
【表2-2】
【0076】
【表2-3】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4-1】
【0079】
【表4-2】
【0080】
【表4-3】
【0081】
【表4-4】
【0082】
【表4-5】
【0083】
【表4-6】
【0084】
【表4-7】
【実施例2】
【0085】
NUC−1031の溶解度およびそのジアステレオ異性体を、ある範囲の薬学的に許容される溶媒系中で測定した。採用したプロトコールは、以下の通りであった:
それぞれの溶媒系の少量1〜2mLを調製し、当該の化合物のある重量を加えた。溶液を、およそ4時間撹拌し、次に、0.45μLを、膜ろ過した。次に、濾液中の当該の化合物の濃度を、HPLCアッセイによって測定した。
【0086】
膵臓癌の治療において使用されるゲムシタビン投与計画に基づいて、NUC−1031の分子量を調整した一回分は、週に一回の点滴として与えられ、約3200mgとなる。必要とされる溶解度のレベルの指標として、500mL点滴量を概念的な標的にして、NUC−1031の必要とされる溶解度は、点滴液において>6mg/mlとなる。しかし、この溶解度レベルは、ただの指標であり、下の溶解度ですら、有効な療法を提供できる。
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
表6からわかるように、(R)−エピマー4は、水中極性有機溶媒の10%混合物中で実質的に不溶性である。他方、(S)−エピマー3は、有意に改善された溶解度を示す。水中極性有機溶媒の50%混合物において、(S)−エピマー3は、(R)−エピマー4より100倍を超える可溶性であり得る。したがって、(S)−エピマーは、潜在的に非常に便利で有効な療法を提供できる。
【実施例3】
【0090】
(R)−および(S)−エピマーのシクロデキストリン中への差異のある取り込みを評価するために、DO中のHP−β−CDによる処理の後、NUC−1031異性体混合物の31P NMRスペクトルを記録した。
【0091】
NMR研究。H NMR(500MHz)および31P NMR(202MHz)を、25℃でBruker Avance500MHz分光計で記録した。化学シフト(δ)は、内部DO(δ4.9H NMR)または外部85%HPO(δ0.0031P NMR)に対して、百万分率(ppm)で引用される。HPLCとNMR研究の両方とも、室温で実行した。
【0092】
HPLC研究。分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を、ThermoScientificシステムを使用して実施した。逆相HPLC分析を、流速1mL/分および検出波長280nmで、30分内に、HO/CHCN、90/10から0/100によって溶出する、SCIENTIFIC Hypersil Gold C18、5μ、150×4.6mmで実行した。NUC−1031エピマー(MeOH中に溶解)の保持時間を、これらの条件下で、(S)−エピマー3について13.58分および(R)−エピマー4について13.44分で、それぞれ観察する(図5A)。
【0093】
NUC−1031異性体混合物(1:1.1、(S):(R))を2.36mg計量し、NMR管中へ移した。次に、HP−β−CD13.3mgを、酸化重水素1.3mL中に溶解させ、これが、NMR管へ加えられた溶液であった(モル比1:2.3、NUC1031:HP−β−CD)(注:溶液中に溶解された全ての固形物ではない)。
【0094】
31P NMRスペクトルは、HP−β−CDが、(R)エピマー(4.00Hz)に比べてNUC−1031(S)−エピマー3(4.14Hz)の溶解度を強化することができることを示し、溶液中の(S)−および(R)−エピマーの観察された比は、(S)−エピマーが優位の6.6:1である。(図4)。
【0095】
NMR研究からのDO溶液0.5mLを、水0.5mLを加えることによって、1mLまで希釈した(1.15mg/mL)。この溶液20μLを、HPLC中へ注入した。
【0096】
希釈されたNMR試料のHPLC分析は、(S)−エピマー3が、(R)−エピマー4より良く溶液中へ取り込まれることを確認し、溶液中の(S)−および(R)−エピマーの観察された比は、NMRデータと広く一致して、(S)−エピマーが優位の5:1である(図5B)。
【0097】
別のゲムシタビンホスフェート誘導体で実行した同様の研究は、シクロデキストリン溶液中へのその誘導体の(S)−エピマーおよび(R)−エピマーの取り込みの間に、差がないことを示した。
【実施例4】
【0098】
ほとんどの医薬のクリアランスおよび生物学的利用能は、肝臓中での初回通過代謝によって強く影響される。凍結保存された肝細胞で化合物をインキュベートし、インキュベーション混合物中の試験化合物の初期量対最終量を測定することによって、インビトロで相対的肝臓「代謝的安定性」を推定することが可能である。
【0099】
以下の手順は、プールされたヒト凍結保存肝細胞懸濁液を使用する、HPLC−MS/MSアッセイである。
【0100】
アッセイマトリックス
ヒト肝細胞:男女混合および10のプール
最終細胞密度:100万(10)生細胞/mL
【0101】
実験プロトコール
プールされた凍結保存肝細胞を、解凍し、洗浄し、クレブス−ヘンゼライトバッファ(pH7.3)中に再懸濁する。反応を、細胞懸濁液中に試験化合物(1μM最終濃度)を加えることによって開始させ、37℃/5%COで、0分および120分のそれぞれについて、平底96ウェルプレート上で最終体積100μLにおいてインキュベートする。反応を、インキュベーション混合物中へアセトニトリル100μLを加えることによって停止する。次に、試料を、プレートシェーカー上で、穏やかに短時間、混合し、0.8mLのV字底96ウェルプレートへ完全に移し、室温で15分間、2550×gで遠心分離する。それぞれの上澄み(150μL)を、清潔なクラスターチューブへ移し、続いて、Thermo Electron三連四重極システムでのHPLC−MS/MS分析を行う。
【0102】
このアッセイを、半減期測定のために改変した。この場合、サンプリング時点は、0、30、60、90、および120分である。
【0103】
基準化合物
4つの基準化合物(1μM)を、試験化合物と同時に試験した。プロプラノロールは、ヒト肝細胞で相対的に安定していて、一方、フルラゼパム、ナロキソン、およびテルフェナジンは、ヒト肝細胞で相対的に不安定である。
【0104】
分析方法
試料を、選択反応モニタリング(SRM)を使用する、(RP)HPLC−MS/MSによって分析する。HPLC条件は、オートサンプラー付きHP1100バイナリポンプ、C−12混合モード、2×20mmカラム、およびグラジェントから成る。
【0105】
データ分析
試験化合物に対応するピーク面積を、HPLC−MS/MSによって記録する。残存する試験化合物のパーセントとして表される代謝的安定性を、2時間からゼロ時間での試験化合物のピーク面積を比較することによって、計算する。半減期測定の場合、半減期を、一次速度論を前提として、残存する試験化合物(%)対時間の対数曲線の初期線形範囲の傾斜から推定する。
【0106】
結果を表7に示す。
【0107】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5