【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、特定の数平均分子量および分散度を有するポリアリーレンスルフィド樹脂、全芳香族ポリアミド繊維およびフッ素樹脂からなる樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂が有する優れた特性を保持しつつ、優れた衝撃強度、引張破断伸びを発現できることを見出し本発明に至った。
【0007】
具体的には、上記課題は、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)全芳香族ポリアミド繊維(B成分)10〜150重量部および(C)フッ素樹脂(C成分)5〜100重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であり、A成分の数平均分子量(Mn)が9,000以下であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)が5.0以下であることを特徴とする樹脂組成物により達成される。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0008】
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p−フェニレンスルフィド)がより好ましい。
【0009】
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の数平均分子量(Mn)は9,000以下であり、好ましくは8,500以下、より好ましくは8,000以下である。なお、数平均分子量の下限は特に規定されないが、2,000以上であることが好ましい。数平均分子量が9,000より高いと樹脂組成物の衝撃強度と引張破断伸びが低下する。また、数平均分子量が2,000以下であると該樹脂組成物による製品の生産性に問題が生じる場合がある。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)は5.0以下であり、好ましくは4.9以下、より好ましくは4.8以下である。分散度が5.0より大きい場合、樹脂組成物の衝撃強度と引張破断伸びの低下が起こる。なお、分散度(Mw/Mn)の下限は特に規定されないが、2.7以上であることが好ましい。分散度が2.7未満の場合、成形時のバリ発生が多くなる場合がある。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)(分子量測定装置:Pl gel 220)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には1−クロロナフタレンを使用し、カラム温度は210℃とした。
【0010】
また本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総塩素含有量は500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度を低下させる場合がある。
【0011】
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総ナトリウム含有量は39ppm以下であることが好ましく、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によるウエルド強度を低下させるだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
【0012】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、既知の方法で重合されるが、特に好適な重合方法としては、米国登録特許第4,746,758号、第4,786,713号、特表2013−522385、特開2012−233210および特許5167276等に記載された製造方法が挙げられる。これらの製造方法は、ジヨードアリール化合物と固体硫黄を、極性溶媒なしに直接加熱して重合させる方法である。
【0013】
前記製造方法はヨウ化工程および重合工程を含む。該ヨウ化工程ではアリール化合物をヨードと反応させて、ジヨードアリール化合物を得る。続く重合工程で、重合停止剤を用いてジヨードアリール化合物を固体硫黄と重合反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。ヨードはこの工程で気体状で発生し、これを回収して再びヨウ化工程に用いられる。実質的にヨードは触媒である。
【0014】
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S
8)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
【0015】
前記製造方法で用いられる代表的なジヨードアリール化合物としては、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノールおよびジヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、またアルキル基やスルホン基が結合していたり、酸素や窒素が導入されたりしているヨードアリール化合物の誘導体も使用される。ヨードアリール化合物はそのヨード原子の結合位置によって異なる異性体に分類され、これらの異性体のうち好ましい例は、p−ジヨードベンゼン、2,6−ジヨードナフタレン、及びp,p’−ジヨードビフェニルのようにヨードがアリール化合物の分子両端に対称的に位置する化合物である。該ヨードアリール化合物の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し500〜10,000重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0016】
前記製造方法で用いられる代表的な重合停止剤としては、モノヨードアリール化合物、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバメート類、芳香族スルフィド化合物などが挙げられる。モノヨードアリール化合物のうち好ましい例としては、ヨードビフェニル、ヨードフェノール、ヨードアニリン、ヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾール類のうち好ましい例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾールスルフェンアミド類のうち好ましい例としては、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−モルホリノチオベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジベンゾチアゾールジスルファイド、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。チウラム類のうち好ましい例としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ジチオカルバメート類のうち好ましい例としては、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛、ジエチルジチオカルバメート酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。芳香族スルフィド化合物のうち好ましい例としては、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニル、ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。またいずれの重合停止剤においても、共役芳香環骨格上に一つまたは複数の官能基が置換されていてもよい。前記官能基の例としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、スルホ基、ニトロ基などが挙げられ、好ましい例としてはカルボキシル基、アミノ基が挙げられ、さらに好ましい例としてはFT−IRスペクトル上で、1600〜1800cm
−1または3300〜3500cm
−1のピークを示すカルボキシル基、アミノ基が挙げられる。重合停止剤の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0017】
前記製造方法では重合反応触媒を使用しても良く、代表的な重合反応触媒としては、ニトロベンゼン系触媒が上げられる。ニトロベンゼン系触媒のうち好ましい例としては、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン、1−ヨード−4−ニトロベンゼン、2,6−ジヨード−4−ニトロフェノール、ヨードニトロベンゼン、2,6−ジヨード−4−ニトロアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合反応触媒の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し0.01〜20重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0018】
この重合方法を使うことにより、実質的に塩素含有量およびナトリウム含有量を低減させる必要が無く、コストパフォーマンスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることができる。
また本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂は、その他の重合方法によって得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を含んでいてもよい。
【0019】
(B成分:全芳香族ポリアミド繊維)
本発明のB成分として使用される全芳香族ポリアミド繊維として、アラミド繊維と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。アラミド繊維としては、例えばメタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維などが挙げられ、その中でもパラ系アラミド繊維が好ましい。
【0020】
本発明の繊維を構成する全芳香族ポリアミドとは、実質的に一種以上の芳香族ジアミンと一種以上の芳香族ジカルボン酸ハライドによって得られるものである。但し一種以上の芳香族ジアミンと一種以上の芳香族ジカルボン酸に、例えばトリフェニルホスファイトおよびピリジンの系に代表される縮合剤を添加することもできる。全芳香族ポリアミドはパラ型でもメタ型でもよいがパラ型がより好ましい。好ましい芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、ベンチジン、4,4”−ジアミノ−p−ターフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4´−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,10−ビス−(4−アミノフェニル)アントラセンなどが挙げられる。 芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、酸クロリドが特に好ましく、テレフタル酸クロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、4,4´−ジフェニルジカルボン酸クロリド、およびその芳香環に1個以上の低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、などの非反応性官能基を含むものなどが挙げられる。さらに芳香族ジカルボン酸を使用する場合には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、およびその芳香環に1個以上の低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、などの非反応性官能基を含むものなどが挙げられる。さらに本発明で好ましい全芳香族ポリアミドの構造は、その主骨格が下記式で表されるものである。
【0021】
【化1】
(但し、Ar
1、Ar
2は下記一般式[I]〜[IV]からなる群より選ばれる少なくとも1種類の芳香族残基を示す。なおAr
1、Ar
2は互いに同一であっても異なるものであってもよい。また、これらの芳香族残基は、その水素原子の一部がハロゲン原子または低級アルキル基で置換されていてもよい。)
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
なかでも、前記Ar
1、Ar
2の合計を100モル%としたときに、一般式[I]と一般式[II]との合計、一般式[I]と一般式[III]との合計、一般式[I]と一般式[IV]との合計、または一般式[I]が80モル%以上であることが好ましい。より好ましくは一般式[I]と一般式[II]との合計、または一般式[I]と一般式[III]との合計が80モル%以上である。さらに好ましくは一般式[I]と一般式[II]との合計、または一般式[I]と一般式[III]との合計が80モル%以上であり、且つ一般式[II]または一般式[III]が1〜20モル%のものである。
【0026】
紡糸原液となる芳香族ポリアミドドープは、溶液重合を行ったものでも、別途得られた全芳香族ポリアミドを溶媒に溶解せしめたものでもよいが、溶液重合反応を行ったものが好ましい。また、溶解性を向上するために溶解助剤として無機塩を少量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0027】
重合溶媒、あるいは再溶解溶媒としては一般に公知の非プロトン性有機極性溶媒を用いるが、例を挙げるとN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ブチルアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、N−アセチルピロリジン、N−アセチルピペリジン、N−メチルピペリドン−2,N,N´−ジメチルエチレン尿素、N,N´−ジメチルプロピレン尿素、N,N,N´,N´−テトラメチルマロンアミド、N−アセチルピロリドン、N,N,N´,N´−テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドなどがあり、さらに再溶解溶媒としては濃硫酸やメタンスルホン酸などの強酸が挙げられる。
【0028】
全芳香族ポリアミドの重合度は特に制限はないが、溶媒に溶解するならば重合度は大きい方が好ましい。全芳香族ポリアミドを溶液重合する場合、酸成分とジアミン成分との比は実質的に等モルで反応させるが、重合度制御のためいずれかの成分を過剰に用いることもできる。また、末端封鎖剤として単官能の酸成分、アミン成分を使用してもよい。
【0029】
全芳香族ポリアミドを繊維状に成形する場合には、通常全芳香族ポリアミドドープを湿式成形する方法が使用され、該ドープを凝固浴の中に直接吐出する方法またはエアギャップを設けて凝固浴の中に吐出する方法がある。凝固浴には全芳香族ポリアミドの貧溶媒が用いられるが、全芳香族ポリアミドドープの溶媒が急速に抜け出して全芳香族ポリアミド繊維に欠陥ができぬように、通常は良溶媒を添加して凝固速度を調節する。一般には貧溶媒として水、良溶媒として全芳香族ポリアミドドープの溶媒を用いるのが好ましい。良溶媒/貧溶媒の比は、全芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性にもよるが、15/85〜40/60が好ましい。
【0030】
かかる全芳香族ポリアミド繊維の繊維長としては0.1mm以上6mm以下が好ましく、0.5mm以上3mm以下がより好ましい。0.1mm未満では補強効果が十分でなく、耐衝撃性の向上が不十分である場合があり、6mmを超えると製造時の取り扱いが困難になると共に組成物の流動性が劣り、成形性が不良となる場合がある。
【0031】
またかかる全芳香族ポリアミド繊維は集束の有無に関係なく効果を発揮するが、集束されているものは取り扱い易く好ましい。集束のための結合剤としてはポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン樹脂などがあげられ、その中でも芳香族ポリエステルが好ましい。本発明においてかかる耐熱有機繊維は単独あるいは2種以上の混合物として使用できる。
【0032】
B成分の含有量はA成分100重量部に対し、10〜150重量部であり、好ましくは15〜120重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。B成分の含有量が10重量部未満では衝撃強度、引張破断のびが十分に向上せず、150重量部を超えると、混練押出時にストランド切れやサージングなどが起こり生産性または加工性が低下するという問題が生ずる。
【0033】
(C成分:フッ素樹脂)
本発明のC成分として使用されるフッ素樹脂としては、主鎖に炭素鎖を有し、側鎖にフッ素原子の結合を有する重合体、またはそのような重合体を有する共重合体である。具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル−フルオロオレフィン共重合体、エチレン−トリクロロフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンであり、焼成、未焼成のどちらのポリテトラフルオロエチレンでも使用可能であるが、ポリテトラフルオロエチレンは再凝集し易いので、再凝集し難くするために焼成処理等を施した粉末状ものが好ましく、特に焼成処理温度360℃以上で焼成されたポリテトラフルオロエチレンが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの融点は、再凝集し難くするためDSC法で測定して320〜335℃のものが好ましく、より好ましくは325〜330℃である。またポリテトラフルオロエチレンの粒子径は、パークロルエチレン中に分散させた分散液を光透過法により測定する方法で平均0.1〜100μmのものが好ましく、より好ましくは1μm〜20μmである。なおここでいう平均粒径はレーザー回折・散乱法(MICOTRAC法)を用いて測定した重量平均粒径である。また、このポリテトラフルオロエチレンは、数平均分子量としては10万以上のものが好ましく、より好ましくは20万以上のものである。
【0034】
このようなポリテトラフルオロエチレンの例としては、(株)喜多村よりKTL−620、KTL−450Aとして、ダイキン工業(株)よりルブロンL−5、L−2として、また旭アイシ−アイフロロポリマーズ(株)よりL150J、L169J、L170J、L172Jとして、また三井・デュポンフロロケミカル(株)よりテフロン(登録商標)TLP−10F−1として市販されており容易に入手可能である。
【0035】
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、5〜100重量、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは5〜35重量部である。含有量が5重量部未満では十分な衝撃強度、引張破断伸びは得られず、100重量部を超えると混練時にストランド切れやサージングなどが発生する。
【0036】
(その他の成分)
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー成分を含むことができる。好適なエラストマー成分としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)およびシリコーン・アクリル複合ゴム系グラフト共重合体などのコア−シェルグラフト共重合体樹脂、あるいはシリコーン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0037】
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を含むことができる。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチックス、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)等に代表されるエンジニアリングプラスチックス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、などのいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものを挙げることができる。
【0038】
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、リン酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0039】
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、全芳香族ポリアミド繊維以外の充填材を含むことができる。その材料は特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。具体的には例えば、炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。
【0040】
また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、およびエポキシ化合物などのカップリング剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物には更なる導電性を付与するために充填材として、導電性フィラーを含有することができる。その材料は特に限定されるものではないが、導電性フィラーとして、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、先に述べた炭素繊維、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された炭素繊維、無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。
【0042】
金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0043】
金属酸化物の具体例としてはSnO
2(アンチモンドープ)、In
2O
3(アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0044】
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO
2(アンチモンドープ)、In
2O
3(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0045】
カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。
【0046】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。
【0047】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜4mmである。
【0048】
本発明の樹脂組成物の総塩素含有量は、500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度を低下させる場合がある。
【0049】
本発明の樹脂組成物の総ナトリウム含有量は、39ppm以下であることが好ましく、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によるウエルド強度を低下させるだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
【0050】
(成形品について)
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。