特許第6982970号(P6982970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982970
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】建材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20211206BHJP
   E04F 13/075 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   E04F13/08 E
   E04F13/075
   E04F13/08 G
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-68539(P2017-68539)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168642(P2018-168642A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 康彦
【審査官】 齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−005884(JP,A)
【文献】 特開2016−188492(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/067787(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/208564(WO,A1)
【文献】 特開2006−104874(JP,A)
【文献】 特開2013−163764(JP,A)
【文献】 特開2005−220539(JP,A)
【文献】 特開2000−303652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00 − 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に意匠面を有する基材と、
前記意匠面に形成され、表面の60度鏡面光沢度が80以上である塗膜と、
前記塗膜に剥離自在に貼着されている保護シートと、を備え、
前記塗膜の鉛筆硬度がHB以上であり、
前記塗膜と前記保護シートの貼着力が2〜8N/20mmであり、
前記意匠面には、前記保護シートが貼着された被覆領域と、
前記意匠面の一つの端部に沿って形成された、前記保護シートが貼着されていない露出領域を備えている
ことを特徴とする建材。
【請求項2】
前記保護シートの破断強度が35〜60MPaであることを特徴とする請求項1に記載の建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディングボード等の建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁や内壁を構成する建材として、窯業系サイディングボードや金属系サイディングボード、ALCボード(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)などがある。
【0003】
昨今、上記建材における外観意匠性に対する要請が高まっており、そのための方策の一つとして、建材の表面を鏡面のように平滑で光沢のある面に仕上げる鏡面仕上げが検討されている。
【0004】
特許文献1には、鏡面仕上げされた塗膜を備えた建材が開示されている。この建材は、基材の表面に第一鏡面塗膜と第二鏡面塗膜が形成されている。
【0005】
そして、建材においては、複数の建材が積載された状態で保管や輸送されるのが一般的である。保管、輸送の際に建材表面が損傷するのを防ぐため、建材の表面を合紙や保護シートで保護することが行われている。
【0006】
また、建材を建物に施工する際に建材表面が損傷するのを防ぐため、建材の表面を保護した状態で施工することが望まれている。
【0007】
特許文献2には、繊維セメント品である建材の塗膜の表面に合紙等の保護層(保護シート)を貼着することが記載されている。なお、特許文献2においては、塗膜と保護シートの貼着力を15〜190g/inch(換算すると、0.12〜1.47N/20mm)とする旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−188492号公報
【特許文献2】米国特許第8281535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
たとえば、特許文献1等に記載の建材の表面に特許文献2に記載の保護シートを貼着することにより、建材の保管や輸送、さらには施工の際に、建材の表面が損傷するのを防止することができるかもしれない。
【0010】
しかし、特許文献1等に記載の建材の塗膜の表面に特許文献2に記載の保護シートを貼着した場合、特許文献2に記載の保護シートは鏡面仕上げされた塗膜に対する貼着力が弱過ぎ、風等によって保護シートが剥がれる、および、建材の保管や輸送の際に保護シートが捲れたりずれたりして塗膜の表面が露出し、当該表面が損傷する懸念がある。
【0011】
鏡面仕上げされた建材の塗膜に対する貼着力の強い保護シートを適用する方策が考えられる。しかしながら、貼着力の強い保護シートを適用すると、今度は、建材の塗膜表面から保護シートを剥がす際に塗膜が引っ張られ、塗膜の表面形状が変形する別途の課題が懸念される。特に鏡面仕上げされた塗膜ではその表面の平滑性が重要であり、塗膜の表面形状の僅かな変化であっても鏡面仕上げが損なわれてしまう。
【0012】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、保管や輸送、施工の際の塗膜からの保護シートの剥がれや捲れ、ずれを解消でき、かつ、建材の塗膜表面から保護シートを剥がした際に塗膜の表面仕上げが損なわれることを解消できる建材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明の第一の態様による建材は、表面に意匠面を有する基材と、前記意匠面に形成され、表面の60度鏡面光沢度が80以上である塗膜と、前記塗膜に剥離自在に貼着されている保護シートと、を備え、前記塗膜の鉛筆硬度がHB以上であり、前記塗膜と前記保護シートの貼着力が2〜8N/20mmであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第一の態様による建材によれば、塗膜と保護シートの貼着力が2N/20mm以上であることから、建材の保管や輸送、施工の際に保護シートが塗膜表面から剥がれることを解消でき、優れた施工性を享受できる。
【0015】
また、塗膜と保護シートの貼着力が8N/20mm以下であり、かつ塗膜の鉛筆硬度がHB以上と硬いことから、塗膜表面から保護シートを剥がした際の塗膜表面の変形を解消することができる。ここで、「鉛筆硬度」とは、JIS K5600 引っかき硬度試験(鉛筆法)に基づいて測定された硬度である。単に硬度が高ければ傷付き難く、丈夫で性能が良好というわけではなく、硬度が高くなるにつれて屈曲性が低下し、施工、運搬の際に塗膜に割れが生じ易くなり、製品性能を逆に損なうことになり得る。鉛筆硬度の範囲は、柔らかい方から順に6B〜9Hの範囲がある。
【0016】
したがって、塗膜表面から保護シートを剥がした後においても、塗膜表面の60度鏡面光沢度を80以上に維持でき、鏡面のような平滑性を保証できる。
【0017】
塗膜表面の60度鏡面光沢度が80以上である場合、塗膜表面が平滑であり、鏡面のような光沢が奏される。一方、60度鏡面光沢度が90を超えると、建材を壁材として施工した際の光沢が著しくなる。したがって、建材を壁材に適用する場合には、塗膜表面の60度鏡面光沢度を80〜90の範囲に設定するのが好ましい。
【0018】
また、前記意匠面には、前記保護シートが貼着された被覆領域と、前記表面の一つの端部に沿って形成された、前記保護シートが貼着されていない露出領域を備えていても良い。
【0019】
なお、意匠面の端辺に面取り加工が施されている場合、面取り部の内方端辺と外方端辺が存在することになる。露出領域は、面取り部の内方端辺と外方端辺の間の領域(すなわち面取り部)であることの他、面取り部の内方端辺、又は、該内方端辺よりも所定幅内方に入った領域までを含めて露出領域とすることができる。
【0020】
意匠面に、一つの端部に沿って形成された、保護シートが貼着されていない露出領域があることで、施工時に保護シートが隣接する建材と干渉する可能性をより一層低くすることができる。
【0021】
また、「塗膜」は、たとえばアクリル樹脂やウレタン樹脂、フッ素樹脂、紫外線硬化型樹脂などにより構成される塗料を基材の表面に塗布した後、乾燥させることにより形成できる。塗料は1種類のみを用いても良いし、複数種類の塗料を順に基材の表面に塗布した後、乾燥させることにより塗膜を形成しても良い。
【0022】
さらに、「保護シート」は、たとえばポリエチレン等からなる基層と合成ゴム系の粘着層が積層されたものなどを適用できる。
【0023】
ここで、建材を構成する「基材」としては、例えば、セメントを主成分とした窯業系サイディングやALC板、金属を主成分とした金属サイディングや樹脂板などが挙げられる。
【0024】
また、本発明による建材の第二の態様は、前記保護シートの破断強度が35〜60MPaであることを特徴とするものである。
【0025】
保護シートの破断強度が35MPa以上であることから、塗膜と保護シートの貼着力が2N/20mm以上と強いにも関わらず、塗膜表面から保護シートを剥がす際に保護シートが破断する危険性が少なく、優れた施工性が奏される。
【0026】
なお、保護シートの上記破断強度の確保と塗膜表面の保護の観点から、厚みが40〜100μmの保護シートを適用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の建材によれば、建材の保管や輸送、施工の際の塗膜からの保護シートの剥がれや捲れ、ずれを解消でき、かつ、建材の塗膜表面から保護シートを剥がした際に塗膜の表面仕上げが損なわれることを解消でき、優れた施工性を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の建材の実施の形態1であって基材の意匠面側の前面から見た平面図である。
図2図1のII方向矢視図であって、建材の実施の形態1の右側側面図である。
図3】複数の建材の実施の形態1が積載された姿勢で保管および輸送されている状態を示した模式図である。
図4】本発明の建材の実施の形態2の平面図であって基材の意匠面側の前面から見た平面図である。
図5図4のV方向矢視図であって、建材の実施の形態2の右側側面図である。
図6】複数の建材の実施の形態2が積載された姿勢で保管および輸送されている状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の建材の実施の形態1,2を説明する。なお、図示例の基材は、四角形状であって、四辺に接合部を有する、所謂、四方合いじゃくりの基材であるが、本発明の建材を構成する基材がこれ以外の形状形態の基材であってもよいことは勿論のことである。
【0030】
(実施の形態1)
図1において上、下、右、左を示す矢印や、図2において表、裏、上、下を示す矢印は、建材10の各端辺や各面の配向方向を示している。
【0031】
建材10は外壁材であり、表面に意匠面を有する基材1と、意匠面の表面に形成された塗膜2と、塗膜2の表面に貼着されている保護シート3と、から大略構成されており、左右寸法が約1600〜約2000mm、上下寸法t1が約460〜約480mmの長方形状の板材である。
【0032】
基材1は、セメントを主成分とした窯業系サイディング(木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板等)、ALC板(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)、金属を主成分とした金属サイディングや樹脂板などから形成される。
【0033】
基材1は、長方形状であって、表面に、外壁材の光沢のある平坦な表面である意匠面を有するとともに、四辺に接合部を備えた、四方合いじゃくりの板材である。
【0034】
意匠面は、四角形状の平面1hと、平面1hの四方を取り囲む面取り部1gとからなる。
【0035】
平面1hの左側に形成された面取り部1gの左側端辺が、意匠面の左側端辺1aであり、平面1hの右側に形成された面取り部1gの右側端辺が、意匠面の右側端辺1bである。
平面1hの下側に形成された面取り部1gの下側端辺が、意匠面の下側端辺1cであり、平面1hの上側に形成された面取り部1gの上側端辺が、意匠面の上側端辺1dである。
【0036】
意匠面の右側と上側の外方には、裏面側で外方に突出した裏面側接合部1eが形成されている。詳しくは、意匠面の右側端辺1bと上側端辺1dから裏面に向かって凹み、裏面側で外方に突出した裏面側接合部1eが形成されている。
【0037】
意匠面の左側と下側の内方には、裏面側で内方に窪んだ表面側接合部1fが形成されている。詳しくは、意匠面の左側端辺1aと下側端辺1cから裏面に向かって延び、裏面側で内方に窪んだ表面側接合部1fが形成されている。
【0038】
裏面側接合部1eと表面側接合部1fは、合決り結合することが可能な形状である。
【0039】
すなわち、建材10の施工においては、一つの建材10の裏面側接合部1eの上に、隣接する別の建材10の表面側接合部1fを重ねることにより、表面側接合部1fと裏面側接合部1eが合決り接合されるようになっている。
【0040】
基材1の意匠面には、アクリル樹脂やウレタン樹脂、フッ素樹脂、紫外線硬化型樹脂などにより構成される塗料により、塗膜2が形成されている。塗膜2は、1種類の塗料を基材の表面に塗布した後、乾燥させて形成する、又は、複数種類の塗料を順に基材の表面に塗布した後、乾燥させることにより形成することができる。
【0041】
なお、塗膜2は、基材1の平面1hと、平面1hの四方を取り囲む面取り部1gに形成されている。詳しくは、塗膜2は、平面1hの表面全体と、平面1hから四方の面取り部1gの一部にかけて形成されている。
【0042】
塗膜2の表面は、60度鏡面光沢度が80以上であり、かつ、鉛筆硬度がHB以上となっている。なお、鉛筆硬度の範囲は、柔らかい方から順に6B〜9Hの範囲がある。
【0043】
塗膜2の表面には、保護シート3が貼着されている。保護シート3は、基層と粘着層の積層構造を有しており、粘着層が塗膜2の表面に貼着されている。
【0044】
保護シート3を構成する基層は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、不織布、紙などから形成される。一方、粘着層は、合成ゴム系接着剤やアクリル系接着剤から形成される。粘着層は、シート状の基層に対して塗布にて形成されてもよいし、シート状の基層と粘着層形成材料を共押出することにより形成されてもよい。
【0045】
保護シート3は、破断強度が35〜60MPaの範囲に設定されている。また、保護シート3の厚みは40〜100μmの範囲に設定されている。
【0046】
なお、図示を省略するが、基材1の塗膜2の表面に保護シート3を貼着する方法は、基材1の上方にロール状に巻かれた保護シート3を配設するとともにその一端を塗膜2の表面に貼り付け、基材1を上下一対の挟圧ロール間に送り出し、挟圧ロール間を通過させる過程で基材1の塗膜2の表面に保護シート3が貼着される方法にておこなわれる。
【0047】
保護シート3は、四角形状である。保護シート3の左右幅は、平面1hの左右幅よりも広く、意匠面の左右幅よりも狭い。保護シート3の上下幅t4は、平面1hの上下幅よりも狭い。そして、保護シート3は、塗膜2の表面を被覆するよう、平面1hに形成された塗膜2に貼着している。
【0048】
詳しくは、保護シート3の左端辺は、平面1hの左端辺と一致するよう、塗膜2に貼着されている。
【0049】
一方、保護シート3の右端辺は、平面1hの右端辺と隣接する面取り部1gの右端辺1bの間であって、面取り部1gの表面から離れた位置となるよう、保護シート3が塗膜2に貼着されている。
【0050】
保護シート3の下端辺は、平面1hの下端辺よりも内方となるよう、塗膜2に貼着されている。保護シート3の下端辺と平面1hの下端辺は平行とされているとともに、距離t3だけ離れている。すなわち、保護シート3の下端辺と平面1hの下端辺の間には、保護シート3が貼着されていない露出領域4が形成されている。
【0051】
露出領域4は、意匠面の下側端辺1cに沿って形成されている。
【0052】
保護シート3の上端辺は、平面1hの上端辺よりも内方となるよう、塗膜2に貼着されている。保護シート3の上端辺と平面1hの上端辺は平行とされているとともに、距離t3だけ離れている。すなわち、保護シート3の上端辺と平面1hの上端辺の間には、保護シート3が貼着されていない露出領域4が形成されている。
【0053】
露出領域4は、意匠面の上側端辺1dに沿って形成されている。
【0054】
また、平面1hの四方の面取り部1gの塗膜の表面領域も保護シート3が貼着されておらず、露出領域4となっている。
【0055】
よって、意匠面の塗膜は、保護シート3が貼着されている被覆領域と、保護シート3が貼着されていない露出領域4とを備える。
【0056】
なお、建材10において、塗膜2と保護シート3の貼着力は2〜8N/20mmの範囲に設定されている。
【0057】
塗膜2と保護シート3の貼着力が2N/20mm以上であることから、建材10の保管や輸送、施工の際に保護シート3が塗膜2の表面から剥がれにくい。また、塗膜2と保護シート3の貼着力が8N/20mm以下であり、かつ塗膜2の鉛筆硬度がHB以上と硬いことから、塗膜2の表面から保護シート3を剥がした際の塗膜2の表面の変形を解消することができる。そのため、塗膜2の表面から保護シート3を剥がした後においても、塗膜2の表面の60度鏡面光沢度を80以上に維持でき、鏡面のような平滑性を維持できる。
【0058】
また、保護シート3の破断強度が35MPa以上であることから、塗膜2と保護シート3の貼着力が2N/20mm以上と強いにも関わらず、保護シート3を破断させることなく塗膜2の表面から剥がすことができる。
【0059】
また、建材10を表面側から見た際に、保護シート3が基材1の意匠面の寸法内に収まっていることから、施工時に建材10の裏面側から風が吹いた場合でも保護シート3が風によって剥がれにくい。
【0060】
さらに、保護シート3が裏面側接合部1eにはみ出さない態様で塗膜2の表面に貼着されていて、適宜の露出領域4を備えていることにより、施工時に保護シート3が隣接する建材10の間に挟まれて、保護シート3が剥がしにくくなることが防止される。
【0061】
また、図1で示すように、保護シート3の右端辺が、意匠面の右側端辺1bよりも内方で、面取り部1gに貼着されていないことで、施工後に保護シート3を剥ぎ取る際に、保護シートの右端辺をつまんで容易に剥ぎ取ることが可能になる。
【0062】
なお、図1において、各寸法t1を約460〜約480mm、t2を約450〜約460mm、t3を約0〜約2.5mm、t4を約445〜約460mmに設定することができる。
【0063】
次に、図3を参照して、複数の建材10が積載された姿勢で保管および輸送されている状態を説明する。
【0064】
図示例では、二つの建材10を、互いの表面が対向し、積載した状態で梱包している。より具体的には、二つの建材10を、互いの表面が対向し、保護シート3同士を当接させるとともに、一方の建材10の露出領域4が他方の建材10の保護シート3に対向するようにして双方の建材10が位置決めされ、結束材20で結束されている。
【0065】
結束材としては、ポリプロピレン製バンドやポリエチレン製バンドなどの樹脂バンドや、ストレッチフィルムやシュリンクフィルムなどの樹脂フィルムや、紙製バンドや布製バンドなどが使用できる。
【0066】
一方の建材10の露出領域4が他方の建材10の保護シート3に対向していることで、双方の建材10の露出領域4(露出している被膜2)が対向する保護シート3で防護される。
【0067】
(実施の形態2)
図4、5に図示する建材10Aは、保護シート3の大きさと、平面1hの塗膜2の全面にのみ保護シート3が貼着されている点(平面1hには露出領域4が存在しない点)で建材10と相違している。他は建材10と同じである。
【0068】
建材10Aにおいて、保護シート3の右端辺をつまんで保護シート3を容易に剥ぎ取ることはできないが、他の作用効果は建材10と同様に奏することができる。
【0069】
図6は、複数の建材10Aが、互いの表面が対向し、積載された姿勢で保管されている状態を示している。同図において、二つの建材10Aの保護シート3同士を当接させた状態において、一方の建材10Aの面取り部1gが他方の建材10Aの保護シート3に対向するように双方の建材10Aが位置決めされ、結束材20で結束されている。
【0070】
図示例の場合においても、一方の建材10Aの露出領域(面取り部1g)が他方の建材10Aの保護シート3に対向していることで、梱包時や開梱時に、一方の建材に対して他方の建材が傾斜し、一方の建材の露出領域に他方の建材が接触しそうになっても、露出領域が対向する保護シート3で防護される。
【0071】
(検証実験とその結果)
本発明者等は、種々の建材を製作し、建材を構成する塗膜や保護シート等の各種性能等を評価する実験をおこなった。
【0072】
<試験条件>
木質セメント板からなり、図1に示す形状の基材の表面に、紫外線硬化型アクリル樹脂塗料を130〜220g/m、ウレタン樹脂塗料を90〜130g/ m、フッ素樹脂塗料を90〜130g/ mの順で塗布し、それぞれ乾燥させて塗膜を形成した。そして、塗膜の上に保護シートを貼着した。なお、保護シートの基層に関し、試料2、6、9、11はポリエチレンから形成し、試料1、3、4、5、8、10はポリオレフィンから形成し、試料7、12は別のポリオレフィンから形成した。また、保護シートの粘着層はいずれの試料ともに合成ゴム系接着剤から形成し、粘着層の厚みと組成を変化させることで各試料の粘着力を調整した。さらに、保護シートの貼着形態は図1で示す建材10と同様の態様とした。以下、各種評価方法を示すとともに試験結果を表1に示す。
【0073】
<評価方法>
以下で記載する試料に対して試験および測定等をおこない、各種性能の評価をおこなった。
【0074】
[塗膜の鉛筆硬度]
JIS K5600 引っかき硬度試験(鉛筆法)に則して測定し、塗膜表面のすり傷の有無、および程度で評価した。
【0075】
[塗膜表面の60度鏡面光沢度]
JIS K5600−4−7に則し、ハンディ光沢計(IG−320 株式会社堀場製作所製)を用いて、各試料の塗膜の最表面の60度鏡面光沢度を測定した。なお、本検証実験では、保護シートを貼着する前と、保護シートを剥がした後に塗膜の最表面の60度鏡面光沢度を測定している。表中における数値は60度鏡面光沢度の値を示しており、表中の「○」は60度鏡面光沢度が80以上のもの(良好)であり、「×」は80未満のもの(不可)である。
【0076】
[保護シートの破断強度]
引張試験機を用いて、保護シートを速度200mm/秒で引張り、保護シートが破断した際の強度を測定した。
【0077】
[塗膜と保護シートの貼着力]
塗膜に貼着された保護シートを、引張試験機を用いて速度0.3m/分で引張り、保護シートが剥離した際の強度を測定した。
【0078】
[保護シートの破断]
塗膜と保護シートの貼着力を測定した際に、保護シートが破断したもの(不可)を表中で「×」とし、それ以外のもの(良好)を「○」としている。
【0079】
[塗膜の表面状態]
二枚の試験体を双方の保護シートが向かい合うようにして重ね合わせた。重ね合わせた状態で、上から0.2kg/cmの荷重を48時間かけた。その後、双方の保護シートを剥がし、試験体を蛍光灯の下に置き、塗膜表面に保護シートの糊跡や転写跡が有るかを目視で観察した。この目視観察において、塗膜表面に保護シートの糊跡や転写跡が無いもの(良好)を表中で「○」とし、それ以外のもの(不可)を「×」としている。
【0080】
[輸送後の保護シートの状態]
二枚の試験体を双方の保護シートが向かい合うようにして重ね合わせて結束材で結束し、一つの梱包体とした(図3と同様の態様とした)。この梱包体20体をパレットの上に積載した状態で車に積載し、約500km輸送した。そして、輸送した後に開梱し、各試験体の状態を観察した。観察において、保護シートのずれや破れ等が観察されなかったもの(良好)を表中で「○」とし、保護シートのずれや破れ等が観察されたもの(不可)を「×」とした。
【0081】
[耐風試験]
試験体に10m/秒の強さで風を吹付けて試験体の状態を観察した。観察において、保護シートの浮きや剥がれ等が観察されなかったもの(良好)を表中で「○」とし、保護シートの浮きや剥がれ等が観察されたもの(不可)を「×」とした。
【0082】
<試験結果>
[表1]
【0083】
表1に示すように、塗膜表面の鉛筆硬度がHB以上であり、塗膜と保護シートの貼着力が2〜8N/20mmの範囲にある試料1〜7は、全ての評価項目を満足することが実証された。
【0084】
これに対し、塗膜と保護シートの貼着力が1N/20mmである試料8、9は、耐風試験を満足することができなかった。
【0085】
塗膜の鉛筆硬度がBである試料10は、塗膜の表面状態と保護シートを剥がした後の塗膜表面の60度鏡面光沢度を満足することができなかった。
【0086】
塗膜と保護シートの貼着力が9N/20mmである試料11、12は、保護シートの破断、塗膜の表面状態と保護シートを剥がした後の塗膜表面の60度鏡面光沢度を満足することができなかった。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。たとえば、実施の形態1において、面取り部1gに鏡面仕上げの塗膜を設けず、平面1hにのみ鏡面仕上げの塗膜を設けても良い。また、面取り部1gの全面にも鏡面仕上げの塗膜を設けても良い。また、内装材として用いても良い。
【符号の説明】
【0088】
1…基材、1a…左側端辺、1b…右側端辺、1c…下側端辺、1d…上側端辺、1e…裏面側接合部、1f…表面側接合部、1g…面取り部、2…塗膜、3…保護シート、4…露出領域、10,10A…建材、20…結束材
図1
図2
図3
図4
図5
図6