(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
面材(I)が、一方の表面層として平均繊維径が5〜50μmである熱可塑性合成繊維層(A)、中間層として平均繊維径が1〜10μmである熱可塑性合成極細繊維層(B)、他方の表面層として平均繊維径が5〜50μmである熱可塑性合成繊維を含む層(C)の3層からなる繊維集合積層体、又は該繊維集合積層体を2〜10枚重ね合わせた繊維集合積層体複合体である、請求項1に記載の吸音性積層体。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡材は、従来の中実の樹脂材料や金属材料を代替する材料として、自動車や電子機器の部材、容器の構造材料として使用されている。これらの樹脂発泡材の特長として低密度、高断熱性、緩衝性があり、主にこれらの特性が有効に利用されている。一方、樹脂発泡材に期待される特性として吸音性、遮音性が挙げられるが利用範囲は従来限られたものであった。
【0003】
その理由としては、吸音性、遮音性は発泡体全般に発現する特性ではなく、気泡構造に依存し、発泡体構造の隣接する気泡が樹脂の隔壁で隔てられた構造である独立気泡構造の発泡体は剛性、機械強度に優れる一方で吸音、遮音性能が非常に低いのに対して、気泡の隔壁が破壊または消失した連通気泡構造の発泡体は吸音、遮音性能に優れる一方で剛性、機械強度に劣るというように各性質が互いに相反する傾向があり、それらの両立が困難な点が挙げられる。
【0004】
連通気泡型の樹脂発泡体の例としてはウレタン樹脂、メラミン樹脂が有り主な用途は、流体を吸収するスポンジ用途や柔軟性、衝撃吸収性を利用した緩衝材用途である。これらは吸音性に優れるため無機材料と比較して軽量な吸音材としても広く使用されるが剛性が低いため、自立した構造材料としてではなく主に他の構造材との積層材の構成層として使用されている。
【0005】
発泡体の主な製造方法としては、ビーズ発泡成形法、押出発泡成形法が有り、ビーズ発泡成形法は樹脂粒子を予備的に発泡させて得られた粒状の樹脂発泡粒子を所望の形状の成形用型内に充填した後、樹脂発泡粒子の熱膨張による融着により成形品を形成させる機構により成形させる方法であって、押出発泡成形法と比較した利点として様々な複雑な3次元形状の発泡体製品が高生産性で製造可能な点、切削加工で発生する材料ロスの発生が無い点、および成形用金型が低コストで製造可能な点が挙げられ種々の構造部材用発泡材の成形方法として特に好ましい方法である。しかしビーズ発泡成形法の発泡成形プロセスは気泡セルが樹脂膜で隔てられた独立気泡であり気泡の膨張に起因する発泡粒子間の相互に融着する機構によるため、通常得られる発泡体の気泡構造は基本的に独立気泡構造となるため、吸音性能に劣るのが一般的である。
【0006】
一方、以下に例示するようにビーズ発泡成形法により発泡体内に連続した空隙構造すなわち、連通空隙構造を設けた発泡体およびその製造方法が提案され、吸音性発泡材として使用できることが知られている。
【0007】
特許文献1記載の方法では、柱状ポリオレフィン系樹脂発泡体を配向のない不規則な方向に位置させた状態で相互に融着させ連通空隙を持つ成形体を得るが、樹脂発泡粒子の形状が細長く、金型内に発泡粒子を充填する際に充填不良を引き起こし易い点、成形体の空隙率と成形体の融着強度のバランスを取りにくい点等の問題が有り実用化することは難しかった。
【0008】
特許文献2記載の方法では、特定の嵩密度、真密度の関係を満足し、形状パラメーターが特定条件を満足する熱可塑性樹脂発泡粒子に、物理発泡材を含浸させて空隙構造を持つ粒状の樹脂発泡粒子を型内発泡してなる連通した空隙を有する熱可塑性樹脂発泡成形体が透水性、吸音性に優れると記載されている。しかし例示されている発泡体はエチレンプロピレンランダムポリマーおよび低密度ポリエチレンの中空および十字型断面の粒状発泡体により空隙を形成させた発泡体であり、強度および、吸音性能の具体的記載はなく空隙構造の吸音材としての適否は不明である。
【0009】
特許文献3記載の方法では、樹脂発泡粒子の多数個が隣接する樹脂発泡粒子表面の一部で面接合し全体容積に対して15〜40%の容積空隙率を有して一体化させる方法では、発泡性樹脂粒子の表面に該粒子の軟化温度より低い温度で熱接着し得る接着用樹脂を添着することにより製造されるが、樹脂発泡粒子に対して熱接着性樹脂を添着させる工程が必要となり生産性が低下するほか、強度と空隙率のバランスにおいて十分でなく、かつ空隙率は40%以下に限られる欠点が有った。例示されている発泡体は塩化ビニリデン系共重合体のみであり且つ請求項記載の吸音性能を得るための発泡体の構造は示されていない。
【0010】
特許文献4記載の方法では、筒状形状のポリオレフィン系樹脂の樹脂発泡粒子の3次元的形状、サイズ、樹脂発泡粒子の嵩密度と真密度の関係を特定範囲とした樹脂発泡粒子を融着一体化することにより、透水性に優れたポリオレフィン系発泡体を生成する技術が開示されているが、吸音材としての性能の開示はなく空隙構造の適否は不明である。
【0011】
特許文献5記載の方法では、成形体の空隙率、及び嵩密度を特定の範囲とした中空円筒樹脂発泡粒子を型内発泡することにより広い周波数範囲で優れた吸音性を有する成形体を得ることができることが記載されている。しかし吸音性能は不充分であり成形体の厚みを必要とするほか、機械強度等、物性については開示されていない。
【0012】
特許文献6記載の方法では、予備発泡前の発泡剤の樹脂粒子への含浸状態を制御し、鼓形状の熱可塑性樹脂発泡粒子を製造後、型内で発泡融着させ空隙を持つ発泡体粒子を製造する方法であり、形状が鼓型に限られるため発泡成形体の空隙の構造に制限が大きく、発泡剤の樹脂粒子への含浸状態の制御が難しい欠点が有った。
【0013】
以上の特許文献1〜6のようにポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの汎用樹脂について連通空隙を形成する粒状発泡体を融着させて形成された発泡体の吸音効果発現を示唆する先行文献は存在するが、発泡体の微細構造と吸音性能の関係は不明確であり特に連通した空隙の構造の特定と空隙を形成する発泡ビーズの構造としてどのような形状が適するかについても開示されていない。
【0014】
その他の一般的樹脂においては、空隙構造を導入した発泡成形体およびその製造技術は未確立と考えられ、特に汎用樹脂以外の樹脂例えば、耐熱変形性、耐溶剤性、難燃性などの優れた機能を持ついわゆるエンジニアリング樹脂を材料とする連通空隙を形成する樹脂発泡粒子およびそれを融着させて形成された連通空隙を有する発泡成形体の製造技術、発泡成形体の吸音性能は知られていないのが現状であった。
【0015】
一方、吸音性能の高い防音材として、複数の材料を積層させた積層体が知られており、以下にその例を挙げる。
【0016】
特許文献7記載の微細孔を有する合成樹脂層からなる表皮部が不織布または連続樹脂発泡体からなる基材の少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接被着されてなる積層体であり、基材としては連続樹脂発泡体として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の発泡体または架橋発泡体が挙げられているが硬質でない、または耐熱性の低い材料に限られる。また、吸音性の点で好ましい基材の例として、軟質ウレタンフォームが好ましいと記載され、用途例として車両用内装として貼り付け材が挙げられている事から明らかなように自立型の構造材料として使用される材料では無い。
【0017】
特許文献8記載の積層体は繊維系吸音材、遮音層、発泡樹脂の順に積層させた防音材が記載されているが、繊維系吸音層としては、低融点ポリエステル、細綿ポリステル、ポリエステル、ウール、アクリル、コットン等の繊維類を反毛材としてバインダー繊維でフェルト化した反毛フェルトが挙げられ、繊維系吸音層の存在下に発泡層を形成させる際に中間層として、遮音層を形成させるとしている。したがって、基材層として選択可能は樹脂が限られるとともに、注型反応硬化による製法による為生産性は低いと考えられる。また、基材となる発泡樹脂の例として、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンが記載されているように、硬質の構造材料ではなく、且つ耐熱性の低いものに限られる。
【0018】
特許文献9記載の複合吸音材は、木綿繊維を含む不織布層の片面に発泡樹脂層を積層した積層体であり、木綿繊維を含む不織布層の例としては、木綿繊維と熱接着性繊維とを構成繊維とし、これらの繊維が混合してなるもので木綿繊維以外の繊維としてポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、レーヨン等の化学繊維、麻、羊毛、絹等の天然繊維があげられている。基材となる発泡樹脂層としては発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンが記載されているが硬質の構造材料ではない、または耐熱性が低いものに限られる。
【0019】
特許文献10に記載されている短繊維不織布と合成樹脂フィルムからなる吸音フィルム層とが積層された積層材は不織布の片面に20〜60μ厚みのポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のフィルムを積層するものであり、積層体に入射した音波がフィルムの振動に変換される効果を利用するものであるが表層のフィルムは薄層であり基材層は不織布層であり積層体は硬質の構造材料として使用されるものではない。
【0020】
特許文献11に記載されている防音パネルは多数の連通孔を有する硬質の合成樹脂板の一方の面に遮音シート、他方の面に多孔シートを積層するものであり構造材料であるが、合成樹脂板の基材樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル系樹脂等であって、耐熱性が低いものまたは熱硬化性樹脂に限られる。また多孔シートは合成樹脂板の表面保護のため積層され、不織布が記載されているが、吸音効果を想定したものではなく具体的例示はない。また遮音シートは樹脂シートで有り不織布ではない。したがって多数の連通孔を有する硬質合成樹脂板を基材とする積層体の吸音効果について何ら記載されていない。
【0021】
特許文献12に記載されている表皮付き発泡成型体は、通気性を有さないか通気性に乏しい素材からなる表皮材または外面側が織布、不織布からなる表皮材を金型内に装着後、金型内に熱可塑性樹脂発泡体からなる粒子、チップ状物、粉砕物を充填し、該発泡体を融着させるとともに発泡体と表皮材とを融着一体化させる方法により得られる積層体でるあるが、粒子の形状を選ぶ事によって空間率の高い状態とする事により型内成形を可能とするものであって表皮材として外面側が不織布からなる表皮材が記載されているが、連通孔を有する熱可塑性発泡体と不織布の積層体については何ら記載されておらず、具体的例示はポリプロピレン系熱可塑性エラストマー等の樹脂シートのみである事からも積層による吸音効果の改良については何ら示唆されていない。また、基材樹脂として例示されている樹脂は、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂に限られ、耐熱性が高い樹脂は含まれていない。
【0022】
しかしながら、近年、吸音性能に更に優れる薄い構造体が求められているのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[積層体]
本発明の積層体は、繊維集合体を含む面材(I)と、連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材(II)とを含む積層体であって、
上記繊維集合体は、目付けが10〜300g/m
2、平均みかけ密度が0.10〜1.0g/cm
3、平均繊維径が1〜50μm、通気度が2〜70cc/(cm
2・sec)であり、
上記樹脂発泡成形体が、樹脂を含む凹外形部を有する樹脂発泡粒子であって、上記樹脂の密度ρ
0と上記樹脂発泡粒子の真密度ρ
1との比ρ
0/ρ
1が2〜20であり、上記樹脂発泡粒子の真密度ρ
1と上記樹脂発泡粒子の嵩密度ρ
2との比ρ
1/ρ
2が1.5〜4.0である上記樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した上記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率が15〜80%であり、
厚みが3〜80mmである。
【0034】
本実施形態の積層体は、面材(I)、基材(II)以外にも、ガスバリア層、帯電防止層、表面硬化層、電磁遮蔽層、滑剤層、導電性層、誘電体層、電気絶縁層、防曇層、磁性体層、印刷層、加飾層等の他の層を含んでいてもよい。中でも、吸音性能に一層優れる観点から、面材(I)と、基材(II)とのみからなることが好ましい。
【0035】
本実施形態の積層体の厚みは、吸音性能、剛性、強度と軽量性のバランスに優れる観点から、3〜80mmであり、5〜50mmであることが好ましく、より好ましくは10〜30mmである。
【0036】
(基材(II))
本実施形態の積層体を形成する、連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材(II)について以下に説明する。上記連通空隙を有する樹脂発泡成形体は、下記のように樹脂発泡粒子を融合成形する事により得られる樹脂発泡成形体であることが好ましい。
上記基材(II)は、上記樹脂発泡成形体を含む。中でも、上記樹脂発泡成形体のみからなることが好ましい。上記基材(II)は、上記樹脂発泡成形体以外に、無機又は有機の粒子、難燃剤、安定剤などの添加剤を含む樹脂層を含んでいてもよい。
【0037】
上記基材(II)の厚みは、吸音性能、剛性、強度と軽量性のバランスに優れる観点から、2〜78mmであることが好ましく、より好ましくは5〜28mmである。
【0038】
−樹脂発泡粒子−
上記樹脂発泡粒子は、凹外形部を有すること(少なくとも一方の方向から見た外形において、凹形状部を有すること)が必要である。
なお、本明細書において凹外形部を有するとは、樹脂発泡粒子の正射影像が凹図形となる正射影像が得られる方向が存在することを意味する。また、本明細書において凹図形とは、凹図形となる正射影像図形の外表面上の2点間を結んだ線分の少なくとも一部(好ましくは全線分)が樹脂発泡粒子の外部領域を通る線分となる2点を選ぶことが可能であることを言う。凹図形の例を
図1に示す。
また、上記凹外形部は、発泡時に形成される発泡気泡と異なる構造である。
【0039】
上記凹外形部は、一個でも複数個でも良い。
上記凹外形部は、上記樹脂発泡粒子の表面を連結する一個または複数個の貫通孔であっても良いし、粒子を貫通しない一個または複数個の凹部であっても良いし、一個または複数個の貫通孔および一個または複数個の凹部が混在していても良い。ここで、貫通孔とは、樹脂発泡粒子外表面に形成された2つの穴を結ぶ空洞であってよく、該空洞が映る正射影像において、該空洞が樹脂発泡粒子に囲まれている正射影像(空洞が樹脂発泡粒子内に孤立した空洞を形成する正射影像)が得られる構造としてよい。
【0040】
上記樹脂発泡粒子において、上記凹部としては、凹部が確認できる正射影像において、上記樹脂発泡粒子が占める領域に対する、該凹部に少なくとも2点以上で外接する直線と樹脂発泡粒子の外表面とで囲まれた領域Aの割合(領域A/樹脂発泡粒子が占める領域)が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。中でも、凹部の最深部を含む正射影像において、上記範囲を満たすことが好ましい。ここで、凹部の最深部は、凹部に少なくとも2点以上で外接する直線の垂線の凹部外表面との交点までの距離が最も長くなる部分としてもよい。
【0041】
凹外形部が貫通孔の場合は、樹脂発泡粒子の貫通孔が確認できる正射影像において、貫通孔の面積が、樹脂発泡粒子の正射影像の全面積に対して、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。中でも、樹脂発泡粒子の貫通孔の面積が最も大きくなる正射影像において、上記範囲を満たすことが好ましい。また、上記貫通孔は、貫通する空洞形状が確認できる断面において、該断面上の樹脂発泡粒子の全面積に対して、空洞形状の面積が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。上記貫通孔は、空洞形状の面積が上記を満たす断面が少なくとも一面以上あることが好ましく、全断面で上記範囲を満たすことがより好ましい。
【0042】
上記凹外形部が、上記の凹部の条件及び/又は上記貫通孔の条件を満足するように樹脂発泡粒子の形状を選択することにより、融着成形後の樹脂発泡成形体の連通空隙(連続する空隙、連通する空隙)を良好に形成させることができる。
【0043】
上記樹脂発泡粒子の凹外形部は貫通孔であっても貫通孔でなくとも良いが、樹脂発泡粒子は凹部を有する形状であることが特に好ましい。凹部を有する形状をとることにより従来の樹脂発泡粒子にはなかった充填状態が有られ、成形後に得られる樹脂発泡成形体の連通空隙の構造を吸音性能、機械的強度の両方に特に優れたバランスを実現することができる。
【0044】
上記凹部を有する形状として特に優れた形状は、樹脂発泡粒子に溝状凹部を設けた構造が挙げられ、樹脂発泡成形体製造時に樹脂発泡粒子間を熱融着させる際に溝状凹部が隣接する樹脂発泡粒子がかみ合った充填状態となり接合されることにより、樹脂発泡粒子間の接合面積が大きく強度の高い樹脂発泡成形体を形成すると同時に、隣接する樹脂発泡粒子の溝が連結された形態で接合される場合に樹脂発泡粒子間にわたる空隙、すなわち連通空隙が形成される。
上記溝状凹部としては、例えば、中空の略円の一部を切り取った形状(C形状、U形状等)の断面(
図1)を重ねた形状(
図2(a)(b))、中空の略多角形(三角形、四角形等)の一部を切り取った断面(
図1)を重ねた形状等が挙げられる。ここで、上記中空の略円及び中空の略多角形における中空とは、略円であってもよいし、略多角形であってもよいが、中空を囲む形状と同一形状であることが好ましい。また、上記中空の形状の中心と、上記中空を囲む形状の中心とが重なる形状(例えば、同心円等)ことが好ましい。
【0045】
上記凹部の例としては、例えば、一定の厚みを持つ円盤形状を湾曲させた鞍状の形状、円盤を面外方向に湾曲または折り曲げて形成される形状、円筒状の外側面に単一又は複数の凹部を設けた構造等が挙げられる。粒子の形状のうち、製造の容易性が有り、生産性に優れ、形状を制御し易い点で特に好ましい粒子形状の例として、円柱からその外径より小さい外径を有する共通の軸を持つ同じ高さの円柱を切除した円筒の、軸方向から見て一定の角度以内の部分を切り出し切除した形状(
図2)等が挙げられる。以下ではこの形状をC型断面部分円筒状と呼び、この形状をもとに小変形させた実質的に同形状の形状であっても樹脂発泡成形体に同等の空隙を形成させることが可能であり、上記条件を満足すれば本発明の範囲内として利用可能である。
図2に、切り出し切除する部分の大きさが異なるC型断面部分円筒状の好ましい例を挙げる。
【0046】
上記凹部は、樹脂発泡粒子の特定の一方向に対して断面を連続して形成した場合に、同じ形状であることが好ましい。例えば、
図2に示すように、樹脂発泡粒子の一方向(
図2の上下方向、押出方向)に対する断面における凹部の形状と、該一方向にずらして形成した異なる断面における凹部形状とが同じであることが好ましい。
【0047】
上記樹脂発泡粒子が凹外形部を持つことは光学顕微鏡により樹脂発泡粒子の透過画像を粒子の観察方向を変えながら観察し判定することにより確認することができる。
【0048】
上記樹脂発泡粒子において、樹脂発泡粒子に含まれる樹脂の密度ρ
0と樹脂発泡粒子の真密度ρ
1との比ρ
0/ρ
1が2〜20であることが必要であり、好ましくは2.2〜18、より好ましくは2.5〜15である。ρ
0/ρ
1が2未満であると吸音性能発現が十分でなく、20を超えると機械的強度が低下し好ましくない。
【0049】
上記樹脂発泡粒子において、樹脂発泡粒子の真密度ρ
1と樹脂発泡粒子の嵩密度ρ
2との比ρ
1/ρ
2が1.5〜4.0であることが必要であり、好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは2〜3である。ρ
1/ρ
2が1.5未満であると吸音性能が十分でなく、4.0を超えると機械的強度が低下し好ましくない。
【0050】
本明細書において嵩密度ρ
2とは、所定重量Mの樹脂発泡粒子をその重量Mにおける樹脂発泡粒子の嵩体積V
2で除した値M/V
2であり、真密度ρ
1とは所定重量Mの樹脂発泡粒子をその重量Mにおける樹脂発泡粒子の真体積V
1で除した値M/V
1である。上記嵩体積V
2とは、上記所定重量Mの樹脂発泡粒子をメスシリンダー内に充填してメスシリンダーを振動させ、その体積が恒量に達した時の目盛りを読んだ値を指す。また真体積V
1とは、上記所定重量Mの樹脂発泡粒子を、樹脂発泡粒子を溶解しない液体の入ったメスシリンダー中に沈めた時に上記液体の増量した部分の体積をいう。
樹脂の密度ρ
0とは、発泡前の原料樹脂の密度であり、水没法により重計を使用して測定される密度である。
本明細書においてρ
0、ρ
1、ρ
2はすべて、20℃、0.10MPaの環境下において測定し得られた値を意味するものとする。
【0051】
上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は、100gの樹脂発泡粒子をJIS Z8801で規定される標準ふるいを用いた分級法により測定することができる。上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は1.0〜4.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.0mmである。平均粒子径が1.0mm未満であると製造工程での取り扱いが難しく、4.0mmを超えると複雑な成形品の表面精度が低下する傾向が現れ好ましくない。
なお、本実施形態の樹脂発泡粒子の形状は、特に限定されず、様々な形状として良い。
【0052】
上記樹脂発泡粒子の製造方法としては、熱可塑性樹脂の熱可塑性を利用した方法、固体状態の粒子の切削などの後加工による方法などが可能であり、粒子に所望の外形を付与できる方法であれば適用可能である。その中で生産性に優れ、安定した形状の粒子が製造可能な方法として、特殊形状の吐出断面を設けたダイを使用した異形押し出し法が好適に使用できる。特殊形状の吐出断面を設けたダイを有する押出機により熱可塑性樹脂を溶融押し出し、ストランドカットまたはアンダーウォーターカットなど工業的に通常使用されている方法によりペレタイズして得られたペレットを発泡させ樹脂発泡粒子を得る方法、および押し出し機に発泡剤をバレル途中から注入し吐出と同時に発泡させ、冷却後、アンダーウォーターカットまたはストランドカットし樹脂発泡粒子を直接得る方法、押出機内で溶融させ所望の断面形状を有するダイスから押し出し、冷却後ペレタイザーにより所定の長さに切断することにより基材樹脂ペレットを製造し、該基材樹脂ペレットに発泡剤を含浸させ、加熱することにより所定の発泡倍率で発泡させる方法、等従来公知の方法を任意に応用して製造することができる。
【0053】
上記樹脂発泡粒子は樹脂を含む。上記樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンとのブレンド又はグラフトポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、ハイインパクトポリスチレンなどのスチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、後塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン又はプロピレンと塩化ビニルのコポリマーなどの塩化ビニル系重合体、ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、単独および共重合ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、単独および共重合ポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メタクリルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0054】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒またはメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリエチレン系樹脂が、それぞれ単独であるいは混合して用いられる。
【0055】
上記樹脂としては、20℃における表面張力が37〜60mN/mであることが好ましく、より好ましくは38〜55mN/mである。表面張力が上記範囲内であれば、力学的強度の高い吸音性の樹脂発泡成形体が得られ、特に好ましい。
樹脂の表面張力は、JISK6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」記載の方法において温度を20℃に変更した方法により測定される値を用いる。
【0056】
特に好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル系樹脂、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)等で表面張力が上記範囲内である熱可塑性樹脂が挙げられ、中でも、耐熱性、耐薬品、耐溶剤性に優れ、高耐熱発泡構造材料用途に適した樹脂としてポリアミド樹脂、耐熱性、高温剛性に優れた樹脂としては、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)が挙げられる。
【0057】
上記熱可塑性樹脂は、無架橋の状態で用いても良いが。パーオキサイドや放射線などにより架橋させて用いても良い。
【0058】
上記樹脂発泡粒子は必要に応じて、通常の配合剤、たとえば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料などの着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭カル等の無機充填剤等を目的に応じて含んでいてもよい。
【0059】
上記難燃剤としては、臭素系、リン系等の難燃剤が使用可能であり、上記酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤が使用可能であり、上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系等の光安定剤が使用可能である。
【0060】
上記樹脂発泡粒子の平均気泡径を調節する必要がある場合は、気泡調整剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、無機造核剤には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレー、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等があり、その使用量は通常、樹脂発泡粒子の原料全量に対して、0.005〜2質量部を添加する。
【0061】
上記樹脂発泡粒子の製造時に用いる発泡剤としては、揮発性発泡剤等が挙げられる。上記揮発性発泡剤としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の鎖状または環状低級脂肪族炭化水素類、ジシクロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、1−クロロ−1、1−ジフルオロエタン、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、空気、二酸化炭素等の無機ガス系発泡剤等が挙げられる。
【0062】
−発泡成形体−
上記樹脂発泡成形体は、上記樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体である。即ち、本実施形態の樹脂発泡成形体は、少なくとも2個以上の上記樹脂発泡粒子が互いに融着した部分を少なくとも有する成形体である。融着した樹脂発泡粒子間には融着した部分及び空隙部がある。
また、上記樹脂発泡成形体は、融着した上記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率が15〜80%(より好ましくは30〜70%)であることが好ましい。
上記空隙率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0063】
上記樹脂発泡成形体において、上記樹脂発泡粒子が、樹脂発泡成形体全体に占める割合が、98重量%以上であれば実質的に凹外形部を持つ樹脂発泡粒子の性能が得られるため好ましい。
【0064】
上記樹脂発泡成形体は、上記樹脂発泡粒子の集合体が相互に融着して得られる成形体であって、樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有することが必要である。本明細書において「連続した空隙部」とは、融着している樹脂発泡粒子間に相互に連続した空隙部が形成された結果として、樹脂発泡成形体の相対する2面間(2表面間)に連続した空隙が生じ流体が流動可能な状態となっていることを意味する。上記樹脂発泡成形体は、少なくとも一方向に連続した空隙部を有することが好ましく、厚み方向に連続した空隙部を有することが好ましい。上記連通空隙としては、厚み10mmの平板状樹脂発泡成形体試料を用いて、国際規格ISO9053に規定されているAC法により測定される単位長さ流れ抵抗が200,000N・s/m
4以下であることが好ましく、より好ましくは150,000N・s/m
4以下である。
【0065】
上記樹脂発泡成形体の製造は、上記樹脂発泡粒子を閉鎖した金型内に充填、発泡させて得るが、密閉し得ない金型内に充填して加熱し、樹脂発泡粒子相互を融着させる方法が採用してもよい。樹脂種と成形条件によっては汎用の型内発泡自動成形機を使用することができる。
【0066】
凹外形部を持つ樹脂発泡粒子と、凹外形部を持たない楕円球状、円柱状、多角柱状など樹脂発泡粒子として一般的な形状の粒子を任意の比率で混合使用して樹脂発泡成形体を製造することにより所望の吸音性能、機械的強度のバランスを調整することができる。
【0067】
[面材(I)]
次に本実施形態の積層体を形成する繊維集合体を含む面材(I)について以下に説明する。
上記面材(I)は、上記繊維集合体を含む。中でも、上記繊維集合体のみからなることが好ましい。上記面材(I)は、上記繊維集合体以外に、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料などの着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭カル等の無機充填剤等を含む樹脂相を含んでいてもよい。
【0068】
上記面材(I)の厚みとしては、0.05〜2.0mmが好ましく、より好ましくは0.07〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.0mmである。
【0069】
上記繊維集合体の目付けは、10〜300g/m
2であり、好ましくは20〜250g/m
2、より好ましくは25〜200g/m
2である。上記目付けが10g/m
2未満であると積層体の吸音性能が低下し、繊維集合体の目付けが300g/m
2を超えると耐久性が低下する傾向が現れ好ましくない。
上記繊維集合体の目付けは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0070】
上記繊維集合体の平均みかけ密度は、0.10〜1.0g/cm
3であり、好ましくは0.12〜0.90g/cm
3、より好ましくは0.15〜0.80g/cm
3である。上記平均みかけ密度が0.10g/cm
3未満であると積層体の吸音性能が低下し、繊維集合体の平均みかけ密度が1.0g/cm
3を超えると、緻密性が増大し、面材と基材の密着安定性が低下する。
上記繊維集合体の平均みかけ密度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0071】
上記繊維集合体の平均繊維径は、1〜50μmであり、好ましくは1.5〜40μm、より好ましくは2.0〜30μmである。繊維集合体の平均繊維径が1μm未満であると面材の耐久性が低下する傾向が現れ、平均繊維径が50μmを超えると吸音率の低下傾向が現れるため、好ましくない。
上記繊維集合体の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0072】
上記繊維集合体の通気度は、2〜70cc/(cm
2・sec)であり、好ましくは3〜60cc/(cm
2・sec)、より好ましくは5〜50cc/(cm
2・sec)である。繊維集合体の通気度が2cc/(cm
2・sec)未満であると吸音性能が平均的に低下し、通気度が70cc/(cm
2・sec)を超えると、吸音性能は高くなるが高吸音率を示す周波数域が狭くなるため好ましくない。
上記繊維集合体の通気度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0073】
上記繊維集合体は、一種の繊維からなる集合体であってもよいし、複数種の繊維からなる集合体であってもよい。また、上記繊維集合体は、単層体であってもよいし、異なる種類の繊維からなる層の積層体であってもよい。
【0074】
上記面材(I)は、吸音性能に一層優れ、積層体の強度にも優れる観点から、一方の表面層として平均繊維径が5〜50μmである熱可塑性合成繊維層(A)(本明細書において、「層(A)」と称する場合がある)、中間層として平均繊維径が1〜10μmである熱可塑性合成極細繊維層(B)(本明細書において、「層(B)」と称する場合がある)、他方の表面層として平均繊維径が5〜50μmである熱可塑性合成繊維を含む層(C)(本明細書において、「層(C)」と称する場合がある)の3層からなる繊維集合積層体、又は該繊維集合積層体を2〜10枚重ね合わせた繊維集合積層体複合体であることが好ましい。
【0075】
上記繊維集合積層体の目付および平均密度が小さすぎると積層体の吸音性が低下し、繊維集合積層体の目付および平均密度が大きすぎると、緻密性が増大するが面材と基材の密着安定性が低下する。また、繊維集合積層体の各層の通気度が低すぎると吸音性能が平均的に低下し、高すぎると最大の吸音性能が高くなるが高吸音率の周波数域が狭くなるため好ましくない。
【0076】
上記繊維集合積層体の層(A)および層(C)の平均繊維径は、5〜50μmであり、層(B)の平均繊維径は1〜10μmであることが好ましい。層(A)の平均繊維径と、層(C)の平均繊維径とは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
層(A)の平均繊維径としては、7〜40μmがより好ましく、さらに好ましくは10〜30μmである。層(C)の平均繊維径としては、7〜40μmがより好ましく、さらに好ましくは10〜30μmである。層(B)の平均繊維径としては1.5〜9μmがより好ましく、さらに好ましくは2.0〜8μmである、特に好ましくは2.0μm以上7μm未満である。
【0077】
すなわち、層(A)および層(C)は比較的大きい繊維径からなり、大きな繊維間隙が構成される。中間に極細繊維の層(B)を配置することにより、太い繊維の支持体の間隙に極細繊維が被覆された極細繊維からなる薄い層が形成されやすく、その結果数μm以下の極めて小さい繊維間隙を形成する事ができ、優れた吸音性が得られる。
【0078】
上記繊維集合積層体は、例えば、スパンボンド法などから得られる長繊維不織布の積層不織布であってよく、好ましくは、平均繊維径が1〜10μmの層(B)を中間層としてその両面に、平均繊維径が5〜50μmの層(A)および層(C)を積層させてなる、3層構造(A/B/C)の積層不織布である。該積層不織布の一方の表層(A)は、高融点(例えば、融点230〜300℃)の熱可塑性合成繊維からなり、他方の表層(C)は融点の差が20℃以上(好ましくは25℃以上)の複数種の繊維からなる層である事が好ましい。
【0079】
層(A)に用いる熱可塑性合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド繊維などである。中でも、層(C)に複数種の熱可塑性合成繊維が含まれる場合、層(A)に用いる上記熱可塑性合成繊維は、層(C)に含まれる融点が最も低い熱可塑性合成繊維の融点より、20℃以上(好ましくは25℃以上)高い融点を有することが好ましい。
層(A)に用いる熱可塑性合成繊維と、層(C)に含まれる熱可塑性合成繊維とは、同じ繊維であってもよいし異なる繊維であってもよい。中でも、各層間の接合強度の観点から、同じ繊維であることが好ましい。
【0080】
層(B)の極細繊維は、層(A)及び層(C)の合成繊維の間隙を数μm以下に被覆して、薄い膜状に形成する層であり、そのため極細繊維の平均繊維径は1〜10μm、好ましくは1.2〜7μm、より好ましくは1.5〜3μmである。
上記面材は、繊維集合積層体、または2〜10枚の繊維集合積層体を重ね合わせた繊維集合積層体複合体であっても良い。繊維集合積層体の枚数が10枚を超えると面材を安定に保持する事が難しく、工程中で中間に空気層が入り易くなり、厚みの均質性が低下する傾向が現れ好ましくない。
【0081】
上記極細繊維を構成するポリマーとしては、例えば低粘度で、メルトブロー方式で極細繊維が形成できる合成樹脂が好適に用いられる。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、共重合ポリアミドなどの合成繊維等が用いられる。
【0082】
層(C)に用いる熱可塑性合成繊維としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、共重合ポリアミドなどの合成繊維が用いられる。
これらの繊維は、単独でもよく、2種以上複合混繊してもよく、また、低融点繊維と高融点繊維との複合混繊してもよい。更に、好ましくは、高融点成分を芯部に有し、低融点成分を鞘部に有する、鞘芯構造の複合繊維が用いられる。例えば、芯が高融点(例えば、融点230〜300℃)成分で、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどであり、鞘が低融点(例えば、融点210〜280℃、芯の高融点成分よりも20〜180℃融点が低い成分等)成分で低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどが挙げられる。これらの組み合わせのうち、層(A)を構成する上記熱可塑性合成繊維は、層(C)の低融点成分の融点より20℃以上高融点である事が好ましい。
【0083】
上記繊維集合体は、目付けが10〜300g/m
2、平均みかけ密度が0.10〜1.0g/cm
3、平均繊維径1〜50μmである繊維集合積層体、又は上記繊維集合積層体を2〜10枚重ね合わせた目付けが10〜300g/m
2、平均みかけ密度が0.10〜1.0g/cm
3、平均繊維径1〜50μmである繊維集合積層体複合体であることが好ましい。
繊維集合積層体の目付けおよび平均みかけ密度が小さすぎると、音の震動の貫通が多くなり、吸音性が低下する。目付けおよび平均みかけ密度が大きすぎると緻密性が高くなり、剛性が増し、面材と基材との接着性、加工性が低下し好ましくない。
【0084】
上記面材(I)には、着色、撥水性、難燃性などを付与する目的で、染色などの着色加工、フッソ樹脂などの撥水加工、りん系などの難燃剤加工などの機能付与加工をしてもよい。
【0085】
図4に本実施形態の積層体の一例を示す。
本実施形態の積層体1は、上記面材(I)3と、上記基材(II)2とを含む。面材3は、上記層(A)4、上記層(B)5、上記層(C)の3層からなる繊維集合積層体であってもよい。
【0086】
本実施形態の積層体において、面材(I)及び基材(II)の積層数は特に限定されない。本実施形態の積層体は、面材(I)の一方の表面に基材(II)が積層された、1個の面材と1個の基材とからなる積層体であってもよいし(
図4)、基材(II)の両方の表面に面材(I)が積層された1個の基材材と2個の面材とからなる積層体であってもよい。
【0087】
面材(I)として、上記繊維集合積層体を用いる場合、基材(II)は、層(A)と接していてもよいし、層(C)と接していてもよい。中でも、加熱積層後の積層体の強度に優れ、吸音性能に一層優れる観点から、層(C)と基材(II)とが接する形態で積層されることが好ましい。
また、上記繊維集合積層体を2個以上重ねる場合、一方の繊維集合積層体の層(A)と他方の繊維集合積層体の層(C)とが重なるように積層されてもよいし、一方の繊維集合積層体の層(A)と他方の繊維集合積層体の層(A)とが重なるように積層されてもよい。中でも、加熱積層後の積層体の強度に優れ、吸音性能に一層優れる観点から、一方の繊維集合積層体の層(A)と、他方の繊維集合積層体の層(C)とが重なるように積層されることが好ましい。
【0088】
次に本実施形態の積層体における、面材(I)と基材(II)の積層方式について説明する。
繊維集合体を含む面材(I)の片面に樹脂発泡成形体を含む基材(II)を積層する手段としては、熱接着による方法の他、接着剤を介して積層一体化する方法等も挙げられるが、接着剤を用いることなく、面材(I)と基材(II)とを単に重ね合わせて積層体(複合吸音材)とすることが好ましい。接着剤を用いないことにより、面材(I)と基材(II)との間には通気性を確実に確保することができ、安定した吸音性能を維持できる。このように、単に重ね合わせて積層する場合は、所定のフレーム(枠)に嵌め込み、少なくとも端部を固定することにより一体化するとよい。接着剤を介して積層一体化する場合は、接着剤を部分的に配置することによって、通気性を確保するとよい。接着剤が膜を形成して接着剤層となり、通気性が損なわれると、面材(I)から基材(II)への音の侵入が阻害され、吸音性能が低下する恐れがある。このように部分的に接着剤を存在させる方法としては、パウダー状や繊維状の熱接着剤を用いるとよい。また、基材(II)において、繊維集合積層体等の面材(I)側の面となる基材(II)表面を加熱溶融させ、繊維集合積層体等の面材(I)と貼り合わせる方法により接着一体化することもできる。
【0089】
面材(I)と基材(II)との熱接着による積層法の具体例としては、面材(I)に含まれる繊維、及び基材(II)に含まれる樹脂が軟化又は融解する加熱雰囲気下で、ネット、ロールなどで加熱、加圧して接着する熱接着方法;面材及び/基材にホットメルト系の粉末、接着剤などを、スプレー式、ロール式などで塗布させ、加熱処理することなど接合する接着方法;低融点繊維を含む不織布、くもの巣状の不織布、テープヤーンクロス、ホトメルト系フィルム、メッシュなどのシート状物を介在させて接着する接着性シート方法;などが挙げられる。
【0090】
本実施形態において、面材(I)として、2枚以上の繊維集合積層体を重ねる場合には、個々の繊維集合積層体を逐次に積層する方法又は、2枚以上の繊維集合積層体を同時に積層する事もできる。
【0091】
本実施形態の積層体(複合吸音材)は、繊維集合体を含む面材(I)側を音の入射側に位置するように設置して使用する。繊維集合体を含む面材(I)側を音の入射側に位置することにより、吸音性能を有効に向上させる事ができる。
【0092】
本実施形態の積層体は、種々の騒音を遮蔽する部材、例えは自動車等の車両用の防音部材等として用いることができる。特に基材として硬質の熱可塑性樹脂を選択する事等により、他の部材をさらに積層することなく、本実施形態の積層体だけで自立可能な自立型防音材として用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下実施例により本発明の実施態様を説明する。ただし、本発明の範囲は実施例によりなんら限定されるものではない。
【0094】
実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
【0095】
(1)樹脂の密度ρ
0(g/cm
3)
発泡前の樹脂の質量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cm
3)を測定し、W/V(g/cm
3)を樹脂の密度とした。
【0096】
(2)樹脂発泡粒子の真密度ρ
1(g/cm
3)
樹脂発泡粒子の質量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cm
3)を測定し、W/V(g/cm
3)を樹脂発泡粒子の真密度とした。
比重計により予備発泡後の樹脂原料ペレットの密度を測定した。
【0097】
(3)樹脂発泡粒子の嵩密度ρ
2(g/cm
3)
樹脂発泡粒子100gをメスシリンダーに入れ振動させその体積が恒量に達した時平坦化させた上面の目盛りを読んだ値として嵩体積V
1(cm
3)、樹脂発泡粒子を入れたメスシリンダーの質量W
1(g)とメスシリンダーの質量W
0(g)を測定し、下式により求めた。
ρ
2=[W
1−W
0]/V
1
【0098】
(4)樹脂発泡粒子の平均粒子径D(mm)
100gの樹脂発泡粒子をJIS Z8801で規定される、呼び寸法がd
1=5.6mm、d
2=4.75mm、d
3=4mm、d
4=3.35mm、d
5=2.36mm、d
6=1.7mm、d
7=1.4mm、d
8=1mmである標準ふるいを用いて分級を行い、ふるいd
iを通過して、ふるいd
i+1で止まる粒子の重量割合をX
i、全粒子集合体の平均粒子径Dを次式により求めた。
D=ΣX
i(d
i・d
i+1)
1/2
(iは1〜7の整数を表す)
【0099】
(5)樹脂発泡成形体の空隙率(%)
以下の式より、樹脂発泡成形体の空隙率を求めた。
樹脂発泡成形体の空隙率(%)=[(B−C)/B]×100
但し、B:樹脂発泡成形体の見掛け体積(cm
3)、C:樹脂発泡成形体の真の体積(cm
3)であり、見掛け体積は成形体の外形寸法から算出される体積、真の体積Cは成形体の空隙部を除いた実体積をそれぞれ意味する。真の体積Cは樹脂発泡成形体を液体(例えばアルコール)中に沈めた時の増量した体積を測定することにより得られる。
【0100】
(6)連続した空隙部の有無
単位長さ流れ抵抗の測定から以下のように判定した。
単位長さ流れ抵抗値の測定方法としては、国際標準規格ISO9053のAC法を適用して日本音響エンジニアリング(株)製、流れ抵抗測定システムAirReSys型を使用して測定した。すなわち、厚み10mmの平板状樹脂発泡成形体試料を用い、流速F=0.5mm/sの一様流中の流れる状態で材料表裏面の差圧P(Pa)を測定し、その差圧と材料厚みt(m)からP/(t・F)(N・s/m
4)として求めた。単位長さ流れ抵抗値が200,000N・s/m
4以下の場合を連続した空隙部有り(○)、200,000N・s/m
4を超える場合を連続した空隙部無し(×)と評価した。
【0101】
(7)融着強度
JIS K6767Aに基づき引っ張り強度を測定し、樹脂発泡成形体の破断伸度が2%以上の場合を融着強度に優れる(◎)、破断伸度が1%以上2%未満の場合2を融着強度が良好(〇)、破断伸度が1%未満の場合を融着強度が劣る(×)と評価した。
【0102】
(8)樹脂発泡成形体の吸音特性
JIS A1405−2に基づき垂直入射吸音率を測定した。厚さ30mmの平板状樹脂発泡成形体を作製し直径41mm、厚さ30mmの円盤を切り出し、日本音響エンジニアリング社製垂直入射吸音率測定システムWinZacMTX型により、周波数200〜5000Hzにおける垂直入射吸音率を20℃において測定した。測定は、200、250Hz、315Hz、400Hz、500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz、2000Hzの11点を中心周波数とする1/3オクターブ帯の平均吸音率を測定し11帯の平均吸音率のうち、吸音率30%以上の周波数が5点以上ある場合を吸音特性に優れる(◎)、吸音率30%以上の周波数が3点以上4点以下の場合を吸音特性が良好(〇)、吸音率30%以上の周波数が2点以下の場合を吸音特性が劣る(×)として評価した。
【0103】
(9)面材の目付け(g/m
2)
JIS L−1913「一般不織布試験方法」の単位面積当たりの質量(ISO法)の記載の方法に従って評価した値を面材の目付けとした。
【0104】
(10)面材の平均みかけ密度(g/cm
3)
JIS L−1913「一般不織布試験方法」の厚さ(ISO法)の記載の方法に従って平均厚み評価し、上記(9)の面材の目付けの値から、(面材の平均みかけ密度)=(面材の目付け)/(厚み)として求めた。
【0105】
(11)面材の平均繊維径(μm)
顕微鏡で500倍の拡大写真を撮り、不作為に選んだ繊維30本の直径の平均値を求めた。
【0106】
(12)面材の通気度(cc/(cm
2・sec))
JIS L−1096「織物及び編物の生地試験方法」記載の方法に従って測定した。
【0107】
(13)積層体の吸音特性
(8)と同じ装置測定法を用い、積層体の面材側を音の入射面として垂直入射吸音率を測定し、(8)と同様に評価した。
【0108】
[樹脂発泡成形体の製造例1(A−1)]
ポリアミド6樹脂(UBEナイロン「1022B」、宇部興産製、20℃における表面張力46mN/m)を、押出し機を用いて溶融し、
図3(a1)記載の断面形状の異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、平均粒子径1.4mmのペレットを得た。得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの炭酸ガスを吹き込み3時間吸収させた。次いで炭酸ガス含浸ミニペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド樹脂発泡粒子の集合体を得た。得られたポリアミド樹脂発泡粒子の集合体に含まれるポリアミド樹脂発泡粒子の平均粒子径は2.0mmであった。ポリアミド樹脂発泡粒子を切断し観察したところ、ポリアミド樹脂発泡粒子には独立気泡が切断面一面にまんべんなく多数形成されていた。ポリアミド樹脂発泡粒子の断面は
図3(a2)に記した形状で凹外形部を有していた。
得られたポリアミド樹脂発泡粒子集合体を再度圧力釜に入れ、10℃にて4MPaの炭酸ガスを3時間吸収させた。次いでこの炭酸ガスを含浸したポリアミド樹脂発泡粒子を型内発泡成形装置の金型内に充填し、230℃の空気を30秒間吹き込み、ポリアミド樹脂発泡粒子同士が融着した樹脂発泡成形体A−1を得た。樹脂発泡成形体の発泡倍率は7.5倍であった。樹脂発泡成形体を切断し観察したところ、セル径が200〜400μmである独立気泡を多数有するポリアミド樹脂発泡粒子の集合体が形成されていた。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。ポリアミド樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
【0109】
[樹脂発泡成形体の製造例2〜5(A−2〜A−5)]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(商品名:ザイロンTYPE S201A、旭化成(株)製、20℃における表面張力40mN/m)を60質量%、非ハロゲン系難燃剤(ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP))を18質量%、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)10質量%(基材樹脂中のゴム成分含有量は0.6質量%)及び汎用ポリスチレン樹脂(PS)(商品名:GP685、PSジャパン(株)製)を12質量%加え、押出機にて加熱溶融混練の
図3記載の異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、ペレットを得た。特開平4−372630号公報の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂としての上記ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.2MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて基材樹脂としてのペレットに対して二酸化炭素を7質量%含浸させ、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽させながら加圧水蒸気により発泡させた。得られた樹脂発泡粒子の概形を
図3に示す。
なお、
図3(b1)が製造例2、
図3(c1)が製造例3、
図3(d1)が製造例4、
図3(e1)が製造例5、のダイ吐出口の断面形状である。また、
図3(b2)が製造例2、
図3(c2)が製造例3、
図3(d2)が製造例4、
図3(e2)が製造例5、の樹脂発泡粒子の断面である。
得られた樹脂発泡粒子を耐圧容器に移し、圧縮空気により内圧を0.5MPaまで1時間かけて昇圧し、その後0.5MPaで8時間保持し、加圧処理を施した。これを、型内発泡成形装置の水蒸気孔を有する金型内に充填し、加圧水蒸気0.35MPaで加熱して樹脂発泡粒子を相互に膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出し、樹脂発泡成形体A−2〜A−5を得た。なお、製造例2の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−2、製造例3の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−3、製造例4の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−4、製造例5の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−5である。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
【0110】
[樹脂発泡成形体の製造例6(A−6)]
エチレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸の重縮合体(イソフタル酸含有率 2重量%、20℃における表面張力43mN/m)100重量部と、ピロメリット酸二無水物0.3重量部と、炭酸ナトリウム0.03重量部、との混合物を押出機により270〜290℃溶融、混練しながらバレルの途中に発泡剤としてブタンを混合物に対して1.0重量%の割合で注入し、
図3(f1)記載の異形押出しダイを通して予備発泡させたのち、直ちに冷却水槽で冷却しペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂発泡粒子を製造した。得られた樹脂発泡粒子の断面は、
図3(f2)であった。
得られた樹脂発泡粒子の嵩密度は0.14g/cm
3、平均粒子径は1.5mmであった。
上記の樹脂発泡粒子を密閉容器に入れ、炭酸ガスを0.49MPaの圧力で圧入して4時間、保持したのち、密閉容器から取り出した樹脂発泡粒子を直ちに、型内発泡成形機の金型内に充填して型締めし、型内に、ゲージ圧0.02MPaのスチームを10秒間、ついでゲージ圧0.06MPaのスチームを20秒間導入し、120秒間保熱したのち水冷して、樹脂発泡粒子同士が融着した樹脂発泡成形体A−6を得た。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
【0111】
[樹脂発泡成形体の比較製造例1〜3(B−1)〜(B−3)]
押出し機の異形押し出しダイを通常の中空部のない円形断面ダイに変える以外は、それ製造例1、2、6と同様の条件で、樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体B−1、B−2、B−3を得た。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持たないことが確認された。樹脂発泡粒子および樹脂発泡成形体の評価結果を表2中に記す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
[繊維集合体の製造例1(F−1)]
面材に用いる繊維集合体は、ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度η
sp/c0.77、融点263℃)を、紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(A)(層(A))を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(目付け45g/m
2、平均繊維径14μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(25℃法の溶液粘度η
sp/c0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm
2/hrで糸条を直接に噴出させ、極細繊維ウエブ(B)(目付け10g/m
2、平均繊維径2μm)(層(B))を形成した。更に極細繊維ウエブ(B)の上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点130℃)芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる複合長繊維ウエブ(C)(目付け45g/m
2、平均繊維径18μm)(層(C))を積層した積層ウエブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃/105℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、目付け100g/m
2、平均みかけ密度0.25g/cm
3、熱圧着率15%の繊維集合体F−1を得た。
【0115】
[繊維集合体の製造例2(F−2)]
面材に用いる繊維集合体は、ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度η
sp/c0.77、融点263℃)を、紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(A)(層(A))を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(目付け22.5g/m
2、平均繊維径14μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度η
sp/c0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm
2/hrで糸条を直接に噴出させ、極細繊維ウエブ(B)(目付け10g/m
2、平均繊維径2μm)(層(B))を形成した。更に極細繊維ウエブ(B)の上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点130℃)芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる複合長繊維ウエブ(C)(目付け22.5g/m
2、平均繊維径18μm)(層(C))を積層した積層ウエブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃/145℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、目付け100g/m
2、平均みかけ密度0.25g/cm
3、熱圧着率20%の繊維集合体F−2を得た。
【0116】
[繊維集合体の製造例1(G−1)]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度η
sp/c0.77、融点263℃)を、紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(目付け100g/m
2、平均繊維径14μm)を熱圧着で、目付け100g/m
2、平均みかけ密度0.23g/cm
3、熱圧着率15%の繊維集合体G−1を得た。
【0117】
[実施例1〜6]
面材として表1記載の繊維集合体、基材として表1記載の樹脂発泡成形体を使用し、繊維集合体の層(C)と樹脂発泡成形体とが重なるように、両者を密着させてプレス機で120℃、0.3MPa、10秒圧着させて重ね合わせ周囲のみを粘着テープに貼り付けて固定し、吸音特性を評価した。
なお、実施例3〜6では、面材として、繊維集合体の層(A)と層(C)とが重なるように密着させ、熱プレス機で150℃、0.3MPa、10秒加熱圧着させて接着させた。
【0118】
[実施例7]
面材として繊維集合体F−2の層(A)と層(C)とが重なるように密着させ、熱プレス機で150℃、0.3MPa、10秒加熱圧着させて接着させた3枚の繊維集合体からなる繊維集合積層体複合体をしようした。また、基材として樹脂発泡成形体A−6を使用した。繊維集合積層体複合体の層(A)と樹脂発泡成形体とが重なるように両者を密着させて重ね合わせ熱プレス機で100℃、0.3MPa、1分加熱圧着して固定し、積層体を作製し吸音特性を評価した。
【0119】
[比較例1〜4]
表2記載の繊維集合体と樹脂発泡成形体の組み合わせを使用し、繊維集合体の層(A)と樹脂発泡成形体とが重なるように両者を密着させて重ね合わせ周囲のみを接着させて固定し、吸音特性を評価した。
なお、比較例4では、面材として、繊維集合体G−1を3枚重ね合わせ、熱プレス機で150℃、0.3MPa、10秒加熱圧着させて、接着させたものを使用した。