特許第6982986号(P6982986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982986
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】羽根駆動装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/06 20210101AFI20211206BHJP
【FI】
   G03B9/06
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-109756(P2017-109756)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-205477(P2018-205477A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 隆仁
【審査官】 齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−003821(JP,U)
【文献】 特開2017−003993(JP,A)
【文献】 特開2001−083566(JP,A)
【文献】 特開2013−097178(JP,A)
【文献】 特開2017−058680(JP,A)
【文献】 特開2016−102830(JP,A)
【文献】 特開2008−134283(JP,A)
【文献】 実開昭61−121429(JP,U)
【文献】 特開2015−049430(JP,A)
【文献】 特開2014−013365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00 − 9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通過開口に出入りして絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記絞り羽根を駆動する駆動リングと、
前記駆動リングを回転可能に支持し光通過開口を有するベース部材と
を備え、
前記光通過開口内に配置されて光が通過する光学部材であり、前記複数の絞り羽根の羽根先端部が光通過開口内に進入して絞り開口を形成する際に、前記羽根先端部に摺接して光通過方向への変位を抑える抑え部材を有することを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
前記駆動リングは、前記絞り羽根と係合して駆動力を伝達する駆動ピンを有し、
前記抑え部材は、前記駆動ピンに対して固定され、前記駆動リングとともに回転することを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記抑え部材は、前記駆動リングと一体に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記ベース部材との間に前記複数の絞り羽根を移動可能に収容するカバー部材を備え、
前記抑え部材は、前記カバー部材であることを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記抑え部材における少なくとも前記複数の絞り羽根に対向する側の表面には、
反射防止、帯電防止または摺動コートのうちの少なくともいずれか1つの表面処理が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記抑え部材は、光が通過する光学部位と、該光学部位の外周に設けられた遮光部位とを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の羽根駆動装置を有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置や交換レンズ等の光学機器に搭載される羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
羽根駆動装置(絞り装置)において形成される光通過開口としての絞り開口の形状は、できるだけ円形に近い方が好ましく、円形に近い絞り開口を形成するために3枚以上の多数枚の絞り羽根(光量調節羽根)が用いられる場合が多い。
【0003】
特許文献1には、ベース部材に形成した固定開口の周囲で回動可能な駆動リングによって多数枚の絞り羽根を回動させることで、円形に近い多角形の絞り開口を形成する虹彩絞り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−58443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示されているような虹彩絞り装置においては、絞り羽根同士の重なり合いにより絞り羽根の先端が光軸方向に編み上がり、絞り位置が開口面積を変化させるに伴い光軸方向に変化してしまう問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、絞り羽根の編み上がりを抑えるようにし、絞り位置の安定した羽根駆動装置およびこれを備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記を鑑み、本発明の羽根駆動装置及び撮像装置は、
光通過開口に出入りして絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記絞り羽根を駆動する駆動リングと、
前記駆動リングを回転可能に支持し光通過開口を有するベース部材と
を備え、
前記光通過開口内に配置されて光が通過する光学部材であり、前記複数の絞り羽根の羽根先端部が光通過開口内に進入して絞り開口を形成する際に、前記羽根先端部に摺接して光通過方向への変位を抑える抑え部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絞り羽根同士の重なり合いにより発生する光軸方向への絞り位置の変化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る羽根駆動装置の分解斜視図。
図2】実施形態1の絞り開口の変化を示す正面図(カバー無し)。
図3】実施形態1に係る羽根駆動装置の斜視図と模式断面図。
図4】実施形態1の絞り羽根と抑え部材。
図5】抑え部材がない場合の羽根編み上がり状態。
図6】抑え部材がない場合の羽根駆動装置を搭載した光学機器。
図7】本発明の羽根駆動装置を搭載した光学機器。
図8】実施形態1の羽根駆動装置の拡大断面図。
図9】実施形態1の羽根駆動装置の他の態様の拡大断面図。
図10】実施形態2に係る羽根駆動装置の分解斜視図。
図11】実施形態2に係る羽根駆動装置の斜視図。
図12】実施形態2の絞り羽根と抑え部材。
図13】実施形態2の光学部材の断面図。
図14】従来技術の固定開口の断面図。
図15】実施形態3に係る羽根駆動装置の分解斜視図。
図16】実施形態3に係る羽根駆動装置の斜視図。
図17】実施形態3の絞り羽根と抑え部材。
図18】実施形態3の駆動リング。
図19】実施形態4に係る羽根駆動装置の分解斜視図。
図20】実施形態4に係る羽根駆動装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1には、本発明の実施形態1である羽根駆動装置の一例である羽根駆動装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。図1の(A)、(B)はそれぞれ異なる方向から見た分解斜視図である。
【0012】
図1において、羽根駆動装置の光軸中心100の周囲を絞り装置が駆動される。駆動部101は、羽根駆動装置を駆動する駆動源となる。ベース部材102は、中央に開口部102a(光通過開口)が形成されている開口形成部材である。このベース部材102は、例えば、本実施形態では、樹脂成型により形成され、複数の係合ピン102dを有する。また、ベース部材102の端部には、駆動部101が取り付けられる。この駆動部101としては、例えば、ステッピングモータ、ガルバノメータなどが挙げられる。この駆動部101の回転軸には、ピニオンギア103が取り付けられる。
【0013】
回動部材104は、例えば、本実施形態では、樹脂成型によって形成された円形状のシート状部材であって、その中央部に光が通過する経路となる円形の開口部が形成された開口形成部材(駆動リング)である。
【0014】
この回動部材104は、立設された複数の駆動ピン104cと、外周端部に設けられて上記ピニオンギア103が接続される被駆動部104eと、外周端部において部分的に突出して設けられた遮光部104fとを有する。
【0015】
ここで、この回動部材104は、例えば、樹脂フィルム(PETシート材等)をプレス加工して作成される。回動部材104を樹脂フィルムで作成する場合、回動部材104は、薄く作ることができ、且つ、軽く作ることが可能である。また、回動部材104を樹脂フィルムで作成した場合、回動部材104の作動を案内する部位は、樹脂成形で回動部材を作成した場合に比べて、強度を必要としない。例えば、絞り羽根を案内するような細い案内ピンにて回動部材104を案内することが可能である。プレス加工できる場合は、樹脂成形の形状精度に比べて、形状精度を高精度に形成することができるため、絞り精度の高精度が可能になる。勿論、回動部材104は、必ずしも薄型シート状部材によって形成しなくても良く、樹脂成型によって形成してもよい。
【0016】
また、回動部材104は、被駆動部104eであるギア部を有する。この被駆動部104eは、ピニオンギア103と噛み合っている。駆動部101で発生した回転力をピニオンギア103から被駆動部104eに伝え、これにより回動部材104が回転する。本実施形態では、駆動部101の回転力をピニオンギア103から回動部材104に伝えているが、例えば、ピニオンギアの代わりに駆動レバーを使用してもよい。駆動レバーを使用する場合、回動部材104の被駆動部104eは、カム溝あるいは、被駆動ピン等を用いるとよい。
【0017】
また、不図示のフォトインタラプタのスリット内を遮光部104fが出入りすることで、回動部材104の位置を検知するセンサの役割を果たす。羽根駆動装置の初期位置等の位置検出に使用する。
【0018】
絞り羽根105は、例えば、本実施形態では、光が通過する開口を取り囲むように複数(9枚)の絞り羽根105が環状配列されている。各絞り羽根105には、被駆部である係合穴105cとカム溝105dがそれぞれ形成される。このような絞り羽根105は、例えば、PETシート材等をプレス加工して作成してもよいし、樹脂成形等で作成してもよい。
【0019】
また、本実施形態では、9枚の絞り羽根で構成しているが、絞り羽根の枚数は、2枚以上であれば何枚の構成でもよい。なお、本実施形態では、絞り羽根105を例示して説明するが、その他のシャッタ羽根、あるいは光学フィルタを有する羽根など各種適用した羽根駆動装置としてもよい。なお、光が通過する部分の最大開口は、上記ベース部材102又はカバー部材106の開口部106aで規定してもよいし、複数の絞り羽根105の端部によって規定してもよい。
【0020】
このカバー部材106は、ベース部材102との間で、上述した複数の絞り羽根105及びこれら羽根駆動用の回動部材104を収容し、回動部材との間で羽根が走行する羽根室を形成する。すなわち、ベース部材102とカバー部材106で形成された羽根室(空間)の中を回動部材104の回動に伴って複数の絞り羽根105が走行(駆動)する。このカバー部材106には、上記ベース部材102の開口部に連通する開口部106aが形成されており、ベース部材102と同様、開口形成部材となる。カバー部材106は、樹脂成形等で形成されても良いし、PETシート材等をプレス加工して作成されても良い。
【0021】
絞り羽根105の係合穴105cは、回動部材104の駆動ピン104cに係合する。ピニオンギア103が回転し、回動部材104の被駆動部104eに力が伝達され、回動部材104が回転する。すると、回動部材104の駆動ピン104cから絞り羽根105の係合穴105cに駆動力が与えられ、絞り羽根105が駆動する。このとき、絞り羽根105のカム溝105dは、ベース部材102の係合部102dに係合している。
【0022】
そのため、カム溝105dによって、絞り羽根105は、ベース部材102の開口内外を出入りする。これにより、複数の絞り羽根105がベース部材102の開口部102a内で、絞り形状が調整され、光が通過する量を調整することが可能になる。図2は、図1中に示すカバー部材106を取り除いた状態を示している。図2(A)は、絞り開放の状態を示し、図2(B)は、小絞りの状態を示す。
【0023】
抑え部材107は、例えば、光が通過する光学部材(ガラス材等や樹脂フィルム材等)で作成されたりする。実施形態1では平坦なシート状部材で抑え部材107を記載しているが、抑え部材107は、表面が凹形状や凸形状で形成されるレンズを使用してもよい。抑え部材107は、絞り羽根105に対して摺接することによって絞り羽根105の編み上がりを抑えることができる。
【0024】
複数の絞り羽根105は、羽根先端部がベース部材102の方向に編み上がるように環状に組み込まれる。抑え部材107は、複数の絞り羽根105と隣接するように、絞り羽根105の編み上がり方向側に配置させる。そのため、複数の絞り羽根105で形成する絞り開口位置は、抑え部材107と隣接した位置に安定させることができる。
【0025】
図1では、絞り羽根105の編み上がり方向を回動部材104側にして組込み、回動部材104側に抑え部材107を配置したが、絞り羽根105の編み上がり方向をカバー部材106側にして組込み、カバー部材106側に抑え部材107を配置してもよい。いずれにしても、絞り羽根105の編み上がり方向に抑え部材107を配置することで、編み上がった絞り羽根105の先端を抑えることで、絞り羽根105の編み上がり量を抑制できる。すなわち、絞り羽根105の先端部の光通過方向への変位を抑えることができる。
【0026】
図1では、抑え部材107は、ベース部材102に設けられた係合ピン102dに対して固定した例を示しているが、カバー部材106に固定して取り付けてもよい。また、抑え部材107は、回動部材104に設けられた駆動ピン104cに対して固定され、回動部材104と共に回動させてもよい。この場合、抑え部材107における係合部102dに対応する部分にカム溝を設けて係合部102dとの干渉を避けるようにする。回動部材104と共に回動するように構成した場合には、絞り羽根105と抑え部材107との摺動距離を短くすることができる。
【0027】
図3には、実施形態1の斜視図と光軸を含む平面における模式断面図を示す。複数の絞り羽根105は、ベース部材102の方向に編み上がり、抑え部材107により抑えられている。また、断面図に示すように、抑え部材107はベース部材102の係合部102dに係合しており、その外周側の部分は、回動部材104上の駆動ピン104cよりも内側の部分と絞り羽根105とによって挟持されている。なお、回動部材104の内周側の端部は、この図に示すように係合部102dによって位置決めされている。図4は、複数の絞り羽根105と抑え部材107の状態のみを抜粋して表した図である。
【0028】
図5には、抑え部材107がない場合の絞り羽根の編み上がり状態を示す。この場合には、小絞り状態に変化するしたがい、絞り羽根先端の編み上がり量が大きくなってしまう。また、複数の絞り羽根105で形成する絞り開口位置は、小絞り状態になるほど変化してしまうことが問題であるのに対し、本実施形態1では、抑え部材107が絞り羽根105の編み上がりを抑え込むため、絞り開口位置を安定させることができる。なお、この図においては、絞り羽根に対して係合穴105cの代わりに係合ピン105fを設け、カム溝105dの代わりに駆動ピン105gを設けることによって、それぞれをベース部材102と回動部材104とに設けられた係合穴に係合させることで絞り羽根を駆動する態様を示している。
【0029】
図6には、抑え部材107がない場合の羽根駆動装置を備えた光学機器の断面図を示す。この場合には、絞り羽根の編み上がり量を考慮し、絞り羽根とレンズLsが接触しないように十分なスペースLを確保する必要がある。環状に編み込まれた絞り羽根の先端の高さは、羽根の大きさ、厚み、材料、最小絞り径、等の様々な要素により変化するため、計算することは非常に難しかった。そのため、スペースLには余裕をもった距離を確保する必要があり、場合によっては無駄が大きかった。
【0030】
図7は、本実施形態1の羽根駆動装置を備えた光学機器の断面図を示す。抑え部材107が絞り羽根105の編み上がりを抑え込むため、絞り開口位置が光軸方向において安定できることが分かる。また、抑え部材107により、絞り羽根105の編み上がりを抑えているため、スペースL’は、絞り羽根105の編み上がりを無視して設定することができる。そのため、スペースL’は抑え部材107がない場合に比べて大幅に小さくすることが可能である。スペースL’を小さくできるため、光学的な設計自由度が増え、光学機器の性能を向上することが可能である。例えば、光学機器においてのズーム倍率を高くすることに貢献できる。
【0031】
また、実施形態1の羽根駆動装置は、高速駆動にも有効である。従来の羽根駆動装置では、高速で所定の絞り面積に絞り羽根を駆動させた際、固定開口内に進入した絞り羽根の先端がバウンド(羽根先端が固定開口内への方向と固定開口外への方向に交互に動く)してしまうため、絞り羽根が停止して絞り面積が安定するまでに一定の時間を要していた。実施形態1の羽根駆動装置では、絞り羽根105の絞り羽根先端が、固定開口内で、抑え部材107と隣接しているため、高速駆動させた場合に発生する絞り羽根の先端のバウンドを抑制することができる。抑え部材107が絞り羽根105に当接して、絞り羽根の動きを規制することができるからである。
【0032】
高速駆動後に絞り羽根がバウンドすることなく停止するため、実施形態1の羽根駆動装置を搭載した撮像機器では、羽根駆動装置を駆動させてから撮影するまでの時間を短縮することが可能である。特に、大口径の羽根駆動装置では、絞り羽根が大きく、高速駆動させた時の絞り羽根先端のバウンド量が大きいため、抑え部材107によるバウンド防止の効果が大きい。
【0033】
また、抑え部材107がない場合には、絞り羽根を停止させるために、一定の時間、駆動部に対して停止させるための電圧を印加していた。実施形態1では停止に使用する電圧の時間を短く、あるいは廃止できるため、消費電力の面も有効である。また、抑え部材107がない場合には、絞り羽根先端のバウンドを抑えるために、駆動速度を減速させてバウンドを抑える手法も用いられていた。実施形態1では、最高速で絞り羽根を駆動させても絞り羽根の先端がバウンドしないため、高速駆動に有効である。
【0034】
さらに、実施形態1は、駆動音に対しても有効である。羽根駆動装置では、高速作動時に、複数の絞り羽根同士の擦れ合い、駆動音が発生する。実施形態1では、抑え部材107によって、絞り羽根105から発生する駆動音が羽根駆動装置の外に漏れることを防止できる。そのため、実施形態1の羽根駆動装置は静音化に対して有効である。
【0035】
また、本実施形態の羽根駆動装置では、低速作動時においても静音化に有効である。図1に示すように、複数の絞り羽根105は、隣接する絞り羽根の表裏が重なりあうように、環状に編み込んで配置され、絞り羽根の先端側が一方向に編み上がる。図8には、絞り羽根の先端の編み上がり方向が、回動部材104とは反対の方向(図8のAの方向)である例を示す。なお、この図においては、図3の断面図とは異なり、抑え部材107が回動部材104の駆動ピン104cを超えて回動部材104を覆うように設けられた態様を示しており、抑え部材107には駆動ピン104cに対応する部分にカム溝が設けられている。
【0036】
絞り羽根105は、弾力性のある素材で構成されているため、絞り羽根105の先端をA方向に編み上がらせ、絞り羽根105の先端Aを抑え部材107に当接させると、絞り羽根の先端側とは反対にある係合穴105c側では、B方向に力が発生する。すなわち、回動部材104はベース部材102側に付勢される。
【0037】
ここで、回動部材104をベース部材102側に押圧し、付勢することの効果について説明する。図8において、回動部材104と絞り羽根105は、ベース部材102とカバー部材106で形成される駆動スペースhの中で回動する。回動部材104が、駆動スペースhの中で、ベース部材102側に移動したり、カバー部材106側に移動することが可能であると、回動部材104における被駆動部104eのギアがピニオンギア103と噛み合う際に、ギアの精度やギアの傾きによって、回動部材104が、駆動スペースhの中で振動しながら回転してしまう。その結果、回動部材104がベース部材102やカバー部材106に近付いたり離れたりして、接触したりする現象(バタつき)が騒音の原因となることがある。
【0038】
実施形態1中の図8では、上述したように、回動部材104を回動して絞り羽根105の先端側を絞り開口内に進入させる(絞り開口径を絞る)と、回動部材104をベース部材102側に付勢するため、回動部材104が駆動スペースh内でベース部材102側に移動したり、カバー部材106側に移動したりするのを防ぐことができる。すなわち、回動部材104のバタつきによる騒音を防止することができる。本実施形態1では、回動部材104を絞り羽根105によってベース部材102側に付勢することが可能であり、静音化することができる。
【0039】
ここで、抑え部材107について、さらに詳細に説明する。抑え部材107は、光が通過する光学部材で形成される。例えば、透明な樹脂フィルムで基材を形成し、表面に反射防止コーティングを施す。抑え部材107に反射防止コーティングを施すことで、絞り羽根105で形成される絞り開口内を通過する光量のロスを小さくすることができる。
【0040】
反射防止コーティングは、フッ化マグネシウム等による単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。また、抑え部材107にNDフィルタやIRカットフィルタ等の機能を付与してもよい。抑え部材107は、絞り羽根105の編み上がりを抑えるだけでなく、用途に合わせて、光学性能を追加することが可能である。この構成によれば、新たなスペースを増やさず、光学性能を向上させることが可能である。
【0041】
さらに、抑え部材107の表面には、表面処理として帯電防止剤を塗布してもよい。帯電防止剤を塗布することで、絞り羽根105との摩擦による帯電を減らすことができ、作動負荷の低減が可能である。
【0042】
さらに、抑え部材107の表面には、表面処理として透明な摺動剤(摺動コート)を塗布してもよい。摺動剤を塗布することで、絞り羽根105との摩擦を減らすことができ、作動負荷の低減、耐久性の向上が可能である。また、抑え部材107と絞り羽根105の接触による傷を抑えることが可能である。
【0043】
また、絞り羽根105の形状により、抑え部材107に対する作動負荷を低減させることもできる。図9は、絞り羽根105の一部に抑え部材107との当て部105eを設けた例である。抑え部材107には、絞り羽根105の当て部105e部が当接する。当て部105eは、絞り羽根105における回動方向先端側の端面に施された面取りの傾斜面であり、絞り羽根105と抑え部材107との接触位置および他の絞り羽根105と重なる回動方向先端側の端面に設けられている。本実施形態においては、絞り羽根105において絞り開口の縁を形成する位置から羽根先端に亘って設けられている。
【0044】
このような当て部105eを設けることによって、絞り羽根105の端面の角が抑え部材107に擦れることを低減できるため、抑え部材107への傷付きの防止や、耐久性の向上が可能である。
【0045】
実施形態1では、絞り羽根105にカム溝がある例を説明したが、絞り羽根105に駆動ピンを設け、回動部材(駆動リング)やベース部材にカム溝を設けて、絞り羽根が固定開口内外に出入りする構成としてもよい。複数の絞り羽根を環状に組込み、絞り羽根の編み上がりが発生するあらゆる羽根駆動装置において、有効である。
【0046】
<実施形態2>
図10には、本発明の実施形態2である羽根駆動装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。図10の(A)、(B)はそれぞれ異なる方向から見た分解斜視図である。羽根駆動装置の光軸中心200の周囲を絞り装置が駆動される。基本構成は実施形態1と同じである。
【0047】
図11は、実施形態2の斜視図を示す。複数の絞り羽根205は、ベース部材202の方向に編み上がり、抑え部材207により抑えられる。図12は、複数の絞り羽根205と抑え部材207の状態を抜粋して表した図である。抑え部材207が絞り羽根205の編み上がりを抑え込むため、絞り開口位置を光軸方向に対して安定させることができる。
【0048】
抑え部材207は、遮光部位207kと抑え部位207gを有する。遮光部位207kは、光を遮光する蒸着膜である。遮光部位207kは、遮光性のほかに反射防止機能を有することが好ましい。遮光部位207kは環状に蒸着され、遮光部位207kの内側には、光を通過させる光学部位である抑え部位207gが形成される。遮光部位207kと抑え部位207gの境界を円形にすることで、固定開口207aが形成される。
【0049】
図13に抑え部材207の断面図を示す。また、図14に抑え部材207がない場合の固定開口202aの断面図を示す。この場合には、固定開口の端面202aは、樹脂成形などで形成していたため、一定の厚みが必要となっていた。実施形態2では、固定開口207aを蒸着膜で形成するため、図13に示すように、固定開口207aの端面を膜厚レベルまで薄くすることができる。そのため、固定開口の端面での光の反射を抑えることができ、レンズ等で問題となるゴーストを低減することができる。
【0050】
<実施形態3>
図15には、本発明の実施形態3である羽根駆動装置の一例である羽根駆動装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。図15の(A)、(B)はそれぞれ異なる方向から見た分解斜視図である。羽根駆動装置の光軸中心300の周囲を絞り装置が駆動される。基本構成は実施形態1、2と同じであるが、実施形態3では、実施形態1、2の抑え部材の機能を駆動リング304に備えるように構成している。すなわち、駆動リング304に対して抑え部材を一体に設けている。
【0051】
図16は、実施形態3の斜視図である。図17は、複数の絞り羽根305と駆動リング304の状態を抜粋して表した図である。実施形態3の駆動リング304は、抑え部位304gと遮光部位304kを有する。抑え部位304gと遮光部位304kの詳細と効果は、実施形態2と同様である。
【0052】
複数の絞り羽根305は、ベース部材302の方向に編み上がり、駆動リング304の抑え部位304gにより抑えられる。駆動リング304の抑え部位304gが絞り羽根305の編み上がりを抑え込むため、絞り開口位置を光軸方向に対して安定させることができる。
【0053】
このように、実施形態3は、駆動リング304に抑え機能を追加させることで、部品数を増やすことなく、絞り羽根305の編み上がりを抑えることができる。
【0054】
また、図18は、駆動リング304の応用形状を示す。実施形態1では、駆動リングの位置検知に、遮光部104fと不図示のフォトインタラプタを使用した。図18の駆動リングでは、遮光部位304kに複数のスリット形状304sを設け、それに対応する位置にフォトインタラプタを設けた。
【0055】
駆動リング304を回転させると、フォトインタラプタ等の出力はスリット有り無しの回数を検知するため、駆動リング304の回転量および位置を検出することが可能である。また、スリット形状304sは、蒸着等によって形成されるため、駆動リングの外形でスリットを形成させる場合に比べて、細いスリットを形成することができる。そのため、高い位置精度を実現することが可能である。
【0056】
実施形態1では、初期位置をフォトインタラプタで検出し、ステッピングモータのステップ数で絞り位置を検出していたが、駆動リング304にスリット形状304sを設けることで、初期位置だけでなく絞り位置を知ることが可能である。そのため、本実施形態では、ピエゾ素子など駆動距離の安定しない駆動部を使用しても正確な絞り位置を制御することが可能である。これにより、搭載できる駆動部の条件が緩和されるため、小型な駆動部を搭載することが容易になり、絞り装置の全体の小型化、薄型化が可能になる。
【0057】
<実施形態4>
図19には、本発明の実施形態4である羽根駆動装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。羽根駆動装置の光軸中心400の周囲を絞り装置が駆動される。図20は、実施形態4の斜視図である。実施形態4は、実施形態1〜3で記述した抑え部材の機能をカバー部材406に備えさせた例である。抑え部材の詳細と効果は、実施形態1〜3と同様であり、抑え部位406gと遮光部位406kを有する。複数の絞り羽根405は、カバー部材406の方向に編み上がり、カバー部材406により抑えられる。ベース部材402との間に絞り羽根405を移動可能に収容するカバー部材406が、絞り羽根405の編み上がりを抑え込むため、絞り開口位置を光軸方向に対して安定させることができる。
【0058】
このように、実施形態4は、カバー部材406に抑え機能を追加させることで、部品数を増やすことなく、絞り羽根405の編み上がりを抑えることができる。
【0059】
以上説明した各実施形態においては、抑え部材(抑え部位)を固定開口内の全ての部分に亘って設け、抑え部材には開口を設けないように構成している。抑え部材に開口を有するように構成すると、開口の端面における反射によって図14で説明したようなゴーストが発生しやすくなるが、この構成によれば、固定開口内、特に絞り開口内に抑え部材による開口が形成されないため、端面反射が起こらず、ゴーストの発生を低減できる。
【0060】
また、各実施形態においては、絞り羽根を編み込むようにして組み込むことによって編み上がる態様を例に挙げて説明したが、絞り羽根の構成としては必ずしも編み込み状でなくても良く、多数枚の絞り羽根を重ねた構成であっても良い。多数枚の絞り羽根を重ねた構成では、絞り羽根の駆動中の傾きにより、絞り羽根の先端が、固定開口内において、光軸方向に出っ張ることがある。抑え部材があれば、絞り羽根の先端の光軸方向の位置を規制することができるため、多数枚の絞り羽根を重ねる構成においても、小型化に有効である。
【符号の説明】
【0061】
101 絞り駆動部
102 ベース部材(地板)
103 ピニオンギア
104 駆動リング
105 絞り羽根
106 カバー
107 抑え部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20