(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維加工体又は合成樹脂多孔質体より構成されるペン先の外周部を硬めに、内部を柔らかめに形成し、先端形状を曲面形状に研磨形成することで、内部の柔らかい部分を露出させ塗布部とし、塗布時に塗布圧によりペン先の先端部の柔らかい層を弾性変形させ、先端及び硬めの外周層の先端を同時に被筆記面に接触させてなることを特徴とする塗布具用ペン先を用い、撹拌ボールとなる硬球を内蔵し、バルブ弁機構のセット荷重を、3.5N以上とすると共に、少なくとも水と着色剤と、分散剤と、固着樹脂と、濡れ剤とを含有し、着色剤は、粒子径が40nm〜100μmとなる隠蔽効果のあるものを用い、塗布液全量に対して、固形分合計で1〜50質量%である塗布液が収容されたことを特徴とする塗布具。
繊維加工体又は合成樹脂多孔質体より構成されるペン先の外周部を硬めに、内部を柔らかめに形成し、先端形状を曲面形状に研磨形成することで、内部の柔らかい部分を露出させ塗布部とし、塗布時に塗布圧によりペン先の先端部の柔らかい層を弾性変形させ、先端及び硬めの外周層の先端を同時に被筆記面に接触させてなることを特徴とする塗布具用ペン先を用い、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性マイクロカプセル顔料と、平均粒子径が0.05〜0.9μmの範囲にあるアルミナ粒子とを含有する塗布液が収容されたことを特徴とする塗布具。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明の塗布具用ペン先の実施形態の一例を示す、端面図と縦断面図であり、
図2は本発明の塗布具用ペン先の一例を示す電子顕微鏡写真図(SEM画像)であり、(a)は横断面写真図、(b)は縦断面写真図である。
本実施形態の塗布具用ペン先Aは、
図1に示すように、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体より構成されるペン先10の外周部11を硬めに、内部12を柔らかめに形成し、先端形状を曲面形状、例えば、砲弾形状に研磨形成することで、内部の柔らかい部分12を露出させ塗布部13とし、塗布時に塗布圧によりペン先10の先端部を柔らかい層を弾性変形させ、先端及び硬めの外周層11aの先端を同時に被筆記面に接触させてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、ペン先を構成する繊維加工体としては、例えば、繊維を収束して、溶着やバインダー樹脂等で接着硬化せしめた繊維束芯、繊維を熱や圧力、バインダーを混合して繊維同士を結合させたフェルトや不織布などが挙げられる。
用いることができる繊維としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系繊維、アクリル系繊維、アクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニル系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリエーテル系繊維、ポリフェニレン系繊維などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維が挙げられ、繊維糸の形態としては、フィラメント、スライバーなどを用いることができる。バインダー樹脂としては、接着硬化に用いられるものが挙げられ、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、等を挙げることができる。
【0012】
また、ペン先を構成する合成樹脂多孔質体としては、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂などの合成樹脂粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)、発泡体などが挙げられる。
【0013】
ペン先を構成する上記繊維加工体又は合成樹脂多孔質体において、ペン先10の外周部11を硬めに、内部12を柔らかめに形成する方法としては、例えば、繊維加工体では、内部側の溶着度合いやバインダー樹脂量を少なくし、外周部側の溶着度合いや、バインダー樹脂量を多くしたり、また、繊維を束ね熱溶着する際、外部側を強固に溶着させた後、バインダー樹脂を浸透させる、また、内部側の繊維量を外部側より少なくする事で、バインダーが染み込む毛管力バランスを調整(繊維量が多いと密になり、毛管力高い)することにより、また、合成樹脂多孔質体では、例えば、外部側の粒子径を内部側の粒子径より小さくする(接着比表面積を外側部の方を大きくする)、また、溶融温度条件で外部側の温度を内部側の温度より高くすることにより、形成することができる。
図2は、得られた繊維加工体から構成される塗布具用ペン先の一例を示す電子顕微鏡写真図(SEM画像)であり、(a)は横断面写真図、(b)は縦断面写真図であり、図面から明らかなように、内部は疎状態であり、外周層は密状態であり、ペン先の外周部が硬めに、内部が柔らかめに形成されていることが判る。
【0014】
本発明において、塗布具用ペン先の大きさとしては、塗布具の用途により変動するものであるが、円柱状の場合は、直径8mm×長さ30mmである。
また、硬めの外周層11aと内部の柔らかい層12は、内部と外周層の断面硬度差で、本発明の効果を高度に発揮せしめる点から、芯径(直径)×(外周側から20%の位置)で2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは、5倍以上10倍以下であることが望ましい。
また、好ましくは、芯径はφ7mm以上とし、筆記荷重300g、筆記角度70°における描線幅を4〜6mmとすることが望ましい。
【0015】
本発明における塗布具用ペン先の内部と外周層の断面硬度差は、下記の方法で計測(測定)したものである。一般の硬度計では形状的に測定が困難なため、硬度計と同形状の端子(タイプD(置針式):先端R0.1、30°円すい形)を荷重試験機に取り付け、変位−荷重特性で計測した。
具体的には、
図3(a)に示すように、荷重試験機Bの6点保持片を有する治具20に測定する塗布具用ペン先Aを保持せしめ、上方側から先端に端子21を備えた荷重変位器22を下方側に移動させて、所定位置での内部と所定位置(芯径×20%の位置)での外周層の断面硬度を計測することができる。本実施形態の計測では、内部と外周層の断面硬度の誤差を極力なくすために、
図3(b)に示すように、外周側11(芯径×20%の位置から外側)を所定間隔で4カ所、内部側12を所定位置で5ヶ所の計測をし、平均値を算出したものである。
図3(c)は、塗布具用ペン先の断面硬度の計測結果の一例を示す変位(mm)と荷重(N)を示す特性図であり、内部と外周層の断面硬度差に約6倍の荷重差(硬度差)があることが判る。
【0016】
本発明では、上述の繊維加工体、合成樹脂多孔質体において、用いる繊維種及びその量、合成樹脂種及びその量、各製法による溶着度合い、バインダー樹脂量、燒結方法、発泡方法等を好適に組み合わせることなどにより、ペン先10の外周部11を硬めに、内部12を柔らかめに形成した加工前の塗布具用ペン先を得ることができ、本実施形態では、円柱状のペン先10の外周部11が硬めに、内部12が柔らかめに形成した塗布具用ペン先を得ることができる。この塗布具用ペン先の先端形状を塗布に好適な形状となる曲面形状、例えば、砲弾形状に研磨形成することで、
図1に示すように、内部の柔らかい部分12を露出させ塗布部13とすることができ、塗布時に塗布圧によりペン先10の先端部を柔らかい層を弾性変形させ、先端及び硬めの外周層11aの先端を同時に被筆記面に接触させることができるものとなる。
【0017】
図4及び
図5は、本発明の一例を示す塗布具用ペン先と従来の硬度差がないペン先との相違を説明する説明図であり、
図4(a)は、限られた外径寸法で、描線幅を太くできることを説明する説明図、(b)は耐潰れ性を説明する説明図、
図5は、塗布(筆記)角度依存性の相違を説明する説明図である。
なお、
図4及び
図5において、本発明の塗布具用ペン先を図示符号「A」で表示し、従来の通常の塗布具用ペン先を図示符号「Z」で表示する。また、図示符号「Y」は塗布(筆記)面を示し、矢印符号は描線幅を示す。
【0018】
本発明の塗布具用ペン先Aでは、
図4(a)に示すように、ペン先内部12を柔らかくしており、先端を砲弾型に研磨すると、柔らかい部分(内部層)12が露出する。これにより、塗布(筆記)時に塗布圧(筆圧)が加われれば、先端が弾性変形するため、太い描線幅が実現する。一方、通常の塗布具用ペン先Zでは、全体的に硬く、筆記時に変形させないようにしているため、描線幅が細くなってしまうものであった。本発明の塗布具用ペン先Aによれば、限られた外径寸法で、描線幅を太くすることができることとなる。
【0019】
また、本発明の塗布具用ペン先Aでは、
図4(b)に示すように、ペン先単体で、柔らかい部分(内部層)12と硬い外周層11aとを有しており、柔らかい内部層12の潰れを硬い外周層11aが保護する(耐潰れ性に優れる)ため、初筆から終筆までの描線幅変化を小さくすることができる。
更に、本発明の塗布具用ペン先Aでは、
図5に示すように、先端部は柔らかく変形しやすいため、筆記角度依存性があまりなく、ほぼ同じ描線幅を実現できるものとなる。一方、通常の塗布具用ペン先Zでは、先端部が硬い場合、先端R形状にもよるが、筆記角が寝るほど、描線幅が太くなる傾向となる。本発明の塗布具用ペン先Aによれば、塗布角度による描線幅変化(塗布角度依存性)も少なくすることができる。
【0020】
このように構成される本発明の塗布具用ペン先は、上述の如く、限られた外径寸法で、極力、描線幅を太くし、塗布角度による描線幅変化(塗布角度依存性)も少なく、耐潰れ性に優れたものであり、各種構造等の塗布具のペン先として用いることができる。
これらの塗布具用ペン先Aを用いた塗布具としては、各機構の塗布具、例えば、直液式塗布具、中綿式塗布具、バルブ機構を備えた塗布具、ノック式塗布具などに用いることができ、用途では、筆記具用ではマーキングペン、サインペン、筆ペン、筆記板用ペンなど、塗布具用では、化粧液塗布具、修正液塗布具、薬液塗布具、塗料液塗布具などが挙げられる。
【0021】
図6〜
図8は、本発明の塗布具用ペン先を用いた塗布具30の一例を示すものである。
この塗布具30は、
図6に示すように、撹拌ボールとなる硬球40を内蔵したバルブ弁式塗布具であり、塗布液を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となる塗布液タンク部31を有し、該タンク部31に螺合により固着される先軸32を備え、先軸32内には、本発明の塗布具用ペン先Aを保持すると共に、塗布液吸蔵体33を有し、タンク部31の塗布液はバルブ弁機構34を介在して上述の本発明の塗布具用ペン先Aへ塗布液が供給される構成となっている。なお、バルブ弁機構34のセット荷重を、塗布具用ペン先Aが筆記による十分な変形を与えた後に圧縮し、その荷重を本実施形態では3.5N以上とすることが好ましい。セット荷重とは、塗布具用ペン先Aの後端面が筆圧等の加圧により軸体(塗布液タンク部31及び先軸32)に対して相対的に後方に移動を開始する際における塗布具用ペン先Aに加わる荷重を意味する。
【0022】
上記塗布具のタンク部31に収容される塗布液としては、各用途の塗布具により変動するものであり、筆記具用では、水性インク組成物、油性インク組成物などを用いることができ、塗布具用では、マニキュアなどの化粧液、修正液、薬液、塗料液などを用いることができる。
用いる塗布液としては、好ましくは、粘度が25℃における回転粘度計にて10rpmでの測定値が1〜100mPa・sである塗布液が収容されていることが好ましい。なお、粘度は、塗布液の流出やインク流出の点から、塗布液の粘度が25℃における回転粘度計にて10rpmでの測定値で、4.0〜40.0mPa・sであることが望ましい。
このインク粘度が1.0mPa・s未満のものは、調合が非常に困難であるうえに、仮に調合出来たとしても、インク流量が多く、描線乾燥性が悪くなり、好ましくなく、一方、100mPa・sを超えて大きいと、インク流量が少なく、隠ぺい性を確保できなくなり、好ましくない。
また、塗布液の表面張力は、好ましくは、4〜45mN/m(測定温度:25℃、測定器:協和界面科学社製 表面張力測定器)、より好ましくは、15〜45mN/mの範囲が望ましい。上記特性の塗布液とすることでペン芯が変形しても安定した塗布幅(筆記幅)を確保することができる。この表面張力が4mN/m未満では、直流現象を起こしやすく、また顔料の沈降や凝集を起こしやすくなってしまう。一方、45mN/mを越えると、保存環境や筆記状態によってインク流出量が不安定になり、描線の濃度や幅にバラツキを生じやすくなってしまうので、好ましくない。
また、用いる塗布液は、少なくとも、着色剤と、分散剤と、固着樹脂と、濡れ剤と、水とを組み合わせることが好ましい。
更に、筆記具のインク流量が、100gの荷重で、筆記角度70°、10m/minの筆記速度で100〜400mg/2.5mとすることが好ましい。
【0023】
図6〜
図8の塗布具30で、用いた塗布液は、少なくとも、水と着色剤と、分散剤と、固着樹脂と、濡れ剤とを含有するインク組成物を用いた。
ここで挙げるインク組成物の詳細を述べると、着色剤は、隠蔽効果のある酸化チタン粒子、硫化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子、硫酸バリウム粒子、アルミニウム粉、パール顔料および、これらの粒子が複合した粒子から選ばれる粒子、あるいは、これらの粒子の分散体であって、粒子径が40nm〜100μmとなるものを用いることが好ましい。なお、上記各着色剤における「粒子径」は、一次粒子径を意味する。また、含有量は、インク組成物全量に対して、固形分合計で1〜50質量%、好ましくは、2〜35質量%とすることが望ましい。この隠蔽剤の合計含有量が1質量%未満では、十分な隠蔽力を発揮することができず、また、均一な濃度描線が得られにくく、一方、50質量%を超えると、インク粘度が上昇してしまうか、粒子の沈降体積が多くなり、好ましくない。
【0024】
分散剤及び固着樹脂は、水溶性樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、水溶性スチレン−アクリル樹脂、水溶性スチレン・マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコ−ル、水溶性エステル−アクリル樹脂、エチレン−マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等の分子内に疎水部を持つ水溶性樹脂、また、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、スチレン−ブタジエンエマルジョン、スチレンアクリロニトリルエマルジョンなどの樹脂エマルジョンなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、隠蔽剤および顔料の分散性、粘度調整、並びに、固着力向上の点から、上記の水溶性樹脂および樹脂エマルジョンからそれぞれ1種類以上、計2種類以上の使用が望ましい。これらの水溶性樹脂の含有量は、インク組成物全量に対して、1〜20質量%、好ましくは、5〜15質量%とすることが望ましい。この水溶性樹脂の含有量が1質量%未満では、分散性と固着性を確保することが難しくなり、一方、20質量%を超えると、高粘度なってインクの追随性が悪くなり、好ましくない。
【0025】
濡れ剤は、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオ キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリン・アルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミドなどの非イオン性界面活性剤;、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N‐アシルアミノ酸塩、N‐アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、α‐オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基親水性基含有ウレタン、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアンモニウム 塩、パーフルオロアルキルアルコキシレート、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤は、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0026】
また、塗布液は、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から異なる別の有色、無色から有色などとなる機能を有する熱変色性インクとしてもよい。前記熱変色性インクは、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性マイクロカプセル顔料とを含有するものである。用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N−−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。好ましくは、熱により有色から無色となるロイコ色素の使用が望ましい。
【0027】
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
用いることができる顕色剤としては、具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス( 4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、前記したロイコ色素1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0029】
用いることができる変色温度調整剤は、前記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。
用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0030】
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1〜1000質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
【0031】
用いる熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2〜5μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0032】
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0033】
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
用いる熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、好ましくは、摩擦熱等の熱により有色から無色となる熱変色性マイクロカプセル顔料の使用が望ましい。
【0034】
用いる熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア樹脂、ウレタン/ウレア樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。ウレア樹脂としては、イソシアネートとアミンとの化合物が挙げられる。ウレタン/ウレア樹脂としては、イソシアネートとポリオール/アミンとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。
マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
【0035】
用いる熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2〜5μm、更に好ましくは、0.2〜3μmであるものが望ましい。なお、本発明(実施例等含む)で規定する熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径とは、粒度分布計〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて測定した、体積基準におけるメジアン径を意味する。
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化や熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下が発生し、好ましくない。
なお、上記平均粒子径の範囲(0.2〜5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0036】
〈アルミナ粒子〉
また、塗布液に平均粒子径が0.05〜0.9μmの範囲にあるアルミナ粒子とを含有することを含むことが好適である。本発明に用いるアルミナ粒子としては、従来公知の粒子が使用可能である。そのメカニズムの詳細は不明であるが、本発明のインク組成物によって紙面などに描画した筆記描線等を消し具などにより擦ると、当該粒子により熱変色性のマイクロカプセル顔料に熱が伝わりやすくなり、従来よりも、軽い力で、より少ない摩擦回数で更に簡単に消色させる機能を発揮せしめるものであると推察される。
【0037】
用いることができるアルミナ粒子としては、粒子の分散安定性および描線の色相を損なわない点から、これらの粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.05〜1μm、更に好ましくは、0.05〜0.5μm、特に好ましくは、0.05〜0.3μmである。なお、本発明(実施例等含む)で規定するアルミナ粒子の平均粒子径とは、粒度分布測定機〔N4Plus(COULTER社製)〕〕にて測定した、散乱光強度基準による調和平均粒子径(直径)を意味する。
この平均粒子径が0.05μm未満であると、十分な消去性効果が得られない場合があり、一方、0.9μmを超えると、アルミナ粒子由来の白さが描線に表れるため好ましくない。
【0038】
用いることができるアルミナ粒子としては、具体的には、日本アエロジル社製の酸化アルミニウムC、シーアイ化成製のナノテックAl2O3、住友化学製の高純度アルミナAKP−3000、アドマテックス製のアドマファインAO−802、大明化学製のタイミクロンTM−DAなどが挙げられる。
【0039】
熱変色性のマイクロカプセル顔料の含有量は、好ましくは、インク組成物全量に対して、5〜30質量%(以下、単に「%」という)であり、さらに好ましくは、10〜20%とすることが望ましい。
この熱変色性マイクロカプセル顔料の含有量が5%未満であると、着色力、発色性が不十分となる場合があり、一方、30%を超えると、カスレが生じる場合があり、好ましくない。
【0040】
アルミナ粒子の含有量は、好ましくは、インク組成物全量に対して、0.1〜10質量%(以下、単に「%」という)であり、さらに好ましくは、1〜5%とすることが望ましい。このアルミナ粒子の含有量が0.1%未満であると、消去性の効果が十分でない場合があり、一方、10%を超えても発明の効果は変わらず、またアルミナ粒子由来の白さが描線に表れる場合があり好ましくない。
【0041】
熱変色性インクを用いた塗布液において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料、水性インク組成物の場合は、上記アルミナ粒子の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)、油性インク組成物の場合は、残部として有機溶媒の他、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0042】
用いることができる有機溶媒としては、公知の筆記具用油性インクに使用できる有機溶媒が挙げられる。例えば、エタノール、(イソ)プロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ3−メチル1−ブタノールなどのグリコールエーテル類、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールなどの芳香族アルコール類、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのグリコール類、グリコールのアルキレンオキサイド付加物を単独或いは混合して使用することができる。
【0043】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどを単独或いは混合して使用することができる。
【0044】
用いることができる増粘剤としては、水性インク組成物の場合は、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が望ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
油性インク組成物の場合は、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。なお、これらの樹脂は上記増粘剤として使用される他、顔料分散剤や体質剤などの各種用途としても使用することができる。
【0045】
前記溶媒への溶解性に応じて、潤滑剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0046】
この塗布液を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0047】
この塗布液では、熱変色性マイクロカプセル顔料と、平均粒子径が0.05〜1μmの範囲にあるアルミナ粒子を含むインクを処方し、紙面、書類等に筆記、描画等した後、紙面等に固着した筆記描線等をゴム弾性を有する材料で構成された消し具などにより擦ると、筆記描線中に含まれるアルミナ粒子により従来よりも軽い力で、より少ない摩擦回数で簡単にかつ確実に消色することができるものとなる。
【0048】
図7及び
図8は、本発明の塗布具用ペン先を用いた塗布具の各使用状態を示す縦断面図である。
図7では、塗布具20を塗布面Yに対して鉛直にして塗布する場合、
図4(a)で示したものと同様に、ペン先内部を柔らかくしており、先端を砲弾状に研磨しているので、柔らかい部分(内部層)が露出しているので、塗布(筆記)時に塗布圧(筆圧)が加われれば、先端が弾性変形するため、太い描線幅が実現するため、限られた外径寸法で、描線幅を太くすることができるものとなっている。
図8では、塗布具20を塗布面Yに対して斜めにして塗布する場合、
図4(b)、
図5で示したものと同様に、柔らかい内部層の潰れを硬い外周層が保護する(耐潰れ性に優れる)ため、初筆から終筆までの描線幅変化を小さくすることができ、更に、先端部は柔らかく変形しやすいため、筆記角度依存性が少なく、ほぼ同じ描線幅を実現できるものとなっている。
【0049】
本発明の塗布具用ペン先、これを用いた塗布具は、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
本発明の塗布具用ペン先の技術思想は、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体より構成されるペン先の外周部を硬めに、内部を柔らかめに形成し、先端形状を曲面形状、例えば、砲弾形状に研磨形成することで、内部の柔らかい部分を露出させ塗布部とし、塗布時に塗布圧によりペン先の先端部を柔らかい層を弾性変形させ、先端及び硬めの外周層の先端を同時に被筆記面に接触させてなることを特徴とするものであるため、例えば、上記曲面形状として砲弾形状以外に、球形状、ドーム形状などにすることができ、また、上記実施形態では、円柱状の繊維加工体を用いて塗布具用ペン先としたが、シート状の繊維加工体(フエルト)や合成樹脂多孔体(焼結芯)を用いて塗布具用ペン先とすることができる。
【0050】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
下記構成及び
図1、
図6〜
図8に準拠する塗布具用ペン先、塗布具、塗布液を使用した。塗布具用ペン先A等の寸法等は下記に示す大きさのものを使用した。
【0052】
(塗布具用ペン先Aの構成)
原料としてポリエステル繊維を用い、内部側の繊維量を外部側より少なくすることで、バインダーが染み込む毛管力バランスを調整して、ペン先10の外周部11を硬めに、内部12を柔らかめに形成した加工前の塗布具用ペン先(直径8mm×長さ27mm、硬めの外周層の長さ25mm)を得、この塗布具用ペン先の先端形状を塗布に好適な形状となる砲弾形状に研磨形成して、
図1に示す、内部の柔らかい部分12を露出させた塗布部13とした。柔らかめの内部層12の直径は約6.5mmであった。
得られた塗布具用ペン先の内部と外周層の断面硬度差を
図3(a)及び(b)に示す計測装置、計測手順などにより、計測した。
図3(c)に、その計測結果を示す。
【0053】
(塗布具30、塗布液の構成)
塗布具は、
図6〜
図8に準拠するバルブ式塗布具を用いた。
(塗布液組成)
塗布液として、下記組成の筆記具用インク(合計100質量%)を使用した。
着色剤:酸化チタン 30質量%
分散剤及び固着剤:スチレンアクリル樹脂 10質量%
濡れ剤:フッ素系界面活性剤 0.01質量%
水(溶媒):イオン交換水 残 分
粘度(25℃、10rpm、回転粘度計(TV−20、TOKIMEC製):5.8mPa・s
表面張力:24mN/m(測定温度:25℃、測定器:協和界面科学社製 表面張力測定器)
【0054】
この実施例1の塗布具用ペン先を取り付けた塗布具によれば、限られた外径寸法(8mm)で、極力、描線幅(5mm)を太くし、塗布角度による描線幅変化(塗布角度依存性)も少なく、耐潰れ性に優れた塗布具用ペン先、これを用いた塗布具が得られることが確認された。また、
図3(c)の計測結果から、本実施例1の塗布具用ペン先では、内部と外周層の断面硬度差に約6倍の荷重差(硬度差)があることが確認された。
また、塗布液として、上記筆記具用インクを用いたものであったが、優れた描線品位、固着性、耐水性、耐光性、耐擦過性を有するものであった。
【0055】
〔実施例2〕
原料としてポリアミド繊維を用い、内部側の繊維量を外部側より少なくする事で、バインダーが染み込む毛管力バランスを調整して、ペン先10の外周部11を硬めに、内部12を柔らかめに形成した加工前の塗布具用ペン先(直径8mm×長さ30mm、硬めの外周層の長さ:25mm)を得、この塗布具用ペン先の先端形状を塗布に好適な形状となる砲弾形状に研磨形成して、
図1に示す、内部の柔らかい部分12を露出させた塗布部13とした。柔らかめの内部層12の直径は約6.5mmであった。
この実施例2の塗布具用ペン先を取り付けた塗布具によれば、限られた外径寸法(8mm)で、極力、描線幅(5mm)を太くし、塗布角度による描線幅変化(塗布角度依存性)も少なく、耐潰れ性に優れた塗布具用ペン先、これを用いた塗布具が得られることが確認された。また、実施例1と同様に塗布具用ペン先における、内部と外周層の断面硬度差を計測したところ、約3倍の荷重差(硬度差)があることが確認された。
また、塗布液として、上記筆記具用インクを用いたものであったが、実施例1と同様に、優れた描線品位、固着性、耐水性、耐光性、耐擦過性を有するものであった。