特許第6982999号(P6982999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982999
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】経路決定装置と経路決定方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20211206BHJP
【FI】
   G05D1/02 H
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-141080(P2017-141080)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-21197(P2019-21197A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】矢代 裕之
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136995(JP,A)
【文献】 特開2011−170843(JP,A)
【文献】 特開2012−113429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置の移動経路を決定する経路決定装置であって、
前記移動経路に関して、環境地図データにおける目標点と経由点を人が入力装置を用いて指定した場合に、前記目標点と前記経由点とを受ける指定受信部と、
前記目標点と前記経由点に基づいて、前記環境地図データにおいて障害物に干渉しない前記移動経路を探索して決定する探索装置を備え、
前記探索装置は、
前記環境地図データにおいて、前記経由点を含む局所領域内に複数の候補点を生成し、前記目標点を含む別の局所領域内に複数の候補点を生成する候補点生成部と、
複数の前記局所領域からそれぞれ1つずつ選択した前記候補点の組み合わせを1つの組み合わせとして、複数の組み合わせを特定する組生成部と、
特定した複数の前記組み合わせの各々について、各前記候補点を通る候補経路を生成し、各前記候補経路が障害物に干渉するか否かを判断する候補経路生成部と、
障害物に干渉しないと判断された各前記候補経路について、予め定めた評価関数に従って評価値を求め、最良の評価値を持つ複数の前記候補経路から前記候補経路を選択し、選択した該候補経路を前記移動装置の前記移動経路として決定する評価部と、を備える、経路決定装置。
【請求項2】
前記移動経路に関して、前記目標点と前記経由点に加えて、前記目標点における前記移動装置の向きを示す目標点向きを、人が入力装置を用いて指定した場合に、
前記指定受信部は、前記目標点と前記経由点と前記目標点向きを受け、
前記候補経路生成部は、前記組生成部が特定した複数の前記組み合わせの各々について、前記目標点の前記候補点における向きが前記目標点向きとなり且つ各前記候補点を通る前記候補経路を生成する、請求項1に記載の経路決定装置。
【請求項3】
前記移動経路に関して、前記目標点と前記経由点に加えて、前記経由点からの前記移動装置の移動が前進または後進であることを示す経由点の進行向きを、人が入力装置を用いて指定した場合に、
前記指定受信部は、前記目標点と前記経由点と前記経由点の前記進行向きを受け、
該進行向きが前記経由点の前記候補点からの進行向きであるとして、前記探索装置は、決定した前記移動経路を表わし且つ当該移動経路における前記候補点からの前記進行向きを含む経路データを前記移動装置の移動制御装置へ出力する、請求項1または2に記載の経路決定装置。
【請求項4】
前記指定受信部が複数の前記経由点を受けた場合には、前記候補点生成部は、前記経由点毎に、該経由点を含む前記局所領域内に複数の候補点を生成し、
探索する前記移動経路の開始点が、前記移動装置の現在位置であり、
前記候補経路生成部は、各前記組み合わせについて、
(a)局所経路を生成する処理と、
(b)前記(a)で生成した前記局所経路が前記環境地図データにおいて障害物に干渉するかの判断を行う処理と、を繰り返し、
最初に行う前記(a)では、前記目標点の前記候補点又は前記開始点を生成起点とし、生成起点の次の前記候補点を端点として、該生成起点から該端点まで延びる局所経路を生成し、2回目以降に行う前記(a)では、前回の前記(a)で生成した前記局所経路の端点を新たな生成起点とし、該生成起点の次の前記候補点を端点として、該生成起点から該端点まで延びる次の局所経路を生成し、最後に行う前記(a)では、前回の前記(a)で生成した前記局所経路の端点を新たな生成起点とし前記目標点の前記候補点又は前記開始点を端点として、該生成起点から該端点まで延びる局所経路を生成し、
前記開始点と前記目標点の前記候補点の一方から他方まで至る経路を構成する各前記局所経路が障害物に干渉しないと前記(b)で判断された前記組み合わせを特定し、該組み合わせの各前記局所経路により構成される経路を、障害物に干渉しない前記候補経路とする、請求項1、2または3に記載の経路決定装置。
【請求項5】
前記候補経路生成部は、前記(a)において、
前記目標点の前記候補点を前記局所経路の前記生成起点又は前記端点とする場合、該生成起点または該端点における接線方向が指定された目標点向きになる該局所経路を生成し、
前記開始点を前記局所経路の前記生成起点又は前記端点とする場合、該生成起点または該端点における接線方向が、前記現在位置の前記移動装置の向きになる該局所経路を生成する、請求項4に記載の経路決定装置。
【請求項6】
前記候補経路生成部は、2回目以降に行う前記(a)において、
前回の前記(a)で生成した前記局所経路の前記端点での接線方向を基準方向として、前記生成起点での接線方向が基準方向となる前記局所経路を生成する、請求項4または5に記載の経路決定装置。
【請求項7】
移動装置の移動経路を経路決定装置により探索して決定する経路決定方法であって、
(A)前記移動経路に関して、環境地図データにおける目標点と経由点を人が入力装置を用いて指定した場合に、前記目標点と前記経由点とを受け、
(B)前記目標点と前記経由点に基づいて、前記環境地図データにおいて障害物に干渉しない前記移動経路を探索して決定し、
前記(B)では、
前記環境地図データにおいて、前記経由点を含む局所領域内に複数の候補点を生成し、前記目標点を含む別の局所領域内に複数の候補点を生成し、
複数の前記局所領域からそれぞれ1つずつ選択した前記候補点の組み合わせを1つの組み合わせとして、複数の組み合わせを特定し、
特定した複数の前記組み合わせの各々について、各前記候補点を通る候補経路を生成し、各前記候補経路が障害物に干渉するか否かを判断し、
障害物に干渉しないと判断された各前記候補経路について、予め定めた評価関数に従って評価値を求め、複数の前記候補経路から、最良の評価値を持つ前記候補経路を選択し、選択した該候補経路を前記移動装置の前記移動経路として決定する、経路決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置の移動経路を決定するための支援情報を人が入力した場合に、この情報に基づいて移動装置の移動経路を決定する経路決定装置と経路決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火山の噴火や原子力発電所の事故などにより被災した地域において又は他の危険地域において、物資輸送、土木作業、偵察などを行うために、無人の移動装置を用いることがある。
また、空港や航空基地などの広大な場所をパトロールするために、カメラなどの監視用センサを搭載した無人の移動装置を用いることがある。
【0003】
無人移動装置を制御しながら走行させる方法として、遠隔操作方法、自律制御方法、および半自律制御方法がある。遠隔操作方法では、移動装置から離れた位置で、移動装置から送信されてくる環境データ(例えば移動装置の周囲の状況を示す画像データ)を見ながら、人が操作装置を操作することにより、移動装置の移動(進行方向や速度など)を制御する。自律制御方法では、移動装置に設けた移動制御装置により、予め設定された位置へ移動するように移動装置の移動を制御する。半自律制御方法は、遠隔操作方法と自律制御方法の中間に相当する方法である。すなわち、半自律制御方法では、移動装置が自動で移動している時に、移動装置から離れた位置で、人が操作装置を操作することにより、移動装置の移動(例えば進行方向)を制御できる。
【0004】
遠隔操作方法、自律制御方法、および半自律制御方法のいずれの場合も、移動装置の周囲の環境データ(例えばカメラが撮像した画像データや、レーザレーダが取得した周囲の計測点群の位置データ)を取得して、どこに障害物が存在するのかを認識する。この障害物の認識に基づいて、移動装置の進行方向側における障害物の手前で移動装置を停止させ、または、障害物を回避するよう移動装置の移動を制御する。
【0005】
上述したような無人移動装置の走行方法は、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5647905号
【特許文献2】特許第5969903号
【特許文献3】特許第5498178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、移動装置の円滑な走行が困難となりそうな場合があり得る。これは、一例では、移動装置の進行方向側における分岐路の状況によって生じる。
例えば、狭い走行路において、右折または左折により分岐路へ進入する時に移動装置の向きを90度より大きく変えなければならない場合に、分岐路への進入に失敗する可能性がある。あるいは、移動装置を、狭い分岐路へ右折または左折により進入させる場合に、分岐路への進入に失敗する可能性がある。なお、このような問題は、遠隔操作方法、自律制御方法、および半自律制御方法のいずれにおいても生じ得る。
【0008】
そこで、本発明の目的は、移動装置の円滑な走行が困難となりそうな場合に、状況に適した移動経路を探索して決定できる新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る経路決定装置は、移動装置の移動経路を決定する装置である。経路決定装置は、移動経路に関して、環境地図データにおける目標点と経由点を人が入力装置を用いて指定した場合に、目標点と経由点とを受ける指定受信部と、目標点と経由点に基づいて、環境地図データにおいて障害物に干渉しない移動装置の移動経路を探索して決定する探索装置を備える。探索装置は、環境地図データにおいて、経由点を含む局所領域内に複数の候補点を生成し、目標点を含む別の局所領域内に複数の候補点を生成する候補点生成部と、複数の局所領域からそれぞれ1つずつ選択した候補点の組み合わせを1つの組み合わせとして、複数の組み合わせを特定する組生成部と、特定した複数の組み合わせの各々について、各候補点を通る候補経路を生成し、各候補経路が障害物に干渉するか否かを判断する候補経路生成部と、障害物に干渉しないと判断された各候補経路について、予め定めた評価関数に従って評価値を求め、複数の候補経路から、最良の評価値を持つ候補経路を選択し、選択した候補経路を、移動装置の移動経路として決定する評価部と、を備える。
【0010】
本発明に係る経路決定方法は、移動装置の移動経路を経路決定装置により探索して決定する方法である。経路決定方法では、次の(A)(B)を行う。
(A)移動装置の移動経路に関して、環境地図データにおける目標点と経由点を人が入力装置を用いて指定した場合に、目標点と経由点とを受ける。
(B)目標点と経由点に基づいて、環境地図データにおいて障害物に干渉しない移動装置の移動経路を探索して決定する。
(B)では、次の(B1)〜(B4)を行う。
(B1)環境地図データにおいて、経由点を含む局所領域内に複数の候補点を生成し、目標点を含む別の局所領域内に複数の候補点を生成し、
(B2)複数の局所領域からそれぞれ1つずつ選択した候補点の組み合わせを1つの組み合わせとして、複数の組み合わせを特定し、
(B3)特定した複数の組み合わせの各々について、各候補点を通る候補経路を生成し、各候補経路が障害物に干渉するか否かを判断し、
(B4)障害物に干渉しないと判断された各候補経路について、予め定めた評価関数に従って評価値を求め、複数の候補経路から、最良の評価値を持つ候補経路を選択し、選択した候補経路を、移動装置の移動経路として決定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、移動経路に関して、環境地図データにおける目標点と経由点が人により指定され、目標点と経由点を支援情報として受け、この支援情報に基づいて移動経路を探索する。このように、移動装置が移動可能な経路を、人の支援を受けて経路決定装置が探索して決定できる。したがって、経路決定装置だけの探索では、円滑に移動できる経路を探索するのが困難となりそうな場合でも、経路決定装置は、人の支援を受けることにより、状況に適した移動経路を探索して決定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】移動装置と支援装置を含む遠隔操作システムを示す。
図2】移動装置と支援装置の構成を示すブロック図である。
図3】(A)は環境地図データを示し、(B)は経路決定の支援情報が指定された環境地図データを示す。
図4】本発明の実施形態による経路決定装置の構成を示すブロック図である。
図5】(A)は候補点が生成された環境地図データを示し、(B)は1つの候補経路を表わした環境地図データを示す。
図6】移動制御装置のモードの切り替えを示す説明図である。
図7】自律モードと半自律モードの時における移動装置側の処理を示す。
図8】経路決定の支援方法を示す。
図9】本発明の実施形態による経路決定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、移動装置10と支援装置20を含む遠隔操作システムを示す。
【0015】
移動装置10の車体1は、車両として基本的な走行の機能を有し、地表面2(例えば舗装路または未舗装路)を移動するものであればよい。車体1は、図1のように地表面2と接する車輪が回転駆動されることにより移動する装輪タイプのものであってもよいし、地表面2と接する無端状ベルトが回転駆動されることにより移動する装軌(無限軌道)タイプのものであってもよい。あるいは、車体1は、装輪タイプと装軌タイプを組み合わせたハイブリッドタイプのものであってもよい。
【0016】
図2は、移動装置10と支援装置20の構成を示すブロック図である。
【0017】
(移動装置の構成)
移動装置10は、環境計測装置3、位置検出装置5、地図データ生成装置7、経路決定装置30、移動制御装置9、および通信装置11を含む。例えば、移動装置10は無人で移動するものである。
【0018】
環境計測装置3は、移動装置10の進行方向側の領域を含む範囲における状況を示す環境データ(障害物と走行可能領域を示すデータ)を取得する。環境計測装置3は、カメラまたはレーザレーダであってよい。レーザレーダは、例えばレーザレンジファインダ(LRF)やLIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)と呼ばれる機器であってよい。環境計測装置3がカメラである場合には、環境データは、カメラが撮像した画像データである。環境計測装置3がレーザレーダである場合には、環境データは、3次元空間内に物体が存在する箇所を示すデータである。
【0019】
位置検出装置5は移動装置10に設けられる。位置検出装置5は、地表面2に固定された座標系(以下で固定座標系という)における移動装置10の車体1の現在位置(以下で移動装置10の現在位置ともいう)を検出する。位置検出装置5は、例えばIMU(inertial measurement unit)とGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機と、演算部とを有する。IMUは、車体1に固定された3軸の方向の加速度と、これら3軸まわりの角速度を検出する。GNSS受信機は、複数の航法衛星(例えばGPS衛星)から電波を受信し、これらの電波に基づいて移動装置10の位置を求める。演算部は、IMUが検出した上述の加速度および角速度と、GNSS受信機が求めた移動装置10の位置とに基づいて、移動装置10の現在位置を精度よく求める。
なお、位置検出装置5は、固定座標系における移動装置10の現在位置を検出できれば、上述の構成に限定されず他の構成を有していてもよい。
【0020】
地図データ生成装置7は、環境計測装置3が取得した環境データと、位置検出装置5が検出した移動装置10の現在位置とに基づいて、固定座標系における環境地図データを生成する。環境地図データは、移動装置10の進行方向側の領域を含む範囲のデータであり、この範囲は、例えば移動装置10の周囲である。環境地図データは、移動装置10の現在位置を示すとともに、この現在位置に対して、移動装置10が走行可能な領域と、移動装置10が走行不能な障害物の領域とを示す。
【0021】
すなわち、環境地図データが表わす領域の範囲は、移動装置10の現在位置と、移動装置10が走行可能な領域と、移動装置10が走行不能な障害物の領域を含む。このような環境地図データが表わす領域の範囲(広さ)は、環境計測装置3が環境データを取得するために計測を行った範囲であってよい。環境計測装置3がカメラである場合には、環境地図データが表わす範囲は、当該カメラの撮像範囲であり、環境計測装置3がレーザレーダである場合には、環境地図データが表わす範囲は、当該レーザレーダの計測範囲であってよい。
【0022】
経路決定装置30は、支援装置20から経路探索の支援情報として後述の指定を受けない場合には、基本経路探索処理を行う。基本経路探索処理では、経路決定装置30は、地図データ生成装置7が生成した環境地図データにおいて障害物に干渉しない移動装置10の基本の移動経路を探索する。この処理の一例では、経路決定装置30は、予め設定された目標位置へ至るまでの移動装置10の基本の移動経路を生成する。基本経路探索処理の別の例では、目標位置の他に目標位置へ至るまでに移動装置10が通過する複数の経由位置も予め設定されており、経路決定装置30は、移動装置10が次に通過する経由位置へ至る基本の移動経路を生成する。
【0023】
環境計測装置3による環境データの取得と、位置検出装置5による移動装置10の現在位置の検出と、地図データ生成装置7による環境地図データの生成と、経路決定装置30による基本の移動経路の探索および決定は、移動装置10の移動中に繰り返し行われる。
【0024】
移動制御装置9は、経路決定装置30が決定した移動経路(基本の移動経路または後述の新たな移動経路)を移動装置10が移動するように移動装置10の移動を制御する。具体的には、この制御のために、移動制御装置9は、車体1のアクセル、ブレーキ、ステアリング、変速機などをそれぞれ操作する複数のアクチュエータの動作を制御する。
【0025】
通信装置11は、移動装置10から離れた位置にある支援装置20と無線通信する。例えば、通信装置11は、地図データ生成装置7が生成した環境地図データを支援装置20に送信する。また、通信装置11は、環境計測装置3が取得した環境データも支援装置20に送信してもよい。さらに、通信装置11は、上述の基本の移動経路と移動装置10の現在位置も支援装置20に送信してもよい。
【0026】
(支援装置の構成)
支援装置20は、経路決定装置30用に設けられ、通信装置21と表示装置23と入力装置25とを備える。支援装置20は、所定の場所へ置いた状態で使用されるもの(図1の装置20A)であってもよいし、人の手で持った状態で使用されるもの(図1の装置20B)であってもよい。
【0027】
通信装置21は、上述の環境地図データを移動装置10から受信する。通信装置21は、環境地図データの他に、上述の環境データと基本の移動経路と移動装置10の現在位置を移動装置10から受信してもよい。
【0028】
表示装置23は、通信装置21が受信した環境地図データ、または、環境地図データと環境データを、その画面25aに表示する。なお、通信装置21が基本の移動経路と移動装置10の現在位置も受信した場合には、表示装置23は、環境地図データにおいて基本の移動経路と移動装置10の現在位置も表示する。人は、表示された環境地図データなどを見て、移動装置10の経路生成を支援したい時には、そのための支援情報を、入力装置25を操作することにより入力できる。図3(A)は、環境地図データの一例を示す。図3(A)は、移動装置10が、走行可能領域Raの分岐路で左側の分岐路へ曲がって進入するはずが、曲がりきれずに障害物の直前で停止した状態を示す。
【0029】
入力装置25は、人に操作されることにより、環境地図データにおける各種の指定を支援情報として入力可能に構成されている。人が、表示装置23に表示された環境地図データを見ながら入力装置25を操作できるように、表示装置23と入力装置25が配置される。
【0030】
例えば、入力装置25により次の(1)〜(4)の指定を入力可能である。
(1)目標点:表示された環境地図データ(すなわち、環境地図データが表わす領域の範囲。以下同様)において、移動装置10を到達させる目標点の指定。目標点は、例えば環境地図データにおける分岐路内の点であってよいが、これに限定されない。
(2)目標点向き:目標点における移動装置10の向きを示す目標点向きの指定。
(3)経由点と経由点順序:移動装置10が目標点へ至る前に通過する経由点の指定。複数の(例えば2つ以上または3つ以上の)経由点を指定する場合には、これらの経由点が移動装置10により通過される順序(以下で単に経由点順序という)も入力装置25により指定する。
(4)進行向き:探索対象の移動経路の開始点P0(例えば移動装置10の現在位置)と各経由点について、この開始点P0または経由点からの移動装置10の移動が前進または後進であることを示す進行向きの指定。ここで、前進とは、移動装置10が移動装置10の前方側へ進むことを意味し、後進とは、移動装置10が移動装置10の後方側へ進むことを意味する。
【0031】
図3(B)は、図3(A)の環境地図データにおいて上記(1)〜(4)の指定をした状態を示す。図3(B)の例では次のように指定されている。環境地図データにおいて、目標点Ptと経由点P1〜P3が指定され、経由点P1〜P3の経由点順序(ここでは、P1、P2、P3の順序)が指定されている。目標点向きが矢印Xにより指定されている。移動装置10の現在位置P0から経由点P1までの進行向きは後進であり、経由点P1から経由点P2までの進行向きは前進であり、経由点P2から経由点P3までの進行向きは後進であり、経由点P3から目標点Ptまでの進行向きは前進である。
【0032】
入力装置25は、タッチパネル画面25aとマウス25bの一方または両方を有していてよい。
【0033】
タッチパネル画面25aにより目標点または経由点の指定をする場合には、例えば次の操作を行ってよい。人は、タッチパネル画面25aに表示されている環境地図データにおける目標点または経由点としたい箇所でタッチパネル画面25aを指またはタッチ用器具(例えばタッチペン)によりタッチ操作する。これにより、目標点または経由点の指定を行える。
【0034】
マウス25bにより上記目標点または経由点の指定をする場合には、例えば次の操作を行ってよい。人は、マウス25bの移動操作をすることにより、表示装置23の画面25aに表示されている環境地図データにおいて目標点または経由点としたい箇所にカーソルを位置させ、この状態でマウス25bのクリック操作をする。これにより、目標点または経由点の指定を行える。
【0035】
目標点向きの指定は、例えば次のように行われる。画面25aにおいて、(例えば環境地図データに含まれる目標点)に初期の矢印が自動的に表示され、この矢印の向きを、上述のタッチパネル画面25aに対する上述のタッチ操作、または、上述のマウス25bのクリック操作や移動操作などにより、変更して目標点向きを指定できる。
【0036】
進行向きの指定は、例えば次のように行われる。タッチパネル画面25aには、移動経路の開始点P0(図3では移動装置10の現在位置P0)が表示される。また、タッチパネル画面25aには、指定した経由点も表示される。初期状態では、開始点P0からの進行向きと各経由点からの進行向きの指定は、前進になっている。タッチパネル画面25aにおいて、表示された開始点P0の箇所または経由点の箇所で上述のタッチ操作をし、または、マウス25bの移動操作で、この箇所にカーソルを位置させてマウス25bのクリック操作をする。このようなタッチ操作またはマウス25bの操作により、開始点Pまたは経由点からの進行向きの指定が、前進と後進との間で切り替わる。開始点Pまたは経由点からの進行向きの指定が、前進か後進であるかがタッチパネル画面25aに表示される。例えば、タッチパネル画面25aに、図3(B)の環境地図データが表示され、図3(B)のように、開始点Pまたは経由点から延びている矢印の色により、当該点からの進行向きの指定が前進か後進であるかが表示されている。図3(B)では、黒塗り三角の矢印は前進を示し、白抜き三角の矢印は後進を示している。
【0037】
入力装置25は、上記(1)〜(4)の指定を行えるものであればよく、上述したタッチパネル画面25aやマウス25bの例に限定されず、キーボードや他の入力デバイスを有していてもよい。
【0038】
通信装置21は、入力装置25により入力された各指定を、これらの指令を行った環境地図データに対応づけた状態で移動装置10(すなわち通信装置11)へ送信する。
【0039】
(経路決定装置の構成)
図4は、経路決定装置30の構成を示すブロック図である。経路決定装置30は、基本探索部27を備える。経路決定装置30が支援装置20から経路探索の支援情報を受けない場合には、基本探索部27は、上述した基本経路探索処理を行うことにより基本の移動経路を生成して移動制御装置9へ出力する。基本探索部27は、上述した基本経路探索処理を行う限りにおいて、どのような構成を有していてもよく、例えば、環境地図データに基づいて移動経路を探索する公知の構成を有していてよい。
【0040】
経路決定装置30は、通信装置21,11を介して支援装置20から各指定を受けると、各指定に基づいて移動装置10の新たな移動経路を探索して決定する。そのために、経路決定装置30は、指定受信部31と探索装置32とを有する。
【0041】
指定受信部31は、通信装置21,11を介して支援装置20から、上記(1)〜(4)の指定を受ける。
探索装置32は、上記(1)〜(4)の指定に基づいて、環境地図データにおいて障害物に干渉しない新たな移動経路を探索して決定する。この時、探索する移動経路の開始点P0は、図3(A)の例では移動装置10の現在位置である。
【0042】
探索装置32は、候補点生成部33と、組生成部34と、候補経路生成部35と、評価部36とを有する。
【0043】
候補点生成部33は、環境地図データにおいて経由点を含む局所領域内に複数の候補点Q(以下で経由点の候補点Qともいう)を生成し、環境地図データにおいて目標点を含む局所領域内に複数の候補点Q(以下で目標点の候補点Qともいう)を生成する。指定受信部31が複数の経由点を受けた場合には、候補点生成部33は、経由点毎に、該経由点を含む局所領域内に複数の候補点Qを生成する。
【0044】
図5(A)は、図3(B)の各指定に対して候補点生成部33により候補点Qが生成された環境地図データを示す。図5(A)において、R1〜R3はそれぞれ経由点P1〜P3の局所領域を示し、Rtは目標点の局所領域を示し、各局所領域R1〜R3、Rt内の白い各四角は候補点Qを示す。各局所領域は、例えば、経由点または目標点がこの局所領域の中心部に位置する領域である。
【0045】
組生成部34は、複数の局所領域からそれぞれ1つずつ選択した候補点Qの組み合わせを1つの組み合わせとして、複数の組み合わせを特定する。
【0046】
候補経路生成部35は、特定した複数の組み合わせの各々について、該組み合わせの各候補点Qを通る候補経路を生成する。候補経路生成部35は、各組み合わせについて、次の処理(a)と処理(b)を繰り返す。
(a)局所経路を生成する。
(b)上記(a)で生成した局所経路が環境地図データにおいて障害物に干渉するかを判断する。
最初に行う(a)では、目標点の候補点又は開始点P0を生成起点とし、生成起点の次の候補点を端点として、該生成起点から該端点まで延びる局所経路を生成する。2回目以降に行う(a)では、前回の(a)で生成した局所経路の端点を新たな生成起点とし、該生成起点の次の前記候補点を端点として、該生成起点から該端点まで延びる次の局所経路を生成する。最後に行う(a)では、前回の(a)で生成した局所経路の端点を新たな生成起点とし目標点の候補点又は開始点P0を端点として、該生成起点から該端点まで延びる局所経路を生成する。
【0047】
次に、候補経路生成部35は、次の条件(c)を満たす複数の組み合わせを特定する。(c)開始点P0と目標点の候補点Qの一方から他方まで至る経路を構成する各局所経路(全ての局所経路)が障害物に干渉しないと上記(b)で判断された。
【0048】
また、候補経路生成部35は、条件(c)を満たす各組み合わせについて、この組み合わせの各候補点Qを通る経路(すなわち、各局所経路により構成される経路)を上述の候補経路とする。図5(B)は、図5(A)の場合において生成された候補経路の1つを太い破線で示している。
【0049】
評価部36は、生成された各候補経路について、予め定めた評価関数(評価関数の具体例は後述する)に従って評価値を求め、複数の候補経路から、最良の評価値を持つ候補経路を選択し、選択した該候補経路を、移動装置10の新たな移動経路として決定する。なお、条件(c)を満たす組み合わせが1つである場合には、探索装置32は、この組み合わせの各局所経路により構成される経路を移動装置10の新たな移動経路として決定する。
【0050】
(各装置における処理)
経路決定装置30のモードには、本実施形態では、通常モードと待機モードと支援モードがある。
図6は、経路決定装置30のモードの切り替えを示す説明図である。
【0051】
<待機モード>
移動装置10を起動させた初期時点では、経路決定装置30は待機モードにあり、移動装置10は停止している。この状態で、人が入力装置25を操作することにより、通常モード指令を入力すると、この通常モード指令が通信装置21から移動装置10へ送信される。これにより、経路決定装置30のモードが通常モードに切り替えられる。
【0052】
<通常モード>
通常モードには、自律モードと遠隔操作モードと半自律モードとがある。これらのモード間の切り替えは、入力装置25に設けたモード切替用の操作部により行われてよい。この操作部が人に操作されると、この操作に応じたモード切替指令が入力されて通信装置21から移動装置10へ送信され、これにより、経路決定装置30のモードが、初期のモード(例えば自律モード)からモード切替指令に示されるモード(自律モード、遠隔操作モードまたは半自律モード)に切り替えられる。
図7は、自律モードと半自律モードの時における移動装置10側の処理を示す。
<自律モード>
【0053】
自律モードまたは半自律モードの時に、移動装置10において基本の移動経路を生成するための処理が行われる。この処理は、次のステップS1〜S3の繰り返しである。
ステップS1において、環境計測装置3は、環境データを取得し、位置検出装置5は、移動装置10の現在位置を検出する。
ステップS2において、地図データ生成装置7は、ステップS1で取得された環境データと、ステップS1で検出された移動装置10の現在位置とに基づいて、環境地図データを生成する。
ステップS3において、経路決定装置30の基本探索部27は、ステップS2で生成された環境地図データと、予め与えられた目標位置または次の経由位置とに基づいて、移動装置10の現在位置から目標位置または次の経由位置へ向かうための基本の移動経路を生成する。
【0054】
ステップS1〜S3の繰り返しにおいて、ステップS3で基本の移動経路が生成される度に、この移動経路は、経路決定装置30から移動制御装置9へ出力される。
【0055】
ステップS4において、移動制御装置9は、ステップS3で生成された基本の移動経路を受ける度に、この移動経路を移動装置10が移動するように移動装置10の移動を制御する。
【0056】
また、ステップS1で環境データが取得される度に、または、環境データが取得される頻度よりも低い頻度で、最新の当該環境データは通信装置11から支援装置20(すなわち通信装置21)へ送信される。ステップS2で環境地図データが生成される度に、または、環境地図データが生成される頻度よりも低い頻度で、最新の当該環境地図データは通信装置11から支援装置20へ送信される。このように通信装置11から送信された環境データと環境地図データは、支援装置20における表示装置23に表示される。この時、環境データと環境地図データは、それぞれ、図1のように同じ画面25aの異なる領域に表示されてよい。
【0057】
<半自律モード>
通常モードが半自律モードである場合には、上述のステップS1〜S4が繰り返し行われている時に、ステップS5において、人は、表示装置23に表示された環境データまたは環境地図データを見ながら、適宜の遠隔操作装置を操作できる。遠隔操作装置は、入力装置25に組み込まれていてもよいし、入力装置25とは別個に設けられていてもよい。
【0058】
ステップS5において、遠隔操作装置が人に操作されると、この操作に応じた操作指令が、通信装置21から移動装置10へ送信される。
この場合、経路決定装置30の基本探索部27は、ステップS3において、ステップS5で送信された操作指令と、ステップS2で生成された環境地図データとに基づいて、障害物に干渉しない移動装置10の基本の移動経路を表わす経路データを生成する。操作指令は、例えば、移動装置10のアクセル操作量、ブレーキ操作量、進行方向などを示す。経路データは、移動経路と、移動経路上の各点での指令速度を含む。この指令速度は、移動装置10の現在の速度とアクセル操作量またはブレーキ操作量とに基づいて経路決定装置30により決定される。なお、半自律モードの他の点は、自律モードと同じであってよい。ステップS4において、移動制御装置9は、ステップS3で生成された経路データに従って移動装置10の移動を制御する。
【0059】
<遠隔操作モード>
通常モードが遠隔操作モードである場合、ステップS5で送信された操作指令に基づいて、移動装置10の移動経路を表わす上述の経路データを生成する。この時、ステップS2で生成された環境地図データは考慮されない。この点で、遠隔操作モードは半自律モードと異なる。遠隔操作モードの他の点は、半自律モードと同じであってよい。
【0060】
<支援モード>
通常モードで移動装置10が移動している時に、人は、表示装置23に表示された環境データと環境地図データを見て、移動装置10が分岐路へ進入することが困難でありそうな場合において、経路決定装置30のモードを支援モードに切り替えることができる。すなわち、人は、入力装置25を操作する(例えばボタンを押す)ことにより、経路決定装置30のモードを支援モードに切り替えることを示すモード切替指令を入力できる。これにより、このモード切替指令は、通信装置21から移動装置10へ送信され、その結果、経路決定装置30のモードが支援モードに切り替わる。
【0061】
例えば、次のi)〜iv)の場合に、経路決定装置30のモードを支援モードに切り替えることができる。
i)移動装置10が、走行可能領域Raの分岐路で、右側または左側の分岐路へ曲がって進入する時に、曲がりきれずに障害物の直前で停止した場合(例えば図3(A)の状態の場合)。
ii)上述のステップS3で生成された基本の移動経路とは異なる特定の分岐路へ移動装置10を進入させたい場合。
iii)基本の移動経路に沿って移動装置10が分岐路へ進入(例えば右折または左折により進入)するために、移動装置10の向きを90度より大きく変えなければならないことにより、分岐路への移動装置10の進入が失敗する可能性がありそうな場合。
iv)基本の移動経路に沿って、移動装置10が狭い分岐路へ移動装置10が進入(例えば右折または左折により進入)することになる場合に、より適切な経路でこの分岐路に進入させたい場合。
【0062】
経路決定の支援方法を図3図5の例に基づいて説明する。この例では、走行可能領域Raの分岐路において左側の分岐路へ移動装置10を進入させる場合を説明するが、以下の説明は、他の場合にも適用可能である。
また、経路決定の支援方法を図8に基づいて説明する。図8は、支援装置20を用いた経路決定の支援方法を示すフローチャートである。経路決定の支援方法は、ステップS11〜S14を有する。
【0063】
<入力装置の処理>
ステップS11において、入力装置25により、支援モードを示すモード切替指令が入力される。
ステップS12において、ステップS11で入力されたモード切替指令が、通信装置21から移動装置10に送信される。これにより経路決定装置30のモードが支援モードに切り替わる。
ステップS13において、人が入力装置25を操作することにより、上述のように環境地図データにおいて上述した(1)〜(4)の指定を支援情報として入力する。図3(B)は、図3(A)に対してステップS13による各指定を行った場合を示す。
ステップS14において、ステップS13で入力された各指定が、支援情報として通信装置21から移動装置10に送信される。これらの指定は、その対象となった環境地図データと対応づけられた状態で送信される。例えば、各指定とこの環境地図データとが送信されてよい。
【0064】
<経路決定装置の処理>
経路決定装置30は、ステップS14で送信された支援情報を通信装置11を介して指定受信部31により受けると、支援情報に基づいて、本発明の実施形態による経路決定方法としての支援経路探索処理を実行する。
図9は、支援経路探索処理を示すフローチャートである。支援経路探索処理は、ステップS21〜S24を有する。
【0065】
ステップS21では、候補点生成部33により、上述の各指定がなされた環境地図データにおいて、指定された経由点毎に、経由点を含む局所領域内に複数の候補点Qを生成し、指定された目標点を含む局所領域内に複数の候補点Qを生成する。図5(A)は、図3(B)に対してステップS21が行われた状態を示す。
【0066】
目標点を含む局所領域は、局所領域の大きさ又は形状が、経由点を含む局所領域と異なっていてもよい。また、目標点を含む局所領域と経由点を含む局所領域とでは、互いに隣接する候補点Q同士の間隔(すなわち候補点Qの密度)が異なっていてもよい。
【0067】
ステップS21において、候補点Qが生成された環境地図データを次のように変更してもよい。ステップS21のように各経由点と目標点について複数の候補点Qが生成された環境地図データが、通信装置11から支援装置20へ送信され表示装置23に表示されてもよい。人は、表示されたこの環境地図データを見て、入力装置25を操作することにより、目標点または経由点を含む局所領域の大きさ又は形状を変更し、または、目標点または経由点を含む局所領域において候補点Qの密度を変更することができる。この変更がなされた環境地図データは、通信装置21から移動装置10へ送信されて、次のステップS22で用いられる。
【0068】
ステップS22では、ステップS21で生成または変更された複数の局所領域からそれぞれ1つずつ選択した候補点Qの組み合わせを1つの組み合わせとして、組生成部34により複数の組み合わせを特定する。例えば、全ての組み合わせを特定する。なお、目標点と経由点の合計数がM(図3(B)ではM=4)であり、各局所領域においてN個(図5(A)ではN=25)の候補点Qが生成されている場合には、全ての組み合わせの数はN個である。
【0069】
ステップS23では、ステップS22で特定した複数の組み合わせの各々について、候補経路生成部35により、該組み合わせの各候補点Qを通る候補経路を生成する。この時、候補経路生成部35は、目標点の候補点と開始点P0の一方から、候補経路の一部となる局所経路を、目標点の候補点と開始点P0の他方に至るまで順に生成していく。また、この時、目標点の候補点Qにおける当該候補経路の接線方向が上述のように指定された目標点向きになり、かつ、位置検出装置5から受けた現在位置P0に基づいて開始点P0における当該候補経路の接線方向が当該現在位置P0における移動装置10(車体1)の向きになるように、候補経路生成部35は、当該候補経路を生成する。図5(B)において、図5(A)の場合に対して生成された候補経路の1つを破線で示す。
【0070】
ステップS23は、ステップS231〜S236を有する。ステップS231〜S235は繰り返される。
【0071】
ステップS231では、ステップS22で特定された複数の組み合わせから1つの組み合わせを選択する。
【0072】
最初のステップS232では、ステップS231で選択した組み合わせについて、目標点の候補点又は開始点P0を生成起点とし、生成起点の次の候補点Qを端点として、生成起点から端点まで延びる局所経路を生成する。2回目以降のステップS232では、ステップS231で選択した組み合わせについて、前回のステップS232で生成した局所経路の端点を新たな生成起点とし、この生成起点の次の候補点Qを端点として、この生成起点から端点まで延びる次の局所経路を生成する。
【0073】
最初のステップS232での生成起点が目標点の候補点である場合には、生成起点の次の候補点Qとは、支援情報に含まれる経由点順序と逆の順序に従った候補点である。詳しくは次の通りである。目標点の候補点が生成起点のとき、この生成起点の次の候補点Qは、経由点順序における最後の経由点から生成された候補点である。経由点の候補点Q1が生成起点のとき、この生成起点の次の候補点Q2は、候補点Q1の生成元となった経由点よりも経由点順序において1つ手前(すなわち、1つだけ開始点P0側)の経由点から生成された候補点Q2である。経由点順序において最初の経由点から生成された候補点が生成起点のとき、この生成起点の次の候補点は、開始点P0である。
【0074】
最初のステップS232での生成起点が開始点P0である場合には、次の候補点とは、支援情報に含まれる経由点順序に従った候補点である。詳しくは次の通りである。開始点P0が生成起点のとき、この生成起点の次の候補点Qは、経由点順序における最初の経由点から生成された候補点である。経由点の候補点Q1が生成起点のとき、この生成起点の次の候補点Q2は、候補点Q1の生成元となった経由点の次の経由点(すなわち、経由点順序で次になる経由点)から生成された候補点Q2である。経由点順序において最後の経由点の候補点が生成起点のとき、この生成起点の次の候補点は、目標点の候補点である。
【0075】
局所経路は、曲線状(例えばクロソイド曲線)の経路であってよい。また、局所経路では、この経路における各点において、この経路に接する直線の方向が、この点での移動装置10(すなわち車体1)の向きを示す。
【0076】
ステップS233では、ステップS232で生成された局所経路が、ステップS13で入力された各指定と対応づけられた環境地図データにおいて障害物に干渉するかを判断する。ここで、干渉するとは、局所経路が障害物に衝突すること、および、局所経路が障害物から設定距離以内の位置を通ることにより移動装置10がこの局所経路を通ると障害物に接触することの少なくとも一方に該当することを意味する。
【0077】
ステップS233で局所経路が障害物に干渉すると判断された場合、ステップS231で選択した組み合わせについての処理を中断し、ステップS235へ進む。一方、ステップS233で局所経路が障害物に干渉しないと判断された場合、ステップS234へ進む。
【0078】
ステップS234では、ステップS231で選択した組み合わせについて、未生成の次の局所経路があるかを判断する。ここで、未生成の次の局所経路がある場合には、ステップS232へ戻り別の局所経路を生成して上述の処理を再び行い、未生成の次の局所経路が無い場合には、ステップS235へ進む。
【0079】
候補経路生成部35は、最初または最後のステップS232において、目標点の候補点を局所経路の生成起点又は端点とする場合、該生成起点または該端点における接線方向が指定された上述の目標点向きになる局所経路を生成する。また、候補経路生成部35は、最初または最後のステップS232において、開始点P0を局所経路の生成起点又は端点とする場合、該生成起点または該端点における接線方向が、現在位置P0の移動装置10の向きになる局所経路を生成する。候補経路生成部35は、2回目以降に行うステップS232では、前回のステップS232で生成した局所経路の端点での接線方向を基準方向として、生成起点での接線方向が基準方向となる局所経路を生成する。
【0080】
言い換えると次の通りである。
最初のステップS232で目標点の候補点を生成起点とする場合には、目標点の候補点Qにおける当該局所経路の接線方向が上述のように指定された目標点向きになるという条件を満たすように、当該局所経路を基準経路として生成する。次に、基準経路に結合される次の局所経路を生成する。この時、基準経路と次の局所経路との結合点(候補点)における基準経路の接線方向が、接線条件となる。すなわち、基準経路と次の局所経路との結合点において、この接線条件を、次の局所経路の接線方向が満たすように、次の局所経路が生成される。その後、当該次の局所経路を新たな基準経路として、当該基準経路に結合される次の局所経路を上述と同様に生成する。このような処理を繰り返して候補経路を生成する。この場合、最後に生成する局所経路は、開始点P0における接線方向が、現在位置P0の移動装置10(車体1)の向きになるように生成される。
最初のステップS232で開始点P0を生成起点とする場合には、上述と逆の手順で各局所経路が生成される。
【0081】
上述の支援情報に含まれる各経由点の進行向きは、ステップS232において、各局所経路の進行向きとして反映される。すなわち、上記各組み合わせにおける各経由点について、該経由点の進行向きが、該経由点の候補点から経由点順序における次の候補点までの局所経路の進行向き(言い換えると該経由点の候補点からの進行向き)であるとして、候補経路生成部35は、ステップS232を繰り返す。詳しくは、候補経路生成部35は、繰り返されるステップS232において、各局所経路の進行向きに従って、次の生成方法1と生成方法2により各局所経路を生成する。
【0082】
(生成方法1)
互いに結合される1対の局所経路の進行向きがそれぞれ前進と後進である場合に、候補経路生成部35は、図5(B)のように、当該1対の局所経路同士の結合点が移動経路における局所的な折り返し点となるように、当該1対の局所経路を生成する。すなわち、当該1対の局所経路の一方が該1対の局所経路の他方の延長線上には存在しないように、当該1対の局所経路は生成される。この生成方法1は、互いに進行向きが逆であって互いに結合される各対の局所経路の生成に適用される。
(生成方法2)
互いに結合される1対の局所経路の進行向きが同じである場合には、候補経路生成部35は、当該1対の局所経路の一方が局所的に該1対の局所経路の他方の延長線上に存在するように当該1対の局所経路を生成する。この生成方法2は、互いに進行向きが同じであって互いに結合される各対の局所経路の生成に適用される。
【0083】
ステップS235では、ステップS22で特定された複数の組み合わせの中に未だ選択していない組み合わせがあるかを判断する。ここで、未だ選択していない組み合わせがある場合には、ステップS231へ戻り別の組み合わせを選択して上述の処理を再び行い、未だ選択していない組み合わせが無い場合には、ステップS236へ進む。
【0084】
ステップS236では、開始点P0と目標点の候補点Qの一方から他方まで至る経路を構成する全ての局所経路が障害物に干渉しないと判断された(ステップS233でNOとなった)複数の組み合わせを特定し、これらの組み合わせの各々について、ステップS232で繰り返し生成された局所経路により構成される経路であって開始点P0から目標点の候補点Qに至る経路を候補経路とする。このようにして、ステップS23において、複数の候補経路が生成される。
【0085】
ステップS24において、評価部36により、ステップS236で生成された複数の候補経路の各々について、予め定めた評価関数に従って評価値を求め、複数の候補経路から、最良の評価値を持つ候補経路を選択し、選択した該候補経路を、移動装置10の新たな移動経路として決定する。なお、ステップS236で生成された候補経路が1つである場合には、探索装置32は、この候補経路を移動装置10の新たな移動経路として決定する。ステップS236で生成される候補経路が1つもない場合には、探索装置32は、「経路生成不可」を示す信号を出力する。この信号は、移動装置10の通信装置11から支援装置20へ送信される。その結果、支援装置20に設けた表示装置(例えば上述の表示装置23)に、「経路生成不可」を示す旨が表示される。
【0086】
評価関数は、例えばE=αT+βSであってよい。ここで、Eは評価値であり、αとβは重み定数であり、TとSは次のように定義される。Tは、候補経路の開始点P0から目標点の候補点Qまで候補経路上を移動装置10が(例えば、一定の速度で、あるいは候補経路の曲率に応じて変化する速度で)移動するのに要する時間であり、評価部36により求められる。Sは、候補経路の開始点P0から目標点の候補点Qまで候補経路上を移動装置10が移動する期間にわたる、移動装置10のステアリングの操舵角の積算値である。この操舵角は、車体1が直進する時のステアリングの基準操舵角(すなわちゼロ度)からの操舵角度の絶対値である。E=αT+βSの代わりに、E=Tα×Sβを用いてもよい。この評価関数における各記号の定義は上述と同じである。E=αT+βSまたはE=Tα×Sβにおいて、α>0、β>0である場合に、評価値の絶対値が小さいほど、評価値は良い値となる。
なお、評価関数は上述の例に限定されず、様々な関数を評価関数として設定することができる。
【0087】
ステップS25において、経路決定装置30(評価部36)は、ステップS24で決定された移動経路を表わし且つ各局所経路の上記進行向きを含む経路データを移動装置10の移動制御装置9へ出力する。
【0088】
<移動制御装置の処理>
経路決定装置30は、ステップS12で送信された、支援モードを示すモード切替指令を通信装置11を介して受けると、停止指令を移動制御装置9に出力し、これにより移動制御装置9は移動装置10の移動を停止させる。その後、移動制御装置9は、上述の支援経路探索処理により生成されステップS25で出力された経路データを受けると、この経路データに従って、移動制御装置9は移動装置10の移動を制御する。これにより、移動装置10は、次の(A)と(B)を満たすように制御される。
(A)移動装置10は、経路データが表わす移動経路上を移動する。
(B)移動装置10は、経路データが表わす移動経路の各局所経路上を、該局所経路の進行向きに従って前進または後進する。すなわち、移動装置10は、該局所経路の進行向きが前進であれば該局所経路上を前進で移動し、該局所経路の進行向きが後進であれば該局所経路上を後進で移動する。
【0089】
移動制御装置9は、移動経路の終点(すなわち、ステップS24で決定された移動経路における目標点の候補点)まで移動装置10を移動させたら、(例えば移動装置10は移動制御装置9により停止させられ)、モード切替信号を経路決定装置30へ出力する。これにより、経路決定装置30のモードは上述の通常モードへ自動で切り替えられる。
【0090】
(実施形態による効果)
上述した実施形態によると、人が指定した目標点と経由点を支援情報として受け、この支援情報に基づいて移動経路を探索するので、基本探索部27だけの探索では、移動可能な経路を探索するのが困難となりそうな場合でも、経路決定装置30は、人の支援を受けることにより、状況に適した移動経路を探索して決定できるようになる。上述の例では、移動装置10を分岐路へ進入させる際に、この進入が困難そうである場合に、人は、入力装置25を用いて、表示装置23に表示された環境地図データにおいて、分岐路内の目標点を指定することにより、分岐路内のどの位置へ移動装置10を到達させるかを指定できる。さらに、人は、入力装置25を用いて、環境地図データにおいて経由点を指定することにより、目標点へ至るためにどの位置を経由すればよいかを指定できる。このように指定された目標点と経由点に基づいて、移動経路が決定されるので、移動装置10が失敗せずに分岐路へ進入する新たな移動経路を決定できるようになる。
【0091】
また、入力装置25により、目標点における移動装置10の向きを示す目標点向きを指定可能であり、この目標点向きに基づいて新たな移動経路が決定される。このように、分岐路内へ進入した時に移動装置10がどのような向きになっていればよいかを示す目標点向きを指定して新たな移動経路に反映させることができるので、移動装置10が円滑に分岐路を通過できる可能性が高まる。
【0092】
入力装置25により、経由点からの移動装置10の移動が前進または後進であることを示す経由点の進行向きを指定可能であるので、前進と後進を組み合わせた移動(自動車の切り返しと同様の移動)をさせるための移動経路の決定が可能となる。
【0093】
また、探索装置32は、開始点を含む局所領域内の点または開始点から、経由点を含む局所領域内の点または経由点を通り、目標点を含む局所領域内の点もしくは目標点へ至る移動経路を探索して決定する。これにより、入力装置25により大まかな目標点と経由点を指定することにより、探索装置32により、目標点と経由点の指定を反映させた移動経路が決定される。
【0094】
探索装置32は、複数の候補経路を生成し、生成された各候補経路について、予め定めた評価関数に従って評価値を求め、複数の候補経路から、最良の評価値を持つ候補経路を選択し、選択した候補経路を新たな移動経路として決定する。したがって、より適切な(例えば最良の)移動経路を決定できる。
【0095】
探索装置32は、経由点毎に、該経由点を含む局所領域内に複数の候補点を生成し、複数の局所領域からそれぞれ1つずつ選択した候補点の組み合わせを1つの組み合わせとして、複数の組み合わせを特定する。また、探索装置32は、各組み合わせについて、開始点と次の候補点までの局所経路、または、いずれかの候補点から次の候補点までの局所経路を生成し、この局所経路が障害物に干渉するかを判断する。したがって、局所経路が障害物に干渉すると判断された段階で、その組み合わせについての処理を中断できるので、効率的な処理が可能となる。
【0096】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1、2の一方または両方を採用してもよい。この場合、以下で述べない点は上述と同じであってよい。
【0097】
(変更例1)
上述では、環境地図データが2次元空間を表わすデータであり、上述の開始点と目標点と各経由点は2次元座標であったが、環境地図データが3次元空間を表わすデータであり、上述の開始点と目標点と各経由点は3次元座標であってもよい。
【0098】
(変更例2)
表示装置23に表示される環境地図データは、上述では、環境計測装置3が取得した環境データに基づいて生成されたものであるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、移動装置10が、自身以外の移動する障害物(人や他の車両など)が存在せず環境状態が変化しない場所を移動する場合には、環境地図データは、静止障害物の箇所を示す既知の地図データに基づくデータであってもよい。この場合、上述の各「環境地図データ」は、「既知の地図データにおいて移動装置10の現在位置を示した環境地図データ」に読み替えられる。
【符号の説明】
【0099】
1 車体、2 地表面、3 環境計測装置、5 位置検出装置、7 地図データ生成装置、9 移動制御装置、10 移動装置、11 通信装置、20 支援装置、21 通信装置、23 表示装置、25 入力装置、25a 画面(タッチパネル画面)、25b マウス、27 基本探索部、30 経路決定装置、31 指定受信部、32 探索装置、33 候補点生成部、34 組生成部、35 候補経路生成部、36 評価部、P0 開始点、P1,P2,P3 経由点、Q 候補点
図1
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図9