(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンテナを有する可動体と、固定体と、前記可動体を前記アンテナの中心軸上の揺動支点を中心に揺動自在に支持する揺動支持機構と、前記アンテナの前記中心軸の傾きによる姿勢の変化を検知する姿勢検知センサと、該姿勢検知センサの検知結果に基づき前記可動体を揺動させる揺動駆動機構とを備え、前記揺動駆動機構は、前記可動体又は前記固定体のいずれか一方に設けた磁石と、前記可動体又は前記固定体のいずれか他方に設けられ、前記磁石に対向して該磁石との間に駆動力を作用させるコイルとを有しており、これら対向状態で組をなす磁石とコイルとは、前記アンテナの中心軸に沿う方向又は該中心軸に交差する方向の少なくともいずれかの方向に対向しており、
前記可動体は、前記アンテナに固定されたホルダを有しており、該ホルダに、前記中心軸上の一点を頂点とする角錐状となる配置で複数の傾斜面が形成され、該傾斜面に、前記コイル又は前記磁石の一方が固定されていることを特徴とする揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記揺動駆動機構は、前記中心軸の周りに、前記磁石と前記コイルとの対向方向を前記中心軸に対して傾斜させた状態に配置されていることを特徴とする請求項1記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記アンテナは傘型形状の上面に中心から半径方向外方にかけて凹曲面とする反射面を有しており、前記揺動支点が前記アンテナを前記中心軸と直交する方向から視たときに前記アンテナの内部に重なるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記揺動支持機構は、前記中心軸と直交する方向に沿いかつ前記中心軸の一方端から視たときに相互に直交する二つの揺動軸を中心に揺動可能なジンバル部材により構成されており、前記ジンバル部材の両揺動軸の交点が前記揺動支点であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記組をなす磁石とコイルとは、前記中心軸の一方端側から視たときに、該中心軸で互いに直交する二方向に少なくとも一組ずつ設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記組をなす磁石とコイルとは、前記二方向における各方向のそれぞれに二組ずつ前記中心軸を介して対向する配置で設けられていることを特徴とする請求項5記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記磁石における前記揺動方向の両端部に、異なる磁極が形成されており、前記コイルは、前記磁石の各磁極に対向する有効辺が前記揺動方向と直交して形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記磁石は、前記揺動方向の両端部で異なる磁極となるように配置された複数の小磁石を有しており、前記コイルは、各磁極の前記小磁石にそれぞれ対向する複数の小コイルを有していることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
前記アンテナと前記固定体との間に、これらの間を閉塞して前記揺動支持機構及び前記揺動駆動機構を囲む伸縮変形自在なカバーが設けられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項記載の揺れ補正機能付きアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のように井桁状にレール状軌道を構築して、それぞれに可動子を摺動させる構造では、大型になり易く、このため、小型で安価な装置が求められている。特許文献2記載のような圧電素子を駆動源とすることにより小型にすることが可能と考えられるが、さらなる小型化が求められる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、揺れに応じてアンテナの姿勢を制御することができる、小型で安価な揺れ補正機能付きアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置は、アンテナを有する可動体と、固定体と、前記可動体を前記アンテナの中心軸上の揺動支点を中心に揺動自在に支持する揺動支持機構と、前記アンテナの前記中心軸の傾きによる姿勢の変化を検知する姿勢検知センサと、該姿勢検知センサの検知結果に基づき前記可動体を揺動させる揺動駆動機構とを備え、前記揺動駆動機構は、前記可動体又は前記固定体のいずれか一方に設けた磁石と、前記可動体又は前記固定体のいずれか他方に設けられ、前記磁石に対向して該磁石との間に駆動力を作用させるコイルとを有しており、これら対向状態で組をなす磁石とコイルとは、前記アンテナの中心軸に沿う方向又は該中心軸に交差する方向の少なくともいずれかの方向に対向して
おり、前記可動体は、前記アンテナに固定されたホルダを有しており、該ホルダに、前記中心軸上の一点を頂点とする角錐状となる配置で複数の傾斜面が形成され、該傾斜面に、前記コイル又は前記磁石の一方が固定されている。
【0008】
アンテナの姿勢の変化を姿勢検知センサにより検知して揺動駆動機構により駆動できるので、風雨等によってアンテナの姿勢に変化が生じる場合でも、これを制御して、適切な姿勢を維持することができる。この場合、揺動駆動機構を磁石とコイルとにより構成したので、安価で小型化を図ることができる。
また、磁石とコイルの傾斜した配置の支持を確実にすることができる。この場合、角錐が四角錐状であると、コイルと磁石との組み合わせを直交する二方向にそれぞれ二組ずつ配置することができる。
【0009】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記揺動駆動機構は、前記中心軸の周りに、前記磁石と前記コイルとの対向方向を前記中心軸に対して傾斜させた状態に配置されているとよい。
【0010】
磁石とコイルとを傾斜させて配置したので、これらの対向方向を中心軸と直交させた状態に配置する場合より、中心軸と直交する径方向寸法を小さくても同じ駆動力を生じさせることができる。また、アンテナの重心が揺動支点と離れている場合には、揺動支点を介してアンテナの重心とは反対側に重心位置調整部材(カウンタウエイト)を設けて重量バランスをとるのが好ましいが、揺動支点を介してアンテナとは反対側に磁石とコイルを傾斜させて配置することにより、可動体に設けられる磁石又はコイルをカウンタウエイトとして機能させることができ、重心位置調整部材を設ける場合でも、その重量を小さくすることができ、大重量化を抑制することができる。また、アンテナを含む可動体としての重量も小さくできるので、揺動に必要な揺動駆動機構の駆動力も小さくて済む。
【0011】
この場合、磁石とコイルとの対向方向と中心軸とのなす角度は45°がよく、径方向に小型化しつつ、磁石又はコイルのカウンタウエイト機能による可動体の重量バランスと、揺動駆動機構としての駆動力との関係を最適化することができる。
【0012】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記アンテナは傘型形状の上面に中心から半径方向外方にかけて凹曲面とする反射面を有しており、前記揺動支点が前記アンテナを前記中心軸と直交する方向から視たときに前記アンテナの内部に重なるように配置されているとよい。
【0013】
アンテナの重心と揺動支点とを同一位置又は接近した位置とすることができる。アンテナの重心と揺動支点とが離れている場合には、可動体の重心を揺動支点と一致させるように重心位置調整部材を設ける必要があるが、アンテナの重心と揺動支点とが同一位置となる場合は、アンテナに対する重心位置調整部材を削減することができ、同一位置でなくても、接近した位置であれば、重心位置調整部材を最小限にすることができる。したがって、装置の小型化、軽量化に有利である。
【0014】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記揺動支持機構は、前記中心軸と直交する方向に沿いかつ前記中心軸の一方端から視たときに相互に直交する二つの揺動軸を中心に揺動可能なジンバル部材により構成されており、前記ジンバル部材の両揺動軸の交点が前記揺動支点であるとよい。
この場合、前記ジンバル部材はばね材料からなり、該ばね材料の弾性の範囲で前記揺動支点が移動する場合もある。
【0015】
特許文献1記載のアンテナ装置におけるレール軌道と可動子のように揺動に伴う摺動部分が設けられていると、摩耗等が生じるため、耐久性が高く要求される装置には使用できない。また、このような摺動による機構を用いる場合、一般に大型化し易い。本実施形態においては、揺動支持機構をジンバル部材により構成したので、アンテナの姿勢を制御する際に摺動する部分がなく、耐久性に優れ、また、小型化にも有利である。
【0016】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記組をなす磁石とコイルとは、前記中心軸の一方端側から視たときに、該中心軸で互いに直交する二方向に少なくとも一組ずつ設けられているとよい。
【0017】
一方の組の磁石とコイルとにより、アンテナを特定の一方向に揺動し、その方向と直交する方向の揺動を他方の組の磁石とコイルとにより行わせることができるので、これら二組の磁石とコイルとの駆動を組み合わせることにより、アンテナの姿勢を自由に制御することができる。
【0018】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記組をなす磁石とコイルとは、前記二方向における各方向のそれぞれに二組ずつ前記中心軸を介して対向する配置で設けられているとよい。
各方向で二組ずつの磁石とコイルとにより大きな駆動力を発生させることができ、また、二組ずつが中心軸を介して対向する配置で設けられていることにより可動体の重量バランスも良くなる。
【0020】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記ホルダに、前記揺動支点を介して前記アンテナの重量とバランスさせる重心位置調整部材が設けられていてもよい。
重心位置調整部材により揺動支点の位置をアンテナの重量とバランスさせた位置に調整して、可動体の重心と一致させることができる。これにより、可動体の揺動に必要な揺動駆動機構の駆動力を小さくすることができる。また、アンテナが横向きで設置される場合などにも、アンテナの支持を確実にして、精度の良い揺れ補正制御を行わせることができる。
【0021】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記磁石は前記固定体に設けられ、前記コイルは前記可動体に設けられているとよい。
【0022】
一般に磁石に比べてコイルが軽量であるので、可動体に磁石を設ける場合に比べて、可動体の重量を小さくすることができる。したがって、可動体の揺動に必要な駆動力を小さくすることができ、さらなる小型化を図ることができる。
【0023】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記磁石における前記揺動方向の両端部に、異なる磁極が形成されており、前記コイルは、前記磁石の各磁極に対向する有効辺が前記揺動方向と直交して形成されているとよい。
【0024】
コイルの各有効辺と磁石の各磁極との間でそれぞれ駆動力を発生させることができるので、揺動のために必要な駆動力を大きくすることができる。また、異なる磁極を1個の磁石に配置して、1個のコイルの有効辺を対向させているので、磁極の異なる磁石を複数設ける場合より、装置の小型化を図ることができる。
【0025】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記磁石の前記異なる磁極と前記揺動支点との距離がほぼ同じに設定されており、前記コイルは、前記異なる磁極と前記有効辺との対向間隔をほぼ同じにするように屈曲して設けられていてもよい。
【0026】
磁石とコイルとが屈曲せずに平板状に形成されている場合、これらが平行に対向している状態から可動体が揺動すると、一端部が接近し、他端部が離間する方向に移動する。このため、揺動位置により駆動力が変化する。これに対して、本実施形態においては、磁石の両磁極と揺動支点との距離がほぼ同じで、屈曲したコイルの有効辺が各磁極に対向するように設けられているから、可動体が揺動した際に、磁石とコイルが部分的に近づき過ぎたり、離れ過ぎたりすることがない。したがって、揺動位置による駆動力の変化を小さくすることができる。また、同じサイズで比較した場合に、コイルが平板状のものよりも、中心軸に直交する方向の揺動駆動機構のサイズを小さくすることができるので、装置の小型化に有利である。また、装置の消費電力低減にも有利である。
【0027】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記磁石は、前記揺動方向の両端部で異なる磁極となるように配置された複数の小磁石を有しており、前記コイルは、各磁極の前記小磁石にそれぞれ対向する複数の小コイルを有しているとよい。
この場合も、各小コイルからなるコイルと、異なる磁極の小磁石からなる磁石との間でそれぞれ駆動力を発生させることができるので、揺動のために必要な駆動力を大きくすることができる。
【0028】
本発明の揺れ補正機能付きアンテナ装置の好ましい実施形態として、前記アンテナと前記固定体との間に、これらの間を閉塞して前記揺動支持機構及び前記揺動駆動機構を囲む伸縮変形自在なカバーが設けられているとよい。
この場合、カバーは、蛇腹状筒体であるとよい。
【0029】
アンテナと固定体との間がカバーによって閉塞されるので、風雨にさらされる環境での使用においても防水性を確保することができ、外部環境に対する耐久性を向上させることができる。また、カバーは揺動に追従して伸縮変形自在であるので、アンテナの揺動を阻害することはない。そのカバーを蛇腹状筒体とすることにより、防水構造を簡易にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、揺れに応じてアンテナの姿勢を制御することができる、小型で安価な揺れ補正機能付きアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る揺れ補正機能付きアンテナ装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、X軸方向の一方側には+Xを付し、他方側には−Xを付し、Y軸方向の一方側には+Yを付し、他方側には−Yを付し、Z軸方向の一方側には+Zを付し、他方側には−Zを付して説明する。また、
図1等では、傘型形状のアンテナを上方に向けた状態とし、この上方をZ軸の一方+Z側とする。この
図2等の縦断面図に示す状態をアンテナの静置状態とし、各方向の揺れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当する。以下では、特に断らない限り、この静置状態で説明する。
【0033】
<第1実施形態の全体構造>
図1〜
図6は第1実施形態を示している。
この第1実施形態の揺れ補正機能付きアンテナ装置100は、アンテナ10を有する可動体20と、各種の構造物に固定される固定体30と、可動体20を固定体30に揺動自在に支持する揺動支持機構40と、アンテナ10の姿勢の変化を検知する姿勢検知センサ50と、姿勢検知センサ50の検知結果に基づき可動体20を揺動させる揺動駆動機構60とを備えている。このアンテナ装置100が設置される各種構造物としては、例えば鉄塔や建築物等の固定構造物だけでなく、車両や船舶等の移動可能な構造物も含まれる。固定構造物の場合には風雨等の影響でアンテナ10に揺れが生じる場合にその揺れを補正するようにアンテナ10の姿勢を制御し、移動可能な構造物の場合は移動に伴う揺れに応じてアンテナ10の姿勢を制御して、常に一定の向きでアンテナ10を配置することができる。
以下、これらの詳細について説明する。
【0034】
(アンテナ10の構造)
アンテナ10は、アルミニウム等の金属板からなり、
図1及び
図2に示す例では、全体として傘型形状に形成されている。このアンテナ10は、
図4に示すように軸方向の+Z側の一端から視たときの平面視が円形に形成されており、その円形の中心部がZ軸方向の+Z側に突出して頂点部11を形成している。そして、アンテナ10の上面(Z軸方向の+Z側の面)は、頂点部11から周縁部にかけて凹曲面状に形成され、頂点部11と周縁部の一点とを結ぶ凹曲線を、Z軸を中心として回転させることにより得られる回転体の形状とされる。この凹曲面状をなしているアンテナ10の上面が電波を反射する反射面12とされている。このアンテナ10において、頂点部11と周縁の円形の中心とを結ぶ線をアンテナ10の中心軸Cとする。
図2等に示す静置状態では、アンテナ10の中心軸CはZ軸に一致している。
【0035】
そして、
図5に示すように、周辺から到達する電波がアンテナ10の上面で反射して、アンテナ10の中心軸C上の一点(焦点F)に集中するようになっており、その焦点Fに図示略の輻射器(放射器、給電部ともいう)が配置される構造である。
また、後述するように、アンテナ10の中心軸C又はその延長上を中心に可動体20及び固定体30が配置される。したがって、この中心軸C(その延長線も含む)は、アンテナ10の中心軸であるとともに、
図2等に示す静置状態においては、アンテナ装置100の中心軸でもある。以下の説明では、中心軸Cを静置状態におけるアンテナ装置100の中心軸Cとして説明する場合もあるものとする。この静置状態における中心軸CはZ軸と一致し、アンテナ10に揺れが生じたときは、中心軸CはZ軸に対して傾斜する。
【0036】
(可動体20の構造)
可動体20は、アンテナ10と、アンテナ10の裏面(反射面12とは反対側の面)側に固定された可動側ホルダ21とを有している。
可動側ホルダ21は、この実施形態では揺動駆動機構60のコイル61を保持するためのもので、非磁性体の合成樹脂により形成されている。可動側ホルダ21の全体の外形としては中心軸C(Z軸)上の一点を頂点とし、Z軸方向の+Z側に向かうにしたがって漸次広がる角錐状の頭部をZ軸方向と直交する面で切除した形状に形成されている。したがって、その角錐を構成する傾斜面22が下方(Z軸方向の−Z側)に向かうにしたがって漸次中心軸Cに接近するように配置されている。これら各傾斜面22に揺動駆動機構60のコイル61が1個ずつ保持される。
【0037】
後述するように揺動駆動機構60としてコイル61と磁石62との組み合わせからなるものを4組有しているため、その4個のコイル61を保持できるように可動側ホルダ21は四角錐状となるように形成され、これら4個の傾斜面22がX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yに設けられている。また、各コイル61は空芯コイルであるため、各傾斜面22には、コイル61の中央の空間に嵌められる凸部23が一体に設けられている。この凸部23は、コイル61の厚さ寸法よりも大きい高さに突出している。
【0038】
また、可動側ホルダ21の内部は空洞に形成されており、アンテナ10の裏面に対向する側(Z軸方向の+Z側)には、周縁部21aを残して凹部24が形成されている。この凹部24は、可動側ホルダ21の重量を削減するとともに、後述するジンバル部材40が変形したときの干渉を防止する逃げ部として機能する。さらに、可動側ホルダ21の中心には、後述するシャフト32を挿通するための貫通孔25が凹部24に連通してZ軸方向に沿って形成されている。
そして、この可動側ホルダ21の周縁部21aの上端がアンテナ10の裏面に固定されており、この固定状態において、アンテナ10の頂点部11を通って垂下する中心軸C(Z軸)上に可動側ホルダ21が軸合わせされている。したがって、可動側ホルダ21の4個の傾斜面22は、Z軸の同じ高さ位置に中心軸C(Z軸)周りに90°間隔で配置される。
なお、この可動側ホルダ21には、アンテナ10の姿勢の変化を検知するためのジャイロスコープ等の姿勢検知センサ50が搭載されており、フレキシブルケーブル(図示略)を介して上位の制御部等に電気的に接続されている。
【0039】
(固定体30の構造)
固定体30は、揺動駆動機構60の磁石62が固定される固定側ホルダ31と、この固定側ホルダ31に支持されたシャフト32と、固定側ホルダ31とアンテナ10との間を囲む蛇腹状筒体からなるカバー300とを有している。
固定側ホルダ31は、中心軸Cを中心とする円盤状のベース33と、ベース33の上面(Z軸方向の+Z側の上面)に一体に形成された山型状のブロック体34と、このブロック体34に揺動駆動機構60の磁石62を固定するための取付板35とにより構成されている。
ブロック体34は、そのZ軸方向の−Z側に一体に形成される円板部34aの上に、中心軸C(Z軸)上の一点を頂点とし、Z軸方向の−Z側に向かうにしたがって漸次広がる角錐の頭部をZ軸方向と直交する面で切除した形状に形成されている。そして、その角錐を構成する傾斜面34bが上方(Z軸方向の+Z側)に向かうにしたがって漸次中心軸Cに接近するように配置されている。また、各傾斜面34b上に取付板35が一枚ずつ設けられている。
【0040】
取付板35は、各傾斜面34bに垂直に固定され、Z軸方向の+Z側に向かうにしたがって漸次中心軸C(Z軸)から離れる方向に傾斜している。そして、ブロック体34の傾斜面34bと取付板35とにより形成される角部に、直方体状の磁石62が1個ずつ保持されている。なお、ブロック体34は合成樹脂により形成されるが、取付板35は鉄板等の磁性体により形成され、磁石62に対するヨークを兼ねている。
後述するように揺動駆動機構60としてコイル61と磁石62との組み合わせからなるものを4組有しているため、その4個の磁石62を保持できるようにブロック体34は四角錐状に形成され、4個の傾斜面34bと各傾斜面34bに固定された4個の取付板35とがX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yに設けられている。そして、この固定側ホルダ31における4個の取付板35と、可動側ホルダ21における4個の傾斜面22とは、同じ傾斜角度に設定され、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yのそれぞれにおいて相互に平行に配置される。
【0041】
また、ベース33とブロック体34の円板部34aとはこれらを積層した構造に構築され、ベース33の中心部には円形の空所33aが設けられている。一方、ブロック体34には、これを貫通してベース33の空所33aに連通する穴部34cが中心軸C上にZ軸方向に沿って形成されている。この穴部34cは、Z軸方向と直交する方向の横断面が、傾斜面34bの上端の各辺により構成される四角形と一致した大きさの四角形に形成されている。
シャフト32は、中心軸C上に配置される軸部36の下端(Z軸の−Z側)に円板状の固定部37が一体に形成され、軸部36の上端(Z軸方向の+Z側)に同じく円板状の取付部38が一体に形成されている。固定部37より取付部38は小径に形成される。そして、固定部37がベース33に形成されている空所33aに嵌め込まれた状態に固定されており、軸部36がブロック体34の四角形の穴部34cから上方(Z軸方向の+Z側)に突出している。
なお、実施形態では、ベース33はアンテナ10の外径とほぼ同じ外径に形成されている。
【0042】
(揺動支持機構40の構造)
揺動支持機構40は、この実施形態では、ばね材料によって形成されたジンバル部材により構成されている。すなわち、ジンバル部材40は、
図6に示すように、三重の同心円に配置された外側リング部41、中間リング部42、内側リング部43を有し、外側リング部41と中間リング部42とがX軸方向に沿う二つの連結部44によって相互に連結状態とされ、中間リング部42と内側リング部43とがY軸方向に沿う二つの連結部45によって相互に連結状態とされている。この場合、無負荷状態においては、三重のリング部41〜43は同一平面上に配置され、X軸方向に沿う二つの連結部44は周方向に180°対向した位置に設けられ、Y軸方向に沿う二つの連結部45も周方向に180°対向した位置に設けられている。すなわち、X軸方向に沿う二つの連結部44、及びY軸方向に沿う二つの連結部45は、それぞれ直線状に形成され、X軸方向とY軸方向とで互いに直交して配置される。
【0043】
そして、内側リング部43と中間リング部42とはX軸方向に沿う連結部44をねじりながらX軸周りに相対揺動可能であり、中間リング部42と外側リング部41とはY軸方向に沿う連結部45をねじりながらY軸周りに相対揺動可能とされる。したがって、これらX軸方向及びY軸方向の両方向の揺動を組み合わせることにより、内側リング部43と外側リング部41とが、X軸及びY軸を含む平面上の任意の軸を中心に揺動することができるようになっている。すなわち、X軸方向に沿う連結部44及びY軸方向に沿う連結部45がそれぞれ揺動軸S1,S2を構成する。
これら揺動軸S1,S2の延長上の交点が揺動支点Pであり、この実施形態では、
図2に示すように、ジンバル部材40が中心軸Cと直交する方向から視たときにアンテナ10の内部と重なるように設けられており、アンテナ10の重心Gと揺動支点PとがZ軸(アンテナ10の中心軸S)上で一致している。
【0044】
このように構成した揺動支持機構(ジンバル部材)40は、内側リング部43の内側空間にシャフト32の上端(Z軸の+Z側)の取付部38が嵌め込まれた状態に固定され、外側リング部41がアンテナ10の裏面に固定される。アンテナ10の裏面には、内向きフランジ13が一体に形成されており、この内向きフランジ13と可動体20の可動側ホルダ21の周縁部21aとの間にジンバル部材40の外側リング部41を挟んだ状態で、これら内向きフランジ13、可動側ホルダ21の周縁部21a、ジンバル部材40の外側リング部41が一体に固定されている。ジンバル部材40の連結部44,45と中間リング部42及び内側リング部43とは内向きフランジ13等に接触することなく、その内側に配置され、可動側ホルダ21の凹部24の上方に懸架された状態に支持される。
【0045】
(揺動駆動機構60の構造)
揺動駆動機構60は、コイル61と磁石62とを利用した磁気駆動機構である。コイル61と磁石62との組み合わせが、可動側ホルダ21の周方向に90°ずつ間隔をおいて4組設けられている。そのうち、各コイル61は、前述した可動側ホルダ21のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yの傾斜面22にそれぞれ保持されている。各コイル61は、磁心(コア)を有しない空芯コイルであり、いずれのコイル61も、同じ形状、同じ寸法に形成されている。この場合、各コイル61は、可動側ホルダ21の傾斜面22に対して直交する方向に視たときに、傾斜面22に直交する方向の軸を中心に巻き線が環状に巻き回されており、正面視が台形の矩形枠状となるように形成されている。そして、台形の長辺(上側辺)61aを可動側ホルダ21の傾斜面22の上端部に配置し、短辺(下側辺)61bを傾斜面22の下端部に配置し、これら長辺61aと短辺61bとの間を二つの斜辺により連結した形状とされる。この長辺61aと短辺61bとは、Z軸と直交する方向と平行に配置される。また、可動側ホルダ21の各傾斜面22に設けられている凸部23が各コイル61の内側空間に嵌められていることにより、コイル61の位置決めがなされている。各凸部23の先端面はコイル61の表面よりも突出した状態とされる。
なお、各コイル61にはフレキシブルケーブル(図示略)が接続され、上位の制御部等に電気的に接続されている。
【0046】
一方、磁石62は、直方体のブロック状に形成されており、固定側ホルダ31の各傾斜面34bと取付板35とのなす角部に1個ずつ固定されている。各磁石62は、直方体の一つの面が可動側ホルダ21におけるコイル61の表面と平行な向きで対向状態に配置される。そして、この可動側ホルダ21のコイル61と対向する磁石62の表面は、上端部と下端部とで異なる磁極62a,62bに着磁されている。具体的には、前述したようにコイル61の長辺61aと短辺61bとが可動側ホルダ21の傾斜面22の上端部と下端部とに配置されており、磁石62の各磁極62a,62bは、これらコイル61の長辺61aと短辺61bとにそれぞれ対向するように配置されている。したがって、この磁石62の各磁極62a,62bに対向するコイル61の長辺61a及び短辺61bが、後述するように電磁力を発生させる有効辺とされている。両磁極62a,62bの間の着磁分極線62cはコイル61の両有効辺61a,61bと平行に形成され、無励磁時には、着磁分極線62cがコイル61の両有効辺61a,61bの間の中間位置にZ軸と直交する方向と平行に配置される。
【0047】
このようにコイル61と磁石62とからなる揺動駆動機構60は、
図2に示すように、コイル61と磁石62とが、揺動支点Pを介してアンテナ10とはZ軸方向で反対側に設けられている。
また、後述するように、可動体20は揺動支点Pに対して揺動するが、コイル61は揺動方向の両端側に有効辺61a,61bが揺動方向と直交して配置され、磁石62は揺動方向の両端側に異なる磁極62a,62bが配置される。
【0048】
(カバー300の構造)
カバー300は、この実施形態では蛇腹状筒体によって構成され、固定側ホルダ31のベース33の周縁部と、アンテナ10の周縁部との間を連結した状態に設けられている。したがって、中心軸Cに沿って蛇腹状筒体(カバー)300が設けられる。この蛇腹状筒体300は、その全体が中心軸Cに沿って伸縮可能であるとともに、ベース33に固定されている下側端縁に対して、アンテナ10に固定されている上側端縁が傾斜するように伸縮することも可能である。
【0049】
(作用)
このように構成したアンテナ装置100において、アンテナ10に揺れが生じた場合、その揺れに伴うアンテナ10の姿勢の変化を姿勢検知センサ50によって検知し、その検知結果に基づいて、揺動駆動機構60のコイル61に通電されることにより、可動体20を揺動して揺れを補正することができる。具体的には、磁石62一方の磁極から他方の磁極に至る磁界の中で各コイル61に電流を流すことによりフレミングの左手の法則にしたがって駆動力(電磁力)を発生させ、両有効辺61a,61bと磁石62との間に生じる電磁力によって、固定体30である固定側ホルダ31に対して可動側ホルダ21をジンバル部材(揺動支持機構)40の揺動軸S1,S2のいずれかあるいは両方の軸周りに揺動させて、可動側ホルダ21と一体のアンテナ10の姿勢を制御する。
図2では、揺動支点Pを中心としてアンテナ10が例えば二点鎖線で示すように揺動する。高価なアクチュエータを使用せずに、コイル61と磁石62とを用いた駆動機構であり、安価に製作することができる。
【0050】
この場合、コイル61の内側空間から可動側ホルダ21の凸部23が突出して設けられているので、アンテナ10の揺動角度が大きくなると、可動側ホルダ21の凸部23が磁石62に当接する。この凸部23が磁石62に当接することにより、揺動範囲が規制される。実施形態では、例えば±6°の範囲内で自由に揺動できるようになっており、その揺動範囲から大きく超える場合に凸部23が磁石62に当接するようになっている。
【0051】
また、ジンバル部材40の内側リング部43の中心、言い換えるとシャフト32の上側の円板状の取付部38の中心が揺動支点Pとなり、この揺動支点Pとアンテナ10の重心Gとが同じ位置に配置されているので、揺動に要する駆動力も小さくて済み、全体の小型化、軽量化を図ることができる。なお、アンテナ10には可動側ホルダ21及びコイル61等が固定されているので、厳密には、可動体20の重心としてはアンテナ10の重心Gとは若干ずれるが、このアンテナ装置100においては、アルミニウム等の金属からなるアンテナ10が最も重量が大きい部品であり、したがって、可動体20の重心とアンテナ10の重心Gとは一致するか、一致しない場合でも極めて接近して設けられる。
なお、ジンバル部材40は、ばね材料によって形成されているので、可動体20の重量によって撓む場合がある。このため、揺動支点Pは
図6に示すジンバル部材40の中心位置よりもZ軸方向の+Z側又は−Z側にずれる場合がある。
図2に示す例では、揺動支点Pに対してジンバル部材40の外側リング部41がZ軸方向の−Z側にずれる場合がある。
【0052】
また、揺動駆動機構60を構成しているコイル61と磁石62とは、アンテナ10の中心軸Cの周りに、コイル61と磁石62との対向方向を中心軸Cに対して傾斜させた状態に配置されているので、これらの対向方向を中心軸Cと直交させた水平方向に配置する場合より、中心軸Cと直交する径方向寸法が小さくても同じ駆動力を生じさせることができる。
また、これらコイル61と磁石62とは、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yにそれぞれ一組ずつ設けられており、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに中心軸Cを介して対向する配置で設けられる。このため、これら二組ずつのコイル61と磁石62の組み合わせにより、大きな駆動力を発生させることができ、中心軸Cを介して対向する配置で設けられていることにより、可動体20の重量バランスも良くなり、安定した揺れ補正を行わせることができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、以下の実施形態とすることができる。
以下、第2実施形態以降について説明するが、第1実施形態と形状が異なっていても、機能が同一又は類似で共通する要素には同一符号を付してその説明を簡略化する場合がある。また、図の一部を簡略化して示した部分(例えばアンテナの形状)や省略した部分(例えば空芯コイルの内側空間に嵌る凸部)があり、必要に応じて第1実施形態を参照する。
【0054】
<第2実施形態>
図7及び
図8に第2実施形態を示す。
第1実施形態では揺動支持機構であるジンバル部材40の揺動支点Pとアンテナ10の重心Gとが中心軸C(Z軸)上で一致するように設けたが、第2実施形態のアンテナ装置101では、ジンバル部材40の揺動支点Pをアンテナ10の重心GからZ軸方向に離間させて設けている。また、第1実施形態とは逆に、揺動駆動機構60のコイル61は固定体30に設けられ、磁石62が可動体20に設けられている。
具体的には、可動体20としてアンテナ10に固定される可動側ホルダ21の下部に、頂点を下向きに配置した四角錐を構成するように4個の傾斜面22が形成されるとともに、可動側ホルダ21の上部に四角筒状の支柱部27が一体に設けられている。また、可動側ホルダ21の中心部には中心軸C上に貫通状態の穴部27aが設けられており、その穴部の下端部に重心位置調整部材としてのウエイト28が嵌め込まれた状態で固定されている。したがって、この第2実施形態では可動体20は、アンテナ10と可動側ホルダ21とウエイト28とを備えている。
【0055】
そして、可動側ホルダ21の各傾斜面22に板状の磁石62が固定され、可動側ホルダ21の高さ方向の中間位置で支柱部27に揺動支持機構としてのジンバル部材40が固定されている。なお、可動側ホルダ21は合成樹脂により形成されるため、磁石62の背面に板状のヨーク63が設けられ、ヨーク63と一体に磁石62が可動側ホルダ21に固定されている。磁石62は、Z軸と直交する方向と平行な着磁分極線62cを介して上端部と下端部とに異なる磁極62a,62bが配置される。
【0056】
一方、固定体30における固定側ホルダ31は、円板状のベース33の上に、Z軸周りに90°ずつ間隔をおいて4個のブロック71が一体に設けられ、各ブロック71の上面に、Z軸上の一点を中心とする四角錐を形成するように4個の傾斜面72が形成されている。これら傾斜面72は、言い換えれば、Z軸の+Zに向かうにしたがって漸次Z軸から離間するように配置され、各傾斜面72にコイル61が1個ずつ固定されている。これらコイルは61は、その有効辺61a,61bを傾斜面72の上端部と下端部とに配置している。また、固定側ホルダ31には、各ブロック71の上端を連結するように八角形状の枠状部73が一体に固定されている。
【0057】
ジンバル部材(揺動支持機構)40は、外側リング部41、中間リング部42、内側リング部43の三重のリング状に形成され、各リング部41〜43が連結部44,45によってX軸方向又はY軸方向に連結されているが、可動側ホルダ21の支柱部27が四角筒状に形成されていることから、内側リング部43は、支柱部27の外周部に固定される四角形の枠状に形成され、外側リング部41は、固定側ホルダ31の枠状部73に固定されるため、枠状部73と同様の八角形の枠状に形成されている。
この第2実施形態のアンテナ装置101においては、アンテナ10の重心Gに対してジンバル部材40がZ軸方向に離間して設けられるので、可動側ホルダ21の下端部(Z軸方向の−Z側)には、アンテナ10との重量バランスをとるためのウエイト28が設けられている。
【0058】
この第2実施形態のアンテナ装置101においても、第1実施形態と同様、アンテナ10に揺れが生じた際には、コイル61に通電することにより、フレミングの左手の法則にしたがって電磁力を発生させ、両有効辺61a,61bと磁石62との間に生じる電磁力によって、固定体30である固定側ホルダ31に対して可動側ホルダ21をジンバル部材40の揺動軸S1,S2のいずれかあるいは両方の軸周りに揺動させて、可動側ホルダ21と一体のアンテナ10の姿勢を制御する。
【0059】
この第2実施形態では、可動側ホルダ21に磁石62を設けたが、コイル61よりも磁石62の方が一般に重量が大きいので、磁石62によりカウンタウエイトの機能を発揮することができ、その分、重心位置調整部材(ウエイト)28を小さくすることが可能である。なお、アンテナ10を含む可動体20の重心は揺動支点Pと一致した位置に設けられる。
第1実施形態の場合と同様、コイル61と磁石62とは、中心軸Cの周りに、コイル61と磁石62との対向方向を中心軸Cに対して傾斜させた状態に配置されているので、これらの対向方向を中心軸Cと直交させた水平状態に配置する場合より、中心軸Cと直交する径方向寸法を小さくても同じ駆動力を生じさせることができ、小型化に有利である。
【0060】
<第3実施形態>
図9及び
図10に第3実施形態を示す。
この第3実施形態のアンテナ装置102においては、可動体20における可動側ホルダ21の下端部に、2個の小磁石62A,62Bを固定した傾斜角度の異なる2面の傾斜面22a,22bがZ軸周りに90°間隔で合計8面形成されるとともに、可動側ホルダ21の上端部に角筒状の支柱部27が一体に設けられている。傾斜面22a,22bは、全体としては、Z軸の−Z側に向かうにしたがって漸次Z軸に接近する方向に傾斜しているが、Z軸方向の上側(+Z側)に配置される上側傾斜面22aとZ軸方向の下側(−Z側)に配置される下側傾斜面22bとを連続させた形状とされている。Z軸に対する傾斜角度は、上側傾斜面22aよりも下側傾斜面22bが大きく設定されている。
そして、小磁石62A,62Bは、上側傾斜面22aに固定される上側磁石62Aと、下側傾斜面22bに固定される下側磁石62Bとに分けられている。これら小磁石62A,62Bは、揺動支点Pからの距離がほぼ等しく設定されているとよい。
【0061】
一方、固定体30における固定側ホルダ31には、円板状のベース33の上に、Z軸周りに90°ずつ間隔をおいて4個のブロック71が一体に設けられている。各ブロック71の上面には、Z軸方向の上側(+Z側)に配置される上側傾斜面72aとZ軸方向の下側(−Z側)に配置される下側傾斜面72bとがZ軸方向に連続した形状とされており、Z軸方向に連続する両傾斜面72a,72bと合わせるように屈曲した状態のコイル61が両傾斜面72a,72bにまたがって設けられている。
【0062】
そして、各コイル61の上側の有効辺61aが固定側ホルダ31の上側傾斜面72aに配置されることにより、可動側ホルダ21の上側傾斜面22aの小磁石62Aに対向しており、コイル61の下側の有効辺61bが固定側ホルダ31の下側傾斜面72bに配置されることにより、可動側ホルダ21の下側傾斜面22bの小磁石62Bに対向している。これら上側傾斜面22aと下側傾斜面22bとの2個の小磁石62A,62Bは、その表面が異なる磁極に着磁されている。したがって、これら異なる磁極に着磁された2個の小磁石62A,62Bが、屈曲状態のコイル61の各有効辺61a,61bにそれぞれ対向している。この屈曲した状態のコイル61の上側の有効辺61aと、下側の有効辺61bとは、揺動支点Pからの距離がほぼ等しく設定されているとよい。また、各小磁石62A,62Bとコイル61の各有効辺61a,61bとの対向間隔は、上側と下側とで同じ寸法に設定される。
【0063】
すなわち、この第3実施形態においては、揺動駆動機構60は、2個の磁極の異なる小磁石62A,62Bの組み合わせになる磁石と、これら小磁石62A,62Bに有効辺61a,62bをそれぞれ対向させた屈曲状態のコイル61とにより構成される。
なお、これら小磁石62A,62Bとコイル61との組み合わせは、可動側ホルダ21のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yの傾斜面にそれぞれ配置されている。
【0064】
この第3実施形態のアンテナ装置102においては、コイル61が揺動方向に沿って屈曲した形状に形成されるとともに、小磁石62A,62Bもコイル61の屈曲状態に沿うように傾斜の向きを変えて2個ずつ固定され、屈曲したコイル61の上下の有効辺61a,61bに、異なる磁極の小磁石62A,62Bが対向している。そして、これらの対向部分が揺動支点Pからほぼ等しい距離に配置されるので、小磁石62A,62Bとコイル61との対向間隔が揺動位置によって変化することが少なく、一定の駆動力を生じることができる。また、屈曲した分、Z軸方向と直交する方向(X軸方向及びY軸方向)の寸法を小さくすることができ、アンテナ装置102の小型化に有利である。
なお、可動側ホルダ21の支柱部27の上端部には重心位置調整部材としてのウエイト29が設けられる。この第3実施形態の場合、可動側ホルダ21に8個の磁石62A,62Bが相互間隔をおいて固定され、可動側ホルダ21の全体の重量が大きくなっているので、ジンバル部材40よりもアンテナ10側にウエイト29を設けて重心を調整している。
【0065】
<第4実施形態>
図11及び
図12に第4実施形態を示す。
この第4実施形態のアンテナ装置103は、可動体20としては、可動側ホルダ21が第1実施形態のものと類似した形状であり、四角錐を構成する可動側ホルダ21の各傾斜面22に揺動駆動機構60のコイル61が1個ずつ固定されている。この可動側ホルダ21は、アンテナ10の裏面に固定されている。また、可動側ホルダ21は、第2実施形態のアンテナ装置101に比べて、傾斜面22を大きく確保しており、全体としてZ軸方向の−Z側に突出するようにドーム状に形成され、内部を空洞状とする凹部24が形成されていることにより、軽量化がなされている。そして、その大面積の傾斜面22に比較的大型のコイル61が固定されている。
【0066】
一方、固定体30としては、円柱ブロック状の固定側ホルダ31の中心部がZ軸の+Z側に凹状となる形状に形成され、その凹状の表面に、Z軸方向の−Z側に頂点を有する四角錐状となる配置で4個の傾斜面72が形成されている。これら各傾斜面72に揺動駆動機構60の磁石62が1個ずつ固定されている。この場合、固定側ホルダ31の傾斜面72も可動側ホルダ21の傾斜面22と同様、比較的大きな面積に形成され、磁石62も大型のものが用いられる。また、固定側ホルダ31の上端には、その周縁部を上方に突出させるように筒状壁75が一体に設けられている。この筒状壁75はアンテナ10の周縁の直径と同じ直径に形成されている。
【0067】
そして、ジンバル部材(揺動支持機構)40は、三重の同心円に配置された外側リング部41、中間リング部42、内側リング部43を有し、外側リング部41と中間リング部42とがX軸方向に沿う二つの連結部44によって相互に連結状態とされ、中間リング部42と内側リング部43とがY軸方向に沿う二つの連結部45によって相互に連結状態とされている。このジンバル部材40の外側リング部41が固定側ホルダ31の筒状壁75の上端部に固定され、内側リング部43が可動側ホルダ21の外周面にに固定されている。
この第4実施形態においては、蛇腹状筒体からなるカバー300は、固定側ホルダ31の筒状壁75とアンテナ10との間に設けられる。
【0068】
この第4実施形態のアンテナ装置103は、第2実施形態のアンテナ装置101に比べて、可動側ホルダ21を軽量化しつつ、可動側ホルダ21に設けられるコイル61を大型化しており、その分、アンテナ10とコイル61とにより重量バランスがとれている。このため、第2実施形態で用いた重心位置調整部材(ウエイト)28は廃止している。そして、大型のコイル61と磁石62とにより大きな駆動力を発揮することができる。
【0069】
<第5実施形態>
図13及び
図14に第5実施形態を示す。
この第5実施形態のアンテナ装置104は、傘型形状のアンテナ10の裏面に、アンテナ10の傘型とほぼ同程度の傾斜でコイル61が固定され、アンテナ10の中心軸Cと直交する方向から視たときに、揺動駆動機構60の一部が傘型形状のアンテナ10の内側空間に配置されている。また、可動体20としては、コイル61を保持する可動側ホルダ21と、シャフト80とを備えている。
具体的には、アンテナ10の裏面にコイル61を保持するための可動側ホルダ21が一体に固定されている。この可動側ホルダ21は、傘型形状のアンテナ10の裏面の形状と同様、Z軸方向の−Z側から凹状となる形状に形成され、その凹状の表面に、Z軸方向の+Z側で中心軸C(Z軸)上の一点を頂点とする四角錐状となる配置で4個の傾斜面22が形成されている。そして、これら傾斜面22に揺動駆動機構60のコイル61が1個ずつ固定されている。これにより、アンテナ10の裏面に可動側ホルダ21を介してコイル61が保持された状態となり、各コイル61は、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yに配置される。この可動側ホルダ21の中心には中心軸C上に貫通孔25が設けられる。
そして、この貫通孔25を通って中心軸C上にシャフト80が設けられている。このシャフト80は、軸部81の上端部81aが半球状に形成されている。また、アンテナ10の頂点部11の裏側に球面座82が固定され、軸部81の上端部81aが球面座82に接触している。
【0070】
一方、固定体30としては、固定側ホルダ31に、円形のベース33と、ベース33の上に固定されるブロック体90とを備えており、そのブロック体90の上面(Z軸方向の+Z側表面)に、中心軸C(Z軸)上の一点を頂点とする四角錐状となる配置で4個の傾斜面72が形成されている。これら傾斜面72は、上方(Z軸方向の+Z側)に向かうにしたがって漸次中心軸Cに接近するように傾斜して配置される。また、これら傾斜面72は、可動側ホルダ21の傾斜面22と平行に配置される。そして、各傾斜面72に磁石62が1個ずつ固定されている。
また、ベース33の上面には、周縁部33bを残して凹部33cが形成され、ブロック体90の下面にも、周縁部91を残して凹部92が形成され、これらベース33とブロック体90とは、その周縁部33b,91で積み重ねられるように固定され、一体化される。また、固定側ホルダ31の中心部には中心軸C上に穴部34cが貫通状態に設けられる。
【0071】
ジンバル部材(揺動支持機構)40は、外側リング部41、中間リング部42、内側リング部43の三重のリング状に形成され、各リング部41〜43が連結部44,45によってX軸方向又はY軸方向に連結されている。そして、その外側リング部41がベース33とブロック体90との周縁部33b,91間に挟まれた状態に固定され、これらの凹部33c,92内にジンバル部材40の外側リング部41を除く内側部分が架け渡された状態に配置される。
そして、このジンバル部材40の内側リング部43の内側に、シャフト80の軸部81の下端部に一体の円板部83が固定されている。したがって、シャフト80は、その円板部83がジンバル部材40に固定され、軸部81が固定側ホルダ31及び可動側ホルダ21の穴部34c及び貫通孔25内を通ってアンテナ10の裏側の球面座82に到達している。
【0072】
このように構成した第5実施形態のアンテナ装置104は、揺動支点Pはジンバル部材40の揺動軸S1,S2の交点であり、アンテナ装置10全体の下部に配置されるのに対して、可動側ホルダ21及びコイル61がアンテナ10の裏面に接近して固定されているので、可動体20の重心はアンテナ10の重心G付近に設けられる。
なお、前述した第2実施形態から第5実施形態の各アンテナ装置102〜104において、第1実施形態の可動側ホルダ21に設けた凸部23は省略したが、コイル61の位置決め及び磁石62,62A,62Bとの衝突を防止するため、第1実施形態と同様、可動側ホルダ21に凸部23を設けてもよい(
図1及び
図2参照)。
【0073】
(その他の変形例)
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、カバー300として蛇腹状筒体を設けたが、アンテナ10の揺動に追従できるものであれば、必ずしも蛇腹状のものでなくても、伸縮変形自在なシート状のものでもよく、そのシート状のものでアンテナ10と固定体30との間を覆う構造としてもよい。
また、アンテナ装置の全体を合成樹脂等でできた箱状のカバーで覆うようにしてもよい。例えば、第2実施形態のアンテナ装置102を例にすると、蛇腹状筒体からなるカバー300を廃止し、
図15に示すアンテナ装置105のように、ベース33上に、アンテナ10の上方までの全体を覆う箱状のカバー301を設けてもよい。このカバー301は電波を通す材料により形成される。
【0074】
各実施形態では、アンテナ10を上部に配置し、中心軸Cが垂直方向に向くように設置したが、中心軸Cが水平方向に向くように設置してもよい。その場合でも、アンテナ10の重量とバランスさせてウエイト等の重心位置調整部材により揺動支点Pと可動体20の重心とが一致していると、ジンバル部材40等の撓みを抑制することができ、揺動動作を精度良く行わせることができる。
【0075】
また、組をなすコイル61と磁石62との対向方向を中心軸Cと交差する方向に設けたが、本発明においては、コイル61と磁石62との対向方向を中心軸Cに沿う方向に設ける場合も含むものとする。
また、第1、第2、第4、第5の各実施形態では、磁石62の表面に着磁分極線62cを介して異なる磁極62a,62bを揺動方向に並ぶようにその両端部に配置するとともに、コイル61にこれら磁極62a,62bに対向する有効辺61a,61bを配置し、また、第3実施形態では、異なる磁極の小磁石62A,62Bの組み合わせからなる磁石に対して、その小磁石62A,62Bのそれぞれに対向するように1個のコイル61の有効辺61a,61bを配置したが、
図16に示すアンテナ装置106のように、異なる磁極の2個の小磁石62A,62Bを揺動方向に並ぶようにその両端部に配置し、これら異なる磁極の小磁石62A,62Bからなる磁石に対して、その小磁石62A,62Bのそれぞれに対向するように配置した2個の小コイル61A,61Bからなるコイルとの組み合わせとしてもよい。この場合、揺動駆動機構60として、2個の小磁石62A,62Bと2個の小コイル61A,61Bとにより一組の磁石とコイルとが構成され、可動体20を揺動する際には、各小コイル61A,61Bには右ねじの法則に基づく方向の磁場を発生させ、異なる磁極の小磁石62A,62Bとの間で異なる方向(吸引力又は反発力)に磁場が作用するようにすればよい。