(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)アレキシジン及びその塩から選択される少なくとも1種と、(B)多価アルコールと、(C)ホウ酸、リン酸及び塩基性アミノ酸、並びにそれらの塩から選択される少なくとも1種とを含有し、
(B)多価アルコールが、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1種である、眼科組成物(但し、アルギン酸を含有する眼科組成物を除く。)。
眼科組成物に(A)アレキシジン及びその塩から選択される少なくとも1種、(B)多価アルコール、並びに(C)ホウ酸、リン酸及び塩基性アミノ酸、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種を配合することを含み、
(B)多価アルコールが、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1種である、該眼科組成物(但し、アルギン酸を含有する眼科組成物を除く。)のアカントアメーバのシストに対する殺菌力を高める方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[1.眼科組成物]
本実施形態に係る眼科組成物は、(A)アレキシジン及びその塩から選択される少なくとも1種(「(A)成分」ともいう。)と、(B)多価アルコール(「(B)成分」ともいう。)と、(C)ホウ酸、リン酸及び塩基性アミノ酸、並びにそれらの塩から選択される少なくとも1種(「(C)成分」ともいう。)とを含有する。
【0013】
〔(A)成分〕
(A)成分であるアレキシジン及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0014】
アレキシジンは、1,1’−ヘキサメチレン−ビス−[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド]とも称される公知の化合物である。
【0015】
アレキシジンの塩としては、例えば、無機酸塩、有機酸塩及びスルホン酸塩が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホウ酸、リン酸及び硝酸との塩が挙げられる。有機酸塩としては、例えば、酢酸、グルコン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、酒石酸及びクエン酸との塩が挙げられる。スルホン酸塩としては、例えば、メタンスルホン酸、イセチオン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。
【0016】
アレキシジン及びその塩の具体例として、例えば、アレキシジン、アレキシジン二塩酸塩等を挙げることができる。アレキシジン及びその塩としては、アレキシジン、及びアレキシジンの無機酸塩が好ましく、アレキシジンの無機酸塩がより好ましく、アレキシジン二塩酸塩が更に好ましい。
【0017】
アレキシジン及びその塩は、市販されているものを使用することもできる。アレキシジン及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本実施形態に係る眼科組成物における(A)成分の含有量は、眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、0.001〜10ppmであることが好ましく、0.01〜3ppmであることがより好ましく、0.1〜2ppmであることが更に好ましく、0.5〜1.6ppmであることが更により好ましい。なお、「ppm」は、10
−4w/v%を意味する。
【0019】
〔(B)成分〕
(B)成分である多価アルコールは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0020】
多価アルコールとしては、分子内に水酸基を2個以上有するアルコール、及びその塩が挙げられる。多価アルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリグリセリン、及びポリエチレングリコール(マクロゴール)(300、400、4000、6000)等の脂肪族多価アルコール(分子内に水酸基を2個以上有する脂肪族アルコール)、グルコース、ラクトース、マルトース、フルクトース、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、及びトレハロース等の糖アルコール、並びにこれらの塩が挙げられる。多価アルコールは、D体及びL体のいずれであってもよい。
【0021】
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールが好ましく、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールがより好ましく、プロピレングリコールが更に好ましい。
【0022】
多価アルコールは、市販されているものを使用することもできる。多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本実施形態に係る眼科組成物における(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量が、0.001〜10w/v%であることが好ましく、0.01〜5w/v%であることがより好ましく、0.1〜2.5w/v%であることが更に好ましく、0.25〜2.25w/v%であることが更により好ましい。
【0024】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、100〜100000質量部であることが好ましく、1000〜50000質量部であることがより好ましく、1500〜10000質量部であることが更に好ましい。
【0025】
〔(C)成分〕
(C)成分であるホウ酸、リン酸及び塩基性アミノ酸、並びにそれらの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0026】
ホウ酸及びその塩としては、ホウ酸(オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等)並びにホウ酸アルカリ金属塩及びホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。ホウ酸及びその塩として、ホウ酸塩の水和物を使用してもよい。
【0027】
ホウ酸及びその塩の具体例として、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム及びホウ砂が挙げられる。ホウ酸及びその塩としては、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩との組み合わせ、ホウ酸とアルカリ土類金属塩との組み合わせ、並びにホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩との組み合わせが好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩との組み合わせがより好ましく、ホウ酸とホウ砂との組み合わせが更に好ましい。
【0028】
ホウ酸及びその塩としてホウ酸とホウ砂との組み合わせを使用する場合、ホウ酸とホウ砂の含有比率については、特に限定されるものではないが、例えば、ホウ酸の総含有量1質量部に対して、ホウ砂の総含有量が0.001〜100質量部であることが好ましく、0.01〜20質量部であることがより好ましく、0.025〜5質量部であることが更に好ましい。
【0029】
ホウ酸及びその塩は、市販されているものを使用することもできる。ホウ酸及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
リン酸及びその塩としては、リン酸、並びにリン酸アルカリ金属塩及びリン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。リン酸及びその塩として、リン酸塩の水和物を使用してもよい。
【0031】
リン酸及びその塩の具体例として、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム及びリン酸二水素カルシウムが挙げられる。
【0032】
リン酸及びその塩は、市販されているものを使用することもできる。リン酸及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチンが挙げられる。塩基性アミノ酸は、D体、L体及びDL体のいずれであってもよい。
【0034】
塩基性アミノ酸の塩としては、例えば、有機酸塩、無機酸塩、有機塩基との塩、及び無機塩基との塩が挙げられる。有機酸塩としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、トシル酸、グルコン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、メチル硫酸、フェノールフタリン酸、フェンジゾ酸、ヒベンズ酸、サリチル酸、ジフェニルジスルホン酸、タンニン酸及びテオクル酸との塩が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸との塩が挙げられる。有機塩基との塩としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジンとの塩が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、アンモニア、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属、並びにアルミニウムとの塩が挙げられる。
【0035】
塩基性アミノ酸及びその塩としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン及びそれらの塩が好ましく、アルギニン、リジン及びそれらの塩がより好ましく、アルギニン及びその塩が更に好ましく、アルギニンが更により好ましい。
【0036】
塩基性アミノ酸及びその塩は、市販されているものを使用することもできる。塩基性アミノ酸及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本実施形態に係る眼科組成物における(C)成分の含有量は特に限定されず、(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(C)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量が、0.01〜10w/v%であることが好ましく、0.05〜5w/v%であることがより好ましく、0.1〜3w/v%であることが更に好ましく、0.5〜2w/v%であることが更により好ましい。
【0038】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が、100〜500000質量部であることが好ましく、1000〜100000質量部であることがより好ましく、3000〜50000質量部であることが更に好ましい。
【0039】
本実施形態に係る眼科組成物における、(B)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(B)成分及び(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(B)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.05〜50質量部であることがより好ましく、0.1〜10質量部であることが更に好ましい。
【0040】
〔(D)成分〕
本実施形態に係る眼科組成物は、(D)(A)成分以外の殺菌剤(「(D)成分」ともいう。)を更に含有することが好ましい。これにより、本発明による効果をより一層高めることができる。(D)成分としては、例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ミリスチン酸プロピルジメチルアミン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド(塩酸ポリヘキサニド)及び塩化ポリドロニウムが挙げられる。(A)成分以外の殺菌剤としては、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド(塩酸ポリヘキサニド)、塩化ポリドロニウムが好ましく、塩酸ポリヘキサニドがより好ましい。
【0041】
(D)成分は、市販されているものを使用することもできる。(D)成分は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
(D)成分を含有する場合、本実施形態に係る眼科組成物における(D)成分の含有量は特に限定されず、(D)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(D)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、(D)成分の総含有量が、0.000001〜0.01w/v%であることが好ましく、0.000005〜0.003w/v%であることがより好ましく、0.00001〜0.001w/v%であることが更に好ましく、0.00005〜0.00015w/v%であることが更により好ましい。
【0043】
(D)成分を含有する場合、本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する(D)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(D)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(D)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(D)成分の総含有量が、0.001〜100質量部であることが好ましく、0.01〜50質量部であることがより好ましく、0.05〜20質量部であることが更に好ましく、0.25〜1質量部であることが更により好ましい。
【0044】
(D)成分を含有する場合、本実施形態に係る眼科組成物における、(B)成分に対する(D)成分の含有比率は特に限定されず、(B)成分及び(D)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分に対する(D)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(B)成分の総含有量1質量部に対して、(D)成分の総含有量が、0.0000001〜1質量部であることが好ましく、0.000001〜0.1質量部であることがより好ましく、0.000005〜0.01質量部であることが更に好ましく、0.00001〜0.001質量部であることが更により好ましい。
【0045】
(D)成分を含有する場合、本実施形態に係る眼科組成物における、(C)成分に対する(D)成分の含有比率は特に限定されず、(C)成分及び(D)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(C)成分に対する(D)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(C)成分の総含有量1質量部に対して、(D)成分の総含有量が、0.0000001〜0.1質量部であることが好ましく、0.000001〜0.01質量部であることがより好ましく、0.000005〜0.005質量部であることが更に好ましく、0.000025〜0.0003質量部であることが更により好ましい。
【0046】
本実施形態に係る眼科組成物は、更に非イオン界面活性剤を含有していてもよい。非イオン界面活性剤は、アレキシジンの殺菌作用を低下させてしまうが、本発明に係る眼科組成物では、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を組合わせて含有しているため、更に非イオン界面活性剤を含有させても殺菌力を高く保つことができる。非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポロクサマー407等のポロクサマー類が挙げられる。非イオン界面活性剤の中でも、POEソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がより好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が更に好ましい。
【0047】
本実施形態に係る眼科組成物のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る眼科組成物のpHとしては、例えば、4.0〜9.5であってよく、4.0〜9.0であることが好ましく、4.5〜9.0であることがより好ましく、4.5〜8.5であることが更に好ましく、5.0〜8.5であることが更により好ましく、5.5〜8.0が特に好ましく、6.2〜8.0が特により好ましく、6.5〜7.8が最も好ましい。
【0048】
本実施形態に係る眼科組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は、眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、例えば、0.4〜5.0とすることができ、0.6〜3.0とすることが好ましく、0.7〜2.2とすることがより好ましく、0.8〜2.0とすることが更に好ましい。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(凝固点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0049】
本実施形態に係る眼科組成物の粘度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、特に限定されるものではない。本実施形態に係る眼科組成物の粘度としては、例えば、回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34‘×R24)で測定した20℃における粘度が0.01〜10000mPa・sであることが好ましく、0.05〜8000mPa・sであることがより好ましく、0.1〜1000mPa・sであることが更に好ましく、1〜100mPa・sであることが更により好ましく、1〜10mPa・sであることが特に好ましく、1〜5mPa・sであることが特により好ましく、1〜2mPa・sであることが特に好ましい。
【0050】
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に種々の薬理活性成分及び生理活性成分から選択される成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。当該成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。眼科用薬において用いられる成分として、具体的には、例えば、次のような成分が挙げられる。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム等。
抗ヒスタミン剤:例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、イプロヘプチン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム、塩酸オロパタジン等。
消炎剤:例えば、グリチルリチン酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、トラネキサム酸、ベルベリン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、リゾチーム、塩化リゾチーム、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトプロフェン、フェルビナク、ベンダザック、ピロキシカム、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl−塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム等。
(C)成分以外のアミノ酸類:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン及びそれらの塩等。
【0051】
本実施形態に係る眼科組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途及び製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。このような添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
安定化剤:例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、プラスチベース等。
pH調節剤:例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等。
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン、モノエタノールアミン等。
(C)成分以外の緩衝剤:例えば、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等。
陰イオン界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、N−アシルタウリン塩等。
両性界面活性剤:例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等。
増粘剤:例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ジェランガム、マクロゴール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等。
清涼化剤:例えば、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、チモール、シメン、テルピネオール、ピネン、カンフェン、イソボルネオール、フェンチェン、ネロール、ミルセン、ミルセノール、酢酸リナロール、ラバンジュロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
油類:例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油、スクワラン等の動物油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
【0052】
本実施形態に係る眼科組成物が水を含有する場合、水の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、水の含有量が、80w/v%以上100w/v%未満であることが好ましく、85w/v%以上99.5w/v%以下であることがより好ましく、90w/v%以上99.2w/v%以下であることが更に好ましい。
【0053】
本実施形態に係る眼科組成物に使用される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水及び注射用蒸留水等を挙げることができる。それらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
【0054】
本実施形態に係る眼科組成物は、所望量の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて他の成分を所望の濃度となるように添加及び混和することにより調製することができる。例えば、精製水でそれらの成分を溶解又は分散させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0055】
本実施形態に係る眼科組成物は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。製剤形態として、例えば、液剤、ゲル剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。本実施形態に係る眼科組成物の製剤形態は、本発明による効果をより一層高める観点から、液剤が好ましい。
【0056】
本実施形態に係る眼科組成物は、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]として用いることができる。なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0057】
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)、及びコンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)であることが好ましい。コンタクトレンズケア用組成物は、1液でソフトコンタクトレンズの洗浄、すすぎ、保存及び消毒を行うことのできる、いわゆるマルチ・パーパス・ソリューション(MPS)であることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る眼科組成物は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートであり、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0059】
本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器には、ノズルが装着されてもよい。ノズルの材質については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートであり、より好ましくは、ポリプロピレンである。
【0060】
本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、複数回の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。
【0061】
[2.アカントアメーバのシストに対する殺菌力を高める方法]
本発明に係る眼科組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を組み合わせて含有することにより、アカントアメーバのシストに対する殺菌力が向上している。したがって、本発明は、眼科組成物に(A)アレキシジン及びその塩から選択される少なくとも1種、(B)多価アルコール、並びに(C)ホウ酸、リン酸及び塩基性アミノ酸、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種を配合することを含む、該眼科組成物のアカントアメーバのシストに対する殺菌力を高める方法又は向上させる方法と捉えることもできる。
【0062】
当該方法における、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、眼科組成物の製剤形態及び用途等については、[1.眼科組成物]で説明したとおりである。
【実施例】
【0063】
以下、実施例等に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
〔試験例1:アカントアメーバのシストに対する殺菌力の評価1〕
表1に記載の処方に従い、各試験液を調製した。調製直後の各試験液について、アカントアメーバのシストに対する殺菌力を評価した。
【0065】
アカントアメーバ(Acanthamoeba castellanii)をPYG液体培地中にて32.5℃で3日間培養した後、PYG液体培地をEM液体培地に変更して25℃で14日間培養した。培養後、1/4RS(塩化ナトリウム 0.215g/100mL、塩化カリウム 0.0075g/100mL、CaCl
2・2H
2O 0.0083g/100mL)にて3回洗浄後、約1.0×10
7cells/mLとなるように調整して、微生物液を得た。試験液(10mL)を滅菌済み試験容器3個のそれぞれに無菌的に取り、これに微生物液(0.1mL)を接種し、最終的に約1.0×10
5cells/mLとした。
【0066】
得られた微生物液含有試験液を25℃で2時間静置した後、当該微生物液含有試験液より0.5mLを取り出し、これを中和液(PYG液体培地とDNB(Dey−Engley Neutralizing Broth)を8:1で混合したもの)(4.5mL)に加えて被験物質を中和して10倍希釈溶液を作製した。これを96ウェルマルチプレートに200μLずつ入れた。その後、PYG液体培地を180μLずつ入れたウェルに、上記10倍希釈溶液を20μLずつ加えてよく混合する操作を、4回(10
4倍希釈になるまで)繰り返して、培養液を得た。
【0067】
得られた培養液を25℃で7日間培養し、倒立型顕微鏡下で微生物の増殖の有無を確認した。増殖の認められたウェルの数を集計し、Spearman−Karber法でアカントアメーバのシストの生菌数を算出した。次いで、培養直前の生菌数と7日間培養後の生菌数とを比較し、菌数の減少量をLog reductionとして算出した。各製剤のLog reductionの値について、下記式を用いて、比較例1−1に対する各実施例の殺菌力改善率(%)を算出した。
(式)殺菌力改善率(%)=(各実施例のLog reduction−比較例のLog reduction)/比較例のLog reduction×100
算出した値を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
(A)成分に加えて、更に(B)成分(プロピレングリコール)及び(C)成分(ホウ酸及びホウ砂)を含有させることにより、アカントアメーバのシストに対する殺菌力が向上した(比較例1−1と実施例1−1〜1−3との比較)。
【0070】
〔試験例2:アカントアメーバのシストに対する殺菌力の評価2〕
表2に記載の処方に従い、各試験液を調製した。調製直後の各試験液について、微生物液含有試験液の静置時間を1時間としたこと以外は試験例1と同様の方法で、比較例2−1に対する各実施例の殺菌力改善率(%)を算出し、アカントアメーバのシストに対する殺菌力を評価した。
算出した値を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
(C)成分として、リン酸緩衝剤を組み合わせた場合においても同様に、アカントアメーバのシストに対する殺菌力が向上した(比較例2−1と実施例2−1、2−2との比較)。
【0073】
〔試験例3:アカントアメーバのシストに対する殺菌力の評価3〕
表3に記載の処方に従い、各試験液を調製した。調製直後の各試験液について、試験例2と同様の方法で、比較例3−1に対する実施例3−1の殺菌力改善率(%)を算出し、アカントアメーバのシストに対する殺菌力を評価した。
算出した値を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
(C)成分として、アルギニンを使用した場合においても同様に、アカントアメーバのシストに対する殺菌力が向上した(比較例3−1と実施例3−1との比較)。
【0076】
〔試験例4:アカントアメーバのシストに対する殺菌力の評価4〕
表4に記載の処方に従い、各試験液を調製した。調製直後の各試験液について、試験液に添加する微生物液を、約2.0×10
7cells/mLとなるように調整し、最終的な試験液中のアカントアメーバの濃度を約2.0×10
5cells/mLとしたこと以外は、試験例1と同様の方法で、比較例4−1に対する各実施例の殺菌力改善率(%)を算出し、アカントアメーバのシストに対する殺菌力を評価した。
算出した値を表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
(A)成分の含有量を2ppmとした場合においても同様に、アカントアメーバのシストに対する殺菌力が向上した(比較例4−1と実施例4−1との比較)。
【0079】
〔試験例5:アカントアメーバのシストに対する殺菌力の評価5〕
表5に記載の処方に従い、各試験液を調製した。調製直後の各試験液について、試験液に添加する微生物液を、約2.0×10
7cells/mLとなるように調整し、最終的な試験液中のアカントアメーバの濃度を約2.0×10
5cells/mLとしたこと、微生物液含有試験液の静置時間を1時間としたこと以外は、試験例1と同様の方法で、比較例5−1に対する実施例5−1の殺菌力改善率(%)を算出し、アカントアメーバのシストに対する殺菌力を評価した。
算出した値を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
(A)成分と(A)成分以外の殺菌剤である塩酸ポリヘキサニドを組み合わせて使用した場合においても同様に、更に(B)成分及び(C)成分を含有させることにより、アカントアメーバのシストに対する殺菌力が向上した(比較例5−1と実施例5−1との比較)。
【0082】
〔製剤例〕
表6に記載の処方で、本発明の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するマルチパーパスソリューションを調製した(製剤例1〜13)。表6中の単位は、表中に記載があるもの以外は全て(w/v%)である。
【表6】