(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る報知装置の一実施形態について、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1は、本発明の一実施形態に係る報知装置1を示すブロック図である。また、
図2は、
図1に示した報知装置1を用いる車両走行状況の一例を俯瞰して示す概略図である。
図3は、
図1に示した報知装置1を用いる際の制御フローについて示すフローチャート図である。
【0017】
図1に示すように、報知装置1は、運転制御部10を備える。また、報知装置1が設けられる車両は、
図1に示すように、検知部20及び車両駆動部30を備える。本実施形態においては、検知部20は検知部20が検知した情報を運転制御部10に対して出力可能であり、運転制御部10は車両駆動部30に対して駆動信号を出力可能になっている。
【0018】
運転制御部10は、車両の駆動を制御して、車両の自動運転制御又は高度運転支援制御を行う。運転制御部10による車両の駆動制御は、車両駆動部30に駆動信号を出力することで行う。
車両の自動運転制御及び高度運転支援制御は、車両の加減速及び操舵の主導権の全部又は大部分を車両側で保持して車両を駆動させることで行う。基本的には、運転制御部10による自動運転制御及び高度運転支援制御は上記主導権の保持度合いに応じて複数のレベルに区分され、周辺環境などに応じて運転制御部10が運転制御レベルを変更することになる。この運転制御レベルとしては、例えばNHTSAなどが採用しているSAE J3016(2016)において定義された自動運転レベルを用いることができる。なお、SAE J3016によると、いわゆる自動運転と呼ばれるのはSAEレベル3〜5である。
本実施形態では運転制御部10は経時的に変化し続ける周辺環境に応じた走行シナリオを構築及び更新し続ける。本実施形態における走行シナリオには、例えば車両の加減速情報、及び操舵情報などが含まれる。走行シナリオの構築のための周辺環境に係る情報は、検知部20により検知した情報を用いることができる。
運転制御部10としては、通常の自動運転車両又は運転支援車両で用いられる制御用演算処理装置などを用いることができる。本実施形態における運転制御部10は、既存の演算処理装置を用いることはできるが、
図2を参照しつつ後述するように特定の走行環境下で車両駆動部30の特定の駆動制御を行うようになっている。
【0019】
車両駆動部30は、速度調整部31及び操舵部32を有する。速度調整部31は、車両の加速及び制動を行うことで車両の速度を調整する。操舵部32は、車輪の向きを調整することで車両の進行方向を調整する。
速度調整部31としては、乗員側が手動運転時に操作可能なアクセル及びブレーキ、車両側がエンジン制御を行うECU(エンジンコントロールユニット)などを用いることができる。操舵部32としては、乗員が操作可能なステアリング装置、車両側が制御を行うステアリングバイワイヤシステムなどを用いることができる。
図3を参照しつつ後述するが、本実施形態においては主に操舵部32を用いることとなる。
【0020】
検知部20は、車内外の状況、状態、環境などを検知する部材であり、少なくとも車両の周辺環境、好ましくは自車両及び他車両の車両状態などを検知する部材である。車両の周辺環境に係る検知対象としては、他車両及び障害物などを挙げることができる。車両状態に係る検知対象としては、自車両及び他車両の位置、進行方向、速度及び加速度などを挙げることができる。
検知部20としては、具体的には各種センサ、カメラなどを用いることができ、周辺環境の検知には通信装置を介して外部から情報を取り込むこともできる。
【0021】
ここで、
図2を参照しつつ、本実施形態に係る報知装置1を用い得る走行環境について説明する。
図2に示す車両は、いずれも図面上方である前方に向かって走行している状態である。
図2の下方に示した車両Aは自車両であり、自車両Aの前方を走行する車両Bは他車両である。
【0022】
図2に示す走行環境では、自車両Aが自動運転制御状態又は高度運転支援制御状態であるときに、他車両Bの追い越しを行うことで他車両Bを回避するという走行シナリオを運転制御部10が設定することができる。
なお、本実施形態において運転制御部10が設定した走行シナリオは、既存の車両に搭載されるデータ格納用の記憶装置などに記憶しておくことができる。
【0023】
ここで、本実施形態に係る報知装置1を用いる走行環境としては、例えば自動運転制御又は高度運転支援制御において、自車両の略前方に検知された又は想定され得る所定の対象物を少なくとも操舵を用いて回避する必要があると判断され、その判断結果が反映された走行シナリオが設定されるような走行環境を挙げることができる。
回避する所定の対象物としては、他車両であっても良く、固定又は可動の障害物であっても良い。また、自車両による対象物の回避としては、例えば回避しなければ走行が不能となる場合の回避行動だけでなく、
図2に示したように車線変更して先行する他車両Bを追い越すための追越し行動も含まれることとする。
所定の対象物は、実物であっても良く、仮想物であっても良い。実在の対象物としては、例えば上記検知部20などによって実際に検知されたものなどである。また、例えば自車両が道路の合流近傍領域に進入することがナビ情報などで予め判明しているときに、合流部分で回避すべき他車両が存在する蓋然性が高いと運転制御部10が想定をした場合に、その仮想の回避すべき他車両を仮想の対象物とすることができる。道路交通情報、車車間通信、及び路車間通信などに基づいて導出される他車両の存在し得る可能性の高低に応じて、仮想の対象物の有無を決定することができる。
【0024】
本実施形態において上記走行シナリオには、少なくとも所定の対象物を回避するための走行軌道の情報が含まれていることとする。具体的には、
図2に実線矢印で示すように、周辺環境に鑑みて、先行する他車両Bの安全な追越し走行を行うための自車両Aの走行軌道が運転制御部10に設定されている。この走行軌道の情報には、操舵方向、操舵角、操舵角速度、及び操舵タイミングなどの情報が含まれている。なお、走行シナリオには、走行軌道以外に、例えば加減速情報などが含まれていても良い。
【0025】
本実施形態に係る報知装置1は、運転制御部10が設定した上記走行軌道と、この走行軌道から一旦外れる別軌道を設定する。具体的には、運転制御部10は、
図2に示した走行軌道R1(実線)と、走行軌道R1から一旦外れて後に走行軌道R1に合流する別軌道R2(一点鎖線)とを設定している。走行軌道R1は、所定の対象物である他車両Bに対して右方向に離れる軌道である。
【0026】
図2に示した実施形態では、走行軌道R1において隣接する右車線に車線変更するための操舵を行う前に、別軌道R2に沿って走行するための操舵を行うこととしている。別軌道R2では、走行軌道R1に合流するまでに、大きく2回の操舵を行うようになっている。詳述すると、別軌道R2に係る制御情報としては、走行軌道R1から外れる離脱操舵T1と、走行軌道R1に合流するために走行軌道R1に近付く方向転換を行う合流操舵T2とが、操舵情報として含まれている。
図2に示す実施形態では、離脱操舵T1は、走行軌道R1における右車線への車線変更のための右方向への操舵とは逆方向の操舵である。また、合流操舵T2は、離脱操舵T1によって移る予定の車線とは逆方向、つまり左方向に向いた自車両Aを走行軌道R1に向ける操舵、換言すると離脱操舵T1とは逆方向の操舵である。
本実施形態では、走行軌道R1に沿って走行する場合に必要な操舵に係る制御を、予め設定されて成る設定操舵制御とする。また、別軌道R2に沿って走行する場合に必要な操舵に係る制御を、新たな操舵制御とする。新たな操舵制御には、上記離脱操舵T1に係る離脱操舵制御と、上記合流操舵T2に係る合流操舵制御とが含まれる。
【0027】
自動運転制御及び運転支援制御には、周囲を走行する車両及び障害物などの所定の対象物に起因する危険を回避するための対応制御と、周辺環境の変化及び危険が少なく対応制御が不要な場合の通常走行制御とが含まれる。本実施形態において設定される走行軌道R1及び別軌道R2は、対応制御において設定される自車両Aの進路である。
【0028】
上記運転制御部10によって自車両Aの自動運転制御又は高度運転支援制御が行われている状態であっても、手動運転時と同様に、乗員による周辺環境の監視は必要となる。しかしながら、乗員による周辺環境の監視を、集中力を維持しつつ継続して行うことは難しい。周辺監視に対する乗員の集中力が低下していると、HUDなどを用いた目視に依る注意喚起表示を車室内で行って報知したとしても、乗員が表示に気付かない可能性がある。
また、仮に
図2に実線で示した走行軌道R1に沿って走行したときに、周辺監視に対する乗員の集中力が低下している状態で予め設定されて成る設定操舵制御を行うと、車両の進行方向が急に変化したように乗員が感じて混乱してしまい、どのような状況で何の為に操舵が必要であったかという、周辺環境の正確な理解に遅れが生じ得る。
【0029】
ここで、
図1に示した報知装置1を用いる際の制御フローについて、フローチャート図として示した
図3を参照しつつ説明する。
【0030】
先ず、車両駆動部30に出力される車両の加減速及び操舵に係る駆動信号に基づいて、自動運転制御又は運転支援制御の有無を運転制御部10が判別する(ステップS1)。本工程では、運転制御部10自体が行う制御の有無を判別するだけであるので駆動信号の有無で判別可能である。運転制御部10が車両駆動部30に対して運転の主導権の全部又は大部分を担うことのできる駆動信号を出力している場合は、車両の自動運転制御状態又は運転支援制御状態であると判別可能であるので、次工程に移る(ステップS1のYES)。このような駆動信号を出力していない場合は、本制御フローは完了する(ステップS1のNO)。
【0031】
次いで、運転制御部10による車両の自動運転制御又は運転支援制御が行われ、かつ対応制御状態であるか否かを運転制御部10が判別する(ステップS2)。本工程でも、前工程(ステップS1)と同様に、運転制御部10自体が行う制御の有無を判別するものであるので、検知部20で障害物などが検知されて車両駆動部30に対して対応制御状態に係る駆動信号が出力されている場合、又は、通常走行制御に係る駆動信号が車両駆動部30に出力されていない場合は、次工程に移る(ステップS2のYES)。通常走行制御に係る駆動信号が出力されている場合、又は、自車両の周辺環境の中に回避などの対応制御が必要となる障害物などが検知部20に検知されない場合は、通常走行制御状態であると判別することができるので、本制御フローは完了する(ステップS2のNO)。
【0032】
続いて、
図2の他車両Bなどの所定の対象物を回避するために、走行軌道R1が設定されているか否かを判別する(ステップS3)。対応制御として所定の対象物を回避するために操舵が必要な場合は、走行軌道R1が設定されるので、次工程に移る(ステップS3のYES)。対応制御として操舵が不要な場合、例えば加減速のみの運転制御で対応可能である場合は、少なくとも回避のための操舵を行わないので、対応制御状態であるか否かを判別する工程(ステップS2)に戻る(ステップS3のNO)。
【0033】
対応制御として操舵が必要であり、その操舵情報を含む走行軌道R1が設定されていると判別された場合(ステップS3のYES)、走行軌道R1に対して別軌道R2が設定される(ステップS4)。別軌道R2は、所定の対象物である他車両Bと自車両Aとの距離、相対速度、路面状態、隣接する車線の他車両の有無、及び他の周辺環境に応じて、他車両Bを安全に回避して走行可能なように設定される。
【0034】
更に、別軌道R2が設定された後に、別軌道R2に沿った走行のために運転制御部10から操舵部32に対して駆動信号が出力される(ステップS5)。具体的には、先ず離脱操舵T1を行うために離脱操舵制御が実行され、更に合流操舵T2を行うために合流操舵制御が実行される。離脱操舵制御から合流操舵制御に移る際に、自車両Aに対して作用する離脱操舵T1に起因した左右方向の加速度又はヨーモーメントなどの車両挙動の変化を検知した上で合流操舵制御を実行しても良く、時間しきい値を予め設定しておいて、離脱操舵制御の実行後に所定の時間経過すると合流操舵制御を実行するようになっていても良い。
【0035】
本工程(ステップS5)によって、離脱操舵T1及び合流操舵T2の少なくとも一方を行ったときに、慣性に基づく左右方向の加速度又はヨーモーメントを乗員に体感させることができる。乗員に左右方向の加速度又はヨーモーメントを体感させることが視覚、聴覚に依らない報知となるので、左右方向の加速度又はヨーモーメントを体感した乗員は何が起こったのかと自車両の状態及び状況に意識が向くこととなる。すなわち、自車両の走行環境に乗員の意識が向くこととなる。本実施形態では、走行軌道R1のみに沿って走行する場合に比べて、一旦別軌道R2に沿った走行を行うことで変更する車線に移るまでの時間的猶予が大きくなるので、乗員が周辺環境を理解するための時間的余裕が生じることになり、好ましい。これにより、走行軌道R1のみに沿った走行では自車両Aが急に曲がっていくように乗員に感じさせる可能性があった運転制御に、別軌道R2上を走行する制御を一旦入れることによって、走行軌道R1の本来の目的である回避操舵に対して、乗員の物理的、心理的な準備時間を確保することができる。結果として、報知装置1の報知形態によって、乗員が周辺監視を行っていなくとも、又は周辺監視の精度が低下していても、乗員の走行環境の理解を促進することができ、隣接する車線に移るための操舵タイミングを乗員が理解し易くなる。
【0036】
また、緊急時に車両側から乗員側に運転の主導権を渡すときになって初めて乗員に走行環境の理解を促したのでは、乗員による手動運転に切り替わったときに対象物への対応が遅れる可能性がある。よって、本発明に係る報知装置は、対応制御状態で車両の操舵制御を行って乗員の走行環境の理解を促すことで、緊急時に対して乗員を備えさせることができる。
【0037】
なお、
図2に示した走行環境のように、余裕を持って先行する他車両Bなどの所定の対象物を回避することができる場合は、
図3に示した制御フローに沿って運転制御を行うことができるが、周辺環境において突発的にリスクが増大して緊急回避が必要となった場合は、他の運転制御を採ることもできる。具体的には先ず、例えば走行軌道に対する別軌道の設定、迅速な離脱操舵及び合流操舵、及び、合流操舵から車両挙動を立て直した上で緊急回避のための走行軌道に沿った走行などに必要な時間をそれぞれ導出する。次に、通常通り緊急回避走行を行った場合より別軌道に沿った走行を行った場合に追加される時間が適宜のしきい値以上であるときには、通常通りの緊急回避を行った方が安全であると判別する。つまり、別軌道に沿った走行を行うことで通常通りの緊急回避よりもリスクが増大すると予測されるときには、別軌道を設定しない運転制御、又は、緊急回避制御を優先して別軌道に沿った走行を行わない運転制御を運転制御として採用することができる。
【0038】
本実施形態では、
図3に示したように自動運転制御又は高度運転支援制御の有無と対応制御の有無とをステップS1及びS2に分けて判別しているが、本発明においては乗員の集中力が低下し得る状況が判別可能である限り、1工程で判別を完了させても良い。
【0039】
本実施形態においては、走行軌道R1及び別軌道R2を共に記憶しておき、別軌道R2が設定された領域は走行軌道R1に沿って走行する運転制御を無効化し、かつ別軌道R2に沿って走行する運転制御を有効化する制御を行い、更に別軌道R2が走行軌道R1に合流した後は走行軌道R1に沿って走行する運転制御を有効化するようになっている。
なお、本発明においてはこれに限定されず、走行軌道から分岐して再度合流するまでの領域、つまり別軌道が設定されることで実際には走行しなくなった走行軌道における領域に対して、別軌道を上書き制御することで、自車両が走行しようとする軌道を一つだけに統合して保持する形態であっても良い。これにより、2つの軌道の記憶工程、軌道の有効化及び無効化の切替工程などを省略することができる。
【0040】
次に、別軌道に沿った走行タイミングが
図2に示した実施形態とは異なる変形例について、
図4及び5を参照しつつ説明する。
図4は、
図1に示した報知装置1を用いる車両走行状況の他の例を俯瞰して示す概略図である。
図5は、
図4に示した報知装置1を用いる際の制御フローについて示すフローチャート図である。
【0041】
図4に示す自車両Aの走行環境は、
図2に示した自車両Aの走行環境と略同一である。
図4に示す実施形態と
図2に示す実施形態との相違点は、別軌道に沿った操舵の開始タイミングである。
【0042】
図4に示す走行環境では、
図2に示した実施形態と同様に、自車両Aが自動運転制御状態又は高度運転支援制御状態であるときに、他車両Bの追い越しを行うことで他車両Bを回避するという走行シナリオを運転制御部10が設定する。
【0043】
本実施形態に係る報知装置1は、運転制御部10が設定した走行軌道と、この走行軌道から一旦外れる別軌道とを設定する。具体的には、運転制御部10は、
図4に示した走行軌道R10(実線)と、走行軌道R10から一旦外れて後に走行軌道R10に合流する別軌道R20(一点鎖線)とを設定している。走行軌道R10は、上記走行軌道R1と同一軌道であり、他車両Bに対して右方向に離れる軌道である。
【0044】
図4に示した実施形態では、走行軌道R10において隣接する右車線に車線変更するための操舵を行っている途中で、別軌道R20に沿って走行するための操舵を行うこととしている。つまり、本実施形態では別軌道R20上を走行するための操舵の開始タイミングは、走行軌道R10上を走行するために設定されて成る設定操舵が開始された後となっている。
【0045】
別軌道R20では、走行軌道R10に合流するまでに、大きく2回の操舵を行うようになっている。詳述すると、別軌道R20に係る制御情報としては、走行軌道R10から外れる離脱操舵T10と、走行軌道R10に合流するために走行軌道R10に近付く方向転換を行う合流操舵T20とが、操舵情報として含まれている。
図4に示す実施形態では、離脱操舵T10は、走行軌道R10における右車線への車線変更のための右方向への操舵を戻す操舵である。また、合流操舵T20は、離脱操舵T10によって他車両Bに向けた自車両Aを走行軌道R10に向ける操舵である。
本実施形態では、走行軌道R10に沿って走行する場合に必要な操舵に係る制御を、予め設定されて成る設定操舵制御とする。また、別軌道R20に沿って走行する場合に必要な操舵に係る制御を、新たな操舵制御とする。新たな操舵制御には、上記離脱操舵T10に係る離脱操舵制御と、上記合流操舵T20に係る合流操舵制御とが含まれる。
【0046】
続いて、
図4に示した走行環境で用い得る制御フローについて、フローチャート図として示した
図5を参照しつつ説明する。
【0047】
先ず、
図5に示すように、自動運転制御又は高度運転支援制御が行われ、かつ対応制御状態であるか否かを運転制御部10が判別する工程(ステップS1及びステップS2)と、走行軌道R10の設定の有無を判別する工程(ステップS3)と、別軌道R20を設定する工程(ステップS4)とは、
図3に示した制御フローと同様である。
【0048】
次に、自車両Aが走行軌道R10上を走行するために設定されて成る設定操舵制御が行われているか否かを判別する(ステップS6)。
設定操舵が行われていない場合(ステップS6のNO)は、設定操舵と逆方向の離脱操舵T1を行うことで、
図2に示した形態と同様の走行形態となり、走行軌道R1上に進入する前に別軌道R2上を走行することとなる(ステップS51)。
設定操舵が行われている場合(ステップS6のYES)は、既に行われている設定操舵を戻す離脱操舵T10を行うことで、
図4に示したように一旦走行軌道R10上に進入した後に別軌道R20上を走行することとなる(ステップS52)。
【0049】
離脱操舵T1又はT10を行った後には、合流操舵T2又はT20を行うことで走行軌道R10に沿った他車両Bの回避走行が安全に実行される(ステップS53)。本工程(ステップS53)によって、離脱操舵T1、T10及び合流操舵T2、T20の少なくとも一方を行ったときに、慣性に基づく左右方向の加速度又はヨーモーメントを乗員に体感させることができる。左右方向の加速度又はヨーモーメントを体感した乗員は自車両の走行環境に意識を向けることとなる。更に、離脱操舵T10を行うことで乗員を回避しようとする他車両Bに向けることとなり、自動運転車両又は高度運転支援車両が操舵を行うと乗員は操舵方向を自然と見るという多くの人間が有する反応を利用することもできる。結果として、報知装置1の報知形態によって、乗員が周辺監視を行っていなくとも、又は周辺監視の精度が低下していても、乗員の走行環境の理解を促進することができ、隣接する車線に移るための操舵タイミングを乗員が理解し易くなる。
【0050】
なお、設定操舵の開始を中止した上で別軌道上に進入するための離脱操舵制御を先に行うという設定をしている場合は、
図2及び3に示した制御フローを採用すれば良い。また、刻一刻と変化し続ける周辺環境に安全に対応するために、設定操舵で設定された操舵開始タイミングを維持したままで、設定操舵の開始は中止しない場合は、
図4及び5に示した制御フローを採用すれば良い。
図4及び5に示した実施形態を採用する場合は、設定操舵の開始前後で走行する別軌道が異なるので、例えば別軌道を設定する工程(ステップS4)において別軌道R2と別軌道R20とをそれぞれ設定しておくことで円滑でかつ安全な走行が可能となる。
【0051】
離脱操舵T1及びT10の操舵角速度は、合流操舵T2及びT20の操舵角速度に対して大きく又は小さく設定可能である。
操舵角速度に依らずに離脱操舵T1及びT10を単純に実行するだけで別軌道R2及びR20上での走行に起因した左右方向の加速度又はヨーモーメントを乗員が体感可能であれば、離脱操舵T1及びT10の操舵角速度は、合流操舵T2及びT20の操舵角速度に対して小さく設定することができる。
また、乗員の左右方向の加速度又はヨーモーメントの確実でかつ早期の体感を確保するためにはクイックな離脱操舵T1及びT10が好ましいので、離脱操舵T1及びT10の操舵角速度は、合流操舵T2及びT20の操舵角速度に対して大きく設定することもできる。
【0052】
なお、走行軌道R1及びR10で予め設定されていた設定操舵の操舵角速度に対しても、同様の設定をすることができる。
具体的には、操舵角速度に依らずに離脱操舵T1、T10及び合流操舵T2、T20を単純に実行するだけで別軌道R2上での走行に起因した左右方向の加速度又はヨーモーメントを乗員が体感可能であれば、離脱操舵T1、T10及び合流操舵T2、T20の操舵角速度は、設定操舵の操舵角速度に対して小さく設定することができる。
また、乗員の左右方向の加速度又はヨーモーメントの確実な体感を確保するためにはクイックな離脱操舵T1、T10及び合流操舵T2、T20が好ましいので、離脱操舵T1、T10及び合流操舵T2、T20の操舵角速度は、設定操舵の操舵角速度に対して大きく設定することもできる。
【0053】
また、離脱操舵T1及びT10の操舵角は、合流操舵T2及びT20の操舵角に対して小さく設定することができる。離脱操舵T1及びT10の操舵角が合流操舵T2及びT20の操舵角に対して大きい場合は、走行軌道R1に合流するまでの所要時間及び距離が大きくなるので、走行軌道R1に合流するまでに周辺環境が変化して更なる別の対応制御が必要となり、新たな走行軌道を設定し直すことになる可能性がある。これに鑑みて、離脱操舵T1及びT10の操舵角は、合流操舵T2及びT20の操舵角に対して小さく設定することで、周辺環境の理解を乗員に促して操舵タイミングを把握させることと、走行軌道R1を新たに設定し直さずに運転制御を維持することとの両立を図ることができる。
【0054】
別軌道に沿った走行で行う操舵の操舵角速度は、例えば乗員の状態に合わせて変更可能であっても良い。続いて示す
図6は、
図1に示した報知装置1を用いて乗員の状態に合わせた操舵角速度を以て操舵を行う制御フローについて示すフローチャート図である。
【0055】
図6に示す制御フローでは、乗員状態に基づいて合流操舵T2の操舵角速度が変更可能となっている。なお、
図6に示す制御フローは、例えば
図2に示した走行環境を自車両Aが走行しているときに実行されるものとする。
【0056】
先ず、
図6に示すように、自動運転制御又は高度運転支援制御が行われ、かつ対応制御状態であるか否かを運転制御部10が判別する工程(ステップS1及びステップS2)と、走行軌道R1の設定の有無を判別する工程(ステップS3)と、別軌道R2を設定する工程(ステップS4)とは、
図3及び5に示した制御フローと同様である。
【0057】
次いで、乗員の状態を検知部20によって検知する(ステップS7)。本工程では、検知部20が検知する乗員状態に関する情報に基づいて、適宜の演算装置によって数値化された生体レベル、特に覚醒レベルを導出する。
【0058】
ここで、上記生体レベルとしては、例えば乗員の周辺監視に対する集中力の低下に関連し得る情報、パラメータの高さなどである。更に具体的には、車内カメラなどの検知部20で検知される乗員の眠気などに関連する覚醒情報、乗員のフロントウィンドウ側に視線を向ける頻度の情報などを数値化して適宜にレベルとして導出することで得られるものを挙げることができる。
【0059】
続いて、別軌道R2に沿った走行を行うために、運転制御部10は離脱操舵制御を行う(ステップS54)。本工程によって、別軌道R2上に自車両Aが進入することとなり、離脱操舵T1に起因する左右方向の加速度又はヨーモーメントが乗員に作用する。
【0060】
次に、離脱操舵制御の実行前に比べて実行後に乗員がより覚醒したか否かを、検知部20による再度の検知結果に基づいて運転制御部10が判別する(ステップS8)。
検知部20の検知結果に基づく生体レベルが離脱操舵制御の実行前より実行後に覚醒したことを示している場合(ステップS8のYES)は、既に周辺環境に対して乗員が意識を向け易い状態となっているので、合流操舵T2の操舵角速度を離脱操舵T1の操舵角速度以下設定しても問題は生じにくい(ステップS91)。
乗員の生体レベルが離脱操舵制御の実行後であっても実行前より覚醒していないことを示している場合(ステップS8のNO)は、合流操舵T2によって確実に乗員を覚醒させ、かつ操舵のタイミングを理解させる必要があるので、合流操舵T2の操舵角速度を離脱操舵T1の操舵角速度より大きく設定(ステップS92)。
【0061】
更に、運転制御部10は、設定が完了した操舵角速度を以て合流操舵制御を行う(ステップS53)。本工程によって、走行軌道R1で回避しようとする他車両Bの存在を含めた周辺環境に対する乗員の理解を確実に促進することができる。
【0062】
以上のように、自動運転制御又は運転支援制御が行われている車両が対応制御状態であるときに、別軌道R2上を走行する際に乗員の生体レベルに応じた操舵制御を行うことができる。
図6に示した制御形態では、離脱操舵制御の前後における乗員の生体レベルを検知することで、乗員状態に合わせた操舵制御が可能となり、乗員の意識を確実に周辺環境に向けさせることができる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。