(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈再帰反射性シート〉
本発明の再帰反射性シートは、再帰反射性積層体、及び再帰反射性積層体上の第1の可視インキ層を有するシートである。ここで、再帰反射性積層体は、反射材層及び透明球状体層を有し、透明球状体層は複数の透明球状体を有し、各透明球状体は少なくとも一部が反射材層に埋め込まれている。第1の可視インキ層は、下記(i)及び(ii)の部分の少なくとも一部を被覆しており、かつ複数の透明球状体の頂部を被覆していない:(i)複数の透明球状体の頂部以外の部分、及び(ii)複数の透明球状体の間隙の反射材層の部分。上記(i)の部分を被覆している第1の可視インキ層と、上記(ii)の部分を被覆している第1の可視インキ層とは、連続して一体となっていてもよい。
【0011】
本明細書において、「再帰反射条件」とは、対象物に光源から光を入射させ、そして入射方向に反射された再帰反射光を観察する条件、すなわち光源の位置と観察の位置とが略同じ位置となる条件を意味している。また、本明細書において、「非再帰反射条件」とは、対象物に光源から光を入射させ、そして入射方向以外の方向に散乱された散乱光を観察する条件、すなわち光源の位置と観察の位置とが相違する条件を意味している。
【0012】
また、本明細書において、「可視インキ」とは、非再帰反射条件下で目視にて視認することが可能なインキのことを指し、「不可視インキ」とは、非再帰反射条件下で目視にて視認することが不可能又は困難なインキのことを指す。
【0013】
従来技術では、印刷絵柄を有する再帰反射性シートを得る場合、可視インキ層による印刷絵柄を基材上に形成し、その上に再帰反射性積層体を積層していた。このように印刷絵柄を形成した後でその上に再帰反射性積層体を積層する方法によると、製造工程が複雑になるという問題の他に、観察者は、再帰反射性積層体を通してしか印刷絵柄を視認できないため、視認される印刷絵柄が不鮮明となることがあった。
【0014】
これに対して本発明の再帰反射性シートは、可視インキ層による絵柄印刷を再帰反射性積層体上に形成できるので、製造が容易になるとともに、観察者が再帰反射性積層体を通さずに印刷絵柄を直接視認でき、それによって視認される印刷絵柄を鮮明なものにできる。
【0015】
(第1の態様)
図1に、本発明の第1の態様における再帰反射性シートの積層構造の概略断面図を示す。
【0016】
図1の再帰反射性シート(101)は、再帰反射性積層体(10)、及び再帰反射性積層体上の第1の可視インキ層(21)を有する。再帰反射性積層体(10)は、反射材層(12)及び透明球状体層(11)を有する。透明球状体層(11)は複数の透明球状体を有し、各透明球状体は少なくとも一部が反射材層に埋め込まれている。
【0017】
第1の可視インキ層(21)は、再帰反射性積層体上で、複数の透明球状体の頂部以外の部分、及び複数の透明球状体の間隙の反射材層の部分を被覆しているが、透明球状体の頂部を被覆していない。
【0018】
図1の再帰反射性シート(101)では、第1の可視インキ層(21)は、再帰反射性積層体(10)の上に存在する。したがって、この再帰反射性シート(101)を非再帰反射条件下で目視すると、観察者は、再帰反射性積層体(10)上の第1の可視インキ層(21)によって形成された絵柄を鮮明に視認できる。
【0019】
一方、再帰反射条件下では、第1の可視インキ層(21)が存在しない領域への入射光(51a)は、透明球状体層(11)の透明球状体によって、再帰反射光(51b)として入射方向に再帰反射される。
【0020】
また、第1の可視インキ層(21)は透明球状体層(11)の透明球状体の頂部を被覆していないので、再帰反射条件では、第1の可視インキ層(21)が存在する領域への入射光(52a)は、第1の可視インキ層(21)が存在しない領域への入射光(51a)と同様に、透明球状体層(11)の透明球状体によって、再帰反射光(52b)として入射方向に再帰反射される。したがって、この再帰反射性シートは、再帰反射条件では、第1の可視インキ層(21)が存在する領域においても再帰反射性を示すことができ、再帰反射光(52b)による眩しさによって、第1の可視インキ層(21)で形成された絵柄が視認できなくなり、又は視認し難くなる。
【0021】
(第2の態様)
本発明の第2の態様において、再帰反射性シートは、再帰反射性積層体上に、複数の透明球状体の頂部を被覆している第2の可視インキ層を更に有することができる。
【0022】
図2に、本発明の第2の態様における再帰反射性シートの積層構造の概略断面図を示す。
【0023】
図2の再帰反射性シート(102)は、再帰反射性積層体(10)上に、複数の透明球状体の頂部を被覆している第2の可視インキ層(22)を更に有することを除いて、
図1の再帰反射性シート(101)と同様である。
【0024】
図2の再帰反射性シート(102)では、第1の可視インキ層(21)と第2の可視インキ層(22)とは部分的に重複し、両インキ層の重複領域(40)を有している。
【0025】
ここで、第1の可視インキ層(21)及び第2の可視インキ層(22)が共に円形であり、両インキ層の重複領域(40)を有している場合、これらのインキ層を上面から観察すると、
図4(a)のようになる。
【0026】
非再帰反射条件下で
図4(a)に示す再帰反射性シート(102)を観察すると、
図4(b)で示すように、第1の可視インキ層(21)と第2の可視インキ層(22)とで形成された絵柄(21、22)が視認される。
【0027】
一方で、再帰反射条件下で
図4(a)に示す再帰反射性シート(102)を観察すると、
図1の再帰反射性シート(101)に関して上記で説明したように、第1の可視インキ層(21)の存在によっては、再帰反射は妨げられない。したがって、透明球状体の頂部を被覆している第2の可視インキ層(22)が存在しない領域においては、第1の可視インキ層(21)が存在しない領域への入射光(51a)、及び第1の可視インキ層(21)が存在する領域への入射光(52a)の双方ともが、再帰反射光(51b、52b)として、入射方向に再帰反射される。これにより、第1の可視インキ層(21)が存在する領域においても、再帰反射光(52b)による眩しさによって、第1の可視インキ層(21)で形成された絵柄が視認できなくなり、又は視認し難くなる。
【0028】
これに対して、透明球状体の頂部を被覆している第2の可視インキ層(22)が存在する領域においては、この第2の可視インキ層(22)によって再帰反射が抑制され、第1の可視インキ層(21)の存否にかかわらず、入射光(53a、54a)は、それぞれ、散乱光(53b、54b)として散乱される。したがって、再帰反射条件下で
図4(a)に示す再帰反射性シート(102)を観察すると、
図4(c)で示すように、第2の可視インキ層(22)によって形成される絵柄が暗部として視認される。
【0029】
本発明の第2の態様における再帰反射性シートは、このようなメカニズムによって、視認される絵柄を、非再帰反射条件下と再帰反射条件下とで異なるものにできる。
【0030】
(第3の態様)
本発明の第3の態様において、再帰反射性シートは、再帰反射性積層体上に、複数の透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層を更に有することができる。
【0031】
図3に、本発明の第3の態様における再帰反射性シートの積層構造の概略断面図を示す。
【0032】
図3の再帰反射性シート(103)は、再帰反射性積層体(10)上に、複数の透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層(31)を更に有することを除いて、
図1の再帰反射性シート(101)と同様である。
【0033】
図3に示す再帰反射性シート(103)では、第1の可視インキ層(21)と不可視インキ層(31)とは部分的に重複し、両インキ層の重複領域(41)を有している。
【0034】
ここで、第1の可視インキ層(21)及び不可視インキ層(31)が共に円形であり、両インキ層の重複領域(41)を有している場合、これらのインキ層を上面から観察した領域は、
図5(a)のようになる。
【0035】
非再帰反射条件下で
図5(a)に示す再帰反射性シート(103)を観察すると、不可視インキ層(31)は視認できず、
図5(b)で示すように、第1の可視インキ層(21)で形成された絵柄が視認される。
【0036】
一方で、再帰反射条件下で
図5(a)に示す再帰反射性シート(103)を観察すると、
図1の再帰反射性シート(101)に関して上記で説明したように、第1の可視インキ層(21)の存在によっては、再帰反射は妨げられない。したがって、透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層(31)が存在しない領域においては、第1の可視インキ層(21)が存在しない領域への入射光(51a)、及び第1の可視インキ層(21)が存在する領域への入射光(52a)の双方とも、再帰反射光(51b、52b)として、入射方向に再帰反射される。これにより、第1の可視インキ層(21)が存在する領域においても、再帰反射光(52b)による眩しさによって、第1の可視インキ層(21)で形成された絵柄が視認できなくなり、又は視認し難くなる。
【0037】
これに対して、透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層(31)が存在する領域においては、この不可視インキ層(31)によって再帰反射が抑制され、第1の可視インキ層(21)の存否にかかわらず、入射光(55a、56a)は、再帰反射せず、散乱光(55b、56b)として散乱される。したがって、再帰反射条件下で
図5(a)に示す再帰反射性シート(103)を観察すると、
図5(c)で示すように、不可視インキ層(31)で形成された絵柄が暗部として視認される。
【0038】
本発明の第3の態様における再帰反射性シートは、このようなメカニズムによって、視認される絵柄を、非再帰反射条件下と再帰反射条件下とで異なるものにできる。
【0039】
第3の態様は、第2の態様と重畳的に適用してよい。すなわち、本発明の再帰反射性シートは、再帰反射性積層体上に、複数の透明球状体の頂部を被覆していない第1の可視インキ層を有し、複数の透明球状体の頂部を被覆している第2の可視インキ層を有し、かつ、複数の透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層を有していてよい。
【0040】
以下、本発明の再帰反射性シートの各構成要素について、非限定的な実施形態を例として説明する。
【0041】
(再帰反射性積層体)
本発明の再帰反射性シートにおける再帰反射性積層体は、反射材層及び透明球状体層を有する積層体である。再帰反射性積層体において、透明球状体層は複数の透明球状体を有し、各透明球状体は少なくとも一部が反射材層に埋め込まれている。
【0042】
反射材層は、透明球状体層の複数の透明球状体に直接接するように、又は他の層を介して間接的に接するように設けられ、透明球状体層に入射した光を反射する機能を有する。反射材層は、例えば、パール顔料、蒸着金属薄膜等によって構成されていてよい。
【0043】
透明球状体層は、複数の透明球状体を有する層である。透明球状体としては、例えばガラスビーズ、樹脂ビーズ等を挙げることができる。透明球状体は、例えば、平均粒径が10μm以上又は50μm以上であって、1cm以下、1mm以下、100μm以下、又は50μm以下であり、屈折率が1.9〜2.2程度のものを用いてよい。
【0044】
透明球状体層の各透明球状体は、少なくとも一部が反射材層に埋め込まれている。再帰反射性積層体の反射率を高くする観点から、透明球状体層の各透明球状体は、反射材層側に向いた半球の面積の例えば10%以上又は20%以上、かつ70%以下又は60%以下程度が反射材層に埋め込まれていてよい。
【0045】
透明球状体層において、複数の透明球状体は、最密の周期配置で充填されていてよい。しかし透明球状体は、必ずしも最密の周期配置で充填されている必要はなく、これよりも疎な充填であってもよく、非周期的な配置であってもよく、直近の透明球状体同士が互いに接触せずに間隙を形成している部分があってもよい。
【0046】
本発明の再帰反射性シートでは、透明球状体の露出率は、良好な再帰反射性を確保するとの観点から、例えば、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、又は40%以上であってよい。一方で、可視インキ層によって構成される絵柄の非再帰反射条件下での視認性を確保するとの観点から、透明球状体の露出率は、例えば、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、又は40%以下であってよい。
【0047】
この透明球状体の露出率は、本発明の再帰反射性シートを透明球状体層側から観察したときに、第1の可視インキ層が存在する領域において、透明球状体が第1の可視インキに被覆されていない露出部の面積の、第1の可視インキ層が存在する領域の面積に対する割合として定義される。ここで、第1の可視インキ層が存在する領域の面積には、複数の透明球状体が第1の可視インキに被覆されていない、露出部の面積が含まれる。
【0048】
本発明の再帰反射性シートにおける透明球状体の露出率は、第1の可視インキ層が存在する領域を撮影した写真画像を、暗色部(第1の可視インキ層の形成部分)と明色部(透明球状体の露出部分)とに二値化し、暗色部の面積A
D及び明色部の面積A
Bを用いて、下記数式によって算出される値である。
透明球状体の露出率(%)={A
B/(A
B+A
D)}×100
【0049】
再帰反射性積層体は、反射層のうちの、透明球状体層とは反対側の面に、基材層、粘着層等を更に有していてもよい。再帰反射性積層体は、更に、透明球状体層と基材層との間に、追加の絵柄層を有していてもよい。この場合の絵柄層については、例えば、特許文献1の記載を参照してよい。
【0050】
本発明における再帰反射性積層体は、市販の再帰反射フィルムであってもよく、例えば(株)丸仁製のオープン型再帰反射フィルム「LIGHT FORCETM LFU−1400」等を使用してよい。
【0051】
(第1及び第2の可視インキ層)
本発明の再帰反射性シートにおける、第1及び第2の可視インキ層は、それぞれ、非再帰反射条件下で視認できる可視インキから成る層であり、再帰反射性シートを透明球状体層側から観察したときに、任意の絵柄を形成していてよい。この任意の絵柄は、例えば、文字、記号、その他の意匠等、及びこれらの2種以上の組み合わせであっていてよい。
【0052】
本発明の再帰反射性シートにおける第1及び第2の可視インキ層は、それぞれ、公知の有色顔料、有色染料、若しくは光輝性顔料、又はこれらの2種以上を含むインキの硬化物から構成されていてよい。一般には「透明インキ」に分類されるパールインキは、その硬化物を非再帰条件下で目視観察すると、干渉色を視認することができるので、本発明においては可視インキに含まれる。
【0053】
(不可視インキ層)
本発明の再帰反射性シートにおける不可視インキ層は、このインキ層を通して下層の絵柄等を視認できるインキ層であり、特に非再帰反射条件下で視認できない不可視インキから成る層である。この不可視インキ層は、再帰反射性積層体の複数の透明球状体の頂部を覆うように存在することにより、再帰反射性積層体のうちの不可視インキ層存在領域が、再帰反射しないようにする機能を有する。不可視インキ層は、再帰反射性シートを透明球状体層側から観察したときに、例えば、文字、記号、その他の意匠等、及びこれらの2種以上の組み合わせを含む、任意の絵柄を形成していてよい。
【0054】
本発明の再帰反射性シートにおける不可視インキ層は、例えば、メジウムインキ等の不可視インキの硬化物から構成されていてよい。
【0055】
〈再帰反射性シートの製造方法〉
本発明の再帰反射性シートを製造する本発明の方法は、
再帰反射性積層体を準備すること、及び
再帰反射性積層体上に可視インキを印刷して、第1の可視インキ層を形成すること、
を含む。
【0056】
本発明の再帰反射性シートの製造方法は、再帰反射性積層体上に、可視インキを印刷して第2の可視インキ層を形成すること、若しくは不可視インキを印刷して不可視インキ層を形成すること、又はこれらの双方を更に含んでいてもよい。
【0057】
(再帰反射性積層体)
再帰反射性積層体は、反射材層及び透明球状体層を有していればよく、市販品であってもよい。本発明の再帰反射性シートの製造方法に使用される再帰反射性積層体については、本発明の再帰反射性シートにおける再帰反射性積層体に関する記載を参照してよい。
【0058】
(第1の可視インキ層の形成)
第1の可視インキ層の形成に用いるインキは、粘度の低いものが好ましい。粘度の低いインキを使用することにより、再帰反射性積層体上に可視インキを印刷したとき、透明球状体層に接した可視インキを、複数の透明球状体の頂部に留まらせずに、複数の透明球状体上の頂部以外の部分、及び複数の透明球状体の間隙の反射材層の部分のうちの少なくとも一方に移動させ、その後に硬化させてよい。この方法によれば、本発明の再帰反射性シートを容易に製造できる。このような可視インキの移動を可能とするために、再帰反射性積層体上への可視インキの印刷は、反射材層を鉛直方向下側として、再帰反射積層体を略水平の状態に維持して行われてよい。
【0059】
上記の可視インキの移動を容易にし、所望の第1の可視インキ層を形成するとの観点から、印刷に使用される可視インキの粘度は、例えば、0.3Poise以下、0.2Poise以下、0.1Poise以下、0.08Poise以下、又は0.05Poise以下であってよい。一方で、形成される第1の可視インキ層を、非再起反射条件下で所望の絵柄として視認可能とするとの観点から、可視インキの粘度は、例えば、0.003Poise以上、0.005Poise以上、0.007Poise以上、又は0.01Poise以上であってよい。
【0060】
これらの可視インキの粘度は、JIS Z 8803:2011の「液体の粘度測定方法」に準拠して、振動粘度計(例えば、株式会社エー・アンド・デイ製の音叉型振動式粘度計(型番:SV−1A VIBRO VISCOMETER)等)を用いて、温度25℃及び相対湿度55%RHの条件下で測定された値である。
【0061】
これらの可視インキの粘度は、具体的には、例えば、以下の方法によって測定される。すなわち、例えば、室温25℃及び相対湿度55%RHに管理された部屋で振動粘度計を立ち上げて、キャリブレーションを行う。その後、振動粘度計による可視インキ試料の粘度の測定を開始し、15秒以上経過して値が安定した後の測定値を、可視インキの粘度として採用する。測定対象の可視インキ試料は、例えば100mLのディスポカップ中に50mLを入れた状態で、測定装置へセットされる。
【0062】
第1の可視インキ層を形成するための印刷は、公知の方法によって行われてよく、例えば、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の適宜の方法によってよい。これらのうち、低粘度インキに対応でき、かつ再帰反射積層体を略水平の状態に維持した状態での印刷が可能であることから、インクジェット印刷が好ましい。
【0063】
第1の可視インキ層の形成において、使用する可視インキの粘度、量等、及び再帰反射性積層体中の透明球状体の表面状態等を適宜に調節することにより、透明球状体の露出率を任意に調節できる。必要に応じて、同種又は異なる種類の印刷方法により、可視インキ塗布を複数回行うことにより、透明球状体の露出率を調節してもよい。
【0064】
(第2の可視インキ層の形成)
任意的に行われる第2の可視インキ層の形成は、好ましくは、少なくとも第1の可視インキ層を形成した後の再帰反射性シートの透明球状体層上に、所望の可視インキを用いて公知の印刷方法によって行われてよい。
【0065】
第2の可視インキ層は、複数の透明球状体の頂部を被覆している。したがって、第2の可視インキ層を形成するための可視インキは、印刷時に透明球状体層に接した後、少なくとも一部が複数の透明球状体の頂部に留まった状態で硬化してよい。このような可視インキ層の形成を可能にするため、第2の可視インキ層を形成するための可視インキは、粘度の比較的高いものが好ましい。
【0066】
第2の可視インキ層を形成するための可視インキの粘度は、例えば、0.5Poise以上、1.0Poise以上、5.0Poise以上、10Poise以上、又は50Poise以上であってよく、例えば、10,000Poise以下、5,000Poise以下又は1,000Posei以下であってよい。
【0067】
これらの粘度の比較的高い可視インキの粘度は、JIS Z 8803:2011の「液体の粘度測定方法」に準拠して、B型回転粘度計(例えば、BROOK FIELD社製のB型回転粘度計(型番:DV−II)等)を用いて、温度25℃及び相対湿度55%RHの条件下で測定された値である。
【0068】
具体的には、例えば、以下の方法によって、測定される。すなわち、例えば、室温25℃及び相対湿度55%RHに管理された部屋でB型回転粘度計を立ち上げ、キャリブレーションを行う。その後、スピンドル#25を装置に取り付け、回転数を50rpmにセットする。その後、B型回転粘度計による可視インキ試料の粘度の測定を開始し、30秒以上経過して値が安定した後の測定値を、可視インキの粘度として採用する。測定対象の可視インキ試料は、例えば100mLのディスポカップ中に50mLを入れた状態で、測定装置へセットされる。
【0069】
(不可視インキ層の形成)
任意的に行われる不可視インキ層の形成は、好ましくは、少なくとも第1の可視インキ層を形成した後の再帰反射性シートの透明球状体層上に、上述の不可視インキを用いて公知の印刷方法によって行われてよい。
【0070】
不可視インキ層は、複数の透明球状体の頂部を被覆している。したがって、不可視インキ層を形成するための不可視インキは、印刷時に透明球状体層に接した後、少なくとも一部が複数の透明球状体の頂部に留まった状態で硬化してよい。このような不可視インキ層の形成を可能にするため、不可視インキ層を形成するための不可視インキは、粘度の比較的高いものが好ましい。
【0071】
不可視インキ層を形成するための不可視インキの粘度は、例えば、0.5Poise以上、1.0Poise以上、5.0Poise以上、10Poise以上、又は50Poise以上であってよく、例えば、10,000Poise以下、5,000Poise以下又は1,000Posei以下であってよい。
【0072】
これらの不可視インキの粘度は、JIS Z 8803:2011の「液体の粘度測定方法」に準拠して、B型回転粘度計を用いて、温度25℃及び相対湿度55%RHの条件下で測定された値である。具体的には、第2の可視インキ層を形成するための、粘度の比較的高い可視インキの粘度の測定と同様に行われてよい。
【実施例】
【0073】
〈実施例1〉
再帰反射性積層体として、オープン型再帰反射フィルム((株)丸仁製、品名「LIGHT FORCETM LFU−1400」、透明球状体の平均直径45μm)を使用し、その透明球状体層側の面に、以下の条件下で、可視インキ及び不可視インキをこの順に、それぞれ印刷して、複数の透明球状体の頂部を被覆していない可視インキ層、及び複数の透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層を形成して、実施例1の再帰反射性シートを製造した。
【0074】
(可視インキ層の形成)
印刷方法:インクジェット印刷、ドロップオンデマンド方式
印刷装置:キャノン(株)製、インクジェットプリンタ、品名「MG7730」、解像度9,600dpi×2,400dpi
可視インキ:キャノン(株)製、インクカートリッジBCI−371マゼンダ、粘度1〜5mPas(0.01〜0.05Poise)
絵柄:直径10mmの円(ベタ印刷)
【0075】
(不可視インキ層の形成)
印刷方法:活版印刷
不可視インキ:(株)T&K TOKA製、透明メジウムオフセットインキ
絵柄:直径10mmの円(ベタ印刷)を、可視インキ層の円と中心を5mmずらして印刷
【0076】
可視インキ層及び不可視インキ層を形成した後の再帰反射性シートを非再帰条件下で観察すると、可視インキ層によるマゼンダ色の円が視認された。同じ再帰反射性シートを再帰反射ルーペで視認すると、可視インキ層は見えずに、不可視インキ層の円が暗部として観察された。
【0077】
実施例1で得られた再帰反射性シートにつき、可視インキ層の端部の拡大上面写真を
図6に示した。
図6を見ると、可視インキは、複数の透明球状体上の頂部以外の部分、及び複数の透明球状体の間隙の反射材層の部分に存在するが、複数の透明球状体の頂部を被覆していないことが確認できる。
【0078】
〈比較例1〉
可視インキを下記の条件下で印刷した他は、実施例1と同様にして、複数の透明球状体の頂部を被覆している可視インキ層、及び複数の透明球状体の頂部を被覆している不可視インキ層を有する比較例1の再帰反射性シートを製造した。
【0079】
(可視インキの形成)
印刷方法:活版印刷
インキ:(株)T&K TOKA製、品名「BEST ONE 紅」
【0080】
比較例1の再帰反射性シートについて、非再帰条件下で観察すると、可視インキ層の円が視認された。しかし、これらの再帰反射性シートについて再帰反射ルーペで視認した場合には、不可視インキ層の円が暗部として観察されるとともに可視インキ層の円も合わせて暗部として観察され、可視インキ層と不可視インキ層との重複部分における不可視インキ層の絵柄は視認できなかった。
【0081】
比較例1で得られた再帰反射性シートにつき、可視インキ層の端部の拡大上面写真を
図7に示した。
図7を見ると、複数の透明球状体の頂部が、可視インキ層によって被覆されていることが確認できる。
【0082】
〈実施例2〉
本実施例では、透明球状体の露出率と、可視インキ層の視認性及び再帰反射性との関係を調べた。
【0083】
インクジェット印刷の回数を、2回、3回、6回、及び8回とした他は実施例1と同様の方法によって、再帰反射性積層体上に、直径10mmの円(ベタ印刷)の絵柄の可視インキ層をそれぞれ形成し、透明球状体の露出率、可視インキ層の視認性、及び得られた再帰反射性シートの再帰反射性を調べた。
【0084】
透明球状体の露出率は、以下のようにして測定した。すなわち、再帰反射性積層体上に可視インキ層を形成した部分のうちの一部領域(388μm×292μm)を、LEICA社製のデジタルマイクロスコープ、型式名「DVM5000」にて撮影した。得られた写真画像を、画像処理ソフト(Adobe社製、品名「Photoshop ver.CC2015)によって暗色部(可視インキ層の形成部分)と明色部(透明球状体の露出部分)とに二値化し、暗色部の面積A
D及び明色部の面積A
Bを用いて、下記数式によって算出される値を、露出率とした。
透明球状体の露出率(%)={A
B/(A
B+A
D)}×100
【0085】
可視インキ層の視認性は、印刷された円の形状の識別可否を、非再帰条件下における目視によって調べた。再帰反射性は、複数回試験で得られた複数の試料からそれぞれ任意に選択した1試料について、円の印刷領域における再帰反射の様子を、再帰反射ルーペによって観察し、以下の基準によって評価した。
【0086】
〈再帰反射性の評価基準〉
良好:再帰反射条件において、可視インキ層が全く又はほとんど見えず、かつ再帰反射光が観察された場合
可:再帰反射条件において、可視インキ層がわずかに見え、かつ再帰反射光が観察された場合
【0087】
結果は、表1及び
図8に示した。また、インクジェット印刷回数を3回及び6回として得られた再帰反射性シートについて、非再帰条件下及び再帰条件下でそれぞれ撮影した可視インキ層形成領域の拡大上面写真を
図9に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
以上の結果から、可視インキ層の形成領域において複数の透明球状体の頂部が被覆されていない本発明の再帰反射性シートは、非再帰条件下では可視インキ層の視認性に優れ、かつ再帰条件下では、可視インキ層の形成領域であっても良好な再帰反射性を示し、可視インキ層は視認されない、又は視認困難であることが検証された。