特許第6983022号(P6983022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983022
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】鉄道車両用床材
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/10 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   B61D17/10
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-190919(P2017-190919)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64411(P2019-64411A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】讃井 英人
(72)【発明者】
【氏名】▲伊▼東 隼
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】駒屋 智博
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】清田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】西 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】新井 明徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−081013(JP,A)
【文献】 実開昭49−134622(JP,U)
【文献】 実開昭62−146637(JP,U)
【文献】 特開平01−004550(JP,A)
【文献】 特開2000−052982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
A47G 27/02
B60N 3/04
E02F 9/16
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシート状鉄道車両用床材であって、床材の表面の一部に、周囲を閉じた凹状に設けられた複数の帯状へこみ部を備え、複数の前記帯状へこみ部が連続して配置され一群の帯状へこみ群が形成されたことを特徴とする鉄道車両用床材。
【請求項2】
前記複数の帯状へこみ部が前記長尺のシート状鉄道車両用床材の幅方向に渡るように配置され、該複数の帯状へこみ部が前記長尺のシート状鉄道車両用床材の長手方向に連なるように配置されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用床材。
【請求項3】
前記帯状へこみ群を形成する複数の前記帯状へこみ部の間隔が前記帯状へこみ部の狭幅方向の幅と同じもしくは前記帯状へこみ部の狭幅方向の幅より小さい請求項2に記載の鉄道車両用床材。
【請求項4】
前記一群の帯状へこみ群は、液体の拡散を低減したい場所に応じて所定の間隔で複数配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道車両用床材。
【請求項5】
前記帯状へこみ部の狭幅方向の幅が1mm〜50mmである請求項1〜のいずれか1項に記載の鉄道車両用床材。
【請求項6】
前記帯状へこみ部の深さが0.1mm〜1mmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両用床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に使用する床材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、客車内の美観や歩行時の防滑性を兼ね備えたポリ塩化ビニル製やゴム製の長尺床敷物が使われている。また、鉄道車両内の水回り (トイレや洗面所) には、水濡れ時の防滑性を確保するために表面に凸形状の深絞を付与した床敷物が使われている。
【0003】
近年、清涼飲料水などのペットボトル化が進み、鉄道車両客車内へ乗客が飲料水等を持ち込むことも多くなっており、持ち込まれた飲料水等が床に拡散することが増えてきている。特に横座席(クロスシート)などの客車内で飲用された際に、容器の落下等により内容物の液体が床面に零されることがあり、走行中の傾斜や発進停止時に掛る加速度により液体が当該乗客者の座席前後に拡散し、前後の乗客者が床面に置いた荷物や袋物を汚してしまうことが問題となる。
【0004】
床面上にこぼれた液体の拡散を防止する方法としては堰のように床面に対して高さを有するものを設置する方法がある。特許文献1には、床面に漏洩した液体が隣接する区域に拡散することを防止するため、帯状の基材と基材上部に一体に立設され基材と共に所定の高さの止水堰を形成する止水板とを備える拡散防止構造が開示されている。また、特許文献2は、集合住宅のバルコニーにおいて隣家専用使用部分への水が流出するのを防止するため、隣家との境界線近傍のバルコニー床面の出幅方向に断面が台形状の長尺部材を設置してその上から床シートを敷設した排水仕切り構造が開示されている。
【0005】
このように堰状のものを設ける方法については特定の比較的広い範囲の止水を行なうためには有効である。しかし、鉄道車両客車内の床では液体がこぼれる場所が不特定多数あり、また液体の拡散範囲を小さくするために堰で区分する範囲を狭く設定すると、部材が増え施工作業も煩雑となり、重量も増加するため好ましくない。また床材の表面に堰となる大きめの凸状部をあらかじめ設けると、例えば長尺状の床敷物の場合には製造後に巻物状にして保管しておくことが困難となり、施工現場への運搬に影響が出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−168861
【特許文献2】特許第5042683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、床面上にこぼれた液体が拡散することを抑えることができ、床材の施工後に床材表面に堰となる凸状部などの特別な部材を設けることなく、施工および保管運搬が容易な鉄道車両用床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は、長尺のシート状鉄道車両用床材であって、床材の表面の一部に、周囲を閉じた凹状に設けられた複数の帯状へこみ部を備え、複数の前記帯状へこみ部が連続して配置され一群の帯状へこみ群が形成されたことを特徴とする鉄道車両用床材である。
【0009】
また、前記帯状へこみ群を形成する複数の前記帯状へこみ部が互いの長手側が向き合うように並列して配置されている鉄道車両用床材であり、さらに前記帯状へこみ群を形成する複数の前記帯状へこみ部の間隔が前記帯状へこみ部の狭幅方向の幅と同じもしくは前記帯状へこみ部の狭幅方向の幅より小さい鉄道車両用床材である。
【0010】
また、前記帯状へこみ部の狭幅方向の幅が1mm〜50mmである鉄道車両用床材である。
【0011】
また、前記帯状へこみ部の深さが0.1mm〜1mmである鉄道車両用床材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、床面上にこぼれた液体が拡散することを抑えることができ、なおかつ保管や運搬が容易であり施工性に優れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の鉄道車両用床材の一実施形態における部分平面図である。
図2】本発明の鉄道車両用床材の一実施形態における部分断面図である。
図3】本発明の鉄道車両用床材を座席下に使用する場合の帯状へこみ群の配置を説明する説明図である。
図4】本発明の鉄道車両用床材の液体拡散性の評価に用いる試験機を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本発明の鉄道車両用床材について図1図2を用いて説明する。
本発明の鉄道車両用床材1は、図1のように表面の一部に周囲を閉じた凹状に設けられた複数の帯状へこみ部2を備えている。帯状へこみ部2は鉄道車両用床材1の表面に凹状に設けられているため帯状へこみ部2の端縁部は床材表面から裏面方向に向けて壁状に形成され、この壁状の端縁部である壁部22が帯状へこみ部2の周囲を囲っている。すなわち帯状へこみ部2は壁部22により囲まれることで閉じた空間として形成されている。これら複数の帯状へこみ部2は連続して配置されており、帯状へこみ群3を形成している。
【0016】
図2は、図1のAA´線における断面図を示したものである。帯状へこみ部2は、底部21と壁部22で構成される。そして頂部23を隔てて隣接する帯状へこみ部2が続けて設けられている。このように帯状へこみ部2を連続して形成することで、AからA´へ向けて液体が流れていく際に移動する距離が長くなり、液体の流れを失速させる効果がある。さらに帯状へこみ部2を液体が通過する際に帯状へこみ部2の中を流れていく横方向への流れが発生するため、AからA´へ向けて流れる液体の量が減少していく。
【0017】
帯状へこみ部2の深さdは、鉄道車両用床材1の厚さtの1/20〜1/2程度である。帯状へこみ部2の深さdは、0.1mm〜1.0mmが好ましく、0.2mm〜0.8mmがより好ましい。帯状へこみ部2の深さdが0.1mmより小さいと液体が流れて拡散することを低減させる効果が得られにくく、1.0mmを超えると汚れが溜まりやすくなり清掃性も低下する傾向となる。
【0018】
複数の帯状へこみ部2は、図1のように互いの長手側が向き合うように並列して配置されている。また、本発明の鉄道車両用床材1が長尺状のシート状物からなるものである場合には、帯状へこみ部2は鉄道車両用床材1の幅方向に渡るように配置され、複数の帯状へこみ部2が鉄道車両用床材1の長手方向に連なるように配置されることが好ましい。帯状へこみ部2は液体の拡散を防ぎたい方向に対し、帯状へこみ部2の長手が垂直となるように配置されているとよい。
【0019】
並列して配置されている複数の帯状へこみ部2は、図2のように一定の間隔pを開けて配置される。帯状へこみ部2の狭幅方向の幅wは1mm〜50mm程度が好ましく、3mm〜30mmがより好ましい。また帯状へこみ部2の間隔pは帯状へこみ部2の狭幅方向の幅wと同じか、もしくは帯状へこみ部2の狭幅方向の幅wより小さい方が好ましい。帯状へこみ部2の間隔pは0.5mm〜50mm程度が好ましく、1mm〜30mmがより好ましい。
【0020】
図1のAからA´に向けて液体が流れる際に、液体が帯状へこみ部2に流入しさらに横方向に拡散することで液体の勢いが減じられる。そして、帯状へこみ部2を越えて流れ出た液体の速度も減じられて頂部23を流れる。このとき、床面の傾斜や乗物の動きによっても液体が加速されたとしても障害物がなく加速される区間である頂部23が短いと、頂部23を移動する液体は速度がさほど大きくならず、次の帯状へこみ部2に流入することとなるため効果的に液体の速度を減ずることができ、液体の拡散を防止しやすくなる。
【0021】
帯状へこみ部2は複数連続して配置され、帯状へこみ群3を形成する。一つの帯状へこみ群3を形成する帯状へこみ部2の数は2本〜10本が好ましく、4本〜8本がより好ましい。帯状へこみ群3は構成する帯状へこみ部2の数が多いほど液体の拡散を低減する効果は得られるが、意匠性や清掃性が低下する恐れがあるため、施工する場所に応じて適宜調整することが好ましい。
【0022】
複数の帯状へこみ部2が連続して配置された帯状へこみ群3は、鉄道車両用床材1の表面に設けられており、施工する場所に応じて帯状へこみ群3の配置が決定される。
【0023】
図3に、座席が設置される客車床に鉄道車両用床材1が施工される場合の帯状へこみ群3の配置例を示した。座席Se下に帯状へこみ群3が配置されるよう、例えば座席Se間の距離Lsが1000mmピッチであれば帯状へこみ群3も1000mmピッチで設けることが好ましい。このように座席Se下に帯状へこみ群3を設けることで飲料などの液体をこぼしたときに前後の座席まで流れずに帯状へこみ群3のところで留めることが可能となる。
【0024】
本発明の鉄道車両用床材1としては特に制限はないが、表面に凹凸を自在に設けやすいことから合成樹脂製の床材が好適に用いられる。合成樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル系樹脂共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が挙げられ、これらを1種単独でも2種以上組み合わせて使用しても良い。これら合成樹脂の中でも加工性、施工性および価格の点でポリ塩化ビニルが好ましい。
【0025】
また、本発明の鉄道車両用床材1は長尺のシート状のものであり、あらかじめ帯状へこみ群3を施工車両に合わせて設けておくことが好ましい。長尺のシート状床材は、施工時に帯状へこみ部2を任意位置に設置することが施工上困難であり、液体の拡散を低減したい場所に応じあらかじめ帯状へこみ群3を設けることでより効果的に液体の拡散低減が図られる。より具体的には複数の帯状へこみ群3の間隔(ピッチ)や長尺床材における長手方向、幅方向(横方向)での設置位置を施工する部位の形状、液体の流れる方向、拡散を防止したい方向、液体がこぼれると想定される位置を考慮して帯状へこみ群3をあらかじめ設けておくことが好ましい。帯状へこみ部2は、エンボス加工やプレス加工などにより設けることができる。この他、鉄道車両用床材1の表面全体に意匠性や防滑性の向上のために絞模様を設けてもよい。表面全体に設ける絞は清掃性を考慮すると浅い絞が好ましい。
【0026】
ここで、鉄道車両用床材1は多量の液体が流れる場合や長時間にわたり液体が流れる場合ではなく、比較的少量の液体が流れる場合により適している。複数の帯状へこみ部2からなる帯状へこみ群3は液体が拡散する速度を低下させ、一時的に液体を留める効果があり、このような効果は液体が比較的少量の場合により有効に作用する。
【0027】
帯状へこみ部2の深さや幅、帯状へこみ群3を構成する帯状へこみ部2の数や間隔、配置、さらに複数の帯状へこみ群3の間隔や配置を変えることで想定される液量に応じ対応することができる。概ね、鉄道車両用床材1は500ml以下、さらに100ml以下、特に50ml以下の場合により適している。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について説明する。
厚さ2.0mmのポリ塩化ビニル系の床シートであり、表面全体に浅絞が設けられた床シートの表面に、表1に示すような複数の矩形状の帯状へこみ部からなる帯状へこみ群を、電熱プレスにより形成した。なお比較例として帯状へこみ部を設けない、表面全体に実施例と同様の浅絞が設けられた床シートを使用した。
これらの床シートを施工台に接着剤で固定し、図4のような試験体を作製した。ここで、試験体の幅W1は500mmであり、B−C間(展開区間)の長さL1及びC−D間(計測区間)の長さL2はいずれも500mmである。帯状へこみ群3はC−D間(計測区間)の中央に位置するように設置した。この試験体のスタート地点Sにプラスチック製緩衝材の板状片からなる液体溜めを設置し、試験機とした。
【0029】
上記試験機を傾斜角2°に設定し、液体溜めに5mlの水を溜めて静止してそのあと一気に流出させた。B−C間(展開区間)を通過後、C−D間(計測区間)において液体がC地点をはじめに通過してからD地点に液体が到達するまでの時間をストップウォッチにより1/100秒まで計測した。この計測を実施例および比較例の床シートについて、それぞれ10回ずつ測定し、平均値を小数点以下1桁に丸め液体拡散時間を算出した。これをもとに液体拡散低減効果を下記の基準により評価した。
【0030】
<液体拡散低減効果>
◎:非常に効果あり(液体拡散時間 5.0秒以上)
○:効果あり (液体拡散時間 4.0秒以上5.0秒未満)
△:多少効果あり (液体拡散時間 3.0秒以上4.0秒未満)
×:効果なし (液体拡散時間 3.0秒未満)
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】

【0033】
表2の評価結果より、床材表面に複数の帯状へこみ部からなる帯状へこみ群を設けた実施例1〜5の床シートについては、帯状へこみ部を設けていない比較例に比べて液体拡散時間が長くなっており液体拡散低減効果が得られていることが分かる。実施例1と実施例2の対比から、帯状へこみ部の幅が広い方が液体拡散低減効果は大きい。また実施例3と実施例4との対比から帯状へこみ部を設ける間隔が狭いほど効果が大きくなることが分かる。また帯状へこみ部の幅と間隔が共に狭く、帯状へこみ部の本数が多い実施例5が最も液体拡散低減効果が優れており、帯状へこみ部の間隔が狭く本数が多いものがより効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の鉄道車両用床材は、特別な部材を用いたり床材表面に堰となる凸状部を設けることなく床面上にこぼれた液体が拡散することを抑えることができ、なおかつ保管や運搬が容易であり施工性に優れるため、鉄道車両客室用の床として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 鉄道車両用床材
2 帯状へこみ部
21 底部
22 壁部
23 頂部
3 帯状へこみ群
図1
図2
図3
図4